特許異議申立
2021-700344
1,1-二活性化ビニル化合物生成物を含有する複数層硬化性組成物および関連方法
- 審判番号
- 2021-700344
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-503710
- 登録番号
- 6770633
- 請求日
- 2021年04月14日
- 審決日
- 2022年11月15日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】山本 秀策
- 【権利者代理人】森下 夏樹
- 【異議申立人】小島 早奈実
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6770633号発明「1,1-二活性化ビニル化合物生成物を含有する複数層硬化性組成物および関連方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6770633号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~21〕、〔22~39〕について訂正することを認める。
特許第6770633号の請求項1~39に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6770633号の請求項1~39に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年7月26日 アメリカ合衆国(US)、2016年8月9日 アメリカ合衆国(US)、2017年2月6日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、令和2年9月29日にその特許権の設定登録がされ、令和2年10月14日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 4月14日 :特許異議申立人小島早奈実(以下「申立人」という。)による請求項1~39に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年 7月20日付け:取消理由通知書
令和3年 8月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 9月10日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年11月 1日 :特許権者による意見書の提出
令和4年 3月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 6月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和4年 7月27日付け:審尋
令和4年 8月26日 :特許権者による回答書の提出
令和4年10月11日 :申立人による意見書の提出
本件訂正請求がされたことにより、令和3年8月17日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「重合反応生成物を含む」を、
「重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~21も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項5に記載された「前記第1のコーティング層」を、
「前記第1の硬化性組成物層」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~8も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項14に記載された「請求項13に記載の基材。」を、
「請求項13に記載の複数層硬化性組成物。」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項15に記載された「請求項13に記載の基材。」を、
「請求項13に記載の複数層硬化性組成物。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項22に記載された「前記第2のコーティング層」を、
「前記第2の硬化性組成物層。」に訂正する(請求項22の記載を直接的又は間接的に引用する請求項23~39も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項22に記載された「重合反応生成物を含む」を、
「重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」に訂正する(請求項22の記載を直接的又は間接的に引用する請求項23~39も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項26に記載された「前記第2のコーティング層」を、
「前記第2の硬化性組成物層。」に訂正する(請求項22の記載を直接的又は間接的に引用する請求項27~29も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項32に記載された「前記第2のコーティング層」を、
「前記第2の硬化性組成物層。」に訂正する(請求項22の記載を直接的又は間接的に引用する請求項33も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項34に記載された「前記第2のコーティング層」を、
「前記第2の硬化性組成物層。」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~21は、請求項2~21が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあり、本件訂正前の請求項22~39は、請求項23~39が、本件訂正前の請求項22の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~21〕、〔22~39〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1、6について
ア 訂正事項1の訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層」について、「前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1の新規事項の有無について
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0021】、【0045】、【0056】、【0065】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 訂正事項1の特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
上記アのとおり、訂正事項1は、新たな限定を追加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
エ 訂正事項6について
上記ア~ウと同様に、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項5には、「前記第1のコーティング層」と記載されていたが、当該記載の前には「前記第1のコーティング層」の記載がないから、請求項5の記載に不備があった。また、請求項1に記載された「第2の硬化性組成物層」は、「前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布され」るものであるから、請求項5において「前記第2の硬化性組成物層」が塗布される層を「第1のコーティング層」とする記載は誤りであり、正しくは「第1の硬化性組成物層」であったのは明らかである。
したがって、訂正事項2は、当該不備を正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項2は、本件特許の願書に最初に添付した特許請求の範囲の【0079】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
上記アのとおり、訂正事項2は、本件訂正前の請求項5の記載が、請求項1の記載との関係で誤りであることが明らかであり、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項3、4について
ア 訂正事項3の訂正の目的について
本件訂正前の請求項14には、「請求項13に記載の基材」と記載されていたが、請求項13に記載されたものは「複数層硬化性組成物」であるから、請求項14の当該記載に不備があった。また、請求項13に係る発明は「基材」ではなく、「複数層硬化性組成物」であるから、請求項14における「請求項13に記載の基材」の記載は誤りであり、「請求項13に記載の複数層硬化性組成物」であったのは明らかである。
したがって、訂正事項3は、当該不備を正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 訂正事項3の新規事項の有無について
訂正事項3は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0083】の記載に基づくものであるから、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 訂正事項3の特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
上記アのとおり、訂正事項3は、本件訂正前の請求項14の記載が、請求項13の記載との関係で誤りであることが明らかであり、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
エ 訂正事項4について
上記ア~ウと同様に、訂正事項4は、誤記の訂正を目的とするものであり、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(4)訂正事項5、7~9について
ア 訂正事項5の訂正の目的について
本件訂正前の請求項22には、「前記第2のコーティング層」と記載されていたが、当該記載の前には「前記第2のコーティング層」の記載がないから、請求項22の記載に不備があった。また、請求項22に記載された「硬化性組成物基材」は、「基材の少なくとも一部にわたって第1の硬化性組成物層を塗布するステップと、前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって第2の硬化性組成物層を塗布するステップと、前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層を硬化させるステップとを含」んだ方法で得られるものであるから、請求項22に係る「硬化性組成物基材のための方法」において、「前記第2のコーティング層」は、本来「前記第2の硬化性組成物層」であることが明らかである。
したがって、訂正事項5は、当該不備を正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 訂正事項5の新規事項の有無について
訂正事項5は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0132】の記載に基づくものであるから、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 訂正事項5の特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
上記アのとおり、訂正事項5は、本件訂正前の請求項22の記載が誤りであることが明らかであり、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
エ 訂正事項7~9について
上記ア~ウと同様に、訂正事項7~9は、誤記の訂正を目的とするものであり、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(5)申立人の主張について
訂正事項1、6に関して、申立人は、令和4年10月11日に提出した意見書において、本件訂正後の請求項1、22では、官能基を含むかどうかすら特定されていない、単なる「ポリマー樹脂」にまで拡張して記載されているが、本件当初明細書等には、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態と任意のポリマー樹脂との付加反応生成物については開示されていない旨の主張をしている(同意見書3ページ3~20行)。
しかしながら、訂正事項1、6により付加された事項は、訂正前の請求項1、22において、第1の硬化性組成物層および第2の硬化性組成物層が、共に独立に含むとする「ポリマー樹脂」が、「ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせ」と「付加反応生成物」を生成し得ることが特定するものである。
そして、本件当初明細書等には、「本件1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態におけるビニル基が、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、および/もしくはポリカルバメート樹脂、または他の化合物(すなわち、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物)におけるヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加機序を介して反応し、それによって安定な共有結合連結を形成することができると考えられる。」(【0021】)と記載されており、すなわち、「ポリマー樹脂」が、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせである「1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態」と、マイケル付加機序を介して反応し、共有結合連結を形成することが記載されていることから、訂正事項1、6により付加された上記事項は、本件当初明細書等に記載された事項である。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~21〕、〔22~39〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~39に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~39を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~39に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の硬化性組成物層および第2の硬化性組成物層を含む複数層硬化性組成物であって、
前記第1の硬化性組成物層が基材の少なくとも一部にわたって塗布され、そして
前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布され、
前記第1の硬化性組成物層および前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含むことを特徴とする、第1の硬化性組成物層および第2の硬化性組成物層を含む複数層硬化性組成物。
【請求項2】
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、ジエチルメチレンマロネートおよびジエチルメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物を含み、ジエチルメチレンマロネートの前記複数官能性形態が、ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールのエステル交換付加物を含む、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項3】
ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールの前記エステル交換付加物が、ジエチルメチレンマロネートおよびジオールのエステル交換付加物を含む、請求項2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項4】
前記ジオールが、1,5-ペンタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールを含む、請求項3に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項5】
(i)前記第1の硬化性組成物層が、前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層にわたって塗布された場合、前記第2の硬化性組成物層における重合反応を活性化する活性化剤化合物を含み、あるいは、
(ii)前記第2の硬化性組成物層が、前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層にわたって塗布されたら前記第1の硬化性組成物層における重合反応を活性化する活性化剤化合物を含む、
請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項6】
前記活性化剤化合物が、第三級アミン化合物を含む、請求項5に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項7】
前記活性化剤化合物が、2-(ジメチルアミノ)エタノールおよび/または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含む、請求項6に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項8】
前記活性化剤化合物が、イオン性液体を含む、請求項5に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項9】
前記第1の硬化性組成物層が、500℃未満の温度で加熱されると硬化する硬化性組成物を含み、前記第2の硬化性組成物層が、前記重合反応生成物を含む、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項10】
前記第1の硬化性組成物層が、メラミン樹脂またはホルムアルデヒド縮合物を含まない、
請求項9に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項11】
前記第1の硬化性組成物層が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリチオエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカルバメート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、もしくはアミノプラスト樹脂、またはそれらの任意の組合せを含む熱硬化性樹脂を含み、前記第2の硬化性組成物層が、前記重合反応生成物を含むクリアコート層を含む、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項12】
前記第1の硬化性組成物層が、前記重合反応生成物を含み、前記第1の硬化性組成物層が、金属基材上に直接的に塗布される、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項13】
前記第1の硬化性組成物層が、前記重合反応生成物を含み、前記第1の硬化性組成物層が、非金属基材上に直接的に塗布される、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項14】
前記基材が、ポリマー性である、請求項13に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項15】
前記非金属基材が、自動車部品である、請求項13に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項16】
前記基材が、電着硬化性組成物層を含み、前記第1の硬化性組成物層が、前記電着硬化性組成物層にわたって塗布される、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項17】
前記ジアルキルメチレンマロネート、前記ジアリールメチレンマロネート、前記ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくは前記ジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組合せの前記重合反応生成物を含む前記硬化性組成物層が、エクステンダーをさらに含む、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項18】
前記エクステンダーが、無水物含有ビニルポリマーを含む、請求項17に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項19】
前記無水物含有ビニルポリマーが、無水マレイン酸モノマー残基を含む、請求項18に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項20】
物品の表面にわたって堆積された請求項1に記載の複数層硬化性組成物を含む、物品。
【請求項21】
前記物品が、車両部品または自立構造体を含む、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
硬化性組成物基材のための方法であって、
基材の少なくとも一部にわたって第1の硬化性組成物層を塗布するステップと、
前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって第2の硬化性組成物層を塗布するステップと、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層を硬化させるステップとを含み、
前記第1の硬化性組成物層および前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む、
方法。
【請求項23】
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層を硬化させる前記ステップが、前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたっておよび/またはその下に、活性化剤溶液を塗布することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記活性化剤溶液が、第三級アミン化合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記活性化剤溶液が、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび/または2-(ジメチルアミノ)エタノールを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(i)前記第1の硬化性組成物層が、活性化剤化合物を含み、前記第2の硬化性組成物層を硬化させる前記ステップが、前記第2の硬化性組成物層における重合反応を、前記第1の硬化性組成物層中の前記活性化剤化合物で活性化することを含み、または
(ii)前記第2の硬化性組成物層が、活性化剤化合物を含み、前記第1の硬化性組成物層を硬化させる前記ステップが、前記第1の硬化性組成物層における重合反応を、前記第2の硬化性組成物層中の前記活性化剤化合物で活性化することを含む、
請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記活性化剤化合物が、第三級アミン化合物を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記活性化剤化合物が、2-(ジメチルアミノ)エタノールおよび/または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記活性化剤化合物が、イオン性液体を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、ジエチルメチレンマロネートおよびジエチルメチレンマロネートの複数官能性形態の重合反応生成物を含み、ジエチルメチレンマロネートの前記複数官能性形態が、ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールのエステル交換付加物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールの前記エステル交換付加物が、ジエチルメチレンマロネートおよびジオールのエステル交換付加物を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の硬化性組成物層が、500℃未満の温度で加熱されると硬化する硬化性組成物を含み、前記第2の硬化性組成物層が、前記重合反応生成物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の硬化性組成物層が、メラミン樹脂またはホルムアルデヒド縮合物を含まない、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の硬化性組成物層が、硬化した場合、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリチオエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカルバメート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、もしくはアミノプラスト樹脂、またはそれらの任意の組合せを含む熱硬化性樹脂を含み、前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、前記重合反応生成物を含むクリアコート層を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の硬化性組成物層が、硬化した場合、前記重合反応生成物を含み、前記第1の硬化性組成物層が、金属基材上に直接的に塗布される、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記基材が、電着硬化性組成物層を含み、前記第1の硬化性組成物層が、前記電着硬化性組成物層にわたって塗布される、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記ジアルキルメチレンマロネート、前記ジアリールメチレンマロネート、前記ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくは前記ジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組合せの前記重合反応生成物を含む前記硬化性組成物層が、エクステンダーをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記エクステンダーが、無水物含有ビニルポリマーを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記無水物含有ビニルポリマーが、無水マレイン酸モノマー残基を含む、請求項38に記載の方法。」
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和3年8月17日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に係る発明の請求項1~39に係る特許に対して、当審が令和4年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)
請求項1、9、10、22、32、33に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、請求項1~17、20~37に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)取消理由3(明確性)
本件特許は、請求項5の記載と請求項1の記載が整合しておらず、また、請求項22の記載が整合していないため、請求項5~8、22~39に係る発明が明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<引用文献等一覧>
1 国際公開第2013/149173号(特表2015-519416号公報(甲第1号証。以下「甲1」等という。)により国内公表をされた外国語特許出願に係る国際出願を国際公開したもの)
2 当審の判断
(1)取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)
ア 引用文献の記載事項、及び引用発明
引用文献1には、日本語に訳すと次の事項が記載されている。
(ア)「1.発明の分野
本明細書に開示した例示的実施形態は、インク及びコーティング並びにこれらのための重合性の系に関する。特に重要なものは、シアノアクリレートを含まない重合性で二置換型の二重活性化ビニル組成物、例えば限定されないが、メチレンマロネート、メチレンβ-ケトエステル、メチレンβ-ジ-ケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のモノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれかであるものである。」(明細書1ページ15~21行)
(イ)「当該技術分野において、100%固形分であり得、エマルジョンへの予備重合が必要とされ得ない機能的及び/または装飾的コーティングまたはインクが提供されることが所望されている。また、耐環境性であり、活性化のためにエネルギーの投入(熱又は光)の必要がないコーティング又はインクが所望されている。かかるコーティング及びインクにより、枢要な有益性、例えば、塗布及び硬化時のエネルギー使用量の大幅な削減、複雑な溶剤の取り扱い及び回収設備の排除、エネルギー関連設備の排除、ならびに感熱基材に対する前記の系の使用可能性がもたらされ得る。一例として、インク及びオーバープリントワニスのための紫外光硬化系と置き換え可能なことにより、前述のすべての有益性がもたらされ得る。また、耐環境性が乏しく、水分50%で貯蔵、運搬及び管理が必要であり、紫外光システムが、高価で複雑で取り扱いが危険であることが、即時硬化がはるかに高速な処理量をオフィスや家庭のユーザーに提供するエマルジョン系インクの置き換えも所望されている。」(明細書3ページ23行~4ページ10行)
(ウ)「本明細書に開示した例示的実施形態により、メチレンマロネートモノマー並びに他の重合性組成物(例えば、モノマー、オリゴマー及び/またはポリマー)の反応性インク及びコーティングとしての使用の例を提供する。特に重要なものは、重合性インク及び/またはコーティング組成物、例えば、二置換型の二重活性化ビニル組成物、例えば限定されないが、メチレンマロネート、メチレンβ-ケトエステル、メチレンβ-ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のモノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれかであるものである。」(明細書4ページ22行~5ページ3行)
(エ)「本発明のコーティング組成物の他の実施形態では、該組成物がさらに、塩基、塩基前駆体、塩基または塩基向上体の形態の活性化剤を含むものである。一部の特定の実施形態では、重合活性剤が、有機材料、無機材料もしくは有機金属材料またはこの組合せから選択される。他の実施形態では、重合活性剤が:酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅及びコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリド及びヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4-ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩から選択される少なくとも1つの構成員である。」(明細書8ページ18行~9ページ8行)
(オ)「さらに他の実施形態では、該組成物は、さらに配合添加剤を含むものである。一部の特定の実施形態では、配合添加剤が:可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、充填材、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、エクステンダー、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤から選択される少なくとも1つの構成員である。」(明細書9ページ9~13行)
(カ)「さらに他の実施形態では、該コート物品が自動車部材、金属缶、プラスチック容器、建設材である。」(明細書17ページ1~2行)
(キ)「本明細書で用いる場合、用語「メチレンマロネート」は、式-O-C(O)-C(=CH2)-C(O)-O-のコアを有する化合物をいう。ジエチルメチレンマロネートモノマーはエチル基を2つ有するメチレンマロネートであり、本明細書においてDEMMと表示する。ジメチルメチレンマロネートモノマーはメチル末端基を2つ有するものであり、本明細書においてDMMM又はD3Mと表示する。」(明細書19ページ6~10行)
(ク)「本明細書で用いる場合、用語「重合性組成物」は、鎖伸長、架橋又は両方によって重合可能な分子を含むモノマー型、オリゴマー型又はポリマー型の組成物又は混合物をいう。」(明細書19ページ15~17行)
(ケ)「本明細書において論考しているDEMM配合物に加え、例示したインク配合物は、メチレンマロネート系統の化合物からも作製され得る。他の例示的化合物の一例としては、ジメチルメチレンマロネート、ジ-n-プロピルメチレンマロネート、ジ-イソプロピルメチレンマロネート、ジベンジルメチレンマロネートが挙げられる。好適なインク配合物は、他のメチレンマロネート、メチレン□-ケトエステル、メチレンβ-ジ-ケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニル、この単官能性、二官能性又は多官能性の形態及びこの任意の組合せから作製され得る。」(明細書23ページ1~7行)
(コ)「コーティング配合物
コーティングを、ACT Test Panels LLCから取得したスチール及びアルミニウム製のシート上に作製した。試験目的のため、3つの異なる塗布方法を用いて異なるコーティングを作製した。すべての試験の場合で、開始剤は、1重量%フェノールホルムアルデヒド樹脂含有メタノールの溶液とし、重合性薬剤は99%純粋なジエチルメチレンマロネート(DEMM)とした。以下の塗布方法は、スチール基材及びアルミニウム基材のどちらでも同じである。
塗布方法番号1では、基材の上部を横切って3mLスポイトで開始剤を線状に塗り、次いで、2.5ゲージのMeyerロッドを用いて開始剤を基材上で引き延ばし、0.2ミルの膜にした。メタノールが蒸発した後(これに要したのは1分未満)、基材の上部を横切って3mLスポイトでDEMMを線状に塗り、このDEMMを基材上で14ゲージのMeyerロッドを用いて引き延ばし、1ミルの膜にした。硬化は即座に始まった。」(明細書27ページ20行~28ページ6行)
(サ)「追加のコーティング
DEMM中に顔料分散体を含む表面コーティングは、普通鋼、ポリカーボネート、オーク材及びアルミニウムに対して行われ得る。Meyerロッドサイズ8で塗布することにより形成されるコーティングの硬化時間は、室温でおおよそ24時間である。また、Meyerロッドサイズ14で塗布することにより形成されるコーティングの硬化時間も、室温でおおよそ24時間かかる。
DEMMのみ、又は顔料含有DEMMのいずれかを用いて上記のようにして硬化させたコーティングを重層すると、顔料分散体を用いた例示的多層コーティングが形成され得る。各追加の層は、再びMeyerロッドによって塗布され得、硬化時間はおよそ24時間である。基材を高温条件下に置くと、コーティング(又はコーティング層(複数))の硬化はスピードアップし得る。例えば、あらゆる基材上の、あらゆるコーティングは、55又は82℃で15分以内に硬化する。」(明細書29ページ6~17行)
(シ)「第2の方法では、「多官能性ブレンド」を用いてクリアコーティングを生成させた。多官能性モノマー(二官能性モノマーなど)及び重合性組成物は、発明の名称が多官能性モノマー、多官能性モノマーの作製方法、重合性組成物及びこれにより形成される製品である同時係属の特許出願PCT/US12/60830(この全体が本明細書に組み込まれる。)に開示している。例示的な一実施形態において、多官能性モノマーは、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)と1,6-ヘキサンジオール(HD):
[図:0001393971000001.jpg]
のエステル交換によって得られるものであり、本明細書では「多官能性(DEMM/HD)生成物」と称する。」(明細書34ページ8~18行)
(ス)「多官能性ブレンドでは、引き延ばす前に開始剤を使用することによりコーティングの硬化速度が有意に加速される。得られるコーティングは透明であり、わずかにつやのある外観を有する。多官能性ブレンドを用いたクリアコーティングは、金属基材、木製基材、プラスチック基材及び複合基材に塗布され得、インクコーティングの上面のクリアコートとしての使用に特に好適であり得る。論考した例はクリアコーティングであるが、本明細書に開示した着色剤を用いて別の配合物を作製することが可能である。」(明細書35ページ7~12行)
引用文献1の上記(サ)に記載された、基材を高温条件下に置いて複数層のコーティングを硬化した多層コーティングに着目すると、引用文献1には次の発明が記載されている。
「通常のスチール、ポリカーボネート、オーク材及びアルミニウムの基材に対して行われ得る、DEMM(ジエチルメチレンマロネート)の顔料分散体を含む表面コーティングに、DEMMのみ又は着色されたDEMMのいずれかの追加のコーティングを重ねることにより形成される、顔料分散体を有する多層コーティングであって、
DEMMは重合性組成物であり、
フェノールホルムアルデヒド樹脂含有メタノールの開始剤の溶液が引き延ばされた膜に、Meyerロッドで塗布されることにより形成された、DEMMの顔料分散体を含む表面コーティング、及びDEMMのみ又は着色されたDEMMのいずれかの追加のコーティングを、基材を高温条件下に置いて、55又は82℃で15分以内に硬化させた、多層コーティング。」(以下「引用発明A」という。)
「多層コーティングを形成する開始剤を1重量%フェノールホルムアルデヒド樹脂含有メタノールの溶液とし、重合性薬剤を99%純粋なジエチルメチレンマロネート(DEMM)とし、基材をスチールとして、
開始剤を基材上で引き延ばして膜にし、DEMMを基材上で引き延ばして膜にしてコーティングを形成し、
顔料分散体を含むDEMMを基材に対して塗布することによりコーティングを形成することにより、多層コーティングを重層して形成し、
基材を55又は82℃の高温条件下に置いて、コーティング層(複数)を硬化させる方法。」(以下「引用発明B」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明Aとを対比する。
引用発明Aの「基材」は本件発明1の「基材」に相当し、同様に、「Meyerロッドで塗布される」ことは「塗布され」ることに相当する。
引用発明Aの「ジエチルメチレンマロネート(DEMM)」及び「DEMM」は本件発明1の「ジアルキルメチレンマロネート」に相当する。
引用発明Aの「DEMMの顔料分散体を含む表面コーティング」及び「DEMMのみ又は着色されたDEMMのいずれかの追加のコーティング」は、それぞれ本件発明1の「第1の硬化性組成物層」及び「第2の硬化性組成物層」に相当する。
引用発明Aにおける「多層コーティング」は、「重合性組成物」である「DEMM」を硬化させたものであるから、引用発明Aの「多層コーティング層」が「フェノールホルムアルデヒド樹脂含有メタノールの開始剤の溶液が引き延ばされた膜に、Meyerロッドで塗布されることにより形成された、DEMMの顔料分散体を含む表面コーティング、及びDEMMのみ又は着色されたDEMMのいずれかの追加のコーティングを、基材を高温条件下に置いて、55又は82℃で15分以内に硬化させた」ものであることと、本件発明1の「前記第1の硬化性組成物層および/又は前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み」、「硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、又はそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」こととは、第1の硬化性組成物層および/又は第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含む限りで一致する。
引用発明Aの「多層コーティング」は、「DEMMの顔料分散体を含む表面コーティング、及びDEMMのみ又は着色されたDEMMのいずれかの追加のコーティング」を硬化させ」たものであるから、本件発明1の「複数層硬化性組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明Aとは、次の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「第1の硬化性組成物層および第2の硬化性組成物層を含む複数層硬化性組成物であって、
前記第1の硬化性組成物層が基材の少なくとも一部にわたって塗布され、そして 前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布され、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含む、第1の硬化性組成物層および第2の硬化性組成物層を含む複数層硬化性組成物。」
[相違点1]
第1の硬化性組成物層および/又は第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含むことに関して、本件発明1は、「前記第1の硬化性組成物層および/又は前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み」、「硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、又はそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」のに対して、引用発明Aは、「多層コーティング層」が「フェノールホルムアルデヒド樹脂含有メタノールの開始剤の溶液が引き延ばされた膜に、Meyerロッドで塗布されることにより形成された、DEMMの顔料分散体を含む表面コーティング、及びDEMMのみ又は着色されたDEMMのいずれかの追加のコーティングを、基材を高温条件下に置いて、55又は82℃で15分以内に硬化させた」ものである点。
(イ)新規性の判断
相違点1について検討するに、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明Aではない。
(ウ)進歩性の判断
相違点1についてさらに検討する。
相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に関して、本件特許の明細書には、次の記載がある。
「1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、自己重合反応を受け、それによって重合反応生成物を形成することができ、その重合反応生成物は、ヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加反応によって形成された連結を介して多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物に共有結合によって結合することができる。したがって、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物のための架橋剤/硬化剤として機能することができる。一部の例では、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物を架橋し、硬化させる、マイケル付加反応および重合反応の両方を含む複数の硬化機序を提供することができる。」(【0021】)
すなわち、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項により、「1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態」である「ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせ」について、その重合反応に加えて、ポリマー樹脂の付加反応によって架橋し、硬化することで、複数の硬化機序を提供するものである。
これに対して、引用文献1や提出された他の証拠には、相違点1に係る本件発明1の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、引用発明Aにおいてそのような構成とすることに動機付けがあるとはいえず、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、引用発明Aに基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(エ)申立人の主張について
申立人は、令和4年10月11日に提出した意見書において、引用発明Aにおける「フェノールホルムアルデヒド樹脂」や甲1の【0032】(引用文献1の上記ア(エ))に記載された「重合活性剤」が本件発明1の「ポリマー樹脂」に相当する旨の主張をしている(同意見書3ページ下から6行~5ページ5行)。
しかしながら、引用発明Aにおける「開始剤」である「フェノールホルムアルデヒド樹脂」や「重合活性剤」は、重合を開始ないし活性するものであって、「ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせ」と付加反応して「付加反応生成物」を生成するものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 本件発明22について
(ア)対比
本件発明22と引用発明Bとを対比する。
引用発明Bの「基材」は本件発明22の「基材」に相当する。
引用発明Bの「ジエチルメチレンマロネート(DEMM)」及び「DEMM」は本件発明22の「ジアルキルメチレンマロネート」に相当する。
引用発明Bの「DEMMを基材上で引き延ばして膜にして」形成した「コーティング」は本件発明22の「第1の硬化性組成物層」に相当し、引用発明Bの「DEMMを基材上で引き延ばして膜にしてコーティングを形成」することは本件発明22の「基材の少なくとも一部にわたって第1の硬化性組成物層を塗布するステップ」に相当する。
引用発明Bの「顔料分散体を含むDEMMを基材に対して塗布することにより」形成した「コーティング」は本件発明22の「第2の硬化性組成物層」に相当し、引用文献Bの「顔料分散体を含むDEMMを基材に対して塗布することによりコーティングを形成すること」は本件発明22の「前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって第2の硬化性組成物層を塗布するステップ」に相当する。
引用発明Bの「基材を55又は82℃の高温条件下に置いて、コーティング層(複数)を硬化させる」ことは、本件発明22の「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層を硬化させるステップ」に相当する。
引用発明Bにおける「多層コーティング」は、「重合性薬剤」である「DEMM」を硬化させたものであるから、引用発明Bの「コーティング層(複数)」が「多層コーティングを形成する開始剤を1重量%フェノールホルムアルデヒド樹脂含有メタノールの溶液とし、重合性薬剤を99%純粋なジエチルメチレンマロネート(DEMM)とし、基材をスチールとして、開始剤を基材上で引き延ばして膜にし、DEMMを基材上で引き延ばして膜にしてコーティングを形成し、顔料分散体を含むDEMMを基材に対して塗布することによりコーティングを形成することにより、多層コーティングを重層して形成し、基材を55又は82℃の高温条件下に置いて」「硬化させ」たものであることと、本件発明22の「前記第1の硬化性組成物層および/又は前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み」、「硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、又はそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」こととは、第1の硬化性組成物層および/又は第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含む限りで一致する。
そうすると、本件発明22と引用発明Bとは、次の点で一致し、相違する。
[一致点2]
「硬化性組成物基材のための方法であって、
基材の少なくとも一部にわたって第1の硬化性組成物層を塗布するステップと、
前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって第2の硬化性組成物層を塗布するステップと、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層を硬化させるステップとを含み、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含む、
方法。」
[相違点2]
第1の硬化性組成物層および/又は第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含むことに関して、本件発明22は、「前記第1の硬化性組成物層および/又は前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み」、「硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、又はそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」のに対して、引用発明Bは、「コーティング層(複数)」が「多層コーティングを形成する開始剤を1重量%フェノールホルムアルデヒド樹脂含有メタノールの溶液とし、重合性薬剤を99%純粋なジエチルメチレンマロネート(DEMM)とし、基材をスチールとして、開始剤を基材上で引き延ばして膜にし、DEMMを基材上で引き延ばして膜にしてコーティングを形成し、顔料分散体を含むDEMMを基材に対して塗布することによりコーティングを形成することにより、多層コーティングを重層して形成し、基材を55又は82℃の高温条件下に置いて」「硬化させ」たものである点。
(イ)新規性の判断
相違点2について検討するに、相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明22は引用発明Bではない。
(ウ)進歩性の判断
相違点2についてさらに検討する。
引用文献1や提出された他の証拠には、相違点2に係る本件発明22の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、引用発明Bにおいてそのような構成とすることに動機付けがあるとはいえず、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明22は、引用発明Bに基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
エ 本件発明2~17、20~37について
本件発明2~17、20、21は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものであり、また、本件発明23~37は、本件発明22の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものである。
したがって、本件発明2~17、20、21は引用発明Aではなく、また、本件発明23~37は引用発明Bではない。
また、本件発明2~17、20、21は、引用発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明23~37は、引用発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)取消理由3(明確性)について
訂正事項2により、請求項5の記載と請求項1の記載が整合し、また、訂正事項5により請求項22の記載が整合したため、本件発明5~8、22~39は明確である。
第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 甲2に基づく新規性、進歩性に係る申立理由について
(1)申立人の主張
申立人は、請求項1~15、17、20~35、37に係る発明は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、請求項1~17、20~37に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の主張をしている。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
甲2には、特に【0202】、【0203】に記載された試験例でプライマーとしてDigiPrime 4431を用いたものに着目すると、次の発明が記載されている。
「プライマー:DigiPrime 4431を、基材上に#2.5ワイヤロッドを用いて流延し、0.25ミルのプライマーコートを得、次いで、サンプルを100℃の炉内で60秒間硬化させ、次いで、重合性組成物であるジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得、コーティングしたラミネート材。」(以下「甲2発明A」という。)
「プライマー:DigiPrime 4431を、基材上に#2.5ワイヤロッドを用いて竜延し、0.25ミルのプライマーコートを得、次いで、サンプルを100℃の炉内で60秒間硬化させ、次いで、重合性組成物であるジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得、コーティングしたラミネート材の製造方法。」(以下「甲2発明B」という。)
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明Aとを対比する。
甲2発明Aの「プライマー:DigiPrime 4431」は本件発明1の「第1の硬化性組成物層」に相当し、甲2発明Aの「プライマー:DigiPrime 4431を、基材上に#2.5ワイヤロッドを用いて流延」することは、本件発明1の「前記第1の硬化性組成物層が基材の少なくとも一部にわたって塗布され」ることに相当する。
甲2発明Aの「ジエチルメチレンマロネート(DEMM)」は本件発明1の「第2の硬化性組成物層」に相当し、甲2発明Aの「ジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延」することは、本件発明1の「前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布」することに相当する。
甲2発明Aにおける「重合性組成物であるジエチルメチレンマロネート(DEMM)」を「コーティング」したものは「次いで、硬化」(甲2の【0202】)されるものであるから、甲2発明Aの「重合性組成物であるジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得、コーティング」したことと、本件発明1の「前記第1の硬化性組成物層および/又は前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み」、「硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、又はそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」こととは、第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含む限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲2発明Aとは、次の点で一致し、相違する。
[一致点3]
「第1の硬化性組成物層および第2の硬化性組成物層を含む複数層硬化性組成物であって、
前記第1の硬化性組成物層が基材の少なくとも一部にわたって塗布され、そして 前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布され、
前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含む、第1の硬化性組成物層および第2の硬化性組成物層を含む複数層硬化性組成物。」
[相違点3]
第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含むことに関して、本件発明1は、「前記第1の硬化性組成物層および/又は前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み」、「硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、又はそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」のに対して、甲2発明Aは、「重合性組成物であるジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得、コーティング」したものである点。
イ 新規性の判断
相違点3について検討するに、相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明Aではない。
ウ 進歩性の判断
相違点3についてさらに検討する。
甲2や提出された他の証拠には、相違点3に係る本件発明1の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、甲2発明Aにおいてそのような構成とすることに動機付けがあるとはいえず、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、甲2発明Aに基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(4)本件発明22について
ア 対比
本件発明22と甲2発明Bとは、次の点で一致し、相違する。
[一致点4]
「硬化性組成物基材のための方法であって、
基材の少なくとも一部にわたって第1の硬化性組成物層を塗布するステップと、
前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって第2の硬化性組成物層を塗布するステップと、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層を硬化させるステップとを含み、
前記第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含む、
方法。」
[相違点4]
第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、重合反応生成物を含むことに関して、本件発明22は、「前記第1の硬化性組成物層および/又は前記第2の硬化性組成物層が、共に、独立にポリマー樹脂を含み」、「硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、又はそれらの組合せの重合反応生成物、および前記ポリマー樹脂とジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組み合わせとの付加反応生成物を含む」のに対して、甲2発明Bは、「重合性組成物であるジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得、コーティング」したものである点。
イ 新規性の判断
相違点4について検討するに、相違点4は実質的な相違点であるから、本件発明22は甲2発明Bではない。
ウ 進歩性の判断
相違点4についてさらに検討する。
甲2や提出された他の証拠には、相違点4に係る本件発明22の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、甲2発明Bにおいてそのような構成とすることに動機付けがあるとはいえず、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明22は、甲2発明Bに基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(5)本件発明2~17、20、21、23~37について
本件発明2~17、20、21は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものであり、また、本件発明23~37は、本件発明22の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものである。
したがって、本件発明2~15、17、20、21は甲2発明Aではなく、本件発明23~35、37は甲2発明Bではない。
また、本件発明2~17、20、21は、甲2発明Aに基いて、本件発明23~37は、甲2発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)小括
よって、申立人の甲2に基づく新規性、進歩性に係る申立理由は、いずれも理由がない
2 サポート要件、実施可能要件に係る申立理由について
(1)申立人の主張
申立人は、請求項1に係る発明は、膜の乾燥特性及び硬化特性が良好で、メチルエチルケトン(MEK)耐溶剤性にも優れたコーティング膜を形成することができる複数層硬化性組成物を提供することを課題としているが、請求項1に係る発明は、「活性化剤化合物」を必須としておらず、課題が解決できることを当業者が認識できず、また、第1の硬化性組成物層のみ所定成分を含む場合や、「ジアリールメチレンマロネート」を用いた場合にまで実施例と同様の効果が奏されることを認識することができないため、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1~4、9~22、30~39の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本件発明1~4、9~22、30~39が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨の主張をしている。
(2)サポート要件について
ア 本件発明が解決しようとする課題、及び課題を解決するための手段
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)、及び本件課題を解決するための手段に関して次の記載がある。
「【0001】
・・・一般に、複数層コーティングの各層は、例えば最終的な複数層コーティングを形成するために、異なる引火温度および/または焼付け温度などの様々な条件下で別個に脱水および/または硬化させられる。」
「【0063】
一部の例では、第1のコーティング層および/または第2のコーティング層は、裸の基材または予め塗布されたコーティング(例えば、プライマーコーティング)の少なくとも一部にわたって、例えばスプレー、静電気スプレー、浸漬、ローリング、ブラッシング、電着塗装等の塗布技術を使用して塗布することができる。第1のコーティング層および第2のコーティング層は、塗布されると、脱水および/または硬化することができる。前述の通り、第1のコーティング層および第2のコーティング層の硬化は、中間のフラッシュ、乾燥、もしくは脱水ステップと共に順次(すなわち、第1のコーティング層が硬化した後に、第2のコーティング層が塗布される)もしくは同時に実施することができ、またはそれらのステップなしに実施することができる。例えば、第1のコーティング層を塗布し、脱水することができ、第2のコーティング層を、脱水した第1のコーティング層にわたって塗布することができ、第1および第2のコーティング層の両方を、焼き付けるか、またはそうでなければ処理して、複数層系を硬化させる。コーティング層の特別な硬化条件は、層を形成する硬化性組成物の化学的配合に少なくとも部分的に基づく。・・・
【0064】
前述の通り、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、重合反応(例えば、アミンまたは他のアルカリ活性化剤化合物によって開始されるアニオン重合)を受けることができる。したがって、硬化した後、硬化した第1のコーティング層および/または硬化した第2のコーティング層の少なくとも1つは、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態の重合反応生成物を含むことができる。1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0065】
さらに、前述の通り、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物のための架橋剤/硬化剤として機能することができる。やはりいかなる理論にも拘泥するものではないが、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態におけるビニル基(複数可)が、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物におけるヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加機序を介して反応し、それによって安定な共有結合連結を形成することができると考えられる。したがって、硬化した後、硬化した第1のコーティング層および/または硬化した第2のコーティング層の少なくとも1つは、(1)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、またはポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せと、(2)1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態との重合反応生成物および付加反応生成物を含むことができる。1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、またはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。」
発明の詳細な説明の上記記載を参照すると、本件課題は、複数層を含む硬化性組成物を硬化することで複数層コーティングを形成できる硬化性組成物を提供すること、又はそのような硬化性組成物基材のための方法を提供することである。
発明の詳細な説明の上記記載を参照すると、硬化性組成物についての本件課題を解決するための手段は、第1の硬化性組成物層が基材の少なくとも一部にわたって塗布され、そして第2の硬化性組成物層が第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布され、第1の硬化性組成物層および/または第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組合せの重合反応生成物を含むことである。また、硬化性組成物基材のための方法についての本件課題を解決するための手段は、基材の少なくとも一部にわたって第1の硬化性組成物層を塗布するステップと、第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって第2の硬化性組成物層を塗布するステップと、第1の硬化性組成物層および/または第2の硬化性組成物層を硬化させるステップとを含み、第1の硬化性組成物層および/または第2の硬化性組成物層が、硬化した場合、ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの組合せの重合反応生成物を含むことである。
イ 判断
本件発明が解決しようとする課題を解決するための手段は、上記アで示したとおりであるところ、本件発明は、当該手段を発明特定事項としているから、本件課題を解決できることが当業者であれば認識することができる。
よって、本件発明1~4、9~22、30~39は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)実施可能要件について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題に関する背景技術(【0001】)、当該課題を解決するための手段(【0002】~【0004】)、本件発明を実施するための形態(【0005】~【0086】)、実施例(【0087】~【0131】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~4、9~22、30~39の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(4)小括
よって、申立人のサポート要件、実施可能要件に係る申立理由は、いずれも理由がない
3 明確性に係る申立理由について
申立人は、請求項14、15に係る発明は、いずれも「請求項13に記載の基材」であるが、請求項13に係る発明は「複数層硬化性組成物」であって記載が不整合であるため、請求項14、15に係る発明が明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない旨の主張をしている。
この点、訂正事項3、4により、請求項14、15の記載と請求項13の記載が整合し、本件発明14、15は明確となったため、申立人の明確性に係る上記申立理由は、解消した。
第6 結び
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~39に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~39に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700344