特許異議申立
2022-700242
エピクロロヒドリンゴム用架橋剤マスターバッチ
- 審判番号
- 2022-700242
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-028311
- 登録番号
- 6986993
- 請求日
- 2022年03月22日
- 審決日
- 2023年03月17日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】NOK株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【権利者】NOKエラストマー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】小島 早奈実
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 三上 晶子
- 審判官 大島 祥吾
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6986993号発明「エピクロロヒドリンゴム用架橋剤マスターバッチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6986993号の明細書および特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書および訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし2〕について訂正することを認める。
特許第6986993号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6986993号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成30年2月20日を出願日とする特許出願であって、令和3年12月2日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対して、令和4年3月22日に特許異議申立人 小島 早奈実(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年10月13日付けで取消理由が通知され、同年12月14日に特許権者 NOK株式会社及びNOKエラストマー株式会社より訂正の請求とともに意見書の提出がされ、令和5年1月30日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知書を特許異議申立人に対して行ったところ、同年3月2日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年12月14日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート50~67質量%およびエピクロロヒドリンゴム50~33質量%を含有するエピクロロヒドリンゴム用架橋剤マスターバッチ。」と記載されているのを「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート50~60質量%およびエピクロロヒドリンゴム50~40質量%を含有するエピクロロヒドリンゴム用架橋剤マスターバッチ。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落0013に「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート50~67質量%およびエピクロロヒドリンゴム50~33質量%」と記載されているのを「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート50~60質量%およびエピクロロヒドリンゴム50~40質量%」に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1の訂正について
訂正事項1による請求項1の訂正は、「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート」の含有量を「50~67質量%」から「50~60質量%」に限定し、「エピクロロヒドリンゴム」の含有量を「50~33質量%」から「50~40質量%」に限定するものである。
したがって、訂正事項1による請求項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項1による請求項2の訂正も同様である。
(2)明細書の訂正について
訂正事項2による明細書の訂正は、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合をとるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2による明細書の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、本件訂正は、いずれも、特許法第120条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし2は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし2による請求項1ないし2についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし2に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし2に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。)は、令和4年12月14日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート50~60質量%およびエピクロロヒドリンゴム50~40質量%を含有するエピクロロヒドリンゴム用架橋剤マスターバッチ。
【請求項2】
前記エピクロロヒドリンゴムが、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリンーアリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド共重合体およびエピクロロヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選択される少なくとも1つである請求項1に記載のエピクロロヒドリンゴム用架橋剤マスターバッチ。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年3月22日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)新規性・進歩性(取消理由1、同2として採用。)
本件特許の請求項1~2に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、下記甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当する。
(2)証拠方法
甲第1号証:ダイソネット XL-60Cの製品安全データシート
甲第2号証:ダイソネット XL-21Sの製品安全データシート
(以下、順に「甲1」のようにいう。)
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が、令和4年10月13日付けで特許権者に通知した取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(新規性)
本件特許の請求項1~2に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~2に係る発明は、同法第113号第2号に該当する。
2 取消理由2(進歩性)
本件出願の請求項1~2に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1の記載に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1~2に係る発明は、同法第113号第2号に該当する。
第6 取消理由についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、令和4年10月13日付けで通知した取消理由1ないし2には理由がないと判断する。
1 甲1の記載事項等
(1)甲1に記載された事項
甲1の1/5頁の1.、2.には、以下の記載がある。
[図:0001398243000001.jpg]
(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載からみて、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下の組成を有する、ゴム架橋用架橋剤である加硫剤マスターバッチ。
6-メチル-1,3-ジチオロ[4,5-b]キノキサリン-2-オン 53重量%
二酸化ケイ素 7重量%
エピクロルヒドリンーエチレンオキサイド共重合体 37重量%
ジオクチル錫ジステアレート 3重量%」
2 取消理由1ないし取消理由2(甲1を主引用例とする新規性及び進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「6-メチル-1,3-ジチオロ[4,5-b]キノキサリン-2-オン」は、甲1に記載のとおりCAS番号2439-01-2の化合物である。そして、本件発明1の「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート」は、本件明細書の[0021]に記載されるようにCAS番号2439-01-2を有する化合物であって、同一のCAS番号を有する物質は同一物質であることから、甲1発明の「6-メチル-1,3-ジチオロ[4,5-b]キノキサリン-2-オン」は、本件発明1の「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート」に相当する。そうすると、甲1発明の「6-メチル-1,3-ジチオロ[4,5-b]キノキサリン-2-オン 53重量%」は、本件発明1の「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート50~67質量%」を満たす。
甲1発明の「エピクロルヒドリンーエチレンオキサイド共重合体」は、本件発明1の「エピクロロヒドリンゴム」の一態様として本件発明2に記載される「エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド共重合体」に相当する。
甲1発明の「ゴム架橋用架橋剤である加硫剤マスターバッチ」は、本件発明1の「架橋剤マスターバッチ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート50~60質量%およびエピクロロヒドリンゴムを含有するエピクロロヒドリンゴム用架橋剤マスターバッチ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1>
「エピクロロヒドリンゴム」の含有量が、本件発明1では「50~40質量%」であるのに対し、甲1発明では「37重量%」である点。
<相違点2>
本件発明1が「エピクロロヒドリンゴム用」であるのに対し、甲1発明には「エピクロロヒドリンゴム用」であることが明示されていない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲1の記載及び他の証拠をみても、甲1発明が相違点1に係る本件発明1の特定事項を満たすものではないから、相違点1は実質的な相違点である。
また、甲1発明は、上市された製品安全データシートであることからみて、その成分組成の好適化がはかられたものであるといえるから、その成分組成を変更する動機がない。
さらに、甲1の記載及び他の証拠をみても、甲1発明のマスターバッチにおいて、エピクロロヒドリンゴムの含有量を50~40質量%とすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、エピクロロヒドリンゴムの含有量を50~40質量%とすることで、ロール加工性、分散性、生地裁断のし易さに優れるマスターバッチ組成物とするという、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
なお、特許異議申立人は、令和5年3月2日に提出された意見書の「(2-1)甲1発明について」の項において、甲1に接した当業者であれば、その組成に関する情報から、「甲1発明のマスターバッチは、キノキサリンの分散性、ロール加工性に非常に優れたマスターバッチであること」(上記意見書第3頁第5-9行)、及び、「ゴムであるEPRと粉体であるXLの関係において、ゴムであるEPRの含有比率が高まることにより、粉体であるキノキサリン(XL)の分散性、ロール加工性が改善される傾向があること」(上記意見書第4頁第11-14行)を理解できる旨を述べ、これらの事項に基づいて、本件発明1が甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を縷々主張する。しかしながら、甲1の記載事項をみても、上記事項が記載ないし示唆されているとまではいえないから、当該事項に基づく特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件発明2は、本件発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)まとめ
よって、取消理由1及び取消理由2には理由がない。
第7 むすび
したがって、令和4年10月13日付けで通知した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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