特許異議申立
2021-700164
ジルコニア組成物、ジルコニア仮焼体及びジルコニア焼結体、並びに歯科用製品
- 審判番号
- 2021-700164
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-566525
- 登録番号
- 6741592
- 請求日
- 2021年02月16日
- 審決日
- 2022年11月30日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】クラレノリタケデンタル株式会社
- 【権利者代理人】加藤 朝道
- 【異議申立人】中岡 勇士
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 正 知晃
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.121-YAA(C04B) / P1651.536-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6741592号発明「ジルコニア組成物、ジルコニア仮焼体及びジルコニア焼結体、並びに歯科用製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6741592号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~29〕について訂正することを認める。
特許第6741592号の請求項1、5、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29に係る特許を維持する。
特許第6741592号の請求項2~4、6、8、10、12、15、17、22~24に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6741592号の請求項1~29に係る特許についての出願は、平成27年(2015年)12月25日(優先権主張 2014年12月26日)を国際出願日とする出願であって、特願2016-566525号として審査され、令和2年7月29日に特許権の設定登録がされ、同年8月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、その全請求項(請求項1~29)に係る特許に対し、令和3年2月16日に特許異議申立人である中岡勇士により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議申立事件における以降の手続の経緯は、次のとおりである。
令和3年 5月25日付け:取消理由通知
令和3年 7月26日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 9月22日 :意見書の提出(特許異議申立人)
同年12月28日付け:訂正拒絶理由通知
令和4年 1月28日 :手続補正書、意見書及び上申書の提出
(特許権者)
同年 5月17日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 7月22日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年10月 4日 :意見書の提出(特許異議申立人)
なお、令和4年7月22日に訂正の請求がされたので、令和3年7月26日にされた先の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否についての当審の判断
令和4年7月22日に特許権者より請求された訂正(以下、「本件訂正」といい、この訂正の請求を「本件訂正請求」という。)は適法になされたものと判断する。
以下、その理由につき詳述する。
1 本件訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許請求の範囲を訂正することを求めるものであって、本件訂正前の一群の請求項〔1~29〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、特許法第120条の5第4項の規定に従うものであるところ、その訂正の内容(訂正事項)は、次のとおりである(下線は訂正箇所。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
前記部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有し、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域におけるイットリアの含有率と前記第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下であり、
白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下である、ジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
前記部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有し、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に3つ以上の他の領域をさらに有し、
前記他の領域の前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、前記第2の領域から前記第1の領域側に向かって段階的に減少傾向にあり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域以外の領域がなく、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下であり、
前記遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するものであり、
白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下であり、
前記他の領域のそれぞれのΔLは、前記第2の領域側にある領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域側にある領域のΔLよりも小さい、
ジルコニア焼結体。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11、25~29も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域のΔLよりも小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
前記部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有し、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域以外の領域がなく、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下であり、
前記遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するものであり、
白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下であり、
前記第3の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域のΔLよりも小さい、
ジルコニア焼結体。」
に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11、13、16、18、20、21、25~29も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記第4の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第3の領域のΔLよりも小さい、請求項5又は6に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
前記部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有し、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、及び前記第4の領域以外の領域がなく、
前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、及び前記第4の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり、
前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、及び前記第4の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下であり、
前記遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するものであり、
白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下であり、
前記第3の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域のΔLよりも小さく、
前記第4の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第3の領域のΔLよりも小さい、
ジルコニア焼結体。」
に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、11、14、16、19~21、25~29も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、
「各領域の積層方向に厚さにおいて、
前記第1の領域の厚さは全体の30%~40%であり、
前記第2の領域の厚さは全体の30%~40%であり、
前記第3の領域の厚さは全体の10%~20%であり、
前記第4の領域の厚さは全体の10%~20%である、請求項7又は8に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「各領域の積層方向に厚さにおいて、
前記第1の領域の厚さは全体の30%~40%であり、
前記第2の領域の厚さは全体の30%~40%であり、
前記第3の領域の厚さは全体の10%~20%であり、
前記第4の領域の厚さは全体の10%~20%である、請求項7に記載のジルコニア焼結体。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11、25~29も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11に、
「前記部分安定化ジルコニアは前記安定化剤として5.3mol%~6.2mol%のイットリアを含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記部分安定化ジルコニアは前記安定化剤として5.3mol%~6.2mol%のイットリアを含有する、請求項1、5、7、9のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。」
に訂正する(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項25~29も同様に訂正する)。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13に、
「前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項12に記載の組成物。」
と記載されているのを、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、組成物であって、
請求項5記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、組成物。」
に訂正する(請求項13の記載を直接的に引用する請求項16も同様に訂正する)。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項14に、
「前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項13に記載の組成物。」
と記載されているのを、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、組成物であって、
請求項7記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、組成物。」
に訂正する(請求項14の記載を直接的に引用する請求項16も同様に訂正する)。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項16に、
「第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、
前記第1の領域は前記第1面側にあり、
前記第2の領域は前記第2面側にある、請求項12~15のいずれか一項に記載の組成物。」
と記載されているのを、
「第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、
前記第1の領域は前記第2の領域よりも前記第1面側にあり、
前記第2の領域は前記第1の領域よりも前記第2面側にある、請求項13又は14に記載の組成物。」
に訂正する。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項18に、
「前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項17に記載の仮焼体。」
と記載されているのを、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、仮焼体であって、
請求項5記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、仮焼体。」
に訂正する(請求項18の記載を直接的に引用する請求項20、21も同様に訂正する)。
(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項19に、
「前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項18に記載の仮焼体。」
と記載されているのを、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、仮焼体であって、
請求項7記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、仮焼体。」
に訂正する(請求項19の記載を直接的に引用する請求項20、21も同様に訂正する)。
(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項20に、
「各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である、請求項17~19のいずれか一項に記載の仮焼体。」
と記載されているのを、
「各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である、請求項18又は19に記載の仮焼体。」
に訂正する(請求項20の記載を直接的に引用する請求項21も同様に訂正する)。
(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項21に、
「第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、
前記第1の領域は前記第1面側にあり、
前記第2の領域は前記第2面側にある、請求項17~20のいずれか一項に記載の仮焼体。」
と記載されているのを、
「第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、
前記第1の領域は前記第2の領域よりも前記第1面側にあり、
前記第2の領域は前記第1の領域よりも前記第2面側にある、請求項18~20のいずれか一項に記載の仮焼体。」
に訂正する。
(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項22を削除する。
(23)訂正事項23
特許請求の範囲の請求項23を削除する。
(24)訂正事項24
特許請求の範囲の請求項24を削除する。
(25)訂正事項25
特許請求の範囲の請求項25に、
「請求項1~11のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を有する、歯科用製品。」
と記載されているのを、
「請求項1、5、7、9、11のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を有する、歯科用製品。」
に訂正する(請求項25の記載を直接的又は間接的に引用する請求項26~29も同様に訂正する)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に対して、
(ア)「前記第1の領域と前記第2の領域との間に3つ以上の他の領域をさらに有し」、
(イ)「前記他の領域の前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、前記第2の領域から前記第1の領域側に向かって段階的に減少傾向にあり」、
(ウ)「前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域以外の領域がなく」、
(エ)「前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり」、
(オ)「前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下であり」、
(カ)「前記遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つであり」、
(キ)「前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するものであり」、
(ク)「前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに」、
(ケ)「前記他の領域のそれぞれのΔLは、前記第2の領域側にある領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域側にある領域のΔLよりも小さい」
との事項を追加するものである。
イ 上記(ア)~(ケ)の事項は、特許請求の範囲の【請求項10】、【請求項15】、本件明細書の段落【0010】、【0023】~【0026】、【0049】、【0050】、【0056】、【0062】、【0066】、【0067】、【0107】及び【0108】に記載されており、具体的には、
(ア)~(ウ)は、本件明細書における段落【0067】の「図2においては、ジルコニア焼結体200が4つの領域(層)を有する形態を示したが、領域の数は4つに限定されることはない。ジルコニア焼結体は、3つの領域を有してもよいし、5つ以上の領域を有してもよい。」との記載から、第1の領域と第2の領域との間に3つ以上の他の領域を有することは明らかであることや、段落【0066】の「各領域は、遮光材を含有することができる。各領域における遮光材の含有率は、第2の領域102から第1の領域101に向かって段階的に減少傾向にあると好ましい。」との記載などに基づいて、焼結体の領域を具体的に特定(限定)するものである。
(エ)及び(オ)は、旧請求項15の「各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である」、段落【0010】の「本発明の第1視点によれば、安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体が提供される。ジルコニア焼結体は遮光材を含有する。ジルコニア焼結体は、第1の領域と、第1の領域よりも遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有する。第1の領域におけるイットリアの含有率と第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下である。」との記載などに基づいて、焼結体におけるイットリアの含有率を具体的に特定(限定)するものである。
(カ)及び(キ)は、請求項1において「遮光材」は「ジルコニア焼結体の透明性を低下させる」ものであるから、遮光材として用いられる着色剤(顔料)は、「部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するもの」であることは明らかであることや、旧請求項10の「遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つである」との記載などに基づいて、焼結体における遮光材を具体的に特定(限定)するものである。
(ク)は、本件明細書における段落【0049】の「背景(下敷き)となる黒色及び白色は、塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用することができる。」、段落【0107】の「焼結体表面を研磨加工し、表面を鏡面状(#2000以上)に仕上げ、厚さ1.2mmの試料を作製した。そして、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて各試料の色度を測定した。」との記載などに基づいて、測定方法を特定することで、ジルコニア焼結体の透明性(透光性)を具体的に特定(限定)するものである。
(ケ)は、本件明細書における段落【0062】の「各領域のΔLは、第1の領域101から第2の領域102に向かって順に小さくなると好ましい。これにより、天然歯と同様の透明性変化を再現することができる。」との記載などに基づいて、焼結体の領域を具体的に特定(限定)するものである。
ウ 以上のとおりであるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2~4、6、8、10、12、15、17、22~24について
訂正事項2~4、6、8、10、12、15、17、22~24は、訂正前の請求項2~4、6、8、10、12、15、17、22~24(以下、「旧請求項2」などという。)をそれぞれ削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項5について
訂正事項5は、旧請求項5において旧請求項1を引用する部分のみを書き下して独立形式に改めた上で、焼結体の領域、イットリア含有量、遮光材、着色剤及びΔLをより具体的に特定し、更に明確化をするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項5は、特許請求の範囲の【請求項6】、【請求項10】、【請求項15】、明細書の段落【0010】、【0023】、【0024】、【0030】、【0034】、【0049】、【0050】、【0056】、【0107】及び【0108】に記載されているし、「前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色する」との記載に関しても、「着色剤」の機能に鑑みると、部分安定化ジルコニアとは異なる色に着色するものであることは自明であるから、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものである。
(4)訂正事項7について
訂正事項7は、旧請求項7において、旧請求項6を引用し、旧請求項6が旧請求項5を引用し、旧請求項5が旧請求項1を引用する部分のみを書き下して独立形式に改めた上で、焼結体の領域、イットリア含有量、遮光材、着色剤及びΔLをより具体的に特定し、更に明確化をするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項7は、特許請求の範囲の【請求項8】、【請求項10】、【請求項15】、明細書の段落【0010】、【0023】~【0026】、【0030】、【0031】、【0034】、【0035】、【0049】、【0050】、【0056】、【0107】及び【0108】に記載されているし、「前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色する」との記載に関しても、「着色剤」の機能に鑑みると、部分安定化ジルコニアとは異なる色に着色するものであることは自明であるから、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものである。
(5)訂正事項9、11、20、25について
訂正事項9、11、20、25は、それぞれ、旧請求項9、11、15、20、25における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項13について
訂正事項13は、旧請求項13において旧請求項12を引用する部分を書き下して、イットリア含有量、遮光材、着色剤及び用途を具体的に特定するとともに、訂正事項1~5に係る訂正に伴い、引用請求項を変更するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項14について
訂正事項14は、旧請求項14において旧請求項13を引用し、旧請求項13が旧請求項12を引用する部分を書き下して、イットリア含有量、遮光材、着色剤及び用途を具体的に特定するとともに、訂正事項1~4、7に係る訂正に伴い、引用請求項を変更するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項16、21について
訂正事項16、21は、それぞれ、旧請求項16、21において旧請求項16、21における選択的引用請求項の一部を削除するとともに、第1の領域と第2の領域の位置関係を明確化して限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、明細書の段落【0082】には、「成形組成物及び仮焼体は、第1面、及び第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有することができる。この場合、第1の領域は第1面側に配することができる。第2の領域は第2面側に配することができる。」と記載されているから、訂正事項16、21は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
(9)訂正事項18について
訂正事項18は、旧請求項18において旧請求項17を引用する部分を書き下して、イットリア含有量、遮光材、着色剤及び用途を具体的に特定するとともに、訂正事項1~5に係る訂正に伴い、引用請求項を変更するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものはない。
(10)訂正事項19について
訂正事項19は、旧請求項19において旧請求項18を引用し、旧請求項18が旧請求項17を引用する部分を書き下して、イットリア含有量、遮光材、着色剤及び用途を具体的に特定するとともに、訂正事項1~4、7に係る訂正に伴い、引用請求項を変更するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(11)独立特許要件について
本件特許の請求項1~29の全ての請求項について特許異議の申立てがされたものであるから、訂正後の請求項1、5、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29に係る発明について、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件についての規定は適用されない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~29〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正は適法になされたものと認められるので、本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
前記部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有し、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に3つ以上の他の領域をさらに有し、
前記他の領域の前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、前記第2の領域から前記第1の領域側に向かって段階的に減少傾向にあり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域以外の領域がなく、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下であり、
前記遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するものであり、
白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下であり、
前記他の領域のそれぞれのΔLは、前記第2の領域側にある領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域側にある領域のΔLよりも小さい、
ジルコニア焼結体。
【請求項5】
安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
前記部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有し、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域以外の領域がなく、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下であり、
前記遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するものであり、
白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下であり、
前記第3の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域のΔLよりも小さい、
ジルコニア焼結体。
【請求項7】
安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
前記部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有し、
第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、及び前記第4の領域以外の領域がなく、
前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、及び前記第4の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり、
前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、及び前記第4の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下であり、
前記遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するものであり、
白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下であり、
前記第3の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域のΔLよりも小さく、
前記第4の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第3の領域のΔLよりも小さい、
ジルコニア焼結体。
【請求項9】
各領域の積層方向に厚さにおいて、
前記第1の領域の厚さは全体の30%~40%であり、
前記第2の領域の厚さは全体の30%~40%であり、
前記第3の領域の厚さは全体の10%~20%であり、
前記第4の領域の厚さは全体の10%~20%である、請求項7に記載のジルコニア焼結体。
【請求項11】
前記部分安定化ジルコニアは前記安定化剤として5.3mol%~6.2mol%のイットリアを含有する、請求項1、5、7、9のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
【請求項13】
安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、組成物であって、
請求項5記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、組成物。
【請求項14】
安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、組成物であって、
請求項7記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、組成物。
【請求項16】
第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、
前記第1の領域は前記第2の領域よりも前記第1面側にあり、
前記第2の領域は前記第1の領域よりも前記第2面側にある、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項18】
安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、仮焼体であって、
請求項5記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、仮焼体。
【請求項19】
安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、
ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材と、を含有し、
第1の領域と、
前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、
前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、
前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、
前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、
前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、仮焼体であって、
請求項7記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、仮焼体。
【請求項20】
各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である、請求項18又は19に記載の仮焼体。
【請求項21】
第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、
前記第1の領域は前記第2の領域よりも前記第1面側にあり、
前記第2の領域は前記第1の領域よりも前記第2面側にある、請求項18~20のいずれか一項に記載の仮焼体。
【請求項25】
請求項1、5、7、9、11のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を有する、歯科用製品。
【請求項26】
歯冠形状を有する、請求項25に記載の歯科用製品。
【請求項27】
前記第1の領域は歯冠形状の切端側に配され、
前記第2の領域は歯冠形状の歯頚部側に配される、請求項26に記載の歯科用製品。
【請求項28】
前記第2の領域は、少なくとも支台歯の側面の一部を覆う、請求項27に記載の歯科用製品。
【請求項29】
歯科用補綴物、歯列矯正用製品、又は歯科インプラント用製品である、請求項25~28のいずれか一項に記載の歯科用製品。」
第4 取消理由(決定の予告)について
1 取消理由(決定の予告)の概要
令和4年5月17日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)は、取消理由1(サポート要件)及び取消理由2(明確性要件)に関するものであり、要するに、令和3年7月26日にされた先の訂正の請求による訂正後の特許請求の範囲の記載につき、以下の点を指摘したものである。
(1)取消理由1(サポート要件)
その請求項5に係る発明では、「前記第1の領域におけるイットリアの含有率と前記第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下であり」と、第1の領域と第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下であると特定されているが、「第1の領域」と「第2の領域」との間に「第3の領域」をさらに有するものであるところ、「第1の領域」及び「第2の領域」と「第3の領域」とのイットリアの含有率の差が1mol%を超えるような態様を含み得るため、そのような態様は、本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、当業者が、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるとはいえない。
そして、請求項7、9、11、13~16、18~21、25~30に係る発明についても事情は同じである。
(2)取消理由2(明確性要件)
その請求項5に係る発明では、色度測定について、第1の領域、第2の領域などの各領域を有する「前記焼結体の表面を♯2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの試料を・・・測定したとき」と特定されているが、発明の詳細な説明の段落【0106】~【0107】には、4層構成のジルコニア焼結体において、4層を構成する各領域に対応したジルコニア焼結体の試料をそれぞれ作製し、当該各試料それぞれの色度測定することが記載されているから、色度測定の対象について、請求項5に係る発明の「前記焼結体」は、本件明細書の段落【0106】~【0107】の記載との関係において不合理が生じさせるものであり、その結果、請求項5に係る発明における「L*値」、「ΔL」の値は不明確なものとなっている。
そして、請求項7、9、11、13~16、18~21、25~30に係る発明についても事情は同じである。
2 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
(1)上記第3に記載した、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に照らし、改めて、上記取消理由(決定の予告)の適否について検討すると、本件発明5では、「前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下」であり、ジルコニア焼結体におけるイットリアの含有率のばらつきが十分に特定されたものとなっているため、上記1(1)の事情は認められない。
また、本件発明5では、「前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料」と特定されており、本件明細書の段落【0106】~【0107】の記載と整合するものであるから、本件発明5の「L*値」、「ΔL」の値は明確であり、上記1(2)の事情は認められない。
そして、上記1(1)及び1(2)の内容について、本件発明1、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29にも同じことがいえるから、本件訂正により取消理由(決定の予告)は解消したといえる。
(2)この点について、特許異議申立人は、令和4年10月4日提出の意見書において、本件発明の「前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記第3の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下」との記載は、各領域「内」でのばらつきを特定しているにすぎず、各領域「間」のばらつきを特定するものではないから、取消理由1(サポート要件)を解消するものではない旨主張する。
しかしながら、本件明細書における段落【0048】の「ジルコニア焼結体において、安定化剤は均一に分布していると好ましい。すなわち、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率は一定であると好ましい。例えば、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率を段階的に又は部分的に変化させないと好ましい。安定化剤の含有率が部分的に異なると、焼結時の収縮率が異なってしまい、ジルコニア焼結体に欠陥が生じるからである。安定化剤のばらつきは、1mol%以下であると好ましく、0.5mol%以下であるとより好ましい。」、段落【0108】の「各領域の試料に用いた部分安定化ジルコニアは、イットリアが均一に混合された同一の製品を使用しており、各領域の試料間においてイットリアの含有率の有意なばらつきは検出されないと考えられる。」との記載などから、本件発明における「イットリアの含有率のばらつき」は、各領域「間」のばらつきを特定するものであることは明らかであり、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(3)また、特許異議申立人は、同意見書において、本件発明の「前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料」との記載について、「前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料」は、「ジルコニア焼結体の各領域を形成するために使用する原料粉末(原料組成物)を一層分ごと別々に焼結して得られる1層の焼結体」であると解釈することもできるし、「原料粉末を複数層に積層した積層体を焼結することで得られる複数層のジルコニア焼結体を各層ごと(各領域ごと)に切断して得られる試料」であると解釈することもできるから、本件発明の「前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料」が意味するものは明確でない旨主張する。
しかしながら、上記(1)で説明したように、「前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料」との特定事項は、本件明細書の段落【0106】~【0107】の記載と整合するものであって、段落【0106】に「実施例1~25においては、図2に示す第2実施形態のような4層構成のジルコニア焼結体における各領域に対応するジルコニア焼結体の試料を作製し、各試料について色度を測定した。」と記載されるように、「前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料」は、各領域に対応する組成の原料をそれぞれ別々に焼結したものであることは明らかであるから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
3 小括
上記2のとおり、請求項1、5、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、同法第113条第4号には該当しないため、上記取消理由1(サポート要件)、及び取消理由2(明確性要件)を理由に、当該特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 標記特許異議申立理由の概要
取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、次のとおりである。
(1)設定登録時の請求項1~29の記載及び明細書の発明の詳細な説明の記載に関する実施可能要件違反(特許異議申立書1~3、28~32頁の(ア-1)、(ア-2))、サポート要件違反(特許異議申立書3~7、32~39頁の(イ-1)~(イ-6))及び明確性要件違反(特許異議申立書7~13、39~49頁の(ウ-1)~(ウ-13))
(2)甲第3号証を主たる証拠とする設定登録時の請求項1~29に係る発明の進歩性欠如(特許異議申立書13~21、49~83頁)
2 記載不備についての当審の判断
本件訂正を踏まえて特許異議申立人が指摘する記載不備について以下に検討する。
(1)実施可能要件違反について
ア 項目(ア-1)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、ジルコニア焼結体の一部としての領域である「第1の領域」や「第2の領域」におけるΔLを特定する規定を有するものであるが、本件明細書に記載された実施例をみると、「第1の領域」に対応する試料と、「第2の領域」に対応する試料を別々に作製してΔLを取得しているため、ジルコニア焼結体の一部としての領域である「第1の領域」や「第2の領域」におけるΔLの求め方などが不明であるため、実施可能要件に違反するものである旨主張する(特許異議申立書1~2、28~30頁)。
しかしながら、上記第4の「2 取消理由(決定の予告)についての当審の判断」のなかで説明したように、本件訂正により、本件発明における「ΔL」は、実施例と同じ取得方法であることが明確になったので、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
イ 項目(ア-2)について
(ア)特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明は、「欠陥が生じないジルコニア焼結体を提供する」ことを課題(目的)とする発明であると解されるが、本件明細書に記載された実施例では、一層毎に別々にジルコニア焼結体を製造しているだけであり、一体化したジルコニア焼結体を製造していないから、課題を解決できているといえず、実施可能要件に違反するものである旨、及び本件明細書の各実施例では、遮光材をどのような条件(種類、含有量など) にすれば、課題が解決できるか言及されておらず、実施例以外の形態を、当業者が実施するためには、過度な試行錯誤が要求されるから、実施可能要件に違反するものである旨主張する(特許異議申立書2~3、30~32頁)。
(イ)この点について、本件明細書には「安定化剤の含有率を部分的に変化させて透明性が変化するジルコニア焼結体を作製しても、収縮率が部分的に異なってしまうために、ジルコニア焼結体には欠陥が生じてしまう。このため、安定化剤の含有率を変化させることによって歯科用補綴物201に用いるジルコニア焼結体を作製することはできない」(段落【0008】)ことから、「天然歯の透明性変化に似せた透明性を変化させても欠陥の発生を抑制したジルコニア焼結体を得る」(段落【0014】)ことを目的とするものであって、実施例には「第1の領域に対応する試料から第2の領域に対応する試料へと遮光材の添加量を増加させた。その結果、・・・(中略)・・・透明性が段階的に変化するジルコニア焼結体を作製でき・・・(中略)・・・各層の安定化剤の含有率は均等であるので、各層における焼結時の収縮率を同等にすることができる。これにより、焼結による不具合の発生を抑制することができる。」(段落【0109】)と記載されている。
(ウ)上記(イ)での記載や本件明細書の実施例を参考にすれば、当業者であれば、各領域に対応する試料での安定化剤の含有量は均等一体化するなどしてジルコニア焼結体を製造すれば、安定化剤の含有率に起因する各領域における収縮率の差を低減でき、焼結による不具合の発生を抑制できると認識できる。
また、本件明細書の実施例では、各領域に対応する試料での遮光材の含有量は多くとも1%程度と相対的に少ない量であることや、遮光材は安定化剤のようにジルコニア相に固溶して焼結体の収縮率に影響を及ぼすものでないことから、技術常識を踏まえると、遮光材の条件(種類、含有量など)は不具合の発生に影響があるとはいえない。
さらに、特許異議申立書には、本件明細書の記載にしたがって、安定化剤や遮光材の含有量を調整して一体化したジルコニア焼結体を製造しても、本件発明のジルコニア焼結体が作製できないといった具体的な証拠や理由は示されていない。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(2)サポート要件違反について
ア 項目(イ-1)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、ジルコニア焼結体における安定化剤の濃度勾配によって、ジルコニア焼結体に欠陥が生じることから、本件明細書の実施例では、「第1の領域」に対応する試料と「第2の領域」に対応する試料との間で、遮光材の含有量に差が生じている実施例について、各試料を一体化してジルコニア焼結体を製造したときには、欠陥が生じないとみなせる根拠も蓋然性もない旨、及び特定の遮光材を所定量添加する実施例から、設定登録時の請求項1~29に係る発明の範囲まで、本件明細書に記載された内容を拡張ないし一般化できない旨主張する(特許異議申立書3~4、32~34頁)。
しかしながら、上記(1)の「イ 項目(ア-2)について」で示したように、本件明細書の記載を参酌すれば、遮光材の条件(種類、含有量など)によって不具合が発生するとはいえないこと、各試料を一体化してジルコニア焼結体を製造したとしても、欠陥が生じるとはいえないこと、及び特許異議申立書には、この点に関する具体的な証拠や理由は示されていないことから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
イ 項目(イ-2)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、イットリアの含有量が実施例よりも多い場合に、第2の領域に対応する試料のΔLを「4以上11以下」とするために、さらに多くの遮光材が必要であり、ジルコニア焼結体において欠陥が生じやすくなる蓋然性はより高くなることは明らかであるから、実施例とは異なる量のイットリアを含む範囲まで、本件明細書に記載された内容を拡張ないし一般化できるといえない旨主張する(特許異議申立書4、34~35頁)。
しかしながら、上記(1)の「イ 項目(ア-2)について」の(ウ)で示したように、遮光材の条件(種類、含有量など)によって不具合が発生するとはいえないことや、特許異議申立書には、この点に関する具体的な証拠や理由は示されていないことから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
ウ 項目(イ-3)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、第1の領域と第2の領域におけるイットリアの含有率に差を有し、その差が1mol%以下であれば、ジルコニア焼結体に欠陥が生じないということが出願時の技術常識であるといった事情もないことから、第1の領域と第2の領域の間にイットリアの含有率に差がある設定登録時の請求項1~29に係る発明の範囲まで、本件明細書に記載された内容を拡張ないし一般化できるといえない旨主張する(特許異議申立書5、35~36頁)。
この点について、本件明細書の段落【0048】には「ジルコニア焼結体において、安定化剤は均一に分布していると好ましい。すなわち、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率は一定であると好ましい。例えば、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率を段階的に又は部分的に変化させないと好ましい。安定化剤の含有率が部分的に異なると、焼結時の収縮率が異なってしまい、ジルコニア焼結体に欠陥が生じるからである。安定化剤のばらつきは、1mol%以下であると好ましく、0.5mol%以下であるとより好ましい。」と示されていること、特許異議申立書には、各領域におけるイットリアの含有率に1mol%以下の差があった場合に、欠陥が発生するという具体的な証拠や理由は示されていないことから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
エ 項目(イ-4)について
(ア)特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、本件明細書には、「第1の領域」と「第2の領域」を含む複数の領域を『積層』する形態のみが記載されている(本件明細書の【図1】~【図3】)から、「第1の領域」と「第2の領域」を含む複数の領域を『積層』する形態以外の形態を含む設定登録時の請求項1~29に係る発明は、課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えて特許を請求するものである旨、及び設定登録時の請求項1~29に係る発明では、「第1の領域」と「第2の領域」の配置に加え、形、厚みや大きさ、領域間の関係も特定されていないから、設定登録時の請求項1~29に係る発明は、「天然歯の透明性変化に似せた透明性変化を有するジルコニア焼結体を提供する」との課題を解決できるとはいえない旨主張する(特許異議申立書5~6、36~38頁)。
これらの点について、本件訂正により、本件発明は、「第1の領域」、「第2の領域」、及びその他の領域において、「第2の領域」から「第1の領域」側に向かって「ΔL」が段階的に減少することが特定されるものとなったので、形態などが特定されていないとしても、当業者であれば「天然歯の透明性変化に似せた透明性変化を有するジルコニア焼結体を提供する」との課題は解決できると認識できる。
(イ)一方、特許異議申立人は、令和3年9月22日提出の先の意見書(以下、「先の申立人意見書」という。)において、「第1の領域」、「第2の領域」、及びその他の領域において、「第2の領域」から「第1の領域」側に向かって「ΔL」が段階的に減少することが特定」されていても、ΔLが一方向に向けて段階的に高くならない(又は低くならない)という配置をとる場合もあり、この場合、「天然歯の透明性変化に似せた透明性変化を有するジルコニア焼結体を提供する」という課題は解決できない旨主張する。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおり、本件訂正により、本件発明の課題を解決できるものといえ、また、本件明細書の記載を参酌するに、当業者であれば、本件発明の課題を解決するための適切な領域配置を設定できることは明らかであって、特許異議申立人が主張するような極端な領域の配置が、本件発明の範囲に含まれるとの事情は認められない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
オ 項目(イ-5)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、ジルコニア焼結体が「第1の領域」と「第2の領域」を有していることを特定しているが、これらの領域以外のその他の領域については何ら特定されていないから、「天然歯の透明性変化に似せた透明性変化を有するジルコニア焼結体を提供する」との課題を解決できるとはいえない旨主張する(特許異議申立書6、38~39頁)。
この点について、本件訂正により、本件発明において「第1の領域」と「第2の領域」以外の領域は特定されるものとなったから、上記主張は採用できない。
カ 項目(イ-6)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項17~21に係る発明の仮焼体及び同請求項22に係る発明の仮焼体の製造方法について、本件明細書の実施例では1550℃で焼成を行っており、仮焼体を製造しておらず、また、常圧下800℃~1200℃で焼成することで仮焼体が得られることが、本件明細書の記載から明らかでないから、設定登録時の請求項17~21及び22に係る発明は、本件明細書に記載された内容を拡張ないし一般化できない旨主張する(特許異議申立書6~7、39頁)。
ここで、設定登録時の請求項17及び22に係る発明は、本件訂正により、削除されたものである。
また、本件明細書の段落【0086】には、「本発明の組成物を例えば常圧下で800℃~1200℃で焼成することにより、本開示の仮焼体となるものである。」と記載されていることや、本焼成より低い温度で仮焼を行い、仮焼体を製造することは当該技術分野における常とう手段であることから、実施例で仮焼体を製造することが示されていないとしても、当業者であれば、本件明細書の記載に基づいて、仮焼体を製造できるといえる。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(3)明確性要件違反について
ア 項目(ウ-1)について
(ア)特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、「第1の領域」と「第2の領域」の間でイットリアの含有率に差がある場合に、「4mol%~7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニア」との記載におけるイットリアの含有量が、焼結体の全領域におけるイットリアの含有率の平均値を示す値を意味しているのか、それとも、各領域における部分安定化ジルコニア焼結体のイットリアの含有率の値を意味しているのかを理解できないから、設定登録時の請求項1~29に係る発明は、不明確である旨主張する(特許異議申立書7、39~40頁)。
この点について、本件訂正により、本件発明では、各領域における部分安定化ジルコニア焼結体のイットリアの含有率が4mol%~7mol%であることが特定されるものとなったから、各領域におけるイットリアの含有率は明確であるといえる。
(イ)一方、特許異議申立人は、先の申立人意見書において、イットリアの分布が偏っている場合は、「第1の領域」、「第2の領域」、及び「その他の領域」の区画(配置)の仕方によって、イットリアの含有率は、高くもなり低くもなり、一義的に定まるといえないから、イットリアの含有率は明確でない旨主張する。
しかしながら、本件明細書の記載及び当該技術分野の技術常識を踏まえると、焼結体を製造する際に原料粉末は均一に混合されるものであるから、特許異議申立人が先の申立人意見書で主張するような、焼結体内でイットリアの分布が偏るような状況は想定できず、本件発明の範囲を不明確にするとの事情は認められない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
イ 項目(ウ-2)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明では、「部分安定化ジルコニアの焼結体であって、・・・(中略)・・・ジルコニア焼結体」であることが特定されており、「部分安定化ジルコニアの焼結体」に係る発明であるのか、「ジルコニア焼結体」に係る発明であるのかが不明確である旨主張する(特許異議申立書7~8、40~41頁)。
しかしながら、特許請求の範囲で「部分安定化ジルコニアの焼結体であって、・・・」と特定されていること、本件明細書の実施例などにおける記載を参酌しても、本件発明のジルコニア焼結体は、部分安定化ジルコニアの焼結体であることは明らかであることから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
ウ 項目(ウ-3)について
(ア)特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、ジルコニア焼結体は「部分安定化ジルコニアの焼結体の透明性を低下させる遮光材」を含有することが特定されているが、「透明性を低下させる」及び「遮光」との表現は、機能的な表現であり、ジルコニア焼結体の透明性の低下を目的としない物質までもが遮光材に該当する可能性が高く、どのような物質であれば当該「遮光材」該当するか不明である旨主張する(特許異議申立書8、41~42頁)。
この点について、本件訂正により、本件発明では、「遮光材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つ」、又は「遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つ」のいずれかに特定されるものとなったから、「遮光材」は明確であるといえる。
(イ)一方、特許異議申立人は、先の申立人意見書において、「遮光材」のうち「蛍光剤」は機能的な表現で表される物質であるから、明確でない旨主張する。
しかしながら、「蛍光剤」は一般的に用いられる用語であって、「蛍光剤」に含まれるものを当業者が把握できないとの事情も認められない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
エ 項目(ウ-4)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、「△L」は、隣接物等の色調の影響が反映された△Lであるが、本件明細書の記載を考慮しても、隣接物等の色調の影響が反映された「△L」の求め方を把握することができないから、設定登録時の請求項1~29に係る発明での「△L」が意味するものを把握できず、不明確である旨主張する(特許異議申立書8、42頁)。
しかしながら、上記第4の「2 取消理由(決定の予告)についての当審の判断」のなかで説明したように、本件訂正により、本件発明における「ΔL」は「前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料」を測定することにより求めることが明らかとなっており、隣接物等の色調の影響を受けないから、上記主張は採用できない。
オ 項目(ウ-5)について
(ア)特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、本件明細書には、L*値を取得するための色度測定機において、どの測定方法を選択し、どの測定モードの結果を選択したのか一切記載されていないし、当該発明におけるL*を測定する場合の、色度測定機の測定方法及び測定モードの選択が当業者の技術常識であるとも認められず、仮に、L*値を取得するための色度測定機において、どのような測定方法や測定モードを選択すべきか理解することができたとしても、解析ソフトの設定条件について何ら記載されていないから、第1のL*値や第2のL*値は一義的に求まる値とはいえず、明確でない旨主張する(特許異議申立書9~10、42~44頁)。
この点について、本件訂正により、本件発明では、色度測定器、解析ソフト及び試料が特定され、また、令和3年7月26日提出の特許権者による意見書(以下、「特許権者意見書1」という。)を参酌すると、色度測定機の測定方法及び測定モードや解析ソフトの設定条件は、当業者が通常採用するであろう標準的なものといえる。
(イ)一方、特許異議申立人は、先の申立人意見書において、色度測定機の測定モードや解析ソフトの設定条件は、本件明細書に開示されたものでないから、本件明細書に裏付けられたものとはいえず、明確でない旨主張する。
しかしながら、上記(ア)で示したように、本件訂正後の本件発明では、色度測定器、解析ソフト及び試料が特定されており、本件明細書には実施例としてこれらを用いて測定したL*値が示されているから、本件明細書の記載を参酌して、同様の測定を行えば、当業者であれば、色度測定機の測定モードや解析ソフトの設定条件として、どのような測定モードや設定条件で測定されたものかは把握できるといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、本件明細書の記載を参酌すれば、当業者であれば色度測定機の測定方法及び測定モードや解析ソフトの設定条件を把握できるから、本件発明のL*値は明確であるといえ、特許異議申立人の主張は採用できない。
カ 項目(ウ-6)について
(ア)特許異議申立人は、設定登録時の請求項1~29に係る発明について、「第1のL*値」は、「白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値」であり、「第2のL*値」は、「黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値」であるが、「白色」及び「黒色」は様々な色度の態様を含む概念であること、本件明細書の「隠ぺい率測定用紙」(本件明細書の【0049】)は、どのようなメーカーのどのような型番の隠ぺい率測定用紙を用いるのか記載されていないこと、さらに、「隠ぺい率測定用紙」は「塗料に関する測定に使用する」ものとされているが(本件明細書の【0049】)、「塗料に関する測定」とはどのような目的で何を測定するための測定であるか理解することができないことから、「第1のL*値」や「第2のL*値」が変動するものであって、その結果、これらから求められるΔLも変動することになるから、「ΔL」の値は、明確でない旨主張する(特許異議申立書10、44~45頁)。
しかしながら、本件訂正により、本件発明は「背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用」することが特定されるものとなっており、「塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙」は市販され、各種試験において通常用いられるものであるから、本件明細書の記載を参酌すれば、当業者であれば「塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙」や、それを用いて測定される、「第1のL*値」、「第2のL*値」、「ΔL」を把握できるといえる。
(イ)一方、特許異議申立人は、先の申立人意見書において、「塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙」はJIS K 5600を満たすものであると説明する特許権者意見書1での記載も踏まえ、「塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙」は、どのような規格、どのようなメーカー、どのような型番であるか本件明細書に開示されたものでなく、理解することができないから、特許権者意見書1での記載は、本件明細書に裏付けられたものとはいえず、依然として本件発明の「第1のL*値」、「第2のL*値」、「ΔL」は明確でない旨主張する。
しかしながら、技術常識を踏まえると、当該技術分野において「L*値」、「ΔL」を特定する際に、測定時の背景として特許異議申立人が主張するほどの厳密性が求められるとの事情も認められず、また、上記(ア)で示したように、本件明細書に開示がないとしても、当業者であれば「塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙」を使用して測定される「第1のL*値」などを把握できるといえる。
(ウ)したがって、本件明細書の記載を参酌すれば、本件発明の「第1のL*値」、「第2のL*値」、「ΔL」は当業者にとって明らかであるといえ、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
キ 項目(ウ-7)について
特許異議申立人は、測定対象物の厚みによりL*値が変動することから、測定対象物の厚みを特定せずにL*値に関する特定を有する設定登録時の請求項1~29に係る発明は、明確でない旨主張する(特許異議申立書10、45頁)。
しかしながら、本件訂正により、本件発明は「焼結体の表面を♯2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの試料」を測定するものであることが特定されるものとなったので、上記主張は採用できない。
ク 項目(ウ-8)及び(ウ-9)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項4、5~11に係る発明は、「第1の領域」と「第2の領域」が「積層されている」ことが特定されているが、「物体」ではない「領域」と「領域」が積層されているとは、物において一体どのような態様のことを指し、またどのような態様については含まないかを理解するのは困難であるから、明確でない旨主張する(特許異議申立書10~11、45~46頁の(ウ-8))。
また、特許異議申立人は、設定登録時の請求項9~11に係る発明は、「積層方向」について特定されているが、第1~第4の領域が配置される位置のみを特定しているだけであり、第1~第4の領域が「積層」されていることは特定されていないから、「積層方向」がどのような方向を示しているのか理解することができず、明確でない旨主張する(特許異議申立書11、46頁の(ウ-9))。
ここで、設定登録時の請求項4に係る発明は、本件訂正により、削除されたものである。
また、「積層」及び「積層方向」との用語は一般的に用いられる用語であり、当業者であれば通常理解できるものといえ、各領域が配置される位置が特定されれば、それらが「積層」されていることや、その「積層方向」は、当業者が認識できるといえる。そして、本願明細書の記載を見ても、特に「積層」及び「積層方向」との用語の理解を困難にする記載は認められない。 したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
ケ 項目(ウ-10)について
(ア)特許異議申立人は、設定登録時の請求項10、11に係る発明の「着色剤」について、化合物は特定の色を有していることからすると、透光性を有するジルコニアには何を入れても一定程度は着色されること、本件明細書には、「着色剤」にZrの酸化物が含まれることが記載されており(本件明細書の段落【0056】)、部分安定化ジルコニアに用いられるジルコニアと、「着色剤」として用いられるジルコニア(Zrの酸化物)とを区別することはできないことから、設定登録時の請求項10、11に係る発明は明確でない旨主張する(特許異議申立書11~12、46~47頁)。
しかしながら、本件訂正により、本件発明では「着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するもの」と特定されるものとなっており、「着色剤」はジルコニアと区別されることから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(イ)一方、特許異議申立人は、先の申立人意見書で、「着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するもの」との記載について、「異なる色」に該当するか否かの基準は、判断する者によって異なっており、「異なる色」に該当するか否かについて、当業者の技術常識として統一した基準があるとはいえないから、「着色剤」は依然として不明確である旨主張する。
しかしながら、本件発明における「着色剤」の意味するものは、統一した基準を要するものではなく、「天然歯の透明性変化に似せた透明性を変化させても欠陥の発生を抑制したジルコニア焼結体を得る」という目的を達成する程度に特定されていれば十分であって、「着色剤は、前記部分安定化ジルコニアの色とは異なる色に着色するもの」との記載により、当業者であれば「着色剤」の意味するものは理解できるといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
コ 項目(ウ-11)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項12、13、16に係る発明の「組成物」と設定登録時の請求項17、18、21に係る発明の「仮焼体」について、「組成物」は、一般的に、複数の成分を含み一定の組成を有するものを指し、焼結体や仮焼体も「組成物」に含まれることから、設定登録時の請求項12、13、16に係る発明の「組成物」に仮焼体に含まれるのか否か理解できず、また、設定登録時の請求項17、18、21に係る発明の「仮焼体」が組成物に含まれるのか否か理解できないから、それぞれ不明確である旨主張する(特許異議申立書12、47頁)。
しかしながら、設定登録時の請求項12、17は、本件訂正により、削除された。
また、本件明細書の段落【0076】には、「組成物及び仮焼体は、上述の本発明のジルコニア焼結体の前駆体(中間製品)となるものである。仮焼体は、組成物を焼結に至らない温度で焼成(即ち仮焼)したものである。」、段落【0077】には「本発明の組成物には、粉体、粉体を溶媒に添加した流体、及び粉体を所定の形状に成形した成形体も含まれる。すなわち、組成物は、粉末状であってもよいし、ペースト状ないしウェット組成物でもよい(すなわち、溶媒中にあってもよいし、溶媒を含んでいてもよい)。また、組成物は、バインダ、顔料等の添加物を含有するものであってもよい。」と記載されており、「仮焼体」や「組成物」の意味するものは、本件明細書のこれらの記載を参酌すれば明らかであるから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
サ 項目(ウ-12)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項16、21に係る発明について、「第1の領域」が「第1面側にある」ことを特定するとともに、「第2の領域」が「第2面側にある」ことを特定しているが、「第1の領域」が「第1面側にある」とは、第1の領域の第1面までの絶対的な距離が近いことを意味するのか、それとも、第1の領域が第1の領域以外の他の領域よりも相対的に第1面の近くにあることを意味するのかが明確でなく、仮に、前者の意味であると解した場合、第1の領域の第1面までの距離がどの程度近くであるのか、仮に、後者の意味であると解した場合、「領域」の区画の仕方が明確でなく、比較対象も特定されていないため、その意味が不明である旨主張する(特許異議申立書12、47~48頁)。
しかしながら、本件訂正により、本件発明は「前記第1の領域は前記第2の領域よりも前記第1面側にあり、前記第2の領域は前記第1の領域よりも前記第2面側にある」ことが特定されるものとなり、第1の領域と第2の領域の位置関係は明確となったことから、上記主張は採用できない。
シ 項目(ウ-13)について
特許異議申立人は、設定登録時の請求項22に係る発明について、「前記仮焼体は、請求項1記載のジルコニア焼結体を製造するのに用いる、」との記載は、仮焼体の製造方法を何ら特定するものでは無く、当該記載をもって何を特定しているのか理解することができないから、この記載により特定されるものは明確でない旨主張する(特許異議申立書12~13、48~49頁)。
しかしながら、設定登録時の請求項22に係る発明は、本件訂正により、削除されたものであるから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
3 進歩性欠如についての当審の判断
(1)証拠一覧
特許異議申立人が提出した証拠方法は以下のとおりである(以下、甲各号証を、証拠番号に合わせて「甲1」などと略して表記した。)。
甲1:色度測定機 (KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A) の取扱説明書
甲2:顎咬合誌、第30巻、3号 (2010年)196頁~201頁
甲3:中国特許出願公開第103058655号
甲4:日本歯科医師会雑誌、vol.67,No.7,2014年10月,607頁~618頁
甲5:国際公開第2014/181827号
なお、進歩性欠如における主たる証拠は、甲3であり、甲4、5はジルコニア仮焼体を焼成して焼結体とし、歯科用製品とすることを立証するためのものである。また、甲1、2は、記載不備を立証するためのものである。
(2)甲3~5の記載事項及び甲3に記載された発明
ア 甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
(ア)「
[図:0001395170000001.jpg]
」
(当審訳:[0005]本発明の目的は、勾配透明性ジルコニア歯科用セラミックおよびその調製方法を提供することであり、その特徴は、質量分率で、Y2O3 5.0~13.5、Al2O3 0.25~0.5、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02は、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2の配合組成である2~5種類の歯科ジルコニアセラミックス混合粉体をA、B、C、D及びEとし、この2~5種類の歯科ジルコニアセラミックス混合粉体A、B、C、D、及びEを異なる質量割合によって重ね合わせて、勾配透明性ジルコニア歯科用セラミックを形成する。焼結後の透明度はA>B>C>D>Eとなる。)
(イ)「[0007](前略)・・・
[図:0001395170000002.jpg]
」
(当審訳:[0007](前略)・・・
(5)予備焼結後のジルコニアセラミックスについて寸法のトリミング、研磨、洗浄を行うことで、グリーン体を修復し、勾配透明性ジルコニア歯科用セラミックを得る。)
[0008]前記勾配透明性ジルコニア歯科用セラミック中で隣接した磁器層の焼結した透明性高いものと焼結した透明感の低いもののセラミックス粉体質量割合の差異は10%以下であり、AY-AX≦10%を示し、このうちY層はX層より焼結したものの透明感が高い。
[0009]本発明の有益な効果は、調製された勾配透明性ジルコニア歯科用セラミックが下端から上端に向かって透明度が漸増し、5~11種類の異なる透明度の磁器層を含み、透明度が自然に遷移する。これは、天然歯の透明度分布特性に近似するものとなる。・・・(後略)」)
(ウ)「
[図:0001395170000003.jpg]
」
(当審訳:[0011] Y2O3 5.0~13.5、Al2O3 0.25~0.5、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2の配合組成である5種類の歯科ジルコニアセラミックス混合粉体をA、B、C、D及びEとし、焼結後の透明度はA>B>C>D>Eとなる5種類の歯科ジルコニアセラミックス混合粉体の組成成分は次の通りである:
A:Y2O3 13.5、Al2O3 0.25、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2。
[0012]B:Y2O3 10.5、Al2O3 0.3、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2。
[0013]C:Y2O3 8.5、Al2O3 0.4、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2。
[0014]D:Y2O3 6.5、Al2O3 0.5、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2。
[0015]E:Y2O3 5.0、Al2O3 0.5、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2。)
(エ)「
[図:0001395170000004.jpg]
」
(当審訳:[0027] 実施例12
粉体A:B:C:Eをそれぞれ質量分率で、0:40%:40%:20%、4%:40%:40%:16%、8%:35%:35%:22%、12%:35%:35%:18%、16%:35%:35%:14%と20%:35%:35%:10%の割合で均一に混合し、6種類の混合粉体を得て、そのうちAY4%-AX0%=4%であった。上記の順序で、6種類の混合粉体を成形型内に連続して添加して層状に積層して、乾式プレス成形を行い、乾燥圧縮成形圧10MPa、保圧時間20sとした。その後冷間静水圧圧縮を行って、冷間等方加圧圧力強度18MPa、保圧時間150sとした。成形素材を取り出し、焼成炉中に入れ、焼結温度700℃、保温時間90分で焼成した。最後にグリーン体を修復し、透明度が段階的に変化した歯科ジルコニア素焼きのセラミックを得た。)
(オ)上記(ア)~(エ)の記載事項から、甲3には、実施例12に、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
(甲3発明)「5種類の歯科ジルコニアセラミックス混合粉体をA、B、C、D及びEを
A:Y2O3 13.5、Al2O3 0.25、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2、
B:Y2O3 10.5、Al2O3 0.3、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2、
C:Y2O3 8.5、Al2O3 0.4、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2、
D:Y2O3 6.5、Al2O3 0.5、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2、
E:Y2O3 5.0、Al2O3 0.5、Na2O≦0.01、SiO2≦0.02、Fe2O3≦0.01、残部はZrO2として、
このうち粉体A:B:C:Eをそれぞれ質量分率で、0:40%:40%:20%、4%:40%:40%:16%、8%:35%:35%:22%、12%:35%:35%:18%、16%:35%:35%:14%と20%:35%:35%:10%の割合で均一に混合し、6種類の混合粉体を得て、上記の順序で、6種類の混合粉体を成形型内に連続して添加して層状に積層して、乾式プレス成形を行い、その後冷間静水圧圧縮を行って、成形素材を焼結温度700℃、保温時間90分で焼成した、透明度が段階的に変化した歯科ジルコニア素焼きのセラミック」
イ 甲4の記載事項
(ア)「歯科用ジルコニアは半焼結ブロックから切削した後、最終焼成して修復物として完成される。CAM装置への固定方法が各社で異なるため、これらの半焼結ブロックの形態は様々であるが(図12)、直径98mmで厚み12~25mmの円盤状ブロックが共通化したサイズと形態であり、汎用性が高い。ジルコニアのCAD/CAM法による成形は、ブロック全体が均質で、焼結収縮が均等に生じることが前提条件であり、冷間静水圧成形 (CIP:Cold Isostatic Press)により、粉末をプレス成形し、1,000~1,100℃で仮焼した半焼結ブロック(グリーンボディ)が提供されている。これらの焼成前のジルコニアブロックの切削時のビッカース硬さは100以下であり、切削が容易で、切削工具の消耗防止、切削時間の低減に貢献している(図13)。
1,350~1,600℃で行われる切削後の最終焼成により、17~22%収縮し(図14)、緻密な焼結体が得られる。」(612頁~613頁 「4.ジルコニアの焼成」の欄)
(イ)「表2 ジルコニアの歯科応用例
[図:0001395170000005.jpg]
」
ウ 甲5の記載事項
(ア)「[0086] 例えば、成形した組成物及び仮焼体において、全体を4層に分け、下端から全体の厚さに対して25%~45%の領域を第1層、第1層上の、全体の厚さに対して5%~25%の領域を第2層、第2層上の、全体の厚さに対して5%~25%の領域を第3層、及び第3層上から上端までの、全体の厚さに対して25%~45%の領域を第4層としたとき、第1層から第4層に向かって顔料の含有率が低下すると好ましい。」
(イ)「[0112] 仮焼体を作製しない場合には、組成物を1400℃~1600℃、好ましくは1450℃~1550℃で焼成することにより、ジルコニア粉末を焼結させて、本発明のジルコニア焼結体を製造する。成形物の段階で所望の形状に成形してもよい。
[0113] 仮焼体を作製する場合には、組成物を800℃~1200℃で焼成して、仮焼体を作製する。次に、仮焼体を1400℃~1600℃、好ましくは1450℃~1550℃で焼成することにより、ジルコニア粉末を焼結させて、本発明のジルコニア焼結体を製造する。成形は、仮焼体の段階で切削加工等により実施してもよいし、焼結後に実施してもよい。成形は、CAD/CAMシステムで実施することができる。」
(3)本件発明1について
ア 甲3発明について
甲3発明において、粉体A:B:C:Eを混合して得られる6種類の混合粉体のうち、積層される両端の混合粉体である、質量分率がA:B:C:E=0:40%:40%:20%のもの、及び20%:35%:35%:10%のもの(それぞれを「混合粉体1」、「混合粉体6」という。また、「混合粉体1」と「混合粉体6」の間に積層される混合粉体をそれぞれの順に「混合粉体2」~「混合粉体5」という。)について、原料組成からY2O3のモル%、Al2O3の質量%を計算すると、Y2O3のモル質量は225.8g/mol、ZrO2のモル質量は123.2g/molであるから、混合粉体1ではY2O3は4.88モル%、Al2O3は0.38質量%、混合粉体6ではY2O3は5.63モル%、Al2O3は0.35質量%と計算できる。
また、混合粉体2~5は、その組成から、混合粉体1と混合粉体6の間でY2O3のモル%、Al2O3の質量%が傾斜した値であると計算できる。
イ 本件発明1と甲3発明の対比
(ア)上記アを踏まえると、甲3発明の「混合粉体1」と「混合粉体6」によって形成される層は、本件発明1の「第2の領域」、「第1の領域」にそれぞれ相当し、甲3発明の「Al2O3」は本件発明1の「遮光材」に相当するから、
本件発明1と甲3発明は、
「安定化剤として4mol%~7mol%のイットリアを含有する」、
「透明性を低下させる遮光材を含有し」、
「第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に3つ以上の他の領域をさらに有し、
前記他の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低く、前記第2の領域から前記第1の領域側に向かって段階的に減少傾向にあり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域以外の領域がなく、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域のそれぞれのイットリアの含有量が4mol%~7mol%であり、
前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記他の領域の各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下」、
「前記遮光材が、」「酸化アルミニウム」
という点で一致する。
(イ)一方、本件発明1は「部分安定化ジルコニアの焼結体」であるのに対し、甲3発明は、「歯科ジルコニア素焼きのセラミック」である点(相違点1)、
また、本件発明1は、
「白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、
黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、
前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、
前記背景に塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用し、前記焼結体における各領域に対応する焼結体で作製された試料であって、表面を#2000の鏡面状に仕上げた厚さ1.2mmの前記試料を、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM-3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて測定したときに、、
前記第2の領域におけるΔLは、4以上11以下であり、
前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLより大きく、
前記第1の領域におけるΔLと前記第2の領域におけるΔLとの差は、0.8以上4以下であり、
前記他の領域のそれぞれのΔLは、前記第2の領域側にある領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域側にある領域のΔLよりも小さい」
という点が特定されているのに対し、甲3発明では色度に関する特定がない点(相違点2)で、それぞれ相違する。
ウ 相違点についての検討
事案に鑑み、はじめに相違点2について検討をする。
本件発明は、「天然歯と同様の透明性変化を有する歯科用補綴物201を作成するためには、歯頚部側の透明性よりも切端部側の透明性を高くすることが望まれる」(段落【0007】)ことについて、「安定化剤の含有率を部分的に変化させて透明性が変化するジルコニア焼結体を作製しても、収縮率が部分的に異なってしまうために、ジルコニア焼結体には欠陥が生じてしまう」(段落【0008】)ことから、「ジルコニア焼結体において、安定化剤は均一に分布して・・・(中略)・・・安定化剤の含有率を段階的に又は部分的に変化させない」(段落【0048】)で、「遮光材の含有率の調整によって透明性を調整可能であること」(段落【0139】)を利用して、各領域におけるΔLを特定の範囲とするものである。
一方、甲3では、歯科ジルコニアにおけるΔLを特定の範囲に調整することは想定しておらず、上記アで示したように、甲3発明は、安定化剤であるY2O3及び遮光材に相当するAl2O3の両方を傾斜させたものである。
また、甲4及び甲5にも、安定化剤を均一に分布させたまま、ΔLを特定の範囲に調整することについて記載も示唆もないから、安定化剤を均一に分布させたまま、ΔLを特定の範囲に調整することを想定していない甲3発明に、それを適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成は、当業者といえども容易に想到し得るものでないといえる。
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に対して進歩性が欠如するということはできない。
(4)本件発明5、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29について
本件発明5、7は、本件発明1と同様にΔLを特定するものであるから、上記(3)についての検討と同様、甲3発明に対して進歩性が欠如するということはできない。
また、本件発明9、11、13、14、16、18~21、25~29は、本件発明1、5、7のいずれかを直接的に又は間接的に引用するものであるから、同様に甲3発明に対して進歩性が欠如するということはできない。
4 小括
上記2及び3のとおり、本件特許の請求項1、5、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29に係る特許は、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとも、同法第29条第2項の規定に違反してされたものともいえず、同法第113条第4号及び第2号には該当しないため、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、当該特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上の検討のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、5、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、5、7、9、11、13、14、16、18~21、25~29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
更に、本件特許の請求項2~4、6、8、10、12、15、17、22~24は、本件訂正により削除され、これらの請求項に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700164