審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-701100

窒化ケイ素焼結体、および、窒化ケイ素焼結体の製造方法

審判番号
2025-701100
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-536339
登録番号
7684401
請求日
2025年11月27日
審決日
2026年02月13日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社MARUWA
  • 【権利者代理人】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
  • 【異議申立人】渡辺 聡美
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 市川 篤
分類
P1652.113-Y (C04B) / P1652.121-Y (C04B) / P1652.536-Y (C04B) / P1652.537-Y (C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7684401号発明「窒化ケイ素焼結体、および窒化ケイ素焼結体の製造方法」の特許異議申立事件について、以下のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7684401号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7684401号の請求項1~13に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)2月13日(優先権主張 令和4年2月16日)を国際出願日とする出願であって、令和7年5月19日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。 その後、請求項1~3に係る特許に対し、令和7年11月27日に特許異議申立人渡辺聡美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、令和8年1月15日に特許異議申立書を補正対象とする手続補正書(方式)が提出されたものである。 なお、手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を以下「申立書」という。 第2 本件発明及び本件明細書等 1 本件発明について 特許第7684401号の請求項1~13に係る特許のうち、特許異議の申立てがされた請求項である請求項1~3の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 β型窒化ケイ素粒子を含む基板を成し、基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値となることを特徴とする窒化ケイ素焼結体。 【請求項2】 基板厚み方向の熱伝導率が100W/mK以上であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素焼結体。 【請求項3】 厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素焼結体。」 2 本件明細書等について 本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。 (本ア)本件発明の課題について 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 発明者らは、従来の窒化ケイ素焼結体に対し、その製造方法を見直すとともに、β型窒化ケイ素(β-Si3N4)粒子の配向度のさらなる制御に着目して、β型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能をより一層改善することを課題とした。 【0007】 本発明は、上記課題を解決するために、その目的は、β型窒化ケイ素(β-Si3N4)粒子の配向を制御し、基板厚み方向の熱伝導性能をより一層改善した窒化ケイ素焼結体、および、窒化ケイ素焼結体の製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一形態の窒化ケイ素焼結体は、β型窒化ケイ素粒子を含む基板を成し、基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値となることを特徴とする。」 (本イ)実施するための形態について 「【0034】 窒化ケイ素焼結体の基板に含まれるβ型窒化ケイ素粒子は、長軸および短軸を有する細長い六角柱状の結晶構造を有している。本実施形態の窒化ケイ素焼結体は、基板の厚み方向にβ型窒化ケイ素を優先的に配向させるように制御したことで、厚み方向の熱伝導性の改善を図ったものである。本実施形態の窒化ケイ素焼結体の特性を以下に示す。 【0035】 本実施形態の窒化ケイ素焼結体は、基板平面におけるβ型窒化ケイ素の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値となるように構成されている。 【0036】 ロットゲーリングファクタf(hk0)は、多結晶体を構成する各結晶粒の配向の程度を表す指標である。ロットゲーリングファクタf(hk0)の値は、対象とする結晶面から回折されるX線の各回折ピークの積分強度を用いて、以下の式1~3により計算する。 f(hk0)=(ρ-ρ0)/(1-ρ0) (式1) ρ0=ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl) (式2) ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl) (式3) ρ0は無配向試料のX線回折スペクトルの2θが20度から65度の範囲における回折強度I0を用いて計算され、全回折強度の和ΣI0(hkl)に対する(hk0)面の回折強度の合計ΣI0(hk0)の割合として、式2により求められる。ここで、回折強度I0は、基準試料(対象試料と同一組成を有する無配向試料)のX線回折スペクトルから計算される。また、ρは、窒化ケイ素焼結体の試料のX線回折スペクトルの2θが20度から65度の範囲における回折強度Iを用いて計算され、全回折強度の和ΣI(hkl)に対する(hk0)面の回折強度の合計ΣI(hk0)の割合として、式3により求められる。なお、h、k、lは整数であり、面指数を表す。得られた試料の結晶配向がランダムであれば、ρとρ0の差は小さく、式1により、f(hk0)はゼロに近い値となる。f(hk0)が負の値(ρ<ρ0)となれば、得られた試料の方が、無配向試料よりも、(hk0)面の配向度が低いことを意味している。すなわち、得られた試料のロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値をとることで、β型窒化ケイ素粒子の(00l)面(つまり長軸)が板厚方向へ強く配向していることが示される。」 「【0041】 そして、本実施形態の窒化ケイ素焼結体では、基板の厚み方向の熱伝導率が100W/mK以上である。すなわち、β型窒化ケイ素粒子の形状は棒状であり、長軸方向の熱伝導率は短軸方向に比べて約2倍である。そのため、β粒子を板厚方向に揃えたことにより、板厚方向への熱伝導率が大きく改善される。」 (本ウ)実施例及び比較例について 「【0052】 実施例1~20、比較例1~8に係る窒化ケイ素焼結体は以下の条件および手順によって作製された。 【0053】 所定の粉末特性を有するシリコン粉末、および、焼結助剤粉末を準備した。適量のシリコン粉末をボールミルに投入し、シリコン粉末と有機溶剤と分散剤をボールミルで粉砕し、シリコン粉末の比表面積およびD99.9径の値が所定値になるまで粒度調整を行った。ここで、各試料における配合組成比、ならびに、シリコン粉末のD99.9径、D50径および比表面積の値は、表1のとおりである。シリコン粉末の粒度調整ができたら、焼結助剤を添加し、ボールミルで1時間の混合を行った。その後、バインダー(ポリビニルブチラール)と可塑剤(アジピン酸ジオクチル)と有機溶剤(トルエンとエタノールの混合溶媒)とを添加してスラリーとした。スラリーを真空脱泡して粘度調整を行った。脱泡後のスラリーに含まれる有機溶剤の割合を35wt%以下とし、スラリーの粘度は15000~25000cpsとした。スラリーの粘度は、東機産業株式会社製のTVC-7形粘度計によって測定された。具体的には、スピンドルをスラリー中で回転させ、その抵抗力から粘度が算出された。そして、成形速度を200mm/min以上としたドクターブレードによってシート状の成形体を作製した。次に、各試料のシート状の成形体の無機充填率Fi(%)を測定した。作製したシート状の成形体表面に離型材としてのBNをスプレー塗布し、1ブロック20枚の積層体を準備した。積層体を乾燥空気中500℃で脱バインダーを行い、その後、炉に投入し、真空中で約1000℃まで加熱し、0.2MPaの窒素加圧雰囲気中で約1350℃まで1℃/minで昇温させた。そして、0.9MPaの窒素加圧雰囲気とし、約1350℃から約1900℃まで昇温させ、約1900℃で約8時間かけて焼成を行った。焼成後、積層基板を分離し、ホーニング圧力0.4MPaでアルミナ砥粒(平均粒径~50μm)を吹きつけることにより焼結面をホーニング処理し、板厚0.35mmである190mm×140mmの窒化ケイ素焼結体を得た。」 「【0055】 ・X線回折測定およびその分析 株式会社リガク製の型式UltimaIVを用いて、Cu-Kα線を用いた粉末X線回折法により、各試料のX線回折強度測定を行った。 ・・・ 基板平面へのX線入射によって得られた基板平面のX線回折パターンにおいて、β型窒化ケイ素粒子のミラー指数(hkl)に対応する回折ピークの積分強度を算出した。算出したピーク強度に基づいて、ロットゲーリングファクタf(hk0)、および強度比I101/I210を導出した。」 「【0060】 ・破壊靱性 株式会社ミツトヨ製のビッカース硬度測定器HV-120を用いて、JIS-R1607に従って各試料の破壊靱性を測定した。すなわち、基板の厚み方向に沿って切断した基板断面の鏡面研磨加工を行い、図12(a)、(b)に示すように、鏡面加工面へ対角線の長さa1、a2を有する圧こんを鏡面加工面の厚み方向に対して中央付近に形成し、生じた圧こんの対角線長さa1とa2、圧こんの頂点から生じたき裂の長さc1とc2を測定し、押込荷重、圧こんの対角線長さ、き裂長さおよび弾性率から破壊靱性値KCを求めた。JIS-R1607によれば、破壊靱性値KCは、以下の式によって求められる。 KC=0.026×E1/2×P1/2×a/C3/2 (式6) C=((c1/2+c2/2)/2)/2 (式7) a=((a1/2+a2/2)/2)/2 (式8) E:弾性率 P:押し込み荷重 a:圧こんの対角線長さの平均の半分 C:クラック長さの平均の半分 これに対し、本実施形態では、破壊靱性値KCを第1方向(基板平面に平行な方向)の破壊靱性値KC1、第2方向(基板平面に垂直な方向)の破壊靱性値KC2と分けて評価した。具体的には、基板平面に平行な方向に生じたクラック長さをc1とし、式6のCをc1/2とすることにより、KC1を算出した。また、c1に対して垂直な方向(基板の厚み方向)に生じたクラック長さをc2とし、式6のCをc2/2とすることにより、KC2を算出した。試験片の厚みは0.35mmとし、押し込み荷重Pは10kgfとした。 【0061】 実施例1~14および参考例1~8の各試料についての条件および各種測定結果を表1,3に示した。実施例15~20の各試料についての条件および各種測定結果を表2,4に示した。 【0062】 【表1】 [図:0001433142000001.jpg] 【0063】 【表2】 [図:0001433142000002.jpg] 【0064】 【表3】 [図:0001433142000003.jpg] 【0065】 【表4】 [図:0001433142000004.jpg] 」 (本エ)図12(a)として、以下の図面(画像)が記載されている。 「 [図:0001433142000005.jpg] 」 第3 特許異議申立書における申立理由 1 申立理由の概要 申立人が、申立書において主張している申立理由の概要は、以下のとおりである。なお、申立人が証拠方法として提示した甲第○号証は、以下「甲○」という。 (1)申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(サポート要件) 本件特許は、請求項1~3に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)取消理由4(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 なお、申立理由3及び4についての申立人の具体的な主張については、下記の第5の2において技術的観点に応じ整理して記載することとする。 <甲号証一覧> 甲1:Takuma TAKAHASHI et al.,「Anisotropic sintering shrinkage and microstructural evolution of c-axis-oriented Si3N4 ceramics」, Journal of the Ceramic Society of Japan, 127[6],2019年, pp.435-442 甲2:特許第5245405号公報 甲3:JIS-R1607:2015(確認2019)「ファインセラミックスの室温破壊じん(靱)性試験方法」、pp.136-151 (なお、甲3は、申立理由4において提示された証拠である。) 第4 甲号証の記載 1 甲1について (1)記載事項 甲1は、タイトルが「Anisotropic sintering shrinkage and microstructural evolution of c-axis-oriented Si3N4 ceramics」(c軸配向Si3N4セラミックスの異方性焼結収縮と微細構造変化)であり、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、訳文は申立人が提出したものを参照し、訳文における下線は、以下(2)で記載する引用発明の認定に関与する部分に付与したものである。 (甲1ア)「2. Experimental procedures β-Si3N4(NP-500, Denka Co., Ltd., Japan) and α-Si3N4 powders (SN-E10, Ube Industries Ltd., Japan) were used as raw materials. Figure 1 presents the morphology of β-Si3N4 seed particles observed using a scanning electron microscope (SEM, JSM-6390LV, JEOL, Japan). The average particle size (d50) measured by laser diffraction/scattering(SALD-7000, Shimadzu Co., Japan) was 0.6μm. The average particle size was also measured from image analysis using Fig.1, and was the same as the d50 measured by the laser diffraction/scattering method. The average aspect ratio calculated from image analysis was 1.5. Sintering aids are needed to fabricate dense Si3N4 ceramics. Li et al. have been reported that Y203-HfO2-SiO2 system can improve not only enhancement of the densification of Si3N4 but also formation of cubic HfO2 crystalline phases to reduce grain boundary glassy pahse.28) Therefore, the Si3N4-Y203-HfO2-SiO2 system should be expected to achieve high thermal conductivity. Y203(RU-P, Shin-etsu Chemical Co., Ltd., Japan), HfO2 (HF001PB, Kojundo Chemical Laboratory Co., Ltd., Japan), and SiO2 (SO-C2, Admatechs Co., Ltd., Japan) were added as sintering aids. The starting composition was fixed at β-Si3N4:α-Si3N4:Y203:HfO2:SiO2 = 10:82:2.5:5:0.5 by weight. These powders were mixed and dispersed by ultrasonic radiation with polyethyleneimine (Mw = 10000) dispersant in distilled water, with solid loading of 20 vol%. The slurry was loaded in a plastic mould 25mm in diameter and placed in a rotating magnetic field at 10T. After drying, a green compact was obtained, which was calcined at 500℃ for 3h in air to burn the polymer dispersant. The dewaxed green body was fired at 1700-1900℃ for 5min or 6h in 0.9MPa N2. Relative density was measured by the Archimedes method. Phases and crystal orientations of the Si3N4 ceramics were estimated by X-ray diffraction (XRD,Multiflex 2kW, Rigaku Co., Japan). The Lotgering factor (L.F.), as the orientation degree, was calculated from the XRD profiles by the following equation: L.F.= (ρ-ρ0)/(1-ρ0), where ρ0=ΣI0(00l)/ ΣI0(hkl) and ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl), where I0 and I are the diffraction peak intensities of non-oriented and oriented samples, respectively. The linear shrinkage ratio was evaluated from sample geometry. The plasma-etched surface was observed by SEM. A thin film sample for transmission electron microscopy observation was prepared by Ar ion milling and specimens were observed using a transmission electron microscope(TEM, JEOL-2100F, JEOL, Japan). The compositions of the specimens were measured by energy dispersive X-ray spectrometry in scanning TEM (STEM-EDS). The β ratio was calculated by the Rietveld method using RIETAN-FP.29)」(436頁左欄下から6行~437頁左欄3行) 訳文: (2. 実験手順 原料として、β-Si3N4(NP-500、デンカ株式会社、日本)及びα-Si3N4粉末(SN-E1O、宇部興産株式会社、日本)を使用した。図1は、走査型電子顕微鏡(SEM、JSM-6390LV、日本電子株式会社、日本)を用いて観察したβ-Si3N4種結晶粒子の形態を示す。レーザー回折/散乱法(SALD-7000、株式会社島津製作所、日本)で測定した平均粒子径(d50) は0.6μmであった。平均粒子径は図1を用いた画像解析からも測定され、レーザー回折/散乱法で測定されたd50と同じであった。画像解析から計算された平均アスペクト比は1.5であった。緻密なSi3N4セラミックスを作製するためには焼結助剤が必要である。Liらは、Y203-HfO2-SiO2系がSi3N4の緻密化の促進だけでなく、粒界ガラス相を減少させるための立方晶HfO2結晶相の形成も改善できることを報告している。28) したがって、Si3N4- Y203-HfO2-SiO2系は高熱伝導率を達成することが期待されるべきである。焼結助剤としてY203(RU-P、信越化学工業株式会社、日本)、HfO2(HFOO1PB、高純度化学研究所株式会社、日本)、及びSiO2(SO-C2、株式会社アドマテックス、日本)を添加した。出発組成は、重量比でβ-Si3N4:α-Si3N4:Y203:HfO2:SiO2=10:82:2.5:5:0.5に固定した。これらの粉末を混合し、ポリエチレンイミン(Mw=10000)分散剤とともに蒸留水中で超音波照射により分散させ、固形分濃度を20vol%とした。スラリーを直径25mmのプラスチック製モールドに充填し、10Tの回転磁場中に置いた。乾燥後、圧粉体が得られ、これを空気中500℃で3時間焼成してポリマー分散剤を燃焼させた。脱脂した圧粉体を、0.9MPaのN2中で1700~1900℃で5分または6時間焼成した。 相対密度はアルキメデス法で測定した。Si3N4セラミックスの相及び結晶配向は、X線回折(XRD、Multiflex 2kW、株式会社リガク、日本)によって評価した。配向度としてのLotgering因子(L.F.) は、XRDプロファイルから次式によって計算した:L.F.= (ρ-ρ0)/(1-ρ0)、ここでρ0=ΣI0(OOl)/ ΣI0(hkl)及びρ=ΣI(OOl)/ΣI(hkl)であり、I0とIはそれぞれ無配向試料と配向試料の回折ピーク強度である。線収縮率は試料の形状から評価した。プラズマエッチングした表面をSEMで観察した。透過型電子顕微鏡観察用の薄膜試料をArイオンミリングによって調製し、試料を透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL-2100F、日本電子株式会社、日本)を用いて観察した。試料の組成は走査透過型電子顕微鏡(STEM-EDS)におけるエネルギー分散型X線分光法によって測定した。β化率はRIETAN-FPを用いたリートベルト法によって計算した。29)) (甲1イ)「3.2 Phases present Figures 3 and 4 show XRD patterns of the green compact and sintered bodies prepared with and without a rotating magnetic field (10T). The plane parallel to the magnetic field was measured as shown in Fig.4. A strong (002) peak of β-Si3N4 was observed in the pattern of the green compact prepared with a rotating magnetic field, but not in that of the green compact prepared without the magnetic field. This result indicates that the c-axes of the β-Si3N4 seed particles were oriented normal to the direction of the applied magnetic field. After firing at 1900℃ for 6h, the peaks of α-Si3N4 disappeared and the (002)peak of β-Si3N4 increased. The orientation degree calculated using the Lotgering method was 0.70 after densification. It was confirmed that α-β phase transformation and orientation of β-Si3N4 occurred in association with densification.」(437頁右欄1~17行) 訳文: (3.2 存在する相 図3と図4は、回転磁場(10T)の有無で調製された圧粉体と焼結体のXRDパターンを示す。図4に示すように、磁場に平行な面を測定した。回転磁場を用いて調製された圧粉体のパターンでは、β-Si3N4の強い(002)ピークが観察されたが、磁場なしで調製された圧粉体のそれには見られなかった。この結果は、β-Si3N4種結晶粒子のc軸が印加磁場の方向に対して垂直に配向したことを示す。1900℃で6時間焼成した後、α-Si3N4のピークは消滅し、β-Si3N4の(002)ピークが増加した。Lotgering法を用いて計算された配向度は、緻密化後に0.70であった。緻密化に伴い、α-β相変態とβ-Si3N4の配向が起こったことが確認された。) (甲1ウ)Fig.4(図4)として以下の図面が記載されている。 「 [図:0001433142000006.jpg] 」 訳文 (図4. (a) 1700℃で5分、(b)1800℃で5分、(c)1900℃で5分、(d)1900℃で6時間焼結したC軸配向Si3N4セラミックスのXRDパターン) (2)甲1発明 ア (甲1イ)の「Lotgering法を用いて計算された配向度は、緻密化後に0.70」における「Lotgering法」は、(甲1ア)において「配向度としてのLotgering因子(L.F.) は、XRDプロファイルから次式によって計算した:L.F.= (ρ-ρ0)/(1-ρ0)、ここでρ0=ΣI0(OOl)/ ΣI0(hkl)及びρ=ΣI(OOl)/ΣI(hkl)であり、I0とIはそれぞれ無配向試料と配向試料の回折ピーク強度である」と定義されるものである。 また、(甲1イ)に記載されている「1900℃で6時間焼成」とは、(甲1ア)の「脱脂した圧粉体を、0.9MPaのN2中で1700~1900℃で5分または6時間焼成」における「脱脂した圧粉体を、0.9MPaのN2中で1900℃で6時間焼成」のことである。 イ そうすると、上記(甲1ア)及び(甲1イ)で摘記した記載(下線部参照)を総合すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「出発組成は、重量比でβ-Si3N4:α-Si3N4:Y203:HfO2:SiO2=10:82:2.5:5:0.5に固定し、これらの粉末を混合し、ポリエチレンイミン(Mw=10000)分散剤とともに蒸留水中で超音波照射により分散させ、固形分濃度を20vol%とし、スラリーを直径25mmのプラスチック製モールドに充填し、10Tの回転磁場中に置き、乾燥後、圧粉体が得られ、これを空気中500℃で3時間焼成してポリマー分散剤を燃焼させ、脱脂した圧粉体を、0.9MPaのN2中で1900℃で6時間焼成した後、 α-Si3N4のピークは消滅し、β-Si3N4の(002)ピークが増加し、以下の記載で定義されるLotgering法を用いて計算された配向度は、緻密化後に0.70である、緻密なSi3N4セラミックス。 定義:XRDプロファイルから次式によって計算:L.F.= (ρ-ρ0)/(1-ρ0)、ここでρ0=ΣI0(OOl)/ ΣI0(hkl)及びρ=ΣI(OOl)/ΣI(hkl)であり、I0とIはそれぞれ無配向試料と配向試料の回折ピーク強度。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2ア)「【0017】 本発明の実施の形態に係る窒化珪素基板では、上記β型窒化珪素の所定格子面のそれぞれのX線回折線強度の割合から定まる上記窒化珪素基板の厚さ方向に垂直な面内における配向の割合である面内配向度faは、0.4~0.8である。ここで、面内配向度faは、窒化珪素基板の上面にX線を照射することにより生じるX線回折線に基づいて、F. K. Lotgerlingによって与えられた式(1)で表される(F. K. Lotgerling: J. Inorg, Nucl. Chem., 9 (1959) 113.参照)。 【0018】 fa=(P-P0)/(1-P0) ・・・(1) 式(1)において、Pは、式(2)で表され、窒化珪素基板の面内における図1に示すβ型窒化珪素粒子4の(110)面、(200)面、(210)面、(310)面及び(320)面のそれぞれのX線回折線強度の割合を意味し、P0は、式(3)で表され、β型窒化珪素粉末における図1に示すβ型窒化珪素粒子4の(110)面、(200)面、(210)面、(310)面及び(320)面のそれぞれのX線回折線強度の割合を意味している。 P=(I(110)+I(200)+I(210)+I(310)+I(320))/(I(110)+I(200)+I(101)+I(210)+I(201)+I(310)+I(320)+I(002)) ・・・(2) P0=(I'(110)+I'(200)+I'(210)+I'(310)+I'(320))/(I'(110)+I'(200)+I'(101)+I'(210)+I'(201)+I'(310)+I'(320)+I'(002)) ・・・(3) 窒化珪素基板はβ型窒化珪素の粗大な柱状粒子と微細な粒子を主成分として構成されているが、面内配向度faは粗大な柱状粒子の向きによって決まる。面内配向度faが0の場合は粗大な柱状粒子が無秩序に配置されているが、本発明の実施の形態に係る窒化珪素基板(面内配向度faが0.4~0.8)のように、面内配向度faが0より大きい場合は窒化珪素基板の厚さ方向に対する長軸の傾きが45°より大きい柱状粒子をより多く含んでいることを示しており、面内配向度faの値が1に近いほど、窒化珪素基板の厚さ方向に対する柱状粒子の長軸の向きが90°に近いことを示している。 【0019】 面内配向度faが1である場合には、上記したように、窒化珪素基板に接合した金属回路板の外周部から窒化珪素基板へ入るクラックが進展しにくい(窒化珪素基板の厚さ方向への破壊靱性が高い)が、半導体素子から発生する熱が金属回路板から窒化珪素基板を経て金属放熱板に伝わりにくい(窒化珪素基板の厚さ方向への熱伝導率が低い)。これに対し、面内配向度faが-1である場合には、上記したように、半導体素子から発生する熱が金属回路板から窒化珪素基板を経て金属放熱板に伝わりやすい(窒化珪素基板の厚さ方向への熱伝導率が高い)が、窒化珪素基板に接合した金属回路板の外周部から窒化珪素基板へ入るクラックが進展しやすい(窒化珪素基板の厚さ方向への破壊靱性が低い)。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、面内配向度faが0.4~0.8である場合には、金属回路板から窒化珪素基板を経て金属放熱板に熱が伝わりやすい(窒化珪素基板の厚さ方向への熱伝導率が高い)とともに、窒化珪素基板に接合した金属回路板の外周部から窒化珪素基板へ入るクラックが進展しにくい(窒化珪素基板の厚さ方向への破壊靱性が高い)ことがわかった。即ち、面内配向度faを0.4~0.8にすることにより、窒化珪素基板の特に厚さ方向に対して、柱状粒子によるクラックの偏向が起こりやすく、厚さ方向の破壊靱性が面内方向の破壊靱性より大きくなる。また、熱伝導において抵抗となる粒界相の割合も厚さ方向に対して十分小さいため、厚さ方向の熱伝導率を高く保つことができる。そのため、6.0MPam1/2以上の上記厚さ方向の破壊靱性と90W/m・K以上の上記厚さ方向の熱伝導率を同時に達成できる方向にある。 【0020】 放熱性の良い窒化珪素配線基板を得るためには、金属回路板及び金属放熱板に熱伝導率の高い銅板を用いることが望ましい。しかしながら、接合温度(約800℃)からの冷却過程又は、半導体モジュールを稼動する時の加熱冷却サイクルにおいて、銅と窒化珪素の熱膨張率の差に起因して熱応力が発生し、特に、窒化珪素基板の金属回路板外周部付近に、厚さ方向にクラックが進展しやすい。このクラックの進展を抑制するためには上記厚さ方向の破壊靱性が6.0MPam1/2以上にする必要があり、また、同時に面内方向の破壊靭性が極端に低い場合、クラックの厚さ方向への進展を抑えられても、面内方向に進展してしまうため、上記面内方向の破壊靱性は3.0MPam1/2以上とする必要がある。 また、より放熱性の良い窒化珪素配線基板を得るためには、厚さ方向の熱伝導率が100W/m・K以上の窒化珪素基板を用い、厚さが0.5mm以上の銅板を金属回路板及び金属放熱板に用いることが望ましい。厚さ方向の熱伝導率を100W/m・K以上とするためには面内配向度faを0.7以下にすることが望ましい。また、厚さが0.5mm以上の銅板を金属回路板及び金属放熱板に用いた場合、より大きな応力が窒化珪素基板に加わるため、厚さ方向の破壊靭性値を6.5MPam1/2以上とすることが望ましく、そのためには、面内配向度faを0.5以上にすることが望ましい。これらの点から面内配向度faは、0.5~0.7とすることがより望ましい。 」 3 甲3について 甲3は、「JIS―R1607「ファインセラミックスの室温破壊じん(靱)性試験方法」であり、以下の記載がある。 「6.2.2 試験片の厚さ 試験片は、き裂長さが影響を受けない程度に十分な厚さのものでなければならない。試験片の厚さは、3mm以上が望ましい。」(144頁) 第5 当審の判断 1 申立理由1及び2について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)焼結体について 甲1発明の「焼成した」「Si3N4セラミックス」は、本件発明1の「窒化ケイ素焼結体」に相当する。そして、甲1発明の「焼成した」「Si3N4セラミックス」と、本件発明1の「基板を成し、基板平面」を有する「窒化ケイ素焼結体」とは、後者の「基板」が焼結体であることから、両者は、「焼結体をなし、焼結体の平面」を有する「窒化ケイ素焼結体」の点で共通する。 また、甲1発明の「Si3N4セラミックス」は、「脱脂した圧粉体を」「焼成した」ものであり、「β-Si3N4の(002)ピークが増加し」たものであるから、「β型窒化ケイ素粒子を含む」ものである。 (イ)ロットゲーリングファクタfについて 本件発明1の「(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」は、上記(本イ)の【0036】に記載されているとおり、 「ロットゲーリングファクタf(hk0)の値は、対象とする結晶面から回折されるX線の各回折ピークの積分強度を用いて、以下の式1~3により計算する。 f(hk0)=(ρ-ρ0)/(1-ρ0) (式1) ρ0=ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl) (式2) ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl) (式3) ρ0は無配向試料のX線回折スペクトルの2θが20度から65度の範囲における回折強度I0を用いて計算され、全回折強度の和ΣI0(hkl)に対する(hk0)面の回折強度の合計ΣI0(hk0)の割合として、式2により求められる。ここで、回折強度I0は、基準試料(対象試料と同一組成を有する無配向試料)のX線回折スペクトルから計算される。また、ρは、窒化ケイ素焼結体の試料のX線回折スペクトルの2θが20度から65度の範囲における回折強度Iを用いて計算され、全回折強度の和ΣI(hkl)に対する(hk0)面の回折強度の合計ΣI(hk0)の割合として、式3により求められる。」ものである。 一方、甲1発明は「L.F.= (ρ-ρ0)/(1-ρ0)、ここでρ0=ΣI0(OOl)/ ΣI0(hkl)及びρ=ΣI(OOl)/ΣI(hkl)」であるから、「(hk0)面」の配向度ではなく「(00l)」の配向度を求めていることになる。ここで、(hkl)面と(00l)面とは面指数としては互いに垂直な関係にあるといえるが、実際のX線の各回折ピークの積分強度から計算される「ρ0=ΣI0(00l)/ ΣI0(hkl)」及び「ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl)」と、「ρ0=ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl)」及び「ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)」とが数値としてどのような関係があるのか不明であるから、「ρ0=ΣI0(00l)/ ΣI0(hkl)」及び「ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl)」から求めた「L.F.= (ρ-ρ0)/(1-ρ0)」から、本件発明1の「(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」の値を導出できるものとはいえない。 さらに、本件発明1の「(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」を求めるためのI0及びIが「2θが20度から65度の範囲」における「積分強度」であるのに対し、甲1発明の回折ピーク強度が「2θが20度から65度の範囲」における「積分強度」であるのか不明である。 そうすると、甲1発明の「定義:XRDプロファイルから次式によって計算:L.F.= (ρ-ρ0)/(1-ρ0)、ここでρ0=ΣI0(OOl)/ ΣI0(hkl)及びρ=ΣI(OOl)/ΣI(hkl)であり、I0とIはそれぞれ無配向試料と配向試料の回折ピーク強度。」「で定義されるLotgering法を用いて計算された配向度」と、本件発明1との「「(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」とは、配向度をロットゲーリングファクタfという「概念」で表現しているという限りにおいて共通しているといえる。 そして、甲1発明の「XRDプロファイル」は、「α-Si3N4のピークは消滅し、β-Si3N4の(002)ピークが増加し」た「Si3N4セラミックス」の表面にX線を照射して得るものであるから、甲1発明の「α-Si3N4のピークは消滅し、β-Si3N4の(002)ピークが増加し」た「Si3N4セラミックス」に対する「Lotgering法を用いて計算された配向度」と、本件発明1の「基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」とは、「焼結体平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の」「ロットゲーリングファクタfという概念で表現している」「配向度」という限りにおいて共通するといえる。 (ウ)一致点・相違点 上記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「β型窒化ケイ素粒子を含む焼結体を成し、焼結体平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の配向度をロットゲーリングファクタfという概念で表現する、窒化ケイ素焼結体。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 焼結体が、本件発明1では「基板」であるのに対し、甲1発明では「基板」かどうか不明である点。 (相違点2) ロットゲーリングファクタfという概念で表現する「基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の」「配向度」が、本件発明1では、「(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」であり、その値が「負の値」であるのに対し、甲1発明では、回折強度の求め方が本件発明1と同じか否か不明であるから、本件発明1の「ロットゲーリングファクタf」とはいえず、さらに配向度が「(hk0)面の配向度」ではなく、ましてや「(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」が「負の値」となることは示されていない点。 イ 相違点の検討 事案に鑑み、相違点2について検討するに、甲1発明において、本件発明1の「ロットゲーリングファクタf」とはいえず、さらに配向度が「(hk0)面の配向度」ではなく、ましてや「(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」が「負の値」となることは示されていない点について、これらを実質的な相違点ではないと判断できる余地はないから、相違点2は実質的な相違点である。 ウ 小括 そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではない。 エ 申立人の主張について (ア)申立人は、申立書において、甲1に記載されているSi3N4セラミックスが、本件発明1の「β型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値」を満たすことを、概略、以下の(i)~(iii)の考察を行うことによって導き出している(申立書6頁1行~14頁6行)。 (i)無配向試料に対応するρ0=ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl)について、「無機結晶構造データベースICSD 番号: 01-074-3491 名称:β-Si3N4のピーク情報」(以下の申立書における図1)におけるβ-Si3N4を「無配向」のものと仮定する。 (図1) 「 [図:0001433142000007.jpg] 」 そして、上記図面において2θが20~65°(塗りつぶし)における(hkl)の強度(I0)について、ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl)を求める。 (ii)配向試料に対応するρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)について、(甲1ウ)で摘記した甲1のFig4の(a)~(d)の2θが20~65°において、上記図1を参照してβ-Si3N4の(hkl)に対応するピークをまず抽出する。 そして、そのFig4の(a)~(d)において、ベースラインを引き(ピーク部分以外の略直線部分を直線で結ぶ)、各ピークについてベースライン(結んだ直線)からピークまでの長さを読み取り、長さの一番長いものを100として、各長さをそれに対する強度(I)とし、Fig4の(a)~(d)の各々について、ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)を求める。 (iii)上記(i)及び(ii)から、f(hk0)=(ρ-ρ0)/(1-ρ0)を求める。 イ 申立人の主張に対する当審の判断 (ア)申立人は、配向試料に対応する甲1のFig4の(a)~(d)から求める「ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)」に対して、無配向試料の「ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl)」を「無機結晶構造データベースICSD 番号: 01-074-3491 名称:β-Si3N4のピーク情報」から求めているが、本件発明1の「β型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」を求める際の「ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl)」は、上記(本イ)の【0036】に記載されているとおり、「回折強度I0は、基準試料(対象試料と同一組成を有する無配向試料)のX線回折スペクトルから計算される」ものである。 ここで、甲1は「出発組成」を「重量比でβ-Si3N4:α-Si3N4:Y203:HfO2:SiO2=10:82:2.5:5:0.5」とするSi3N4セラミックスであり、「無機結晶構造データベースICSD 番号: 01-074-3491 名称:β-Si3N4のピーク情報」を求めたものが、少なくとも「重量比でY203:HfO2:SiO2=2.5:5:0.5」を含むものとはいえないことから、甲1発明のSi3N4セラミックスと同一組成を有するとはいえない。本件発明1の「ロットゲーリングファクタf(hk0)」は、同【0036】に記載されているように「ロットゲーリングファクタf(hk0)は、多結晶体を構成する各結晶粒の配向の程度を表す指標」であり、多結晶体を構成する組成が異なるもの同士において、その多結晶体を構成する各結晶粒の配向が必然的に同じものであるとはいえないから、「無機結晶構造データベースICSD 番号: 01-074-3491 名称:β-Si3N4のピーク情報」から求めたρ0が、甲1発明のSi3N4セラミックスと同一組成を有するものにおいて無配向としたρ0と同じ値であるとはいえない。さらに加えていうなら、「無機結晶構造データベースICSD 番号: 01-074-3491 名称:β-Si3N4のピーク情報」が無配向のものであったと判断できる根拠もないものである。 そうすると、甲4発明のSi3N4セラミックスに対して、「無機結晶構造データベースICSD 番号: 01-074-3491 名称:β-Si3N4のピーク情報」は「基準試料」とはなり得ないものである。 よって、申立人の求めた手法によるロットゲーリングファクタf(hk0)は、本願発明の「ロットゲーリングファクタf(hk0)」とは異なるものである。 (イ)さらに、申立人は、甲1発明のSi3N4セラミックスにおいて、ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)を求める際のI(回折ピーク強度)を「ベースラインを引き、各ピークについてベースラインからピークまでの長さを読み取り、長さの一番長いものを100として、各長さをそれに対する強度(I)」とする手法によって求めているが、本件発明1の「β型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」を求める際の「ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)」のIは「積分強度」であり、両者は強度の値として異なるものである。そうすると、「ρ=ΣI(hk0)/ΣI(hkl)」の「I」を上記手法によって求めたことは、本件発明1の「β型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」の求め方に則したものではない。 さらに加えていうと、「ρ0=ΣI0(hk0)/ΣI0(hkl)」求める際の「無機結晶構造データベースICSD 番号: 01-074-3491 名称:β-Si3N4のピーク情報」の図1における「I0」についても「積分強度」であるのか不明である。 (ウ)したがって、上記(ア)及び(イ)の点で、申立人の上記アの考察は、本件発明1の「β型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」、すなわちf(hk0)=(ρ-ρ0)/(1-ρ0)の求め方に則したものではないから、甲1に記載されているSi3N4セラミックスは、本件発明1の「β型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値」を満たすとの主張は、失当である。 よって、申立人の主張を踏まえて、本件発明1の「窒化ケイ素焼結体」が、甲1発明の「Si3N4セラミックス」であるという判断にはならない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用してさらに発明特定事項を追加するものであるから、本件発明1が甲1発明でない以上、本件発明2も甲1発明ではない。 (3)本件発明3について 本件発明3も、本件発明1を引用してさらに発明特定事項を追加するものであるから、本件発明3と甲1発明との相違点は、少なくとも上記相違点1及び2の点で相違するものである。 そして、相違点2について検討するに、上記甲2には、面内配向度fa=(P-P0)/(1-P0)について記載されているが、それを求めるためのX線回折線強度が「積分強度」であるのか不明であるなど、甲2記載の「面内配向度fa」が、本件発明1の「β型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」と同じものとして定義づけられるものとは判断できない。 仮に、同じものとして定義づけられるものとしても、甲2に記載の技術では、面内配向度faを0.4~0.8とする、さらには0.5~0.7がより望ましいとするものであるから、これを「負の値」とするとの発想はないものである。 そうすると、甲2の記載を参照しても、相違点2は当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、本件発明3は、相違点1及び本件発明3の「厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上である」発明特定事項について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ よって、申立理由1及び2によって、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由3及び4について 申立理由3及び4について、ロットゲーリングファクタf(hk0)に関する理由と、破壊靱性値に関する理由とに整理して判断することとする。 (1)ロットゲーリングファクタf(hk0)に関する理由 ア 申立人の主張 申立人は、本件発明1~3がサポート要件を満たしていない理由として、順に以下の(ア)~(ウ)のとおり述べ、本件発明1~3は「発明の詳細な説明に記載されている発明の課題を解決するために必要な発明特定事項が特許請求の範囲に記載されておらず、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えていると認められ、サポート要件を満たしていません。」と主張している。 (ア)「本件特許明細書には、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01~-0.43の実施例が開示されているものの(本件特許明細書/第0062段落~第0063段落参照)、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超す実施例およびロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.43未満の実施例は開示されておりません。そのため、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超す実施例およびロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.43未満の実施例がβ型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能をより一層改善する課題(本件特許明細書/第0006段落参照)を満たすのかについて、本件特許明細書に記載されていません。」(14頁8~15行) (イ)「本件特許明細書には、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01~-0.43の実施例が開示されているものの(本件特許明細書/第0062段落~第0063段落参照)、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超す実施例およびロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.43未満の実施例は開示されておりません。そのため、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超す実施例およびロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.43未満の実施例が基板厚み方向の熱伝導率が100W/mK以上である特性を満たすのかについて、本件特許明細書に記載されていません。」(15頁下から9行~下から3行) (ウ)「本件特許明細書には、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01~-0.43の実施例が開示されているものの(本件特許明細書/第0062段落~第0063段落参照)、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超す実施例およびロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.43未満の実施例は開示されておりません。そのため、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超す実施例およびロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.43未満の実施例が厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上である特性を満たすのかについて、本件特許明細書に記載されていません。」(19頁24~31行) イ 申立人の主張に対する当審の判断 (ア)上記ア(ア)について 本件発明の課題は、上記(本ア)の【0006】に記載されている「β型窒化ケイ素(β-Si3N4)粒子の配向度のさらなる制御に着目して、β型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能をより一層改善すること」である。 一方、上記(本イ)の【0036】の「f(hk0)が負の値(ρ<ρ0)となれば、得られた試料の方が、無配向試料よりも、(hk0)面の配向度が低いことを意味している。すなわち、得られた試料のロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値をとることで、β型窒化ケイ素粒子の(00l)面(つまり長軸)が板厚方向へ強く配向していることが示される。」との記載、そして、【0041】の「そして、本実施形態の窒化ケイ素焼結体では、基板の厚み方向の熱伝導率が100W/mK以上である。すなわち、β型窒化ケイ素粒子の形状は棒状であり、長軸方向の熱伝導率は短軸方向に比べて約2倍である。そのため、β粒子を板厚方向に揃えたことにより、板厚方向への熱伝導率が大きく改善される。」との機序の記載を踏まえると、本件発明1は「基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値となる」ことが特定されていることにより、β型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能がより一層改善していると理解できる。 このことは、例えば、上記(本エ)の表1及び3を参照すると、「基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)」の値が0.03と負の値に近い比較例7、8において基板厚み方向の熱伝導率が99W/mK、95W/mKと100W/mKに近い値となっていることから、ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超し0未満の負の値の範囲においても、β型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能がより一層改善しているといえるものである。また、上記(本イ)の【0036】に記載されている(式1)~(式3)で計算されるロットゲーリングファクタf(hk0)によれば、f(hk0)が負の値(ρ<ρ0)となるほど、得られた試料が無配向試料よりも(hk0)面の配向度が低くなる、すなわちβ粒子を板厚方向により揃うようになると理解できることから、ロットゲーリングファクタf(hk0)がより負の値である-0.43未満の範囲においてもβ型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能がより一層改善しているといえるものである。 そうすると、申立人の主張する「ロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.01を超す実施例およびロットゲーリングファクタf(hk0)が-0.43未満の実施例は開示されておりません」との理由で、「基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値となる」ことが特定されている本件発明1が、本件発明の課題を解決できないとはいえない。 したがって、本件発明1は、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。 (イ)上記ア(イ)について 本件発明2を書き下すと「β型窒化ケイ素粒子を含む基板を成し、基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値となり、基板厚み方向の熱伝導率が100W/mK以上であることを特徴とする窒化ケイ素焼結体。」であり、「基板厚み方向の熱伝導率が100W/mK以上」であることが発明特定事項とされていることから、「100W/mK以上」との値はβ型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能をより一層改善したものといえる。上記申立人の主張は、本件発明2の発明特定事項を無視したものといえ、当を得たものではない。 したがって、本件発明2は、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。 (ウ)上記ア(ウ)について 本件発明3を書き下すと「β型窒化ケイ素粒子を含む基板を成し、基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値となり、厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上であることを特徴とする窒化ケイ素焼結体。」であり、「基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値」となることが特定されていることから、本件発明3は、上記(ア)で述べたように、β型窒化ケイ素粒子の基板厚み方向の熱伝導性能がより一層改善しているといえるものである。 したがって、本件発明3は、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。 (2)破壊靱性値に関する理由 ア 申立人の主張 (ア)申立人は、本件発明3が実施可能要件を満たしていない理由として、以下のように主張している。 「本件特許発明3における破壊靭性値の測定は、JIS-R1607の規定する厚さの推奨範囲外で行っています。実際に窒化珪素基板を、本件特許明細書記載の方法で、破壊靭性値の測定を試してみたところ、押し込み荷重が10kgfでは、き裂が厚さ方向に貫通してしまう結果となりました(以下の図参照)。そのため、本件特許明細書の方法では、押込み荷重の逃げ場がなく基板平面方向にき裂が伸びてしまっていると考えられ、記載通りに試験実施はできないと認められます。 としてみれば、本件特許発明3の「厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上である」という発明特定事項は、その発明特定事項に係る特性等を定量的に決定するための試験方法について、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、どのように作るか理解できないものであり、実施可能要件を満たしていないと認められます。」(18頁23行~19頁5行) なお、上記JIS-R1607の規定する厚さの推奨範囲とは、上記甲3に記載されている3mm以上のことである。 (イ)申立人は、本件発明3がサポート要件を満たしていない理由として、以下のように主張している。 「本件特許発明3におけるロットゲーリングファクタf(hk0)とは、lの値が0の方向のピーク強度の和に依存していることから、ロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値ほど窒化珪素粒子が基板厚さ方向に配向していることを意味しています。また、同様に、甲第2号証における、面内配向度faとは、c軸が0のピーク強度の和に依存していることから、面内配向度faが負の値ほど窒化珪素粒子が基板厚さ方向に配向していることを意味しています。としてみれば、本件特許発明3の「厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上である」という発明特定事項に関して、基板のロットゲーリングファクタf(hk0)の値が負の値ほど厚み方向の破壊靱性値KC2が低下し、「厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上である」という発明特定事項を満たさないと認められます。」(19頁13~23行) イ 申立人の主張に対する当審の判断 (ア)上記ア(ア)について a まず、本件発明3の窒化ケイ素焼結体の製造方法は、上記(本ウ)の【0053】に記載されており、そして、上記(本ウ)の【表1】~【表4】には、「基板平面におけるβ型窒化ケイ素粒子の(hk0)面の配向度を示すロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値とな」り、「厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上である」「窒化ケイ素焼結体」が実施例として多数記載されていることから、本件発明3の「窒化ケイ素焼結体」は、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているものである。 よって、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、申立人の本件発明3が実施可能要件を満たしていないとの主張はそもそも失当である。 b 本件明細書等には、上記【0053】で記載した製造方法によって製造された窒化ケイ素焼結体に対して、(本ウ)の【0060】に記載されている「試験片の厚みは0.35mmとし、押し込み荷重Pは10kgfとした」条件で破壊靱性試験を行ったとしても、上記図12に記載されているとおり、き裂が厚さ方向に貫通してしまう結果とはなっていないことが示されている。 一方、申立人は「実際に窒化珪素基板を、本件特許明細書記載の方法で、破壊靭性値の測定を試してみたところ、押し込み荷重が10kgfでは、き裂が厚さ方向に貫通してしまう結果となりました」との主張をしているが、当該「窒化珪素基板」が、上記【0053】で記載した製造方法によって製造されたものであることは何ら示されていない。 そうすると、申立人が使用した「窒化珪素基板」において「試験片の厚みは0.35mmとし、押し込み荷重Pは10kgfとした」という条件で、き裂が厚さ方向に貫通してしまったからといって、本件明細書の実施例において厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1、厚み方向の破壊靱性値KC2を実際に求めていることを否定できるものではなく、そして「KC1/KC2が0.85以上」との発明特定事項が実施できないとはいえない。 (イ)上記ア(イ)について a まず、本件発明3が、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものであり、発明の詳細な設明に記載したものであることは、上記(1)イ(ウ)で述べたとおりである。 b また、上記【0060】に「具体的には、基板平面に平行な方向に生じたクラック長さをc1とし、式6のCをc1/2とすることにより、KC1を算出した。また、c1に対して垂直な方向(基板の厚み方向)に生じたクラック長さをc2とし、式6のCをc2/2とすることにより、KC2を算出した」と記載されており、その式6(KC=0.026×E1/2×P1/2×a/C3/2)によれば、基板平面に平行な方向に生じたクラック長さのc1が小さければ、式6のKCであるKC1は大きくなり、基板の厚み方向に生じたクラック長さのc2が大きければ、式6のKCであるKC2は小さくなる。すなわち、基板平面に平行な方向に生じたクラック長さのc1が小さいほど、基板の厚み方向に生じたクラック長さのc2が大きいほど、KC1/KC2は大きくなる。 一方、一般に、柱状結晶(β-Si3N4)が縦方向(基板の厚み方向)に揃うように制御された場合、すなわち、上記(本イ)の【0036】に記載の「f(hk0)が負の値(ρ<ρ0)となれば、得られた試料の方が、無配向試料よりも、(hk0)面の配向度が低いことを意味している。すなわち、得られた試料のロットゲーリングファクタf(hk0)が負の値をとることで、β型窒化ケイ素粒子の(00l)面(つまり長軸)が板厚方向へ強く配向している」場合には、基板平面に平行な方向に生じたクラック長さは小さく、基板の厚み方向に生じたクラック長さは大きくなる傾向にある。 そうすると、f(hk0)が負の値(ρ<ρ0)となれば、KC1/KC2は大きくなる傾向にあるといえることから、申立人の「基板のロットゲーリングファクタf(hk0)の値が負の値ほど厚み方向の破壊靱性値KC2が低下し、「厚み方向に対して垂直な破壊靱性値KC1および厚み方向の破壊靱性値KC2を有し、KC1/KC2が0.85以上である」という発明特定事項を満たさない」との主張は、上記甲2の記載いかんによらず、失当といえる。 (3)まとめ よって、上記(1)イ及び(2)イで判断したように、申立理由3及び4によって、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-701100

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決10件(株式会社MARUWA、渡辺 聡美)
  • 2025-701018異議申立 / 2026-05-29 / 訂正認容窒化ケイ素焼結体、回路基板、および窒化ケイ素焼結体の製造方法
    同じ当事者: 株式会社MARUWA
  • 2025-700757異議申立 / 2026-05-22 / 訂正認容窒化アルミニウム粉末及びその改質方法並びに高分子成形体
    同じ当事者: 株式会社MARUWA
  • 2025-700674異議申立 / 2026-02-05 / 訂正認容窒化ケイ素焼結体、絶縁回路基板、および半導体装置
    同じ当事者: 株式会社MARUWA
  • 2024-700698異議申立 / 2024-10-18 / 維持窒化ケイ素焼結体
    同じ当事者: 株式会社MARUWA
  • 2023-701198異議申立 / 2024-03-05 / 維持窒化ケイ素焼結体
    同じ当事者: 株式会社MARUWA
同じ論点・分野の審決(審決分類)447件(113・C04B、121・C04B、536・C04B ほか)
  • 2025-701018異議申立 / 2026-05-29 / 訂正認容窒化ケイ素焼結体、回路基板、および窒化ケイ素焼結体の製造方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-701141異議申立 / 2026-04-27 / 維持多孔質炭素系材料
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-701142異議申立 / 2026-03-24 / 維持フッ素電解装置用炭素電極
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-700643異議申立 / 2026-02-25 / 訂正認容接合体
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2024-700993異議申立 / 2026-01-07 / 訂正認容セメント組成物、モルタル組成物、及び、コンクリート構造物の補修方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存