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特許訂正審判

2021-390120

自動変速機

審判番号
2021-390120
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2006-317449
登録番号
4821578
請求日
2021年08月13日
審決日
2021年10月18日
公報発行日
2022年02月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【請求人】日産自動車 株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人後藤特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 田村 嘉章
  • 審判官 杉山 健一
  • 審判官 内田 博之
分類
P141 .851-Y (F16H) / P141 .856-Y (F16H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条5項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第4821578号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第4821578号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~10〕について訂正することを認める。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件訂正審判に係る特許第4821578号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成18年11月24日(優先権主張 平成18年2月28日)に特許出願され、平成23年9月16日に特許権の設定登録がされたものであって、令和3年8月13日に、特許権者である日産自動車株式会社より、本件特許に対して本件訂正審判の請求がなされたものである。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲(以下、「本件特許請求の範囲」という。)を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、下記訂正事項1及び2について訂正することを求めるものである(なお、下線は訂正箇所を示すため請求人が付したものである。)。 1 訂正事項1 本件特許請求の範囲の請求項1に「前記バルブボディを前記クラッチと軸方向に隣り合わせて配置すると共に、前記オイルポンプを前記入力軸からオフセットさせて前記クラッチまたは前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置することを特徴とする」と記載されているのを、「前記バルブボディを前記クラッチと軸方向に隣り合わせて配置すると共に、前記オイルポンプを前記入力軸から該入力軸と平行な軸線上にオフセットさせて前記クラッチまたは前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置することを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5~10も同様に訂正する)。 2 訂正事項2 本件特許請求の範囲の請求項10に「前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置したことを特徴とする自動変速機。」と記載されているのを、「すべての前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置したことを特徴とする自動変速機。」に訂正する。 第3 当審の判断 1 訂正事項1 (1)訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「前記オイルポンプ」を「前記入力軸」からどこに「オフセット」させるものか特定されていなかったものを、訂正後の請求項1において、「前記オイルポンプを前記入力軸から該入力軸と平行な軸線上にオフセットさせて」と記載することで、「該入力軸と平行な軸線上」に「オフセット」しているものであることを、より具体的に特定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記(1)のとおり、訂正前の請求項1に係る発明を限定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではない。 したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1に関し、願書に添付した明細書の段落【0088】及び【0091】には、次の記載がある。 「【0088】 また、図4に示すように、クラッチパックCPと第1バルブボディ81と変速機構部TMとは、エンジンE側からクラッチパックCP、第1バルブボディ81、変速機構部TMの順で軸方向同軸線O1上に配置されていると共に、オイルポンプ4は、軸線O1と平行な第2の軸線O2上であって第1バルブボディ81と軸直交方向に重なるように配置されている。尚、図4中、軸線O1及びO2上の黒丸は、軸線が各構成要素を貫通する際の貫通位置を表す。」 「【0091】 一方、オイルポンプ4は第1バルブボディ81の下方位置に配置されている。オイルポンプ4には、駆動入力軸2と同軸上に設けられたオイルポンプ駆動ギヤ2aと噛合するオイルポンプ従動ギヤ4aが設けられている。すなわち、オイルポンプ4を駆動するためのオイルポンプ従動ギヤ4aの回転軸と駆動入力軸2とは異なる軸線上に配置されている。言い換えると、図4,5に示すように、オイルポンプ4は第1及び第2変速機入力軸5,6からオフセットさせて第1バルブボディ81と軸直交方向に重なるように配置されている。」 したがって、「前記オイルポンプを前記入力軸から該入力軸と平行な軸線上にオフセットさせて」配置することは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項1は、上記(1)のとおり、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か検討を要するものである。 ア 訂正発明1 訂正発明1は、審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認める。 「【請求項1】 変速比を作り出す変速機構部と、 該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素と、 駆動源の動力を前記変速機構部に入力する入力軸と同軸上に設けられ、前記駆動源と前記変速機構部の間の動力を油圧作動により断続するクラッチと、 前記変速要素及び前記クラッチの制御油圧を作り出す油圧コントロールバルブと、 前記油圧コントロールバルブのうち、少なくとも前記クラッチの制御油圧を作り出すクラッチ制御用コントロールバルブを収装するバルブボディと、 前記油圧コントロールバルブへ油圧を供給するオイルポンプと、 を備え、 前記バルブボディを前記クラッチと軸方向に隣り合わせて配置すると共に、前記オイルポンプを前記入力軸から該入力軸と平行な軸線上にオフセットさせて前記クラッチまたは前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置することを特徴とする自動変速機。」 イ 請求人の証拠方法 請求人は、審判請求書に甲第1号証及び甲第2号証を添付して提出した。 甲第1号証:米国特許第2386217号明細書 甲第2号証:特開2000-352431号公報 ウ 甲第1号証の記載、甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、図面とともに次の記載がある(訳は請求人が提出した甲第1号証の抄訳に基づき当審で付したもの。)。 (ア)「This invention relates to an automatic variable speed transmission the operation of which can be varied by hand.」(明細書第1ページ左欄第1行~第3行) 「翻訳:この発明は、手動で動作を変化させることのできる自動変速機に関する。」 (イ)「The apparatus forming the subject of the invention is of the type with two clutches mounted on concentric shafts and controlling constant mesh gears. These latter are driven by the shafts by means of dog clutches of the "synchromesh" type or the like.」(明細書第1ページ左欄第24行~第29行) 「翻訳:本発明の主題を形成する装置は、同心シャフトに取り付けられ、メッシュギアを制御する2つのクラッチを備えたタイプのものである。これらの後者は、『シンクロメッシュ』などのドッグクラッチを用いて上記シャフトによって駆動される。」 (ウ)「Figure 21 is a diagram of a five-speed gear box. The gear case of ordinary construction is indicated by 1. 2 is the engine shaft and 3 the driven shaft. On the engine shaft 2 is fixed the group of the two clutches which comprises a flywheel 4, a plate 5 movable axially, a distributor plate 6 fixed to the flywheel 4 by a series of bolts 7.」(明細書第3ページ左欄第1行~第8行) 「翻訳:図21は、5速ギアボックスの図である。通常の構造を有するギアケースの符号を1で示す。2はエンジンシャフト、3は駆動シャフトを表す。エンジンシャフト2には、フライホイール4、軸方向に移動可能なプレート5、及び一連のボルト7によってフライホイール4に固定された分配プレート6を含む2つのクラッチの群が固定されている。」 (エ)「Two clutch plates 14 and 15 are arranged on the one hand between the movable plate 5 and the flywheel 4 and, on the other hand, between the second plate of the movable plate 5 and the distributor plate 6. The latter has, close to its hub, an annular channel 16 (Figures 1, 3, 5 and 9) communicating with a conduit 17 bored in the plate 6. This conduit 17 terminates at the periphery of the plate 6 above the speed valve 18, provided with a calibrated spring 19 (Figures 3 and 4).」(明細書第3ページ左欄第23行~第33行) 「翻訳:2つのクラッチプレート14及び15の一方は可動プレート5とフライホイール4との間に配置され、他方は可動プレート5の第2のプレートと分配プレート6との間に配置される。 後者は、そのハブの近くに、プレート6に開けられた導管17と接続する環状チャネル16(図1、3、5、及び9)を有する。この導管17は、バルブ18の上方におけるプレート6の周囲部分を終端とし、構成済みバネ19が設けられている(図3及び4)。」 (オ)「The hydraulic body 26 is fixed to the casing 1. It may be made in a single piece with this casing without thereby changing in any way the character of the invention. The hydraulic body 26 centralises all the hydraulic operations of the system. It contains the pump 27 (Figures 6 and 9), here provided with blades 28, which is driven by the tubular shaft 29 and the dog clutches 30 (Figures 1, 4, 5 and 9) provided in the interior of the hub of the clutch plate 6 rotating with the flywheel 4. The admissiotn of oil to the pump 27 takes place through a tube 31 which descends into the lower portion of the casing 1. The pump delivers the oil through the conduit 32 (Figures 6 and 9) to the interior of the double selector 33 (Figures 8, 9 and 11).」(第3ページ左欄第51行~第67行) 「翻訳:油圧体26はケーシング1に固定されている。油圧体26がケーシング1を備えた単一の製品として構成されても、本発明の特徴は変わらない。油圧体26は、システムのすべての油圧操作を集中化する。油圧体26は、ブレード28を備えたポンプ27(図6及び9)を含む。ポンプ27は、管状シャフト29及びドッグクラッチ30(図1、4、5及び9)によって駆動される。ドッグクラッチ30は、フライホイール4とともに回転するクラッチプレート6のハブの内部に設けられている。 ポンプ27へのオイル供給は、ケーシング1の下部に配管されたチューブ31を通って行われる。ポンプは、導管32(図6及び9)を介して二重セレクタ33(図8、9及び11)の内部に油を送る。」 (カ)「The distributor 57 is constituted by a hollow ring with thin walls 58 (Figures 12 and 13). Its single rigid face 59 is bored with holes 60 which permit of placing the chamber 56 in communication with the channel 16 which supplies the conduit 17 of the clutch plate 6. The delivery conduit 32 of the pump (Figure 9) is provided with a discharge valve 61 with spring 62 limiting the pressure of oil to the desired rate of working.」(明細書第3ページ右欄第52行~第61行) 「翻訳:分配体57は、薄い壁58を備えた中空リングによって構成される(図12及び13)。分配体57の一の剛性面59には、チャンバ56と、クラッチプレート6の導管17に供給するチャネル16と、を連通状態とする穴60が設けられている。ポンプ(図9)の導管32は、ばね62を備えた排出弁61を備えている。このばね62はオイルの圧力を所望の作動速度に制限する。」 (キ)「There appertain furthermore to the hydraulic body 26,two oil-tight cylinders 63 and 64 (Figures 6 and 8) in each of which a piston 65 and 66 can move. The rod 67 of the piston 65 has a fork 68 which controls the dog clutch sleeve 69 mounted on the secondary shaft of the change speed gear (Figure 1). The rod 70 of the piston 66 has the fork 71 which controls the dog clutch sleeve 72 mounted on the principal shaft of the change speed gear box.」(明細書第3ページ右欄第62行~第71行) 「翻訳:さらに、油圧体26には、ピストン65及び66がそれぞれ移動することができる2つの油密シリンダ63及び64(図6及び8)が設けられている。ピストン65のロッド67は、変速ギアの二次シャフトに取り付けられたドッグクラッチスリーブ69を制御するフォーク68を有する(図1)。ピストン66のロッド70は、変速ギアボックスの主軸に取り付けられたドッグクラッチスリーブ72を制御するフォーク71を有する。」 (ク)「If now the sliding sleeve 34 is shifted to bring it to its extreme position shown on Figure 16, it is seen that the oil will pass through one of the perforated grooves 40 of the sleeve 34 to penetrate through one of the passages-that of first speed-into the small chamber 49 (Figures 8 and 10) to then act, through the passage 116 on the piston 65 controll the dog clutch sleeve 69. The piston will thus place the latter in engagement with the dog clutch teeth 92 (Figure 1) of the toothed wheel 91. During its stroke the piston 65 will uncover the conduit 117 (Figures 6, 8 and 10) which will take the oil to the distributor 57-60 and, from there, as previously, to the admission valve 20 (Figures 3 and 4) and then behind the annular piston 9.」(明細書第5ページ左欄第9行~第24行目) 「翻訳:ここで、スライドスリーブ34が図16に示される極端な位置にシフトすると、オイルはスリーブ34の穿孔溝40の1つを介して通路の1つを通過し、小チャンパ49(図8および10)に流れ込む。そして、オイルは、ピストン65の通路116を通って、ドッグクラッチスリーブ69を制御する。したがって、このピストンは、後者を歯車91のドッグクラッチ歯92(図1)と係合させる。そのストローク中に、ピストン65が導管117(図6、8及び10)を露出させることで、オイルが分配体57~60から、アドミッションバルブ20(図3及び4)、そして環状ピストン9に流れる。」 (ケ)「The engine running at a speed higher than its idle running rate, the head piece 22 has closed the oil outlet, so that no escape being provided, the pressure will act with its maximum intensity behind the annular piston 9,overcoming the resistance of the elastic piston ring 114, and carrying the sliding plate 5 along until the latter sufficiently compresses the clutch disc 15, to obtain the transmission of the drive. The disc 14 remains completely free. The first speed will then be obtained, passing through the gears 90-91, the dog clutch sleeve 69, the toothed wheel 88, keyed on the secondary shaft, and the pinion 86 integral with the driven shaft. It will be noted that the pinion 85 which engages with the toothed wheel 87 integral with the secondary shaft, will rotate idly on the first shaft. It wi11 be the same with the toothed wheel 93 mounted idly on the secondary shaft, and which will be driven by the pinion 89 integral with the shaft 83.」(明細書第5ページ左欄第24行~第44行) 「翻訳:エンジンはアイドル運転速度よりも高い速度で作動してヘッド部22がオイル出口を閉塞すると、オイルの逃げ道が無くなる。このため、圧力は環状ピストン9の後部において最大となり、弾性ピストンリング114の抵抗に打ち勝つ。そして、この圧力は駆動伝達を実現すべく、クラッチディスク15を十分に圧縮するまでスライドプレート5を移動させる。このときクラッチディスク14はフリーな状態となっている。そして、歯車90~91、ドッグクラッチスリーブ69、二次シャフトに設けられた歯車88、及び駆動軸と一体のピニオン86により第1速が実現される。なお、二次シャフトと一体の歯車87に従動するピニオン85は、第1シャフトに対して空転する。これは、シャフト83と一体のピニオン89で駆動される二次シャフトの歯車93についても同様に空転する。」 (コ)「The oil will then displace the push piece or driver 74 (Figures 6 and 7) which, through its needle, will uncover the orifices 76 and 78, thus placing the cylinder 63 in communication with the exterior and at the same time, all the conduits leading to the valve 18 (Figures 3 and 4), the latter under the effect of the reduction of pressure, and acted upon by its spring 19, will close, uncovering the outlet orifice 21.」(明細書第5ページ右欄第1行~第9行) 「翻訳:次に、オイルがプッシュピース又はドライバー74(図6及び7)を押すことで、これらは爪でオリフィス76及び78を開放し、シリンダ63を外部に連通させることと同時に、シリンダ63をバルブ18(図3及び図4)と繋がるすべての導管に連通させ、減圧下におけるバネ19の作用によって出ロオリフィス21を開放させる。」 (サ)「The latter, finding an outlet through the orifices 76 and 78, will escape and, the pressure falling, the valve 18 for the supply of oil to the gears will again close, at the same time evacuating the oil contained behind the annular piston 9.」(明細書第6ページ左欄第1行~第6行) 「翻訳:後者のシリンダー63は、オリフィス76及び78を通してオイル出口を見つけて逃がし、圧力が低下すると、歯車にオイルを供給するためのバルブ18が再び閉じ、同時に環状ピストン9の後ろに含まれるオイルを排出する。」 (シ)図1 「 [図:0001381618000001.jpg] 」 (ス)図6 「 [図:0001381618000002.jpg] 」 (セ)甲第1号証の図1、4、5及び9から、ポンプ27を駆動する管状シャフト29及びドッグクラッチ30は、エンジンシャフト2と同軸に形成されていることが看取できる。 (ソ)甲第1号証の図1及び図6から、エンジンシャフト2側から、クラッチプレート14、15、プッシュピース74を収装するハウジング、歯車89~95の順で軸方向同軸線上に配置されていることが看取できる。 (タ)甲第1号証の図6から、ポンプ27は、プッシュピース74を収装するハウジングとエンジンシャフト2の軸直交方向に重なるように配置されていることが看取できる。 (チ)甲第1号証の図1、6、7、12及び13から、プッシュピース74を収装するハウジング(図6のハッチングで示された部材)がクラッチプレート14、15に対して軸方向に隣接する構成、及び2つのプッシュピース74の一方がオイル流入孔として機能する分配体57の穴60よりも低い位置に配置され、他方が該穴60よりも高い位置に配置されていることが看取できる。 (ツ)甲第1号証の図6から、ポンプ27の油路であるチューブ31と導管32は、軸を挟んで対向する位置に配置されていることが看取できる。 上記(ア)~(ツ)の記載及び看取事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明] 「第1速等の変速比を作り出す歯車89~95と、 変速比を油圧作動により制御するピストン65、66、ロッド67、70、フォーク68、71及びドッグクラッチスリーブ69、72からなる機械要素と、 エンジンの動力を歯車89~95に入力するエンジンシャフト2と同軸上に設けられ、エンジンと歯車89~95の間の動力を油圧作動により断続するクラッチプレート14、15と、 上記機械要素及びクラッチプレート14、15の制御油圧を作り出すバルブ18及びプッシュピース74と、 バルブ18及びプッシュピース74のうち、少なくともクラッチプレート14、15の制御油圧を作り出す2つのプッシュピース74を収装するハウジングと、 バルブ18及びプッシュピース74へ油圧を供給するポンプ27と、 を備え、 上記ハウジングをクラッチプレート14、15と軸方向に隣り合わせて配置するとともに、クラッチプレート14、15、上記ハウジング、歯車89~95の順で、エンジンシャフト2側から軸方向同軸線上に配置し、 ポンプ27を、上記ハウジングと軸直交方向に重なるように配置し、 前記2つのプッシュピース74の一方がオイル流入孔として機能する分配体57の穴60よりも低い位置に配置され、他方が該穴60よりも高い位置に配置されている自動変速機。」 エ 甲第2号証の記載、甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、図面とともに次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、概して言えば、トランスミッション、ディファレンシャル(差動歯車装置)またはブレーキ装置に使用するための、例えばクラッチ組立体やブレーキ組立体のような摩擦装置に関する。より詳細に言えば、本発明はマルチクラッチ組立体またはマルチブレーキ組立体に関する。」 「【0011】 【発明が解決しようとする課題】したがって、当業界では、異なるデザインおよび大きさのトランスミッションと簡単に組み合わせることができ、占有空間、重量および製造コストも減ずることのできる、広範囲に適用可能で、それ自体で完全なユニットを形成するマルチクラッチ組立体が必要とされる。」 「【0022】 【発明の実施の形態】図を参照する。本発明による、クラッチ組立体のごとき摩擦装置が、全体を符号10で示されている。クラッチ組立体10は、トランスミッション、補助レンジトランスミッション、ディファレンシャルまたはブレーキシステムに関連づけて使用されるようになされている。例えば(これに限定されるものではない)、当業界で普通に知られているように、また、図1に最も良く示され且つ図4に模式的に示されているように、全体を符号12で示す補助レンジトランスミッションは、典型的には、例えば内燃エンジン(図示せず)のような原動機と連動可能なように連結されている入力シャフト14を含んでいる。自動車への適用例では、トランスミッション12はさらに、例えば駆動シャフト(図示せず)やディファレンシャル20を有する車軸18といった他の駆動列構成要素を介して被駆動ホイールと連動可能なように連結されている出力シャフト16も含んでいる。少なくとも一つの歯車セット(複数の歯車セット22,24,26,28,30であることが多い)が、入力シャフト14と出力シャフト16との間に、連動可能に連結されている。トランスミッションケーシング32が、トランスミッション12の入力シャフト14、出力シャフト16および歯車セット22,24,26,28,30を支持している。 【0023】歯車セット22,24,26,28,30の様々な構成要素が、トランスミッション12の歯車比を変えるために、保持されたり作動せしめられたりする。この目的のため、トランスミッション12は、典型的には、少なくとも一つの摩擦装置10を備える。(略)」 「【0026】望ましい実施例においては、第1のクラッチパック50は、複数の環状プレート52と、複数の環状摩擦ディスク54とを備えている。複数の環状摩擦ディスク54は、複数の環状プレート52間に交互に入り込むように配置、すなわち挿置されている。プレート52は、第1の駆動部材42と一緒に回転できるよう、該第1の駆動部材42にスプライン止めされており、摩擦ディスク54は、第1の被駆動部材46と一緒に回転できるよう、該第1の被駆動部材46にスプライン止めされている。また、第1のクラッチピストン60が、ハウジング34内で、第1のクラッチパック50に関する係合解除位置と係合位置との間を移動可能なように支持されている。第1のクラッチピストン60の移動により、第1のクラッチ36は作動され、第1の駆動部材42および第1の被駆動部材46を結合させたり、これらの部材42,46の結合を解除したりする。 【0027】第2のクラッチ38は、第1のクラッチ36に関して同軸関係でハウジング34内に支持されており、また、第2のクラッチ38は、該ハウジング34内で、第1の駆動部材42を支持するのに用いられているのと同じ駆動ハブ44上に回転可能に支持されている第2の駆動部材62を備えている。第2のクラッチ38はまた、ハウジング34内で第2の被駆動シャフト66上に回転可能に支持されている第2の被駆動部材64も備えている。第1の被駆動シャフト48および第2の被駆動シャフト66は、互いに関して同軸関係に配置されている。第2のクラッチパック68は、第2の駆動部材62と第2の被駆動部材64との間に挿置され、第2の駆動部材62と第2の被駆動部材64との間でトルクを伝達したり該伝達を中断したりするため、該第2の駆動部材62および第2の被駆動部材64を選択的に互いに結合させたり結合解除させたりする。」 「【0032】望ましい実施例においては、クラッチ組立体10はモジュラーとして設計され、封止された室92をさらに備えている。室92は、流体漏れしないようにされており、また、第1のクラッチ36と,第2のクラッチ38と,ねじりダンパ40と、トランスミッション12の以下の構成要素のグループの中の少なくとも2つの補助構成要素とを収容するようになされている。そのグループとは、図3に示すように、オイルポンプ94と、制御弁組立体96と、ソレノイド弁98と、第1のクラッチ36および第2のクラッチ38の作動を制御するのに利用される電子制御手段の容積を調整するための液圧スライド100と、オイルポンプ94のための駆動ホイール102とを含む。図2に示すように、室92は、壁104と、仕切106とを含む。仕切106は、室92と該室92内に配置された構成要素36,38,40,94,96,98,100,102を潤滑するための潤滑剤との間に封止状態を確立する。第1の駆動部材42,壁104および第2の遠心質量体90は、少なくとも2つの構成要素94,96,98,100,102を包囲する。」 また、甲第2号証の図3には、オイルポンプ94が室92の中心軸からずれた位置を軸心とするように配置されている構成であり、また、図1には、被駆動シャフト48が上記室92の中心軸と略一致する構成であり、さらに、図4には、入力シャフト14に対して同軸延長線上に被駆動シャフト48が延在する構成であることが看取できる。 上記記載及び看取事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 [甲2発明] 「変速比を作り出す歯車セット22、24、26、28、30と、 該歯車セット22、24、26、28、30の変速比を制御する構成要素と、 原動機の動力を歯車セット22、24、26、28、30に入力する入力シャフト14と同軸上に設けられ、原動機と歯車セット22、24、26、28、30の間の動力を油圧作動により断続する第1及び第2のクラッチ36、38と、 クラッチ36、38の制御油圧を作り出す液圧スライド100を収装する制御弁組立体96と、 ソレノイド弁98へ油圧を供給するオイルポンプ94と、 を備え、 オイルポンプ94を入力シャフト14の軸心からオフセットさせるマルチクラッチ組立体10及びトランスミッション12。」 オ 甲1発明との対比 訂正発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「歯車89~95」は、訂正発明1の「変速機構部」に相当し、 以下同様に、「機械要素」は、「変速要素」に、 「エンジン」は、「駆動源」に、 「エンジンシャフト2」は、「入力軸」に、 「クラッチプレート14、15」は、「クラッチ」に、 「バルブ18及びプッシュピース74」は、「油圧コントロールバルブ」及び「クラッチ制御用コントロールバルブ」に、 「ハウジング」は、「バルブボディ」に、 「ポンプ27」は、「オイルポンプ」に、 「自動変速機」は、「自動変速機」に、それぞれ相当する。 以上のとおりであるから、訂正発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点1] 「変速比を作り出す変速機構部と、 該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素と、 駆動源の動力を前記変速機構部に入力する入力軸と同軸上に設けられ、前記駆動源と前記変速機構部の間の動力を油圧作動により断続するクラッチと、 前記変速要素及び前記クラッチの制御油圧を作り出す油圧コントロールバルブと、 前記油圧コントロールバルブのうち、少なくとも前記クラッチの制御油圧を作り出すクラッチ制御用コントロールバルブを収装するバルブボディと、 前記油圧コントロールバルブへ油圧を供給するオイルポンプと、 を備え、 前記バルブボディを前記クラッチと軸方向に隣り合わせて配置した自動変速機。」 [相違点1] 訂正発明1が「前記バルブボディを前記クラッチと軸方向に隣り合わせて配置すると共に、前記オイルポンプを前記入力軸から該入力軸と平行な軸線上にオフセットさせて前記クラッチまたは前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置する」という構成を備えているのに対して、甲1発明は該構成を備えていない点。 カ 甲1発明との相違点に係る判断 上記相違点1について検討する。 甲第2号証には、上記エの記載から「第1のクラッチ36及び第2のクラッチ38の制御油圧を生成する液圧スライド100にオイルを供給するオイルポンプ94を、入力シャフト14の軸心からオフセットさせる」事項(以下、「甲2技術的事項」という。)が記載されているといえる。 しかしながら、甲1発明のポンプ27は、上記ウ(オ)の記載及びウ(セ)の看取事項のとおり、エンジンシャフト2と同軸の管状シャフト29及びドッグクラッチ30によって駆動されるものであり、さらに、上記ウ(オ)の記載事項及び上記ウ(ツ)の看取事項のとおり、オイル供給側のチューブ31と送出側の導管32とが、中央の軸を挟んで対向する位置に配置されているものである。 これら記載及び看取事項から、甲1発明のポンプ27において、その位置をエンジンシャフト2の軸線位置から該エンジンシャフト2と平行な軸線上にオフセットさせることは、管状シャフト29、ドッグクラッチ30をエンジンシャフト2と別途の軸において形成しなければならず、更に、チューブ31及び導管32の配置変更をしなければならないことを意味するものであって、このような配置変更によって、ギアボックス1全体の容量が大きくなってしまうことや機構の複雑化は避けられず、当業者が通常選択し得ないものである。 そうすると、甲1発明において、上記甲2技術的事項を適用して、ポンプ27をエンジンシャフト2から該エンジンシャフト2と平行な軸線上にオフセットして配置することは、当業者であっても容易に想到し得たことということはできない。 したがって、訂正発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 キ 甲2発明との対比 訂正発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「歯車セット22、24、26、28、30」は、訂正発明1の「変速機構部」に相当し、 以下同様に、「原動機」は、「駆動源」に、 「入力シャフト14」は、「入力軸」に、 「第1及び第2のクラッチ36、38」は、「クラッチ」に、 「液圧スライド100」は、「クラッチ制御用コントロールバルブ」に、 「制御弁組立体96」は、「バルブボディ」に、 「オイルポンプ94」は、「オイルポンプ」にそれぞれ相当する。 甲2発明の「該歯車セット22、24、26、28、30の変速比を制御する構成要素」は、訂正発明1の「該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素」との関係において、「該変速機構部の変速比を制御する変速要素」の限りにおいて一致する。 甲2発明の「オイルポンプ94を入力シャフト14の軸心からオフセットさせること」は、訂正発明1の「前記オイルポンプを前記入力軸から該入力軸と平行な軸線上にオフセットさせて前記クラッチまたは前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置すること」との関係において、「前記オイルポンプを前記入力軸の軸心からオフセットさせた」限りにおいて一致する。 甲2発明の「補助レンジトランスミッション12」は、訂正発明1の「自動変速機」との関係において、「変速機」である限りにおいて一致する。 以上のとおりであるから、訂正発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点A] 「変速比を作り出す変速機構部と、 該変速機構部の変速比を制御する変速要素と、 駆動源の動力を前記変速機構部に入力する入力軸と同軸上に設けられ、前記駆動源と前記変速機構部の間の動力を油圧作動により断続するクラッチと、 前記クラッチの制御油圧を作り出すクラッチ制御用コントロールバルブを収装するバルブボディと、 前記クラッチ制御用コントロールバルブへ油圧を供給するオイルポンプと、 を備え、 前記オイルポンプを前記入力軸の軸心からオフセットさせた変速機。」 [相違点A] 訂正発明1が「該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素」と「変速要素及びクラッチの制御油圧を作り出す油圧コントロールバルブ」を備え、「オイルポンプ」が「変速要素」の「制御油圧を作り出す」「油圧コントロールバルブへ油圧を供給する」ものであるのに対して、甲2発明はトランスミッション12の制御油圧を作り出すバルブを備えているのか不明であり、オイルポンプ94が変速用油圧制御バルブに油圧を供給するものであるのか不明である点。 [相違点B] 訂正発明1が「前記バルブボディを前記クラッチと軸方向に隣り合わせて配置すると共に、前記オイルポンプを前記入力軸から該入力軸と平行な軸線上にオフセットさせて前記クラッチまたは前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置する」「自動変速機」であるのに対し、甲2発明は制御弁組立体96とクラッチ36、38との軸方向位置が不明であり、オイルポンプ94がクラッチ36、38または制御弁組立体96の少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置されているのか不明な変速機である点。 ク 甲2発明との相違点に係る判断 上記相違点Aについて検討する。 甲第1号証には、上記ウから「機械要素65~72の制御油圧を作り出すバルブ18、および、該バルブ18へ油圧を供給するポンプ27を具備する自動変速機」(以下、「甲1技術的事項」という。)が記載されているといえる。 甲第2号証には、「トランスミッション、ディファレンシャル(差動歯車装置)またはブレーキ装置に使用するための、例えばクラッチ組立体やブレーキ組立体のような摩擦装置に関する。」(段落【0001】)と記載されており、トランスミッション以外にも増速・減速機構であるディファレンシャル又はブレーキ装置にも適用可能なものであることが把握できる。 また、甲第2号証は、トランスミッション等に簡単に組み合わせることのできる動力の接続・遮断機構(クラッチ36、38)を含むマルチクラッチ組立体を提供する技術思想を開示しているが、当該マルチクラッチ組立体とトランスミッションとの具体的な機構的な繋がりを開示しているものではなく、その示唆もない。 さらに、甲第2号証には、「望ましい実施例においては、クラッチ組立体10はモジュラーとして設計され、封止された室92をさらに備えている。室92は、流体漏れしないようにされており、また、第1のクラッチ36と,第2のクラッチ38と,ねじりダンパ40と、トランスミッション12の以下の構成要素のグループの中の少なくとも2つの補助構成要素とを収容するようになされている。」(段落【0032】)と記載されており、室92が封止されて液密であるモジュラーとして設計されていることが把握できる。 そうすると、甲2発明のマルチクラッチ組立体は、以上のようにトランスミッション以外にも適用可能な機構を提供するものであり、かつ、モジュラーとして液密に設計されているものであることからすると、甲2発明のオイルポンプ94を、該室92の外に位置するトランスミッションに対して油圧を提供するように形成することは、当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、相違点Bについて検討するまでもなく、訂正発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明及び甲第1号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ケ 新規性・進歩性以外の独立特許要件について 訂正発明1において、新規性・進歩性以外の独立特許要件に関して、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらない。 コ 小括 よって、訂正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)訂正事項1のまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 2 訂正事項2 (1)訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項10において、「前記クラッチ制御用コントロールバルブ」を構成するバルブのうち、どれが「前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるように配置した」ものか特定されていなかったものを、「すべての前記クラッチ制御用コントロールバルブ」であることを特定することにより、クラッチ制御用コントロールバルブの構成をより具体的に特定して限定するものである。 よって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、上記(1)のとおり、訂正前の請求項10に係る発明を限定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではない。 したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2に関し、願書に添付した明細書の段落【0038】には、次の記載がある。 「【0038】 なお、ライン圧ソレノイドバルブ70と第1クラッチ圧ソレノイドバルブ71と第2クラッチ圧ソレノイドバルブ72は、『クラッチ制御用コントロールバルブ』に相当する。 そして、前記オイルポンプ4とライン圧ソレノイドバルブ70とは、ポンプ圧油路73により連結されている。」 上記段落【0038】の記載から、請求項10における「クラッチ制御用コントロールバルブ」とは、ライン圧ソレノイドバルブ70、第1クラッチ圧ソレノイドバルブ71及び第2クラッチ圧ソレノイドバルブ72を意味するものであることが把握できる。 また、願書に添付した明細書の段落【0094】には、次の記載がある。 「【0094】 第1及び第2クラッチ油路77,78は、クラッチパックCPの軸心近傍に設けられクラッチ油圧室に開口するオイル流入・流出孔CP1に接続されている。第1バルブボディ81内で調圧された作動油圧は、このオイル流入・流出孔CP1を介してクラッチ油圧室に供給される。図3に示すように、このオイル流入・流出孔CP1は、第1クラッチ圧ソレノイドバルブ71及び第2クラッチ圧ソレノイドバルブ72が、このオイル流入・流出孔CP1に対して同じ高さ以上の位置になるように配置されている。」 更に、願書に添付した図面の【図3】は、次のとおり記載されている。 「 [図:0001381618000003.jpg] 」 上記【図3】から、ライン圧ソレノイドバルブ70、第1クラッチ圧ソレノイドバルブ71及び第2クラッチ圧ソレノイドバルブ72が、いずれもオイル流入・流出孔CP1より、高い位置にあることが看取できる。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項2は、上記(1)のとおり、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定に該当するものであるか、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けるものであることか否か検討を要するものである。 ここで、請求項10は、請求項1ないし4のいずれか1項の記載を引用するものである。このうち、請求項1ないし3のいずれか1項の記載を引用する請求項10に係る発明は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、上記1(4)と同様に、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 これに対し、請求項4の記載を引用する請求項10に係る発明(以下、「訂正発明4-10」という。)は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものではないから、別途検討を行う。 ア 訂正発明4-10 訂正発明4-10は、審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項4及び10に記載された次の事項により特定されるものと認める。 「【請求項4】 変速比を作り出す変速機構部と、 該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素と、 駆動源の動力を前記変速機構部に入力する入力軸と同軸上に設けられ、前記駆動源と前記変速機構部の間の動力を油圧作動により断続するクラッチと、 前記変速要素及び前記クラッチの制御油圧を作り出す油圧コントロールバルブと、 前記油圧コントロールバルブのうち、少なくとも前記クラッチの制御油圧を作り出すクラッチ制御用コントロールバルブを収装するバルブボディと、 前記油圧コントロールバルブへ油圧を供給するオイルポンプと、 を備え、 前記クラッチと前記バルブボディと前記変速機構部とを、前記駆動源側から前記クラッチ、前記バルブボディ、前記変速機構部の順で軸方向同軸線上に配置すると共に、 前記オイルポンプを、前記軸線と平行な第2の軸線上であって前記クラッチ及び前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置することを特徴とする自動変速機。」 「【請求項10】 請求項1ないし4いずれか1つに記載の自動変速機において、 すべての前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置したことを特徴とする自動変速機。」 イ 甲1発明との対比 訂正発明4-10と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「歯車89~95」は、訂正発明4-10の「変速機構部」に相当し、 以下同様に、「機械要素」は、「変速要素」に、 「エンジン」は、「駆動源」に、 「エンジンシャフト2」は、「入力軸」に、 「クラッチプレート14、15」は、「クラッチ」に、 「バルブ18及びプッシュピース74」は、「油圧コントロールバルブ」及び「クラッチ制御用コントロールバルブ」に、 「ハウジング」は、「バルブボディ」に、 「ポンプ27」は、「オイルポンプ」に、 「自動変速機」は、「自動変速機」に、それぞれ相当する。 甲1発明の「クラッチプレート14、15、上記ハウジング、歯車89~95の順で、エンジンシャフト2側から軸方向同軸線上に配置」することは、訂正発明4-10の「前記クラッチと前記バルブボディと前記変速機構部とを、前記駆動源側から前記クラッチ、前記バルブボディ、前記変速機構部の順で軸方向同軸線上に配置する」ことに相当する。 甲1発明の「ポンプ27を、上記ハウジングと軸直交方向に重なるように配置」することは、訂正発明4-10の「前記オイルポンプを、前記軸線と平行な第2の軸線上であって前記クラッチ及び前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置する」との関係において、「前記オイルポンプを、前記クラッチ及び前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置する」限りにおいて一致する。 甲1発明の「分配体57の穴60」は、訂正発明4-10の「オイル流入穴」に相当する。そうすると、甲1発明の「前記2つのプッシュピース74の一方がオイル流入孔として機能する分配体57の穴60よりも低い位置に配置され、他方が該穴60よりも高い位置に配置されている」ことは、訂正発明4-10の「すべての前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置した」こととの関係において、「一部の前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置した」限りにおいて一致する。 以上のとおりであるから、訂正発明4-10と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点2] 「変速比を作り出す変速機構部と、 該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素と、 駆動源の動力を前記変速機構部に入力する入力軸と同軸上に設けられ、前記駆動源と前記変速機構部の間の動力を油圧作動により断続するクラッチと、 前記変速要素及び前記クラッチの制御油圧を作り出す油圧コントロールバルブと、 前記油圧コントロールバルブのうち、少なくとも前記クラッチの制御油圧を作り出すクラッチ制御用コントロールバルブを収装するバルブボディと、 前記油圧コントロールバルブへ油圧を供給するオイルポンプと、 を備え、 前記クラッチと前記バルブボディと前記変速機構部とを、前記駆動源側から前記クラッチ、前記バルブボディ、前記変速機構部の順で軸方向同軸線上に配置すると共に、 前記オイルポンプを、前記クラッチ及び前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置し、一部の前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置した自動変速機。」 [相違点2] 訂正発明4-10が「前記オイルポンプを、前記軸線と平行な第2の軸線上であって前記クラッチ及び前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置する」という構成を備えているのに対し、甲1発明はポンプ27が入力シャフト14に対して「平行な第2の軸線上」に位置するものではない点。 [相違点3] 訂正発明4-10が「すべての前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置した」であるのに対し、甲1発明は該構成を備えていない点。 ウ 甲1発明との相違点に係る判断 (ア)上記相違点2について検討する。 甲2技術的事項は、上記1(4)カに記載のとおりである。 甲1発明のポンプ27は、上記1(4)ウ(セ)の看取事項のとおり、エンジンシャフト2と同軸の管状シャフト29及びドッグクラッチ30によって駆動されるものであり、さらに、上記1(4)ウ(オ)の記載事項及び上記1(4)ウ(ツ)の看取事項のとおり、オイル供給側のチューブ31と送出側の導管32とが、中央の軸を挟んで対向する位置に配置されているものである。 これらから、甲1発明のポンプ27において、エンジンシャフト2の軸線位置から該エンジンシャフト2と平行な第2の軸線上に位置するようにすることは、管状シャフト29、ドッグクラッチ30をエンジンシャフト2と該エンジンシャフト2と平行な第2の軸線上において形成しなければならず、加えて、チューブ31及び導管32の配置変更をしなければならないことを意味するものであって、このような配置変更によって、ギアボックス1全体の容量が大きくなってしまうことや機構の複雑化は避けられず、当業者が通常選択し得ないものである。 そうすると、甲1発明において、上記甲2技術的事項を適用して、ポンプ27をエンジンシャフト2と平行な第2の軸線上に配置する相違点2に係る構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たものということはできない。 (イ)上記相違点3について検討する。 甲1発明において、2つのプッシュピース74は、図7に示すように上下に分かれて配置されており、これにより、一方は分配体57の穴60よりも低い位置に配置され、他方は穴60よりも高い位置に配置されている。甲1発明において、これらプッシュピース74は、ピストン65、66を移動させるものであり、これらピストン65、66は、それぞれロッド67、70に連結されているものである(上記1(4)ウ(キ)記載事項を参照。)。そうすると、プッシュピース74の位置を変更することは、ギヤケース1全体の形状を変更しなければならず、当業者であってもこのような機構の変更を容易に想到し得るものではない。 (ウ)したがって、訂正発明4-10は、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲2発明との対比 訂正発明4-10と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「歯車セット22、24、26、28、30」は、訂正発明4-10の「変速機構部」に相当し、 以下同様に、「原動機」は、「駆動源」に、 「入力シャフト14」は、「入力軸」に、 「第1及び第2のクラッチ36、38」は、「クラッチ」に、 「液圧スライド100」は、「クラッチ制御用コントロールバルブ」に、 「制御弁組立体96」は、「バルブボディ」に、 「オイルポンプ94」は、「オイルポンプ」にそれぞれ相当する。 甲2発明の「該歯車セット22、24、26、28、30の変速比を制御する構成要素」は、訂正発明4-10の「該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素」との関係において、「該変速機構部の変速比を制御する変速要素」の限りにおいて一致する。 甲2発明の「オイルポンプ94を入力シャフト14の軸心からオフセットさせること」は、訂正発明4-10の「前記オイルポンプを、前記軸線と平行な第2の軸線上であって前記クラッチ及び前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置すること」との関係において、「前記オイルポンプを前記入力軸の軸心から別の軸線上に配置する」限りにおいて一致する。 甲2発明の「補助レンジトランスミッション12」は、訂正発明4-10の「自動変速機」との関係において、「変速機」である限りにおいて一致する。 以上のとおりであるから、訂正発明4-10と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点B] 「変速比を作り出す変速機構部と、 該変速機構部の変速比を制御する変速要素と、 駆動源の動力を前記変速機構部に入力する入力軸と同軸上に設けられ、前記駆動源と前記変速機構部の間の動力を油圧作動により断続するクラッチと、 前記クラッチの制御油圧を作り出すクラッチ制御用コントロールバルブを収装するバルブボディと、 前記クラッチ制御用コントロールバルブへ油圧を供給するオイルポンプと、 を備え、 前記オイルポンプを前記入力軸の軸心から別の軸線上に配置する変速機。」 [相違点C] 訂正発明4-10が「該変速機構部の変速比を油圧作動により制御する変速要素」と「変速要素及びクラッチの制御油圧を作り出す油圧コントロールバルブ」を備え、「オイルポンプ」が「変速要素」の「制御油圧を作り出す」「油圧コントロールバルブへ油圧を供給する」ものであるのに対して、甲2発明はトランスミッション12の制御油圧を作り出すバルブを備えているのか不明であり、オイルポンプ94が変速用油圧制御バルブに油圧を供給するものであるのか不明である点。 [相違点D] 訂正発明4-10が「前記クラッチと前記バルブボディと前記変速機構部とを、前記駆動源側から前記クラッチ、前記バルブボディ、前記変速機構部の順で軸方向同軸線上に配置すると共に、 前記オイルポンプを、前記軸線と平行な第2の軸線上であって前記クラッチ及び前記バルブボディの少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置する」「自動変速機」であるのに対し、甲2発明は制御弁組立体96とクラッチ36、38との軸方向位置が不明であり、オイルポンプ94がクラッチ36、38または制御弁組立体96の少なくともどちらか一方と軸直交方向に重なるように配置されているのか不明な変速機である点。 [相違点E] 訂正発明4-10が「すべての前記クラッチ制御用コントロールバルブを、前記クラッチの油圧室に設けられたオイルの流入孔と同じ高さ以上の位置になるよう配置した」ものであるのに対し、甲2発明はオイルポンプ94、液圧スライド100及びソレノイド弁のそれぞれの上下方向位置が不明である点。 オ 甲2発明との相違点に係る判断 上記相違点Cについて検討する。 上記相違点Cは、上記相違点Aと同じである。 そうすると、相違点D又は相違点Eについて検討するまでもなく、上記1(4)クと同様に、訂正発明4-10は、甲2発明ではなく、甲2発明及び甲第1号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ 新規性・進歩性以外の独立特許要件について 訂正発明4-10において、新規性・進歩性以外の独立特許要件に関して、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらない。 キ 小括 よって、訂正後の請求項10に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、訂正事項2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)訂正事項2のまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項2による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 第4 むすび したがって、本件訂正審判の請求に係る訂正事項1及び2による訂正は、特許法第126条第1ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-390120

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