特許異議申立
2020-700819
トラクタ
- 審判番号
- 2020-700819
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-157471
- 登録番号
- 6685095
- 請求日
- 2020年10月22日
- 審決日
- 2022年02月14日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
- 【権利者代理人】桂川 直己
- 【異議申立人】小川 鐵夫
- 審判長/審判官
- 審判長 平田 信勝
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 段 吉享
- 分類
- P1651.121-ZAA(F16H) / P1651.851-ZAA(F16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6685095号発明「トラクタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6685095号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。
特許第6685095号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6685095号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成27年8月7日に出願され、令和2年4月2日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、概略次のとおりである。
令和2年10月22日 :特許異議申立人小川鐵夫(以下、「異議申立人
」という。)より、請求項1及び2に係る特
許に対する特許異議の申立て
令和3年1月8日付け :取消理由通知書
令和3年3月16日 :特許権者による意見書の提出
令和3年4月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年7月9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年8月18日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年9月21日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和3年11月16日 :異議申立人による意見書の提出
2 訂正の適否
(1)訂正請求書の補正の適否
令和3年7月9日に提出された訂正請求書及びこれに添付した訂正特許請求の範囲は、令和3年9月21日に提出された手続補正書により補正されたので、まず当該補正の適否について検討する。
ア 補正の内容
令和3年9月21日に提出された手続補正書による補正の内容は、令和3年7月9日に提出された訂正請求書の訂正の理由の訂正事項2及び3を削除し、これに対応して、訂正特許請求の範囲から請求項3及び4を削除するというものである。
イ 補正の適否
訂正事項の削除は、審理対象の拡張変更を伴わないため、訂正請求書の要旨を変更しないものと認められる。
したがって、訂正請求の訂正の理由の訂正事項2及び3を削除し、これに対応して、訂正特許請求の範囲の請求項3及び4を削除する補正は、適法なものとして認められる。
(2)訂正の内容
上記(1)のとおり、令和3年9月21日の手続補正書による訂正請求書及び訂正特許請求の範囲の補正は認められたので、令和3年7月9日に提出された訂正請求書による訂正請求の内容は、上記手続補正書の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)
ア 訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に、
「を備え、
前記傾斜角度検出部の全体が」と記載されているのを、
「を備え、
前記傾斜角度検出部は、前記電動アクチュエータに対して、アーム部材とリンク部材を介して連結されたポテンショメータであり、
前記リンク部材の回転角度を前記ポテンショメータで検出することにより、前記可動斜板の傾斜角度を検出し、
前記傾斜角度検出部の全体が」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
ここで、訂正前の請求項1及び2は、請求項2が訂正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は一群の請求項1及び2について請求されている。
イ 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項は、訂正の請求項1に係る発明において、「傾斜角度検出部」の可動斜板の角度を検出する機構を具体的に特定する発明特定事項を追加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、訂正事項の「傾斜角度検出部」の可動斜板の角度を検出する機構は、願書に添付した明細書の段落【0060】、【0069】~【0072】に記載されているから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項で規定する新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。
3 取消理由(決定の予告)の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和3年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の内容は、概略次のとおりである。
請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載された周知・慣用の技術的事項に基いて、または、甲第2号証に記載された発明及び甲第3、4、6号証に記載された周知・慣用の技術的事項に基いて、または、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2007-298050号公報
甲第2号証:特開2010-203572号公報
甲第3号証:米国特許第6955046号明細書
甲第4号証:特開平11-50868号公報
甲第6号証:特開2008-224008号公報
甲第1号証~甲第4号証及び甲第6号証は、いずれも、異議申立人が提出した甲第1号証~甲第4号証及び甲第6号証である。
4 当審の判断
(1)本件発明
上記訂正請求により訂正された本件の請求項1及び2に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)。
[本件発明1]
「エンジンと、
バッテリーと、
前記エンジンの出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させる油圧式無段変速機と、
少なくとも前記エンジンの停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで駆動される電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータが発生させた動力が伝達されることで、前記油圧式無段変速機の前記可動斜板の傾斜角度を変化させる動力伝達機構と、
前記可動斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、
車速を切り替える操作が可能な主変速レバーと、
前記主変速レバーの位置を検出する主変速レバー位置検出部と、
前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な切替操作部と、
前記切替操作部に行われた操作を検出する切替操作検出部と、
前記主変速レバー位置検出部の検出結果及び前記切替操作検出部の検出結果に基づいて前記電動アクチュエータを制御する制御部と、
を備え、
前記傾斜角度検出部は、前記電動アクチュエータに対して、アーム部材とリンク部材を介して連結されたポテンショメータであり、
前記リンク部材の回転角度を前記ポテンショメータで検出することにより、前記可動斜板の傾斜角度を検出し、
前記傾斜角度検出部の全体が後輪の後車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置され、当該後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央よりも高く、
前記エンジンの停止中においてニュートラルに切り替える操作が前記切替操作部に行われたことを前記切替操作検出部が検出した場合、前記電動アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させることを特徴とするトラクタ。」
[本件発明2]
「請求項1に記載のトラクタであって、
前記傾斜角度検出部は、前記エンジンの停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで、前記可動斜板の傾斜角度を検出することを特徴とするトラクタ。」
(2)各甲号証の記載等
ア 甲第1号証
取消理由で通知した甲第1号証には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両における変速制御装置の技術に関する。」
「【0002】
従来、無段変速装置を備えたトラクタ等の作業車両において、主変速レバーを回動操作することにより、無段階に走行速度を変速可能な構成とした作業車両が広く知られており、この技術は公知となっている。例えば、特許文献1にこの技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003-130213号公報」
「【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
尚、本実施例では、作業車両をトラクタとした例について説明を行うものとする。 まず始めに、本発明の一実施例に係るトラクタ100の全体構成について、図1または図2を用いて説明をする。
図1または図2に示す如く、本機(トラクタ100)の前後に前輪1及び後輪2を支承し、前部のボンネット6内部にはエンジン5を配置し、該ボンネット6の後方にはステアリングハンドル10を設けており、該ステアリングハンドル10の後方にはシート11を配設している。また、シート11の側部には主変速レバー3、副変速レバー4、PTOレバー14等が配設され、ハンドルコラム15左方側部に前後進切換操作具としてリバーサレバー7が配置されている。これらステアリングハンドル10やシート11や各レバー類等はキャビン12内の運転部に配置されている。」
「【0015】
次に、本実施例に係る作業車両に搭載した油圧-機械式変速装置(HMT)について、図3、図4または図10を用いて説明をする。
図3または図4に示す如く、HST21は可変容量型の油圧ポンプ31及び固定容量型の油圧モータ32を備えており、両者31・32は図示しないHSTハウジング内に収容されている。
HST21の油圧ポンプ31の回転軸心をポンプ出力軸51が貫通しており、該ポンプ出力軸51は駆動源であるエンジン5からの動力を該油圧ポンプ31に伝達するとともに、遊星歯車機構22に伝達させ、更には後述するPTO駆動系を介して、PTO軸19へも動力を伝達させている。」
「【0027】
このHST駆動モードにおいては、エンジン5の出力が前後輪にまで伝達されるまでの間に遊星歯車機構22を経由しない動力伝達構成となっている。即ち、エンジン5の出力がポンプ出力軸68を介してキャリア55を駆動するが、リングギア59のボス部59aと出力軸52が係合しないので、遊星歯車機構22はそのキャリア55の回転により空転するのみとされる。結局は、エンジン5の出力はHST21により変速されてモータ出力軸68→出力軸52と伝達された後、副変速機構24を介して前後輪に伝達されることになる。」
「【0028】
次に、HSTの変速比と車両の変速比との関係について、図10を用いて説明をする。
図10に示す如く、後進域の全域~前進低速域においては「HST駆動モード」とされ、該モードにおいては前記HST21の回転出力が前記出力軸27にそのまま出力されることから、HST21が中立位置にあるときは車両は駆動されず、HST出力軸(モータ出力軸)26が正転したときは車両は前進し、逆転したときは車両は後進する。また、車両速度は該出力軸27の回転速度に比例する。このことから、「HST駆動モード」において車両を前進側に増速させるためには、HST21の変速比を正転側に変更制御させる必要がある。」
「【0030】
次に、変速装置の制御構成について、図4を用いて説明する。
図4に示す如く、変速装置の制御は、制御装置81により行われるものである。 制御装置81には、エンジン5に配設された回転数を制御する電子ガバナ(ラックアクチュエータ)84、エンジン5の出力軸25の回転数を検出するピックアップ85、主変速レバー3の回動位置(変速位置)を検出するポテンションメータ等より構成される角度検出手段88、リバーサレバー7の回動位置を検出する位置検出手段87、伝動軸42の回転速度を検出するピックアップ89、モータ出力軸68の回転速度を検出するピックアップ90、油圧ポンプ31の斜板制御を行う変速アクチュエータ86、油圧パッククラッチ61の接断を行う電磁弁82、83等が接続されている。
制御装置81において、前記位置検出手段7および角度検出手段88により、主変速レバー3およびリバーサレバー7の位置を検出し、その位置に対応させて油圧ポンプ31の可動斜板31aを制御しつつ、油圧パッククラッチ61の断接を行うものである。
【0031】
図4に示す如く、前記三つのピックアップ85・89・90は制御装置81に電気的に接続され、該制御装置81は前記主変速レバー88の操作位置や前記ピックアップ89の検出値をもとに、車速が該主変速レバー88で指示される車速となるよう、変速アクチュエータ86を通じて前記油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角をフィードバック制御する。
【0032】
このような構成において、制御装置81は前記ピックアップ85・89・90の検出値からトランスミッションの変速比を計算する演算手段を備えており、求められた変速比が高速側の一定領域にあるときは「HMT駆動モード」となって前記電磁弁82・83に信号を送り、前記油圧パッククラッチ61の前側のクラッチを係合させ、後側のクラッチを係合解除させる。一方、変速比が低速側の一定領域にあるときは「HST駆動モード」となって電磁弁82・83に信号を送り、前記油圧パッククラッチ61の前側のクラッチを係合解除させ、後側のクラッチを係合させる。即ち、中速域~高速域では「HMT駆動モード」、低速域では「HST駆動モード」というように、変速比に応じて二つの駆動モードを自動切換し、前記電磁弁82・83を電気的に制御して油圧パッククラッチ61の前側または後側のクラッチを選択的に係脱させるように構成しているのである。
【0033】
また、制御装置81には、リバーサレバー7の位置を検出する位置検出手段87が接続されている。
制御装置81は、リバーサレバー7が前進(F)位置であることを検出したときには、前記可動斜板86aの角度が前進範囲内の角度となるように変速アクチュエータ86を制御するようにし、またリバーサレバー7が後進(R)位置であることを検出したときには、前記可動斜板86aの角度が後進範囲内の角度となるように変速アクチュエータ86を制御するようにしている。
そして、リバーサレバー7が中立(N)位置にあることを検出したときには、可動斜板86aを中立位置に保持するように変速アクチュエータ86を制御して、伝動軸42が駆動されないようにしている。 すなわち、油圧ポンプ31の可動斜板31aは、リバーサレバー7に連動した構成となっており、リバーサレバー7の前進(F)・中立(N)・後進(R)の各位置に対応して、可動斜板31aの可動角度の範囲が変更されるものである。
尚、位置検出手段87としては、ポテンションメータを用いたり、前進・後進・中立の各位置に対応する接点を具備した三位置式のスイッチを用いたり、または各位置ごとに個別に三個のスイッチを備えるような構成とすることもできる。」
【図1】
[図:0001387456000001.jpg]
【図3】
[図:0001387456000002.jpg]
【図4】
[図:0001387456000003.jpg]
甲第1号証の記載から、甲第1号証には次の各事項が記載されていると認定できる。
(ア)トラクタ100は、エンジン5の出力を変速し、可動斜板31aの傾斜角度を変化させることで変速比を変化させるHST21を備えているといえる。
(イ)トラクタ100は、HST21の油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度を変化させる変速アクチュエータ86を備えている。
(ウ)トラクタ100は、主変速レバー3の変速位置を検出する角度検出手段88の検出値及びリバーサレバー7の回動位置を検出する位置検出手段87の検出値に基づいて、車速が主変速レバー3で指示される車速となるよう変速アクチュエータ86を制御する制御装置81を備えているといえる。
(エ)トラクタ100は、後輪2の車軸の上下方向の中央の高さが前輪1の車軸の上下方向の中央よりも高くなっているといえる(特に、【図1】より)。
上記認定事項及び甲第1号証の記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明]
「エンジン5と、
エンジン5の出力を変速し、可動斜板31aの傾斜角度を変化させることで変速比を変化させるHST21と、
HST21の油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度を変化させる変速アクチュエータ86と、
車速を切り替える操作が可能な主変速レバー3と、
主変速レバー3の変速位置を検出する角度検出手段88と、
前進(F)、中立(N)、後進(R)の3つから何れかを選択する操作が可能なリバーサレバー7と、
リバーサレバー7の回動位置を検出する位置検出手段87と、
主変速レバー3の変速位置を検出する角度検出手段88の検出値及びリバーサレバー7の回動位置を検出する位置検出手段87の検出値に基づいて、車速が主変速レバー3で指示される車速となるよう変速アクチュエータ86を通じて油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度をフィートバック制御する制御装置81と、
を備え、
後輪2の車軸の上下方向の中央の高さが前輪1の車軸の上下方向の中央よりも高く、
リバーサレバー7が中立(N)位置にあることを検出したときには、可動斜板31aを中立位置に保持するように変速アクチュエータ86を制御するトラクタ100。」
イ 甲第2号証
取消理由で通知した甲第2号証には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、エンジンから走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたHSTと、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータと、前記変速用電動アクチュエータの作動制御を行う制御装置とを備えた除雪機等の作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから走行部へ至る走行系伝動経路に介挿されたHSTと、前記HSTの出力調整部材を作動させる変速用電動アクチュエータと、前記変速用電動アクチュエータの作動制御を行う制御装置とを備え、前記HSTが変速操作部材の操作に応じた回転動力を出力するように前記制御装置が前記変速用電動アクチュエータの作動制御を行うように構成された除雪機の形態をなす作業車輌が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記作業車輌は、前記エンジン、前記走行部、前記HST、前記変速操作部材及び前記変速用電動アクチュエータに加えて、前記変速操作部材の操作状態を検出する変速操作側センサと、前記変速用電動アクチュエータの作動状態を直接又は間接的に検出する変速作動側センサと、記エンジンからの回転動力によって発電を行う発電機と、前記発電機によって発電された電力を蓄電し且つ前記センサを含む電気機器の電力源として作用する前記バッテリと、前記エンジンを起動させる為のスタータと、主電源のオン/オフ並びに前記スタータのオン/オフ操作を行うメイン操作部材と、前記メイン操作部材の操作状態を検出する主電源/スタータセンサと、前記主電源/スタータセンサからの信号に基づき主電源のオン/オフ切替制御及び前記スタータのオン/オフ切替制御を行うと共に、前記変速操作側センサ及び前記変速作動側センサからの信号に基づき前記変速用電動アクチュエータの作動制御を行う車速制御を実行する制御装置とを備えている。」
「【0016】
図1及び2に示すように、本実施の形態に係る前記作業車輌1は歩行型除雪機の形態をなしている。
詳しくは、前記作業車輌1は、機体フレーム10と、前記機体フレーム10に支持されたエンジン20と、左右一対の走行部30L,30Rと、前記機体フレーム10の前方側に配設され且つ前記エンジン20からの回転動力によって駆動される作業部40と、前記エンジン20から前記走行部30L,30Rへ至る伝動経路に介挿されたトランスミッション50と、前記機体フレーム10の後方側に配設された操作部70とを備えている。」
「【0027】
前記トランスミッション50は、前記エンジン20より後方側において前記機体フレーム10に支持されている。
前記トランスミッション50は、図1~図3に示すように、前記エンジン20からの回転動力を無段変速するHST510と、左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rと、前記HST510からの走行回転動力及び対応する前記旋回用電動モータ520L,520Rからの旋回回転動力を合成して対応する前記走行部30L,30Rへ向けて出力する左右一対の差動機構530L,530Rと、前記差動機構503L,530Rを収容するミッションケース550とを備えている。
【0028】
前記HST510は、図3に示すように、前記エンジン20に作動連結されたポンプ軸511と、前記ポンプ軸511に相対回転不能に支持された油圧ポンプ512と、前記油圧ポンプ512に一対のHSTライン519を介して流体接続された油圧モータ514と、前記油圧モータ514を相対回転不能に支持するモータ軸513と、前記油圧ポンプ512及び前記油圧モータ514のうち可変容積型とされた少なくとも一方(本実施の形態においては前記油圧ポンプ512であり、以下、可変容積部材という)の吸引/吐出量及び吸引/吐出方向を変化させる出力調整部材515とを備えている。」
「【0033】
本実施の形態においては、前記油圧ポンプ512及び前記油圧モータ514はアキシャルピストン型とされている。
従って、前記出力調整部材515は、揺動軸回りの傾転位置に応じて前記可変容積部材(本実施の形態においては前記油圧ポンプ512)の吸引/吐出量及び吸引/吐出方向を変化させる可動斜板(図示せず)と、自己の軸線回りの回動に応じて前記可動斜板が前記揺動軸回りに傾転するように前記可動斜板に連結された制御軸515a(図2参照)とを有している。
なお、図2中の符号515bは、前記制御軸515aに相対回転不能に支持された制御アームである。
【0034】
前記出力調整部材515は以下のように作動する。
前記可動斜板が前記揺動軸回り中立位置に位置されると、前記ポンプ軸511が軸線回りに回転駆動されても、前記油圧ポンプ512が圧油を吐出せず、従って、前記油圧モータ514及び前記モータ軸513の回転が停止されるHST中立状態が現出される。
【0035】
前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り一方側へ傾転されると、前記油圧ポンプ512が前記可動斜板の傾転方向に応じた方向に前記可動斜板の傾転角度に応じた量の圧油を吐出し、これにより、前記油圧モータ514及び前記モータ軸513が前記可動斜板の傾転方向に応じた第1回転方向へ前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。
つまり、前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り一方側へ傾転されると、前記モータ軸513は車輌前進方向又は車輌後進方向の一方(例えば前進方向)に、前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。
【0036】
前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り他方側へ傾転されると、前記油圧ポンプ512が前記可動斜板の傾転方向に応じた方向に前記可動斜板の傾転角度に応じた量の圧油を吐出し、これにより、前記油圧モータ514及び前記モータ軸513が前記可動斜板の傾転方向に応じた第2回転方向へ前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。
つまり、前記可動斜板が前記中立位置から前記揺動軸回り他方側へ傾転されると、前記モータ軸513は車輌前進方向又は車輌後進方向の他方(例えば後進方向)に、前記可動斜板の傾転角度に応じた回転速度で回転する。」
「【0051】
詳しくは、前記走行部30L(30R)は、図1~図3に示すように、対応する前記差動機構530L(530R)の前記キャリア534L(534R)に連結された状態で機体幅方向に沿った前記走行駆動軸31L(31R)と、前記走行駆動軸31L(31R)に相対回転不能に支持された駆動スプロケット32L(32R)と、前記走行駆動軸31L(31R)から機体前後方向に離間された位置で機体幅方向に沿うように配設された走行従動軸33L(33R)と、前記走行従動軸33L(33R)に相対回転不能に支持された従動スプロケット34L(34R)と、前記駆動スプロケット32L(32R)及び前記従動スプロケット34L(34R)に巻き回されたクローラ35L(35R)とを備えている。
当然ながら、前記走行部30L(30R)が、前記クローラ式走行装置に代えて、ホイール式走行装置を有することも可能である。」
「【0054】
前記操作部70は、図1及び図2に示すように、前記機体フレーム10から後方且つ上方へ延びるように前記機体フレーム10に立設されたハンドルフレーム71と、前記HST510の出力状態を変化させる為に前記ハンドルフレーム71に直接又は間接的に設けられた人為操作可能な変速操作部材72と、前記左右一対の旋回用電動モータ520L,520Rの出力状態をそれぞれ独立して変化させる為に前記ハンドルフレーム71に直接又は間接的に設けられた人為操作可能な左右一対の旋回操作部材73L,73Rとを備えている。
【0055】
前記変速操作部材72は、好ましくは、前記HST510を中立状態とさせて前記作業車輌1の走行を停止させる中立位置、前記作業車輌1の車速が前進側に最大となる前進側最高速位置、前記前進側最高速位置より遅い所定の前進側最高作業速位置、前記作業車輌1の車速が後進側に最大となる後進側最高速位置及び前記後進側最高速位置より遅い所定の後進側最高作業速位置にそれぞれ係止可能とされる。
前記好ましい形態は、例えば、前記変速操作部材72をガイドするシフトゲート(図示せず)を、前記各操作位置に段部を有する階段状に形成することによって容易に実現可能である。
【0056】
本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記変速操作部材72は、前記ハンドルフレーム71に支持された操作ボックス700に設けられている。
前記操作ボックス700には、さらに、前記作業クラッチ機構105を人為操作する為の作業クラッチ操作部材74も設けられている。」
「【0060】
次に、本実施の形態に係る前記作業車輌1の制御構造について説明する。
図4に、前記作業車輌1に備えられる制御装置400のシステムブロック図を示す。
【0061】
前記作業車輌1は、図4に示すように、さらに、前記変速操作部材72の操作状態を検出する変速操作側センサ410と、前記HST510の出力調整部材515を作動させる変速用電動アクチュエータ80と、前記変速用電動アクチュエータの作動状態を直接又は間接的に検出する変速作動側センサ425と、前記エンジン20からの回転動力によって発電を行う発電機25と、前記発電機25によって充電されるバッテリ26と、前記バッテリ26からの電力を利用して前記エンジン20を始動させるスタータ28と、人為操作可能なメイン操作部材78と、前記メイン操作部材78の操作状態を検出する主電源/スタータセンサ480と、前記変速用電動アクチュエータ80及び前記スタータ28の作動制御を行う制御装置400とを備えており、前記変速用電動アクチュエータ80,前記スタータ28,前記410,425センサ及び前記制御装置400は前記バッテリ26を電力源として作動する。」
「【0076】
即ち、例えば、前記作業車輌1の駆動中に何らかの原因で前記変速操作部材72を中立位置以外の位置に位置させたままで前記エンジン20を停止させていたとする。
この状態では、前記変速用電動アクチュエータ80は中立位置以外の作動位置のまま停止されている。
従って、前記メイン操作部材78を主電源オフ位置から主電源オン位置に位置された時点で前記制御装置400が前記車速制御を開始しないとすると、前記メイン操作部材78が主電源オン位置からスタータ作動位置に位置された時点で前記HSTが中立状態以外の状態のままで前記エンジン20が駆動開始されることになり、前記作業車輌1の急発進を招くことになる。」
「【0082】
斯かる構成によれば、前記変速操作部材72を中立位置に位置させた状態で前記メイン操作部材78を主電源オフ位置から主電源オン位置へ操作することにより、前記変速用電動アクチュエータ80が自動的に中立状態とされる。従って、前記メイン操作部材78を主電源オン位置からスタータ作動位置へ操作して前記エンジン20を始動させる際に、前記変速用電動アクチュエータ80が中立状態以外の状態となることを有効に防止できる。」
【図1】
[図:0001387456000004.jpg]
【図2】
[図:0001387456000005.jpg]
【図3】
[図:0001387456000006.jpg]
【図4】
[図:0001387456000007.jpg]
【図5】
[図:0001387456000008.jpg]
甲第2号証の記載から、甲第2号証には次の各事項が記載されていると認定できる。
(ア)甲第2号証に記載の作業車両1(歩行型除雪機)は、エンジン20の出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させるHST510と、変速用電動アクチュエータ80が発生させた動力が伝達されることで、HST510の可動斜板の傾斜角度を変化させる制御軸515a及び制御アーム515bとを備えている。
(イ)作業車両1(歩行型除雪機)は、制御装置400を備えており、制御装置400には、変速操作側センサ410の検出値が入力されている。
(ウ)作業車両1(歩行型除雪機)は、走行駆動軸31L(31R)の上下方向の中央の高さが、走行従動軸33L(33R)の上下方向の中央よりも高くなっている(特に、【図1】より)。
上記認定事項及び甲第2号証の記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
[甲2発明]
「エンジン20と、
バッテリ26と、
変速用電動アクチュエータ80と、
エンジン20の出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させるHST510と、
変速用電動アクチュエータ80が発生させた動力が伝達されることで、HST510の可動斜板の傾斜角度を変化させる制御軸515a及び制御アーム515bと、
変速用電動アクチュエータ80の作動状態を直接又は間接的に検出する検出する変速作動側センサ425と、
HST510を中立状態とさせて作業車両1の走行を停止させる中立位置、作業車両1の車速が前進側に最大となる前進側最高速位置及び前進側最高速位置より遅い所定の前進側最高作業速位置並びに作業車両1の車速が後進側に最大となる後進側最高速位置及び後進側最高速位置より遅い所定の後進側最高作業速位置の間で操作可能な変速操作部材72と、
変速操作部材72の操作状態を検出する変速操作側センサ410と、
変速用電動アクチュエータ80の作動制御を行う制御装置400と、
を備え、
制御装置400には、変速操作側センサ410の検出値が入力され、
走行駆動軸31L(31R)の上下方向の中央の高さが、走行従動軸33L(33R)の上下方向の中央よりも高く、
作業車両1のエンジン20が停止中に、変速操作部材72を中立位置に位置させた状態でメイン操作部材78が主電源オフ位置から主電源オン位置へ操作されると、変速用電動アクチュエータ80が自動的に中立状態とされ、これによって、HST510が中立状態になるように、可動斜板の傾斜角度を変化させる歩行型除雪機である作業車両1。」
(3)甲第3号証
取消理由で通知した甲第3号証には、次の事項が記載されている(翻訳文は当審で訳したものである。)。
「This invention relates generally to hydraulic pumps and axle driving apparatus and, more particularly, to a system for electric actuation of such devices, including electronic circuitry to automatically drive the axle driving apparatus to a neutral position.」(第1欄第6行~第10行)
「当審訳:本発明は、一般的に、油圧ポンプと、車軸駆動装置に関し、特に、そのような装置の電気的作動のためのシステムであって、車軸駆動装置を中立位置へ自動的に駆動する電子回路に関するものである。」
「To overcome these disadvantages, the present invention is realized in a system and method for electrically controlling the displacement of hydraulic pumps, IHTs or HSTs. Each of these devices includes a variable hydraulic pump mounted within the casing that is in fluid communication with a rotatable hydraulic motor, which may also be included within the same casing as the motor or may be located in a separate casing, and a moveable swash plate cooperable with the rotatable hydraulic pump for controlling the speed and direction of rotation of the rotatable hydraulic motor. The rotation of the hydraulic motor is used to drive an output shaft which may consist of one or more axle shafts.
For controlling the positioning of the swash plate, the transaxle also includes a rotatable trunnion arm coupled to the moveable swash plate 56. The rotatable trunnion arm is also coupled to a control arm. The control arm is further connected to an electronic actuation drive, which is mounted either internally or externally with respect to the casing, and is used to control the rotation of the control arm and swash plate. The orientation of the swash plate may be changed to control the speed and direction of rotation of the hydraulic motor.
In an alternative embodiment of the present invention, the drive will be interlocked with circuitry to automatically return the swash plate to a neutral position under certain predefined condition. A circuit will also be described to prevent re-activation of the electric drive until the control handle is returned to the neutral position. 」(第2欄第10行~第37行)
「当審訳:これらの欠点を克服するために、本発明は油圧ポンプ、IHTs又はHSTsの変位を電気的に制御するためのシステムおよび方法で実現される。これらの装置の各々は、回転可能な流体モータと流体連通し、またモータと同じケーシング内に含まれるか、または別個のケーシングに配置されてもよいがケーシング内に取り付けられた可変油圧ポンプ、油圧モータの回転速度及び回転方向を制御する回転式油圧ポンプと協働する可動斜板を有している。油圧モータの回転は、1つまたはそれ以上の車軸からなることができる出力シャフトを駆動するために使用される。
斜板の位置決めを制御するために、前記トランスアクスルはまた、可動斜板56に連結された回転可能なトラニオンアームを含む。回転可能なトラニオンアームは、制御アームに結合されている。制御アームはさらに、電子作動駆動筐体に対して内部または外部のいずれかに接続されており、制御アームと斜板の回転を制御するために使用される。斜板式の油圧モータの回転の速度及び方向を制御するために変更することができる。
本発明の別の実施形態では、駆動装置は、斜板を特定の所定の条件下で自動的に中立位置に復帰するための回路と相互連結される。制御ハンドルは、ニュートラルの位置に戻るまで、回路はまた、電気駆動の再活性化を防止することについて説明する。」
「Turning now to the figures, wherein like reference numeral refer to like elements, there is illustrated an electronic actuation drive 10 ("EAD") for electrically controlling the displacement of a hydraulic pump. The EAD 10 operates in combination with the general principle of an input shaft driving a hydraulic pump, which, through the action of its pistons, pushes oil to a hydraulic motor to cause the rotation of a motor shaft. The rotation of the motor shaft may directly drive a wheel or may be transferred through a gearing system or the like to drive one or more axle shafts 70. All that is required for this invention to be operative is a variable hydraulic pump. As shown in FIGS.1,2 and 7 and in order to simplify the explanation of the workings of this invention, it will be explained in the context of an IHT.」(第3欄第19行~第32行)
「当審訳:ここで図面に移ると、同様の参照符号は同様の要素を指し、油圧ポンプの容量を電気的に制御する電子作動ドライブ10(”EAD”)が示されている。EAD10は油圧ポンプを駆動する入力軸の原理と組み合わせて動作する。入力軸は、ピストンの作用により、オイルを油圧モータに押し出し、モータシャフトの回転を生じさせる。モーターシャフトの回転は、車輪を直接駆動することができる、または伝動装置等を介して転送された1つ以上の車軸70を駆動することができる。本発明が機能するために必要なのは可変油圧ポンプだけである。図1、図2及び図7に示すように、本発明の動作の説明を簡単にするために、IHTの文脈において説明する。」
「For adjusting the amount of oil that is pushed from the hydraulic pump 60 to the hydraulic motor, the hydraulic pump, HST or IHT includes a moveable swash plate 56 against which the pump pistons travel. As will be understood by those of ordinary skill in the art, the swash plate 56 may be moved to a variety of positions to vary the stroke of the pump pistons and the direction of rotation of the hydraulic motor. As the stroke of the pump pistons is varied, the volume of the hydraulic fluid pumped into the hydraulic porting of the center section 62 will vary. Since the speed of rotation of the hydraulic motor is dependent upon the amount of hydraulic fluid pumped into the motor by the hydraulic pump 60, and the direction of rotation of the hydraulic motor is dependent upon the positioning of the swash plate 56, the swash plate 56 is seen to control the speed and direction of rotation of the hydraulic motor and, accordingly, the speed and direction of rotation of axle shafts 70.
For moving the swash plate 56, the swash plate 56 is connected to a moveable trunnion arm that is rotatably supported in the casing of the HST or IHT. As will be appreciated by those with skill in the art, rotation of the trunnion arm changes the angular orientation of the swash plate 56 with respect to the pump pistons. In addition, a control arm 40 is coupled to the trunnion arm for rotating the trunnion arm. It should be appreciated that the control arm 40, the trunnion arm and the swash plate 56 each cooperate with one another so that movement of one of these elements will lead to a corresponding movement by the other elements.
To rotate the control arm 40 and, accordingly, move the swash plate 56, the EAD 10 is coupled to the control arm 40. The EAD 10 may be also be connected to a worm gear, a spur gear or other similar means capable of controlling rotation of the control arm 40. A control handle 14, which may be a throttle, a lever, a pedal or similar means for controlling the movement of a vehicle, may be provided on a vehicle, whereby a signal representative of the movement of the control handle 14 is provided to the EAD 10 to cause the rotation of the control arm 40, the trunnion arm and the swash plate 56. The wiring to connect the various components is preferably located in a wiring harness 50.
For electrically rotating the control arm 40, illustrated in FIG. 3, a source of voltage, in this case a battery 11, is directed through a switch 12 to an electric drive 16. The electric drive 16 will be attached to the control arm 40 of a swash plate 56 associated with a hydraulic pump, either in a stand-alone unit or as part of an HST or IHT. In this embodiment the electric drive 16 is shown as a linear actuator, but it should be understood by those with skill in the art that the linear actuator may be replaced with a worm gear, spur gearing or similar means, as discussed in more detail below.
When an operator moves the control handle 14 in one direction, drive actuator switch 12 generates a voltage signal representative of the motion that is then provided to the drive 16. When handle 14 is returned to a neutral position, signal generation by the switch 12 ceases. In this manner, as will be described hereinafter, the vehicle will be caused to drive at the same speed until the handle is moved in the opposite direction to slow the vehicle down or to drive the vehicle in the opposite direction. While this fundamental circuitry demonstrates the principles of control, provisions may also be made for braking and stopping.
For controlling the operation of the drive 16 when the brake is activated, an exemplary brake circuit shown in FIG. 4 may be provided. In the illustrated example, when the vehicle brake is engaged, brake switch 18 will be activated. Activation of the brake switch 18 will, in turn, generate a voltage signal that is provided to forward sense switch 20 and reverse sense switch 22. The primary function of forward sense switch 20 and reverse sense switch 22 is to indicate whether the control arm 40 is physically in a forward or reverse vehicle driving position, which allows the drive 16 to return the control arm 40 to the neutral position, as described in greater detail below. Forward sense switch 20 and reverse sense switch 22 are preferably associated with the HST/IHT control arm 40 as shown in FIGS. 1 and 2, but it should be appreciated that they may also be attached to any linkage associated with the control arm 40, such as the linkage attaching drive 16 to control arm 40 or the swash plate 56 inside the housing for the pump 60. Switches 20, 22 may also be located inside or outside of the housing.
If the HST/IHT control arm 40 has been moved into a position that would cause the vehicle to move forward, forward sense switch 20 will be closed. Once the brake is engaged, brake switch 18 will be activated and the voltage signal generated by the brake switch 18 will be supplied to actuator 16 through switch 20. Since the polarity of the voltage signal that is supplied through the activated brake switch 18 is in the opposite direction of the respective switch 20, 22 that is activated, the voltage signal directed through brake switch 18 will always drive the control arm 40 toward the neutral position, i.e., closing of the forward sense switch 20 ultimately provides a voltage signal causing the actuator 16 to drive the control arm 40 toward a reverse position and closing of the reverse sense switch 22 ultimately provides a voltage signal causing the actuator 16 to drive the control arm 40 toward the forward position. Once the control arm 40 reaches the neutral position, switches 20 and 22 will be open and the actuator 16 will no longer be energized or activated by the voltage signal provided via the brake switch.」(第3欄第33行~第5欄第4行)
「当審訳:油圧ポンプ60から油圧モータに押し出されるオイルの量を調整するために、油圧ポンプ、HSTまたはIHTは、ポンプピストンが移動する可動斜板56を含む。当業者には理解されるように、斜板56は、ポンプピストンのストロークと液圧モータの回転方向を変えるために様々な位置に移動させることができる。ポンプピストンのストロークが変更されるように、中心部62の液圧ポートに送り込まれる作動油の体積が変化する。油圧モータの回転速度は、油圧ポンプ60によってモータに送り込まれる作動油の量に依存して、油圧モータの回転方向は、斜板56の位置により決定されるので、斜板56は、油圧モータを回転させ、これにより、車軸70の回転の速度及び方向の速度及び方向を制御するように示されている。
斜板56を移動させるために、斜板56は、前記HSTまたはIHTのケーシング内で回転可能に支持されている移動可能なトラニオンアームに接続されている。当業者であれば理解されるように、トラニオンアームの回転はポンプピストンに対する斜板56の角度の向きを変化させる。また、制御アーム40は、トラニオンアームを回動させるためのトラニオンアームに結合されている。これらの要素のうちの一方の移動は、他方の要素の対応する移動をもたらすように、制御アーム40は、トラニオンアームと斜板56はお互いに協働していることを理解されたい。
制御アーム40を回転させ、これにより、斜板56を移動させるためにEAD10は制御アーム40に結合されている。EAD10は、制御アーム40の回転を制御することができるウォーム歯車、平歯車または他の類似の手段に接続されてもよい。また、車両の運動を制御するためのスロットル、レバー、ペダル、又は類似の手段であってもよく、制御ハンドル14は、制御ハンドル14の動きを表すEAD10に提供される制御アーム40、トラニオンアームと斜板56の回転を可能にするために提供されてもよい。様々な構成要素を接続する配線には、配線ハーネス50に配置されるのが好ましい。
制御アーム40を電気的に回転させるために、図3に示されるように、電圧源、この場合はバッテリ11は、スイッチ12を介して電気駆動装置16に接続されている。電気駆動装置16は、油圧ポンプに関連する斜板56の制御アーム40に取り付けられる。スタンドアロンユニットで、またはHSTあるいはIHTの一部として、この実施形態では、電気駆動装置16はリニアアクチュエータと示されているが、以下でより詳細に説明されているように、リニアアクチュエータをウォームギヤ、平歯車装置または同様の手段で置き換えることができることを当業者は理解すべきである。
操作者は、制御ハンドル14を1つの方向に移動すると、駆動アクチュエータ12は駆動装置16に与えられる運動の代表的な電圧信号を生成する。ハンドル14が中立位置に戻されると、スイッチ12により信号の生成が停止する。このようにして、以下に説明するように、ハンドルが反対の方向に移動させて車両を遅くするか、または逆方向に車両を走行させるまでは、車両は同一の速度で駆動されることになる。この基本回路は、制御の原理を示しているが、制動及び停止のために作られてもよい。
ブレーキが作動されると、ドライブ16の動作を制御するための、図4に示す例示的なブレーキ回路を設けてもよい。図示の例では、車両ブレーキが作動した場合、ブレーキスイッチ18が活性化される。ブレーキスイッチ18の活性化は、今度は前進検知スイッチ20及び後退検知スイッチ22に供給される電圧信号を生成する。前進検知スイッチ20と後進検知スイッチ22の主要な機能は、制御アーム40は、物理的に前進または後進走行ポジション、ドライブ16は、制御アーム40を中立位置に戻すようにすることが可能になるかどうかを示すために、以下でより詳細に説明する。図1及び図2に示すように、前進検知スイッチ20と後進検知スイッチ22は、HST/IHT制御アーム40に結合するのが好ましいが、それらはまた、ポンプ60のためのハウジング内の制御アーム40に関連した任意のリンケージ、リンケージ取付装置16等に制御アーム40または斜板56に取り付けられてもよいことが理解されるべきである。スイッチ20及び22は、ハウジングの内側又は外側に配置されてもよい。
HST/IHT制御アーム40は、車両を前方へ移動させようとする位置に移動された場合に、前方感知スイッチ20は閉じている。ブレーキが係合されると、ブレーキスイッチ18が作動し、ブレーキスイッチ18から出力された電圧信号は、スイッチ20を介してアクチュエータ16に供給される。活性化されたブレーキスイッチ18を介して供給される電圧信号の極性が活性化されると、各スイッチ20、22の方向が反対であるので、ブレーキスイッチ18を介して電圧信号は常に制御アーム40を中立位置に向けて駆動することになる、すなわち、前方検知スイッチ20を閉じ、最後にアクチュエータ16が制御アーム40を後退位置に向けて駆動させる電圧信号を提供し、逆方向スイ22の開閉は最終的に駆動装置16、制御アーム40を前方位置に向けて駆動させる電圧信号を提供する。制御アーム40が中立位置に達すると、スイッチ20及び22は開いており、一方、アクチュエータ16はブレーキスイッチを介して供給される電圧信号によって励起されまたは活性化されないであろう。」
「For positioning the control arm 40 in response to predefined operating conditions, an electronic actuation drive 10 may be provided, which is capable of providing one or more of the following functions: (1) return the control arm 40 to neutral automatically when the engine is turned off; (2) return the control arm 40 to neutral automatically when the brake is activated; (3) require the control handle 14 to be returned to the neutral position prior to re-activating the drive voltage to the actuator 16;」(第5欄第27行~第35行)
「当審訳:所定の運転条件に応答して、制御アーム40を位置決めするための、電気作動ドライブ10が備えられ、それは、1つまたは複数の以下の機能を提供することができる:(1)エンジンが停止しているとき自動的にコントロールアーム40を中立位置に戻す;(2)ブレーキが起動されると自動的に制御アーム40を中立位置に戻す;(3)アクチュエータ16への駆動電圧を再び作動させる前に、制御ハンドル14を中立位置に戻すことを要求する;」
「More particularly, FIGS. 5 and 6 show two variations of the electronic actuation drive or EAD 10, which are nearly identical, except that the Hall Effect sensors 30 and 32 in FIG. 5 are replaced with variable potentiometers 130 and 132, respectively, in FIG. 6. All other components in FIG. 6 share the same numbering as those in FIG. 5 and are functionally identical to the components in FIG. 5. While the potentiometers 130 and 132 can provide a voltage output signal similar to that of the Hall Effect sensors 30 and 32, the latter are more desirable because they are less sensitive to environmental conditions such as moisture and debris.
1. Engine Off Function.
The EAD circuits shown in FIGS. 5 and 6 may drive actuator 16 to the neutral position when the engine is off regardless of the position of the control arm 40. For example, when ignition switch 28, which may also be a relay or a combination of more than one switch or relay, is in the off position, voltage signals are directed through contacts 26a and contacts 26b of relay 26. These voltage signals are then connected to switches 20 and 22. If either forward sense switch 20 or reverse sense switch 22 is closed, indicating the control arm 40 is in a forward or reverse position, respectively, then a voltage signal will be supplied to actuator 16. In this configuration, forward sense switch 20 is designated as the forward position sensor and, when to closed, allows a voltage signal to drive actuator 16 in the reverse direction so as to move the control arm 40 and the swash plate 56 toward the neutral position.
Once the control arm 40 and the swash plate 56 are in the neutral position, switch 20 opens and a voltage signal is no longer supplied to the actuator 16. Conversely, when reverse sense switch 22 is closed, a voltage signal causes the actuator 16 to drive the control arm 40 toward the neutral position until switch 22 opens and a voltage signal is no longer supplied to the actuator 16. It should be appreciated that when switches 20 and 22 are both open, the control arm 40 will have been returned to the neutral position; therefore, a voltage signal is no longer supplied to the actuator 16. Furthermore, when the ignition switch 28 is in the off position and the control arm 40 is in neutral, no voltage signal is supplied to any control or drive components, which functions to prevent the battery from being drained.」(第5欄第47行~第6欄第21行)
「当審訳:より具体的には、図5および図6は、電子作動式駆動またはEAD10の2種類がほぼ同一であり、図5のホール効果センサ30および32は、図6では、それぞれ、可変電位差計130及び132に置き換えただけである。図6における他のすべての構成要素は図5におけるものと同じ参照番号を共有する図5中の構成要素と機能的に同一であるポテンショメータ130と132がホール効果センサ30および32と同様の電圧出力信号を提供することができるが、それは、水分及び破片のような環境条件に対する感度がより低いので、後者がより望ましい。
1. エンジンオフ機能。
図5及び図6に示されるEAD回路は制御アーム40の位置にかかわらずアクチュエータ16をエンジンがオフのときに中立位置まで駆動することができる。例えば、リレーまたは2つ以上のスイッチ又はリレーの組み合わせであってもよいが、イグニッションスイッチ28がオフ位置にあるとき、電圧信号は、リレー26の接点26aと接点26bを介して送られる。これらの電圧信号は次いで、スイッチ20、22に接続されている。前進検知スイッチ20又は後退検知スイッチ22の何れかが閉じており、制御アーム40は、前進又は後進位置であることを示すものであれば、電圧信号がアクチュエータ16に供給される。この構成では、前進検知スイッチ20は、前方位置センサとして指定され、閉じられると、電源電圧がアクチュエータ16を逆方向に駆動して、制御アーム40及び斜板56を中立位置に向かって動かすことを可能にする。
制御アーム40及び斜板56が中立位置にあると、スイッチ20は開き、電圧信号がアクチュエータ16に供給されていないが、後進検知スイッチ22を閉じると、スイッチ22が開くまで、電圧信号により、アクチュエータ16の制御アーム40を中立位置の方向に駆動し、電圧信号は、アクチュエータ16に供給されなくなる。スイッチ20とスイッチ22の両方が開かれるとき、制御アーム40が中立位置に戻されているであろうことが理解され、電圧信号は、アクチュエータ16に供給されないが、イグニッションスイッチ28がオフ位置にあり、制御アーム40が中立位置にある時は、電圧信号は、任意の制御または駆動要素に供給されず、バッテリが空になることを阻止するよう機能する。」
「To prevent the engine from being started when the control arm 40 is not in the neutral position, contacts 46a of switch 46 may be included as part of the engine start circuit.」(第6欄第43~第45行)
「当審訳:エンジンを制御アーム40が中立位置にない場合には起動されないように、スイッチ46の接点46aは、エンジン始動回路の一部として含まれてもよい。」
「For enabling the EAD 10 to synchronize the output positions of the control handle 14 and the control arm 40 by comparing the output voltages associated therewith, Hall effect sensors 30 and 32 are provided, Hall effect sensors 30 and 32 are linear sensors and in the preferred embodiment of the present invention they are rotational linear sensors. The hall effect sensors 30 and 32 are attached to the rotating control handle 14 and the rotating control arm 40 and have a constant voltage output signal proportional to the rotational position of a magnet with respect to the Hall Effect sensor. Other types of Hall Effect linear sensors may be attached to other portions of the control and actuation linkage (not shown). The range of rotation is preferably -20 degrees from neutral to +20 degrees from neutral. As the rotation of the Hall Effect sensor 30 changes from the -20 degree position to the +20 degree position, an increasing output voltage signal is generated by Hall Effect sensor 30 and directed to comparator 34 via wire 31. Hall Effect sensor 32 also generates a similar output voltage signal, which is directed to comparator 34 via wire 33.」(第6欄第52行~第7欄第4行)
「当審訳:EAD10は制御ハンドル14と制御アーム40の出力位置に関連付けられた出力電圧を比較することによって、それらを同期させるために、ホール効果センサ30、32が設けられている。ホール効果センサ30および32は、線形センサであり、本発明の好ましい実施形態では、それらは回転線形センサである。ホール効果センサ30および32は、制御ハンドル14と回転制御アーム40に取り付けられており、ホール効果センサに対する磁石の回転位置に比例した定電圧の出力信号を出力する。他の型のホール効果線形センサは、制御及び作動リンク機構(図示せず)の他の部分に取り付けることができる。回転の範囲は、中立から-20度から中立から+20度であることが好ましい。ホール効果センサ30の回転は、-20度の位置から+20度の位置へと変化すると、増加する出力電圧信号が、ホール効果センサ30によって生成され、ワイヤ31を介して比較器34に向けられる。ホール効果センサ32も、同様の出力電圧信号を、ワイヤ33を介して比較器34に向ける。」
「As exemplified in FIG. 11, an electronic actuation drive 10 is provided for detecting predefined conditions and electronically controlling the positioning of the control arm 40 and the swash plate 56 in response to those predefined conditions. For example, in its "start" position, the EAD 10 will initially detect whether the swash plate 56 is in neutral. If the swash plate 56 is not in neutral, the EAD 10 will drive the swash plate 56 back to the neutral position; the operator may not be able to start the engine, unless the swash plate 56 is in the neutral position. If the swash plate 56 is in neutral, the operator may be permitted to start the engine. It should also be appreciated by those with skill in the art that as an added protection against starting a vehicle that may already be in the forward or reverse drive positions, the EAD 10 may also require the control handle 14 to be in the neutral position prior to allowing the operator to start the vehicle.」(第8欄第41行~第56行)
「当審訳:図11に例示するように、電子作動駆動装置10は、所定の条件を検出し、これらの所定の条件に応答して、制御アーム40と、斜板56の位置を電子的に制御するために設けられている。例えば、その”start”位置において、EAD10は、最初、斜板56が中立にあるかどうかを検出する。斜板56が中立でない場合には、EAD10は、斜板56を中立位置に戻し、斜板56が中立位置になければ、オペレータはエンジンを始動することができない。斜板56が中立位置にある場合、運転者はエンジン始動を許可される。また、前方駆動位置又は逆駆動位置にある車両の始動に対する追加の保護として、EAD10は、操作者が車両を始動可能にする前に、制御ハンドル14がニュートラル位置にあることを要求するものであることも当業者によって理解されるべきである。」
図1
[図:0001387456000009.jpg]
図2
[図:0001387456000010.jpg]
図3
[図:0001387456000011.jpg]
図4
[図:0001387456000012.jpg]
図5
[図:0001387456000013.jpg]
図6
[図:0001387456000014.jpg]
図7
[図:0001387456000015.jpg]
図10
[図:0001387456000016.jpg]
図11
[図:0001387456000017.jpg]
甲第3号証の記載から、甲第3号証には次の各事項が記載されていると認定できる。
(ア)甲第3号証に記載のトラクタは、エンジンと、バッテリー11と、エンジンの出力を変速し、可動斜板56の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させるHSTと、を備えている。
(イ)HSTの可動斜板56の傾斜角度は、電気駆動装置16の動力を制御アーム40で伝達することによって変化させられるものである。
(ウ)ホール効果センサ32は、制御アーム40の位置を検出することによってHSTの可動斜板の傾斜角度を検出するものである。
(エ)トラクタは、制御ハンドル14を備え、当該ハンドル14は、車速を切り替える操作が可能である共に、前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能である。
(オ)ホール効果センサ30は、制御ハンドル14の位置を検出するものである。
(カ)トラクタは、ホール効果センサ30の検出結果に基づいて電気駆動装置16を制御するEAD10を備えている。
(キ)トラクタは、前輪の車軸の軸心よりも後輪の車軸70の中心の方が高い位置に配置されている。
(ク)ホール効果センサ32の全体が後輪の車軸70の軸心よりも高い位置に配置されている。
(ケ)エンジンが停止すると、電気駆動装置16は、自動的に、HSTがニュートラルとなるように可動斜板56の角度を変化させるものである。
甲第3号証の記載及び上記認定事項を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
[甲3発明]
「エンジンと、
バッテリー11と、
エンジンの出力を変速し、可動斜板56の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させるHSTと、
バッテリー11から電力が供給されることで駆動される電気駆動装置16と、
電気駆動装置16が発生させた動力が伝達されることで、HSTの可動斜板56の傾斜角度を変化させる制御アーム40と、
制御アーム40の位置を検出することによって可動斜板56の傾斜角度を検出するホール効果センサ32と、
車速及び前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な制御ハンドル14と、
制御ハンドル14の位置を検出することによってHSTの可動斜板の傾斜角度を検出するホール効果センサ30と、
ホール効果センサ30の検出結果に基づいて電気駆動装置16を制御するEAD10と、
を備え、
HSTの可動斜板56の傾斜角度を検出するホール効果センサ32の全体が後輪の車軸70の上下方向の中央よりも高い位置に配置され、後輪の車軸70の上下方向の中央の高さが前輪の車軸の上下方向の中央よりも高く配置され、
エンジンが停止すると、電気駆動装置16は、自動的に、HSTがニュートラルとなるように可動斜板56の角度を変化させるトラクタ。」
エ 甲第4号証
取消理由で通知した甲第4号証には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子ガバナー機構搭載型のエンジンを配したトラクタ等の農用走行車両において、HST式無段変速装置によって変速し、該変速した動力を走行側と作業機側に伝達するものに関する。」
「【0008】まず、本発明のエンジン回転数調整機構を備えたトラクタの概略構成について、図1、図2により説明する。前輪FWと後輪RWとによって、クラッチハウジングCH及びミッションケースMを支持している。クラッチハウジングCHの上部にはボンネットBを載置して、該ボンネットBには電子ガバナー機構付エンジンEを内蔵し、該ボンネットBの後方にステアリングハンドルSを配置し、該ステアリングハンドルSの後方には座席SEを設けている。」
「【0030】前記油圧モーターへの入力馬力は、主変速レバー60の操作に連動したHST式無段変速装置Hの斜板角と、エンジンEの回転数、油圧モーターの回転数Vより決定される。可動斜板の斜板角を検出する為に、図1に示すように、斜板にポテンショメータ等の角度センサー30を配設し、油圧モーターの出力軸に回転センサー31を配置している。図3に示すように、該角度センサー30と回転センサー31とをコントローラーCに接続している。」
【図1】
[図:0001387456000018.jpg]
オ 甲第5号証
異議申立人の提出した甲第5号証(特開2000-170907号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無段変速機として油圧により作動するHST(Hydro Static Transmission)を搭載する車両の制御機構に関するものである。」
「【0016】ところで、例えば車両走行中に負荷が過大になってエンストした場合、エンスト後にリターンスプリングの付勢力により油圧ポンプ7が中立位置に戻るまでにある程度の時間がかかる。このため、エンスト後油圧ポンプ7が中立位置に戻るまでの間にエンジン5が始動されると、前後進切換スイッチ13がニュートラル位置にあっても車両が発進してしまう可能性がある。
【0017】本発明は、エンジン5の始動時に車両の誤発進を防止するため、コントローラ10は、前後進切換スイッチ13がニュートラル位置にあり、かつ傾角センサ11によって検出される油圧ポンプ7の斜板傾転角度が略零である場合に、始動許可信号を出力する一方、前後進切換スイッチ13がニュートラル位置にないか、あるいは傾角センサ11によって検出される油圧ポンプ7の斜板傾転角度が略零でない場合に、始動許可信号を出力しない構成とする。」
「【0020】前後進切換スイッチ13がニュートラル位置にあると判定された場合、ステップS3に進んで、傾角センサ11からの信号を読み込み、ステップS5にて油圧ポンプ7が中立位置にあるかどうか判定する。このステップS5にて行われる処理が、請求項1に記載の中立位置判定手段に相当する。」
カ 甲第6号証
取消理由で通知した甲第6号証には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、前後進切換レバー、主変速レバー、クラッチペダルにより静油圧式無段変速機構による走行伝動系の車速制御をするトラクタの変速制御装置に関するものである。」
「【0030】
また図7、図8には変速装置ケース91の平面図(図7(a)、図8(a))と該変速装置ケース91内に収納されている静油圧式無段変速機構34の平面図(図7(b)、図8(b))を示す。また図9には図8(a)の矢印A方向から見た変速装置ケース91の側面図を示す。図5?図9に示すように静油圧式無段変速機構34のトラニオン軸92を回動させる油圧シリンダ93と変速装置ケース91の外部に突出した部分のトラニオン軸92を連結するリンク機構95を変速装置ケース91の外壁部分に取り付けている。
【0031】
シリンダ93のピストンロッド93aの先端部に回動自在に一端を接続したアーム95aの他端を変速装置ケース91の外壁に回動自在に支持させ、さらに該アーム95aのもう一方の端部には該アーム95aの長手方向に直交する方向に設けたロッド95bの一端が回動自在に設けられ、さらにこのロッド95bの他端には回動自在な短いアーム95cを介してアーム95aと略平行な方向に長さ調節可能なロッド95dの端部を回動自在に連結する。該長さ調節可能なロッド95dの他端は回動自在に短いアーム95eの一端に連結し、該短いアーム95eの他端にはボス95fが固定している。
【0032】
ボス95fは、ボルト95pで軸95qに固定されている。軸95qは変速装置ケース91に対して回転自在に支持されており、軸95qの一端にはプレート95gが固着している。プレート95gの他端はリンクアーム95hにピン95rを介して回動自在に連結し、リンクアーム95hはトラニオン軸92と一体のカム95jに回動自在に連結している。ここで、カム95jはボス95sに固着し、ボス95sはボルト95tによりトラニオン軸92に固定されている。
【0033】
また、プレート95gとリンクアーム95hはピン95rにより連結されているが、該ピン95rによる連結部は軸95qを回動支点として変速装置ケース91に固定された扇状部材95kの円弧状の長穴95k1内を摺動自在になっており、またピン95rが長穴95k1内だけを摺動可能なためにカム95jの回動範囲もピン95rの摺動に連動する範囲内に規制される。
【0034】
上記リンク機構95により油圧シリンダ93の作動が前記アーム95aやロッド95dなどに連動してカム95jがトラニオン軸92と共に回動することになる。また、カム95jの側面が変速装置ケース91に支持されたローラ95mの側面に当接しながらシリンダ93によりカム95jが回動する。
【0035】
図7に示す状態はトラニオン軸92が静油圧式無段変速機構34の油圧ポンプ34aの斜板34dを車両前進側に向けた状態を示しており、図8の変速装置ケース91の平面図(図8(a))と該変速装置ケース91内に収納されている静油圧式無段変速機構34の平面図(図8(b))に示す状態は静油圧式無段変速機構34の油圧ポンプ34aの斜板34dを中立位置に向けた状態を示しており、カム95jの凹部95j1に対してローラ95mが嵌り込む位置がトラニオン軸92の中立位置である。なお、ローラ95mは図8(b)のx方向からバネで押されている。また図10の変速装置ケース91の平面図(図10(a))と該変速装置ケース91内に収納されている静油圧式無段変速機構34の平面図(図10(b))を示す状態は静油圧式無段変速機構34の油圧ポンプ34aの斜板34dを後進側に向けて配置した状態を示している。」
「【0043】
トラニオン軸回動用油圧シリンダ93の作動によるトラニオン軸92の回動位置を検出するポジションセンサ92a(図7)は回動軸93dの回動度合いを検出する構成である。ポジションセンサ92aはロッド95dの先端部のアーム95eの接続部とは反対側に回動自在に一端が設けられたアーム93cの他端に連結されている。これにより、ポジションセンサ92aはトラニオン軸92の動き(位置)を検出することになる。(以下省略)」
「【0050】
また、エンジン始動は、クラッチペダル19を踏んでクラッチスイッチ97(図4)をオン(クラッチ切り)とし、前後進レバー10を中立として行うが、エンジン始動直後に油圧シリンダ93が中立にない時がある。これは前進走行中にエンジン5を切ると、トラニオン軸回動用油圧シリンダ93が中立位置以外の位置にある状態で作動停止することがあるためである。
【0051】
そのため、前述したトラニオン軸回動用油圧シリンダ93が中立位置にない場合には、油圧シリンダ93を中立に戻すような出力をし、油圧シリンダ93が中立位置に戻るまで、警告ブザーを連続して鳴らす構成として、走行安全性を高める。
【0052】
さらに、エンジン始動時には、トラニオン軸回動用油圧シリンダ93が中立位置以外にある場合は、中立位置に素早く戻すために油圧シリンダ93の動作速度を速くするためにパルス出力ではなく連続出力とする。
【0053】
エンジン始動時には前後進レバー10は必ず中立位置にあるが、クラッチペダル19を戻してメインクラッチ32を入りにした場合には車両が発進するおそれがある。そのために前述のように油圧シリンダ93の作動をパルス出力ではなく連続出力で行うことでエンジン始動時には素早く、トラニオン軸回動用油圧シリンダ93を中立位置に戻すようにする。また、このとき警報ブザーを鳴らしてオペレータの注意を喚起する。」
【図1】
[図:0001387456000019.jpg]
【図5】
[図:0001387456000020.jpg]
【図7】
[図:0001387456000021.jpg]
【図9】
[図:0001387456000022.jpg]
(3)対比・判断
ア 甲第1号証を主たる証拠として
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(a)甲1発明の「トラクタ100」、「エンジン5」、「可動斜板31a」及び「HST21」は、それぞれ本件発明1の「トラクタ」、「エンジン」、「可動斜板」及び「油圧式無段変速機」に相当する。
(b)甲1発明の「HST21の油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度を変化させる変速アクチュエータ86」は、本件発明1の「少なくとも前記エンジンの停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで駆動される電動アクチュエータ」との対比において、「アクチュエータ」の限度で共通する。
また、甲1発明の「アクチュエータ86」は、「HST21の油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度を変化させる」ものであるから、アクチュエータ86が発生させた動力でHST21の可動斜板31aの傾斜角度を変化させるものであり、甲1発明がアクチュエータ86の発生させた動力をHST21の可動斜板31aに伝達する動力伝達機構を備えることは明らかである。
したがって、甲1発明の「HST21の油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度を変化させる変速アクチュエータ86」「を備える」ことは、本件発明1の「前記電動アクチュエータが発生させた動力が伝達されることで、前記油圧式無段変速機の前記可動斜板の傾斜角度を変化させる動力伝達機構と」「を備える」こととの対比において、「前記アクチュエータが発生させた動力が伝達されることで、前記油圧式無段変速機の前記可動斜板の傾斜角度を変化させる動力伝達機構と」「を備える」の限度で共通する。
(c)甲1発明の「主変速レバー3」は、本件発明1の「主変速レバー」に相当し、甲1発明の「主変速レバー3の変速位置を検出する角度検出手段88」は、本件発明1の「前記主変速レバーの位置を検出する主変速レバー位置検出部」に相当する。
(d)甲1発明の「前進(F)」、「中立(N)」、「後進(R)」及び「リバーサレバー7」は、それぞれ本件発明1の「前進」、「ニュートラル」、「後進」及び「切替操作部」に相当し、甲1発明の「リバーサレバー7の回動位置を検出する位置検出手段87」は、本件発明1の「前記切替操作部に行われた操作を検出する切替操作検出部」に相当する。
(e)甲1発明の「検出値」は、本件発明1の「検出結果」に相当するから、上記(c)及び(d)を踏まえると、甲1発明の「主変速レバー3の変速位置を検出する角度検出手段88の検出値及びリバーサレバー7の回動位置を検出する位置検出手段87の検出値に基づ」くことは、本件発明1の「前記主変速レバー位置検出部の検出結果及び前記切替操作検出部の検出結果に基づ」くことに相当する。
そして、甲1発明の「車速が主変速レバー3で指示される車速となるよう変速アクチュエータ86を通じて油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度をフィートバック制御する」は、変速アクチュエータ86が制御されることを示しているから、本件発明1の「前記電動アクチュエータを制御する」との対比において、「アクチュエータを制御する」との限度で共通し、甲1発明の「制御装置81」は、本件発明1の「制御部」に相当する。
(f)甲1発明の「後輪2」及び「前輪1」は、本件発明1の「後輪」及び「前輪」に相当し、甲1発明の「後輪2の車軸」及び「前輪1の車軸」は、本件発明1の「後車軸」及び「前車軸」に相当するから、甲1発明の「後輪2の車軸の上下方向の中央の高さが前輪1の車軸の上下方向の中央よりも高」いことは、本件発明1の「後輪の」「後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央よりも高」いことに相当する。
(g)甲1発明の「リバーサレバー7が中立(N)位置にあることを検出したときには、可動斜板31aを中立位置に保持するように変速アクチュエータ86を制御する」ことは、リバーサレバー7が中立位置に切り替えられる操作が行われたことを、リバーサレバー7の回動位置を検出する位置検出手段87が検出した場合、変速アクチュエータ86が、HST21が中立となるように可動斜板31aの傾斜角度を中立位置に変化させ保持することであるから、本件発明1の「前記エンジンの停止中においてニュートラルに切り替える操作が前記切替操作部に行われたことを前記切替操作検出部が検出した場合、前記電動アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させること」との対比において、「ニュートラルに切り替える操作が前記切替操作部に行われたことを前記切替操作検出部が検出した場合、前記アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させること」との限度で共通する。
以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点1]
「エンジンと、
前記エンジンの出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させる油圧式無段変速機と、
アクチュエータと、
前記アクチュエータが発生させた動力が伝達されることで、前記油圧式無段変速機の前記可動斜板の傾斜角度を変化させる動力伝達機構と、
車速を切り替える操作が可能な主変速レバーと、
前記主変速レバーの位置を検出する主変速レバー位置検出部と、
前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な切替操作部と、
前記切替操作部に行われた操作を検出する切替操作検出部と、
前記変速レバー位置検出部の検出結果及び前記切替操作検出部の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、
を備え、
後輪の後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央よりも高く、
ニュートラルに切り替える操作が前記切替操作部に行われたことを前記切替操作検出部が検出した場合、前記アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させるトラクタ。」
[相違点1-1]
本件発明1のトラクタが「バッテリー」を備えており、アクチュエータが、「少なくとも前記エンジンの停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで駆動される電動アクチュエータ」であり、ニュートラルに切り替える操作が切替操作部において行われると、油圧式無段変速機がニュートラルになるように可動斜板の傾斜角度を変化させることが、「前記エンジンの停止中において」されると特定されているのに対し、甲1発明のトラクタ100がバッテリーを備えているとは特定されておらず、アクチュエータ86が電動アクチュエータであるとの特定もなく、また、少なくともエンジン停止中においてバッテリーから電力が供給されることで駆動され、エンジン停止中において、HST21が中立になるように可動斜板31aの傾斜角度を変化させるものであるとも特定されていない点。
[相違点1-2]
本件発明1は、「前記可動斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部」「を備え」、「前記傾斜角度検出部は、前記電動アクチュエータに対して、アーム部材とリンク部材を介して連結されたポテンショメータであり、前記リンク部材の回転角度を前記ポテンショメータで検出することにより、前記可動斜板の傾斜角度を検出」するものであるのに対し、甲1発明では、可動斜板31aの傾斜角度を検出する構成については特定されていない点。
[相違点1-3]
傾斜角度検出部の配置に関し、本件発明1は、「前記傾斜角度検出部の全体が後輪の後車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置され」ているのに対し、甲1発明は、傾斜角度検出部の配置について特定されていない点。
b 判断
各相違点について検討する。
(a)相違点1-1について
甲第2号証の段落【0001】~【0003】、【0016】、【0027】、【0028】、【0033】~【0036】、【0051】、【0054】~【0056】、【0060】、【0061】、【0076】及び【0082】並びに【図1】~【図5】の記載より、甲第2号証には、「作業車両1の急発進を防ぐために、作業車両1がバッテリ26(本件発明1の「バッテリー」に相当する。以下この段落において、かっこ内は同様の趣旨である。)、エンジンの出力を変速し、可動斜板(可動斜板)の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させるHST510(油圧式無段変速機)を備え、作業車両1のエンジン20(エンジン)が停止中に、変速操作部材72(切替操作部)が中立位置(ニュートラル)に位置されると、変速用電動アクチュエータ80(電動アクチュエータ)が自動的に中立状態とされ、これによって、HST510が中立状態になるように、可動斜板(可動斜板)の傾斜角度を変化させる技術的事項」(以下、「甲第2号証の技術的事項」という。)が記載されている。
HST変速機構を備える作業車両において、HSTが中立状態以外でエンジンが始動されると作業車両が急発進することを防ぐという課題は、甲第2号証の段落【0076】、甲第3号証の第5欄第27行~第46行、甲第5号証の段落【0016】、【0017】及び【0020】、甲第6号証の段落【0050】~【0053】にも示されるように当業者には周知の課題であり、甲1発明のHST21を備えるトラクタ100においても、当該課題、すなわち、HST21が中立状態以外でエンジン5が始動されるとトラクタ100の急発進するのを防ぐという課題は内在していたといえる。そして、当該課題を当業者が認識することは当業者における当該課題の周知性を鑑みれば容易であったというべきである。
ここで、甲1発明も、甲第2号証の技術的事項もどちらも、HST(油圧式無段変速機)を備えた作業車両であり、技術分野が共通することからすれば、甲第2号証の技術的事項を甲1発明に適用し、当該課題を解決しようと試みることは当業者にとって容易であったというべきである。
してみると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の構成となすことは、甲第2号証の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
(b)相違点1-2について
甲1発明の「制御装置81」は、「変速アクチュエータ86を通じて油圧ポンプ31の可動斜板31aの傾斜角度をフィードバック制御する」ものであるところ、可動斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部を備え、この傾斜角度検出部の検出値を可動斜板の傾斜角度の変更に利用することはHST分野において常套手段(例えば、甲第6号証の段落【0043】を参照。)であるといえる。
したがって、甲1発明も、可動斜板31aの傾斜角度を検出する傾斜角度検出部を備える構成となっているか、そうでなくとも、甲1発明において、可動斜板31aの傾斜角度を検出する傾斜角度検出部を備える構成と成すことは当業者にとって何らの困難性も伴うものではないといえる。
また、部品の配置の自由度を上げるという課題は当業者には周知ともいうべき課題であるといえる(例えば、甲第3号証の第6欄第62行~第64行の、「Other types of Hall effect linear sensors may be attached to other portions of the control and actuation linkage(not shown).」との記載からすれば、HSTの斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部の構成について、リンク機構を介して必要に応じた適宜の位置にセンサを配置できることが示唆されているといえる。)。
一方、油圧式無段変速機構において、可動斜板の傾斜角度を変化させる駆動手段たるアクチュエータと傾斜角度検出部たる角度センサを、アーム部材とリンク部材を介して連結し、リンク部材の回転角度を角度センサで検出することにより可動斜板の傾斜角度を検出するという技術的事項は、当業者には周知・慣用の技術的事項(以下、「周知・慣用の技術的事項」という。)であるといえる(例えば、甲第6号証の段落【0035】、【0043】及び【図7】特開2002-340182号公報の段落【0032】、【0033】及び【図7】、特開2009-144850号公報の段落【0014】及び【図4】を参照。)。
ここで、上記周知・慣用の技術的事項は、アクチュエータの動力発生手段が油圧であるか電動であるかに依存するものではないといえるから、甲1発明において、上記周知・慣用の技術的事項を適用し、可動斜板31aの傾斜角度を変化させる駆動手段たる変速アクチュエータ86と可動斜板31aの傾斜角度を検出する傾斜角度検出部をアーム部材とリンク部材を介して連結し、可動斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部として構成することは、上記周知・慣用の技術的事項に基いて当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
あるいは、甲1発明において、可動斜板31aの傾斜角度を検出する手段を備えるものとし、その際に、上記周知・慣用の技術的事項を適用し、可動斜板31aの傾斜角度を変化させる駆動手段たる変速アクチュエータ86と傾斜角度を検出する手段を、アーム部材とリンク部材を介して連結し、リンク部材の回転角度を傾斜角度を検出する手段で検出する構成とし、全体として可動斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部として構成することは、上記周知・慣用の技術的事項に基いて当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
なお、ポテンショメータは角度検出手段として慣用されており(例えば、特開2002-340182号公報の段落【0031】を参照。)、傾斜角度検出部としてポテンショメータを採用した点は当業者における設計上の一事項にすぎないものといえる。
(c)相違点1-3について
トラクタにおいて、エンジンの出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させる油圧式無段変速機の傾斜角度検出部の全体が後輪の後車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置され、当該後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央より高く配置することは、当業者には、周知・慣用の技術的事項であるといえる(甲第3号証のFIG.1及び2、甲第4号証の段落【0030】及び【図1】並びに甲第6号証の段落【0043】、【0051】、【図1】、【図5】、【図7】及び【図9】を参照。以下、「甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項」という。)。
検出部などの電装装置を、作業に伴う水又は泥などが掛かりにくい高い位置に配置する必要があるという課題は、トラクタなどの、水又は泥のある場所で作業する作業車両においては、当業者であれば当然考慮すべき周知の課題であるから、甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項を甲1発明に適用し、相違点1-3に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。
(d)作用効果について、
本件発明1の奏する作用効果は、甲1発明、甲第2号証の技術的事項、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(e)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証の技術的事項、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)について
甲第2号証に記載の技術的事項の前提として、エンジン20の停止中において可動斜板の傾斜角度を検出できることが必要であるから、甲第2号証の技術的事項も、エンジン20の停止中にバッテリ26から電力が供給される可動斜板の傾斜角度を検出するものであることは明らかである(変速作動側センサ425を参照。)。
したがって、本件発明2は、甲1発明、甲第2号証の技術的事項、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4,6号証に記載の周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)特許権者の意見について
a 相違点1-1について
(a)特許権者の意見
特許権者は、令和3年3月16日付けの意見書において相違点1-1に関し次のように主張する。
「甲1発明が適用される対象はシート11を備える乗用型の車両であり(段落0012、図1)、詳細にはトラクタに適用される(段落0012)。これに対し、甲第2号証の技術的事項が適用される対象は、歩行型除雪機である(段落0016)。ここで、甲第2号証の技術的事項は、HSTに関する技術である。言い換えれば、車両の駆動に関する技術である。しかし、乗用型と歩行型では車両の駆動に必要な動力(馬力)が大きく異なる。更に、甲1発明は変速に関するものであり、乗用型と歩行型では要求される変速についても大きく異なる。従って、たとえHSTが共通しているからといって、甲第2号証の技術的事項を甲1発明に適用することは当業者にとって容易ではない。更に、甲1発明の用途が土木又は農作業であるのに対し、甲第2号証の除雪機の用途は除雪である。このように用途が大きく異なる観点からも、甲第2号証の技術的事項を甲1発明に適用することは当業者にとって容易ではない。」(意見書第2ページ第20行~同ページ下から4行)
(b)当審の判断
上記(ア)b(a)で説示のとおり、HST変速機構を備える作業車両において、HSTが中立状態以外でエンジンが始動されると作業車両が急発進することを防ぐという課題は、甲第2号証の段落【0076】、甲第3号証の第5欄第27行~第46行、甲第5号証の段落【0016】、【0017】及び【0020】、甲第6号証の段落【0050】~【0053】にも示されるように当業者には周知の課題である。そして、この課題は、作業車両の動力の大きさ、作業車両が乗用型か歩行型かの違い、また、作業車両の用途の如何にかかわらず生じるものといえる。
したがって、甲2号証の技術的事項を甲1発明に適用することは当業者であれば容易であったというべきであり、特許権者の上記主張は採用できない。
b 相違点1-3について
(a)特許権者の意見
特許権者は、令和3年3月16日付けの意見書において相違点1-3に関し次のi及びiiの主張をする。
i「甲第3号証に記載の車両は前輪と後輪の車軸の位置が殆ど変わらず、また図1が模式図であることもあるため、周知・慣用技術を例示する文献として適切とは言い難い。また、甲第4号証の図1には、角度センサー30は確かに後輪RWの車軸位置よりも高い位置にあるように見える。しかし、甲第4号証には具体的な取付構造が記載されていないため、無段変速装置Hが角度センサー30を備えることだけを単に図示しているのか、角度センサー30の具体的な位置まで示されているのかが判別できない。甲第6号証では、図1、図5、図7、図9等が指摘されているが、トラニオン軸ポジションセンサ92aが図示されているのは図7のみであり、図7は平面図なので高さの情報を有しないことを考慮すると、甲第6号証に相違点1-2が記載されているとは言い切れない。以上のように甲第3号証、甲第4号証、及び甲第6号証に基づいて、相違点1-2が周知・慣用技術であるとは言えない。」(第3ページ第4行~第15行)
ii「甲第3号証、甲第4号証、及び甲第6号証には電装品を水及び泥から保護するという効果が記載されていない。そのため、この課題を解決するために、後車軸が前車軸よりも高い構成のトラクタに対して、後車軸より高い位置に電装品を配置することに当業者が容易に想到できるとは限らない。」(第3ページ第17行~第20行)
(b)当審の判断
iについて
甲第3号証の図1が模式図であるとしても、トラクタの前輪よりも後輪が大きく描かれているところ、このような操舵輪である前輪よりも駆動輪である後輪が大きいという構成がトラクタなどの作業車両においては一般的であることからすれば、甲第3号証の図1は、トラクタを構成する要素の実際の大きさ、位置関係について、現実に即してある程度具体的に記載した図であるといえる。
したがって、甲第3号証の図1から、トラクタの前輪の車軸の軸芯よりも後輪の車軸70の軸芯の方が高い位置に配置されていることが看取できるし、また、同様にトラクタのHST38を詳細に図示した図2から、HST38におけるホール効果センサー32の下端が後輪の車軸70の軸芯よりも高い位置に配置されていることも、当業者であれば十分に看取することができるといえる。
甲第4号証の【図1】は、当業者における技術常識を踏まえれば、作業車両の全体と共に、前輪FW、後輪RW、エンジンE、クラッチ9、クラッチハウジングCH、HST式無段変速装置H、ミッションケースM、及びリアアクスルケース8が、実際の大きさ、位置関係に基づいてある程度具体的に記載されたものということができる。
このことからすれば、作業車両の前輪FWの中心よりも後輪RWの中心の方が高い位置に配置されていること、及び、角度センサー30の下端が後輪の中心よりも高い位置に配置されていることは、当業者であれば十分看取することができるといえる。
甲第6号証の【図7】(a)が変速機ケース91の平面図、【図9】が変速機ケースの側面図(【図面の簡単な説明】を参照。)であることからすれば、ポジションセンサ92aは、変速機ケース91の上面に配置され、これと、【図5】と【図1】の図示内容を合わせてみれば、ポジションセンサ92aの全体が、後輪3の後ろ車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置されていることが看取できる。
iiについて
トラクタなどの作業車両は、水、泥などがある場所での利用を想定し、作業に伴って水や泥が跳ね上げられるものであるから、検出部などの電装装置を、水又は泥などが掛かりにくい高い位置に配置する必要があるという課題は、内在しかつ当業者であれば容易に認識しうるといえる。
したがって、特許権者の上記主張は、採用できない。
c 相違点1-2について
(a)特許権者の意見
特許権者は、令和3年7月9日付けの意見書において相違点1-2に関し次の主張をする。
「甲第6号証に記載のトラニオン軸回動用油圧シリンダ93は油圧シリンダであるため、電動アクチュエータには該当しない。なお、訂正本件発明1の作用効果を発揮させるためにはエンジン停止中に動作可能であることが要求される。一般的に油圧シリンダはエンジンの動力を用いて動作するため、甲第6号証に記載のトラニオン軸回動用油圧シリンダ93はこの要求を満たさない。・・・甲第6号証に記載のトラニオン軸92及びリンク機構95は回転軸方向が何れも車高方向であるのに対し、甲第3号証に記載の制御アーム40の回転軸方向は車幅方向である。即ち、アクチュエータの動力を伝達する機構の基本的な部分が相違するため、甲第6号証に記載のポジションセンサ92a及びリンク機構95を第3号証に記載の車両に適用することは、当業者にとって容易でない。」(第4ページ第5行~第18行。)
(b)当審の判断
上記(ア)b(b)で説示のとおり、油圧式無段変速機構において、可動斜板の傾斜角度を変化させるアクチュエータと角度センサを、アーム部材とリンク部材を介して連結し、リンク部材の回転角度を角度センサで検出することにより可動斜板の傾斜角度を検出するという技術的事項は、当業者には周知・慣用の技術的事項であり、当該周知・慣用の技術的事項は、アクチュエータの動力発生手段が油圧であるか電動であるかに依存するものではないといえる。
また、相違点1-2に係る当審の判断は、甲第6号証に記載のポジションセンサ92a及びリンク機構95を甲第3号証に記載のトラクタに適用し、もって、相違点1-2に係る本件発明1の構成となすことを判断するものではない。
したがって、特許権者の上記主張は、採用できない。
イ 甲第2号証を主たる証拠として
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(a)甲2発明の「エンジン20」、「バッテリ26」、「可動斜板」及び「HST510」は、それぞれ本件発明1の「エンジン」、「バッテリー」、「可動斜板」及び「油圧式無段変速機」に相当する。
(b)甲2発明の「変速用電動アクチュエータ80」は、バッテリ26から電力が供給されることで駆動されるものであるといえ、また、「作業車両1のエンジン20が停止中に、変速操作部材72を中立位置に位置させた状態でメイン操作部材78が主電源オフ位置から主電源オン位置へ操作されると、変速用電動アクチュエータ80が自動的に中立状態とされ」るものであるから、エンジン20の停止中にバッテリ26から電力が供給されることで駆動されているといえ、本件発明1の「少なくとも前記エンジンの停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで駆動される電動アクチュエータ」に相当する。
(c)甲2発明の「制御軸515a及び制御アーム515b」は、HST510の可動斜板の傾斜角度を変化させる動力伝達機構といえるから、本件発明1の「動力伝達機構」に相当する。
(d)甲2発明の「変速作動側センサ425」は、「変速用電動アクチュエータ80の作動状態を直接又は間接的に検出する」ものであり、HST510の可動斜板の傾斜角度を検出するものであるといえるから、本件発明1の「傾斜角度検出部」に相当する。
(e)甲2発明の「前進」、「中立」ないし「中立状態」及び「後進」は、それぞれ本件発明1の「前進」、「ニュートラル」及び「後進」に相当する。
(f)甲2発明の「変速操作部材72」は、「HST510を中立状態とさせて作業車両1の走行を停止させる中立位置、作業車両1の車速が前進側に最大となる前進側最高速位置及び前進側最高速位置より遅い所定の前進側最高作業速位置並びに作業車両1の車速が後進側に最大となる後進側最高速位置及び後進側最高速位置より遅い所定の後進側最高作業速位置の間で操作可能」であり、作業車両1の前進、中立、後進の3つから何れかを選択する操作を可能とする機能と共に、作業車両1の車速を切り替える操作を可能とする機能を一つの構成要素で兼ね備えるものであり、2つの機能を一つの構成要素で兼ねたからといって、一方の機能が他方の機能に影響を及ぼすものではないといえるから、本件発明1の「車速を切り替える操作が可能な主変速レバー」と「前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な切替操作部」に相当する。
(g)甲2発明の「変速操作部材72の操作状態を検出する変速操作側センサ410」は、変速操作部材72の位置を検出し、変速操作部材72に行われた操作を検出するものであるといえるので、本件発明1の「前記主変速レバーの位置を検出する主変速レバー位置検出部」と「前記切替操作部に行われた操作を検出する切替操作検出部」に相当する。
(h)甲2発明の「変速用電動アクチュエータ80の作動制御を行う制御装置400」は、「変速操作側センサ410の検出値が入力され」変速用電動アクチュエータ80が作動制御されるから、本件発明1の「前記電動アクチュエータを制御する制御部」に相当する。
(i)甲2発明の「走行駆動軸31L(31R)」及び「走行従動軸33L(33R)は、本件発明1の「後輪の後車軸」及び「前輪の前車軸」に相当するから、甲2発明の「走行駆動軸31L(31R)の上下方向の中央の高さが、走行従動軸33L(33R)の上下方向の中央よりも高」いことは、本件発明1の「当該後車軸の上下方向の中央高さが前輪の前車軸の上下方向の中央よりも高」いことに相当する。
(j)上記(b)、(e)、(f)、(g)及び(h)を踏まえると、甲2発明の「作業車両1のエンジン20が停止中に、変速操作部材72を中立位置に位置させた状態でメイン操作部材78が主電源オフ位置から主電源オン
位置へ操作されると、変速用電動アクチュエータ80が自動的に中立状態とされ、これによって、HST510が中立状態になるように、可動斜板の傾斜角度を変化させる」ことは、本件発明1の「前記エンジンの停止中においてニュートラルに切り替える操作が前記切替操作部に行われたことを前記切替操作検出部が検出した場合、前記電動アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させること」に相当する。
(k)甲2発明の「歩行型除雪機である作業車両1」は、本件発明1の「トラクタ」との対比において、「作業車両」との限度で共通する。
以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点2]
「エンジンと、
バッテリーと、
前記エンジンの出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させる油圧式無段変速機と、
少なくとも前記エンジン停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで駆動される電動アクチュエータと、
前記アクチュエータが発生させた動力が伝達されることで、前記油圧式無段変速機の前記可動斜板の傾斜角度を変化させる動力伝達機構と、
前記可動斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、
車速を切り替える操作が可能な主変速レバーと、
前記主変速レバーの位置を検出する主変速レバー位置検出部と、
前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な切替操作部と、
前記切替操作部に行われた操作を検出する切替操作検出部と、
前記主変速レバー位置検出部の検出結果及び前記切替操作検出部の検出結果に基づいて前記電動アクチュエータを制御する制御部と、
を備え、
後輪の後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央よりも高く、
前記エンジンの停止中においてニュートラルに切り替える操作が前記切替操作部に行われたことを前記切替操作検出部が検出した場合、前記電動アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させる作業車両。」
[相違点2-1]
傾斜角度検出部の配置に関し、本件発明1は、「前記傾斜角度検出部の全体が後輪の後車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置され」るものであると特定されているのに対し、甲2発明の「変速作動側センサ425」の配置について、かかる特定がされていない点。
[相違点2-2]
傾斜角度検出部の構成に関し、本件発明1は、「前記傾斜角度検出部は、前記電動アクチュエータに対して、アーム部材とリンク部材を介して連結されたポテンショメータであり、前記リンク部材の回転角度を前記ポテンショメータで検出することにより、前記可動斜板の傾斜角度を検出」するものであるのに対し、甲2発明の「変速作動側センサ425」は、「変速用電動アクチュエータ80の作動状態を直接又は間接的に検出する」とされている点。
[相違点2-3]
作業車両に関し、本件発明1は「トラクタ」であるのに対し、甲2発明は「歩行型除雪機である作業車両1」である点。
b 判断
各相違点について検討する。
(a)相違点2-1について
トラクタなどの油圧式無段変速機(HST)を備えた作業車両において、エンジンの出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させる油圧式無段変速機の傾斜角度検出部の全体が後輪の後車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置され、当該後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央より高く配置することは、当業者には、周知・慣用の技術的事項であるといえる(甲第3号証のFIG.1及び2、甲第4号証の段落【0030】及び【図1】並びに甲第6号証の段落【0043】、【0051】、【図1】、【図5】、【図7】及び【図9】を参照。)。
検出部などの水、泥又は石などによって破損しやすい電装装置を、作業に伴う水、泥又は石などが及びにくい高い位置に配置する必要があるという課題は、甲2発明の歩行型除雪機である作業車両1を含めた油圧式無段変速機を備えた作業車両など、水(雪)、泥又は石のある場所で作業する作業車両においては、当業者には周知の課題というべきであるから、周知・慣用の技術的事項を甲2発明に適用し、相違点2-1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。
(b)相違点2-2について
部品の配置の自由度を上げるという課題は当業者には周知ともいうべき課題であるといえるし(例えば、甲第3号証の第6欄第62行~第64行の、「Other types of Hall effect linear sensors may be attached to other portions of the control and actuation linkage(not shown).」との記載からすれば、HSTの斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部の構成について、リンク機構を介して必要に応じた適宜の位置にセンサを配置できることが示唆されているといえる。)、甲2発明は、「変速作動側センサ425」は、「変速用電動アクチュエータ80の作動状態を直接又は間接的に検出する」とされているように、変速作動側センサ425と変速用電動アクチュエータ80との間を間接的に連結する機構を備えることを示唆しているといえる。
一方、油圧式無段変速機構において、可動斜板の傾斜角度を変化させる駆動手段たるアクチュエータと角度センサを、アーム部材とリンク部材を介して間接的に連結し、リンク部材の回転角度を角度センサで検出することにより可動斜板の傾斜角度を検出するという技術的事項は、上記ア(ア)b(b)で説示のとおり、当業者には周知・慣用の技術的事項である。
してみると、甲2発明において、変速作動側センサ425と変速用電動アクチュエータ80との間を間接的に連結する機構として上記周知・慣用の技術的事項を適用し、相違点2-2に係る本件発明1の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
(c)相違点2-3について
甲2発明は、本件発明1と同様の油圧式無段変速機(HST)を備えた作業車両に関する発明であるという点で技術分野を同じくするものであり、また、油圧式無段変速機(HST)を駆動手段として採用することによる課題である、HSTが中立状態以外でエンジンが始動されると作業車両が急発進するという課題は、作業車両の種別に依存しないから、甲2発明の対象をトラクタとすることは、当業者にとって何らの困難性を伴うものではなく容易であったというべきである。
(d)作用効果について、
本件発明1の奏する作用効果は、甲2発明、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(e)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明2について
甲2発明はエンジン20の停止中に可動斜板の傾斜角度を変化させるものであり、その前提として、エンジン20の停止中において可動斜板の傾斜角度を検出できることが必要であるから、甲第2号証の技術的事項も、エンジン20の停止中にバッテリ26から電力が供給される可動斜板の傾斜角度を検出するものであることはあきらかである(変速作動側センサ425を参照。)。
したがって、本件発明2は、甲2発明、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)特許権者の意見について
特許権者は、令和3年3月16日付けの意見書において、相違点2-1に関し、ア(ウ)b(a)と同様の主張を、また、相違点2-3に関し、上記ア(ウ)a(a)と同様の主張をしている(第3ページ第25行~第4ページ第4行。)。
しかしながら、相違点2-1に関する主張については、上記ア(ウ)b(b)と同様の理由により、また、相違点2-3に関する主張については、上記ア(ウ)a(b)と同様の理由により採用することはできない。
相違点2-3に関する特許権者の主張について付言する。
本件発明1及び2の目的は、油圧式無段変速機(HST)を備える作業車両において、油圧式無段変速機がニュートラルではない状態でエンジンが停止した場合においても、エンジンの再始動時に油圧式無段変速機の出力が発生することを防止することにあり(本件特許の明細書段落【0009】を参照。)、かかる目的は作業車両が乗用型か歩行型であるかを問うものではない。
また、本件発明1及び2は、農業用又は土木作業用の作業機をけん引可能な乗用型の車両との限定は付されていないから、歩行型の農業用又は土木作業用車両も含まれると解される(「トラクタ」とは、本来は「けん引車」との意味であるが、今では、歩行型の手押し耕耘機ような、けん引しない作業車両(乗用型でない作業車両や後に作業機を伴わない作業車両)にも用いられているといえる(例えば、歩行型トラクタ。))。
してみると、HSTを利用した歩行型の作業車両である歩行型除雪機に関する発明である甲2発明の作業車両を、本件発明1及び2の「トラクタ」とすることは何らの困難性を伴うものではない。
さらに、特許権者は、令和3年7月9日付けの意見書において、相違点2-2に関し、上記ア(ウ)c(a)と同様の主張をしている(第4ページ第5行~第18行、第5ページ第7行~第13行。)。
しかしながら、上記ア(ウ)c(b)と同様の理由により、特許権者の主張は採用できない。
ウ 甲第3号証を主たる証拠として
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(a)甲3発明の「エンジン」、「バッテリー11」、「可動斜板56」及び「HST」は、それぞれ本件発明1の「エンジン」、「バッテリー」、「可動斜板」及び「油圧式無段変速機」に相当する。
(b)甲3発明の「電気駆動装置16」は、「エンジンが停止すると」、「自動的に、HSTがニュートラルとなるように可動斜板56の角度を変化させる」ものであるから、エンジン停止中にバッテリー11から電力が供給されることで駆動されるものであるといえ、本件発明1の「少なくとも前記エンジンの停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで駆動される電動アクチュエータ」に相当する。
(c)甲3発明の「制御アーム40」は、本件発明1の「動力伝達機構部」に相当する。
(d)甲3発明の「ホール効果センサ32」は、「制御アーム40の位置を検出することによってHSTの可動斜板の傾斜角度を検出するもの」であるから、本件発明1の「傾斜角度検出部」に相当する。
(e)甲3発明の「制御ハンドル14」は、「車速及び前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な」ものであるから、トラクタの前進、中立、後進の3つから何れかを選択する操作を可能とする機能と共に、トラクタの車速を切り替える操作を可能とする機能を一つの構成要素で兼ね備えるものであり、2つの機能を一つの構成要素で兼ねたからといって、一方の機能が他方の機能に影響を及ぼすものではないといえるから、本件発明1の「車速を切り替える操作が可能な主変速レバー」と「前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な切替操作部」に相当する。
(f)甲3発明の「制御ハンドル14の位置を検出するホール効果センサ30」は、上記(e)を踏まえると、制御ハンドル14の位置を検出することによって、制御ハンドル14に行われた、前進、ニュートラル、後進のいずれか操作及びそれぞれの速度を検出するものであるといえるから、本件発明1の「前記主変速レバーの位置を検出する主変速レバー位置検出部」と「前記切替操作部に行われた操作を検出する切替操作検出部」とに相当する。
(g)甲3発明の「ホール効果センサ30の検出結果に基づいて電気駆動装置16を制御するEAD10」は、上記(e)及び(f)を踏まえると、本件発明1の「前記主変速レバー位置検出部の検出結果及び前記切替操作検出部の検出結果に基づいて前記電動アクチュエータを制御する制御部」に相当する。
(h)甲3発明の「HSTの可動斜板56の傾斜角度を検出するホール効果センサ32の全体が後輪の車軸70の上下方向の中央よりも高い位置に配置され」ることは、本件発明1の「前記傾斜角度検出部の全体が後輪の後車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置され」ることに相当する。
(i)甲3発明の「後輪の車軸70の上下方向の中央の高さが前輪の車軸の上下方向の中央よりも高く配置され」ることは、本件発明1の「当該後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央よりも高」いことに相当する。
(j)甲3発明の「エンジンが停止すると、電動駆動装置16」が「HSTがニュートラルとなるように可動斜板56の角度を変化させる」ことは、本件発明1の「前記エンジンの停止中において前記電動アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させる」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点3]
「エンジンと、
バッテリーと、
前記エンジンの出力を変速し、可動斜板の傾斜角度を変化させることで変速比を変化させる油圧式無段変速機と、
少なくとも前記エンジンの停止中において前記バッテリーから電力が供給されることで駆動される電動アクチュエータと、
前記アクチュエータが発生させた動力が伝達されることで、前記油圧式無段変速機の前記可動斜板の傾斜角度を変化させる動力伝達機構と、
前記可動斜板の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、
車速を切り替える操作が可能な主変速レバーと、
前記主変速レバーの位置を検出する主変速レバー位置検出部と、
前進、ニュートラル、後進の3つから何れかを選択する操作が可能な切替操作部と、
前記切替操作部に行われた操作を検出する切替操作検出部と、
前記主変速レバー位置検出部の検出結果及び前記切替操作検出部の検出結果に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、
を備え、
前記傾斜角度検出部の全体が後輪の後車軸の上下方向の中央よりも高い位置に配置され、当該後車軸の上下方向の中央の高さが前輪の前車軸の上下方向の中央よりも高く、
前記エンジンの停止中において前記電動アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させるトラクタ。」
[相違点3-1]
本件発明1が、「前記エンジンの停止中においてニュートラルに切り替える操作が前記切替操作部に行われたことを前記切替操作検出部が検出した場合」、「前記電動アクチュエータは、前記油圧式無段変速機がニュートラルになるように前記可動斜板の傾斜角度を変化させる」ものであるのに対し、甲3発明は、「電気駆動装置16は、自動的に、HSTがニュートラルとなるように可動斜板56の角度を変化させる」ものである点。
[相違点3-2]
傾斜角度検出部に関し、本件発明1は、「前記傾斜角度検出部は、前記電動アクチュエータに対して、アーム部材とリンク部材を介して連結されたポテンショメータであり、前記リンク部材の回転角度を前記ポテンショメータで検出することにより、前記可動斜板の傾斜角度を検出」するものであるのに対し、甲3発明の「ホール効果センサ32」は、「可動斜板56の傾斜角度を検出する」とされている点。
b 判断
上記相違点について検討する。
(a)相違点3-1について
甲第2号証には、上記ア(ア)b(a)で述べた「甲第2号証の技術的事項」が記載されているといえる。
甲第2号証の技術的事項は甲3発明と技術分野を共通にし、また、甲3発明と同一の課題を解決するものであるから、甲第2号証の技術的事項を甲3発明に適用し、相違点3-1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。
(b)相違点3-2について
部品の配置の自由度を上げるという課題は当業者には周知ともいうべき課題であるといえるし、甲第3号証の第6欄第62行~第64行の、「Other types of Hall effect linear sensors may be attached to other portions of the control and actuation linkage(not shown).」との記載からすれば、甲3発明において、ホール効果センサ32と電気駆動装置16によって動作する制御アーム40との間にリンク機構を介することにより必要に応じた適宜の位置にセンサを配置できることが示唆されているといえる。
一方、油圧式無段変速機構において、可動斜板の傾斜角度を変化させる駆動手段たるアクチュエータと角度センサを、アーム部材とリンク部材、すなわち複数の連結部材を介して間接的に連結し、リンク部材の回転角度を角度センサで検出することにより可動斜板の傾斜角度を検出するという技術的事項は、上記ア(ア)b(b)で説示のとおり、当業者には周知・慣用の技術的事項である。
してみると、甲3発明において、ホール効果センサ32と電気駆動装置16との間を複数の連結部材を介して間接的に連結する機構として上記周知・慣用の技術的事項を適用し、相違点3-2に係る本件発明1の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
(c)作用効果について、
本件発明1の奏する作用効果は、甲3発明、甲第2号証の技術的事項及び周知・慣用の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(d)小括
したがって、本件発明1は、甲3発明、甲第2号証の技術的事項及び周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明2について
甲3発明はエンジンの停止中に可動斜板56の傾斜角度を変化させるものであり、その前提として、エンジンの停止中において可動斜板56の傾斜角度を検出できることが必要であるから、甲3発明も、エンジンの停止中にバッテリー11から電力が供給される可動斜板の傾斜角度を検出するものであることは明らかである。
したがって、本件発明2は、甲3発明、周知・慣用の技術的事項及び甲第2号証の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)特許権者の意見について
a 相違点3-1について
特許権者は、令和3年3月16日付けの意見書において、相違点3-1に関し、上記ア(ウ)a(a)と同様の主張をしている(第4ページ第8行~第15行。)。
しかしながら、相違点3-1に関する主張については、上記ア(ウ)a(b)と同様の理由により採用することはできない。
また、特許権者は、同意見書において、次のようにも主張する。
「第3号証(米国特許第6955046号明細書)について、追加して以下に述べる。FIG1を見ると、甲第3号証の発明は、車軸自体がトラクタ全体に対して、低い位置に配置され、低床式の運転席が存在する。機体の中央下方にモアデッキを抱えており、米国の芝刈り機用のトラクタ、米国のガーデントラクタである。本件発明のような日本の水田作業に対応できるようなトラクタではない。甲第3号証の発明のガーデントラクタを、仮に、日本の水田に入れたとしたら、車軸の上端まで、水田の泥水の中に浸ってしまう。またFIG2を見ると、車軸(70)全体の上下方向の高さと、ホール効果センサー(32)全体の上下方向の高さとは、側面視で、かなりの部分が重複している。
つまり、甲第3号証の発明のガーデントラクタにおいては、日本の水田作業における泥水に対する配慮や工夫、技術思想が記載されていない。水田での泥水に対する課題がなく、甲第3号証の発明と他の甲号証と、組み合わせることは容易ではない。」(第4ページ第16行~下から4行)
しかしながら、本件発明1及び2は、低床式のトラクタではないとの限定、及び、水田作業に使用するとの限定はされていないから、特許権者の上記主張は本件特許の請求項1及び2の記載の発明特定事項に基づくものとはいえず採用できない。
しかも、甲第3号証はHSTを利用した車軸駆動装置に関する発明ないし技術を開示しており、かかる車軸駆動装置をガーデントラクタへの適用に限定する記載はないのであるから、甲3発明を水田作業用のトラクタとして応用することは当業者であれば容易に想到し得ることであり、その応用の際に、水田作業における泥水に対する配慮や工夫(電装品の泥水からの保護)を施すことは、当業者における通常の創作活動の範囲内の事項であるといえる。
したがって、特許権者の意見は採用することができない。
b 相違点3-2について
特許権者は、令和3年7月9日付けの意見書において、相違点3-2に関し、上記ア(ウ)c(a)と同様の主張をしている(第4ページ第5行~第18行、第5ページ第21行~第24行。)。
しかしながら、上記ア(ウ)c(b)と同様の理由により、特許権者の主張は採用できない。
6 むすび
以上のとおり、請求項1及び2に係る発明は、甲1発明、甲第2号証の技術的事項、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項に基いて、または、甲2発明、周知・慣用の技術的事項及び甲第3、4、6号証に記載の周知・慣用の技術的事項に基いて、または、甲3発明、甲第2号証の技術的事項及び周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700819