特許訂正審判
2021-390117
位置検出システム及び表示装置の制御回路
- 審判番号
- 2021-390117
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2019-550074
- 登録番号
- 6921978
- 請求日
- 2021年08月04日
- 審決日
- 2021年10月12日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ワコム
- 【請求人代理人】黒瀬 泰之
- 審判長/審判官
- 審判長 稲葉 和生
- 審判官 野崎 大進
- 審判官 小田 浩
- 分類
- P141 .852-Y (G06F) / P141 .853-Y (G06F) / P141 .854-Y (G06F) / P141 .856-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6921978号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6921978号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-16〕,17について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6921978号は,2017年(平成29年)11月1日を国際出願日とする出願であって,その請求項1ないし17に係る発明について,令和3年7月30日に特許権の設定登録がされたものであり,令和3年8月4日に本件訂正審判の請求がされたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は,
「特許第6921978号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~17について訂正することを認める,との審決を求める。」というものであって,その訂正の内容は,次の訂正事項からなる。なお,下線部は訂正箇所を示す。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」
とあるのを
「前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」
と訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に
「前記第1の動作モードは,前記表示装置の画質を優先するモードであり,前記第2の動作モードは,前記タッチセンサによる前記アクティブペンの検出精度を優先するモードである」
とあるのを
「前記第2の動作モードは,前記表示装置の画質を優先するモードであり,前記第1の動作モードは,前記タッチセンサによる前記アクティブペンの検出精度を優先するモードである」
と訂正する。
3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項17に
「前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」
とあるのを
「前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」
と訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正事項1および2について
(1) 訂正の目的について
ア 訂正前の請求項1の記載事項同士の関係の検討
(ア)訂正前の請求項1の記載事項
訂正前の請求項1には以下の記載がある。(()付き数字は合議体が付したものであり,以下,構成(1)~(9)という。以下同じ。)
「【請求項1】
(1) アクティブペンの位置検出を行う位置検出システムであって,
(2) 複数の画素電極のそれぞれを駆動することで画像データの表示を行う表示装置と,
(3) センサ電極及びタッチセンサを備えるタッチパネルとを含み,
(4) 前記アクティブペンは,前記センサ電極に誘導される電荷により前記タッチセンサとの間で所定の周波数帯に属する周波数で通信を行うよう構成され,
(5) 前記表示装置は,前記複数の画素電極の駆動に起因して前記表示装置内の配線に電圧振動が発生することにより前記センサ電極に生ずる静電ノイズのうち少なくとも前記所定の周波数帯に属する周波数成分を抑制するノイズ抑制制御を実行し,
(6) 前記アクティブペン及び前記タッチセンサは,前記所定の周波数帯に属する所定の周波数の信号を検出又は送出することにより前記通信を実行し,
(7) 前記表示装置は,前記ノイズ抑制制御を伴って前記複数の画素電極を駆動する第1の動作モードと,前記ノイズ抑制制御を伴わずに前記複数の画素電極を駆動する第2の動作モードとのいずれかで選択的に動作可能に構成され,
(8) 前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている,
(9) 位置検出システム。」
(イ)上記(ア)の訂正前の請求項1には,構成(7)として「前記表示装置は,前記ノイズ抑制制御を伴って前記複数の画素電極を駆動する第1の動作モードと,前記ノイズ抑制制御を伴わずに前記複数の画素電極を駆動する第2の動作モードとのいずれかで選択的に動作可能に構成され」と記載されており,当該記載から,「表示装置」は,「第1の動作モード」と「第2の動作モード」「とのいずれかで選択的に動作可能」であり,「第1の動作モード」では,「ノイズ抑制制御」を実行しており,一方,「第2の動作モード」では,「ノイズ抑制制御」を実行していない旨理解しうる。
(ウ)ところが,本件訂正事項1に係る訂正前の請求項1の構成(8)の記載では,「前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」とされており,「ノイズ抑制制御」を実行している「第1の動作モード」より,「ノイズ抑制制御」を実行していない「第2の動作モード」の方が,「静電ノイズ」が「抑制されている」旨記載されており,上記構成(7)と技術的に矛盾している。
(エ)一般に,「ノイズ抑制制御」は,ノイズを抑制するための制御であり,「ノイズ抑制制御」を実行することで,「ノイズ」が抑制されることが技術常識であるから,当該技術常識に照らして,「ノイズ抑制制御」を実行している「第1の動作モード」より,「ノイズ抑制制御」を実行していない「第2の動作モード」の方が,「静電ノイズ」が「抑制されている」旨の記載は,本来,「ノイズ抑制制御」を実行している「第1の動作モード」の方が,「ノイズ抑制制御」を実行していない「第2の動作モード」より「静電ノイズ」が「抑制されている」旨記載すべきものであったといえる。
(オ)一方,本件訂正事項1に係る訂正後の請求項1の構成(8)の記載では,「前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」とされており,「ノイズ抑制制御」を実行している「第1の動作モード」における「静電ノイズ」が,「ノイズ抑制制御」を実行していない「第2の動作モード」における「静電ノイズに比べて抑制されている」旨記載されており,上記構成(7)と技術的に整合し,また,上記(エ)で述べた技術常識に照らして,本来記載すべき内容に訂正しようとするものであるといえる。
イ 明細書の記載について
本件特許明細書および図面には以下の記載がある(下線は合議体が付した。)。
(ア)「【0141】
次に,本発明の第5の実施の形態による位置検出システム1について,説明する。
【0142】
本実施の形態による位置検出システム1は,極性制御部56や反転制御部57の設定内容を変更するのではなく,ソースドライバSDが生成する映像信号Vsigの変化速度を小さくすることによって表示ノイズ及びフリッカを抑制する点で,第1の実施の形態による位置検出システム1と相違している。その他の点では第1の実施の形態による位置検出システム1と同様であるので,以下では,第1の実施の形態との相違点に着目して説明する。
【0143】
本実施の形態によるタイミング制御部42及びソースドライバ群41の内部構成は,図3に示した第1の実施の形態のものと同様である。本実施の形態によるタイミング制御部42は,あるゲートラインGLについて算出した変動電位差分及び点灯個数差分のいずれかの絶対値が所定の閾値を超えている場合,そのゲートラインGL駆動時に,ソースドライバSDが生成する通常の映像信号Vsigに比べて変化速度を小さくした映像信号Vsigを生成するよう,各ソースドライバSDを制御する。」
(イ)図25
[図:0001381617000001.jpg]
(ウ)「【0144】
図25は,本実施の形態による映像信号Vsigの例を示す図である。実線で示した映像信号Vsig'は,破線で示した通常の映像信号Vsigよりも変化速度を小さくした信号を表している。映像信号Vsig'を用いることで,画素電極PEの駆動に伴って共通電位線CLに現れる電圧変動を抑制することができる。したがって,第1乃至第4の実施の形態と同様に,表示ノイズのうち少なくともスタイラスP1とタッチセンサ30の間の通信に用いられる周波数帯に属する周波数成分を抑制することが可能になるので,スタイラスP1とタッチセンサ30の通信動作を表示装置4による画素電極PEの駆動動作から独立させ,それによって描画品質の劣化を回避することが可能になる。また,スタライスP1の誤動作により描画できないなどのスタライスP1の送信するデータに基づいた描画処理の品質劣化を回避することも可能になる。」
(エ)図26
[図:0001381617000002.jpg]
(オ)「【0145】
図26は,本実施の形態の効果を説明する図である。同図には,図9と同様,背景技術によるタブレット端末において画像データを表示させたときの表示ノイズ(上段)と,本実施の形態による位置検出システム1において画像データを表示させたときの表示ノイズ(下段)とのシミュレーション結果を示している。映像信号Vsigの変化速度の低減量は,背景技術における変化速度と比べて2/5とした。その他のシミュレーション条件,横軸及び縦軸の意味,及び図示した周波数帯域A1~A3の意味は,図9と同様である。
【0146】
図26から理解されるように,本実施の形態によっても,周波数帯域A1~A3のいずれにおいても,背景技術に比べて表示ノイズが抑制されていることが理解される。したがって,表示ノイズのうち少なくともスタイラスP1とタッチセンサ30の間の通信に用いられる周波数帯に属する周波数成分が抑制されていると言えるので,本実施の形態によれば,スタイラスP1とタッチセンサ30の通信動作を表示装置4による画素電極PEの駆動動作から独立させ,それによって,スタイラスP1の送信するデータに基づいた描画処理の品質の劣化を回避することが可能になる。また,スタライスP1の誤動作により描画できないなどのスタライスP1の送信するデータに基づいた描画処理の品質劣化を回避することも可能になる。
【0147】
なお,本実施の形態においても,タイミング制御部42は,第2及び第4の実施の形態と同様に反転関数レジスタ54を用いて,2フレームに1回だけ映像信号Vsig,Vsig'のいずれを使用するかを選択することとしてもよい。この場合,反転関数レジスタ54には,ゲートラインGLごとに,映像信号Vsigの変化速度を示す情報が記憶される。こうすることで,第2の実施の形態と同様,実質的に画質を低下させることなく表示装置4の処理量を低減することができ,これにより位置検出システム1の消費電力を低減することが可能になる。
【0148】
次に,本発明の第6の実施の形態による位置検出システム1について,説明する。
【0149】
本実施の形態による位置検出システム1は,第1乃至第5の実施の形態で説明したようなノイズ抑制制御(及びフリッカ抑制制御)を伴って複数の画素電極PEを駆動するモード(第1の動作モード)と,伴わずに複数の画素電極PEを駆動するモード(第2の動作モード)とのいずれかで選択的に動作可能に構成される点で,第1乃至第5の実施の形態による位置検出システム1と相違している。その他の点では第1乃至第5の実施の形態による位置検出システム1と同様であるので,以下では,第1の実施の形態との相違点に着目して説明する。
【0150】
図27は,本実施の形態によるタイミング制御部42が行う処理のフロー図である。同図に示すように,本実施の形態によるタイミング制御部42はまず,ノイズ抑制制御(及びフリッカ抑制制御)を実施するか否かを判定する(ステップS60)。そして,実施すると判定した場合には,ノイズ抑制制御を伴う画素電極駆動制御を実施する(ステップS61)。具体的には,第1乃至第5の実施の形態で説明した方法により,各画素電極PEの駆動制御を行う。一方,実施しないと判定した場合には,ノイズ抑制制御を伴わない画素電極駆動制御を実施する(ステップS62)。つまり,背景技術による各画素電極PEの駆動制御を実施する。
【0151】
なお,ステップS60の判定は,所定の入力に応じて実行されることが好ましい。所定の入力は,例えば,所定のユーザ操作であってもよいし,タッチセンサ30がスタイラスP1を検出したことであってもよい。
【0152】
本発明によるノイズ抑制制御は,フリッカを抑制できる点を除くと,一般的には表示装置4の画質にほとんど影響しないと考えられるが,各画素電極PEの駆動方法(具体的には,反転パターン,極性,映像信号Vsigの変化速度)を変化させていることから,表示装置4の画質に若干の影響を与える場合もあり得る。この点,本実施の形態によれば,ノイズ抑制制御を行うモード(第1の動作モード)では,表示ノイズのうち少なくともスタイラスP1とタッチセンサ30の間の通信に用いられる周波数帯に属する周波数成分を抑制することによって描画品質の劣化を回避できる一方で,ノイズ抑制制御を行わないモード(第2の動作モード)では,ノイズ抑制制御を実施することによる画質の低下を完全に防ぐことが可能になる。つまり,第1の動作モードは,スタイラスP1や指P2といったオブジェクトの検出を優先するオブジェクト検出優先モードであるということができ,第2の動作モードは,表示装置4の画質を優先する画質優先モードであるということができる。本実施の形態によれば,このオブジェクト検出優先モードと画質優先モードとを,必要に応じて切り替えることが可能になる。」
ウ 訂正前の請求項1及び9と明細書記載の技術事項との関係についての検討
(ア)上記ア(ア)の構成(7)の「前記表示装置は,前記ノイズ抑制制御を伴って前記複数の画素電極を駆動する第1の動作モードと,前記ノイズ抑制制御を伴わずに前記複数の画素電極を駆動する第2の動作モードとのいずれかで選択的に動作可能に構成され」から,本件特許の請求項1に係る発明は,上記イの明細書の段落【0148】~【0152】に記載された「本発明の第6の実施の形態による位置検出システム」に基づくものであるといえる。
(イ)上記イ(オ)の明細書の段落【0149】の「本実施の形態による位置検出システム1は,第1乃至第5の実施の形態で説明したようなノイズ抑制制御(及びフリッカ抑制制御)を伴って複数の画素電極PEを駆動するモード(第1の動作モード)と,伴わずに複数の画素電極PEを駆動するモード(第2の動作モード)とのいずれかで選択的に動作可能に構成される」および段落【0150】の「図27は,本実施の形態によるタイミング制御部42が行う処理のフロー図である。同図に示すように,本実施の形態によるタイミング制御部42はまず,ノイズ抑制制御(及びフリッカ抑制制御)を実施するか否かを判定する(ステップS60)。そして,実施すると判定した場合には,ノイズ抑制制御を伴う画素電極駆動制御を実施する(ステップS61)。具体的には,第1乃至第5の実施の形態で説明した方法により,各画素電極PEの駆動制御を行う。一方,実施しないと判定した場合には,ノイズ抑制制御を伴わない画素電極駆動制御を実施する(ステップS62)。つまり,背景技術による各画素電極PEの駆動制御を実施する。」という記載から,「ノイズ抑制制御」を伴う「第1の動作モード」は「第1乃至第5の実施の形態で説明したようなノイズ抑制制御(及びフリッカ抑制制御)」を実行しており,「ノイズ抑制制御を伴わない」「第2の動作モード」では,「背景技術による各画素電極PEの駆動制御を実施」しているといえる。
(ウ)上記イ(エ)の図26,上記イ(オ)の明細書の段落【0145】の「図26は,本実施の形態の効果を説明する図である。同図には,図9と同様,背景技術によるタブレット端末において画像データを表示させたときの表示ノイズ(上段)と,本実施の形態による位置検出システム1において画像データを表示させたときの表示ノイズ(下段)とのシミュレーション結果を示している。」という記載,および,上記イ(オ)の明細書の段落【0146】の「図26から理解されるように,本実施の形態によっても,周波数帯域A1~A3のいずれにおいても,背景技術に比べて表示ノイズが抑制されていることが理解される。したがって,表示ノイズのうち少なくともスタイラスP1とタッチセンサ30の間の通信に用いられる周波数帯に属する周波数成分が抑制されていると言えるので,本実施の形態によれば,スタイラスP1とタッチセンサ30の通信動作を表示装置4による画素電極PEの駆動動作から独立させ,それによって,スタイラスP1の送信するデータに基づいた描画処理の品質の劣化を回避することが可能になる。また,スタライスP1の誤動作により描画できないなどのスタライスP1の送信するデータに基づいた描画処理の品質劣化を回避することも可能になる。」という記載から,「第1の動作モード」の一つである「第5の実施の形態」による「ノイズ抑制制御(及びフリッカ抑制制御)」を実行した場合,「第2の動作モード」である「背景技術による各画素電極PEの駆動制御を実施」した場合の「表示ノイズ」と比較して,「周波数帯域A1~A3のいずれにおいても,背景技術に比べて表示ノイズが抑制されている」とされており,「第1の動作モード」における「表示ノイズ」が「第2の動作モード」おける「表示ノイズ」より「抑制されている」といえる。
(エ)すると,上記(ウ)で述べた,「第1の動作モード」における「表示ノイズ」が「第2の動作モード」における「表示ノイズ」より「抑制されている」という明細書および図26から導き出せる技術的事項は,訂正事項1に係る訂正前の請求項1の「前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」と整合しない。
(オ)一方,上記(ウ)で述べた,「第1の動作モード」における「表示ノイズ」が「第2の動作モード」における「表示ノイズ」より「抑制されている」という明細書および図26から導き出せる技術的事項は,訂正事項1に係る訂正後の請求項1の「前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」と整合する。
(カ)さらに,上記イ(オ)の段落【0152】における「本発明によるノイズ抑制制御は,フリッカを抑制できる点を除くと,一般的には表示装置4の画質にほとんど影響しないと考えられるが,各画素電極PEの駆動方法(具体的には,反転パターン,極性,映像信号Vsigの変化速度)を変化させていることから,表示装置4の画質に若干の影響を与える場合もあり得る。この点,本実施の形態によれば,ノイズ抑制制御を行うモード(第1の動作モード)では,表示ノイズのうち少なくともスタイラスP1とタッチセンサ30の間の通信に用いられる周波数帯に属する周波数成分を抑制することによって描画品質の劣化を回避できる一方で,ノイズ抑制制御を行わないモード(第2の動作モード)では,ノイズ抑制制御を実施することによる画質の低下を完全に防ぐことが可能になる。つまり,第1の動作モードは,スタイラスP1や指P2といったオブジェクトの検出を優先するオブジェクト検出優先モードであるということができ,第2の動作モードは,表示装置4の画質を優先する画質優先モードであるということができる。本実施の形態によれば,このオブジェクト検出優先モードと画質優先モードとを,必要に応じて切り替えることが可能になる。」という記載から,「第1の動作モードは,スタイラスP1や指P2といったオブジェクトの検出を優先するオブジェクト検出優先モードである」こと,および,「第2の動作モードは,表示装置4の画質を優先する画質優先モードである」ことが導き出せる。
(キ)しかし,本件訂正事項2に係る訂正前の請求項9における「前記第1の動作モードは,前記表示装置の画質を優先するモードであり,前記第2の動作モードは,前記タッチセンサによる前記アクティブペンの検出精度を優先するモードである」という記載は,上記(カ)で述べた,本件明細書から導出された「第1の動作モードは,スタイラスP1や指P2といったオブジェクトの検出を優先するオブジェクト検出優先モードである」こと,および,「第2の動作モードは,表示装置4の画質を優先する画質優先モードである」という技術的事項と整合しない。
(ク)上記(カ)で摘記した段落【0152】における「ノイズ抑制制御を行うモード(第1の動作モード)では,表示ノイズのうち少なくともスタイラスP1とタッチセンサ30の間の通信に用いられる周波数帯に属する周波数成分を抑制することによって描画品質の劣化を回避できる一方で,ノイズ抑制制御を行わないモード(第2の動作モード)では,ノイズ抑制制御を実施することによる画質の低下を完全に防ぐことが可能になる。」という記載から,「ノイズ抑制制御を行わないモード(第2の動作モード)」の方が,「画質の低下を完全に防ぐことが可能」であるといえるから,「ノイズ抑制制御を行うモード(第1の動作モード)に比べて,より画質を優先するモードであるといえるから,本件訂正事項2に係る訂正前の請求項9における「前記第1の動作モードは,前記表示装置の画質を優先するモードであり,前記第2の動作モードは,前記タッチセンサによる前記アクティブペンの検出精度を優先するモードである」という記載は,本来,「前記第2の動作モードは,前記表示装置の画質を優先するモードであり,前記第1の動作モードは,前記タッチセンサによる前記アクティブペンの検出精度を優先するモードである」と記載すべきであったといえる。
(ケ)一方,本件訂正事項2に係る訂正後の請求項9における「前記第2の動作モードは,前記表示装置の画質を優先するモードであり,前記第1の動作モードは,前記タッチセンサによる前記アクティブペンの検出精度を優先するモードである」という記載は,上記(カ)で述べた,本件特許明細書から導出された「第1の動作モードは,スタイラスP1や指P2といったオブジェクトの検出を優先するオブジェクト検出優先モードである」こと,および,「第2の動作モードは,表示装置4の画質を優先する画質優先モードである」という技術的事項と整合しており,上記(ク)で述べたように,本来記載すべきであった内容に訂正しているといえる。
エ 小括
以上から,本件訂正事項1に係る訂正前の請求項1の記載は,請求項1の他の記載,および,本件特許明細書の記載と整合しないものであったところ,本件訂正事項1に係る訂正後の請求項1の記載は,請求項1の他の記載,および,本件特許明細書の記載と整合するものに訂正するものであり,明らかな誤記を訂正するものであるといえる。
また,本件訂正事項2に係る訂正前の請求項9の記載は,本件特許明細書の記載と整合しないものであったところ,本件訂正事項2に係る訂正後の請求項9の記載は,本件特許明細書の記載と整合するものに訂正するものであり,明らかな誤記を訂正するものであるといえる。
したがって,訂正事項1および2は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる,「誤記の訂正」を目的とする訂正に該当する。
(2) 願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることについて
上記(1)において検討したとおり,訂正事項1および2は,それぞれ,訂正前の請求項1および9に記載された誤記の訂正を目的とするものであって,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された技術的事項と整合しない記載を,整合する記載に訂正するものであるから,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,訂正事項1および2は,特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことについて
上記(1)において検討したとおり,訂正事項1および2は,それぞれ,訂正前の請求項1および9に記載された誤記の訂正を目的とするものであって,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された技術的事項と整合しない記載を,整合する記載に訂正するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 訂正事項3について
(1) 訂正の目的について
ア 訂正事項3の対象となる請求項17に係る発明は,訂正事項1の対象である請求項1に係る「位置検出システム」を構成する「表示装置」の構成を単独の発明として取り出したものであり,訂正事項3の対象となる記載と訂正事項1の対象となる記載は,同一の「前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」である。
イ また,訂正事項3の対象となる請求項17にも,訂正事項1の対象である請求項1の構成(7)と同様の「前記ノイズ抑制制御を伴って前記複数の画素電極を駆動する第1の動作モードと,前記ノイズ抑制制御を伴わずに前記複数の画素電極を駆動する第2の動作モードとのいずれかで選択的に動作し」という記載が存在しており,当該記載から,「表示装置」は,「第1の動作モード」と「第2の動作モード」「とのいずれかで選択的に動作」しており,「第1の動作モード」では,「ノイズ抑制制御」を実行しており,一方,「第2の動作モード」では,「ノイズ抑制制御」を実行していない旨理解しうる。
ウ ところが,本件訂正事項3に係る訂正前の請求項17の上記アの記載では,「前記第2の動作モードにおける前記静電ノイズは,前記第1の動作モードにおける前記静電ノイズに比べて抑制されている」とされており,「ノイズ抑制制御」を実行している「第1の動作モード」より,「ノイズ抑制制御」を実行していない「第2の動作モード」の方が,「静電ノイズ」が「抑制されている」旨記載されており,上記イの構成と技術的に矛盾している。
エ 一般に,「ノイズ抑制制御」は,ノイズを抑制するための制御であり,「ノイズ抑制制御」を実行することで,「ノイズ」が抑制されることが技術常識であるから,当該技術常識に照らして,「ノイズ抑制制御」を実行している「第1の動作モード」より,「ノイズ抑制制御」を実行していない「第2の動作モード」の方が,「静電ノイズ」が「抑制されている」旨の記載は,本来,「ノイズ抑制制御」を実行している「第1の動作モード」の方が,「ノイズ抑制制御」を実行していない「第2の動作モード」より「静電ノイズ」が「抑制されている」旨記載すべきものであったといえる。
オ 以上から,訂正事項3も,訂正事項1と同様に,本件訂正事項2に係る訂正前の請求項17の記載は,請求項17の他の記載,および,本件特許明細書の記載と整合しておらず,また,技術常識に反するものであったところ,本件訂正事項3に係る訂正後の請求項17の記載は,請求項17の他の記載,および,本件特許明細書の記載と整合し,技術常識にそうものに訂正するものであり,明らかな誤記を本来記載すべきであったものに訂正するものであるといえる。
したがって,訂正事項3は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる,「誤記の訂正」を目的とする訂正に該当する。
(2) 願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることについて
上記(1)において検討したとおり,訂正事項3は,訂正前の請求項17に記載された誤記の訂正を目的とするものであって,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された技術的事項と整合しない記載を,整合する記載に訂正するものであるから,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,訂正事項1および2は,特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことについて
上記(1)において検討したとおり,訂正事項3は,訂正前の請求項17に記載された誤記の訂正を目的とするものであって,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された技術的事項と整合しない記載を,整合する記載に訂正するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
4 独立特許要件について
訂正事項1~3は誤記の訂正を行うものであるから,訂正後の請求項1ないし17に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。
したがって,訂正事項1~3は,特許法第126条第7項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおり,本件訂正審判の請求に係る訂正は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-390117