特許拒絶査定不服審判
2023-002616
空間位置指示システム
- 審判番号
- 2023-002616
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-132770
- 請求日
- 2023年02月15日
- 審決日
- 2024年01月30日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ワコム
- 【請求人代理人】佐藤 正美
- 【請求人代理人】丸山 正
- 審判長/審判官
- 審判長 山澤 宏
- 審判官 富澤 哲生
- 審判官 山内 裕史
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2018-132770「空間位置指示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019- 46458、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月8日(優先権主張 平成29年9月4日)を国際出願日とする特許出願(特願2018-520198号)の一部を、平成30年7月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年12月22日付け:拒絶理由通知書
令和4年 2月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 6月16日付け:拒絶理由通知書
令和4年 8月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12月 6日付け:拒絶査定
令和5年 2月15日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和5年 8月25日付け:拒絶理由通知書
令和5年10月30日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明14」という。)は、令和5年10月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1,2,5は次のとおりの発明である。
「【請求項1】
入力面を有するとともに、前記入力面に対応して配置されたセンサを備える指示位置検出部であり、前記入力面に接することなく第1の空間領域内で電子ペンが指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する指示位置検出部でありデジタイザである指示位置検出部と、
前記第1の空間領域を含む第2の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する第2の位置情報を検出する空間位置検出部でありバーチャルリアリティー空間における前記電子ペンによる指示位置を検出するための空間位置検出部と、
前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値であり前記デジタイザの第1の座標系における第1の座標値及び前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報に対応する第2の座標値であり前記デジタイザの第1の座標系と異なる前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における第2の座標値のうち前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を選択し当該選択した第1の座標値を前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に変換する制御部と、
を有することを特徴とする空間位置指示システム。」
「【請求項2】
入力面を有するとともに、前記入力面に対応して配置されたセンサを備える指示位置検出部であり、前記入力面に接することなく第1の空間領域内で電子ペンが指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する指示位置検出部でありデジタイザである指示位置検出部と、
前記第1の空間領域を含む第2の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する第2の位置情報を検出する空間位置検出部でありバーチャルリアリティー空間における前記電子ペンによる指示位置を検出するための空間位置検出部と、
前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値であり前記指示位置検出部の第1の座標系における第1の座標値及び前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報に対応する第2の座標値でありバーチャルリアリティー空間の第2の座標系における第2の座標値のうち前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を選択し当該選択した第1の座標値を前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に変換する制御部と、
前記制御部によって選択された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を変換することによる前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に基づく表示を行う表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記制御部によって選択された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を変換することによる前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に基づく表示制御を行うことを特徴とする空間位置指示システム。」
「【請求項5】
入力面を有するとともに、前記入力面に対応して配置されたセンサを備える指示位置検出部であり、前記入力面に接することなく第1の空間領域内で電子ペンが指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する指示位置検出部でありデジタイザである指示位置検出部と、
前記第1の空間領域を含む第2の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する第2の位置情報を検出する空間位置検出部でありバーチャルリアリティー空間における前記電子ペンによる指示位置を検出するための空間位置検出部と、
前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値であり前記指示位置検出部の第1の座標系における第1の座標値及び前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報に対応する第2の座標値でありバーチャルリアリティー空間の第2の座標系における第2の座標値のうち前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を選択し当該選択した第1の座標値を前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に変換する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値であり前記指示位置検出部の第1の座標系における第1の座標値と前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報に対応する第2の座標値でありバーチャルリアリティー空間の第2の座標系における第2の座標値との間の位置情報に対応する座標値の補正を、前記第1の空間領域に前記電子ペンが位置していることに対応して行うことを特徴とする空間位置指示システム。」
なお、本願発明3,4,6~14は、本願発明1,2,5のいずれかを減縮した発明である。
第3 原査定の概要
原査定(令和4年12月6日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1~12,15に係る発明は、以下の引用文献A,Bに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A: 特開2014-164755号公報
引用文献B: 国際公開第2016/185838号
第4 当審拒絶理由の概要
当審が令和5年8月25日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 理由1(明確性)
(1)請求項1には、「電子ペンが・・・第1の空間領域内を指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する指示位置検出部」と記載され、また、「前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報」と記載されているが、両者の関係が不明であり、それらの「検出」動作が同じ動作を意味しているとすれば、前者の「第1の空間領域内を指示する」と後者の「前記第1の空間領域内で」「指示する」とは表記が不統一であり、異なる動作を意味しているとすれば、どのように異なるのか不明である。
(2)請求項2,5についても、上記(1)と同様のことがいえる。
(3)請求項2に多数記載されている「前記電子ペン」のうちの最初のものは、それよりも前に「電子ペン」との記載がないため、不適切である。
(4)請求項5についても、上記(3)と同様のことがいえる。
よって、請求項1,2,5に係る発明は明確でない。また、それらのいずれかを引用するその余の請求項に係る発明も明確でない。
2 理由2(サポート要件)
請求項13に記載されている「前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報と前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報との間の位置情報の補正を、前記電子ペンが前記入力面に位置しているときに行う」ことに対応する、発明の詳細な説明の記載を見出すことができない。
よって、請求項13に係る発明、及びこれを引用する請求項14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
3 理由3(進歩性)
本願請求項1~15に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開2014-164755号公報(原査定の引用文献A)
引用文献2: 国際公開第2016/185838号(原査定の引用文献B)
第5 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「【0024】
図1は、一実施形態に係るセンサを用いる近接動作認識装置を説明するための図である。図1を参照すると、一実施形態に係る近接動作認識装置100は、第1センサ110、第2センサ120、及び情報伝達制御部130を備える。ここで、近接動作認識技術は2次元のタッチ入力方式を3次元に発展させ得る技術であり、近接動作認識装置100は、利用者から近接動作の入力を受けて入力された近接動作を認識する装置として、固定型デバイスまたは携帯型デバイスなどの様々な形態で実現される。以下、第1センサ110は第1類型センサであり、第2センサ120は第1類型センサとは異なる類型の第2類型センサであってもよい。しかし、実施形態は、第1センサ110及び第2センサ120が異種センサと限定されることはない。例えば、実施形態は、第1センサ110と第2センサ120が同一の類型であるものの、互いに異なる領域の入力を検出する場合にも適用されてもよい。
【0025】
第1センサ110は、近接動作を認識するための基準面140から予め決定した第1距離141よりも近い第1入力空間をセンシングしてもよい。図面に図示されていないが、一実施形態に係る近接動作認識装置100はディスプレイをさらに含んでもよく、この場合に基準面140はディスプレイ上に位置してもよい。ここで、第1センサ110は様々な方式で実現されてもよい。例えば、第1センサ110は、ディスプレイの隅部に設けられる超音波センサまたは赤外線センサを用いて実現されてもよい。または、第1センサ110は、タッチセンサパネル、深度センサまたはイメージセンサを用いて実現されてもよい。
【0026】
また、第2センサ120は、基準面140から第1距離141よりも遠くて予め決定した第2距離142よりも近い第2入力空間をセンシングしてもよい。ここで、第2距離142の値は、第1距離141の値よりも大きくてもよい。ここで、入力オブジェクト150が第1距離141だけ離れた位置で入力される場合、近接動作認識装置100は予め決定された設定により第1センサ110または第2センサ120を用いて当該入力オブジェクトをセンシングする。ここで、第2センサ120は様々な方式で実現されてもよい。例えば、第2センサ120は、ディスプレイの隅部に設けられる超音波センサまたは赤外線センサを用いて実現されたり、タッチセンサパネル、深度センサ、またはイメージセンサを用いて実現されてもよい。ここで、第1距離141と第2距離142は、それぞれ第1センサ110の特性と第2センサ120の特性に応じて予め決定されてもよい。」
「【0029】
また、情報伝達制御部130は、入力オブジェクト150が第1入力空間と第2入力空間との間をトランジション(移行)する場合、第1センサと第2センサとの間にトランジションと関連する情報を伝達する。例えば、入力オブジェクト150が基準面140から遠い位置で徐々に近接する場合を仮定する。この場合、入力オブジェクト150は、第2入力空間から第1入力空間にトランジションする。ここで、近接動作認識装置100は、入力オブジェクト150が第2入力空間で入力されると、第2センサ120を用いて入力オブジェクト150をセンシングする。一方、近接動作認識装置100は、入力オブジェクト150が第1入力空間で入力されると、第1センサ110を用いて入力オブジェクト150をセンシングする。したがって、入力オブジェクト150が第2入力空間から第1入力空間にトランジションする場合、近接動作認識装置100によって用いられるセンサが第2センサ120から第1センサ110にスイッチングされる。」
「【0031】
図2は、一実施形態に係る第1センサ及び第2センサの出力信号を説明するための図である。図2を参照すると、一実施形態に係る第1センサは、第1入力空間230でセンシングされる入力オブジェクトのx座標、y座標、及びz座標を出力してもよい。また、一実施形態に係る第2センサは、第2入力空間240でセンシングされるx座標及びy座標を出力してもよい。ここで、x座標、y座標、及びz座標は基準面220に存在する原点(例えば、基準面の左上段の隅部地点)を基準としてx軸方向211、y軸方向212、及びz軸方向213に入力オブジェクト250がセンシングされる位置を示す。」
「【図1】
[図:0001407511000001.jpg]
【図2】
[図:0001407511000002.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「第1センサ及び第2センサを備え、
第1センサは、近接動作を認識するための基準面から予め決定した第1距離よりも近い第1入力空間をセンシングし、
第2センサは、基準面から第1距離よりも遠くて予め決定した第2距離よりも近い第2入力空間をセンシングし、ここで、第2距離の値は、第1距離の値よりも大きく、
入力オブジェクトが基準面から遠い位置で徐々に近接する場合、入力オブジェクトは、第2入力空間から第1入力空間にトランジションし、ここで、入力オブジェクトが第2入力空間で入力されると、第2センサを用いて入力オブジェクトをセンシングし、一方、入力オブジェクトが第1入力空間で入力されると、第1センサを用いて入力オブジェクトをセンシングし、したがって、入力オブジェクトが第2入力空間から第1入力空間にトランジションする場合、近接動作認識装置によって用いられるセンサが第2センサから第1センサにスイッチングされ、
第1センサは、第1入力空間でセンシングされる入力オブジェクトのx座標、y座標、及びz座標を出力し、第2センサは、第2入力空間でセンシングされるx座標及びy座標を出力する、
近接動作認識装置。」
2 引用文献2
当審拒絶理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0006] ところで、上記の従来技術では、電子ペンの発する駆動信号に起因するタッチパネルの静電容量の変化に基づいて、タッチパネルコントローラは、電子ペンからの駆動信号を検出することにより電子ペンの存在を認知し、電子ペンからの駆動信号に載せられた符号を識別することにより電子ペンからの情報を受信し、さらに、電子ペンからの駆動信号の強度の分布を解析することにより電子ペンの位置を特定するようになっている。
[0007] ここで、電子ペンがタッチパネルに近いとき、すなわち、タッチ状態にあるときは、タッチパネルコントローラが受信する電子ペンからの駆動信号の強度は充分に大きく、その結果、駆動信号検出の精度は充分に高い。そのため、タッチ状態にあるときは、電子ペンのパネルにタッチしている位置、すなわち、ペン先の位置を正確に検知することが優先される。また、タッチ状態にあるときには、ペン先の位置は駆動ノードの位置により示され、駆動ノードの位置は電子ペンからの駆動信号の強度の分布の重心を求めることにより特定される。このため、位置検出の精度を高めるためには、駆動ノードの範囲をできるだけ小さく(狭く)することが好ましい。
[0008] 一方、電子ペンがタッチパネルから遠いとき、すなわち、ホバー状態にあるときは、電子ペンの位置特定の精度は低くても許容される。そのため、ホバー状態にあるときには、電子ペンの存在を認知し、かつ、電子ペンからの情報を受信することが優先される。ホバー状態にあるときには、電子ペンがタッチパネルから遠いほど、タッチパネルコントローラが受信する電子ペンからの駆動信号の強度は小さく、その結果、駆動信号検出の精度は低くなる。ゆえに、電子ペンがタッチパネルから遠い場合においても電子ペンの存在を認知し、かつ、電子ペンからの情報を受信することを可能にするために、電子ペンの駆動信号の強度を大きくすることが要請される。また、電子ペンの駆動信号の強度を大きくするためには、電子ペンの駆動ノードの範囲を大きく(広く)することが好ましい。」
第6 当審拒絶理由の理由3(進歩性)について(引用発明との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「第1センサ」は、「近接動作を認識するための基準面から予め決定した第1距離よりも近い第1入力空間をセンシング」し、かつ「第1入力空間でセンシングされる入力オブジェクトのx座標、y座標、及びz座標を出力」するから、「入力オブジェクト」の「近接動作」による入力を検出するための「基準面」を有するとともに、「基準面」に対応して配置された「センシング」のための検出手段を備え、「基準面」に接することなく「第1入力空間」内で「入力オブジェクト」が指示する位置に対応する「第1入力空間でセンシングされる入力オブジェクトのx座標、y座標、及びz座標」を検出するといえる。
そして、引用発明の「基準面」、上記検出手段、「第1入力空間」、「第1入力空間でセンシングされる入力オブジェクトのx座標、y座標、及びz座標」、「第1センサ」は、それぞれ、本願発明1の「入力面」、「センサ」、「第1の空間領域」、「第1の位置情報」、「指示位置検出部」に相当する。
また、引用発明の「入力オブジェクト」と、本願発明1の「電子ペン」とは、「検出対象」である点で共通する。
以上のことから、引用発明における、「近接動作を認識するための基準面から予め決定した第1距離よりも近い第1入力空間をセンシング」し、かつ「第1入力空間でセンシングされる入力オブジェクトのx座標、y座標、及びz座標を出力」する「第1センサ」と、本願発明1の「入力面を有するとともに、前記入力面に対応して配置されたセンサを備える指示位置検出部であり、前記入力面に接することなく第1の空間領域内で電子ペンが指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する指示位置検出部でありデジタイザである指示位置検出部」とは、
「入力面を有するとともに、前記入力面に対応して配置されたセンサを備える指示位置検出部であり、前記入力面に接することなく第1の空間領域内で検出対象が指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する指示位置検出部」
である点で共通する。
(イ)引用発明の「第2センサ」は、「基準面から第1距離よりも遠くて予め決定した第2距離よりも近い第2入力空間をセンシング」し、かつ「第2入力空間でセンシングされるx座標及びy座標を出力」するものであり、「x座標及びy座標」が「入力オブジェクト」の座標であることは明らかであるから、「第2センサ」は、「第2入力空間」内で「入力オブジェクト」が指示する位置に対応する「第2入力空間でセンシングされるx座標及びy座標」を検出するといえる。
そして、引用発明の「第2入力空間でセンシングされるx座標及びy座標」は、本願発明1の「第2の位置情報」に相当する。
また、引用発明の「第2入力空間」と、本願発明1の「前記第1の空間領域を含む第2の空間領域」とは、「所定の空間領域」である点で共通する。
以上の点について、上記(ア)を踏まえると、引用発明における、「基準面から第1距離よりも遠くて予め決定した第2距離よりも近い第2入力空間をセンシング」し、かつ「第2入力空間でセンシングされるx座標及びy座標を出力」する「第2センサ」と、本願発明1の「前記第1の空間領域を含む第2の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する第2の位置情報を検出する空間位置検出部でありバーチャルリアリティー空間における前記電子ペンによる指示位置を検出するための空間位置検出部」とは、
「所定の空間領域内で前記検出対象が指示する位置に対応する第2の位置情報を検出する空間位置検出部」
である点で共通する。
(ウ)引用発明の「入力オブジェクトが基準面から遠い位置で徐々に近接する場合、入力オブジェクトは、第2入力空間から第1入力空間にトランジションし、ここで、入力オブジェクトが第2入力空間で入力されると、第2センサを用いて入力オブジェクトをセンシングし、一方、入力オブジェクトが第1入力空間で入力されると、第1センサを用いて入力オブジェクトをセンシングし、したがって、入力オブジェクトが第2入力空間から第1入力空間にトランジションする場合、近接動作認識装置によって用いられるセンサが第2センサから第1センサにスイッチングされ」ることにおいて、「入力オブジェクトが第1入力空間で入力される」際は、「第1センサ」及び「第2センサ」は、いずれも「第1入力空間」内で「入力オブジェクト」が指示する位置に対応する状態にあり、両者のうち、「用いられるセンサ」として「第1センサ」が選択されるといえる。
そして、引用発明の「近接動作認識装置」は、当該選択を制御する手段を当然に有しており、当該手段は、「選択」の対象に関する差異を除き、本願発明1の「制御部」に相当する。
以上の点について、上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用発明の
「入力オブジェクトが基準面から遠い位置で徐々に近接する場合、入力オブジェクトは、第2入力空間から第1入力空間にトランジションし、ここで、入力オブジェクトが第2入力空間で入力されると、第2センサを用いて入力オブジェクトをセンシングし、一方、入力オブジェクトが第1入力空間で入力されると、第1センサを用いて入力オブジェクトをセンシングし、したがって、入力オブジェクトが第2入力空間から第1入力空間にトランジションする場合、近接動作認識装置によって用いられるセンサが第2センサから第1センサにスイッチングされ」ることにおいて、「入力オブジェクトが第1入力空間で入力される」
ことと、本願発明1の
「前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値であり前記デジタイザの第1の座標系における第1の座標値及び前記第1の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報に対応する第2の座標値であり前記デジタイザの第1の座標系と異なる前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における第2の座標値のうち前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を選択し当該選択した第1の座標値を前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に変換する制御部」を「有する」
こととは、
「前記第1の空間領域内で前記検出対象が指示する位置に対応する前記指示位置検出部及び前記第1の空間領域内で前記検出対象が指示する位置に対応する前記空間位置検出部のうち前記指示位置検出部を選択する制御部」を「有する」
ことである点で共通する。
(エ)引用発明の「近接動作認識装置」は、「第1センサ」と、「第2センサ」と、上記(ウ)の選択を制御する手段と、を有するといえるものであり、後述する相違点を除き、本願発明1の「空間位置指示システム」に相当する。
イ 上記アから、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「入力面を有するとともに、前記入力面に対応して配置されたセンサを備える指示位置検出部であり、前記入力面に接することなく第1の空間領域内で検出対象が指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する指示位置検出部と、
所定の空間領域内で前記検出対象が指示する位置に対応する第2の位置情報を検出する空間位置検出部と、
前記第1の空間領域内で前記検出対象が指示する位置に対応する前記指示位置検出部及び前記第1の空間領域内で前記検出対象が指示する位置に対応する前記空間位置検出部のうち前記指示位置検出部を選択する制御部と、
を有することを特徴とする空間位置指示システム。」
ウ また、本願発明1と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の検出対象は「電子ペン」であるのに対して、引用発明の検出対象は「入力オブジェクト」である点。
(相違点2)
本願発明1は、「指示位置検出部」が「デジタイザ」であるのに対して、引用発明は、「第2センサ」がデジタイザであることが特定されるものではない点。
(相違点3)
本願発明1は、「空間位置検出部」が「第2の位置情報を検出する」ことを、「前記第1の空間領域を含む第2の空間領域内で」行うのに対して、引用発明は、「第2センサ」が「x座標及びy座標」が「出力」することを「第2入力空間」で行うものの、「第1入力空間」を含む空間で行うことが特定されるものではない点。
(相違点4)
本願発明1では、「空間位置検出部」が「バーチャルリアリティー空間における前記電子ペンによる指示位置を検出するための」ものであるのに対して、引用発明では、「第2センサ」について、そのように特定されるものではない点。
(相違点5)
「選択」する対象が、本願発明1では、「前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値であり前記デジタイザの第1の座標系における第1の座標値」及び「前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報に対応する第2の座標値であり前記デジタイザの第1の座標系と異なる前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における第2の座標値」のうちの「前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値」であるのに対して、引用発明では、「第1センサ」及び「第2センサ」のうちの「第1センサ」である点。
(相違点6)
本願発明1は、「選択」した結果について「当該選択した第1の座標値を前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に変換する」ものであるのに対して、引用発明は、選択した「第1センサ」についてそのような処理を行うことが特定されるものではない点。
(2)判断
そこで、事案に鑑みて、バーチャルリアリティー空間における指示位置を検出することに関するものである点で相互に関連する相違点4~6について、まとめて先に検討する。
引用発明の「近接動作認識装置」は、「第1入力空間」及び「第2入力空間」における「入力オブジェクト」の座標は実空間における座標である一方、引用文献1には、「入力オブジェクト」の座標の検出をバーチャルリアリティー空間において行うことについては記載も示唆もされていない。
そうすると、仮に、デジタイザを用いてバーチャルリアリティー空間における検出対象の指示位置を検出することが周知技術であったとしても、引用発明に当該周知技術を適用することについて動機付けがあるとはいえない。
そして、この点は、引用文献2の記載事項とは無関係である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2~14について
本願発明2は、実質的に、「前記制御部によって選択された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を変換することによる前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に基づく表示を行う表示制御部」を備える点、及び、「前記表示制御部は、前記制御部によって選択された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値を変換することによる前記バーチャルリアリティー空間の第2の座標系における座標値に基づく表示制御を行う」ものである点で、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5は、実質的に、「前記制御部は、前記指示位置検出部によって検出された前記第1の位置情報に対応する第1の座標値であり前記指示位置検出部の第1の座標系における第1の座標値と前記空間位置検出部によって検出された前記第2の位置情報に対応する第2の座標値でありバーチャルリアリティー空間の第2の座標系における第2の座標値との間の位置情報に対応する座標値の補正を、前記第1の空間領域に前記電子ペンが位置していることに対応して行う」ものである点で、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3,4,6~14は、本願発明1,2,5のいずれかを減縮した発明である。
よって、本願発明2~14は、いずれも相違点4~6に係る発明特定事項を含むことから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 小括
以上から、当審拒絶理由の理由3(進歩性)は解消した。
第7 当審拒絶理由の理由1(明確性)、理由2(サポート要件)について
令和5年10月30日提出の手続補正書による補正の結果、これらの理由はいずれも解消した。具体的には以下のとおりである。
1 請求項1,2,5は、それぞれ、「第1の空間領域内で電子ペンが指示する位置に対応する第1の位置情報を検出する」と記載されているものとなり、この記載が意味する動作が、当該請求項において別途記載されている「第2の空間領域内で前記電子ペンが指示する位置に対応する第2の位置情報を検出する」との記載が意味する動作と同様であることが明確なものとなった。
2 請求項2,5において、それぞれ多数記載されている「前記電子ペン」のうちの最初のものについて「前記」が削除され、各記載の関係が明確なものとなった。
3 請求項13が削除されたことにより、当該請求項の記載に基づくサポート要件の記載不備は存在しないものとなった。
第8 原査定について
原査定における引用文献A,Bは、当審拒絶理由における引用文献1,2であるから、上記第6で検討したところによれば、本願発明1~14は、当業者であっても、原査定における引用文献A,Bに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-002616