特許訂正審判
2025-390028
アクティブペン、センサコントローラ、及び位置検出装置
- 審判番号
- 2025-390028
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2021-046112
- 登録番号
- 7644629
- 請求日
- 2025年03月10日
- 審決日
- 2025年05月12日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社ワコム
- 【請求人代理人】弁理士法人そらおと
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 野崎 大進
- 審判官 村松 貴士
- 分類
- P141 .852-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第126条第3項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7644629号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7644629号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔8、9〕について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第7644629号は、令和3年3月19日に特許出願され、その請求項1ないし9に係る発明は、令和7年3月4日にその特許権の設定登録がなされたものであって、令和7年3月10日に本件訂正審判が請求された。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第7644629号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔8、9〕について訂正することを認めるとの審決を求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項8に「含まれると判定した場合には、前記検出された信号を前記第1のダウンリンク信号として復調する一方、含まれていないと判定した場合には、前記検出された信号を前記第2のダウンリンク信号として復調する」とあるのを、「含まれると判定した場合には、前記検出された信号を前記第2のダウンリンク信号として復調する一方、含まれていないと判定した場合には、前記検出された信号を前記第1のダウンリンク信号として復調する」に訂正する。
第3 当審の判断
1 一群の請求項について
訂正前の請求項8、9について、請求項9は、請求項8を引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項8、9に対応する訂正後の請求項〔8、9〕は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的について
(1)訂正前の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載
訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び8、明細書の【0023】、【0025】~【0026】、【0042】~【0043】、【0045】、【0057】~【0058】には、次のとおりの記載がある。
ア 「【請求項1】
最も新しく受信されたアップリンク信号の受信タイミングを基準時刻として決定される一連の時間スロットを用いてセンサコントローラとの通信を行うアクティブペンであって、
前回受信した前記アップリンク信号の受信タイミングを基準時刻として決定されるタイミングで前記アップリンク信号が受信されたか否かを判定し、
前記アップリンク信号が受信されたと判定した場合に、前記一連の時間スロット内の時間を用いて第1のダウンリンク信号を送信する一方、
前記アップリンク信号が受信されなかったと判定した場合に、前記一連の時間スロット内の時間及び前記一連の時間スロット外の時間の両方を用いて、前記一連の時間スロットそれぞれの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなる第2のダウンリンク信号を送信する、
アクティブペン。」
イ 「【請求項8】
請求項1に記載のアクティブペンと通信を行うセンサコントローラであって、
前記一連の時間スロットのうちの1つにおいて検出された信号に 、前記アクティブペンによる信号の送信が行われていない時間であるギャップが含まれるか否かを判定し、
含まれると判定した場合には、前記検出された信号を前記第1のダウンリンク信号として復調する一方、
含まれていないと判定した場合には、前記検出された信号を前記第2のダウンリンク信号として復調する、
センサコントローラ。」
ウ 「【0023】
ダウンリンク信号DSaは、センサコントローラ31によって設定される一連の時間スロットのそれぞれに分割して送信される信号である。アクティブペン2は、直前のアップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として一連の時間スロットの時間的位置を決定し、決定した各時間スロット内の時間を用いてダウンリンク信号DSaの送信を行う。」
エ 「【0025】
ダウンリンク信号DSbは、時間スロットの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなる信号である。ダウンリンク信号DSbの具体的な構成については後述するが、各単位信号は、所定のデータによって変調されたデータ信号となる。
【0026】
直前のアップリンク信号USの受信に失敗したアクティブペン2は一連の時間スロットの時間的位置を決定することができず、結果として、ダウンリンク信号DSbは一連の時間スロット内の時間及び一連の時間スロット外の時間の両方を用いて送信されることになる。そうすると、センサコントローラ31はダウンリンク信号DSbの一部(一連の時間スロット外の時間に送信された部分)を受信できないことになるが、上記のように単位信号の時間長を設定することにより、少なくとも1つの単位信号を受信できることになる。したがって、アクティブペン2が一連の時間スロットの時間的位置をロストしているにもかかわらず、アクティブペン2からセンサコントローラ31に対してダウンリンク信号DSを送信することが可能になる。」
オ 「【0042】
図6(a)は、ダウンリンク信号DSbの構成を示す図である。同図に示すように、ダウンリンク信号DSbは、アップリンク信号USの送信周期UpIntvの間に、チップ信号TIP(第1の信号)とリング信号RING(第2の信号)とが交互に8つずつ配置された構成を有している。1つのチップ信号TIP及び1つのリング信号RINGそれぞれの時間長をT1とすると、UpIntv=16×T1となる。
【0043】
図6(b)及び図6(c)はそれぞれ、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合におけるチップ信号TIP及びリング信号RINGの構成を示す図である。また、図6(d)及び図6(e)はそれぞれ、ダウンリンク信号DSbの変調をDQPSKによって行う場合におけるチップ信号TIP及びリング信号RINGの構成を示す図である。これらの図に示すように、チップ信号TIPは単位信号U1をの繰り返し(当審注:「単位信号U1の繰り返し」の誤記と認められる。)によって構成され、リング信号RINGは単位信号U2の繰り返しによって構成される。また、チップ信号TIPにおいては時間的に隣接する2つの単位信号U1の間に2シンボル分のギャップGA(信号を送信しない時間)が設けられ、リング信号RINGにおいては時間的に隣接する2つの単位信号U2の間に3シンボル分のギャップGAが設けられる。」
カ 「【0045】
ここで、時間スロットの時間長と単位信号U1,U2の時間長の関係について、具体的な例を挙げて説明する。まず第1の例として、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合に着目し、1シンボルを2波(2周期分の搬送波)により構成すると仮定すると、単位信号U1,U2はともに、7×2波=14波分の時間長を有することになる。また、搬送波の周波数は例えば114kHzであり、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合についてアクティブペン2の規格によって定められている1時間スロットの最短時間長は175μsecであることから、時間スロットの時間長を搬送波の波数で表すと、175μsec/(1/114kHz)=19.95波となる。したがって、図6(b)及び図6(c)に示した単位信号U1,U2の構成によれば、単位信号U1,U2の時間長を時間スロットの時間長よりも短くすることが実現されていると言える。」
キ 「【0057】
ステップS130においてセンサコントローラ31は、検出されたダウンリンク信号DSの中に図6(b)~図6(e)に示したギャップGAが含まれるか否かを判定する(ステップS130)。その結果、含まれないと判定した場合のセンサコントローラ31は、第1フラグにTrue、第2フラグにTrueをそれぞれ設定したうえで(ステップS131)、受信信号をダウンリンク信号DSaとみなして復調する(ステップS132)。
【0058】
一方、ステップS130において含まれると判定したセンサコントローラ31は、第1フラグにTrue、第2フラグにFalseをそれぞれ設定したうえで(ステップS133)、検出されたギャップGAの長さを判定する(ステップS134)。その結果、2シンボル分であると判定した場合には、受信信号を単位信号U1とみなして復調する(ステップS135)。一方、3シンボル分であると判定した場合には、受信信号を単位信号U2とみなして復調する(ステップS136)。なお、ステップS135又はステップS136の復調処理を行う際、センサコントローラ31は、ギャップGAの位置に基づいて単位信号U1,U2の受信タイミングを取得すればよい。」
(2)検討
訂正前の請求項8は請求項1を引用しているから、訂正前の請求項8の「前記第1のダウンリンク信号」は、訂正前の請求項1に記載された「前記一連の時間スロット内の時間を用いて」「送信」される「第1のダウンリンク信号」である。
よって、訂正前の請求項8の「前記第1のダウンリンク信号」は、訂正前の明細書の段落【0023】に記載された、「一連の時間スロットのそれぞれに分割して送信される」「ダウンリンク信号DSa」に対応することは明らかである。
また、訂正前の請求項8は請求項1を引用しているから、訂正前の請求項8の「前記第2のダウンリンク信号」は、訂正前の請求項1に記載された「前記一連の時間スロット内の時間及び前記一連の時間スロット外の時間の両方を用いて」「送信」される、「前記一連の時間スロットそれぞれの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなる」「第2のダウンリンク信号」である。
そして、訂正前の明細書の段落【0042】~【0043】、【0045】の記載によれば、「ダウンリンク信号DSb」は「チップ信号TIP(第1の信号)とリング信号RING(第2の信号)とが交互に8つずつ配置された構成を有し」、「チップ信号TIPは単位信号U1の繰り返しによって構成され、リング信号RINGは単位信号U2の繰り返しによって構成され」、「単位信号U1,U2の時間長を時間スロットの時間長よりも短くすることが実現されている」から、訂正前の明細書に記載された「ダウンリンク信号DSb」は、「時間スロットの時間長よりも短」い「時間長」の「単位信号U1,U2」「の繰り返しによって構成され」るものである。
よって、訂正前の請求項8の「前記第2のダウンリンク信号」は、訂正前の明細書の段落【0026】に記載された、「一連の時間スロット内の時間及び一連の時間スロット外の時間の両方を用いて送信される」「ダウンリンク信号DSb」に対応することは明らかである。
そうすると、訂正前の明細書の段落【0057】~【0058】に記載された、「ギャップGA」が「含まれると判定したセンサコントローラ31は」「受信信号を単位信号U1」または「単位信号U2とみなして復調する」ことは、「受信信号」を「ダウンリンク信号DSb」とみなして復調することであるから、訂正前の請求項8の「前記第2のダウンリンク信号」とみなして復調することを意味している。
したがって、訂正前の請求項8の「含まれると判定した場合には、前記検出された信号を前記第1のダウンリンク信号として復調する一方、」との記載は、「含まれると判定した場合には、前記検出された信号を前記第2のダウンリンク信号として復調する一方、」の誤記であることは明らかである。
また、訂正前の明細書の段落【0057】に記載された、「ギャップGA」が「含まれないと判定した場合のセンサコントローラ31は」「受信信号をダウンリンク信号DSaとみなして復調する」ことは、訂正前の請求項8の「前記第1のダウンリンク信号」とみなして復調することを意味している。
したがって、訂正前の請求項8の「含まれていないと判定した場合には、前記検出された信号を前記第2のダウンリンク信号として復調する」との記載は、「含まれていないと判定した場合には、前記検出された信号を前記第1のダウンリンク信号として復調する」の誤記であることは明らかである。
(3)小括
よって、訂正事項1に係る訂正は、明らかな誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的としたものと認められる。
3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて
上記2において検討したとおり、訂正前の請求項8中の記載が、設定登録時の明細書の記載との関係で誤りであることは明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から正しい記載が自明な事項として定まるので、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
4 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であることについて
訂正事項1に係る訂正は、上記2において検討したとおり、明らかな誤記を訂正するものであるから、当初明細書等に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
5 独立特許要件について
訂正事項1に係る訂正は、上記2において検討したとおり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そこで、特許法第126条第7項の規定により、本件訂正後における請求項8及び9に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができることが要件となるところ、当該要件について検討すると、本件訂正後における請求項8及び9に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見しない。
したがって、特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-390028