特許異議申立
2020-701007
金属銀、金属銀の製造方法及び積層体
- 審判番号
- 2020-701007
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-551955外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6712949
- 請求日
- 2020年12月24日
- 審決日
- 2021年12月23日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1652.113-YAA(H01B) / P1652.121-YAA(H01B) / P1652.536-YAA(H01B) / P1652.537-YAA(H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6712949号発明「金属銀、金属銀の製造方法及び積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6712949号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、2、5-7]について訂正することを認める。
特許第6712949号の請求項1及び5ないし7に係る特許を維持する。
特許第6712949号の請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6712949号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、2及び5ないし7に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)9月24日(優先権主張 平成26年9月29日)を国際出願日とする出願であって、令和2年6月4日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和2年12月24日に特許異議申立人 安藤 宏(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、2及び5ないし7)がされ、令和3年2月26日付けで取消理由が通知され、同年4月27日に特許権者 トッパン・フォームズ株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年5月14日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に行ったところ、同年6月17日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、同年7月16日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年9月17日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年10月11日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に行ったところ、特許権者より何ら応答がなかったものである。
なお、令和3年4月27日に特許権者がした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の可否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、「結晶子径が22.1nm以上24.1nm以下のもので構成され、体積抵抗率が4.1以上4.7μΩ・cm以下である金属銀。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項5ないし7も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、金属銀の「結晶子径」について、訂正前の「22.1nm以上」から「22.1nm以上24.1nm以下」と限定し、「体積抵抗率」について、訂正前の「8μΩ・cm以下」から「4.1以上4.7μΩ・cm以下」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0193】の【表4】には、実施例7の金属銀の結晶子径が24.1nm、銀層の体積抵抗率が4.1μΩ・cmであること、実施例8の金属銀の結晶子径が22.1nm、銀層の体積抵抗率が4.7μΩ・cmであることが記載されている。
してみると、訂正事項1に係る請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1を直接または間接的に引用する、請求項5ないし7についても、同様である。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3) まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、2、5-7]について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。また、本件発明1、2及び5ないし7を総称して、「本件発明」という場合がある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2及び5ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
結晶子径が22.1nm以上24.1nm以下のもので構成され、体積抵抗率が4.1以上4.7μΩ・cm以下である金属銀。
【請求項2】
(削除)
【請求項5】
請求項1に記載の金属銀からなる層を基材上に備えた積層体。
【請求項6】
前記基材の厚さが0.5~500μmであり、前記金属銀からなる層の厚さが0.01~5μmである、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材は、ASTMD648で規定される、1.8MPaの曲げ応力でたわみ量が0.25mmとなるときの加重たわみ温度が120℃以下のものである、請求項5に記載の積層体。」
第4 特許異議申立書に記載された特許異議申立理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1、2及び5ないし7に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1、2、5及び6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3は、概略次のとおりである。
本件発明1、2及び5ないし7は、「体積抵抗率が8μΩ・cm以下である」ことを発明特定事項とするものである。
しかしながら、粒径が大きい方が体積抵抗率が低いことが出願時の技術常識であるところ、銀の物質としての体積抵抗率は1.59μΩ・cm(0℃)(『ウィキペディア(Wikipedia)』であるから、当業者の技術常識を参酌したとしても、体積抵抗率を測定したときに1.59μΩ・cm以下の値は実現不可能であるため、そのような範囲までも含む「体積抵抗率が8μΩ・cm以下である」の発明特定事項を実現できると理解することはできない。
申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由4は、概略次のとおりである。
・申立理由4-1(本件発明1、5について)
本件発明1は、「結晶子径が22.1nm以上のもので構成され、体積抵抗率が8μΩ・cm以下である」ことを発明特定事項とするものであり、結晶子径の大きさの上限、体積抵抗率の下限は特定されていない。
具体的には、本件特許明細書の記載では、80nm(具体的には実施例6で示されている29.8nm)を超える結晶子径を有する金属銀を提供できる例は示されておらず、また製造方法について示唆もなされていない。すなわち、結晶子径の範囲は本件特許明細書には記載されていない実施が不可能な範囲を含んでいる。例えば、1mmといった極めて大きな結晶子径を有する金属銀が、通信機器等の電子機器において、配線、電極、アンテナ等を構成するのに利用される積層体に用いることができないのは明らかである。
・申立理由4-2(本件発明2について)
本件発明2は、「結晶子径が22.1nm以上80nm以下である」ことを限定している。
本件特許明細書には本件発明2が、課題を解決できるものであることを理解するに足る理論的な説明は記載されていない。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、金属銀の結晶子径が16.8nm(実施例2)~26.4nm(実施例5)の範囲で示されているのみである。
・申立理由4-3(本件発明6について)
本件発明6は、「前記基材の厚さが、0.5~5000μm」であることを限定している。
しかしながら、本件特許明細書(段落【0141】、【0143】や実施例などの記載)には、本件発明6が、課題を解決できるものであることを理解するに足る理論的な説明は記載されていない。
また、本件発明6は、「前記基材の厚さが、0.5~5000μm」であって、かつ金属銀からなる層の厚さが0.01~5μmである」ことを限定している。
しかしながら、本件特許明細書(段落【0146】、【0164】、【0180】や実施例などの記載)には、本件発明6が、これらの構成要件が課題を解決できるものであることを理解するに足る理論的な説明は記載されていない。
・申立理由4-4(本件発明7について)
本件発明7は、「前記基材は、ASTMD648で規定される、1.8MPaの曲げ応力でたわみ量が0.25mmとなるときの荷重たわみ温度が120℃以下のもの」であることを限定している。
しかしながら、本件特許明細書の実施例として、段落【0164】に「ポリカーボネート/ABS樹脂アロイからなる基材(厚さ2mm)・・・なお、前記基材は、ASTM D648で規定される、1.8MPaの曲げ応力でたわみ量が0.25mmとなるときの荷重たわみ温度が、120℃以下となるものである。」と記載されているのみで、ASTMD648で規定される、1.8MPaの曲げ応力でたわみ量が0.25mmとなるときの荷重たわみ温度は具体的に記載されていない。さらに、この基材は実施例及び比較例で共通のものを用いており、本件発明7が、課題を解決できるものであることを理解するに足る理論的な説明は記載されていない。
そして、実施例には、ASTMD648で規定される、1.8MPaの曲げ応力でたわみ量が0.25mmとなるときの荷重たわみ温度が記載されていない。
申立理由5(明確性) 本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由5は、概略次のとおりである。
本件発明1、2及び5ないし7は、「体積抵抗率が8μΩ・cm以下である」ことを発明特定事項とするものである。
しかしながら、粒径が大きい方が体積抵抗率が低いことが出願時の技術常識であるところ、銀の物質としての体積抵抗率は1.59μΩ・cmであるから、これよりも低い体積抵抗率を有する金属銀が具体的にどのようなものであるかを理解することは困難である。
したがって、かかる技術常識を考慮すると、上記体積抵抗率の下限が規定されていない金属銀は、技術的に十分特定されていないことが明らかである。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2009-158129号公報
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
請求項1、2及び5ないし7に係る特許に対して、当審が令和3年7月16日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
取消理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、取消理由3は、概略次のとおりである。
「本件発明の課題は、明細書の段落【0006】の記載から見て、「より低温での加熱処理によることが可能であり、十分な導電性を有する金属銀、その製造方法、及び前記金属銀からなる層を基材上に備えた積層体を提供すること」であると認める。
・・・(略)・・・
しかしながら、請求項1には、「結晶子径が22.1nm以上27.5nm以下のもので構成され、体積抵抗率が8μΩ・cm以下である金属銀」と特定されるにとどまり、当該金属銀を得るための具体的な手段については何ら特定されるものではない。
すると、出発原料として、本件特許明細書で開示されているものと異なる材料を用い、より高温で処理することにより得られたものや、冶金的に得られたものも請求項1に係る発明に含むことになる(そもそも、銀の体積抵抗率は1.6μΩ・cm程度であり、結晶子径は熱処理条件で調整できることは自明である)から、請求項1に係る発明は、本件発明の課題を解決しないものを含むものであるといわざるを得ない。
請求項1の記載を引用する、請求項5ないし7に係る発明も同様である。」
第6 取消理由(決定の予告)に対する当審の判断
1 サポート要件の判断規範
請求項の記載がサポート要件を満たすというためには、請求項に係る発明が、「発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載、技術常識により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のもの」でなくてはならない。
2 本件発明の課題について
本件発明の課題は、本件特許の明細書の段落【0006】の記載から見て、「より低温での加熱処理によることが可能であり、十分な導電性を有する金属銀、及び前記金属銀からなる層を基材上に備えた積層体を提供すること」であると認める。
3 検討・判断
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「金属銀は、これを形成するための組成物を130℃未満という低い温度で、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を行うことで形成しても、結晶子径が15nm以上のもので構成されていることにより、体積抵抗率が8μΩ・cm以下となり、十分に高い導電性を有する」(段落【0016】)ものであって、「前記金属銀は、これを形成するための組成物(銀インク組成物)を調製し、これを後述する基材等の所望の箇所に付着させ、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行うことで製造できる」(段落【0020】)こと、「前記金属銀の形成材料は、銀原子(元素)を有し、分解等の構造変化によって金属銀を生じるものであればよく」(段落【0022】)、「金属銀の形成材料としては、式「-COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示でき、このようなカルボン酸銀は、結晶子径が15nm以上の金属銀を形成するのに好適なものである」(段落【0024】)こと、「β-ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。β-ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60~210℃、より好ましくは60~200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。」(段落【0043】及び【0044】)こと、「カルボン酸銀(4)も、β-ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。」(段落【0049】)ことが記載され、アセト酢酸銀、すなわちβ-ケトカルボン酸銀を用いた特定の「銀インク組成物」を用いて「銀層」を作製した実施例7、8の記載があり、金属銀の結晶子径がそれぞれ24.1nm、22.1nm、銀層の体積抵抗率が4.1μΩ・cm、4.7μΩ・cmであることも記載されている。
そして、結晶子径と体積抵抗率の関係は、製法にも依存することであることをふまえるならば、当業者であれば、金属銀の結晶子径が22.1~24.1nm、体積抵抗率が4.1~4.7μΩ・cmとなる銀層は、β-ケトカルボン酸銀であるアセト酢酸銀を用いて130℃未満の温度、即ち低い温度で加熱処理等を行うことで作製できるもの、すなわち、本件発明の課題を解決するものと認識できる。
してみれば、金属銀に関し、「結晶子径が22.1nm以上24.1nm以下のもので構成され、体積抵抗率が4.1以上4.7μΩ・cm以下である」との特定事項を有する本件特許発明1は、本件発明の課題を解決できるものといえる。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許発明5ないし7についても同様である。
したがって、本件特許の請求項1及び5ないし7の記載は、サポート要件を満たす。
4 まとめ
したがって、本件特許の請求項1及び5ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないので、取消理由(決定の予告)によって取り消すことはできない。
第7 特許異議申立書に記載された申立理由についての当審の判断
1 申立理由1(新規性)及び2(進歩性)について
(1) 甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「銀導電膜の製造方法」の発明に関し、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、銀導電膜の製造方法に関し、特に、基板上に銀塗料を塗布して焼成することにより形成される銀導電膜の製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法では、ペーストにシランカップリング剤を添加しているので、ペーストの粘度が経時変化するという問題がある。また、特許文献2の方法では、ペーストに熱硬化性樹脂を使用しているので、このペーストを使用して形成した導電膜上に有機物が残存して誘電体層を形成すると、この導電膜を真空雰囲気中に配置した場合に、有機成分の脱離による誘電体層の膨れや真空雰囲気の環境汚染などによる回路の信頼性が低下することが懸念され、また、ペーストが樹脂を含んでいるために、ペーストの粘度を低くすることが困難になるという問題がある。
【0008】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、シランカップリング剤や熱硬化性樹脂を加えることなく、200℃以下の比較的低温で焼成しても、基板との密着性が良好な銀導電膜の製造方法を提供することを目的とする。」
「【0036】
(4)銀導電膜形成工程
次に、洗浄後の固形分(洗浄後の複合有機保護材で被覆された銀粒子)を有機媒体と混合して得られた銀塗料を基板に塗布した後、焼成して銀導電膜を作製する。
【0037】
有機媒体としては、120℃程度で揮発して除去し易い媒体を使用するのが好ましい。また、基板としては、ロール・ツー・ロール方式に対応可能な強度を有し且つ高耐熱性を有するフィルム状の有機高分子基板を使用するのが好ましく、ポリイミド、ポリエチレンテレテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、アラミド、ポリカーボネイトなどの基板を使用することができる。
【0038】
銀塗料を基板に塗布する方法としては、アプリケータ法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、インクジェット法などの各種の塗布方法を使用することができるが、焼成後に銀導電膜を形成することができる方法であればよい。
【0039】
塗膜を焼成して銀粒子を焼結させることによって銀導電膜を得るための焼成雰囲気は、大気雰囲気のような常圧の酸化雰囲気でよい。塗膜中の銀粒子は極めて低温で焼結するので、焼成温度は100~300℃でよいが、使用可能な基板の種類を広げるとともに省エネルギーの観点から200℃以下であるのが好ましい。塗膜を上記の温度領域で保持する焼成時間は、10分間以上であるのが好ましく、60分間以上であるのがさらに好ましい。また、生産性を考慮すると、バッチ式でなく、大量生産に適したロール・ツー・ロール方式に対応した連続焼成可能な装置を使用するのが好ましく、例えば、熱風循環式乾燥器、ベルト式焼成炉、IR焼成炉などを使用することができる。
【0040】
銀導電膜は、低抵抗であるほど効率的に電気を流すことができるので、比抵抗が低い方がよい。銀導電膜の比抵抗は、5.0μΩ・cm以下であるのが好ましく、4.0μΩ・cm以下であるのがさらに好ましく、3.0μΩ・cm以下であるのがさらに好ましく、2.0μΩ・cm以下であるのが最も好ましい。また、銀導電膜の膜厚は、0.1~3.0μmであるのが好ましく、0.2~1.0μmであるのがさらに好ましい。」
「【実施例】
【0042】
以下、本発明による銀導電膜の製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0043】
[実施例1]
反応媒体および還元剤としてのイソブタノール(和光純薬株式会社製の特級)3218.27gと、第1の有機保護材(第1級アミン)としてのオレイルアミン(和光純薬株式会社製、分子量267)5532.91gと、銀化合物としての硝酸銀結晶(関東化学株式会社製)688.54gを混合し、マグネットスターラーで撹拌して、硝酸銀を溶解させた。
【0044】
次に、この溶液を還流器付の容器に移し、この容器をオイルバスに載せ、容器内に不活性ガスとして窒素ガスを2L/分の流量で吹き込んでマグネットスターラーにより溶液を撹拌しながら、昇温速度1℃/分で88℃まで昇温させた後、0.5℃/分で108℃まで昇温させた。
【0045】
100℃で5時間還流を行なった後、還元補助剤として第2級アミンであるジエタノールアミン(和光純薬株式会社製、分子量106)430.35g(Agに対するモル比1.0)を添加し、1時間保持して反応を終了した。
【0046】
反応終了後のスラリーを遠心分離機で固液分離し、分離された液を廃棄して固形分を回収した。その後、固形分の洗浄操作として、固形分をメタノールと混合した後、遠心分離機で固液分離し、分離された液を廃棄して固形分を回収した。この洗浄操作は2回行った。
【0047】
次に、洗浄後の固形分を、液状有機媒体としてのテトラデカンに混合して分散させ、遠心分離機により30分間固液分離し、分離された液を回収した。この液には第1の有機保護材(第1級アミン)で覆われた銀粒子が単分散していた。
【0048】
このようにして得られた銀粒子分散液を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製JEM-2010)により観察して、60万倍に拡大した画像から、重なっていない独立した300個の銀粒子を無作為に選択して、その粒径(画像上の長径)を計測し、個々の銀粒子の粒径を算術平均することによって平均粒径DTEMを求めたところ、銀粒子の平均粒径DTEMは8.7nmであった。
【0049】
また、TG-DTA装置(示差熱・熱重量同時測定装置)を用いて、銀粒子とその表面を覆っている第1の有機保護材(第1級アミン)としてのオレイルアミンの合計に対する第1の有機保護材の存在割合(以下「第1の有機保護材被覆量」という)を求めた。第1の有機保護材被覆量を算出するために、図1に示すように、室温から200℃まで10℃/分で昇温し(ステージI)、200℃で60分間維持して(ステージII)、銀粒子分散液に含まれる有機媒体(テトラデカン)を揮発させた後、200℃から700℃まで10℃/分で昇温し(ステージIII)、700℃で再度60分間維持する(ステージIV)ヒートパターンを採用した。ステージI~IIでは、有機媒体が全部揮発するとともに第1の有機保護材(第1級アミン)が残留し、ステージIII~IVでは、第1の有機保護材(第1級アミン)が全部揮発するとみなすことができる。TG-DTA装置を用いて図1のヒートパターンによって測定される重量変化をモニターし、ステージIIが終了(この時点では重量変化がほぼゼロになる)するまでに減少した重量分W1を有機媒体(分散媒)の重量とし、ステージIII~IVの間(ステージIII開始後に再び重量が減少してステージIVの終了時に重量変化がほぼゼロになる)に新たに減少した重量分W2を第1の有機保護材(第1級アミン)の重量とし、残りの重量W3を銀の正味の重量として、第1の有機保護材被覆量(%)を、W2/(W2+W3)×100から算出したところ、銀粒子分散液中の銀粒子の第1の有機保護材被覆量は8.0質量%であった。
【0050】
なお、上述したTG-DTA装置による測定は、第1の有機保護材被覆量を調べるために特殊なヒートパターンを用いて行ったが、得られた銀粒子分散液について通常の昇温(昇温速度10℃/分)による示差熱分析(DTA)も行ったところ、DTA曲線は200~300℃の間に大きな山と300~330℃の間にピークを有していた。このピークは、第1の有機保護材(第1級アミン)であるオレイルアミンに起因するものであると考えられる。
【0051】
また、FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて、銀粒子分散液中の粒子と試薬のオレイルアミンについて、有機化合物のスペクトルを測定したところ、銀粒子を被覆する有機保護材がオレイルアミンのみからなることが確認された。
【0052】
次に、得られた銀粒子分散液(第1の有機保護材被覆量8.0質量%、銀濃度約60質量%)223.76gに、第2の有機保護材(第1級アミン)としての試薬のオクチルアミン(C8H17-NH2、和光純薬株式会社製の特級)1195.55g(銀に対して10当量に相当する量)を添加し、液温を15℃に保持しながら400rpmで5時間攪拌して、沈降粒子を生成させた。
【0053】
次に、沈降粒子が生成した液を5分間遠心分離して固液分離し、得られた固形分を回収した。その後、この固形分の洗浄操作として、固形分にメタノール889.71gを添加して400rpmで30分間攪拌した後、5分間遠心分離して固液分離することにより固形分を回収した。
【0054】
洗浄後の固形分について、通常の昇温(昇温速度10℃/分)による示差熱分析(DTA)測定を行ったところ、DTA曲線の100~200℃の間と300~330℃の間にピークが観察された。前者のピークは第2の有機保護材としての第1級アミンであるオクチルアミンに起因するものであると考えられ、後者のピークは第1の有機保護材としての第1級アミンであるオレイルアミンに起因するものであると考えられる。
【0055】
また、洗浄後の固形分についてFT-IR測定を行ったところ、有機保護材がオレイルアミン(第1の有機保護材としての第1級アミン)とオクチルアミン(第2の有機保護材としての第1級アミン)で構成される複合有機保護材であることが確認された。
【0056】
また、洗浄後の固形分(第1の有機保護材と第2の有機保護材の複合有機保護材で被覆された洗浄後のウエット状態の固形分)について、TEM(日本電子株式会社製JEM-2010)により観察し、60万倍に拡大した画像から、重なっていない独立した300個の銀粒子を無作為に選択して、その粒径(画像上の長径)を計測し、個々の銀粒子の粒径を算術平均することによって平均粒径DTEMを求めたところ、銀粒子の平均粒径DTEMは9.41nmであった。
【0057】
また、洗浄後の固形分(第1の有機保護材と第2の有機保護材の複合有機保護材で被覆された洗浄後のウエット状態の固形分)をガラス製セルに塗布してX線回折装置にセットし、Ag(111)面の回折ピークを用いて、下記のScherrerの式(1)によりX線結晶粒径DXを求めたところ、X線結晶粒径DXは5.50nmであった。なお、X線にはCu-Kαを用いた。
DX=K・λ/(β・cosθ) (1)
但し、KはScherrer定数で0.94を採用し、λはCu-Kα線のX線波長、βは回折ピークの半価幅、θは回折線のブラッグ角である。
【0058】
次に、洗浄後の固形分(第1の有機保護材と第2の有機保護材の複合有機保護材で被覆された洗浄後のウエット状態の固形分)にテトラデカンを少量加えた後、混練脱泡器によって混練および脱泡してペースト状の銀塗料を得た。
【0059】
次に、得られた銀塗料を、アプリケータを用いて、厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製の型番UPILEX25S)からなる基板上に塗布した。
【0060】
このようにして塗膜を形成したポリイミドフィルムを、大気中においてホットプレート上で60℃で30分間予備焼成した後、そのホットプレート上で温度180℃で1時間保持することによって焼成膜(180℃焼成膜)を得た。
【0061】
このようにして得られた焼成膜を基板(ポリイミドフィルム)とともに、カレンダー装置(由利ロール機械株式会社製の高温カレンダー装置)の2対のクロム溶射樹脂ロールからなるカレンダーロール間に、線圧500kN/m、速度1m/分、ロール表面温度100℃として通過させることによって、カレンダー処理による圧縮処理を行った。
【0062】
このようにして圧縮処理した焼成膜について、表面抵抗測定装置(三菱化学製のLorestaHP)により表面抵抗を測定するとともに、蛍光X線膜厚測定器(SII製のSTF9200)により膜厚を測定し、表面抵抗と膜厚から算出した体積抵抗値を焼成膜の比抵抗とした。その結果、焼成膜の表面抵抗は0.12Ω/□、膜厚は0.36μmであり、比抵抗は4.28μΩ・cmであった。
【0063】
また、基板上に形成された焼成膜の密着力として、JIS C6481の引き離し強さに準じて、引張試験機のクロスヘッド速度を約50mm/分に維持して、基板から焼成膜を引き剥がす際の力を測定したところ、焼成膜の密着力は10.19N/cmであった。
【0064】
さらに、焼成膜が形成された基板をX線回折装置にセットしてX線結晶粒径DXを求めたところ、X線結晶粒径DXは38.22nmであった。
【0065】
[実施例2~5]
ロール表面温度をそれぞれ120℃(実施例2)、150℃(実施例3)、180℃(実施例4)および200℃(実施例5)とした以外は実施例1と同様の方法によって基板上に形成された焼成膜について、実施例1と同様の方法により、表面抵抗および膜厚を測定し、比抵抗を求め、密着力を測定し、X線結晶粒径DXを求めた。その結果、実施例2では、焼成膜の表面抵抗0.05Ω/□、膜厚0.52μm、比抵抗2.86μΩ・cm、密着力10.45N/cm、X線結晶粒径DX43.98nmであり、実施例3では、焼成膜の表面抵抗0.02Ω/□、膜厚1.42μm、比抵抗3.08μΩ・cm、密着力10.09N/cm、X線結晶粒径DX33.47nmであった。また、実施例4では、焼成膜の表面抵抗0.03Ω/□、膜厚1.01μm、比抵抗3.30μΩ・cm、密着力9.28N/cm、X線結晶粒径DX41.76nmであり、実施例5では、焼成膜の表面抵抗0.05Ω/□、膜厚0.73μm、比抵抗3.99μΩ・cm、密着力4.77N/cm、X線結晶粒径DX34.71nmであった。
【0066】
[比較例1]
カレンダー処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法によって基板上に形成された焼成膜について、実施例1と同様の方法により、表面抵抗および膜厚を測定し、比抵抗を求め、密着力を測定し、X線結晶粒径DXを求めた。その結果、焼成膜の表面抵抗0.15Ω/□、膜厚0.27μm、比抵抗4.16μΩ・cm、密着力0.26N/cm、X線結晶粒径DX28.92nmであった。
【0067】
実施例1~5および比較例1の焼成およびカレンダー処理条件を表1に示し、実施例1~5および比較例1の焼成膜の特性を表2に示す。また、実施例1~5の焼成膜の比抵抗および密着力をそれぞれ図2および図3に示す。」
「【0069】
[図:0001384043000001.jpg]
」
イ 甲第1号証に記載された発明
アの記載、特に実施例1ないし5、比較例1それぞれの記載を中心に整理すると、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認める。
「膜厚が0.37μm、比抵抗が4.28μΩ・cm、X線結晶粒径DXが38.22nmの銀導電膜」(以下、「甲1実施例1発明」という。)
「膜厚が0.52μm、比抵抗が2.86μΩ・cm、X線結晶粒径DXが43.98nmの銀導電膜」(以下、「甲1実施例2発明」という。)
「膜厚が1.42μm、比抵抗が3.08μΩ・cm、X線結晶粒径DXが33.47nmの銀導電膜」(以下、「甲1実施例3発明」という。)
「膜厚が1.01μm、比抵抗が3.30μΩ・cm、X線結晶粒径DXが41.76nmの銀導電膜」(以下、「甲1実施例4発明」という。)
「膜厚が0.73μm、比抵抗が3.99μΩ・cm、X線結晶粒径DXが34.71nmの銀導電膜」(以下、「甲1実施例5発明」という。)
「膜厚が0.27μm、比抵抗が4.16μΩ・cm、X線結晶粒径DXが28.92nmの銀導電膜」(以下、「甲1比較例1発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1実施例1発明とを対比すると、甲1実施例1発明の「銀導電膜」は、本件発明1の「金属銀」に相当するから、両者は、「金属銀」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点1
結晶子径について、本件発明1は「22.1nm以上24.1nm以下」と特定されるのに対し、甲1実施例1発明では「X線結晶粒径DXが38.22nm」である点。
・相違点2
体積抵抗率について、本件発明1は「4.1以上4.7μΩ・cm以下」と特定されるのに対し、甲1実施例1発明にはそのような特定がない点。
上記相違点について検討する。
相違点1について検討するに、甲1実施例1発明の銀導電膜の銀の結晶粒径は「X線結晶粒径DXが38.22nm」であるから、本件発明1の「22.1nm以上24.1nm以下」との特定事項を満たさないものであって、この点は実質的にも相違点である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1実施例1発明ではない。
そして、甲1実施例1発明において、銀の結晶粒径を小さいものとし、「22.1nm以上24.1nm以下」とする、すなわち、相違点1に係る本件発明1の特定事項を満たすものとする動機付けもない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、甲1実施例2発明ないし甲1実施例5発明及び甲1比較例1発明との対比・判断についても、甲1実施例1発明と同様である。
以下、「甲1実施例1発明」ないし「甲1実施例5発明」及び「甲1比較例1発明」を総称し、「甲1発明」として検討を進める。
イ 本件発明5ないし7について
本件発明5ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である本件発明5ないし7は甲1発明ではないし、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 申立理由1及び2についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1及び5ないし7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえないので、申立理由1及び2によって取り消すことはできない。
2 申立理由3(実施可能要件)について
(1) 申立理由3についての判断
訂正により、体積抵抗率は「4.1以上4.7μΩ・cm以下」と特定された。
よって、銀の物質としての体積抵抗率である1.59μΩ・cm以下の部分は実現不可能であるとする申立理由3は、理由がない。
(2) 申立理由3についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1及び5ないし7に係る特許は、申立理由3によって取り消すことはできない。
3 申立理由4(サポート要件)について
(1) 申立理由4-1についての判断
訂正により、結晶子径は「22.1nm以上24.1nm以下」、体積抵抗率は「4.1以上4.7μΩ・cm以下」とそれぞれ下限、上限が特定された。
よって、申立理由4-1は、理由がない
(2) 申立理由4-2についての判断
本件発明2は訂正により削除された。
なお、本件発明1では、結晶子径の範囲が特定されているが、実施例7、8として記載されている範囲である。
(3) 申立理由4-3、4-4についての判断
特許異議申立人は、申立理由4-3、4-4でそれぞれ、基材の厚さや特定条件下における荷重たわみ温度について言及しているが、そもそも、本件発明の課題は、「より低温での加熱処理によることが可能であり、十分な導電性を有する金属銀、その製造方法、及び前記金属銀からなる層を基材上に備えた積層体を提供すること」であり、当該課題は本件発明1及び5ないし7も解決すると認識できるものであることは、上記第6 3で検討したとおりであるから、申立理由4-3、4-4は採用しない。
(4) 申立理由4についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1及び5ないし7に係る特許は、申立理由4によって取り消すことはできない。
4 申立理由5(明確性要件)について
(1) 申立理由5についての判断
訂正により、体積抵抗率は「4.1以上4.7μΩ・cm以下」と特定された。
よって、銀の物質としての体積抵抗率である1.59μΩ・cm以下の部分はどのようなものか理解することが困難であるから、明確性を欠くものとする申立理由5は、理由がない。
(2) 申立理由5についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1及び5ないし7に係る特許は、申立理由5によって取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由(決定の予告)、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び5ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び5ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-701007