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特許異議申立

2022-700326

硫化物固体電解質及びその製造方法

審判番号
2022-700326
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-512815
登録番号
6952216
請求日
2022年04月20日
審決日
2023年02月01日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三井金属鉱業株式会社
  • 【権利者代理人】宮嶋 学
  • 【権利者代理人】浅野 真理
  • 【権利者代理人】反町 洋
  • 【権利者代理人】鈴木 啓靖
  • 【異議申立人】前田 しのぶ
審判長/審判官
  • 審判長 恩田 春香
  • 審判官 河本 充雄
  • 審判官 棚田 一也
分類
P1651.113-YAA(H01B) / P1651.121-YAA(H01B) / P1651.536-YAA(H01B) / P1651.537-YAA(H01B) / P1651.841-YAA(H01B) / P1651.851-YAA(H01B) / P1651.852-YAA(H01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6952216号発明「硫化物固体電解質及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6952216号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4~13〕、2、3、〔14~24〕について訂正することを認める。 特許第6952216号の請求項1~24に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6952216号の請求項1~13に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月25日(優先権主張 令和元年12月27日(以下、「本件特許出願の優先日」という。))を国際出願日として出願され、令和3年9月29日にその特許権の設定登録がされ、同年10月20日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 4月20日:特許異議申立人 前田しのぶ(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立て 同年 6月23日付け:取消理由通知 同年 8月26日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 同年11月24日:申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。) 令和4年8月26日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「(A×B)/C・・・の値が1.0以上2.5以下である」とあるのを、「(A×B)/C・・・の値が1.2以上2.5以下である」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を独立形式にするとともに、「(A×B)/C・・・の値が1.0以上2.5以下である」を、「(A×B)/C・・・の値が1.4以上2.5以下である」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を、請求項1を引用するものについて独立形式にするとともに、「(A×B)/C・・・の値が1.0以上2.5以下である」を、「(A×B)/C・・・の値が1.5以上2.5以下である」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3を、請求項1及び2を引用するものについて独立形式にするとともに、「(A×B)/C・・・の値が1.0以上2.5以下である」を、「(A×B)/C・・・の値が1.2以上2.5以下である」に訂正し、新たに請求項14とする。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4を、請求項1~3を引用するものについて新たに請求項15とする。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5を、請求項3又は4を引用するものについて新たに請求項16とする。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項17とする。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項7を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項18とする。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項8を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項19とする。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項9を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項20とする。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項10を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項21とする。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項11を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項22とする。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項12を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項23とする。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項13を、請求項1~3を引用するものについて、新たに請求項24とする。 (15)訂正事項15 願書に添付した明細書の【0146】の【表2】における実施例4の粉砕体のCS値(m2/cm3)の欄に「6.0」とあるのを、「10.8」に訂正する。 なお、訂正前の請求項1~13は、請求項2~13が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、特許請求の範囲に係る訂正は、一群の請求項1~24について請求されたものである。また、明細書に係る訂正も、一群の請求項1~24について請求されたものである。 そして、訂正後の請求項2、3、14~24に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「(A×B)/C」の値を「1.0以上2.5以下」から「1.2以上2.5以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0050】には、(A×B)/Cの値を1.2以上にすることが記載されているから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正前の請求項2が引用する請求項1の「(A×B)/C」の値を「1.0以上2.5以下」から「1.4以上2.5以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするもの、及び、同法同条の5同項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件明細書等の【0050】には、(A×B)/Cの値を1.4以上にすることが記載されているから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正前の請求項3が引用する請求項1の「(A×B)/C」の値を「1.0以上2.5以下」から「1.5以上2.5以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするもの、及び、同法同条の5同項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件明細書等の【0050】には、(A×B)/Cの値を1.5以上にすることが記載されているから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用し、訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであるところ、請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正前の請求項2が引用する請求項1の「(A×B)/C」の値を「1.0以上2.5以下」から「1.2以上2.5以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするもの、及び、同法同条の5同項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件明細書等の【0050】には、(A×B)/Cの値を1.2以上にすることが記載されているから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項4が、請求項1又は請求項2を引用する請求項3を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項15とするとともに、訂正後の請求項14の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項5が、請求項3又は請求項4を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項16とするとともに、訂正後の請求項14又は15の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項6が、請求項1~5のいずれか一項を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項17とするとともに、訂正後の請求項14~16のいずれか一項の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項7が、請求項1~5のいずれか一項を引用する請求項6を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項18とするとともに、訂正後の請求項17の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、訂正前の請求項8が、請求項1~7のいずれか一項を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項19とするとともに、訂正後の請求項14~18のいずれか一項の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項9が、請求項1~8のいずれか一項を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項20とするとともに、訂正後の請求項14~19のいずれか一項の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項11について 訂正事項11は、訂正前の請求項10が、請求項1~8のいずれか一項を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項21とするとともに、訂正後の請求項14~19のいずれか一項の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12)訂正事項12について 訂正事項12は、訂正前の請求項11が、請求項1~8のいずれか一項を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項22とするとともに、訂正後の請求項14~19のいずれか一項の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (13)訂正事項13について 訂正事項13は、訂正前の請求項12が、請求項1~8のいずれか一項を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項23とするとともに、訂正後の請求項14~19のいずれか一項の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (14)訂正事項14について 訂正事項14は、訂正前の請求項13が、請求項1~8のいずれか一項を引用するものであるところ、請求項2を引用する請求項3を引用するものを新たに請求項24とするとともに、訂正後の請求項14~19のいずれか一項の記載を引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (15)訂正事項15について ア 訂正事項15は、訂正前の明細書の【0146】の【表2】における実施例4の粉砕体のCS値(m2/cm3)の欄に「6.0」とあるのを、「10.8」に訂正するものである。 イ CS値に関し、本件明細書等の【0017】には、「<CS値> ある粉末に関し、当該粉末のCS値は、当該粉末を構成する粒子の形状を球形と仮定した場合の、当該粉末の単位体積あたりの表面積であり、単位はm2/cm3である。粉末のCS値は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される当該粉末の体積基準の粒度分布に基づいて、次式:CS値(m2/cm3)=6/MAから求められる。なお、MAは、面積平均粒径(μm)であり、次式:MA(μm)=ΣVi/Σ(Vi/di)[式中、Viは頻度、diは粒度区分の中央値である。]から求められる。CS値の測定は、例えば、実施例に記載の条件に従って行われる。」(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)と記載されているから、粉砕体のCS値と面積平均粒径MAとは反比例の関係にあり、面積平均粒径MAが小さくなるほど、当該粉砕体のCS値は大きくなるものである。 そして、本件明細書等の【0146】の【表2】の実施例4には、粉砕体のD50が記載されており、同【0016】には、「日機装株式会社製レーザー回折粒度分布測定機「MT3000II」を用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートから、累積体積が10体積%、50体積%及び95体積%となる粒径を求め、それぞれ、D10、D50及びD95とした」と記載されているから、D50は、粉砕体の粒径に関する値であるといえる。 そうすると、粉砕体の面積平均粒径MAと粉砕体のD50とは、いずれも粉砕体の粒径に関する値であり、また、粉砕体の粒子の粒度分布は、通常は対数正規分布か又はそれに近い分布をしていると考えられる(特許異議申立書の29ページ1~2行参照)ことからすると、面積平均粒径MAとD50との間には相関関係があり、例えば、D50が小さくなるほど、面積平均粒径MAも小さくなるといえる。 以上によれば、実施例4における粉砕体の面積平均粒径MAが小さくなるほど、当該粉砕体のCS値は大きくなるものであり、また、粉砕体のD50が小さくなるほど、粉砕体の面積平均粒径MAも小さくなるものである。 したがって、粉砕体のD50が小さくなるほど、当該粉砕体のCS値は大きくなるといえる。 ウ ここで、本件明細書等の【0145】の【表1】、【0146】の【表2】における実施例1~4の粉砕体のD50(μm)とCS値(m2/cm3)を整理すると以下の【表A】となり、縦軸をD50、横軸をCS値としてプロットすると、以下の【図A】となる。 【表A】 [図:0001398250000001.jpg] 【図A】 [図:0001398250000002.jpg] そして、上記イで検討したとおり、粉砕体のD50が小さくなるほど、当該粉砕体のCS値は大きくなるものであるところ、この相関関係は、実施例1~3のプロットについては、上記【図A】に示すとおり点線で示される。 しかし、実施例4のプロットだけが、上記【図A】の点線からは著しく逸脱している。 そうすると、実施例4の粉砕体のCS値である「6.0」は誤記であり、正しくは11を少し下回る値であるといえる。 エ そして、本件明細書等の【0146】の【表2】には、実施例4の粉砕体のBET比表面積(m2/g)が「10.2」、真密度が「1.8」、(A×B)/Cが「1.7」であることが記載されており、同【0018】によれば、「Aは、当該粉末のBET比表面積(m2/g)を表し、Bは、当該粉末の真密度(g/cm3)を表し、Cは、当該粉末のCS値(m2/cm3)を表す」ものであるから、上記粉砕体のBET比表面積、真密度、(A×B)/Cの値の関係は(10.2×1.8)/C=1.7となり、Cの値、すなわち、実施例4の粉砕体のCS値は「10.8」となる。 ここで導き出した、実施例4の粉砕体のCS値である「10.8」は、上記ウにおいて検討した、「実施例4の粉砕体のCS値である「6.0」は誤記であり、正しくは11を少し下回る値である」ことと整合する。 オ 以上によれば、本件明細書等の【0146】の【表2】における実施例4の粉体のCS値である「6.0」は誤記であり、正しい値は「10.8」であるといえる。 したがって、訂正事項15は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。 また、訂正事項15は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ なお、以下に示すとおり、本件明細書等の【0146】の【表2】の実施例3の最上欄には、「組成」、「-」、「Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8」と記載されているところ、訂正明細書の【0146】の【表2】には、「実施例3」、「組成」、「-」、「Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8」のいずれも記載されていない。 本件明細書等の【0146】の【表2】 [図:0001398250000003.jpg] 訂正明細書の【0146】の【表2】 [図:0001398250000004.jpg] しかし、訂正請求書には、本件明細書等の【0146】の【表2】に記載されている「実施例3」、「組成」、「-」、「Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8」を削除する訂正は記載されておらず、訂正明細書の【0146】の【表2】において、「実施例3」、「組成」、「-」、「Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8」は記入し忘れたものであるといえるから、以下では、上記【表2】において、「実施例3」、「組成」、「-」、「Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8」は記載されているものとして判断する。 キ 申立人の主張について 申立人は、令和4年11月24日付け意見書の18ページ10~15行において、「実施例4は実施例1~3とは組成が異なり、「シャープさ」もより低いものであるから、実施例1~3の体積基準メジアン径D50とCS値が直線関係にのるからと言って、実施例4も同様の直線関係にのると言うことはできない。したがって、実施例4のCS値(m2/cm3)を「6.0」から「10.8」とする訂正は、その根拠が乏しく、当業者にとって誤記とは認識できないものである。逆に、当該訂正は、つじつまが合うように後からデータを作ったものと認められ、したがって、新規事項を追加するものであるから、その訂正は認められるものではない。」と主張している。 確かに、本件明細書等の【0146】の【表1】の「組成」の欄によれば、実施例1~3の粉砕体の組成はLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8であり、実施例4の粉砕体の組成はLi5.8PS4.8Cl1.2であり、実施例4の粉砕体は実施例1~3の粉砕体とは組成が異なる。 しかし、上記イにおいて検討した、「粉砕体のD50が小さくなるほど、当該粉砕体のCS値は大きくなる」との相関関係が、粉砕体の組成によって変わるとの技術常識を示す証拠は提示されていないから、上記相関関係は、粉砕体の組成によって変わるものとはいえず、実施例1~4における粉砕体のD50とCS値は、直線関係にのるとするのが妥当である(上記【図A】参照)。 また、上記エにおいて検討したとおり、本件明細書等の【0146】の【表2】における実施例4の粉砕体のBET比表面積(m2/g)、真密度、(A×B)/Cの各値から導き出したCS値である「10.8」は、上記ウにおいて検討した、「実施例4の粉砕体のCS値である「6.0」は誤記であり、正しくは11を少し下回る値である」ことと整合する。 したがって、実施例4のCS値(m2/cm3)を「6.0」から「10.8」とする訂正は、つじつまが合うように後からデータを作ったものとはいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4~13〕、2、3、〔14~24〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~24に係る発明(以下、「本件発明1~24」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~24に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.10μm以上2.0μm以下であり、下記式: (A×B)/C [式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。] の値が1.2以上2.5以下である、硫化物固体電解質。 【請求項2】 リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.10μm以上2.0μm以下であり、下記式: (A×B)/C [式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。] の値が1.4以上2.5以下であり、 前記リチウム(Li)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、41モル%以上50モル%以下であり、 前記リン(P)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、7.0モル%以上20モル%以下であり、 前記硫黄(S)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、31モル%以上43モル%以下である、硫化物固体電解質。 【請求項3】 リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素及び少なくとも一種のハロゲン(X)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.10μm以上2.0μm以下であり、下記式: (A×B)/C [式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。] の値が1.5以上2.5以下である、硫化物固体電解質。 【請求項4】 前記少なくとも一種のハロゲン(X)元素が、塩素(Cl)元素及び臭素(Br)元素の少なくとも一種である、請求項3に記載の硫化物固体電解質。 【請求項5】 前記少なくとも一種のハロゲン(X)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、3.7モル%以上19モル%以下である、請求項3又は4に記載の硫化物固体電解質。 【請求項6】 CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、2θ=25.19°±1.00°及び29.62°±1.00°の位置にピークを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の硫化物系固体電解質。 【請求項7】 前記X線回折パターンにおいて、2θ=15.34°±1.00°、17.74°±1.00°、30.97°±1.00°、44.37°±1.00°、47.22°±1.00°及び51.70°±1.00°から選択される位置にピークを有する、請求項6に記載の硫化物固体電解質。 【請求項8】 前記硫化物固体電解質が、アルジロダイト型結晶構造を有する結晶相を含み、 前記結晶相が、下記式: LiaPSbXc [式中、Xは少なくとも一種のハロゲン元素であり、aは3.0以上6.5以下であり、bは3.5以上5.5以下であり、cは0.50以上3.0以下である。] で表される組成を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質。 【請求項9】 請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質と活物質とを含む電極合材。 【請求項10】 請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質と分散媒とを含むスラリー。 【請求項11】 正極層と、負極層と、前記正極層及び前記負極層の間に位置する固体電解質層とを備える電池であって、 前記固体電解質層が、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む、前記電池。 【請求項12】 請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を製造する方法であって、下記工程: (1-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、下記式: (A×B)/C [式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。] の値が2.5超5.0以下である前記硫化物固体電解質を、中間体として準備する工程;並びに (1-2)前記中間体を熱処理し、得られた熱処理体を、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程 を含む、前記方法。 【請求項13】 請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を製造する方法であって、下記工程: (2-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む原料粉末であって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、D95が0.30μm以上5.0μm以下である前記原料粉末を準備する工程;並びに (2-2)前記原料粉末を熱処理し、得られた熱処理体を、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程 を含む、前記方法。 【請求項14】 リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素及び少なくとも一種のハロゲン(X)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.10μm以上2.0μm以下であり、下記式: (A×B)/C [式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。] の値が1.2以上2.5以下であり、 前記リチウム(Li)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、41モル%以上50モル%以下であり、 前記リン(P)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、7.0モル%以上20モル%以下であり、 前記硫黄(S)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、31モル%以上43モル%以下である、硫化物固体電解質。 【請求項15】 前記少なくとも一種のハロゲン(X)元素が、塩素(Cl)元素及び臭素(Br)元素の少なくとも一種である、請求項14に記載の硫化物固体電解質。 【請求項16】 前記少なくとも一種のハロゲン(X)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、3.7モル%以上19モル%以下である、請求項14又は15に記載の硫化物固体電解質。 【請求項17】 CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、2θ=25.19°±1.00°及び29.62°±1.00°の位置にピークを有する、請求項14~16のいずれか一項に記載の硫化物系固体電解質。 【請求項18】 前記X線回折パターンにおいて、2θ=15.34°±1.00°、17.74°±1.00°、30.97°±1.00°、44.37°±1.00°、47.22°±1.00°及び51.70°±1.00°から選択される位置にピークを有する、請求項17に記載の硫化物固体電解質。 【請求項19】 前記硫化物固体電解質が、アルジロダイト型結晶構造を有する結晶相を含み、 前記結晶相が、下記式: LiaPSbXc [式中、Xは少なくとも一種のハロゲン元素であり、aは3.0以上6.5以下であり、bは3.5以上5.5以下であり、cは0.50以上3.0以下である。] で表される組成を有する、請求項14~18のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質。 【請求項20】 請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質と活物質とを含む電極合材。 【請求項21】 請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質と分散媒とを含むスラリー。 【請求項22】 正極層と、負極層と、前記正極層及び前記負極層の間に位置する固体電解質層とを備える電池であって、 前記固体電解質層が、請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む、前記電池。 【請求項23】 請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を製造する方法であって、下記工程: (1-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、下記式: (A×B)/C [式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。] の値が2.5超5.0以下である前記硫化物固体電解質を、中間体として準備する工程;並びに (1-2)前記中間体を熱処理し、得られた熱処理体を、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程 を含む、前記方法。 【請求項24】 請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を製造する方法であって、下記工程: (2-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む原料粉末であって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、D95が0.30μm以上5.0μm以下である前記原料粉末を準備する工程;並びに (2-2)前記原料粉末を熱処理し、得られた熱処理体を、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程 を含む、前記方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 本件訂正前の請求項1~13に係る特許に対して令和4年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1(実施可能要件) 本件特許は、明細書の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)取消理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由1(実施可能要件)について (1)本件訂正請求により訂正された明細書(以下、「本件明細書」という。)、及び、願書に最初に添付した図面(以下、「本件図面」という。)の記載 本件明細書及び本件図面には、以下の記載がある。 「【0018】 <(A×B)/C> ある粉末に関し、下記式: (A×B)/C [式中、Aは、当該粉末のBET比表面積(m2/g)を表し、Bは、当該粉末の真密度(g/cm3)を表し、Cは、当該粉末のCS値(m2/cm3)を表す。]に基づいて算出される値は、粒度分布測定から、粒子を球形と仮定して求められたCS値(m2/cm3)を真密度(g/cm3)で割って算出した表面積値(m2/g)と、BET測定で求められた比表面積(m2/g)との比を意味する。つまり、上記式で得られる値が1.0に近いほど、粉末を構成する粒子の形状が真球に近いことを意味する。」 「【0067】 ≪硫化物固体電解質の製造方法≫ 以下、本発明の硫化物固体電解質の製造方法の実施形態について説明する。 <第1実施形態> 第1実施形態に係る製造方法は、例えば図1に示すように、下記工程: (1-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が2.5超5.0以下である硫化物固体電解質を、中間体として準備する工程;並びに (1-2)工程(1-1)で準備された中間体を熱処理し、得られた熱処理体を、D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程 を含む。 【0068】 工程(1-1)で準備される中間体は、本発明の硫化物固体電解質の前駆体であり、中間体に対して工程(1-2)を施すことにより、本発明の硫化物固体電解質を得ることができる。 【0069】 第1実施形態に係る製造方法において、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる理由は、以下の通りである。リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が2.5超5.0以下である中間体は、形状がいびつな粒子や微粒子を多量に含むため、比表面積が大きい。上記中間体を熱処理することによって得られる熱処理体は、微粒子の一部が焼結することによって、真球に近い粒子がネッキングした構造体となる。上記熱処理体をメジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下となるように粉砕した場合、ネッキング面が優先的に粉砕されることによって、形状がいびつな粒子や微粒子の生成が抑制され、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる。 ・・・ 【0072】 工程(1-2)において、中間体のD50に対する粉砕体のD50の比は、好ましくは0.10以上10以下、さらに好ましくは0.50以上3.0以下、さらに一層好ましくは0.80以上1.5以下である。上記比が所定の下限を有することで、粉砕体の形状を真球に近づけることができる。一方、上記比が所定の上限を有することで、粉砕する工程時に微粉の生成を抑えることができる。 ・・・ 【0099】 <第2実施形態> 第2実施形態に係る製造方法は、例えば図3に示すように、下記工程: (2-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む原料粉末であって、D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、D95が0.30μm以上5.0μm以下である原料粉末を準備する工程 (2-2)原料粉末を熱処理し、得られた熱処理体を、D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程 を含む。 【0100】 工程(2-1)で準備される原料粉末に対して工程(2-2)を施すことにより、本発明の硫化物固体電解質を得ることができる。 【0101】 第2実施形態に係る製造方法において、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる理由は、以下の通りである。原料粉末の熱処理後の構造は、原料粉末の粒径を一部反映する。メジアン径D50が2.0μmよりも大きく、D95が5.0μmよりも大きい原料粉末を熱処理した場合、少なくとも2.0μmよりも大きい粒子がネッキングした構造体となる傾向がある。これをメジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下となるに粉砕する場合には、ネッキング面以外が粉砕されることによって、形状がいびつな粒子や微粒子が生成し、比表面積大きくなる。したがって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、D95が0.30μm以上5.0μm以下である原料粉末を用いた場合には、上記ネッキング面以外の粉砕頻度が抑制されるため、形状がいびつな粒子や微粒子がなく、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる。 ・・・ 【0105】 工程(2-2)において、第2の原料粉末D50に対する粉砕体のD50の比は、好ましくは0.10以上10以下、さらに好ましくは0.30以上7.0以下、さらに一層好ましくは0.60以上5.0以下である。上記比が記載の下限以上であることで、粉砕体の形状がより真球となるため、好ましい。中間体のD50に対する粉砕体のD50の比が記載の上限以下であることで、粉砕する工程時に微粉の生成を抑えることができるため、好ましい。 ・・・ 【0122】 <実施例1> (1)中間体の製造 組成がLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8となり、全量が5gとなるように、Li2S粉末、P2S5粉末、LiCl粉末及びLiBr粉末をそれぞれ秤量し、トルエン中にてボールミルで15時間、粉砕及び混合を行い、原料スラリーを得た。得られた原料スラリーの評価結果を表1に示す。 【0123】 得られた原料スラリーを真空加熱乾燥した後、得られた原料粉末をカーボン製の容器に充填した後、管状電気炉にて、硫化水素ガスを1.0L/分で流通させながら、昇降温速度200℃/時間にて300℃で4時間熱処理した後、500℃で4時間熱処理した。 【0124】 得られた熱処理体(焼成体)を粉砕し、粉末状の中間体を得た。粉砕は遊星ボールミル(フリッチュ製)を用いて2段階に粉砕することで行った。1段階目の粉砕では、遊星ボールミル(フリッチュ製)を用いて行った。容量80cm3のジルコニア製容器に固体電解質(熱処理体)5g、脱水ヘプタン10g、5mmZrO2ボール90gを入れ、回転数100rpmで3時間粉砕処理を行った。得られたスラリーを真空乾燥し、1段階目の粉砕体とした。得られた1段階目の粉砕体を用いて2段階目の粉砕を行った。2段階目の粉砕では、容量80ccのジルコニア製容器に固体電解質(第1段階目の粉砕体)2g、分散剤(酢酸ブチル)0.06g、超脱水トルエン10g、0.8mmZrO2ボール90gを入れ、回転数100rpmで1時間粉砕処理を行った。得られたスラリーに対して、ボール分離及び固液分離を行い、80℃で真空乾燥した後、目開き53μmの篩を通して整粒することで粉末状の中間体を得た。 【0125】 なお、秤量、混合、電気炉へのセット、電気炉からの取り出し、粉砕及び整粒作業は全て、十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で行った。 【0126】 (2)中間体の特性評価 得られた中間体の評価結果を表1に示す。 【0127】 なお、中間体は、CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、アルジロダイト型結晶相に由来するピークを有していた。 【0128】 (3)中間体の熱処理 中間体を、アルゴンガスを1L/分の流量でフローした環境下、250℃で2時間熱処理した。 【0129】 (4)熱処理体の特性評価 得られた熱処理体の評価結果を表1に示す。 【0130】 なお、熱処理体は、CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、アルジロダイト型結晶相に由来するピーク有していた。 【0131】 (5)熱処理体の粉砕 得られた熱処理体を以下の通り粉砕し、粉砕体を得た。容量80ccのジルコニア製容器に熱処理体2g、分散剤(酢酸ブチル)0.06g、超脱水トルエン10g、0.8mmZrO2ボール90gを入れ、回転数100rpmで10分間粉砕処理を行った。得られたスラリーに対してボール分離及び固液分離を行い、80℃で真空乾燥した後、目開き53μmの篩を通して整粒することで熱処理体の粉砕体を得た。 【0132】 (6)粉砕体の特性評価 得られた粉砕体の評価結果を表1及び図4に示す。 【0133】 図4に示すように、粉砕体は、CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、アルジロダイト型結晶相に由来するピークを有していた。 【0134】 <実施例2> 中間体の熱処理温度を300℃に変更した点を除き、実施例1と同様の操作を行った。実施例1と同様の評価結果を表1及び図4に示す。 【0135】 図4に示すように、粉砕体は、CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、アルジロダイト型結晶相に由来するピークを有していた。 【0136】 なお、中間体及び熱処理体についても、CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、アルジロダイト型結晶相に由来するピークを有していた。 【0137】 <実施例3> (1)粉砕体の製造 組成がLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8となり、全量が5gとなるように、Li2S粉末、P2S5粉末、LiCl粉末及びLiBrをそれぞれ秤量し、遊星ボールミルで2時間、粉砕及び混合を行い、原料粉末を得た。得られた原料粉末を容量80ccのジルコニア製容器に2g投入し、さらに分散剤(酢酸ブチル)0.06g、超脱水トルエン10g、0.8mmZrO2ボール90gを入れ、回転数100rpmで1時間粉砕処理を行った。得られたスラリーからボールを分離した後、80℃で真空乾燥し、53μm篩を通して整粒することで原料粉末を得た。得られた原料粉末の特性(D10、D50及びD95)を評価した。評価結果を表2に示す。 【0138】 得られた原料粉末をカーボン製の容器に充填した後、管状電気炉にて、硫化水素ガスを1.0L/分で流通させながら、昇降温速度200℃/時間にて300℃で4時間熱処理した後、400℃で4時間熱処理した。 【0139】 得られた熱処理体(焼成体)を粉砕し、粉砕体を得た。容量80ccのジルコニア製容器に熱処理体2g、分散剤(酢酸ブチル)0.06g、超脱水トルエン10g、0.8mmZrO2ボール90gを入れ、回転数100rpmで10分間粉砕処理を行った。得られたスラリーに対してボール分離及び固液分離を行い、80℃で真空乾燥した後、53μm篩を通して整粒することで粉砕体を得た。 【0140】 なお、秤量、混合、電気炉へのセット、電気炉からの取り出し、粉砕及び整粒作業は全て、十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で行った。 【0141】 (2)粉砕体の特性評価 得られた粉砕体の評価結果を表2及び図4に示す。 【0142】 図4に示すように、粉砕体は、CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、アルジロダイト型結晶相に由来するピークを有していた。 【0143】 <実施例4> 組成をLi5.8PS4.8Cl1.2に変更した点、原料粉末の粉砕処理を回転数100rpmで2時間を行った点、及び、熱処理体(焼成体)の粉砕処理を回転数100rpmで30分間行った点を除き、実施例3と同様の操作を行った。実施例3と同様の評価結果を表2及び図4に示す。 【0144】 図4に示すように、粉砕体は、CuKα1線を用いて測定されるX線回折パターンにおいて、アルジロダイト型結晶相に由来するピークを有していた。 【0145】 【表1】 [図:0001398250000005.jpg] 【表2】 [図:0001398250000006.jpg] 【0147】 表1及び表2に示すように、実施例1~4により、Li、P及びSを含むとともに、アルジロダイト型結晶相を含む硫化物固体電解質であって、0.10μm以上2.0μm以下のD50及び1.0以上2.5以下の(A×B)/Cの値を有する粉末を得ることができた。」 「【図1】 [図:0001398250000007.jpg] 」 「【図3】 [図:0001398250000008.jpg] 【図4】 [図:0001398250000009.jpg] 」 (2)本件発明1について ア 本件明細書の【0067】の第1実施形態に係る製造方法、同【0099】の第2実施形態に係る製造方法、同【0122】~【0147】の実施例1~4の記載によれば、本件発明1の発明特定事項のうち、「リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が(以下、単に「D50」という。)、0.10μm以上2.0μm以下」である「硫化物固体電解質」を製造できるといえるところ、同時に、当該「硫化物固体電解質」の「(A×B)/C」の値が「1.2以上2.5以下」のものを製造することができるかについて以下に検討する。 イ 本件明細書の【0018】には、「下記式: (A×B)/C ・・・上記式で得られる値が1.0に近いほど、粉末を構成する粒子の形状が真球に近いことを意味する。」と記載されているから、本件発明1において、上記式の値、すなわち、(A×B)/Cの値が「1.2以上2.5以下」の範囲のうち、1.2に近いほど、「硫化物固体電解質」の形状が真球に近くなるといえる。 ウ 本件明細書の【0067】には、本件発明の硫化物固体電解質の製造方法の第1実施形態として、(1-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が2.5超5.0以下である硫化物固体電解質を、中間体として準備する工程;並びに(1-2)工程(1-1)で準備された中間体を熱処理し、得られた熱処理体を、D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程を含む。」方法が記載され、同【0099】には、第2の実施形態として、「(2-1)リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む原料粉末であって、D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、D95が0.30μm以上5.0μm以下である原料粉末を準備する工程(2-2)原料粉末を熱処理し、得られた熱処理体を、D50が0.10μm以上2.0μm以下である粉砕体が得られるように粉砕する工程を含む。」方法が記載されている。 そして、本件明細書の【0069】には、「第1実施形態に係る製造方法において、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる理由」として、「リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が2.5超5.0以下である中間体は、形状がいびつな粒子や微粒子を多量に含むため、比表面積が大きい。上記中間体を熱処理することによって得られる熱処理体は、微粒子の一部が焼結することによって、真球に近い粒子がネッキングした構造体となる。上記熱処理体をメジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下となるように粉砕した場合、ネッキング面が優先的に粉砕されることによって、形状がいびつな粒子や微粒子の生成が抑制され、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる。」と記載されている。 また、同【0072】には、「工程(1-2)において、中間体のD50に対する粉砕体のD50の比は、好ましくは0.10以上10以下、さらに好ましくは0.50以上3.0以下、さらに一層好ましくは0.80以上1.5以下である。上記比が所定の下限を有することで、粉砕体の形状を真球に近づけることができる。」と記載されている。 さらに、本件明細書の【101】には、「第2実施形態に係る製造方法において、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる理由」として、「原料粉末の熱処理後の構造は、原料粉末の粒径を一部反映する。メジアン径D50が2.0μmよりも大きく、D95が5.0μmよりも大きい原料粉末を熱処理した場合、少なくとも2.0μmよりも大きい粒子がネッキングした構造体となる傾向がある。これをメジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下となるに粉砕する場合には、ネッキング面以外が粉砕されることによって、形状がいびつな粒子や微粒子が生成し、比表面積大きくなる。したがって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、D95が0.30μm以上5.0μm以下である原料粉末を用いた場合には、上記ネッキング面以外の粉砕頻度が抑制されるため、形状がいびつな粒子や微粒子がなく、粒径が小さく、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができる。」と記載されている。 また、同【0105】には、「工程(2-2)において、第2の原料粉末D50に対する粉砕体のD50の比は、好ましくは0.10以上10以下、さらに好ましくは0.30以上7.0以下、さらに一層好ましくは0.60以上5.0以下である。上記比が記載の下限以上であることで、粉砕体の形状がより真球となるため、好ましい。」と記載されている。 エ 上記ウにおける本件明細書の【0069】及び【0101】の記載によれば、熱処理前の原料粉末(第1の実施形態では中間体、第2の実施形態では第2の原料粉末)を熱処理することによって得られる熱処理体は、微粒子の一部が焼結することによって、真球に近い粒子がネッキングした構造体となる。 ここで、第1の実施形態における「中間体のD50に対する粉砕体のD50の比」、及び、第2の実施形態における「第2の原料粉末D50に対する粉砕体のD50の比」(以下、まとめて「粉砕体のD50/原料粉末のD50」という。)が、上記ウにおける本件明細書の【0072】及び【0105】に記載の下限を下回る場合、上限を上回る場合、範囲である場合について検討する。 (ア)粉砕体のD50/原料粉末のD50が本件明細書の【0072】及び【0105】に記載の下限を下回る場合 この場合は、熱処理前の原料粉末のD50が、上記熱処理体を粉砕した粉砕体のD50と比較して大きすぎるため、粉砕体のD50が0.10μm以上2.0μm以下のものを得るためには、熱処理体のネッキング面以外を粉砕する必要があるため、形状がいびつな粒子や微粒子が生成することになり、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができないといえる(下図参照)。 [図:0001398250000010.jpg] (イ)粉砕体のD50/原料粉末のD50が本件明細書の【0072】及び【0105】に記載の上限を上回る場合 この場合は、熱処理前の原料粉末のD50が、上記熱処理体を粉砕した粉砕体のD50と比較して小さすぎるため、粉砕体のD50が0.10μm以上2.0μm以下のものを得るためには、熱処理体のネッキング面を必要以上に粉砕しないこととなるため、微粒子が集まって形状がいびつな粒子が生成したり、上記ネッキング面が粉砕されることによる微粒子が生成することになり、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができないといえる(下図参照)。 [図:0001398250000011.jpg] (ウ)粉砕体のD50/原料粉末のD50が本件明細書の【0072】及び【0105】に記載の範囲である場合 この場合は、上記【0069】及び【0101】に記載されているように、熱処理体のネッキング面が優先的に粉砕されることになり、形状がいびつな粒子や微粒子の生成が抑制されるため、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができるといえる(下図参照)。 [図:0001398250000012.jpg] オ そして、本件明細書の【0072】の「工程(1-2)において、中間体のD50に対する粉砕体のD50の比は、好ましくは0.10以上10以下、さらに好ましくは0.50以上3.0以下、さらに一層好ましくは0.80以上1.5以下である。上記比が所定の下限を有することで、粉砕体の形状を真球に近づけることができる。」と記載されており、同【0105】には、「工程(2-2)において、第2の原料粉末D50に対する粉砕体のD50の比は、好ましくは0.10以上10以下、さらに好ましくは0.30以上7.0以下、さらに一層好ましくは0.60以上5.0以下である。上記比が記載の下限以上であることで、粉砕体の形状がより真球となるため、好ましい。」と記載されていることから、粉砕体のD50/原料粉末のD50の下限を0.1から大きくするにつれて、粉砕体の形状を真球に近づけることができるといえる。 ここで、上記イで検討したとおり、本件発明1において、(A×B)/Cの値が1.2に近いほど、「硫化物固体電解質」の形状が真球に近くなるといえる。 そうすると、粉砕体のD50/原料粉末のD50の値を0.1から大きくするにつれて、(A×B)/Cの値を1.2に近づけることができるといえる。 一方、粉砕体のD50/原料粉末のD50の値を0.1に近づけるにつれて、(A×B)/Cの値を1.2から遠ざけること、すなわち、2.5に近づけることができるといえる。 カ そして、本件明細書の【0122】~【0147】の実施例1には、組成がLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8、D50が0.65μm、(A×B)/Cが2.0である硫化物固体電解質、実施例2には、組成がLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8、D50が0.67μm、(A×B)/Cが1.8である硫化物固体電解質、実施例3には、組成がLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8、D50が0.72μm、(A×B)/Cが1.8である硫化物固体電解質、実施例4には、組成がLi5.8PS4.8Cl1.2、D50が0.59μm、(A×B)/Cが1.7である硫化物固体電解質を得るための具体的な製造方法、及び、熱処理条件や粉砕条件等の具体的な製造条件が記載されている。 キ 以上によれば、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、メジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が2.5超5.0以下である中間体、又は、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む原料粉末であって、D50が0.10μm以上2.0μm以下であり、D95が0.30μm以上5.0μm以下である原料粉末を熱処理し、得られた熱処理体を粉砕すると、熱処理体のネッキング面が優先的に粉砕されることになり、形状がいびつな粒子や微粒子の生成が抑制されるため、比表面積が低減された硫化物固体電解質を得ることができるものであり、その際に、粉砕体のD50/原料粉末のD50の値を、上記【0072】及び【0105】で好ましいとされている0.10以上10以下の範囲とし、粉砕体のD50を0.10μm以上2.0μm以下となるように、本件明細書の【0122】~【0147】の実施例1~4の記載を参酌して、熱処理条件や粉砕条件等の製造条件を調整することによって、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含み、D50が、0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が1.2以上2.5以下の硫化物固体電解質、すなわち、本件発明1の「硫化物固体電解質」を製造できるといえる。 したがって、本件明細書の記載は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (3)本件発明2、3、14について ア 「硫化物固体電解質」の組成について 本件発明2は、本件発明1の「硫化物固体電解質」の組成に加えて「前記リチウム(Li)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、41モル%以上50モル%以下であり、前記リン(P)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、7.0モル%以上20モル%以下であり、前記硫黄(S)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、31モル%以上43モル%以下である」との事項(以下、「事項A」という。)が特定されており、本件発明3は、本件発明1の「硫化物固体電解質」の組成に加えて「少なくとも一種のハロゲン(X)元素を含む」との事項(以下、「事項B」という。)が特定されており、本件発明14は、本件発明1の「硫化物固体電解質」の組成に加えて事項A及び事項Bが特定されているものである。 これらの事項は、本件明細書の【0069】の第1実施形態に係る製造方法、同【0099】の第2実施形態に係る製造方法、同【0122】~【0147】の実施例1~4の記載を参酌すれば、製造できるといえる。 イ 「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値」について 「(A×B)/C」の値について、本件発明2、3は、本件発明1の下限である「1.2」を、それぞれ、「1.4」、「1.5」に減縮したものであるところ、上記(2)で検討したとおり、本件明細書の記載によれば、(A×B)/Cの値が1.2以上2.5以下の硫化物固体電解質を製造することができるものであるから、(A×B)/Cの値が1.4以上2.5以下の硫化物固体電解質、及び、(A×B)/Cの値が1.5以上2.5以下の硫化物固体電解質も、同様に製造できるといえる。 また、本件発明14は、本件発明1と同様に、(A×B)/Cの値が1.5以上2.5以下の硫化物固体電解質であるから、上記(2)で検討したのと同様に、製造できるといえる。 ウ 以上から、本件発明2、3、14の「硫化物固体電解質」は、いずれも製造できるといえる。 したがって、本件明細書の記載は、当業者が本件発明2、3、14を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (4)本件発明4~13について ア 本件発明4は、請求項3に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明5は、請求項3又は4に記載の硫化物固体電解質の発明であるところ、本件発明4、5は、上記(3)における本件発明3についての検討、及び、本件明細書の【0122】、【0137】等の記載から、当業者であれば実施できるといえる。 イ 本件発明6は、請求項1~5のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明7は、請求項6に記載の硫化物固体電解質の発明であるところ、本件発明6、7は、上記(2)、(3)における本件発明1~3についての検討、及び、上記アにおける本件発明4、5についての検討、並びに、本件明細書の【0045】、【0046】、【0122】~【0147】の実施例1~4及び本件図面の【図4】の記載から、当業者であれば実施できるといえる。 ウ 本件発明8は、請求項1~7に記載の硫化物固体電解質の発明であるところ、上記(2)、(3)における本件発明1~3についての検討、及び、上記ア、イにおける本件発明4~7についての検討、並びに、本件明細書の【0035】、【0037】、【0122】~【0147】の実施例1~4の記載から、当業者であれば実施できるといえる。 エ 本件発明9は、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む電極合剤の発明であり、本件発明10は、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含むスラリーの発明であり、本件発明11は、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む固体電解質層を備える電池の発明であるところ、本件発明9~11は、上記(2)、(3)における本件発明1~3についての検討、及び、上記ア~ウにおける本件発明4~8についての検討、並びに、本件明細書の【0057】~【0066】の記載から、当業者であれば実施できるといえる。 オ 本件発明12、13は、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を製造する方法の発明であるところ、上記(2)、(3)における本件発明1~3についての検討、及び、上記ア~ウにおける本件発明4~8についての検討、並びに、本件明細書の【0067】~【0112】及び【0122】~【0147】の実施例1~4の記載から、当業者であれば実施できるといえる。 (5)本件発明15~24について 本件発明15は、請求項14に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明16は、請求項14又は15に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明17は、請求項14~16のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明18は、請求項17に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明19は、請求項14~18のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明20は、請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む電極合剤の発明であり、本件発明21は、請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含むスラリーの発明であり、本件発明22は、請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む固体電解質層を備える電池の発明である。 また、本件発明15~24は、本件発明4~13とは、引用する請求項が異なるだけで、同じ構成を有するものである。 そうすると、本件発明15~24は、上記(3)における本件発明14についての検討、及び、上記(4)における本件発明4~13についての検討と同様に、当業者であれば実施できるといえる。 (6)申立人の主張 ア 申立人は、特許異議申立書の62ページ14~18行において、実施例により、具体的に示されているのは、(A×B)/Cで求められる値が1.8~2.0のものであり、1.8未満のものや2.0を超えるものについては実証されていない旨、同年11月24日付け意見書10ページ9~15行において、中間体や第2の原料粉末のD50に対する粉砕体のD50の比が特定されているとしても、これだけでは体積基準のメジアン径D50が0.10μm以上2.0μm以下であって、式の値が1.2以上1.8未満、または2.0超2.5以下である特定の硫化物固体電解質を製造するには、過度な試行錯誤が強いられる旨主張する。 しかし、本件明細書の記載から、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含み、D50が、0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が1.2以上2.5以下の硫化物固体電解質を製造できることは、上記(2)で検討したとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。 イ 申立人は、令和4年11月24日付け意見書の8ページ1~11行において、第1実施形態の熱処理に用いられる中間体(硫化物固体電解質)は、Li2S、P2S5等の原料同士が既に反応して、硫化物固体電解質となっているのであるから、その形状や物性は、第2実施形態の熱処理に用いられる、未反応の原料粉末(第2の原料粉末)とは、明らかに異なっており、第1実施形態の中間体(硫化物固体電解質)を熱処理して得られる熱処理体の形状や物性も、第2実施形態の原料粉末(第2の原料粉末)を熱処理して得られる熱処理体の形状や物性とは、異なっており、ネッキング部の数、ネッキング部の強度、ネッキング部以外の部分の強度など、その後の粉砕工程で重要な役割を果たすと考えられ、数々の特性が異なっていると考えられるから、第1実施形態と第2実施形態を同様に扱った、特許権者の説明は、根拠が不十分であり、信用することができない旨主張している。 確かに、第1実施形態の中間体(硫化物固体電解質)を熱処理して得られる熱処理体の形状や物性と、第2実施形態の原料粉末(第2の原料粉末)を熱処理して得られる熱処理体の形状や物性とは異なっているとの申立人の主張は否定できないが、両者のネッキング部の数、ネッキング部の強度、ネッキング部以外の部分の強度などが、どの程度異なっているか、また、その異なりが、その後の粉砕工程にどの程度影響を及ぼすかについては不明であり、これらの点を立証する証拠は提示されていない。 また、仮に、第1実施形態の熱処理体と第2実施形態における熱処理体とで、ネッキング部の数、ネッキング部の強度、ネッキング部以外の部分の強度などが、その後の粉砕工程で重要な役割を果たすことが技術常識であるとしても、当該技術常識、及び、本件明細書の【0122】~【0147】の実施例1~4の記載を参酌して、粉砕工程の条件を調整すれば、上記(2)で検討したのと同様に、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含み、D50が、0.10μm以上2.0μm以下であり、(A×B)/Cの値が1.2以上2.5以下の硫化物固体電解質を製造できるといえる。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (7)小括 以上によれば、本件明細書の記載は、当業者が本件発明1~24を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。 したがって、請求項1~24に係る特許は、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、取消理由1には理由がない。 3 取消理由2(サポート要件) (1)本件発明が解決しようとする課題 本件明細書の【0008】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「粒径が小さく、低比表面積の硫化物固体電解質、該硫化物固体電解質を用いた電極合材、スラリー及び電池、並びに、該硫化物固体電解質の製造方法を提供すること」である(以下、「本件課題」という。)。 (2)本件発明1~3、14について ア 上記2(2)、(3)で検討したとおり、本件明細書の記載は、当業者が本件発明1~3、14を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 そうすると、本件発明1~3、14の範囲まで、本件明細書において開示された内容を拡張ないし一般化できるといえる。 イ そして、本件発明1~3、14の「硫化物固体電解質」は、いずれも、「D50が、0.10μm以上2.0μm以下」であり、「(A×B)/C」の値は、本件発明1、14が「1.2以上2.5以下」、本件発明2が「1.4以上2.5以下」、本件発明3が「1.5以上2.5以下」であるから、いずれも、粒径が小さく、低比表面積の硫化物固体電解質であるといえる。 ウ 以上によれば、本件発明1~3、14は、本件明細書の記載に照らして当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (3)本件発明4~13、15~24について 本件発明4~13、15~24は、請求項1~3、14のいずれかを引用するものであるから、本件発明1~3、14と同様に、本件明細書の記載に照らして当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (4)小括 以上によれば、本件発明1~24は、本件明細書の記載に照らして当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。 したがって、請求項1~24に係る特許は、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、取消理由2には理由がない。 第5 取消理由通知において採用しなかった申立理由について 1 申立人の申立理由 (1)申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1~5、9~11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5、9~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1~11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特開2019-186129号公報 甲第2号証:国際公開第2018/164224号 甲第3号証:国際公開第2017/094712号 甲第4号証:国際公開第2019/131725号 なお、本件訂正により追加された請求項14~24は、訂正前の請求項1及び2を引用する請求項3~13に対応するから、以下では、申立理由1(新規性)については、本件発明1~5、9~11、14~16、20~22について検討し、申立理由2(進歩性)については、本件発明1~24について検討する。 2 甲号証の記載、甲号証に記載された発明 (1)甲第1号証(特開2019-186129号公報) ア 本件特許出願の優先日前に公知となった甲第1号証には、以下の記載がある。 「【0024】 また、前記固体電解質粒子の下記式(1)より求められる値Xを扁平形状であることの指標としてもよい。 式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3) 本開示において、メディアン径とは、粒子の粒径を小さい順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体積の半分(50%)となる径である。 値Xは、粒子の形状を表すパラメータであり、粒子の形状が真球である場合には、値Xは6.0となる。ここで、本開示において形状とは、粒子表面の細かな凸凹や内部に存在する開気孔なども含む形状を意味するものである。 例えば、値Xが25以上であることを扁平形状であることの指標としてもよいし、値Xが30以上であることを扁平形状であることの指標としてもよいし、値Xが40以上であることを扁平形状であることの指標としてもよい。 ・・・ 【0028】 図1に特定のメディアン径となるまで25℃で粉砕した場合の、メディア1個当たりの運動エネルギーと値Xの関係を示す。図1に示すように、25℃においては、メディア1個当たりの運動エネルギーが1.0×10-8~1.6×10-7(J)の範囲では値Xは約6~10の範囲であり、球状を保つが、3.0×10-7~1.0×10-5(J)の範囲では値Xは約40~68の範囲であり、扁平形状になることがわかる。 ・・・ 【0031】 また、前記固体電解質粒子の上記式(1)より求められる値Xを球状であることの指標としてもよい。例えば、値Xが35以下であることを球状であることの指標としてもよいし、値Xが30以下であることを球状であることの指標としてもよいし、値Xが23以上であることを球状であることの指標としてもよい。」 「【実施例】 【0037】 1.硫化物固体電解質の製造 A.メディア1個あたりの粉砕エネルギーの影響に関する検討 [実施例1] (1)硫化物固体電解質材料の準備工程 15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質材料を準備した。 (2)第一粉砕工程 Arガス雰囲気下、室温で、上記15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質材料50g、ZrO2ボール(直径0.3mm)485g、脱水ヘプタン265g、及び、di-n-ブチルエーテル135gを、ビーズミル(商品名:LMZ015、アシザワ・ファインテック株式会社製)のスラリータンクに投入し、周速16m/sの条件で1時間、湿式メカニカルミリングによる第一粉砕工程を行うことで硫化物電解質粒子のスラリーを得た。 (3)第二粉砕工程 第一粉砕工程で得られた硫化物電解質粒子のスラリーを、Arガス雰囲気下で、ジルコニア製のポットに投入し、密閉した。このジルコニア製のポットを遊星ボールミル(商品名:P-7、フリッチュ社製)にセットし、台盤回転数200rpmの条件で1時間、室温で湿式メカニカルミリングによる第二粉砕工程を行うことで実施例1の硫化物電解質粒子が含まれるスラリーを得た。 得られたスラリーはポットプレートを用いて、210℃で3時間乾燥することにより、溶媒を除去した。乾燥後さらに、210℃で3時間の熱処理することにより、実施例1の硫化物固体電解質粒子を得た。 ・・・ 【0040】 [比較例2] 実施例1において、第一粉砕工程を実施しなかったこと、及び、第二粉砕工程において台盤回転数150rpmの条件で10時間湿式メカニカルミリングを行ったこと以外は、実施例1と同様に、比較例2の硫化物固体電解質粒子を得た。 ・・・ 【0053】 3.硫化物固体電解質粒子の評価 (1)BET比表面積、メディアン径、及び密度の測定 硫化物固体電解質のBET比表面積(m2/g)は、比表面積測定装置(商品名:NOVAe2000、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)を用いて測定した。 硫化物固体電解質のメディアン径;D50(μm)は、動的光散乱(DLS)式粒子径分布測定装置(商品名:ナノトラックウェーブ、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した。 硫化物固体電解質の密度(g/cm3)は、比重測定装置(商品名:AUW120D SMK-401、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。 【0054】 (2)電子顕微鏡観察 硫化物固体電解質に対し、SEM観察を行った。 SEM観察では、第一粉砕工程後及び第二粉砕工程後の硫化物電解質粒子の個数平均短径の算出を行った。 ・・・ 【0058】 【表2】 [図:0001398250000013.jpg] 」 (当審注:上記【表2】の「最終生産物」の「密度」の「g/m3」は、上記【0024】のXの定義から、「g/cm3」の誤記といえるから、以下、「g/cm3」と記載する。) 「【図1】 [図:0001398250000014.jpg] 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載(特に、比較例2)によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質であって、 動的光散乱(DLS)式粒子径分布測定装置(商品名:ナノトラックウェーブ、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した粒子の粒径を小さい順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体積の半分(50%)となる径であるメディアン径;D50が0.7μmであり、 式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4である、硫化物固体電解質。」 (2)甲第2号証(国際公開第2018/164224号) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲第2号証には、以下の記載がある。 「発明の概要 [0009] ・・・ また、本発明の一実施形態によれば、リチウム、リン及び硫黄を含み、レーザ回折式粒度分布測定により測定される体積基準平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、イオン伝導度が4.0mS/cm以上である、硫化物固体電解質粒子が提供される。 また、本発明の一実施形態によれば、硫化物固体電解質を微粒化し、その後に微粒化物を熱処理する、安定相の結晶構造を含む硫化物固体電解質粒子の製造方法が提供される。・・・」 「図面の簡単な説明 [0011] ・・・ [図11]実施例3Bの硫化物固体電解質粒子のXRDパターンである。」 「発明を実施するための形態 ・・・ [0017] 安定相の結晶構造とは一般に、ある外的条件(圧力や温度等)において、熱力学的に自由エネルギーが低い状態にある結晶構造である。本願においては、室温を含む、例えば、300℃以下の温度域で構造変化を起こさずに存在する結晶構造を意味するものとする。例えば、室温常圧においてアルゴン雰囲気中で封じた管の中で300℃、10時間の熱処理を行った際に、熱処理の前後でX線回折分析において変化がない(測定上誤差範囲内)回折ピークは、安定相の結晶構造由来のものであると確認できる。 安定相の結晶構造としては、例えば、アルジロダイト型結晶構造及びLGPS型結晶構造がある。 ・・・ [0020] 本実施形態の硫化物固体電解質粒子は、安定相の結晶構造としてアルジロダイト型結晶構造を含んでいることが好ましい。この場合、上記回折ピークAは、2θ=29.7±0.5degに現れる。 アルジロダイト型結晶構造の回折ピークは、例えば、2θ=25.2±0.5degに現れることがあり、また、2θ=15.3±0.5deg、17.7±0.5deg、31.1.±0.5deg、44.9±0.5deg、47.7±0.5degにも現れることがある。本実施形態の硫化物固体電解質粒子は、これらのピークを有していてもよい。 ・・・ [0040] 硫化物固体電解質粒子がハロゲンなどの元素Xを含む場合、原料は、例えば、下記式(2)で表されるハロゲン化合物を含むことが好ましい。 Ml-Xm (2) ・・・ [0047] 機械的応力を加えることにより作製した中間体を、微粒化して中間体粒子とする。微粒化する手段としては、例えば、ジェットミル、ボールミル、ビーズミルを挙げることができる。なお、乾式であるか湿式であるかは問わないが、例えば乾燥工程を削減可能という観点からは、乾式であることが好ましい。 微粒化の条件は、使用する装置や、中間体の状態などを考慮して適宜調整することができる。得られる中間体粒子のD50は0.1~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。 ・・・ [0050] 例えば、本実施形態の硫化物固体電解質粒子の原料として、硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウムを使用し、アルジロダイト型結晶構造を含む硫化物固体電解質粒子を製造する場合には、投入原料のモル比を、硫化リチウム:五硫化二リン:ハロゲン化リチウム=37~88:8~25:0.1~50とすることができる。」 「[0102]実施例3A (1)硫化物固体電解質(中間体)の作製 製造例1で製造したLi2Sと、五硫化二リン(P2S5、アルドリッチ製)と、塩化リチウム(LiCl、アルドリッチ製)と、臭化リチウム(LiBr、アルドリッチ製)とを、mol比(Li2S:P2S5:LiCl:LiBr)が19:5:10:6になるように混合し、出発原料の混合物とした。混合物を変更した他は、実施例1(1)と同様にして中間体を作製した。 [0103](2)硫化物固体電解質の製造 上記1で作製した中間体約10gを、430℃で8時間熱処理することにより、硫化物固体電解質を得た。熱処理の条件は、保持時間を8時間とした他は、実施例1(3)と同じとした。 硫化物固体電解質のD50は20μmであった。また、σは13.0mS/cmであった。 [0104](3)硫化物固体電解質粒子の製造 上記(2)で得た硫化物固体電解質40gを、窒素雰囲気下のグローブボックス内で、750mLの溶媒(脱水トルエン、和光純薬製)中に分散させ、約5.8重量%のスラリーとした。スラリーを窒素雰囲気に保ったまま、ビーズミル装置(LMZ015、アシザワ・ファインテック社製)を用いて粉砕処理することにより、硫化物固体電解質を微粒化した。具体的に、粉砕媒体には0.5mmφジルコニアビーズ456gを使用し、周速12m/秒、流量500mL/分の条件でビーズミル装置を稼働させ、スラリーを装置装置内に投入し、1回通過させた。処理後のスラリーを窒素置換したシュレンク瓶に入れた後、減圧乾燥することで硫化物固体電解質粒子を得た。硫化物固体電解質粒子のD50は1.4μmであった。 硫化物固体電解質粒子を、実施例1(3)と同じ条件で熱処理した。 熱処理後の硫化物固体電解質粒子について、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表6に示す。熱処理後の硫化物固体電解質粒子のD50は4.4μmであった。また、σは10.1mS/cmであった。ICPによる組成分析の結果、各元素の比(Li:P:S:Cl:Br)は5.4:1.0:4.4:1.0:0.6であった。 硫化物固体電解質粒子のXRDパターンを図10に示す。 [0105]実施例3B 上記実施例3A(3)の熱処理において、熱処理の温度及び時間を420℃及び30分間とした他は、実施例1(3)と同様にして硫化物固体電解質粒子を得た。 熱処理後の硫化物固体電解質粒子について、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表6に示す。熱処理後の硫化物固体電解質粒子のD50は1.6μmであった。また、σは10.3mS/cmであった。ICPによる組成分析の結果、各元素の比(Li:P:S:Cl:Br)は5.4:1.0:4.4:1.0:0.6であった。 硫化物固体電解質粒子のXRDパターンを図11に示す。」 「[図11] [図:0001398250000015.jpg] 」 (3)甲第3号証(国際公開第2017/094712号) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲第3号証には、以下の記載がある。 「発明を実施するための形態 ・・・ [0012] これらのケイ素材料を粉末で使用することができる。このとき、ケイ素材料粉末の50%粒径(メジアン径)D50は、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。粒径を小さくすることで、本発明によるサイクル特性の改善効果を大きくすることができる。また、ケイ素材料の粒子の50%粒径(メジアン径)D50は、好ましくは、1nm以上である。ケイ素材料粉末の比表面積(CS)は、好ましくは1m2/cm3以上、より好ましくは5m2/cm3以上、最も好ましくは10m2/cm3以上である。また、ケイ素材料粉末の比表面積(CS)は、好ましくは3000m2/cm3以下である。ここで、CS(Calculated Specific Surfaces Area)は、粒子を球と仮定した時の比表面積(単位:m2/cm3)を意味する。CSは、式:CS=6/MA(式中、MAはレーザ回折式粒度分布測定装置による面積平均径である。)から算出され得る。50%粒径は、体積基準の粒子径分布の中央値である。体積基準の粒子径分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定できる。」 (4)甲第4号証(国際公開第2019/131725号) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲第4号証には、以下の記載がある。 「技術分野 [0001] 本発明は、例えばリチウム二次電池の固体電解質として好適に用いることができる固体電解質に関する。」 「発明が解決しようとする課題 [0010] リチウム、リン及び硫黄を含む硫化物系固体電解質は、高いイオン伝導率を有する一方、大気中の水分に触れると硫化水素を発生し、イオン伝導性が低下するという課題を抱えていた。特に、この種の硫化物系固体電解質にハロゲンを含ませると、イオン伝導率がさらに高まる一方、硫化水素をより一層発生するようになることが分かってきた。 [0011] そこで本発明は、リチウム、リン及び硫黄に加えてハロゲンを含む硫化物系の固体電解質に関し、硫化水素の発生を抑えることができ、それでいてイオン伝導性を確保することができる、新たな固体電解質を提供せんとするものである。」 「課題を解決するための手段 [0012] 本発明は、Argyrodite型結晶構造からなるLi7-aPS6-aHaa(Haはハロゲンを示す。aは0.2<a≦1.8である。)及びLi3PS4を含有し、X線回折法(XRD)により測定して得られたX線回折パターンにおいて、前記Argyrodite型結晶構造に由来する回折角2θ=24.9~26.3°の位置に出現するピーク強度に対する、Li3PS4に由来する回折角2θ=26.0~28.8°の位置に出現するピーク強度の比率が0.04~0.3であることを特徴とする固体電解質を提案する。」 「発明を実施するための形態 ・・・ [0027] さらに本固体電解質は、組成式(1):Li7-aPS6-aHaaで表される化合物を、本固体電解質中の化合物全体に対してmol比率で30%以上、中でも40%以上或いは95%以下、その中でも50%以上或いは90%以下の割合で含有するのが好ましい。 また、本固体電解質は、組成式(2):Li3PS4で表される化合物を、本固体電解質中の化合物全体に対してmol比率で3%以上、中でも5%以上或いは60%以下、その中でも10%以上或いは50%以下の割合で含有するのが好ましい。 さらに、Li3PS4で表される化合物の内訳として、β‐Li3PS4を50mol%以上、中でも60mol%以上、中でも70mol%以上含有するのが特に好ましい。 ・・・ [0033] この際、上記組成式(3):Li7-x-yPS6-xHax-yで示される化合物において、y>0になるように原料粉末を調整して混合することにより、上記組成式(1):Li7-aPS6-aHaaで表されるArgyrodite型結晶構造の相と、上記組成式(2):Li3PS4の相とを混相状態とすることができる。さらにyを上記の好ましい範囲に調整することにより、Argyrodite型結晶構造に由来する回折角2θ=24.9~26.3°の位置に出現するピーク強度に対する、Li3PS4に由来する回折角2θ=26.0~28.8°の位置に出現するピーク強度の比率を0.04~0.3の範囲にすることができる。」 3 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質」は、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含んでいるから、本件発明1の「リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質」に相当する。 (イ)甲1発明の「動的光散乱(DLS)式粒子径分布測定装置(商品名:ナノトラックウェーブ、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した粒子の粒径を小さい順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体積の半分(50%)となる径であるメディアン径;D50」は、本件発明1の「レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50」に相当し、両者の値は、「0.7μm」である点で一致する。 (ウ)a 本件発明1の「式: (A×B)/C」について、本件明細書の【0018】には、「ある粉末に関し、下記式: (A×B)/C[式中、Aは、当該粉末のBET比表面積(m2/g)を表し、Bは、当該粉末の真密度(g/cm3)を表し、Cは、当該粉末のCS値(m2/cm3)を表す。]に基づいて算出される値は、粒度分布測定から、粒子を球形と仮定して求められたCS値(m2/cm3)を真密度(g/cm3)で割って算出した表面積値(m2/g)と、BET測定で求められた比表面積(m2/g)との比を意味する。つまり、上記式で得られる値が1.0に近いほど、粉末を構成する粒子の形状が真球に近いことを意味する。」と記載されている。 また、本件発明1の「式: (A×B)/C」の「C」である「CS値(m2/cm3)」について、本件明細書の【0017】には、「粉末のCS値は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される当該粉末の体積基準の粒度分布に基づいて、次式:CS値(m2/cm3)=6/MAから求められる。なお、MAは、面積平均粒径(μm)であり、次式:MA(μm)=ΣVi/Σ(Vi/di)[式中、Viは頻度、diは粒度区分の中央値である。]から求められる。」と記載されている。 以上から、上記「式: (A×B)/C」の値が、値が1.0に近いほど、粉末を構成する粒子の形状が真球に近いことを意味するものであり、また、上記「式: (A×B)/C」は、(A×B×MA)/6(MAは、面積平均粒径(μm)である。)と等値である。 そうすると、(A×B×MA)の値が6に近いほど、粉末を構成する粒子の形状が真球に近いことを意味するものである。 b 一方、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)」について、甲第1号証の【0028】には、「図1に特定のメディアン径となるまで25℃で粉砕した場合の、メディア1個当たりの運動エネルギーと値Xの関係を示す。図1に示すように、25℃においては、メディア1個当たりの運動エネルギーが1.0×10-8~1.6×10-7(J)の範囲では値Xは約6~10の範囲であり、球状を保つが、3.0×10-7~1.0×10-5(J)の範囲では値Xは約40~68の範囲であり、扁平形状になることがわかる。」と記載されており、同【0031】には、「また、前記固体電解質粒子の上記式(1)より求められる値Xを球状であることの指標としてもよい。例えば、値Xが35以下であることを球状であることの指標としてもよいし、値Xが30以下であることを球状であることの指標としてもよいし、値Xが23以上であることを球状であることの指標としてもよい。」と記載されていることから、上記式(1)より求められる値Xは、粒子が球状、すなわち、真球であることの指標であり、6に近いほど真球に近づくといえる。 c 以上によれば、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)」と、本件発明1の「式:(A×B)/C」とは、いずれも、真球であることの指標であり、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)」の値と、本件発明1の「式:(A×B)/C」と等値である(A×B×MA)/6の(A×B×MA)の値とは、いずれも6に近いほど、粒子が真球に近い点で共通している。 d しかし、本件発明1の「式: (A×B)/C」の「B」は、「真密度(g/cm3)を表し」ているところ、当該「真密度(g/cm3)」について、本件明細書の【0120】には、「<真密度> MicrotracBEL株式会社製の真密度評価装置「BELPycno」を用いて、ガス置換法によって真密度を算出した。前処理はパージにて5回実施した。測定にはアルミナ10ccセルを使用し、セルの7割程度まで試料を充填した。」と記載されている。 一方、甲1発明の「密度(g/cm3)」について、甲第1号証の【0053】には、「硫化物固体電解質の密度(g/cm3)は、比重測定装置(商品名:AUW120D SMK-401、株式会社島津製作所製)を用いて測定した」と記載されている。 そうすると、甲1発明の「密度」と、本件発明1の「真密度(g/cm3)を表し」ている「B」とは、測定方法が異なるから、両者の値は一致するとはいえない。 e また、本件発明1の「式: (A×B)/C」の「C」は、「CS値(m2/cm3)を表す」ものであるところ、当該「CS値(m2/cm3)」について、本件明細書の【0017】には、「<CS値> ある粉末に関し、当該粉末のCS値は、当該粉末を構成する粒子の形状を球形と仮定した場合の、当該粉末の単位体積あたりの表面積であり、単位はm2/cm3である。粉末のCS値は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される当該粉末の体積基準の粒度分布に基づいて、次式:CS値(m2/cm3)=6/MAから求められる。なお、MAは、面積平均粒径(μm)であり、次式:MA(μm)=ΣVi/Σ(Vi/di)[式中、Viは頻度、diは粒度区分の中央値である。]から求められる。CS値の測定は、例えば、実施例に記載の条件に従って行われる。」と記載され、同【0121】には、「<CS値> D10、D50及びD95の測定と同様にして、日機装株式会社製レーザー回折粒度分布測定機「MT3000II」を用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートから、CS値を算出した。」と記載されている。 一方、甲1発明の「メディアン径;D50(μm)」の定義は、「粒子の粒径を小さい順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体積の半分(50%)となる径」であり、その測定方法は、甲第1号証の【0053】に、「硫化物固体電解質のメディアン径;D50(μm)は、動的光散乱(DLS)式粒子径分布測定装置(商品名:ナノトラックウェーブ、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した」と記載されている。 そうすると、甲1発明の「メディアン径;D50(μm)」と、本件発明1の「CS値(m2/cm3)を表す」ものである「C」とは、定義も測定方法も異なるから、両者の値は相違する。 f 上記cで検討したとおり、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)」の値と、本件発明1の「式:(A×B)/C」と等値である(A×B×MA)/6の(A×B×MA)の値とは、いずれも6に近いほど、粒子が真球に近い点で共通している。 そして、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)」の値である「12.4」は、本件発明1の「式: (A×B)/C」の値である「1.2以上2.5以下」を6倍した値である7.2以上15以下の範囲に含まれる。 しかし、上記d、eで検討したとおり、甲1発明の「密度(g/cm3)」の値と、本件発明1の「真密度(g/cm3)を表し」ている「B」の値とは一致するとはいえないし、甲1発明の「メディアン径;D50(μm)」の値と、本件発明1の「CS値(m2/cm3)を表す」ものである「C」の値とは相違する。 そうすると、上記のとおり、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)」の値である「12.4」が、本件発明1の「式: (A×B)/C」の値である「1.2以上2.5以下」を6倍した値の7.2以上15の範囲に含まれているからといって、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値が、本件発明1の「1.2以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえない。 g したがって、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明1の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」であることに相当しない。 (エ)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書28ページ下から5行~29ページ14行において、面積基準メディアン径(D50)と体積基準メディアン径(D50)とを考えた場合、面積基準メディアン径(D50)のほうがより小さな値を示すことは技術常識であるから、甲第1号証の式(1)で算出される値Xよりも「BET比表面積(m2/g)×面積基準メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)(これを値X’とする)は小さなものとなること、及び、このような粒子の粒度分布は、通常は対数正規分布かまたはそれに近い分布をしていると考えられ、この場合、面積基準メディアン径(D50)は、MA(面積平均粒径)と同じような値となるから、上記の値X’は「BET比表面積(m2/g)×MA(面積平均粒径)(μm)×密度(g/cm3)」と言い換えることができることを前提として、甲第1号証に記載される発明は、粒子の(A×B×MA(面積平均粒径))で算出される値が小さいほど当該粒子が真球に近く、値が6.0のときに当該粒子は真球状である、と換言され、これは(A×B)/Cの値が1.0のときに真球となるという本件発明1と、意味するものは全く同じであるから、本件発明1における計算式(A×B)/Cとその下限値1.0は引用文献1に記載されていると言え、すなわち、両発明における、真球状の粒子であるための指標とその下限値は、記載上は多少異なるものの、実質的な相違は全くなく、相違点とはいうことができない旨主張している。 そこで、申立人が主張するとおり、面積基準メディアン径(D50)と体積基準メディアン径(D50)とを考えた場合、面積基準メディアン径(D50)のほうがより小さな値を示すことは技術常識であり、また、面積基準メディアン径が、MA(面積平均粒径)と同じような値となるものとして以下検討する。 上記のとおり、体積基準メディアン径(D50)よりも面積基準メディアン径(D50)のほうがより小さな値を示すものであり、また、面積基準メディアン径が、MA(面積平均粒径)と同じような値となるものであるから、甲第1号証の式(1)、すなわち、BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)で算出される値Xよりも、X’(BET比表面積(m2/g)×MA(面積平均粒径)(μm)×密度(g/cm3))は小さな値となる。 そうすると、X’の下限値は、Xの下限値よりも小さくなる。 ここで、上記(ウ)bで検討したとおり、甲第1号証における式(1)より求められる値Xは、粒子が球状、すなわち、真球であることの指標であり、6に近いほど真球に近づくといえるから、Xの下限値は6である。 したがって、X’の下限値は、6.0よりも小さくなる。 以上によれば、申立人が主張するとおり、甲第1号証に記載される発明は、粒子の(A×B×MA(面積平均粒径))で算出される値が小さいほど当該粒子が真球に近くなるといえるものの、真球の時のX’の値は6.0よりも小さくなるから、申立人が主張するように、X’の値が6.0のときに粒子は真球状であるとはいえず、(A×B)/Cの値が1.0のときと真球状となるという本件発明1と、意味するものは同じであるともいえない。 そして、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明1の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」であることに相当しないことは、上記(ウ)で検討したとおりである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (オ)以上から、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.7μmである、硫化物固体電解質。」 <相違点> 相違点1:本件発明1は、「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」であるのに対し、甲1発明は、「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」である点。 イ 相違点1についての判断 (ア)上記ア(ウ)で検討したとおり、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値は、本件発明1の「1.2以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえず、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明1の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」であることに相当しないから、相違点1は、実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1発明ではない。 (イ)相違点1に係る本件発明1の構成である「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」とすることは、甲第1号証~甲第4号証のいずれにも記載されていないし、本件特許出願の優先日前において周知技術であったともいえない。 したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 (ア)上記(1)ア(ア)~(ウ)における本件発明1と甲1発明との対比を参酌すると、甲1発明の「15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質」は、本件発明2の「リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質」に相当し、甲1発明の「動的光散乱(DLS)式粒子径分布測定装置(商品名:ナノトラックウェーブ、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した粒子の粒径を小さい順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体積の半分(50%)となる径であるメディアン径;D50」は、本件発明2の「レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50」に相当し、両者の値は、「0.7μm」である点で一致するものの、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値が、本件発明2の「1.4以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえず、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明2の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.4以上2.5以下」であることに相当しない。 (イ)甲1発明の「15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質」は、Li(15+10+75×0.75×2)P(75×0.25×2)S(75×0.75+75×0.25×5)Br15I10、すなわち、Li137.5P37.5S150Br15I10の組成で表される硫化物固体電解質であるから(特許異議申立書の25ページ1~5行にも同様の記載がある。)、Liの含有量は、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、137.5/(137.5+37.5+150+15+10)=39.3モル%、Pの含有量は、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、37.5/(137.5+37.5+150+15+10)=10.7モル%、Sの含有量は、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、150/(137.5+37.5+150+15+10)=42.9モル%となる。 そうすると、本件発明2と甲1発明とは、リン(P)元素の含有量が、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、10.7モル%であり、硫黄(S)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、42.9モル%である点で一致し、リチウム(Li)元素の含有量が、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、本件発明2は、「41モル%以上50モル%以下」であるのに対し、甲1発明は、39.3モル%である点で相違する。 (ウ)以上から、本件発明2と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.7μmであり、 前記リン(P)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、10.7モル%であり、 前記硫黄(S)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、42.9モル%である、硫化物固体電解質。」 <相違点> 相違点2-1:本件発明2は、「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.4以上2.5以下」であるのに対し、甲1発明は、「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」である点。 相違点2-2:リチウム(Li)元素の含有量が、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、本件発明2は、「41モル%以上50モル%以下」であるのに対し、甲1発明は、39.3モル%である点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点2-1については、上記ア(ア)で検討したとおり、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値は、本件発明2の「1.4以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえず、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明2の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.4以上2.5以下」であることに相当しないから、相違点2-1は、実質的な相違点である。 したがって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明ではない。 (イ)相違点2-1に係る本件発明2の構成である「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.4以上2.5以下」とすることは、甲第1号証~甲第4号証のいずれにも記載されていないし、本件特許出願の優先日前において周知技術であったともいえない。 したがって、相違点2-1に係る本件発明2の構成は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (3)本件発明3について ア 対比 本件発明3と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質」は、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素及びハロゲン元素であるBrを含んでいるから、本件発明3の「リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素及び少なくとも一種のハロゲン(X)元素を含む硫化物固体電解質」に相当する。 (イ)上記(1)ア(イ)及び(ウ)における本件発明1と甲1発明との対比を参酌すると、甲1発明の「動的光散乱(DLS)式粒子径分布測定装置(商品名:ナノトラックウェーブ、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した粒子の粒径を小さい順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体積の半分(50%)となる径であるメディアン径;D50」は、本件発明3の「レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50」に相当し、両者の値は、「0.7μm」である点で一致するものの、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値は、本件発明3の「1.5以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえず、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明3の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.5以上2.5以下」であることに相当しない。 (ウ)以上から、本件発明3と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素及び少なくとも一種のハロゲン(X)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.7μmである、硫化物固体電解質。」 <相違点> 相違点3:本件発明3は、「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.5以上2.5以下」であるのに対し、甲1発明は、「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」である点。 イ 相違点3についての判断 (ア)上記ア(イ)で検討したとおり、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値は、本件発明3の「1.5以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえず、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明3の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.5以上2.5以下」であることに相当しないから、相違点3は実質的な相違点である。 したがって、本件発明3は、甲1発明ではない。 (イ)相違点3に係る本件発明3の構成である「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.5以上2.5以下」とすることは、甲第1号証~甲第4号証のいずれにも記載されていないし、本件特許出願の優先日前において周知技術であったともいえない。 したがって、相違点3に係る本件発明3の構成は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、本件発明3は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (4)本件発明4~11について ア 本件発明4は、請求項3に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明5は、請求項3又は4に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明4、5と甲1発明とは、少なくとも上記相違点3の点で相違するから、上記(3)イで検討したのと同様に、本件発明4、5は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明6は、請求項1~5のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明7は、請求項6に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明8は、請求項1~7のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明6~8と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1、相違点2-1又は相違点3のいずれかの点で相違するから、上記(1)イ(イ)、(2)イ(イ)及び(3)イ(イ)で検討したのと同様に、本件発明6~8は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明9は、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む電極合剤の発明であり、本件発明10は、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含むスラリーの発明であり、本件発明11は、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む固体電解質層を備える電池の発明であり、本件発明9~11と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1、相違点2-1又は相違点3のいずれかの点で相違するから、上記(1)イ、(2)イ及び(3)イで検討したのと同様に、本件発明9~11は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明14について ア 対比 本件発明14と甲1発明とを対比する。 (ア)上記(3)ア(ア)における本件発明3と甲1発明との対比を参酌すると、甲1発明の「15LiBr-10LiI-75(75Li2S-25P2S5)の組成で表される硫化物固体電解質」は、本件発明14の「リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素及び少なくとも一種のハロゲン(X)元素を含む硫化物固体電解質」に相当する。 (イ)上記(1)ア(イ)及び(ウ)における本件発明1と甲1発明との対比を参酌すると、甲1発明の「動的光散乱(DLS)式粒子径分布測定装置(商品名:ナノトラックウェーブ、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した粒子の粒径を小さい順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体積の半分(50%)となる径であるメディアン径;D50」は、本件発明14の「レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50」に相当し、両者の値は、「0.7μm」である点で一致するものの、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値は、本件発明14の「1.2以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえず、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明14の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」であることに相当しない。 (ウ)上記(2)ア(イ)における本件発明2と甲1発明との対比を参酌すると、本件発明14と甲1発明とは、リン(P)元素の含有量が、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、10.7モル%であり、硫黄(S)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、42.9モル%である点で一致し、リチウム(Li)元素の含有量が、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、本件発明14は、「41モル%以上50モル%以下」であるのに対し、甲1発明は、39.3モル%である点で相違する。 (エ)以上から、本件発明14と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素及び少なくとも一種のハロゲン(X)元素を含む硫化物固体電解質であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において累積体積が50体積%となる粒径であるメジアン径D50が、0.7μmであり、 前記リン(P)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、10.7モル%であり、 前記硫黄(S)元素の含有量が、前記硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、42.9モル%である、硫化物固体電解質。」 <相違点> 相違点4-1:本件発明14は、「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」であるのに対し、甲1発明は、「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」である点。 相違点4-2:リチウム(Li)元素の含有量が、硫化物固体電解質の構成元素の合計モル量を基準として、本件発明14は、「41モル%以上50モル%以下」であるのに対し、甲1発明は、39.3モル%である点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点4-1については、上記ア(イ)で検討したとおり、甲1発明における「式: (A×B)/C」の値は、本件発明14の「1.2以上2.5以下」の範囲に含まれているとはいえず、甲1発明の「式(1) X=BET比表面積(m2/g)×メディアン径;D50(μm)×密度(g/cm3)の値が12.4」であることは、本件発明14の「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」であることに相当しないから、相違点4-1は、実質的な相違点である。 したがって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明14は、甲1発明ではない。 (イ)相違点4-1に係る本件発明14の構成である「下記式: (A×B)/C[式中、Aは、BET比表面積(m2/g)を表し、Bは、真密度(g/cm3)を表し、Cは、CS値(m2/cm3)を表す。]の値が1.2以上2.5以下」とすることは、甲第1号証~甲第4号証のいずれにも記載されていないし、本件特許出願の優先日前において周知技術であったともいえない。 したがって、相違点4-1に係る本件発明14の構成は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明14は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (6)本件発明15~22について ア 本件発明15は、請求項14に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明16は、請求項14又は15に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明15、16と甲1発明とは、少なくとも上記相違点4-1の点で相違するから、上記(5)イで検討したのと同様に、本件発明15、16は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明17は、請求項14~16のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明18は、請求項17に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明19は、請求項14~18のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質の発明であり、本件発明17~19と甲1発明とは、少なくとも上記相違点4-1の点で相違するから、上記(5)イ(イ)で検討したのと同様に、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明20は、請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む電極合剤の発明であり、本件発明21は、請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含むスラリーの発明であり、本件発明22は、請求項14~19のいずれか一項に記載の硫化物固体電解質を含む固体電解質層を備える電池の発明であり、本件発明20~22と甲1発明とは、少なくとも上記相違点4-1の点で相違するから、上記(5)イで検討したのと同様に、本件発明20~22は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)小括 以上によれば、本件発明1~5、9~11、14~16、20~22は、甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1~5、9~11、14~16、20~22に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1には理由がない。 また、本件発明1~24は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1~24に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由2には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700326

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