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特許異議申立

2020-700804

組成物、積層体、包材、電池ケース用包材および電池

審判番号
2020-700804
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-562829外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年10月15日
審決日
2021年06月03日
公報発行日
2021年07月30日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第36条第4項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6680804号発明「組成物、積層体、包材、電池ケース用包材および電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6680804号の請求項に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 15項目
【理 由】

第1 手続の経緯

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特許第6680804号(請求項の数16。以下、「本件特許」という。)は、平成29年1月18日(優先権主張:平成28年1月21日、日本国)を国際出願日とする特許出願(特願2017-562829号)に係るものであって、令和2年3月24日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年4月15日である。)。

その後、令和2年10月15日に、本件特許の請求項1~16に係る特許に対して、特許異議申立人である小島早奈実(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

(1)特許異議申立以降の手続きの経緯

令和2年10月15日   特許異議申立書

令和3年 1月 4日付け 取消理由通知書

同年 3月 5日   意見書(特許権者)

(2)証拠方法

ア 申立人が提出した証拠方法

申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開平4-130169号公報
甲第2号証:再公表特許WO2014/123183号
甲第3号証:特開2015-72927号公報

イ 特許権者が提出した証拠方法

特許権者が令和3年2月18日付け意見書に添付して提出した証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:特開昭56-58861号公報
乙第2号証:国際公開2013/146605号
乙第3号証:再公表特許WO2009/119536号
乙第4号証:サンアプロ株式会社、熱塩基発生剤、[Online] 、印刷日:2021年3月5日、インターネット〈URL:https://www.san-apro.co.jp/products/detail03/ 〉、写し
乙第5号証:サンアプロ株式会社、「DBUおよびU-CAT SAシリーズ」、1999年8月31日、写し

第2 本件発明について

本件特許の請求項1~16に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明16」、また、併せて「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~16に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)および(ii)を満たす変性オレフィン重合体(A)と、
エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)と、
pKaが11以上である触媒(C)と、
続きを表示(全43行)
を含む組成物。
要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む
要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである
【請求項2】
40℃における動粘度が30~500,000cStである炭化水素系合成油(D)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重合体(a)が、プロピレンに由来する構成単位を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、前記炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して40~95モル%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合体(a)において、前記プロピレンに由来する構成単位を除く構成単位が、すべて前記炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位である、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭素数4~20のα-オレフィンが1-ブテンを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記単量体(b)に由来する構成単位の含有割合が、前記変性オレフィン重合体(A)100質量%に対して0.1~15質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記官能基がカルボキシル基または酸無水物基である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤(B)が、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
基材と、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物の硬化物からなる接着剤層とを含む積層体。
【請求項11】
内層と接着剤層と基材とをこの順で含む積層体を含み、
該接着剤層が、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物の硬化物からなる層である、包材。
【請求項12】
内層と内側接着剤層と基材と外側接着剤層と外層とをこの順で含む積層体を含み、
該内側接着剤層が、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物の硬化物からなる層である、電池ケース用包材。
【請求項13】
請求項12に記載の電池ケース用包材と、前記電池ケース用包材に包装される電解液とを備え、前記電池ケース用包材の内層の少なくとも一部が前記電解液に接触している、電池。
【請求項14】
炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)および(ii)を満たす変性オレフィン重合体(A)と、
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B1)と、
を含む組成物。
要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む
要件(ii):前記重合体(A)のJISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである
【請求項15】
40℃における動粘度が30~500,000cStである炭化水素系合成油(D)を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
基材と、請求項14または15に記載の組成物の硬化物からなる接着剤層とを含む積層体。」

第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要

1 取消理由通知の概要

当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由A(実施可能要件)

本件の発明の詳細な説明は、下記「第5 当審の判断」「1 取消理由について」「(1)取消理由A(実施可能要件)について」「ア 取消理由A(実施可能要件)の概要」に記載した点で、当業者が本件訂正前の請求項1~16に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件訂正前の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。

よって、本件の請求項1~16に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(2)取消理由B(新規性)

本件発明1、3~8、14は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許法第29条の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1、3~8、14に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し取り消すべきものである。

(3)取消理由C(進歩性)

本件発明1~16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 特許異議申立理由の概要

申立人が特許異議申立書でした申立理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由A(進歩性)

本件発明1~16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由B(進歩性)

本件発明1~16に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由C(サポート要件)

本件の請求項1~16の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記「第5 当審の判断」「2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について」「(2)申立理由C(サポート要件)について」「ア 申立理由C(サポート要件)の概要」に記載した点で、本件の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

よって、本件訂正前の請求項1~16に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

第4 本件明細書、各甲号証及び各乙号証に記載された事項

1 本件明細書に記載された事項

本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【技術分野】

【0001】

本発明は、組成物、積層体、包材、電池ケース用包材および電池に関する。

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、前記特許文献1~4に記載の接着剤から得られる接着剤層は、基材や被着体、例えば、アルミニウム箔やポリプロピレンフィルムなどとの接着強度が十分ではなく、低温で接着剤層を形成する際、特に低温(例:80℃以下)養生条件で接着剤を硬化させる際には、得られる接着剤層の接着強度が十分ではなかった。

【0006】

本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、基材や被着体との接着強度に優れる接着剤層、特に低温養生条件下でも接着強度に優れる接着剤層を形成することのできる組成物、および該接着剤層を含む積層体等を提供することを目的とする。

・・・

【発明の効果】

【0022】

本発明の一実施形態によれば、接着強度および耐薬品性(耐電解液性)に優れる接着剤層を得ることができ、特に、アルミニウム箔層とポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製フィルム層とを高い強度で接着することができる。

また、本発明の一実施形態によれば、接着強度に優れる接着剤層を低温養生条件下でも容易に形成することができ、耐久性に優れ、接着強度の低下が十分に抑制された積層体、包材および電池ケース用包材等を容易に、例えば、ドライラミネート法で形成することができる。」

(本b)「【0025】

1.1 変性オレフィン重合体(A)

前記重合体(A)は、前記要件(i)および(ii)を満たし、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)の、エポキシ基もしくはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)、または、エポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)による変性体である。

このような重合体(A)を用いることで初めて、接着強度および耐薬品性(耐電解液性)に優れる接着剤層を得ることができる。

重合体(A)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

【0026】

1.1.1 炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)

前記重合体(a)は、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含めば特に制限されず、炭素数4~20のα-オレフィンからなる重合体であってもよいし、炭素数4~20のα-オレフィンと炭素数2~3のα-オレフィンとを用いて得られる共重合体であってもよいし、必要により、α-オレフィン以外の不飽和単量体(以下「他の不飽和単量体」ともいう。)に由来する構成単位を含む重合体であってもよい。

前記重合体(a)が炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を有さない場合、該重合体と溶剤とを含む組成物の長期安定性が低下し、かつ、接着強度および耐薬品性との両立が困難となる。

【0027】

前記重合体(a)の原料として用いられるα-オレフィンは、1種単独でもよく、2種以上でもよい。つまり、炭素数4~20のα-オレフィンの単独重合体であってもよく、共重合体であってもよく、1種以上の炭素数4~20のα-オレフィンと1種以上の炭素数2~3のα-オレフィンとの共重合体(a1)であってもよい。

前記共重合体としては、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体が挙げられるが、ランダム共重合体が好ましい。

【0028】

前記炭素数4~20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられる。

【0029】

前記炭素数4~20のα-オレフィンは、溶剤への溶解性および強度に優れる重合体が得られる等の点から、好ましくは炭素数4~10の直鎖状のオレフィンであり、より好ましくは炭素数4~6の直鎖状のオレフィンであり、前記効果に特に優れる重合体が得られる等の点から、1-ブテンを含むことがさらに好ましく、特に好ましくは1-ブテンである。

【0030】

前記炭素数2~3のα-オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが挙げられ、溶剤への溶解性および強度に優れる重合体が得られる等の点から、プロピレンを含むことが好ましく、プロピレンが特に好ましい。

【0031】

前記他の不飽和単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ポリエン類、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエンなどの非共役ポリエン類が挙げられる。

【0032】

前記重合体(a)としては、溶剤への溶解性および強度に優れる重合体が得られる等の点から、前記共重合体(a1)が好ましく、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体がより好ましく、特に、プロピレンに由来する構成単位を除く構成単位が、すべて前記炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位である共重合体がより好ましく、前記炭素数4~20のα-オレフィンが1-ブテンを含むことがさらに好ましく、1-ブテンとプロピレンとの共重合体が特に好ましい。

【0033】

前記重合体(a)において、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、好ましくは重合体(a)を構成する全構成単位100モル%に対して、例えば5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、また、例えば100モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下である。

炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が、前記上限の規定を満たすと、より強度に優れる重合体を得ることができ、前記下限の規定を満たすと、より溶剤への溶解性に優れる重合体を得ることができる。

【0034】

前記重合体(a)において、炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくはプロピレン)に由来する構成単位の含有割合は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、好ましくは重合体(a)を構成する全構成単位100モル%に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、特に好ましくは65モル%以上であり、また、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。

炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が、前記上限の規定を満たすと、共重合体の融点(Tm)および融解熱(ΔH)を低下させることができ、前記下限の規定を満たすと、より強度に優れる重合体を得ることができる。

【0035】

前記重合体(a)は、α-オレフィンの重合体の製造に通常用いられる公知の固体状Ti触媒やメタロセン触媒などの存在下で、炭素数2~20のα-オレフィンを重合させることにより得ることができる。メタロセン触媒としては、例えば、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドなどのメタロセン化合物と、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物とを含む触媒が挙げられる。より具体的には、前記重合体(a)は、例えば、国際公開第2004/87775号に記載されている方法などによって得ることができる。

【0036】

前記重合体(a)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された、標準ポリスチレンで換算される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1×104以上であり、また、好ましくは1×107以下であり、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1以上であり、また、好ましくは3以下である。

MwやMw/Mnが前記下限の規定を満たすと、強度が十分に高い接着剤層を得ることができ、また、該接着剤層と基材や被着体との接着強度が良好となり、前記上限の規定を満たすと、溶剤への溶解性が良好な重合体が得られ、固化および析出が起こりにくい組成物を得ることができる。

本発明において、MwおよびMw/Mnは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。

【0037】

前記重合体(a)の融点(Tm)は、好ましくは120℃未満、より好ましくは100℃未満である。

Tmが前記範囲にあると、本組成物から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度に優れる接着剤層を得ることができる。

【0038】

本発明において、Tmは、JIS K 7122に従って、示差走査熱量測定(DSC測定)によって求められ、具体的には、10℃/minで30℃から180℃まで昇温後、3分間その温度で保持し、次いで、10℃/minで0℃まで降温し、3分間その温度で保持し、次いで、再度10℃/minで150℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に準じて求められる。

【0039】

前記重合体(a)の融解熱(ΔH)は、好ましくは0J/g以上、より好ましくは3J/g以上、特に好ましくは、5J/g以上であり、また、好ましくは50J/g以下、より好ましくは40J/g以下である。

ΔHが前記上限の規定を満たすと、本組成物から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度に優れる接着剤層を得ることができ、前記下限の規定を満たすと、強度に優れる接着剤層を得ることができる。

【0040】

本発明において、ΔHは、JIS K 7122に従って、示差走査熱量測定(DSC測定)によって求められ、具体的には、10℃/分の昇温過程で得られるサーモグラムのピーク面積から算出される。より具体的には、測定前の熱履歴をキャンセルする目的で、測定前に10℃/分で180℃まで昇温し、その温度で3分保持し、次いで10℃/分で0℃まで降温し、その温度で3分間保持した後に、ΔHを測定する。」

(本c)「【0041】

1.1.2 エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)およびエポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)

前記単量体(b)は、エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有すれば特に制限されず、また、前記単量体(b1)は、エポキシ基に対し反応性の官能基を有すれば特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができる。

前記エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基としては、活性水素を有する基が挙げられ、具体的には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、チオール基などが挙げられる。前記エポキシ基に対し反応性の官能基としては、活性水素を有する基が挙げられ、具体的には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、チオール基などが挙げられる。

前記単量体(b)および(b1)は、それぞれ1種類の反応性官能基を有していてもよく、2種以上の反応性官能基を有していてもよい。

【0042】

前記単量体(b)および(b1)としては、接着剤層を形成する際に、効率的に反応し、重合体(A)の基材(例:アルミニウム箔)や被着体(例:ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製フィルム)に対する親和性を高めて、接着剤層と基材や被着体との接着強度をより一層向上させることができること、また、得られる接着剤層の耐薬品性、耐電解液性を向上させることができること、等の点から、酸無水物基またはカルボキシル基を有する単量体(b)および(b1)が好ましい。

・・・

【0052】

前記単量体(b)および(b1)としては、接着剤層を形成する際に、効率的に反応し、重合体(A)の基材や被着体に対する親和性を高めて、接着剤層と基材や被着体との接着強度をより一層向上させることができること、また、得られる接着剤層の耐薬品性、耐電解液性を向上させることができること、等の点から、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物が好ましく、不飽和カルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。」

(本d)「【0053】

1.1.3 変性オレフィン重合体(A)の合成

重合体(A)を合成する方法としては、特に制限されず、炭素数2~20のα-オレフィンと前記単量体(b)または(b1)とを重合反応させてもよいが、前記単量体(b)または(b1)と重合体(a)とを反応させることが好ましく、具体的には、下記(1)~(4)の方法が挙げられる。

【0054】

(1)重合体(a)を溶媒に溶解し、単量体(b)または(b1)とラジカル重合開始剤とを添加して加熱、攪拌することにより、重合体(a)と単量体(b)または(b1)とを反応させる方法。

(2)重合体(a)を加熱溶融して、得られる溶融物に、単量体(b)または(b1)とラジカル重合開始剤とを添加し、攪拌することにより、重合体(a)と単量体(b)または(b1)とを反応させる方法。

(3)重合体(a)と、単量体(b)または(b1)とラジカル重合開始剤とを混合し、得られる混合物を押出機に供給して加熱混練しながら、重合体(a)と単量体(b)または(b1)とを反応させる方法。

(4)重合体(a)を、単量体(b)または(b1)とラジカル重合開始剤とを有機溶媒に溶解した溶液に浸漬させた後、重合体(a)が溶解しない温度まで加熱することにより、重合体(a)と単量体(b)または(b1)とを反応させる方法。

【0055】

前記反応に用いる重合体(a)、単量体(b)および単量体(b1)はそれぞれ、1種単独を使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

また、前記反応の際には、単量体(b)または(b1)とともに、前記官能基を有さない単量体を用いてもよいが、架橋剤(B)と効率的に反応できる重合体(A)が得られること、また、得られる接着剤層の耐薬品性、耐電解液性を向上させることができること等の点から、前記官能基を有さない単量体を用いないことが好ましい。

【0056】

単量体(b)または(b1)の配合割合は、単量体(b)または(b1)に由来する構成単位の含有割合が下記範囲となるよう配合することが好ましく、重合体(a)、単量体(b)および単量体(b1)の総量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。

単量体(b)または(b1)に由来する構成単位の含有割合が前記範囲にあると、接着剤層を形成する際に、効率的に反応し、重合体(A)の基材や被着体に対する親和性を高めて、接着剤層と基材や被着体との接着強度をより一層向上させることができ、また、得られる接着剤層の耐薬品性、耐電解液性を向上させることができる。

・・・

【0063】

重合体(A)を溶媒の存在下で合成する場合には、得られた重合体(A)を含む溶液(ワニス)を、そのまま本組成物の調製に使用してもよいし、該ワニスから重合体(A)を取り出し、本組成物の調製に使用してもよい。」

(本e)「【0064】

1.1.4 変性オレフィン重合体(A)の物性等

重合体(A)の、GPCによって測定され、標準ポリスチレンで換算されたMwは、好ましくは1×104以上、より好ましくは2×104以上、特に好ましくは3×104以上であり、また、好ましくは1×107以下、より好ましくは1×106以下、特に好ましくは5×105以下である。

重合体(A)のMwが、前記下限の規定を満たすと、強度が十分高く、また、基材や被着体との接着強度に優れる接着剤層を得ることができ、前記上限の規定を満たすと、溶剤への溶解性が良好であり、固化および析出が起こりにくい重合体(A)を得ることができる。特に、重合体(A)のMwが5×105以下であると、基材や被着体との接着強度に優れる接着剤層を得ることができる。

【0065】

前記重合体(A)の、Mw/Mnは、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、また、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下である。

Mw/Mnが前記下限の規定を満たすと、溶剤への溶解性が良好であり、固化および析出が起こりにくい重合体(A)を得ることができ、前記上限の規定を満たすと、強度が十分高く、また、基材や被着体との接着強度に優れる接着剤層を得ることができる。

【0066】

重合体(A)のTmは、好ましくは120℃未満、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは85℃以下であり、また、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。

重合体(A)のTmが前記上限の規定を満たすと、本組成物から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度の低下を防止することができ、前記下限の規定を満たすと、強度および耐久性に優れる接着剤層を得ることができる。

前記Tmを有する重合体(A)は、例えば、該重合体(A)中の炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合を前記範囲にし、かつ、要件(i)を満たすことで得ることができる。

【0067】

重合体(A)のΔHは、0J/g以上、好ましくは3J/g以上、より好ましくは5J/g以上であり、また、50J/g以下、好ましくは40J/g以下、より好ましくは35J/g以下である。

重合体(A)のΔHが前記上限の規定を満たすと、本組成物から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度に優れる接着剤層を得ることができ、前記下限の規定を満たすと、強度に優れる接着剤層を得ることができる。

前記重合体(A)のΔHが50J/gを超えると、得られる重合体(A)は、溶剤への溶解性が乏しくなり、固化および析出を起こしやすくなる。

前記ΔHを有する重合体(A)は、例えば、該重合体(A)中の炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合を前記範囲にし、かつ、要件(i)を満たすことで得ることができる。

【0068】

重合体(A)の50℃における半結晶化時間は、好ましくは100秒以上、より好ましくは150秒以上、さらに好ましくは200秒以上である。また、前記半結晶化時間には、実質的に結晶化が起こらない、または、半結晶化時間の値が大きすぎて求められない、すなわち半結晶化時間が無限大となるような場合も含まれる。

重合体(A)の半結晶化時間が前記下限の規定を満たすと、重合体(A)が基材や被着体の表面の凹凸に浸入しながら、または、浸入した後に、架橋剤(B)と反応することができ、アンカー効果によって、得られる接着剤層の接着強度をより一層向上させることができる。

前記半結晶化時間は、示差走査熱量計による等温結晶化測定によって求めることができ、具体的には下記実施例に記載の方法で求めることができる。

【0069】

重合体(A)の40℃における動粘度は、500,000cStを超えることが好ましい。ここで、動粘度が500,000cStを超える場合には、流動性が低く動粘度が測定できないような場合が含まれる。

本発明において、40℃における動粘度は、ASTM D 445に基づいて測定する。

【0070】

重合体(A)における、単量体(b)または(b1)に由来する構成単位の含有割合(変性量)は、変性オレフィン重合体(A)100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。

変性量が前記範囲にあると、接着剤層を形成する際に重合体(A)が効率的に反応し、重合体(A)の基材や被着体に対する親和性を高めて、接着剤層と基材や被着体との接着強度をより一層向上させることができ、また、得られる接着剤層の耐薬品性、耐電解液性を向上させることができる。

【0071】

本発明における変性量は、1H-NMRにより測定することができ、具体的には、以下の条件で測定することができる。

すなわち、ECX400型核磁気共鳴装置(日本電子(株)製)を用い、溶媒は重水素化オルトジクロロベンゼンとし、試料濃度20mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は1H(400MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は5.12μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は7.0秒、積算回数は500回以上とする条件である。

基準のケミカルシフトは、テトラメチルシランの水素に由来するピークを0ppmとするが、例えば、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素に由来するピークを7.10ppmとすることでも同様の結果を得ることができる。

単量体(b)または(b1)に由来する1Hなどのピークは、常法によりアサインできる。

【0072】

なお、単量体(b)または(b1)として、不飽和カルボン酸および酸無水物などを用いた場合には、重合体(A)に導入された官能基量の目安となる量として、例えば、酸価を用いることも可能である。

この場合、重合体(A)の酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.5mgKOH/g以上であり、また、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、特に好ましくは10mgKOH/g以下である。

酸価が前記範囲にあると、接着剤層を形成する際に重合体(A)が効率的に反応し、重合体(A)の基材や被着体に対する親和性を高めて、接着剤層と基材や被着体との接着強度をより一層向上させることができ、また、得られる接着剤層の耐薬品性、耐電解液性を向上させることができる。

【0073】

前記酸価の測定方法としては、以下の方法、JIS K-2501-2003に準ずる以下の方法が挙げられる。

重合体(A)約10gを正確に測り取り、200mLのトールビーカーに投入する。そこに滴定溶剤として、キシレンとジメチルホルムアミドとを1:1(体積比)で混合してなる混合溶媒を150mL添加する。指示薬として1w/v%のフェノールフタレインエタノール溶液(和光純薬工業(株)製)を数滴加え、液温を80℃に加熱して、重合体(A)を溶解させる。液温が80℃で一定になった後、0.1mol/Lの水酸化カリウムの2-プロパノール溶液(和光純薬工業(株)製)を用いて滴定を行い、滴定量から酸価を求める。

【0074】

具体的には、下記式から酸価を算出することができる。なお、本発明において、前記酸価は、前記滴定を3回繰り返した平均値である。

酸価(mgKOH/g)=(EP1-BL1)×FA1×C1/SIZE

該式において、「EP1」は滴定量(mL)、「BL1」はブランク値(mL)、「FA1」は滴定液のファクター(1.00)、「C1」は濃度換算値(5.611mg/mL:0.1mol/LのKOHの2-プロパノール溶液1mL中の水酸化カリウム相当量)、「SIZE」は重合体(A)の採取量(g)を表す。

【0075】

前記重合体(A)の配合量は、本組成物の不揮発分(溶媒以外の成分)100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。

重合体(A)の配合量が前記範囲にあると、接着強度および耐薬品性(耐電解液性)に優れる接着剤層を得ることができる。」

(本f)「【0076】

1.2 架橋剤(B)および(B1)

本組成物1には、エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)が用いられ、本組成物2には、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B1)が用いられる。架橋剤(B)は、前記重合体(A)とは異なる化合物である。

本組成物1では、架橋剤(B)と共に、重合体(A)および触媒(C)を用いるため、硬化時の体積変化が小さく、低温で硬化可能な組成物を得ることができ、特に、接着強度に優れる接着剤層を得ることができる。一方、本組成物2では、架橋剤(B)として、架橋剤(B1)を用いるため、触媒(C)を用いなくても、前記効果を奏する組成物を得る

ことができる。

・・・

【0085】

前記オキサゾリン化合物は、1分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する架橋可能な化合物である。このようなオキサゾリン化合物としては、例えば、オキサゾリン基含有モノマーの重合体、オキサゾリン基含有モノマーと他のモノマーとの共重合体などのオキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。

・・・

【0089】

前記エポキシ化合物のエポキシ当量およびオキサゾリン化合物のオキサゾリン当量は、より接着強度および耐薬品性、耐電解液性に優れる接着剤層を得ることができる等の点から、好ましくは100g/eq以上、より好ましくは125g/eq以上であり、また、好ましくは1,600g/eq以下、より好ましくは500g/eq以下である。

前記当量は、JIS K7236に基づいて測定することができる。

【0090】

前記架橋剤(B)および(B1)の配合量は、架橋剤(B)および(B1)中のエポキシ基およびオキサゾリン基当量/重合体(A)中のエポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基の当量が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上となり、また、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となるように配合することが望ましい。

架橋剤(B)および(B1)の配合量が前記範囲にあると、より接着強度および耐薬品性、耐電解液性に優れる接着剤層を得ることができる。」

(本g)「【0091】

1.3 触媒(C)

本組成物1には、pKaが11以上である触媒(C)を用いる。

このような触媒(C)を用いることで、架橋剤(B)として、架橋剤(B1)を用いなくても、低温でも効率よく架橋反応を促進でき、耐薬品性、耐電解液性に優れる接着剤層を形成でき、接着強度に優れる、特に、アルミニウム箔層とポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製フィルム層とを高い強度で接着することができる接着剤層を得ることができる。

触媒(C)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

【0092】

前記触媒(C)としては、pKaが11以上の化合物であれば特に制限されないが、架橋剤(B)の架橋反応を促進できる化合物であることが好ましく、このような化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,6-ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン-5等の強塩基性第三級アミン、ホスファゼン塩基を有するホスファゼン触媒が挙げられ、DBU、ホスファゼン触媒が好ましい。

【0093】

なお、前記pKaは、25℃、水溶液中における酸解離定数のことである。また、例えば、リン酸には、3つのpKa、つまり、pKa1、pKa2およびpKa3があるが、本発明におけるpKaは、pKa1、つまり、第一酸解離定数のことをいう。

【0094】

前記触媒(C)の配合量は、本組成物の不揮発分(溶媒以外の成分)100質量%に対し、好ましくは1ppm以上、より好ましくは100ppm以上であり、また、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。

触媒(C)の配合量が前記範囲にあると、硬化速度に優れる組成物が得られ、また、耐薬品性、耐電解液性および接着強度に優れる接着剤層を得ることができる。」

(本h)「【0095】

1.4 炭化水素系合成油(D)

本組成物は、接着強度の高い接着剤層を得ることができる等の点から、前記成分に加えて、さらに、炭化水素系合成油(D)を含んでもよい。

炭化水素系合成油(D)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。

【0096】

前記炭化水素系合成油(D)としては、例えば、炭素数2~20のオレフィンの重合体が挙げられる。その中でも、好ましくは、炭素数2~20のオレフィンを単独重合させて得られるオリゴマー、および、2種以上のこれらのオレフィンを共重合させて得られるオリゴマーが挙げられる。

該炭素数2~20のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、1-デセンおよび1-ドデセンが挙げられる。

【0097】

前記炭化水素系合成油(D)としては、エチレンに由来する構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体を好適に用いることができる。この場合、エチレンに由来する構成単位量は、エチレンに由来する構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位との合計100モル%に対し、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上であり、また、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下である。

【0098】

炭化水素系合成油(D)は、40℃における動粘度が、30cSt以上、好ましくは300cSt以上、より好ましくは5,000cSt以上であり、また、500,000cSt以下、好ましくは400,000cSt以下、さらに好ましくは300,000cSt以下である。

炭化水素系合成油(D)の40℃における動粘度が前記範囲にあると、接着強度の高い接着剤層を得ることができる。

【0099】

本組成物に炭化水素系合成油(D)を配合する場合、該炭化水素系合成油(D)の配合割合は、重合体(A)と炭化水素系合成油(D)との合計100質量%に対し、好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下である。

炭化水素系合成油(D)の配合量が前記範囲にあると、強度および接着強度に優れる接着剤層を得ることができる。」

(本i)「【0100】

1.5 本組成物の調製方法

本組成物1は、前記重合体(A)、架橋剤(B)、触媒(C)および必要により炭化水素系合成油(D)を混合することで、また、本組成物2は、前記重合体(A)、架橋剤(B1)および必要により炭化水素系合成油(D)を混合することで調製することができる。

【0101】

また、本組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、重合体(a)(未変性体)、硬化触媒、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、可塑剤、界面活性剤、酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛、カーボンブラックなどの顔料、揺変剤、増粘剤、ロジン樹脂、テルペン樹脂などの粘着付与剤、表面調整剤、沈降防止剤、耐候剤、顔料分散剤、帯電防止剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの、前記(A)~(D)成分以外の添加剤を配合してもよい。

【0102】

さらに、本組成物は、加工性向上の点から、前記成分に加えて溶媒を配合した、ワニスであってもよい。

該溶媒としては、重合体(A)の合成の際に用い得る溶媒と同様の溶媒等が挙げられ、好ましくは、トルエン、メチルシクロヘキサン/メチルイソブチルケトン混合溶媒、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン混合溶媒、メチルシクロヘキサン/酢酸エチル混合溶媒、シクロヘキサン/メチルエチルケトン混合溶媒、シクロヘキサン/酢酸エチル混合溶媒、セロソルブ/シクロヘキサノン混合溶媒が挙げられる。なお、水を分散媒として用いることもできる。

【0103】

前記溶媒は、ワニス100質量%中における不揮発分の含有割合が、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上となり、また、例えば50質量%以下、好ましくは40質量%以下となるように配合することが望ましい。

【0104】

本組成物は、ドライラミネート用接着剤、ホットメルト接着剤、光学透明両面テープ用組成物として用いるのに好適である。」

(本j)「【実施例】

【0138】

以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

【0139】

1.重合体の物性

[プロピレン、エチレンおよび1-ブテンに由来する構成単位の含有割合]

下記製造例で得られた重合体中のプロピレン、エチレンおよび1-ブテンそれぞれに由来する構成単位の含有割合を、13C-NMRを利用して求めた。

【0140】

[融点(Tm)、融解熱(ΔH)]

示差走査熱量計(TA Instruments社製;DSC-Q1000)を用いて、下記製造例で得られた重合体の融点(Tm)および融解熱(ΔH)を求めた。具体的な方法は、前述のとおりである。

【0141】

[40℃における動粘度]

下記製造例で得られた重合体の40℃における動粘度は、ASTM D 445に基づいて測定した。

【0142】

[重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)]

重量平均分子量(Mw)および分子量分布(分散度)(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(島津製作所社製;LC-10 series)を用いて、以下の条件で測定した。得られた測定結果から、単分散標準ポリスチレンにより作成した検量線を用いて、下記製造例で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。

【0143】

・検出器: (株)島津製作所製;C-R4A
・カラム: TSKG 6000H-TSKG 4000H-TSKG 3000H-TSKG 2000H(いずれも東ソー(株)製)
・移動相: テトラヒドロフラン
・温度: 40℃
・流量: 0.8mL/min

【0144】

[変性量]

下記製造例で得られた重合体中の無水マレイン酸の含有割合(変性量)を1H-NMRによる測定から求めた。具体的な方法は、前述のとおりである。

【0145】

[酸価]

下記製造例で得られた重合体の酸価は、JIS K-2501-2003に準じて測定した。具体的な方法は、前述のとおりである。

【0146】

[無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の半結晶化時間]

下記製造例で得られた重合体5mg程度を専用アルミニウムパンに詰め、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製;Diamond DSC)を用い、30℃から150℃まで320℃/minで昇温し、150℃で5分間保持した後、50℃まで320℃/minで降温し、その温度で保持した時に得られるDSC曲線を解析した。具体的には、DSC熱量曲線とベースラインとの間の面積から全熱量を算出し、50℃に到達した時刻を基準(t=0)として、算出した全熱量の50%に到達した時間を半結晶化時間とした。

【0147】

2.重合体の合成

[製造例1:プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]

充分に窒素置換した2Lのオートクレーブに、ヘキサンを900mLおよび1-ブテンを75g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにした。次いで、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、および、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子換算で0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合した。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマー(共重合体(1))を回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。

【0148】

得られた共重合体(1)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、重量平均分子量(Mw)は330,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は78モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合は22モル%であった。

【0149】

[製造例2:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(A-1)の合成]

前記共重合体(1)3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、共重合体(1)をトルエンに溶解させた。さらに、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間攪拌した。冷却後、多量のアセトンを投入して、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(A-1)を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。

【0150】

得られた共重合体(A-1)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、50℃での半結晶化時間は276秒、重量平均分子量(Mw)は110,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、無水マレイン酸の変性量は、共重合体(A-1)100質量%に対し1質量%、酸価は6mgKOH/gであった。

【0151】

[製造例3:エチレン/プロピレン共重合体(D-1)の合成]

充分に窒素置換した攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1Lを加え、96mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500mL/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として16mmol/lに調整したVO(OC2H5)Cl2のヘキサン溶液を500mL/h、および、ヘキサン500mL/hを連続的に供給した。一方、重合反応器上部から、重合反応器内の重合液が常に1Lになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンガスを27L/h、プロピレンガスを26L/h、水素ガスを100L/hの量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより、35℃で実施した。得られた重合溶液を塩酸で脱灰した後、大量のメタノールに投入して沈殿を析出させた後、沈殿物を130℃で24時間減圧乾燥した。これにより、エチレン/プロピレン共重合体(D-1)を得た。

【0152】

得られた共重合体(D-1)におけるエチレンに由来する構成単位の含有割合は56モル%、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は44モル%であった。また、共重合体(D-1)の、重量平均分子量(Mw)は14,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9、40℃における動粘度は37,500cStであった。

【0153】

[製造例4:無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(A-2)の合成]

プロピレンに由来する構成単位の含有割合が67モル%、重量平均分子量(Mw)330,000であるプロピレン/エチレン共重合体3kgを10Lのトルエンに加え、系内の窒素置換を1時間実施した。系の温度を145℃に上げ、プロピレン/エチレン共重合体をトルエンに完全に溶解させた後、系の撹拌を継続しながら、無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを別々の供給口から4時間かけて系に供給し、さらに後反応として145℃で2時間撹拌を続けた後、系を室温まで冷却した。冷却後の反応液の一部を採取し、大量のアセトン中に投入することにより、クラム状(くず状)の無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体を沈殿させた。得られた沈殿物を採取し、アセトンで繰返し洗浄した後、常温で2昼夜真空乾燥することにより、精製された無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(A-2)を得た。

【0154】

得られた共重合体(A-2)の無水マレイン酸の変性量は、共重合体(A-2)100質量%に対し1.5質量%であった。また、融解熱(ΔH)は1.6J/g、重量平均分子量(Mw)は140,000、酸価は9mgKOH/gであった。

【0155】

3.架橋剤(B)および触媒(C)

以下の実施例および比較例では、下記表1に示す架橋剤(B)を用い、下記表2に示す触媒(C)を用いた。

【0156】

【表1】

【0157】

【表2】

【0158】

4.複合フィルム(Al箔/接着剤層/CPP積層体)の作製

[実施例1]

製造例2で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(A-1)80gと、製造例3で製造したエチレン/プロピレン共重合体(D-1)20gとを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(1)を調製した。

【0159】

得られた変性オレフィン重合体ワニス(1)49.4gと、予め架橋剤(B-1)1gを9gの酢酸エチルに溶解させた溶液1.3gとを混合し、ラミネート用接着剤組成物を調製した。

【0160】

次いで、ラミネート用接着剤組成物をトルエンで希釈し、バーコーターを用いて、得られる塗膜付箔の坪量が3.3g/m2になるように、厚さ40μmのアルミニウム箔(Al箔、表面未処理)のツヤ面上に常温下において塗布し、溶媒を揮散させることで、塗膜付箔を得た。その後、得られた塗膜付箔の塗膜面と、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、片面コロナ処理品)におけるコロナ処理面とを貼り合わせ、60℃で3日間養生することにより、前記塗膜を硬化させて、Al箔およびCPP間を接着させることで、Al箔、接着剤層およびCPPがこの順で積層した積層体(複合フィルム)を得た。

【0161】

[実施例2]

架橋剤(B-1)を架橋剤(B-2)に変更した以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0162】

[実施例3]

架橋剤(B-1)を架橋剤(B-3)に変更した以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0163】

[実施例4]

架橋剤(B-1)を架橋剤(B-4)に変更した以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0164】

[実施例5]

製造例2で製造した共重合体(A-1)100gを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(2)を調製した。得られた変性オレフィン重合体ワニス(2)49.4gを用いた以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0165】

[比較例1]

架橋剤(B-1)を架橋剤(B-5)に変更した以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0166】

[比較例2]

架橋剤(B-1)を架橋剤(B-6)に変更した以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0167】

[比較例3]

架橋剤(B-1)を架橋剤(B-7)に変更した以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0168】

[比較例4]

架橋剤(B-1)を架橋剤(B-8)に変更した以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0169】

[比較例5]

架橋剤(B-1)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0170】

[比較例6]

製造例4で製造した共重合体(A-2)100gを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(3)を調製した。得られた変性オレフィン重合体ワニス(3)49.4gを用いた以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0171】

[実施例6]

実施例1で得られた変性オレフィン重合体ワニス(1)49.4gと、予め架橋剤(B-5)1gを9gの酢酸エチルに溶解させた溶液1.3gと、予め触媒(C-6)0.1gを19.9gの酢酸エチルに溶解させた溶液1gとを混合し、ラミネート用接着剤組成物を調製した。得られたラミネート用接着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

【0172】

[実施例7]

実施例1の変性オレフィン重合体ワニス(1)の使用量49.4gを49.7gに変更し、予め架橋剤(B-5)1gを9gの酢酸エチルに溶解させた溶液1.3gを、予め架橋剤(B-3)1gを9gの酢酸エチルに溶解させた溶液0.7gに変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0173】

[実施例8]

架橋剤(B-5)を架橋剤(B-3)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0174】

[実施例9]

実施例1の変性オレフィン重合体ワニス(1)の使用量49.4gを45.1gに変更し、予め架橋剤(B-5)1gを9gの酢酸エチルに溶解させた溶液1.3gを、予め架橋剤(B-3)1gを9gの酢酸エチルに溶解させた溶液9.8gに変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0175】

[実施例10]

架橋剤(B-5)を架橋剤(B-4)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0176】

[実施例11]

製造例2で製造した共重合体(A-1)100gを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(2)を調製した。得られた変性オレフィン重合体ワニス(2)49.4gを用いた以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0177】

[比較例7]

触媒(C-6)を触媒(C-1)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0178】

[比較例8]

触媒(C-6)を触媒(C-2)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0179】

[比較例9]

触媒(C-6)を触媒(C-3)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0180】

[比較例10]

触媒(C-6)を触媒(C-4)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0181】

[比較例11]

触媒(C-6)を触媒(C-5)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0182】

[比較例12]

架橋剤(B-5)を架橋剤(B-6)に変更し、触媒(C-6)を触媒(C-1)に変更した以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0183】

[比較例13]

実施例1の変性オレフィン重合体ワニス(1)の使用量49.4gを50gに変更し、エポキシ化合物(B-5)を使用しなかった以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0184】

[比較例14]

製造例4で製造した共重合体(A-2)100gを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(3)を調製した。得られた変性オレフィン重合体ワニス(3)49.4gを用いた以外は実施例6と同様にして、複合フィルムを得た。

【0185】

5.評価

[接着強度(常態強度)]

実施例1~11および比較例1~14の複合フィルムを、長さ60mm、幅15mmの大きさに切り出して試験片を作製し、この試験片について、万能引張測定装置を用いて、クロスヘッド速度50mm/分にて、180°剥離試験を実施して、複合フィルムの初期接着強度を測定した。その結果を表3および4に示す。なお、測定した初期接着強度に応じて、以下の基準にて評価を行った。

(評価基準)

◎: 11N/15mm以上

〇: 8N/15mm以上、11N/15mm未満

△: 6N/15mm以上、8N/15mm未満

×: 6N/15mm未満

【0186】

【表3】

【0187】

【表4】

【0188】

なお、表3および4中の樹脂(A)、化合物(B)および油(D)の数値は、各組成物中の不揮発分(樹脂(A)+化合物(B)+油(D))100質量%に対する各成分の含有割合を示す。また、表4中の触媒(C)の数値は、各組成物中の不揮発分(樹脂(A)+化合物(B)+油(D))100質量%に対する触媒(C)の含有割合を示す。

【0189】

前記実施例6~11で得られた組成物において、エポキシ化合物(B)の代わりにオキサゾリン化合物を用いても、前記と同様の効果が得られると考えられる。」

2 各甲号証に記載された事項

(1)甲第1号証に記載された事項

甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「(1)α,β-不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物を0.1ないし15重量%グラフト共重合したプロピレン-α-オレフィン共重合体(1)と、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する化合物または樹脂(2)を主たる構成要素とし、(1)のカルボキシル基または酸無水物基と、(2)のエポキシ基の架橋反応によって硬化皮膜を形成させることを特徴とするポリプロピレン系樹脂用コーティング組成物。

(2)α,β-不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物を0.1ないし15重量%グラフト共重合したプロピレン-α-オレフィン共重合体(1)と、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する化合物、または樹脂(2)との重量部比が100:0.5~50である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂用コーティング組成物。

(3)α,β-不飽和ジカルボン酸、またはその酸無水物を0.1ないし15重量%グラフト共重合したプロピレン-α-オレフィン共重合体の分子量が3000ないし35000である請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂用コーティング組成物。」(特許請求の範囲)

(甲1b)「〔産業上の利用分野〕

本発明は、ポリプロピレン系樹脂成形品の表面を塗装する場合や、またポリプロピレン系樹脂に他の基材を接着する場合に密着力を向上させる目的で使用するコーティング組成物に関する。

〔従来の技術〕

ポリプロピレン系樹脂は優れた性質を持ち価格が安いことから、家庭電化製品や自動車部品等に多量に使用されている。しかし、ポリプロピレン系樹脂は無極性であるため、塗装や接着が困難であるという欠点を有している。

・・・

〔発明が解決しようとする課題〕

以上のようにポリプロピレンに塗装や接着を行うためには、プライマー処理を施すことが現実的ではあるが、いずれの技術も欠点を有しており、耐ガソリン性等の厳しい性能が要求される自動車用途に適したプライマー組成物は無かった。

また、本発明者らは既にプロピレン-ブテン共重合体にα,β-不飽和ジカルボン酸またはその誘導体をグラフト共重合したコーティング組成物を提案しているが(90年9月5日出願)厳しい性能が要求される用途ではまだ耐溶剤性,耐ガソリン性に改善の余地がある。

本発明は、このような問題点を解決し、ポリプロピレン系樹脂の塗装性や接着性を改善できるコーティング組成物を提供することを目的としている。」(第1頁右欄第8行~第2頁左下欄第3行)

(甲1c)「〔課題を解決するための手段〕

前記目的を達成するため種々研究の結果、本発明に到達した。すなわち、α,β-不飽和ジカルボン酸、またはその酸無水物を0.1ないし15重量%、グラフト共重合したプロピレン-α-オレフィン共重合体(1)と、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する化合物または樹脂(2)を主たる構成要素とし、(1)のカルボキシル基または酸無水物基と、(2)のエポキシ基の架橋反応によって硬化皮膜を形成させることを特徴とするポリプロピレン系樹脂用コーティング組成物は、ポリプロピレン系樹脂に対し優れた付着性,外観,耐衝撃性,耐湿性,耐水性に加えて良好な耐ガソリン性を示すことを見い出し前記目的は達成された。」(第2頁左下欄第4~18行)

(甲1d)「本発明のコーティング組成物の原料であるプロピレン-α-オレフィン共重合体は、ブロピレンを主成分にα-オレフィンを共重合したものであり、ブロック共重合よりランダム共重合が望ましい。α-オレフィン成分としてはエチレン,1-ブテン,1-ペンテン,1-ヘキセン,1-ヘプテン,1-オクテン,4-メチル-1-ペンテン等が挙げられ、これらを2種類以上共重合してもよい。これらの中でも樹脂の物性の点でエチレンまたは1-ブテンが好ましい。また、プロピレン成分の割合は55ないし85モル%が好ましく、55モル%より少ないとポリプロピレンに対する密着性が劣り、85モル%より多いと得られたコーティング組成物の溶剤に対する溶解性が悪くなる。

プロピレン-α-オレフィン共重合体にグラフト共重合するα,β-不飽和ジカルボン酸、またはその酸無水物とは、例えばマレイン酸,フマル酸,イタコン酸,シトラコン酸,アリルコハク酸,メサコン酸,アコニット酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。α,β-不飽和ジカルボン酸、またはその酸無水物をグラフト共重合する量は0.1ないし15重量%が好ましく、0.1重量%以下では得られた樹脂の上塗り塗料に対する密着性が悪く、またエポキシ樹脂との架橋による効果が少なくなり、15重量%以上ではポリプロピレンに対する密着性が悪くなるばかりかグラフト効率が悪くなって不経済である。特に好ましくは、1ないし10重量%である。また、α,β-不飽和ジカルボン酸または、その酸無水物をグラフト共重合した樹脂の分子量は、3000ないし35000が好ましく、3000以下では凝縮力が不足して密着性が悪くなり、35000以上では溶剤に対する溶解性や他樹脂との相溶性が悪くなって好ましくない。分子量をこの範囲にするためには、原料の分子量やグラフト反応を行なうときの条件をコントロールすことで可能である。なお、ここで分子量は重量平均分子量のことをいい、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定することができる。」(第2頁左下欄第19行~第3頁左上欄第19行)

(甲1e)「プロピレン-α-オレフィン共重合体にα,β-不飽和ジカルボン酸、またはその酸無水物をグラフト共重合する方法は、プロピレン-α-オレフィン共重合体をキシレン等の有機溶剤に加熱溶解させ、ラジカル発生剤の存在下に反応させる方法(溶液法)や、プロピレン-α-オレフィン共重合体を融点以上に加熱溶融させてラジカル発生剤の存在下で反応させる方法(溶融法)等、公知の方法によって行うことができる。溶液法では有機溶剤として、トルエン,キシレン等の芳香族系溶剤を使うことが好ましく、反応温度は100ないし180℃で行ない、この方法は副反応が少なく、均一なグラフト共重合体を得ることができるという特徴がある。溶融法の場合にはバンバリーミキサー,ニーダー,押出し機等を使用し、原料樹脂の融点以上300℃以下の温度で反応させ、操作が簡単である上短時間で反応を終了させることができる。

反応に用いるラジカル発生剤は、公知のものの中から適宜選択することができるが、特に有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、例えばベンゾイルパーオキサイド,ジクミルパーオキサイド,ラウロイルパーオキサイド,2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3,ジ-t-ブチルパーオキサイド,t-ブチルハイドロパーオキサイド,t-ブチルパーオキシベンゾエート,クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。」(第3頁左上欄最終行~左下欄第8行)

(甲1f)「本発明に用いられる1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する化合物または樹脂としては、ポリオレフィンと相溶性の良いものが好ましく、ビスフェノールA型や多価アルコールのグリシジルエーテル型、例えばエチレングリコールグリシジルエーテル,プロピレングリコールグリシジルエーテル,グリセロールボリグリシジルエーテル,ソルビトールボリグリシジルエーテル等があり、その他オレフィン類を過酸で酸化させて得られる環状脂肪族エポキシ樹脂や、グリシジルメタアクリレートの共重合体等1分子に2個以上のエポキシ基を有するものであれば使用するこどができる。」(第3頁左下欄第9行~右下欄第1行)

(甲1g)「α,β-不飽和ジカルボン酸、またはその酸無水物をグラフト共重合したプロピレン-α-オレフィン共重合体(1)と1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する化合物、または樹脂(2)の配合比は、重量比で100:0.5~50の範囲が本発明の実施上望ましい。(2)が0.5以下では耐ガソリン性が十分でなく、50を越えるとポリプロピレンに対する密着性が低下する。さらに、エポキシ基とカルボキシル基または酸無水物基との架橋反応を促進するために、第3級アミン類、例えばピリジン,イソキノリン,キノリン,N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン,トリエチルアミン,ベンジルジメチルアミン,1,8-ジアゾ-ビシクロ-ウンデセン-7等の触媒を添加するのもよく、(1)に対して0.05重量%~5重量%の範囲で添加することができる。」(第3頁右下欄第2~17行)

(甲1h)「本発明において得られた樹脂は、ポリプロピレンに対し強固な密着性を示す上に従来のものと比べ、耐溶剤性,耐ガソリン性が優れている。また、耐候性,有機溶剤に対する溶解性,保存安定性,スプレー適性,他樹脂との相溶性も良好である。このため、ポリプロピレン系樹脂成形品の塗装や、接着の際のプライマーとして好適である。・・・

・・・

〔作用〕

本発明のポリプロピレン系樹脂用コーティング組成物は、プロピレン-α-オレフィン共重合体にα,β-不飽和ジカルボン酸、またはその無水物をグラフト共重合したもの(1)と、1分子当り2個以上のエポキシ基を有する化合物、または樹脂(2)を主たる構成要素としているので、有機溶剤溶液としたときの液状が良く塗布性が優れており、またポリプロピレン系樹脂に対して優れた密着性を示すほか上塗り塗料等の極性樹脂にも密着性を示す。さらに、(1)のカルボキシル基または酸無水物基と、(2)のエポキシ基との架橋反応により硬化皮膜を形成させるので、塗布・乾燥後の皮膜は耐溶剤性や耐ガソリン性が極めて優れている。」(第3頁右下欄第18行~第4頁右上欄第17行)

(甲1i)「〔実施例〕

以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。

製造例1

攪拌機,冷却管および滴下ロートを取り付けた三口フラスコ中で、プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000) 100gを、キシレン 400gに加熱溶解させた後、系の温度を140℃に保って攪拌しながら、無水マレイン酸10gとジクミルパーオキサイド2gをそれぞれ2時間かけて滴下させ、その後3時間反応させた。反応後室温まで冷却した後、反応物を大量のアセトン中に投入して精製し、グラフト量 5.8%のグラフト共重合体を得た。GPCにより分子量を測定すると、重量平均分子量は27000であった。これをトルエンに20重量%の濃度で溶解した。」(第4頁右上欄第18行~左下欄第15行)

(甲1j)「実施例1

製造例1で得た組成物のトルエン溶液 350gに、エポキシ樹脂(エピコート828,油化シェルエポキシ製)を15g配合した。これを酸化チタン30gと混合し、サンドミルにて1時間顔料を分散させた後、トルエンで適当な粘度に希釈して、トルエンで表面の脱脂を行なったポリプロピレン板にスプレー塗布した。約10分間室温で放置乾燥した後、二液型ウレタン系塗料をスプレー塗布し、10分間室温で放置した。次に、熱風乾燥器を用いて80℃で30分間強制乾燥した。得られた塗装板を室温で7日間放置した後、塗膜の試験を行った。結果を第1表に示した。」(第4頁右下欄第14行~第5頁左上欄第6行)

(甲1k)「実施例2

製造例1で得た組成物のトルエン溶液 350gに、エポキシ樹脂(デナコールEX-611,ナガセ化成製)10gを配合した。これを酸化チタン30gと混合し、サンドミルにて1時間顔料を分散させた。反応促進剤として、アミン系触媒(U-Cat-SA-No102,サンアプロ製)の10重量%キシレン溶液7gを加えた。これを実施例1と同様な操作を行い塗装板を得た。試験の結果を第1表に示した。」(第5頁左上欄第7~16行)

(甲1l)「第1表

なお、試験方法は次の通りである。

塗膜の外観

塗膜の外観を目視にて観察した。

付着性

塗膜表面にカッターで素地に達する切れ目を入れて1mm間隔で100個のゴバン目を作り、その上にセロハン粘着テープを密着させて180度方向に引き剥し、残存するゴバン目の数を数えた。

・・・

〔発明の効果〕

本発明において得られた樹脂は耐溶剤性,耐ガソリン性が優れているほか、ポリプロピレンに対する密着性、有機溶剤に対する溶解性,保存安定性、スプレー適性,他樹脂との相溶性も良好である。このため、ポリプロピレン系樹脂成形品の塗装や接着の際のプライマーとして好適であり、基材と上塗りの両方に強力な付着性を示し、特に自動車用途等厳しい性能が要求される場合でも、諸物性に優れた塗膜が得られる。さらに、本発明の樹脂を用いて塗料を調製しプライマー無しでポリプロピレン系樹脂に塗装することも可能であり、また、ポリプロピレンフィルムに対するコーティング剤としても適用可能である。」(第5頁左下欄第4行~第6頁左上欄第6行)

(2)甲第2号証に記載された事項

申立人は、甲第2号証として、再公表特許WO2014/123183号公報を提出したが、当審では、当該公報の国際公開公報で同じ内容であり、本件特許に係る出願の優先日前の平成26年8月14日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されている国際公開2014/123183号(以下、国際公開2014/123183号を「甲第2号証」という。)を引用した。そして、甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「[書類名]請求の範囲

[請求項1]

炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、

ポリイソシアネート(B)と

を含むことを特徴とする、接着剤。

[請求項2]

前記重合体が、プロピレンに由来する構成単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着剤。

[請求項3]

前記プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、前記炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、40モル%以上、95モル%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の接着剤。

[請求項4]

前記重合体において、前記プロピレンに由来する構成単位を除く構成単位が、すべて前記炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位であることを特徴とする、請求項2に記載の接着剤。

[請求項5]

前記炭素数4~20のα-オレフィンが、1-ブテンであることを特徴とする、請求項4に記載の接着剤。

[請求項6]

前記単量体の含有割合が、前記変性オレフィン重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤。

[請求項7]

前記官能基が、カルボキシル基および/または酸無水物基であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤。

[請求項8]

炭化水素系合成油をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着剤。

[請求項9]

基材と、

前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層と

を備え、

前記接着剤層は、

炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、

ポリイソシアネート(B)と

を含む組成物を含むコーティング剤からなることを特徴とする、積層体。

[請求項10]

前記接着剤層は、前記基材の一方面に直接積層されていることを特徴とする、請求項9に記載の積層体。

[請求項11]

前記基材の一方側に前記接着剤層を介して接着される被着体をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の積層体。

[請求項12]

基材と、

前記基材の内側に接着される内側層と、

前記基材の外側に接着される外側層と、

前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤の硬化物を含む内側接着剤層と、

前記基材および前記外側層の間に介在される外側接着剤層とを備えることを特徴とする、電池ケース用包材。

[請求項13]

請求項12に記載の電池ケース用包材と、

前記電池ケース用包材に包装される電解液とを備え、

前記電池ケース用包材の前記内側層の少なくとも一部が、前記電解液に接触していることを特徴とする、電池。

[請求項14]

基材と、

前記基材の内側に接着される内側層と、

前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴とする、高アルカリ溶液用包材。

[請求項15]

請求項14に記載の高アルカリ溶液用包材と、

前記高アルカリ溶液用包材に包装されるpH9以上の溶液とを備えることを特徴とする、包装体。

[請求項16]

基材と、

前記基材の内側に接着される内側層と、

前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴とする、アルコール含有溶液用包材。

[請求項17]

請求項16に記載のアルコール含有溶液用包材と、

前記アルコール含有溶液用包材に包装されるアルコール含有溶液とを備えることを特徴とする、包装体。」

(甲2b)「[技術分野]

[0001]

本発明は、接着剤、積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体に関する。

[0002]

詳しくは、本発明は、接着剤およびそれから形成される接着剤層を備える積層体に関する。また、本発明は、接着剤から形成される内側接着剤層を備える電池ケース用包材およびそれを備える電池に関する。また、本発明は、接着剤から形成される内側接着剤層を備える高アルカリ溶液用包材およびそれを備える包装体に関する。また、本発明は、接着剤から形成される内側接着剤層を備えるアルコール含有溶液用包材およびそれを備える包装体に関する。

・・・

[発明が解決しようとする課題]

[0007]

しかるに、上記した耐電解液性のさらなる向上が要求されるとともに、アルミニウム箔層と熱可塑性樹脂フィルム層との優れた接着強度の向上も要求されている。

・・・

[0009]

本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤およびそれから形成される接着剤層を備える積層体を提供することにある。また、本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤から形成される内側接着剤層を備える電池ケース用包材およびそれを備える電池を提供することにある。また、本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤から形成される内側接着剤層を備える高アルカリ溶液用包材およびそれを備える包装体を提供することにある。また、本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤から形成される内側接着剤層を備えるアルコール含有溶液用包材およびそれを備える包装体を提供することにある。

[0010]

本発明の接着剤は、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含むことを特徴としている。

・・・

[発明の効果]

[0027]

本発明の接着剤と、これから形成される接着剤層を備える本発明の積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体は、耐久性に優れ、接着強度の低下を十分に抑制することができる。」

(甲2c)「[発明を実施するための形態]

[0029]

本発明の接着剤を調製するための組成物は、変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含む。

[0030]

以下、変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とのそれぞれについて詳述する。

[0031]

1.変性オレフィン重合体(A)

変性オレフィン重合体(A)は、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体(b)によって変性されることにより得られる。

[0032]

1-1.炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)

炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)は、具体的には、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含んでいる。

[0033]

つまり、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)は、炭素数4~20のα-オレフィンからなる単独重合体か、または、炭素数4~20のα-オレフィンと炭素数2~3のα-オレフィンとからなる共重合体である。

[0034]

炭素数4~20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられる。

[0035]

炭素数4~20のα-オレフィンは、単独使用または2種以上併用することができる。

[0036]

炭素数4~20のα-オレフィンとして、好ましくは、炭素数4~10の直鎖状のオレフィン、より好ましくは、炭素数4~6の直鎖状のオレフィン、さらに好ましくは、1-ブテンが挙げられる。炭素数4~20のα-オレフィンとして1-ブテンを用いれば、良好な溶剤溶解性と優れた樹脂強度とを両立することができる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。

[0037]

炭素数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、上記した炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。

[0038]

炭素数2~20のα-オレフィンとして、好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテンが挙げられ、より好ましくは、プロピレンおよび1-ブテンの併用が挙げられる。

[0039]

炭素数2~20のα-オレフィンとして、具体的には、例えば、炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる1種以上と、炭素数2~3のα-オレフィンから選ばれる1種以上との共重合体、例えば、炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる1種以上の単独重合体または共重合体などが挙げられる。好ましくは、共重合体が挙げられ、より好ましくは、炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる1種以上のα-オレフィンと、エチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体が挙げられ、さらに好ましくは、1-ブテンとプロピレンとの共重合体が挙げられる。1-ブテンとプロピレンとの共重合体であれば、良好な溶剤溶解性と優れた樹脂強度とを両立することができる。

[0040]

共重合体としては、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体が挙げられる。好ましくは、ランダム共重合体が挙げられる。

[0041]

炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、例えば、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上、より好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、30モル%以上であり、また、例えば、100モル%以下、好ましくは、60モル%以下、より好ましくは、さらに好ましくは、50モル%以下、とりわけ好ましくは、40モル%以下である。上記含有割合が上記上限以下であれば、優れた樹脂強度を担保することができる。一方、上記含有割合が上記下限以上であれば、優れた溶剤溶解性を担保することができる。

[0042]

なお、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体は、炭素数2~20(炭素数4~20を含む)のα-オレフィンに由来する構成単位を必須の構成単位として含み、必要により、α-オレフィン以外の不飽和単量体(他の不飽和単量体という。)に由来する構成単位を任意の構成単位として含むこともできる。他の不飽和単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ポリエン類や、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エトリデン-2ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、2,5-ノルボナジエンなどの非共役ポリエン類が挙げられる。

[0043]

一方、重合体において、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を除く構成単位としては、好ましくは、すべて炭素数2~3のα-オレフィンに由来する構成単位、より好ましくは、すべてプロピレンに由来する構成単位が挙げられる。

[0044]

換言すれば、重合体において、炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくは、プロピレン)に由来する構成単位を除く構成単位が、すべて炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位である。好ましくは、重合体が、炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、炭素数2~3のα-オレフィン(具体的には、プロピレン)との共重合体であり、かつ、上記した他の不飽和単量体に由来する構成成分を含まない。

[0045]

この場合には、炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくは、プロピレン)に由来する構成単位の含有割合は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、例えば、40モル%以上、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは、60モル%以上、さらに好ましくは、65モル%以上であり、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、90モル%以下、より好ましくは、80モル%以下、さらに好ましくは、70モル%以下である。上記含有割合が上記上限以下であれば、共重合体の融点(Tm)および融解熱(ΔH)を低下させることができる。一方、上記含有割合が上記下限以上であれば、優れた樹脂強度を担保することができる。

[0046]

上記した重合体(a)は、α-オレフィンの重合体の製造に通常用いられる公知の固体状Ti触媒やメタロセン触媒などの存在下で、炭素数2~20のα-オレフィンを重合させることにより得られる。メタロセン触媒は、例えば、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドなどのメタロセン化合物と、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物とからなる。より具体的には、重合体(a)は、例えば、国際公開第2004/87775号パンフレットに記載されている方法などによって得られる。

[0047]

得られた重合体(a)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算される重量平均分子量(Mw)は、例えば、10,000以上、1,000,000以下であり、また、分子量分布(分散度)(は、1以上、3以下である。なお、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)である。

[0048]

また、重合体の融点(Tm)は、例えば、120℃未満、好ましくは100℃未満である。」

(甲2d)「[0049]

1-2.イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体(b)

イソシアネート基と反応することができる官能基は、活性水素を有する基であって、そのような基としては、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、下記式(1)で示される酸無水物基などが挙げられる。これら官能基は、単独使用または併用することができ、好ましく、カルボキシル基、酸無水物基、より好ましくは、酸無水物基が挙げられる。

[0050]

なお、本発明において酸無水物基という場合、当該酸無水物基の一部または全部が加水分解などを受けて二塩基酸(具体的には、ジカルボン酸)の形になっていてもよい。

[0051]

とりわけ好ましくは、官能基のすべてがカルボキシル基および/または酸無水物基、最も好ましくは、酸無水物基である。官能基がカルボキシル基および/または酸無水物基、好ましくは、酸無水物である場合(具体的には、官能基のすべてがカルボキシル基および/または酸無水物基、好ましくは、酸無水物基である場合)には、組成物から接着剤層を形成して硬化させる際に、カルボキシル基および/または酸無水物基、好ましくは、酸無水物基がイソシアネート基と効率的に反応しながら、変性ポリオレフィン重合体(A)の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する親和性を高めて、接着剤層の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する密着力をより一層向上させることができる。また、耐電解液性を向上させることができる。

・・・

[0053]

上記した官能基を有する単量体(b)としては、例えば、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルエステル化合物、および、それらの誘導体(不飽和カルボン酸無水物を除く)などが挙げられる。

・・・

[0061]

不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。

・・・

[0065]

単量体(b)として、好ましくは、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物、より好ましくは、不飽和カルボン酸無水物、さらに好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。また、好ましくは、単量体(b)のすべてが不飽和カルボン酸無水物、より好ましくは、単量体(b)のすべてが無水マレイン酸である。

[0066]

単量体(b)が不飽和カルボン酸無水物(具体的には、無水マレイン酸)である場合(好ましくは、単量体(b)のすべてが不飽和カルボン酸無水物(具体的には、無水マレイン酸)である)場合には、組成物から接着剤層を形成して硬化させる際に、不飽和カルボン酸無水物(より具体的には、無水マレイン酸)がポリイソシアネートと反応しながら、変性ポリオレフィン重合体(A)の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する親和性を高めて、接着剤層の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する密着力をより一層向上させることができる。」

(甲2e)「[0068]

1-3.変性オレフィン重合体(A)の調製

変性オレフィン重合体(A)を調製するには、単量体(b)を、重合体(a)の存在下で重合反応させればよく、これによって、重合体(a)が、単量体(b)またはその重合体によって、変性される。具体的には、変性オレフィン重合体(A)を調製するには、下記(1)~(4)の方法が挙げられる。

(1)重合体(a)を有機溶媒に溶解し、単量体(b)およびラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌することにより、重合体(a)を単量体(b)で変性して反応させる方法。

・・・

[0069]

単量体(b)の配合割合は、最終的に必要な単量体(b)の変性量が得られるように配合すれば特に制限はなく、重合体(a)および単量体(b)の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、4質量部以下、とりわけ好ましくは、2質量部以下である。

・・・

[0072]

ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機パーオキシド、有機パーエステルなどが挙げられる。

・・・

[0074]

ラジカル重合開始剤のうち、好ましくは、有機パーオキシド、より好ましくは、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキシドが挙げられる。」

(甲2f)「1-4.変性オレフィン重合体(A)の物性

変性オレフィン重合体(A)の、GPCによって測定され、標準ポリスチレンで換算される重量平均分子量(Mw)は、例えば、1×104以上、好ましくは、2×104以上、より好ましくは、3×104以上であり、また、例えば、1000×104以下、好ましくは、100×104以下、より好ましくは、50×104以下である。

[0080]

重量平均分子量が上記下限以上であると、塗膜の強度を十分高くすることができ、また密着強度が良好となる。一方、重量平均分子量が上記上限以下であれば、溶剤への溶解性が良好であり、固化、析出が起こりにくい。とりわけ、変性オレフィン重合体(A)の重量平均分子量が50×104以下であれば、特に、接着性能が優れる傾向にある。

・・・

[0084]

変性オレフィン重合体(A)の融解熱(ΔH)は、0J/g以上、好ましくは、3J/g以上、より好ましくは、5J/g以上であり、また、50J/g以下、好ましくは、40J/g以下、より好ましくは、30J/g以下である。

[0085]

変性オレフィン重合体(A)の融解熱(ΔH)が上記上限以下であれば、組成物からなるコーティング剤(後述)を塗布後、低温で養生して接着剤層を形成しても(後述)、接着強度の低下を防止することができる。一方、変性オレフィン重合体(A)の融解熱(ΔH)が上記下限以上であれば、組成物からなるコーティング剤(後述)を基剤に塗布し、その後、塗膜を形成する際、塗膜に優れた強度を付与することができる。

[0086]

融解熱(ΔH)は、JIS K 7122に従って、示差走査熱量測定(DSC測定)によって求められ、具体的には、10℃/分の昇温過程で得られるサーモグラムのピーク面積から算出される。その測定に際して、本発明においては、測定前の熱履歴をキャンセルする目的で、測定前に10℃/分で180℃に昇温し、その温度で3分保持し、次いで10℃/分で0℃まで降温し、その温度で3分間保持した後に、融解熱(ΔH)を測定する。」

(甲2g)「[0118]

3.炭化水素系合成油(D)

組成物は、さらに、炭化水素系合成油(D)を含むこともできる。

[0119]

炭化水素系合成油(D)は、例えば、炭素数2~20のオレフィンの重合体が挙げられる。その中でも、好ましくは、炭素数2~20のオレフィンを単独重合させて得られるオリゴマー、または、2種以上のこれらのオレフィンの任意の混合物を共重合させて得られるオリゴマーが挙げられる。上記炭素数2~20のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセンなどが用いられる。

[0120]

ここで、炭化水素系合成油(D)として、エチレンに由来する構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体を好適に用いることができる。この場合、エチレンに由来する構成単位量は、エチレンに由来する構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位との合計100モル%に対し、例えば、30モル%以上、好ましくは、40モル%以上であり、例えば、70モル%以下、好ましくは、60モル%以下である。

[0121]

炭化水素系合成油(D)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。

[0122]

炭化水素系合成油(D)は40℃における動粘度が、例えば、30cSt以上、好ましくは、300cSt以上、より好ましくは、5,000cSt以上であり、また、例えば、さらに好ましくは、500,000cSt以下、好ましくは、400,000cSt以下、より好ましくは、300,000cSt以下である。

・・・

[0127]

また、組成物、あるいは、それを構成する各成分、具体的には、変性オレフィン重合体(A)、ポリイソシアネート(B)、炭化水素系合成油(D)には、必要に応じて、そのいずれかまたは全てに、エポキシ樹脂、硬化触媒、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤(光安定剤、熱安定剤を含む)、可塑剤、界面活性剤、顔料、揺変剤、増粘剤、粘着付与剤、表面調整剤、沈降防止剤、耐候剤、顔料分散剤、帯電防止剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。」

(甲2h)「[0133]

5.コーティング剤

このようにして調製される組成物を、コーティング剤として用いることができる。

[0134]

このコーティング剤は、プライマーや塗料、ホットメルト接着剤、光学透明両面テープとして用いるのに好適である。また、該コーティング剤から得られる層を少なくとも1層有している積層体は、加飾フィルムとして好適に用いられる。

・・・

[0142]

上記した加飾方法によって得られる成形体としては、例えば、自動車内外装用部材、例えば、AV機器などの各種フロントパネル、例えば、ボタン、エンブレムなどの表面化粧材、例えば、携帯電話、カメラなど情報家電の筐体、ハウジング、表示窓、ボタンなどの各種部品、例えば、家具用外装材、例えば、浴室、壁面、天井、床などの建築用内装材、例えば、サイディングなどの外壁、塀、屋根、門扉、破風板などの建築用外装材、例えば、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居などの家具類の表面化粧材、例えば、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラスなどの光学部材、例えば、電車、航空機、船舶などの自動車以外の各種乗り物の内外装用部材、例えば、および瓶、化粧品容器、小物入れなどの各種包装容器、包装材料、景品、小物などの雑貨などのその他各種用途などが挙げられる。

[0143]

6.コーティング剤の接着剤としての使用

また、コーティング剤は、接着剤層を形成するための本発明の接着剤として用いられる。

・・・

[0145]

以下、接着剤としての使用をする際の具体例を説明する。すなわち、具体的には、接着剤層は、基材の表面(一方側面)に積層されており、この基材と接着剤層とから積層体(例えば、接着シート)を形成する。

[0146]

基材としては、例えば、PPなどのポリオレフィン材料からなるフィルム、例えば、ABS、PC、PET、PPS、ポリアミド、アクリル樹脂などの極性樹脂からなるフィルム、例えば、ED鋼板、Mg合金、SUS(ステンレス)、アルミニウム、アルミニウム合金からなる金属箔、より好ましくは、金属箔、さらに好ましくは、アルミニウム箔が挙げられる。基材の厚みは、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下である。

・・・

さらに、上記した接着剤層の表面(一方側面)に被着体を設けて、それらからなる積層体を構成することもできる。

[0151]

被着体としては、例えば、PPなどのポリオレフィン材料、例えば、ABS、PC、PET、PPS、ポリアミド、アクリル樹脂などの極性樹脂、例えば、ED鋼板、Mg合金、SUS(ステンレス)、アルミニウム、アルミニウム合金、ガラスなどの無機材料が挙げられる。また、上記樹脂と上記無機材料が複合化された被着体も挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン材料からなるフィルムや成形体が挙げられる。なお、被着体の接着面(接着剤層と接触する面)には、コロナ処理などの処理を施すこともできる。

・・・

[0156]

・・・

7.積層体の用途

このような積層体は、接着強度および耐電解液性に優れる電池ケース用包材や、接着強度および耐アルカリ性に優れる高アルカリ溶液用包材、さらには、接着強度および耐アルコール性に優れるアルコール含有溶液用包材として好適に用いられる。

7-1.電池ケース用包材および電池

・・・

[0157]

この電池ケース用包材1は、図1に示すように、基材2と、基材2の内側に接着される内側層3と、基材2の外側に接着される外側層4と、基材2および内側層3の間に介在される内側接着剤層5と、基材2および外側層4の間に介在される外側接着剤層6とを備えている。

・・・

[0160]

内側接着剤層5は、上記した接着剤層に相当する。

・・・

[0165]

図2に示すように、電池10は、電池ケース用包材1と、電池ケース用包材1に包装される電解液11とを備える。また、電池10は、電池ケース用包材1内に収容される正極17、負極18、および、セパレータ19を備える。

[0166]

電池ケース用包材1は、電池ケース用包材1における内側層3の内面に次に説明する電解液11が接触するように、袋状に構成されている。具体的には、電池ケース用包材1は、内側層3が電解液11に接触するように、電解液11を包装している。」

(甲2i)「[実施例]

[0196]

以下に示す実施例などの数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。

・・・

[0198]

[融点(Tm)、融解熱(ΔH)]

示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、融点(Tm)および融解熱(ΔH)を求めた。

・・・

[0204]

・・・

<重合体の合成>

[製造例1:プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]

充分に窒素置換した2Lのオートクレーブに、ヘキサンを900mL、1-ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合した。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。得られたプロピレン/1-ブテン共重合体(1)の融点(Tm)は78℃、融解熱(ΔH)は29J/g、重量平均分子量(Mw)は330,000、分子量分布(分散度)(Mw/Mn)は2、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は67モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合は33モル%であった。

[0205]

[製造例2:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]

上記プロピレン/1-ブテン共重合体(1)3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、プロピレン/1-ブテン共重合体(1)をトルエンに溶解させた。さらに、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間攪拌した。冷却後、多量のアセトンを投入して、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。

[0206]

得られた無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の融点(Tm)は76℃、融解熱(ΔH)は29J/g、50℃での半結晶化時間は946秒、重量平均分子量(Mw)は110,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100質量部に対し、1質量部であった。

・・・

[0210]

[製造例5:プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の合成]

1-ブテンの仕込み量90gを75gにした以外は[製造例1:プロピレン/1-ブテン共重合体]の合成と同様に処理した。得られたプロピレン/1-ブテン共重合体(2)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、重量平均分子量(Mw)は330,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は78モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合は22モル%であった。

[0211]

[製造例6:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の合成]

製造例1のプロピレン/1-ブテン共重合体(1)に代えて製造例5のプロピレン/1-ブテン共重合体(2)を用いた以外は[製造例2:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]と同様に処理した。得られた無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、50℃での半結晶化時間は276秒、重量平均分子量(Mw)は110,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)100質量部に対し、1質量部であった。

・・・

<複合フィルム(Al箔/接着剤層/PPフィルム積層体)の作製>

実施例1

調製例1の変性オレフィン重合体ワニス(1)の不揮発分と準備例1のビウレット変性体とが質量基準で表1に記載の比率になるように混合し、ラミネート用接着剤を調製した。次いで、ラミネート用接着剤をトルエンで希釈し、バーコーターを用いて、坪量3.3g/m2(固形分)となるように厚さ40μmのアルミニウム箔(表面未処理)のツヤ面上に常温下において塗布し、溶媒を揮散させた。その後、アルミニウム箔におけるラミネート用接着剤の塗布面と、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(片面コロナ処理品)におけるコロナ処理面とを貼り合わせ、60℃で3日間養生することにより、ラミネート用接着剤を硬化させて、アルミニウム箔および未延伸ポリプロピレンフィルム間を接着させて、複合フィルムを、アルミニウム箔、接着剤層および未延伸ポリプロピレンフィルムの積層体として得た。

[0214]

実施例2~7および比較例1~2

表1に示す処方に従って各成分を混合して、ラミネート用接着剤を調製した以外は、実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。

・・・

[0218]

[表1]

」

(3)甲第3号証に記載された事項

甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【特許請求の範囲】

【請求項1】

少なくとも、基材層と、金属層と、絶縁層と、シーラント層とがこの順に積層された積層体からなり、

前記絶縁層は、(i)実質的に融点を有しない非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)及び融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)の少なくとも一方と、(ii)融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)とを含む樹脂組成物により形成されてなる、電池用包装材料。

【請求項2】

前記実質的に融点を有しない非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)が、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂、不飽和カルボン酸またはその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとで変性された変性ポリオレフィン樹脂、及びアルコール性水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項1に記載の電池用包装材料。

【請求項3】

前記融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)が、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂、及び不飽和カルボン酸またはその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとで変性された変性ポリオレフィン樹脂の少なくとも一方である、請求項1または2に記載の電池用包装材料。

【請求項4】

前記融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)が、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂、及び不飽和カルボン酸またはその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとで変性された変性ポリオレフィン樹脂の少なくとも一方である、請求項1~3のいずれかに記載の電池用包装材料。

【請求項5】

前記融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)が、変性ポリエチレン系樹脂及び変性ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一方である、請求項1~4のいずれかに記載の電池用包装材料。

【請求項6】

前記融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)が、変性ポリエチレン系樹脂及び変性ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一方である、請求項1~5のいずれかに記載の電池用包装材料。

【請求項7】

前記樹脂組成物が、硬化剤をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の電池用包装材料。

【請求項8】

前記硬化剤は、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びオキサゾリン化合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項7に記載の電池用包装材料。

【請求項9】

前記硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されている、請求項7または8に記載の電池用包装材料。

【請求項10】

前記樹脂組成物において、前記硬化剤の含有量は、(i)実質的に融点を有しない非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)及び融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)と、(ii)融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)との合計100質量部に対して、0.1質量部~50質量部の範囲にある、請求項7~9のいずれかに記載の電池用包装材料。

【請求項11】

正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1~10のいずれかに記載の電池用包装材料により封止されてなる、電池。

【請求項12】

少なくとも、基材層と、金属層と、絶縁層と、シーラント層とをこの順に積層して積層体を得る工程を備え、

前記工程において、(i)実質的に融点を有しない非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)及び融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)の少なくとも一方と、(ii)融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)とを含む樹脂組成物から前記絶縁層を形成する、請求項1~10のいずれかに記載の電池用包装材料の製造方法。

【請求項13】

前記工程後に、前記積層体を前記シーラント層の融点以上の温度で加熱する工程をさらに備える、請求項12に記載の製造方法。」

(甲3b)「【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、絶縁性が高く、耐久性に優れた電池用包装材料に関する。

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

しかしながら、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特許文献1に開示されたような電池用包装材料では、電池用包装材料を電池に適用した場合、絶縁性が低下する場合があるという新たな課題が見出された。

【0008】

そこで、本発明者がさらに鋭意検討を重ねた結果、電池の製造工程において、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、シーラント層の表面に付着する場合があり、電池素子を電池用包装材料でヒートシールする際の熱と圧力によって、シーラント層の異物が付着した部分が薄肉になる場合があることが明らかとなった。例えば、シーラント層同士がヒートシールされる部分などにおいて、シーラント層が薄肉になると、電池用包装材料の絶縁性が不十分となる場合があるという問題がある。

【0009】

さらに、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物は、一般に導電性を有する。電極タブとシーラント層との間に導電性の異物が存在する場合、ヒートシール時の熱と圧力によって、異物がシーラント層を貫通すると、電極タブと電池用包装材料の金属層とが電気的に接続されて短絡するおそれがある。

【0010】

本発明は、これらの問題に鑑みなされた発明である。すなわち、本発明は、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、シーラント層同士の界面や電極タブとシーラント層との間などのヒートシールされる部分に存在する場合にも、高い絶縁性を有する電池用包装材料を提供することを主な目的とする。」

(甲3c)「【0034】

[絶縁層3]

本発明において、絶縁層3は、金属層2とシーラント層4との間に設けられる層である。絶縁層3は、(i)非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)及び融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)の少なくとも一方と、(ii)融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)とを含む樹脂組成物により形成される。本発明の電池用包装材料においては、金属層2とシーラント層4との間に、このような特定の樹脂組成物により形成された絶縁層3が設けられているため、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が電池素子とシーラント層との間に存在する場合にも、電池用包装材料の絶縁性や耐久性が高められている。すなわち、本発明においては、絶縁層3が、以下の(1)~(3)のいずれかの樹脂組成物により形成されていることにより、上記のような絶縁性及び耐久性を高める効果が奏される。

(1)(i)非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)と(ii)融点が110℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)とを含む樹脂組成物。

(2)(i)融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)と(ii)融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)とを含む樹脂組成物。

(3)(i)非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)及び融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)と、(ii)融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)とを含む樹脂組成物。

・・・

【0053】

融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)としては、特に制限されないが、上述の融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)で例示したものと同様の、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂、及び不飽和カルボン酸またはその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとで変性された変性ポリオレフィン樹脂の少なくとも一方であることが好ましい。融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)として、これらの変性ポリオレフィン樹脂を用いることにより、非晶性の変性ポリオレフィン樹脂(A)及び融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)の少なくとも一方と併用した場合に電池用包装材料の絶縁性及び耐久性をより高めることができる。

・・・

【0058】

融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)の融点としては、好ましくは40~100℃程度、より好ましくは50~100℃程度が挙げられる。当該融点は、変性ポリオレフィン樹脂(C)の重量平均分子量、不飽和カルボン酸またはその酸無水物や(メタ)アクリル酸エステルの割合などを適宜設定することによって調整することができる。

・・・

【0062】

硬化剤は、上記の変性ポリプロピレン系樹脂を硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。

【0063】

多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。

・・・

【0068】

エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。

【0069】

オキサゾリン化合物は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン化合物としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。」

3 各乙号証に記載された事項

(1)乙第1号証に記載された事項

乙第1号証には、以下の事項が記載されている。

(乙1a)「特許請求の範囲

(1)アイソタクチックポリプロピレン層からなる基材層の少なくとも片面上に、プロピレン含有率55ないし80重量%、示唆走査型熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量が20ないし80Joule/gのプロピレン・1-ブテンランダム共重合体10ないし40重量%と、プロピレン含有率99ないし93重量%の結晶性プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体90ないし60重量-とからなるポリオレフィン組成物が積層されていることを特徴とするポリプロピレン複合フィルム。」(第1頁左欄第4~15行)

(乙1b)「結晶融解熱量は重合体の結晶化度と相関する値であるが、融解熱量が80Joule/gを越えたプロピレン・1-ブテン共重合体は共重合成分である1-ブテンの量が少ないか、あるいは1-ブテンがブロック的に共重合したものであるため、透明性が劣り、かつ低温ヒートシール性も劣ったものとなるため採用できない。一方、融解熱量が20Joule/g未満のプロピレン・1-ブテンランダム共重合体は機械的特性および耐熱性が劣り、共重合体がブロッキングし、かつべたついた感触を持つ。そのような樹脂は結晶性プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体と配合しても性能が実用しうるまでには改質され得ない。従ってヒートシール層の耐スクラッチ性が不足し、ブロッキングしやすく、かつべたついた感触になるため使用できない。」(第3頁左下欄第2~16行)

(2)乙第2号証に記載された事項

乙第2号証には、以下の事項が記載されている。

「[0094]
《プロピレン・α-オレフィン共重合体の製造例》
[製造例1(メタロセン系プロピレン・1-ブテン共重合体の重合)]
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、900mlの乾燥ヘキサン、1-ブテン65gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温62℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液から重合体を析出し、真空下130℃、12時間乾燥し、プロピレン・1-ブテン共重合体を得た。得られたプロピレン・1-ブテン共重合体の物性を表1に示す。
[0095]
[製造例2(チーグラー系プロピレン・1-ブテン共重合体の重合)]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを830ml、1-ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1mmol加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧0.7MPaにし、トリエチルアルミニウム1mmol、及び塩化マグネシウムに担持されたチタン触媒をTi原子に換算して0.005mmol加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.7MPaに保ちながら30分間重合を行った以外は実施例1と同様の重合後処理を行い、チーグラー系プロピレン・1-ブテン共重合体を得た。得られたプロピレン・1-ブテン共重合体の物性を表1に示す。
[0096]
[表1]
」

(3)乙第3号証に記載された事項

乙第3号証には、以下の事項が記載されている。

(乙3a)「【0156】

[製造例1:メタロセン触媒によるプロピレン・1-ブテン共重合体(重合ポリマー1)の調製]

充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、875mlの乾燥ヘキサン、1-ブテン75gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、合成例2で得られたメタロセン触媒であるジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolと、アルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)とを接触させたトルエン溶液を重合器内に添加した。重合器の内温65℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥し、重合ポリマー1を得た。

【0157】

得られた重合ポリマー1は、15.2gであった。重合ポリマー1は、1-ブテン含量(M):27.1モル%、メルトフローレート(MFR):6.5g/10分で、分子量分布(Mw/Mn):2.11および融点(Tm):76.2℃、融解熱量(ΔH):48J/gであった。また、上記要件(4)の式:-2.6M+130≦Tm≦-2.3M+155については、Mが27.1であるから、上記式は、59.5≦Tm≦92.7となり、Tm:76.2を満たす。

【0158】

[製造例2:メタロセン触媒によるプロピレン・1-ブテン共重合体(重合ポリマー2)の調製〕

充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、875mlの乾燥ヘキサン、1-ブテン75gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を60℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、合成例2で得られたメタロセン触媒であるジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolと、アルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)とを接触させたトルエン溶液を重合器内に添加した。重合器の内温65℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥し、重合ポリマー2を得た。

【0159】

得られた重合ポリマー2は、15.2gであった。重合ポリマー2は、1-ブテン含量(M):22.4モル%、メルトフローレート(MFR):6.5g/10分で、分子量分布(Mw/Mn):2.11および融点(Tm):83.2℃、融解熱量(ΔH):51J/gであった。また、上記要件(4)の式:-2.6M+130≦Tm≦-2.3M+155については、Mが22.4であるから、上記式は、71.8≦Tm≦103.5となり、Tm:83.2を満たす。」

(4)乙第4号証に記載された事項

乙第4号証には、以下の事項が記載されている。

(乙4a)「

」(第1~2頁)

(5)乙第5号証に記載された事項

乙第5号証には、以下の事項が記載されている。

(乙5a)「

」(第1頁)

第5 当審の判断

当審は、当審が通知した取消理由A~C及び申立人がした申立理由A~Cによっては、いずれも、本件発明1~16に係る特許を取り消すことはできないと判断する。

その理由は以下のとおりである。

以下では、上記「第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」で示した申立人がした申立理由のうち、申立理由A(進歩性)については、当審が取消理由通知で通知した取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)と、甲第1号証を主引用例とする新規性または進歩性の理由という点で共通するから、まとめて検討した。

1 取消理由について

(1)取消理由A(実施可能要件)について

ア 取消理由A(実施可能要件)の概要

取消理由Aの概要は、以下のとおりである。

本件発明1及び本件発明14は、「変性オレフィン重合体(A)」について、「要件(ii):前記重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」ことを発明特定事項としている。この「要件(ii)」を有する「変性オレフィン重合体(A)」について、本件明細書の(本e)の段落【0067】及び(本b)の段落【0034】の記載からみて、「重合体(A)のΔH」が「0~50J/g」とするためには、「炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくはプロピレン)に由来する構成単位の含有割合」を「炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、好ましくは重合体(a)を構成する全構成単位100モル%に対して、好ましくは40モル%以上」とし、かつ、「要件(i)」である「前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」ものとすればよいことが示されているといえる。

一方、請求人は、令和1年5月14日付け拒絶理由通知書の引用文献1(甲第1号証と同じ)の新規性・進歩性の特許要件を満たさないとの判断に関して、令和1年7月18日付け意見書において、以下の事項を述べている。

「引用文献1の実施例(製造例1)に記載のグラフト共重合体は、その重量平均分子量が27,000であり、本願実施例の共重合体A-1の重量平均分子量110,000と4倍以上小さい。そして、引用文献1の3頁左上欄には、「グラフト共重合した樹脂の分子量は3000ないし35000が好ましく、・・・35000以上では溶剤に対する溶解性や他樹脂との相溶性が悪くなって好ましくない」と記載されている。一般に、ΔHが小さいほど溶解性は向上するため、分子量が35000以上になると溶剤に対する溶解性が悪くなるということは、イコール、引用文献1に実質的に記載されているグラフト共重合体のΔHは、本発明1および14よりも大きく、50J/gを超える蓋然性が高いと考えられる。このことは当業者であれば合理的に推察できることである。つまり、引用文献1に記載のグラフト共重合体はΔHが大きいため、分子量35000程度で溶剤に対する溶解性が悪くなると考えられる。
審査官殿は、プロピレン成分の含有量から、引用文献1に記載のグラフト共重合体のΔHが本発明1および14の範囲に含まれると認定されておられるが、ΔHはモノマーの存在比のみではなく、モノマー配列(AAABBBAABやABABABA等)などの影響も強く受け、一般に、ランダム性が高いほど、ΔHは小さくなる。
以上のように、引用文献1に記載のグラフト共重合体は、本発明1および14の一要件である要件(ii)を満たさない蓋然性が高いため、引用文献1に記載の発明は、本発明1および14と同一ではなく、また、融解熱を特定の範囲にすることについて一切記載も示唆もない引用文献1の記載から、当業者が本発明1および14を容易になし得たものではない。」

また、令和1年12月25日付け審判請求書において、以下の事項を述べている。

「審査官殿は、引用文献1に記載のプロピレン-ブテン共重合体(プロピレン含量:75モル%)に無水マレイン酸をグラフトさせた共重合体のプロピレン含量に着目し、該グラフト共重合体のプロピレン含量が、本願実施例の共重合体A-1よりも少ないため、引用文献1のグラフト共重合体のΔHは、該共重合体A-1のΔHである32J/gよりも小さいはずであると認定された。
ここで、例えば、国際公開第2013/146605号(以下「刊行物1」ともいう。)(当審注:「乙第2号証」である。)の製造例2には、プロピレン含量が75モル%のプロピレン-ブテン共重合体が記載され、該共重合体のΔHが60J/gであることが記載されている。なお、該刊行物1の製造例2に記載されている共重合体は、グラフト共重合体ではないが、本願明細書の【0148】および【0150】によれば、変性前後でΔHの値は変化していないため、もし、刊行物1の製造例2に記載されている共重合体をグラフト変性しても、ΔHの値はほぼ変化せず、約60J/gであると考えられる。
審査官殿のご認定の通り、プロピレン含量でΔHが決まるのであれば、上記刊行物1の製造例2に記載の共重合体(ΔH=60J/g)は、引用文献1に記載のグラフト共重合体と同じプロピレン含量であるため、引用文献1に記載のグラフト共重合体のΔHも60J/g程度になると考えられる。
また、上記刊行物1の製造例1と2とを比較すると、プロピレン含量が少なくなるとΔHが大きくなっており、プロピレン含量が少なくなるとΔHが小さくなるという、審査官殿のご認定は、必ずしも正しくないことがわかる。
さらに、国際公開第2009/119536号(以下「刊行物2」ともいう。)(当審注:「乙第3号証」である。)の製造例2には、グラフト共重合体ではないが、1-ブテン含量が22.4モル%(=プロピレン含量が約78モル%)で、ΔHが51J/gであるプロピレン・1-ブテン共重合体が記載されている。
・・・」

引用文献1(甲第1号証)の実施例1~2(製造例)の重合体は、本件明細書の段落【0067】及び【0034】の記載によれば、引用文献1(甲第1号証)の「グラフト共重合体」は、その構成単位及び含有割合により、「ΔH」が「0~50J/g」となると認められるところ、上記意見書及び審判請求書によれば、「重量平均分子量」や「モノマー配列」の「ランダム性」が必要であると述べており、審判請求書によれば、本件明細書の上記段落【0067】及び【0034】において示す上記条件によっても、「ΔH」が「0~50J/g」とならないことがあることを述べている。

そうすると、そもそも本件明細書の上記【0067】及び【0034】において示す条件を満たしても「ΔH」が「0~50J/g」となる「重合体」が得られないのか、その場合に、本件明細書の上記段落【0067】及び【0034】において示す上記条件以外にどのような原料の選定や製造条件が必要であるのか本件明細書をみても明らかではなく、また、「ΔH」が「0~50J/g」とする「重合体」の製造条件が当業者に自明なこととは認められない。

そして、「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)および(ii)を満たす変性オレフィン重合体(A)」は、本件明細書の(本b)~(本c)の記載からみて、多様な重合体を包含していると認められるところ、結局のところ、「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)で変性された変性オレフィン重合体」であって「要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」もの全てについて、「ΔH」を測定して「0~50J/g」の範囲内か否かを確認することを要し、当業者に過度な試行錯誤を要求するものであるといえる。

したがって、本件発明1及び本件発明14について、本件明細書は当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとは認められず、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。

また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~13、及び、本件発明14を直接又は間接的に引用する本件発明15~16についても、同様の理由で、本件明細書は当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとは認められず、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。

イ 判断

(ア)特許法第36条第4項第1号の考え方について

特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。

特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。

以下、この観点に立って検討する。

(イ)判断

令和3年3月5日付け意見書において、特許権者は、乙第1号証を示し、「乙第1号証(・・・)の3頁左下欄2~6行の記載から、融解熱に関して以下のことがいえると思料する。

・融解熱は、結晶化度と相関する値であること

・プロヒレン・ 1-ブテン共重合体において、1-ブテン量が少なくなると融解熱量が高くなること

・プロピレン・1-ブテン共重合体において、1-ブテンがブロック的に共重合すると融解熱量が高くなること

・・・つまり、融解熱は、結晶化度と相関し、主として、コモノマー量やモノマー配列に影響を受ける。通常、結晶化度が高くなれば、融解熱が高くなる。そして、通常、ランダムよりブロックの方が結晶化度が高くなることは当業者であれば容易に理解できることであり、コモノマー(1-ブテン)の量によっても結晶化度が変わり、融解熱が変化することは当業者であれば容易に理解できることである。・・・本件明細書の【0067】には、モノマー配列に関する記載はないが、この段落の記載はあくまで「例えば」であり、上記のような技術常識を有する当業者であれば、融解熱がモノマー配列にも影響を受けるであろうことは容易に理解できることである。そして、本件明細書の【0067】の記載に基づいて、モノマーを用いて重合体を合成する際に、モノマー配列を制御することは、このような重合体を合成できる当業者であれば容易になし得たことである。つまり、当業者であれば、本件明細書の【0067】の記載と、技術常識に基づいて、ある程度得られる重合体の融解熱を予想しながら重合体を合成できる。仮に、一度合成した重合体が、所定の融解熱の範囲にない場合には、所定の融解熱の範囲にある重合体にするために、どのようにすればよいか当業者であれば当然に予想できる。そして、このことは、当業者に過度の試行錯誤を要求することにはならない」と主張しているので、この点について検討する。

乙第1号証の(乙1b)には、「結晶融解熱量は重合体の結晶化度と相関する値であるが、融解熱量が80Joule/gを越えたプロピレン・1-ブテン共重合体は共重合成分である1-ブテンの量が少ないか、あるいは1-ブテンがブロック的に共重合したものであるため、透明性が劣り、かつ低温ヒートシール性も劣ったものとなるため採用できない」と記載されており、この記載からみて、特許権者の主張のとおり、「結晶融解熱量は重合体の結晶化度と相関する値」であること、「融解熱量」が高くなる場合は「1-ブテンの量が少ない」か、又は、「1-ブテンがブロック的に共重合したものである」こと、すなわち、「プロヒレン・1-ブテン共重合体において、1-ブテン量が少なくなると融解熱量が高くなる」傾向があること、「プロピレン・1-ブテン共重合体において、1-ブテンがブロック的に共重合すると融解熱量が高くなる」傾向があることが読み取れるといえる。

そうすると、本件発明1及び本件発明14の「要件(ii):前記重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」「変性オレフィン重合体(A)」を製造ためには、本件明細書の(本e)の段落【0067】及び(本b)の段落【0034】の記載に基づいて「炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくはプロピレン)に由来する構成単位の含有割合」を「炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、好ましくは重合体(a)を構成する全構成単位100モル%に対して、好ましくは40モル%以上」とし、かつ、「要件(i)」である「前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」ものを製造し、その「変性オレフィン重合体(A)」の「融解熱」が「50J/g」を超えるものであれば、「1-ブテン量」を多くしたり、「ブロック的」に重合するのではなくより「ランダム的」に重合して調整すればよく、多少の試行錯誤は要するものの、過度な試行錯誤を要するものではないと理解できる。

したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件明細書の記載および乙第1号証に記載された技術的事項を勘案すれば、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、本件発明1及び本件発明14の組成物を作ることができるといえる。

本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~13、及び、本件発明14を直接又は間接的に引用する本件発明15~16についても同様である。

ウ 小括

以上のとおり、取消理由Aは、理由がない。

(2)取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)、申立理由A(進歩性)について

ア 甲第1号証に記載された発明について

甲第1号証の(甲1j)には、実施例1に着目すると、

「製造例1で得た組成物のトルエン溶液 350gに、
エポキシ樹脂(エピコート828,油化シェルエポキシ製)を15g配合し、
これを酸化チタン30gと混合し、サンドミルにて1時間顔料を分散させた後、トルエンで適当な粘度に希釈し」た組成物の発明が記載されており、

「製造例1で得た組成物のトルエン溶液」として、(甲1i)には、

「攪拌機,冷却管および滴下ロートを取り付けた三口フラスコ中で、プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000) 100gを、キシレン 400gに加熱溶解させた後、系の温度を140℃に保って攪拌しながら、無水マレイン酸10gとジクミルパーオキサイド2gをそれぞれ2時間かけて滴下させ、その後3時間反応させた。反応後室温まで冷却した後、反応物を大量のアセトン中に投入して精製し、グラフト量 5.8%のグラフト共重合体を得た。GPCにより分子量を測定すると、重量平均分子量は27000であった。これをトルエンに20重量%の濃度で溶解した」ことが記載されているから、

甲第1号証には、

「攪拌機,冷却管および滴下ロートを取り付けた三口フラスコ中で、
プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000) 100gを、キシレン 400gに加熱溶解させた後、
系の温度を140℃に保って攪拌しながら、無水マレイン酸10gとジクミルパーオキサイド2gをそれぞれ2時間かけて滴下させ、その後3時間反応させ、反応後室温まで冷却した後、反応物を大量のアセトン中に投入して精製して得た、
グラフト量5.8%の、GPCにより測定した重量平均分子量が27000であるグラフト共重合体をトルエンに20重量%の濃度で溶解したトルエン溶液 350gに、
エポキシ樹脂(エピコート828,油化シェルエポキシ製)を15g配合し、
これを酸化チタン30gと混合し、サンドミルにて1時間顔料を分散させた後、トルエンで適当な粘度に希釈した組成物」

の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。

また、同様に、甲第1号証の実施例2に着目すると、

「製造例1で得た組成物のトルエン溶液 350gに、エポキシ樹脂(デナコールEX-611,ナガセ化成製)10gを配合した。これを酸化チタン30gと混合し、サンドミルにて1時間顔料を分散させた。反応促進剤として、アミン系触媒(U-Cat-SA-No102,サンアプロ製)の10重量%キシレン溶液7gを加えた」組成物の発明が記載されており、

「製造例1で得た組成物のトルエン溶液」として、上記と同様に(甲1i)の記載を踏まえると、

「攪拌機,冷却管および滴下ロートを取り付けた三口フラスコ中で、
プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000) 100gを、キシレン 400gに加熱溶解させた後、
系の温度を140℃に保って攪拌しながら、無水マレイン酸10gとジクミルパーオキサイド2gをそれぞれ2時間かけて滴下させ、その後3時間反応させ、反応後室温まで冷却した後、反応物を大量のアセトン中に投入して精製して得た、
グラフト量5.8%の、GPCにより測定した重量平均分子量が27000であるグラフト共重合体をトルエンに20重量%の濃度で溶解したトルエン溶液 350gに、
エポキシ樹脂(デナコールEX-611,ナガセ化成製)10gを配合し、これを酸化チタン30gと混合し、サンドミルにて1時間顔料を分散させ、反応促進剤として、アミン系触媒(U-Cat-SA-No102,サンアプロ製)の10重量%キシレン溶液7gを加えた組成物」

の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)対比

本件発明1と甲1発明Bとを対比する。

甲1発明Bの「グラフト共重合体」は、「プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000)」に「無水マレイン酸」を、有機過酸化物である「ジクミルパーオキサイド」の「ラジカル発生剤」(上記(甲1e)及び本件明細書の段落【0059】を参照)の存在下で反応させたものである。

甲1発明Bの「プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000)」は、本件発明1の「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)」に相当する。

また、「プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000)」は、共重合を構成する単量体として「ブテン」を有するものであるから、本件発明1の「要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」といえる。

甲1発明Bの「グラフト共重合体」の「無水マレイン酸」は、本件発明8及び本件明細書の(本c)の段落【0041】、【0048】、【0052】の記載からみて、「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」であるといえる。

本件発明1の「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体」について、本件明細書の(本d)の段落【0053】~【0054】には、

「1.1.3 変性オレフィン重合体(A)の合成
重合体(A)を合成する方法としては、特に制限されず、・・・前記単量体(b)または(b1)と重合体(a)とを反応させることが好ましく、具体的には、下記(1)~(4)の方法が挙げられる。
(1)重合体(a)を溶媒に溶解し、単量体(b)または(b1)とラジカル重合開始剤とを添加して加熱、攪拌することにより、重合体(a)と単量体(b)または(b1)とを反応させる方法。・・・」

と記載されている。

一方、甲1発明Bにおいても、「重合体(a)」である「プロピレン-ブテン共重合体」を「溶媒」である「キシレン」に溶解し、「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」である「無水マレイン酸」を、「ラジカル発生剤」である「ジクミルパーオキサイド」を滴下して反応させたものであるから、甲1発明Bの「プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000)・・・を、キシレン・・・に加熱溶解させた後、・・・無水マレイン酸10gとジクミルパーオキサイド2gをそれぞれ2時間かけて滴下させ、その後3時間反応させ、・・・得た、・・・重量平均分子量が27000であるグラフト共重合体」は、本件発明1の「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)を満たす変性オレフィン重合体(A)」に相当するといえる。

甲1発明Bの「エポキシ樹脂(デナコールEX-611,ナガセ化成製)」は、本件発明1の「エポキシ化合物・・・を含む架橋剤(B)」に相当する。

甲1発明Bの「アミン系触媒(U-Cat-SA-No102,サンアプロ製)」は、乙第4号証の(乙4a)の記載からみて、「1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)の2-エチルヘキサン酸塩」であり、乙第5号証の(乙5a)の記載からみて、「pH(1%水溶液)」は「9」であるといえる。そうすると、甲1発明Bの「アミン系触媒(U-Cat-SA-No102,サンアプロ製)」は、本件発明1の「pKaが11以上である触媒(C)」と、「触媒(C)」である限りにおいて一致するといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明Bとは、

「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)を満たす変性オレフィン重合体(A)と、
エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)と、
触媒(C)と、
を含む組成物。
要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」

点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「変性オレフィン重合体(A)」について、本件発明1では、「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」を満たすのに対して、甲1発明Bでは、そのような特定がない点。
相違点2:「触媒(C)」について、本件発明1では、「pKaが11以上」であるのに対し、甲1発明Bでは、「アミン系触媒(U-Cat-SA-No102,サンアプロ製)」である点。

(イ)判断

上記相違点1について検討する。

本件発明1の「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」について、本件明細書の(本e)の段落【0067】及び(本b)の【0034】の記載からみて、「重合体(A)のΔH」が「0~50J/g」とするためには、「炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくはプロピレン)に由来する構成単位の含有割合は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、好ましくは重合体(a)を構成する全構成単位100モル%に対して、好ましくは40モル%以上」とし、かつ、「要件(i)」である「前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」ものとすればよいことが理解でき、この点について、甲1発明Bの「グラフト共重合体」も、「炭素数2~3のα-オレフィン(好ましくはプロピレン)」である「プロピレン」の割合は「75モル%」であり、また、「炭素数4のα-オレフィン」である「ブテン」を含んでいることから、本件明細書の段落【0067】及び【0034】に記載の要件を満たすものである。

しかしながら、乙第2号証の(乙2a)の製造例2及び乙第3号証の(乙3a)の製造例2には、本件明細書の(本e)の段落【0067】及び(本b)の【0034】記載の上記条件を満たしているにもかかわらず、「JISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/g」の範囲とならない例が記載されているから、甲1発明Bの「プロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分75モル%,重量平均分子量65000)」に「無水マレイン酸」をグラフト重合させた「グラフト共重合体」が、「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」との要件を満たすものであるとは、直ちに判断することはできない。また、甲第2号証や甲第3号証の記載をみても、甲1発明Bの「グラフト共重合体」が、上記「要件(ii)」を満たすことを裏付ける記載があるとはいえない。

また、甲第1号証には、「グラフト共重合体」の「JIS K7122に従って測定される融解熱」を「0J/g以上、50J/g以下」とすることを動機づける記載もない。

そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

次に、相違点1について、甲1発明及び甲第2~3号証に記載された事項から容易に発明をすることができたものといえるかどうか検討する。

甲第2号証の(本a)の請求項1には、「炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)・・・」が記載され、「JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)」について記載されている。「JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である」ことについて、甲第2号証の(甲2f)の段落[0085]には「変性オレフィン重合体(A)の融解熱(ΔH)が上記上限以下であれば、組成物からなるコーティング剤(後述)を塗布後、低温で養生して接着剤層を形成しても(後述)、接着強度の低下を防止することができる」と、「低温で養生して接着剤層を形成しても(後述)、接着強度の低下を防止することができる」ことを意図したものであることが記載されており、(甲2i)の実施例1では「・・・60℃で3日間養生することにより、ラミネート用接着剤を硬化させて、アルミニウム箔および未延伸ポリプロピレンフィルム間を接着させて、複合フィルムを、アルミニウム箔、接着剤層および未延伸ポリプロピレンフィルムの積層体として得た」と、「60℃で3日間養生」の条件下で接着剤を硬化させて接着したことを確認している。

一方、甲第1号証の(甲1b)の「本発明は、・・・ポリプロピレン系樹脂の塗装性や接着性を改善できるコーティング組成物を提供することを目的としている」との記載からみて、「塗装性や接着性」の改善を目的としたものであるといえ、(甲1j)の実施例1では「・・・ポリプロピレン板にスプレー塗布した。約10分間室温で放置乾燥した後、二液型ウレタン系塗料をスプレー塗布し、10分間室温で放置した。次に、熱風乾燥器を用いて80℃で30分間強制乾燥した。得られた塗装板を室温で7日間放置した後、塗膜の試験を行った」、(甲1k)の実施例2では「・・・これを実施例1と同様な操作を行い塗装板を得た」と記載されており、これらの記載からみて、甲第2号証の上記の「低温で養生して接着剤層を形成」することまでも意図しているものであるとはいえない。また、甲1発明は、「変性オレフィン重合体(A)」とともに「エポキシ樹脂」を含むものであるのに対し、甲第2号証は「エポキシ樹脂」を用いるものではなく「ポリイソシアネート(B)」を用いるものである。

そうすると、甲第1号証には、「グラフト共重合体」として、甲第2号証に記載された「IS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)」を用いることを動機づける記載があるとはいえない。

また、甲第3号証には「前記変性オレフィン重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」ことは記載されておらず、甲1発明Bにおいて、「グラフト共重合体」として「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」ことを動機づける記載があるとはいえない。

したがって、本件発明1は、甲1発明B及び甲第2~3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)申立人の主張

特許異議申立書において、申立人は、「甲第2号証に記載の発明(以下、甲2発明という)は 、本件特許発明1と同じ技術分野である「接着剤、積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体」 (【0001】) に係る発明であるところ、当業者であれば甲2発明に係る構成C及びGを甲1発明に適用して本件特許発明1に係る構成を得ることは容易になし得たものであり進歩性を有さない」(異議申立書第23頁下から第2行~第24頁第4行)と主張している。

まず、「甲2発明」に係る構成を「甲1発明」に適用できるか否かを判断する際には、「甲2発明」が「本願特許発明1と同じ技術分野」であることよりも、「甲2発明」と「甲1発明」とが同一の技術分野であることの判断が重要となる。

そして、申立人の主張するとおり、甲第2号証は(甲2a)の請求項1の記載からみて「接着剤」に係る発明であるといえ、また、甲第1号証の(甲1b)には「本発明は、・・・、またポリプロピレン系樹脂に他の基材を接着する場合に密着力を向上させる目的で使用するコーティング組成物に関する」と記載され、甲第1号証においても「接着剤」としての用途を意図しているといえる。

しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、甲第1号証は、接着剤として使用する場合であっても、「低温で養生して接着剤層を形成」することまでも意図してものであるとはいえないから、甲第1号証には、「グラフト共重合体」として、甲第2号証に記載された「IS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)」を用いることを動機づける記載があるとはいえない。

したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(エ)小括

以上のとおり、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された事項から容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明14について

(ア)対比

本件発明14と甲1発明Aとを、上記「イ 本件発明1について」「(ア)対比」での検討を踏まえて、対比する。

甲1発明Aの「エポキシ樹脂(エピコート828,油化シェルエポキシ製)」は、本件発明14の「ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂」に相当する。

そうすると、本件発明14と甲1発明Aとは、

「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)を満たす変性オレフィン重合体(A)と、
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B1)と、
を含む組成物。
要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:「変性オレフィン重合体(A)」について、本件発明14では、「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」を満たすのに対して、甲1発明Aでは、そのような特定がない点。

(イ)判断

上記相違点3について検討する。

相違点3は、上記相違点1と同じものであり、上記「ウ 本件発明1について」「(イ)判断」で検討したとおり、本件発明14も、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。また、本件発明14も、甲1発明Aび甲第2~3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)小括

以上のとおり、本件発明14も、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された事項から容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明2~13、15~16について

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~13、及び、本件発明14を直接的又は間接的に引用する本件発明15~16についても、上記「イ 本件発明1について」及び「ウ 本件発明14について」において検討した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

オ 取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)、申立理由A(進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)及び申立理由A(進歩性)の理由によっては、本件発明1~16に係る特許を取り消すことはできない。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、取消理由A~C、及び、申立人がした申立理由Aによっては、本件発明1~16に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について

ここでは、上記「第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」で示した申立理由のうち、上記「1 取消理由について」で判断しなかった、申立理由B(進歩性)及び申立理由C(サポート要件)について、以下に検討する。

(1)申立理由B(進歩性)について

ア 甲第2号証に記載された発明について

甲第2号証の(甲2a)の請求項1には、

「炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と
を含むことを特徴とする、接着剤」

の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)対比

本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲2発明における「炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体」は、本件発明1における「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)」であって「要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む」ものに相当する。

甲2発明における「炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され」たものは、本件発明1の「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体」と、「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)が反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体」である限りにおいて一致する。

甲2発明の「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)が反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体」は、「JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下」であるから、本件発明1と同様に、「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJISK7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」を満たすものであるといえる。

甲2発明の「接着剤」は、複数の成分を配合したものであるから、本件発明1と同様に「組成物」であるといえる。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、

「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)が反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)および(ii)を満たす変性オレフィン重合体(A)と、
を含む組成物。
要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む
要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」

で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点4:「変性オレフィン重合体(A)」について、本件発明1は、「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された」ものであるのに対し、甲2発明は、「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性された」ものである点。
相違点5:「組成物」について、本件発明1では、「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」を含むのに対し、甲2発明では、「ポリイソシアネート(B)」を有する点。
相違点6:「組成物」について、本件発明1では、「pKaが11以上である触媒(C)」を含むのに対し、甲2発明では、「触媒」について特定されていない点。

(イ)判断

上記相違点4、5について検討する。

甲第2号証の(甲2b)の段落[0009]の「本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤およびそれから形成される接着剤層を備える積層体を提供することにある」の記載からみて、甲2発明の課題は、「接着強度に優れる接着剤」を提供することであり、段落[0010]の「本発明の接着剤は、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含むことを特徴としている」との記載からみて、その解決手段として、甲2発明の「・・・イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され・・・変性オレフィン重合体(A)」と「ポリイソシアネート(B)」を含む組成物との構成を採用したものといえる。そして、(甲2d)の段落[0049]~[0051]には「イソシアネート基と反応することができる官能基は、・・・より好ましくは、酸無水物基が挙げられる。・・・組成物から接着剤層を形成して硬化させる際に、カルボキシル基および/または酸無水物基、好ましくは、酸無水物基がイソシアネート基と効率的に反応しながら、変性ポリオレフィン重合体(A)の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する親和性を高めて、接着剤層の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する密着力をより一層向上させることができる」ことが記載されており、これらの記載を踏まえると、甲第2号証に記載された「接着剤」は「変性オレフィン重合体(A)」の「イソシアネート基と反応することができる官能基」と「ポリイソシアネート(B)」とが反応してウレタン結合を生じることにより、接着強度に優れる接着剤」を提供という課題を解決するものであるといえる。

一方、甲第2号証には、「変性オレフィン重合体(A)」を「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性」すること、及び、「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」とにより、接着強度を優れたものにすることは記載されておらず、また、これを示唆する記載もない。

したがって、甲第2号証から、甲2発明において、「変性オレフィン重合体(A)」を変性させる単量体について「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」に代えて「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」にすること、また、「ポリイソシアネート(B)」に代えて「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」を用いることを動機づけることはできない。

甲第1号証には、上記「1 取消理由について」「(2)取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)、申立理由A(進歩性)について」「ア 甲第1号証に記載された発明について」で述べたとおり、「プロピレン-ブテン共重合体」に「無水マレイン酸」をグラフトさせたグラフト共重合体、及び、「エポキシ樹脂」を含めた組成物が記載されている。

しかしながら、上述したとおり、甲第2号証には、「変性オレフィン重合体(A)」を変性させる単量体について「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」に代えて「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」にすること、また、「ポリイソシアネート(B)」に代えて「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」を用いることを動機づける記載あるいは示唆する記載はないから、甲第1号証を参酌しても、甲2発明において、「変性オレフィン重合体(A)」を変性させる単量体について「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」に代えて「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」にすること、また、「ポリイソシアネート(B)」に代えて「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」を用いるものとすることはできない。

また、甲第3号証には、「・・・前記絶縁層は、(i)・・・及び融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)の少なくとも一方と、(ii)融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)とを含む樹脂組成物により形成されてなる、電池用包装材料」、「前記融点が110℃以上の変性ポリオレフィン樹脂(B)が、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂、・・・の少なくとも一方である」こと、「前記融点が100℃以下の変性ポリオレフィン樹脂(C)が、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂、・・・の少なくとも一方である」こと、「前記樹脂組成物が、硬化剤をさらに含む」こと、「前記硬化剤は、多官能イソシアネート化合物、・・・、エポキシ化合物、及びオキサゾリン化合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む」ことが記載されているものの、上述したとおり、甲第2号証には、「変性オレフィン重合体(A)」を変性させる単量体について「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」に代えて「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」にすること、また、「ポリイソシアネート(B)」に代えて「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」を用いることを動機づける記載あるいは示唆する記載はないから、甲第3号証を参酌しても、甲2発明において、「変性オレフィン重合体(A)」を変性させる単量体について「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」に代えて「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」にすること、また、「ポリイソシアネート(B)」に代えて「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」を用いるものとすることはできない。

したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲第1、3号証に記載された事項から容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)申立人の主張

特許異議申立書において、申立人は、「本件特許発明1と甲第2号証に記載の発明(甲2発明)とを対比する。・・・すなわち 、本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は構成A、B、C、D、E、F及びGの点で一致しており、構成Eに係る以下の相違点を有している。・・・」(特許異議申立書第29頁第10~20行)と主張し、「構成A」である「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)がエポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された変性オレフィン重合体であり」の構成と「構成D」である「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」は一致点である旨主張している。

確かに、本件発明1の「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」について本件明細書の(本j)の段落【0149】をみると「無水マレイン酸」を用いることが記載され、また、甲第2号証の(甲2a)の請求項1の「α-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され」の「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」について(甲2i)の段落[0205]及び[0211]にも「無水マレイン酸」を用いることが記載されている。また、甲第2号証の(甲2g)の段落[0127]には「組成物、あるいは、それを構成する各成分、具体的には、変性オレフィン重合体(A)、ポリイソシアネート(B)、炭化水素系合成油(D)には、必要に応じて、そのいずれかまたは全てに、エポキシ樹脂、硬化触媒、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤(光安定剤、熱安定剤を含む)、可塑剤、界面活性剤、顔料、揺変剤、増粘剤、粘着付与剤、表面調整剤、沈降防止剤、耐候剤、顔料分散剤、帯電防止剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい」と「エポキシ樹脂」を含んでもよいことが記載されている。

しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、甲第2号証に記載された「接着剤」は「変性オレフィン重合体(A)」の「イソシアネート基と反応することができる官能基」と「ポリイソシアネート(B)」とが反応してウレタン結合を生じることにより、接着強度に優れる接着剤」を提供という課題を解決するものであり、「変性オレフィン重合体(A)」を「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性」すること、及び、「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」とにより、接着強度を優れたものにすることは記載されておらず、また、これを示唆する記載もない。

さらに、甲第2号証の(甲2g)の段落[0127]には「必要に応じて・・・配合してもよい」「添加剤」として「エポキシ樹脂」が記載されているものの、「エポキシ樹脂」と「変性オレフィン重合体(A)」とを反応させることは記載されていないし、(甲2g)の段落[0127]の多数列記される「必要に応じて、・・・配合してもよい」「添加剤」の中で、「エポキシ樹脂」を特に選択する動機付けとなる記載があるともいえない。

したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(エ)小括

以上のとおり、相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲第1、3号証に記載された事項から容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明14について

(ア)対比

本件発明14と甲2発明とを、上記「イ 本件発明1について」「(ア)対比」での検討を踏まえて対比すると、

「炭素数2~20のα-オレフィンの重合体(a)が反応性の官能基を有する単量体で変性された変性オレフィン重合体であり、下記要件(i)および(ii)を満たす変性オレフィン重合体(A)と、
を含む組成物。
要件(i):前記重合体(a)が、炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む
要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」

で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点7:「変性オレフィン重合体(A)」について、本件発明14は、「エポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)で変性された」ものであるのに対し、甲2発明は、「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性された」ものである点。
相違点8:「組成物」について、本件発明1では、「ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B1)」を含むのに対し、甲2発明では、「ポリイソシアネート(B)」を有する点。

(イ)判断

相違点7は、相違点4における、本件発明1の「エポキシ基またはオキサゾリン基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)で変性された」のうち「エポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b1)で変性された」とさらに特定したものである。また、相違点8は、相違点5における、本件発明1の「エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物の少なくとも一方を含む架橋剤(B)」について「ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B1)」と「エポキシ樹脂」をさらに特定したものである。

以下、上記「イ 本件発明1について」「(イ)判断」での検討を踏まえて検討すると、上述のとおり、甲第2号証から、甲2発明において、「変性オレフィン重合体(A)」を変性させる単量体について「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」に代えて「エポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」にすること、また、「ポリイソシアネート(B)」に代えて「ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B1)」を用いることを動機づけることはできないし、また、甲第1号証及び甲3号証を参酌しても、甲2発明において、「変性オレフィン重合体(A)」を変性させる単量体について「イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体」に代えて「エポキシ基に対し反応性の官能基を有する単量体(b)」にすること、また、「ポリイソシアネート(B)」に代えて「ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルより選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B1)」を用いるものとすることはできない。

したがって、本件発明14も、甲2発明及び甲第1、3号証に記載された事項から容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括

以上のとおり、本件発明14も、甲2発明及び甲第1、3号証に記載された事項から容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明2~13、15~16について

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~13、及び、本件発明14を直接的又は間接的に引用する本件発明15~16についても、上記「イ 本件発明1について」及び「ウ 本件発明14について」において検討した理由と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

オ 申立理由B(進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、申立理由B(進歩性)の理由によっては、本件発明1~16に係る特許を取り消すことはできない。

(2)申立理由C(サポート要件)について

ア 申立理由C(サポート要件)の概要

申立理由Cの概要は、以下のとおりである。

(a)本件発明1は、「pKaが11以上である触媒(C)」を含むことを発明特定事項としており、本件明細書の(本g)の段落【0091】には「このような触媒(C)を用いることで、架橋剤(B)として、架橋剤(B1)を用いなくても、低温でも効率よく架橋反応を促進でき、耐薬品性、耐電解液性に優れる接着剤層を形成でき、接着強度に優れる、特に、アルミニウム箔層とポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製フィルム層とを高い強度で接着することができる接着剤層を得ることができる」と記載されている。

しかしながら、本件明細書の(本j)の実施例では、「pKa12」である「ジアザビシクロウンデセン」の1点のみが用いられているだけであり、触媒(C)のpKaが11以上であれば上述した効果を奏するのか不明である。使用した触媒のみが異なる比較例7~10と実施例6のpKaに対する初期接着強度をプロットすると、pKaと接着強度には相関がみられないことから、pKaが11以上であればその効果を奏するとは言えない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~13についても同様である。

(b)本件発明1は「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」ことを発明特定事項としており、本件明細書の段落【0039】には「ΔHが前記上限の規定を満たすと、本組成物から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度に優れる接着剤層を得ることができ、前記下限の規定を満たすと、強度に優れる接着剤層を得ることができる」と記載されている。

しかしながら、本件明細書の(本j)の実施例における変性オレフィン重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱は「32J/g」の1点のみであり、0~32J/gより小さい範囲、32を越えて50J/gまでの範囲であっても上記効果を奏するのか不明である。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~13、本件発明1の上記「要件(ii)」と同様の構成を有する本件発明14、及び、本件発明14を直接的又は間接的に引用する本件発明15~16についても同様である。

イ 判断

(ア)特許法第36条第6項第1号の考え方について

特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

以下、この観点に立って検討する。

(イ)本件発明の課題

本件発明の課題は、本件明細書の(本a)段落【0005】~【0006】の「しかしながら、・・・例えば、アルミニウム箔やポリプロピレンフィルムなどとの接着強度が十分ではなく、低温で接着剤層を形成する際、特に低温(例:80℃以下)養生条件で接着剤を硬化させる際には、得られる接着剤層の接着強度が十分ではなかった。本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、基材や被着体との接着強度に優れる接着剤層、特に低温養生条件下でも接着強度に優れる接着剤層を形成することのできる組成物、および該接着剤層を含む積層体等を提供することを目的とする」との記載からみて、「基材や被着体との接着強度に優れる接着剤層、特に低温養生条件下でも接着強度に優れる接着剤層を形成することのできる組成物、および該接着剤層を含む積層体等を提供すること」であるといえる。

(ウ)判断

a 上記(ア)(a)について

本件発明1の「pKaが11以上である触媒(C)」を含むことについて、本件明細書の(本g)の段落【0091】には「このような触媒(C)を用いることで、架橋剤(B)として、架橋剤(B1)を用いなくても、低温でも効率よく架橋反応を促進でき、耐薬品性、耐電解液性に優れる接着剤層を形成でき、接着強度に優れる、特に、アルミニウム箔層とポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製フィルム層とを高い強度で接着することができる接着剤層を得ることができる」こと、段落【0092】には「前記触媒(C)としては、pKaが11以上の化合物であれば特に制限されないが、架橋剤(B)の架橋反応を促進できる化合物であることが好ましく、このような化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,6-ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン-5等の強塩基性第三級アミン、ホスファゼン塩基を有するホスファゼン触媒が挙げられ、・・・が好ましい」こと、段落【0093】には「前記pKaは、25℃、水溶液中における酸解離定数のことである。また、例えば、リン酸には、3つのpKa、つまり、pKa1、pKa2およびpKa3があるが、本発明におけるpKaは、pKa1、つまり、第一酸解離定数のことをいう」ことが記載されており、「架橋剤(B)の架橋反応を促進できる化合物」であればよいことが理解できる。

また、本件明細書の(本j)段落【0139】~【0150】、【0155】~【0157】、【0171】~【0185】、【0187】の、触媒として「pKa」が「12」である「C-6」を用いた実施例6と、実施例6とは触媒のみが異なり触媒として「pKa」が「8.2~10.9」である「C-1」~「C-5」を用いた比較例7~11との比較からみて、「pKa」が高いほど、変動はあるものの「初期接着強度」が高くなる傾向があることを確認することができる。

一方、申立人は具体的な反証を挙げているわけではない。

そうすると、本件発明1の「触媒(C)」について、「pKaが11以上」であれば、「pKaが11」より小さい場合に比べて「架橋剤(B)」の架橋反応を促進し、「初期接着強度」が高くなることを、当業者であれば理解でき、本件発明の上記課題の解決に資するといえるから、上記(ア)(a)の理由を採用することはできない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~13についても同様である。

b 上記(ア)(b)について

本件発明1の「要件(ii):前記変性オレフィン重合体(A)のJIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/gである」ことについて、本件明細書の(本b)の段落【0067】には「重合体(A)のΔHは、0J/g以上、・・・であり、また、50J/g以下、・・・である。重合体(A)のΔHが前記上限の規定を満たすと、本組成物から低温養生条件下で接着剤層を形成しても、接着強度に優れる接着剤層を得ることができ、前記下限の規定を満たすと、強度に優れる接着剤層を得ることができる。前記重合体(A)のΔHが50J/gを超えると、得られる重合体(A)は、溶剤への溶解性が乏しくなり、固化および析出を起こしやすくなる。」と記載されている。

また、本件明細書の(本j)の段落【0139】~【0150】、【0155】~【0170】、【0185】~【0186】の、「変性オレフィン重合体(A)」として「融解熱」が「32J/g」である「無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(A-1)」を用いると、「60℃3日養生Al箔/CPP密着性」の「初期接着強度」について一定以上のものになることが確認されている。

一方、申立人は具体的な反証を挙げているわけではない。

そうすると、本件発明1の「変性オレフィン重合体(A)」について「JIS K7122に従って測定される融解熱が、0~50J/g」であれば当該「融解熱」が「50J/g」より大きいものに比べて「低温養生条件下」であっても接着強度に優れる接着剤層を得ることができることを、当業者であれば理解でき、本件発明の上記課題の解決に資するといえるから、上記(ア)(b)の理由も採用することはできない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~13、本件発明1の上記「要件(ii)」と同様の構成を有する本件発明14、及び、本件発明14を直接的又は間接的に引用する本件発明15~16についても同様である。

ウ 小括

以上のとおり、申立理由C(サポート要件)は、理由がない。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、申立人がした申立理由B~Cによっても、本件発明1~16を取り消すことはできない。

第6 むすび

以上のとおり、当審が通知した取消理由A~Cおよび申立人が主張する異議申立ての理由A~C及び証拠によっては、本件発明1~16に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700804

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