2020-700747
包装材、包装容器及び蓋体
- 審判番号
- 2020-700747
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-209687外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月30日
- 審決日
- 2021年01月12日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.113-Y (B65D) / P1651.121-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1.手続の経緯
特許第6677341号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年8月9日に出願した特願2018-150441号の一部を、令和1年11月20日に新たな特許出願(特願2019-209687号)としたものであって、令和2年3月17日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年9月30日に特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人」という。)により本件特許異議の申立てがされた。
第2.本件発明
特許第6677341号の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも、プラスチックフィルム、光輝性印刷層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えてなり、前記光輝性印刷層は光輝性顔料及びバインダー樹脂を含み、下記条件1及び2を満たす、包装材。<条件1>前記包装材の外層側から拡散光線反射SCEを測定し、拡散光線反射SCEの分光スペクトルから算出したL*a*b*表色系のL*値をL*SCEとした際に、L*SCEが40以上。続きを表示(全16行)<条件2>前記包装材の外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した60度鏡面光沢度をG60とした際に、G60/L*SCEが1.00以上。【請求項2】G60/L*SCEが1.00以上2.00以下である、請求項1に記載の包装材。【請求項3】G60/L*SCEが1.00以上1.67以下である、請求項1に記載の包装材。【請求項4】G60/L*SCEが1.00以上1.32以下である、請求項1に記載の包装材。【請求項5】少なくとも一部が、請求項1~4の何れか1項に記載された包装材で形成されている包装容器。【請求項6】請求項1~4の何れか1項に記載された包装材で形成されている蓋体。」
第3.申立理由の概要
申立人は、甲第1号証として特開平9-226825号公報(以下「甲1」という。)及び甲第2号証として特開2010-53193号公報(以下「甲2」という。)を提出し、本件発明1~6は、甲1又は甲2に記載された発明であって、本件発明1~6に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、本件発明1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。また、申立人は、本件発明1~6は、甲1又は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1~6に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
なお、以降、甲1、2にそれぞれ記載された発明を、「甲1発明」及び「甲2発明」という。
第4.当審の判断
1.甲1発明を主とする新規性及び進歩性について
(1)本件発明1について
ア.甲1に記載の事項(下線は当審において付した。以下同様。)
(ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は各種包装材の分野の中でも特に、電子レンジによるマイクロ波の照射を受けた時に、内容物の温度が上昇するのを避ける必要がある食品包装用プラスチックフィルムに関するものである。」
(イ)「【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は電子レンジによる加温の際に、マイクロ波の遮断効果が高いために内容物の温度が上昇することがなく、なおかつ包装材を劣化させるスパークの発生を防止する事が可能な包装用プラスチックフィルム又はシートを提供することを目的とするものである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明は、プラスチックフィルム又はシート上に、アルミニウム顔料を含むインキを用いた印刷によるコーティング層を形成させた、電子レンジによる加熱調理に適した包装用プラスチックフィルム及びプラスチックシートに関わるものである。【0009】本発明における必須の条件としては印刷に用いられるインキの顔料としてアルミニウム顔料を使用する事があげられる。プラスチックフィルム上に印刷により形成されたコーティング層は通常膜厚が0.5~2ミクロン程度の層であり、インキのバインダー樹脂中に細かい鱗片状のアルミニウムフレークが幾重にも層をなして分散した構造になっている。・・・。」
(ウ)「【0027】・・・このグラビア印刷をおこなったポリエステルフィルムの印刷コーティング層側に2液性ウレタン樹脂を接着剤として用いて厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネートした。」
(エ)食品包装を形成する際に、プラスチックフィルムを外層側とし、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを内層側とすることは明らかであるから、プラスチックフィルム、印刷コーティング層及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが、この順に外層から積層されているものと認められる。
以上の摘記事項(ア)~(ウ)、及び、認定事項(エ)を総合すると、甲1には以下の甲1発明が記載されている。
「プラスチックフィルム又はシート上に、アルミニウム顔料を含むインキを用いた印刷によるコーティング層を形成し、印刷コーティング層に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネートし、この順に外層側から積層されている構成を備えてなり、印刷コーティング層は、インキのバインダー樹脂中に細かい鱗片状のアルミニウムフレークが幾重にも層をなして分散した構造となっている食品包装用プラスチックフィルム」
イ.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「プラスチックフィルム」は本件発明1の「プラスチックフィルム」に相当し、以下同様に、「アルミニウム顔料」及び「アルミニウム顔料を含むインキを用いた印刷によるコーティング層」は、アルミニウム顔料が光輝性を有することは明らかであるから、それぞれ「光輝性顔料」、「光輝性印刷層」に、「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム」は「シーラント層」に、「バインダー樹脂」は「バインダー樹脂」に、「食品包装用プラスチックフィルム」は「包装材」にそれぞれ相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は以下の点で一致する。
<<一致点1>>
「少なくとも、プラスチックフィルム、光輝性印刷層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えてなり、前記光輝性印刷層は、光輝性顔料及びバインダー樹脂を含む包装材。」
そして、本件発明1と甲1発明は、以下の点で相違する。
<<相違点1>>
本件発明1は、以下の<条件1>を満たすのに対し、甲1には、そのような記載がない点。
<条件1>
前記包装材の外層側から拡散光線反射SCEを測定し、拡散光線反射SCEの分光スペクトルから算出したL*a*b*表色系のL*値をL*SCEとした際に、L*SCEが40以上。
<<相違点2>>
本件発明1は、以下の<条件2>を満たすのに対し、甲1には、そのような記載がない点。
<条件2>
前記包装材の外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した60度鏡面光沢度をG60とした際に、G60/L*SCEが1.00以上。
事案に鑑み、まず上記<<相違点2>>について以下検討する。
甲1発明は、電子レンジによる加温の際に、マイクロ波の遮断効果が高いために内容物の温度が上昇することがなく、なおかつ包装材を劣化させるスパークの発生を防止する事が可能な包装用プラスチックフィルム又はシートを提供することを課題とするものであり(特に、段落【0007】参照。)、当該課題を解決するために、プラスチックフィルム又はシート上に、アルミニウム顔料を含むインキを用いた印刷によるコーティング層を形成したものである。
そして、甲1には、本件発明1において特定するような、G60/L*SCEの値の調整に係る記載や示唆もない上に、甲1発明は、スパークの発生防止を主な課題の一つとし、高レベルの金属光沢による優れた意匠性を特に追求するものではないから、意匠性を追求してG60/L*SCEの値を調整する動機付けがなく、また、あえてスパークの発生防止に影響が出かねないG60/L*SCEの値を調整することには阻害事由がある。
したがって、<<相違点2>>は形式的な相違点ではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
そして、本件発明1は、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、本件発明2~6についても同様に、甲1発明であるとはいえず、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
2.甲2発明を主とする新規性及び進歩性について
(1)本件発明1について
ア.甲2に記載の事項
(ア)「【請求項1】粒子径が5~20μmのアルミニウム微粉末をアクリル樹脂で被覆することにより得られた樹脂被覆アルミニウムペースト、およびバインダー樹脂を含む高輝度インキ組成物において樹脂被覆アルミニウムペーストが高輝度インキ組成物中、固形分換算で2~30重量%であることを特徴とする耐レトルト用高輝度ラミネートインキ組成物。」
(イ)「【0001】本発明は、樹脂被膜されたアルミニウムペーストを有する耐レトルト用高輝度ラミネートインキ組成物に関する。更に詳しくは、アルミニウム微粉末の表面にアクリル樹脂被膜層を有する樹脂被膜アルミニウムペーストに於いて、該ペーストがインキに配合された時、優れた耐レトルト性、耐薬品性を有する耐レトルト用高輝度ラミネートインキ組成物およびそれを用いてなる耐レトルト性軟包装材に関する。」
(ウ)「【0005】本発明の目的は、上記のようなレトルト処理に伴う課題を解決し、耐薬品性に優れ、また輝度感に優れた樹脂被覆アルミニウムペーストを用いた耐レトルト用高輝度ラミネートインキ組成物およびそれを用いてなる耐レトルト性軟包装材を提供することである。」
(エ)「【0011】本発明の耐レトルト用高輝度ラミネートインキ組成物を軟包装材に用いると、ボイル/レトルト処理を行ってもインキ印刷部分が褪色、消失することなく、また輝度インキの特性である輝度感を保持できる。そのため意匠性、美称性に優れた軟包装材が得られる。」
(オ)「【0066】印刷構成としては、通常のラミネートインキの印刷に用いるのと同様な構成が可能である。例えば、構成(A):プラスチックフイルム(1)/高輝度ラミネートインキ層/接着剤層/ヒートシール性プラスチックフイルム(2)・・・等が挙げられる。」
(カ)耐レトルト性軟包装材を形成する際に、プラスチックフイルムが外層側となり、ヒートシール性プラスチックフイルムが内層側となることは明らかであるから、プラスチックフイルム、高輝度ラミネートインキ層及びヒートシール性プラスチックフイルムが、この順に外層から積層されているものと認められる。
以上の摘記事項(ア)~(オ)、認定事項(カ)を総合すると、甲2には以下の甲2発明が記載されている。
「プラスチックフイルムに高輝度ラミネートインキ層及びヒートシール性プラスチックフイルムを積層し、この順に外層側から積層されている構成を備えてなり、高輝度ラミネートインキ層は、樹脂被覆アルミニウムペースト及びバインダー樹脂を含む耐レトルト性軟包装材。」
イ.対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「プラスチックフイルム」は本件発明1の「プラスチックフィルム」に相当し、以下同様に、「高輝度ラミネートインキ層」は、その構成からして「光輝性印刷層」に、「ヒートシール性プラスチックフイルム」は「シーラント層」に、「樹脂被覆アルミニウムペースト」は「光輝性顔料」に、「バインダー樹脂」は「バインダー樹脂」、「耐レトルト性軟包装材」は「包装材」にそれぞれ相当する。
よって、本件発明1と甲2発明は以下の点で一致する。
<<一致点2>>
「少なくとも、プラスチックフィルム、光輝性印刷層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えてなり、前記光輝性印刷層は、光輝性顔料及びバインダー樹脂を含む包装材。」
そして、本件発明1と甲2発明は、以下の点で相違する。
<<相違点3>>
本件発明1は、以下の<条件1>を満たすのに対し、甲2には、そのような記載がない点。
<条件1>
前記包装材の外層側から拡散光線反射SCEを測定し、拡散光線反射SCEの分光スペクトルから算出したL*a*b*表色系のL*値をL*SCEとした際に、L*SCEが40以上。
<<相違点4>>
本件発明1は、以下の<条件2>を満たすのに対し、甲2には、そのような記載がない点。
<条件2>
前記包装材の外層側からJIS Z8741:1997に準拠して測定した60度鏡面光沢度をG60とした際に、G60/L*SCEが1.00以上。
事案に鑑み、まず上記<<相違点4>>について以下検討する。
上記ア.の摘記事項(ウ)及び(エ)の記載から、甲2発明は、レトルト処理を行ってもインキ印刷部分が褪色、消失することなく、また輝度インキの特性である輝度感を保持できるようにしたものである。
そして、甲2には、本件発明1において特定するような、G60/L*SCEの値の調整に係る記載や示唆もない上に、甲2発明は、レトルト処理に対する褪色防止を主な課題の一つとし、高レベルの金属光沢による優れた意匠性を特に追求するものではないから、意匠性を追求してG60/L*SCEの値を調整する動機付けがなく、また、あえてレトルト処理に対する褪色防止に影響が出かねないG60/L*SCEの値を調整することには阻害事由がある。
したがって、<<相違点4>>は形式的な相違点ではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明ではない。
そして、本件発明1は、その他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、本件発明2~6についても同様に、甲2発明であるとはいえず、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
第4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~6に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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