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特許異議申立

2020-700586

はんだペースト及びはんだペースト用フラックス

審判番号
2020-700586
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-098664
登録番号
6643745
請求日
2020年08月12日
審決日
2021年10月20日
公報発行日
2022年01月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】千住金属工業株式会社
  • 【権利者代理人】及川 周
  • 【権利者代理人】五十嵐 光永
  • 【権利者代理人】服部 映美
  • 【異議申立人】中谷 浩美
審判長/審判官
  • 審判長 平塚 政宏
  • 審判官 池渕 立
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.113-YAA(B23K) / P1651.121-YAA(B23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6643745号発明「はんだペースト及びはんだペースト用フラックス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6643745号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。 特許第6643745号の請求項1~16に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6643745号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、令和 1年 5月27日を出願日とする特願2019-98664号(以下、「本願」という。)であって、令和 2年 1月 9日にその特許権の設定登録がなされ、同年 2月12日にその特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許について、同年 8月12日付けで、特許異議申立人中谷浩美(以下、「申立人」という。)により、請求項1~16(全請求項)に係る本件特許に対して特許異議の申立てがなされ、同年11月30日付けで取消理由が通知され、特許権者により令和 3年 1月22日に意見書が提出されるとともに、訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、申立人により同年 6月 9日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正請求の趣旨、及び、訂正の内容 (1)訂正請求の趣旨 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6643745号の特許請求の範囲を、令和 3年 1月22日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5~16について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。 (2)訂正の内容 ア 訂正事項1 請求項5について、本件訂正前の 「前記合金組成は、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種を含有する」と記載されているのを、 「前記合金組成は、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、前記酸変性ロジン以外のロジンとして、重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含む」と訂正する。 請求項5を引用する請求項6、9~16も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 請求項7について、本件訂正前の 「請求項1~6のいずれか1項に記載のはんだペースト。」と記載されているのを、 「請求項1~4、6のいずれか1項に記載のはんだペースト。」と訂正する。 請求項7を引用する請求項8~16も同様に訂正する。 2 本件訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1は、訂正前の請求項5が引用する請求項1に記載された、「酸変性ロジン」を含む「ロジン」について、当該「酸変性ロジン」以外にさらに「重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み」、当該「酸変性ロジン以外のロジン」を「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」ことを追加で限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 「ロジン」が「酸変性ロジン」以外にさらに「重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含」むことは、訂正前の請求項7に記載されており、また、「酸変性ロジン以外のロジン」を「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」ことは、訂正前の請求項8に記載されている。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 上記アのとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正前の請求項7が引用する請求項1~6のうち請求項5を削除するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ また、訂正事項2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 上記アのとおり、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)一群の請求項について 本件訂正によって、本件訂正前の請求項5を引用する請求項6~16が連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項5~16は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、上記一群の請求項についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔5~16〕を訂正単位として訂正の請求をするものである。 (4)独立して特許を受けることができるかについて 本件特許異議の申立ては、全請求項(請求項1~16)を対象に申し立てられたものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件は課されない。 (5)小括 以上のとおりであるから、令和 3年 1月22日に特許権者によって請求された本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔5~16〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、請求項1~16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明16」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を表す。 「【請求項1】 はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 【請求項2】 更に、前記合金組成は、下記(1a)式を満たす、請求項1に記載のはんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb≦25200 (1a) 上記(1a)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 【請求項3】 更に、前記合金組成は、下記(1b)式を満たす、請求項1に記載のはんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb≦5300 (1b) 上記(1b)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 【請求項4】 更に、前記合金組成は、下記(2a)式を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載のはんだペースト。 0.02≦2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦0.9 (2a) 上記(2a)式中、Bi及びPbは、各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。 【請求項5】 更に、前記合金組成は、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、前記酸変性ロジン以外のロジンとして、重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項6】 前記酸変性ロジンは、アクリル酸変性ロジン、アクリル酸変性水添ロジン、マレイン酸変性ロジン及びマレイン酸変性ロジン水添ロジンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~5のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項7】 更に、前記酸変性ロジン以外のロジンとして、重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~4、6のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項8】 フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含む、請求項7に記載のはんだペースト。 【請求項9】 前記チキソ剤の含有量は、フラックス全体の総量に対して0.1質量%以上15.0質量%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項10】 前記チキソ剤は、アミド化合物及びエステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項11】 前記アミド化合物は、ポリアミド、ビスアミド及びモノアミドからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項10に記載のはんだペースト。 【請求項12】 前記チキソ剤は、前記アミド化合物を少なくとも含有し、フラックス全体の総量に対して前記アミド化合物を0質量%超15質量%以下含む、請求項10又は11に記載のはんだペースト。 【請求項13】 前記エステル化合物は、ヒマシ硬化油を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項14】 前記チキソ剤は、前記エステル化合物を少なくとも含有し、フラックス全体の総量に対して前記エステル化合物を0質量%超8質量%以下含む、請求項10~13のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項15】 更に、フラックス全体の総量に対して有機酸を0質量%以上15質量%以下含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のはんだペースト。 【請求項16】 更に、フラックス全体の総量に対して、アミンを0質量%以上8質量%以下、有機ハロゲン化合物を0質量%以上8質量%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0質量%以上3質量%以下、及び酸化防止剤を0質量%以上8質量%以下含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のはんだペースト。」 第4 申立理由の概要 1 申立人は、証拠方法として、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証を除いていずれも本願の出願日前に、日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記甲第1~11号証を提出して、以下の申立理由1~13により、請求項1~16に係る本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1、2~4、5、6、9、10、13、15、16に係る発明は、甲第8~11号証を参照すれば、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として一部採用) (2)申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として一部採用) (3)申立理由3(新規性) 本件訂正前の請求項1、2~4、5、6、9~12、15、16に係る発明は、甲第8~11号証を参照すれば、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として一部採用) (4)申立理由4(進歩性) 本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として一部採用) (5)申立理由5(新規性) 本件訂正前の請求項1、2~4、5、6、9、10~12、15、16に係る発明は、甲第8~11号証を参照すれば、甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (6)申立理由6(進歩性) 本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (7)申立理由7(新規性) 本件訂正前の請求項1、2~4、5~12、15に係る発明は、甲第8~11号証を参照すれば、甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (8)申立理由8(新規性) 本件訂正前の請求項1、2~4、5、9、10、13~15に係る発明は、甲第8~11号証を参照すれば、甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (9)申立理由9(進歩性) 本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (10)申立理由10(新規性) 本件訂正前の請求項1、2~4、5、6、9、10、13、14に係る発明は、甲第8~11号証を参照すれば、甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (11)申立理由11(進歩性) 本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (12)申立理由12(新規性) 本件訂正前の請求項1、2~4、5、6、9、10、13~16に係る発明は、甲第8~11号証を参照すれば、甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) (13)申立理由13(進歩性) 本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。(取消理由として不採用) 2 証拠方法 甲第1号証:特開2009-154170号公報 甲第2号証:国際公開第2016/199747号 甲第3号証:国際公開第2017/065076号 甲第4号証:特開2019-13926号公報 甲第5号証:国際公開第2018/193960号 甲第6号証:特開2010-46689号公報 甲第7号証:特開2008-62242号公報 甲第8号証:埼玉県産業技術総合センターによる試験成績書 甲第9号証:JISZ3282:2017の抜粋 甲第10号証:埼玉県産業技術総合センターによる試験成績書 甲第11号証:埼玉県産業技術総合センターによる試験成績書 なお、申立人が提出した、上記甲第1号証~甲第11号証をそれぞれ「甲1」~「甲11」ということもある。 第5 取消理由の概要 令和 2年11月30日付けで通知した取消理由は、上記申立理由1~4に基いて通知された、次の取消理由1~4である。 取消理由1:本件訂正前の請求項5、6、9、10、13、15、16に係る発明は、甲第8号証を参照すれば、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。 取消理由2:本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 取消理由3:本件訂正前の請求項5、6、9~12、15、16に係る発明は、甲第8号証を参照すれば、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。 取消理由4:本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第6 当審の判断 1 甲1を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由1、2及び取消理由1、2について) (1)甲1に記載された事項と発明 ア 甲1には、以下の事項が記載されている(なお、「…」は記載の省略を表し、下線は当審が付したものである。以下同様。)。 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、特殊なチキソトロピック剤や溶剤を用いることなく、リフロー炉におけるソルダーペーストの加熱だれが抑制され、かつ、ボイドを発生させず、得られるフラックス残渣の色調が良好なソルダーペーストを提供することを目的とする。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 本発明のはんだ用フラックスは、フラックスベース、溶剤、チキソトロピック剤および活性剤を含有してなるものであって、フラックスベースとして、アルコール変性ジシクロペンタジエン系樹脂の水素化物(A)(以下、(A)成分と言う。)を含有することを特徴とする。 … 【0020】 また、フラックスベースには、必要に応じて、(A)成分以外の公知の樹脂を併用することもできる。フラックスベースに用いられる公知の樹脂としては、具体的には、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水添重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、変性ロジン(例えば、アクリル酸変性ロジン等)、水添変性ロジン(例えば、アクリル酸変性ロジンの水素化物等)、各種ロジンエステル類、その他各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂や、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂等の合成樹脂等があげられる。これらは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら公知のフラックスベースを用いる場合には、通常、(A)成分の使用量がフラックスベース中、5重量%以上程度含まれるようにすることが好ましい。」 「【実施例】 【0029】 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。 … 【0031】 製造例2(水素化アルコール変性ジシクロペンタジエン樹脂) 製造例1で得た水酸基含有石油樹脂a100重量部、シクロヘキサン100重量部および安定化ニッケル触媒(日揮化学(株)製、商品名「N-113」)0.4重量部をオートクレーブに仕込み、水素圧力18MPaの高圧水素雰囲気下において、270℃で5時間反応させた。触媒を濾別した後、200℃、2.7kPaで15分間減圧蒸留することにより、軟化点93℃、色調1ガードナー以下、水酸基価143mgKOH/g、重量平均分子量530(GPC法におけるポリスチレン換算値)の水酸基含有石油樹脂の水素化物A1を得た。 … 【0034】 実施例1~6、比較例1~7(加熱だれ、気泡ボイド、相溶性、残渣色調の評価) 【0035】 (フラックスの調製) 表1に示す原料をプラネタリーミルで混合し、はんだ用フラックスを調製した。なお、表中の各成分の使用量は重量部である。 【0036】 (ソルダーペーストの調製) 前記フラックス10部(固形分重量)に、Sn-Ag-Cu系はんだ金属粉(Sn96.5重量%、Ag3重量%、Cu0.5重量%;商品名「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」、三井金属鉱業(株)製)を90部加え、プラネタリーミルで1時間混練し、ソルダーペーストを調製した。」 「【0043】 [図:0001380932000001.jpg] … 【0047】 表1~4中、水素化石油樹脂Aは、荒川化学工業(株)製、商品名「アルコンP-90」、軟化点90℃、水素化石油樹脂Bは、荒川化学工業(株)製、商品名「アルコンP-140」、軟化点140℃、水添アクリル化ロジンは、荒川化学工業(株)製、商品名「KE-604」、硬化ひまし油は、豊国製油(株)製、商品名「カスターワックス」を用いた。」 イ 上記アの記載によれば、甲1に記載されたはんだ用フラックスは、フラックスベース、溶剤、チキソトロピック剤および活性剤を含有してなるものであって、当該フラックスベースは、アルコール変性ジシクロペンタジエン系樹脂の水素化物(A)を含有するものであり(【0012】)、必要に応じてロジン系樹脂を含有し得るものである(【0020】)。 ウ 上記【0035】の記載と上記【0047】の記載を参照すると、上記【表1】には、はんだ用フラックスの実施例が記載されており、そのうち、実施例1のはんだ用フラックスに注目すると、製造例2の樹脂A1が2重量部、水添アクリル化ロジン(荒川化学工業(株)製、商品名「KE-604」)が39重量部、チキソトロピック剤として硬化ひまし油(豊国製油(株)製、商品名「カスターワックス」)が10.5重量部、溶剤としてヘキシルカルビトールが46.5重量部、活性剤としてアジピン酸が1重量部と、ジエチエルアミン臭化水素酸塩が1重量部をプラネタリーミルで混合して、全重量部を100重量部としたものである。 エ 上記【0036】によれば、上記ウのはんだ用フラックスを10部と、Sn-Ag-Cu系はんだ金属粉(Sn96.5重量%、Ag3重量%、Cu0.5重量%;商品名「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」、三井金属鉱業(株)製)を90部加えて、プラネタリーミルで1時間混練することにより、ソルダーペーストが調製されている。 オ 甲1には、上記イ~エの検討を総合すれば、実施例1のはんだ用フラックスとSn-Ag-Cu系はんだ金属粉から調製された上記エのソルダーペーストに注目すると、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1発明」という。)。 「はんだ用フラックス10部と、はんだ金属粉90部をプラネタリーミルで1時間混練することによって調製されたソルダーペーストであって、 前記はんだ金属粉は、Sn-Ag-Cu系はんだ金属粉(Sn96.5重量%、Ag3重量%、Cu0.5重量%;商品名「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」、三井金属鉱業(株)製)であり、 前記はんだ用フラックスは、その100重量部が、 製造例2の樹脂A1を2重量部、 水添アクリル化ロジン(荒川化学工業(株)製、商品名「KE-604」)を39重量部、 チキソトロピック剤として硬化ひまし油(豊国製油(株)製、商品名「カスターワックス」)を10.5重量部、 溶剤としてヘキシルカルビトールを46.5重量部、 活性剤としてアジピン酸を1重量部とジエチエルアミン臭化水素酸塩を1重量部、をプラネタリーミルで混合したものである、 ソルダーペースト。」 (2)本件発明1を引用する本件発明5と本件発明5を引用する本件発明6、7、9、10、13、15、16について (2-1)本件発明1を引用する本件発明5と甲1発明との対比 ア 本件発明1を引用する本件発明5(以下、「本件発明5(1)」という。)は、他の発明を引用しない形式で次のように書き下すことができる。なお、下線部は本件発明5の特定事項に該当する。 「 はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下であり、 前記酸変性ロジン以外のロジンとして、重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、 フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含む、はんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。」 イ 甲1発明の「はんだ金属粉」、「はんだ用フラックス」、「ソルダーペースト」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」に相当する。 ウ 甲1発明の「水添アクリル化ロジン」は、アクリル酸で変性されたものであるから、本件発明5(1)の「ロジン」に含まれる「酸変性ロジン」に相当する。また、甲1発明において「はんだ用フラックス」が「水添アクリル化ロジンを39重量部」「含有する」ことは、本件発明5(1)の「ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下」であること、及び、「酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である」ことに相当する。 エ 甲1発明の「チキソトロピック剤」としての「硬化ひまし油」は、本件発明5(1)の「チキソ剤」に相当する。 オ 甲1発明の「溶剤」としての「ヘキシルカルビトール」は、本件発明5(1)の「溶剤」に相当する。 カ 甲1発明の「Sn96.5重量%、Ag3重量%、Cu0.5重量%」は、本件発明5(1)の「Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種」及び「残部がSn」の条件を満たすものである。 キ そうすると、本件発明5(1)と甲1発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnを含む合金組成を有し、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。」の点。 <相違点1> 「はんだ粉末」の組成が、本件発明5(1)では、Ag,Cu,残部Sn以外に、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下」を有し、かつ、「下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金」、「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。」と特定されているのに対して、甲1発明では、Ag,Cu,Sn以外の元素の含有については不明である点。 <相違点2> 「酸変性ロジン以外のロジン」について、本件発明5(1)では、「重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含」むのに対して、甲1発明が含むロジンは、「水添アクリル化ロジン」すなわち「酸変性ロジン」のみであるから、甲1発明は「酸変性ロジン以外のロジン」を含まない点。 <相違点3> 「酸変性ロジン以外のロジン」について、本件発明5(1)では、「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」のに対して、甲1発明では、「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」含むことは特定されていない点。 (2-2)相違点1についての検討 ア 甲1発明の「はんだ金属粉」は、三井金属鉱業(株)製で商品名が「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」という市販のはんだ金属粉である。 イ そして、甲第8号証の試験成績書には、上記市販のはんだ金属粉である「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」の5つの異なるロットについて、ひ素と鉛とビスマスの含有量をICP発光分析装置によって微量分析した結果が示されている。上記5つの異なるロットの試験結果の部分のみを抜粋すると、次のとおりである。 「 [図:0001380932000002.jpg] [図:0001380932000003.jpg] [図:0001380932000004.jpg] [図:0001380932000005.jpg] [図:0001380932000006.jpg] 」 そこで、上記5つの試験成績書の試験結果において、含有量の単位が「%(m/m)」で表示されているところ「質量ppm」に変換した上で、(1)式の右辺及び(2)式の中辺を計算した値を追加して一覧に表示すると次のとおりである。 [表1] [図:0001380932000007.jpg] ウ 上記表1によれば、5つのロットのいずれにおいても、As、Pb、Biの含有量と、(1)式右辺及び(2)式中辺の値は、本件発明5(1)の条件を満たしていることが確認できる。 エ そして、三井金属鉱業(株)製で商品名が「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」という市販のはんだ金属粉を用いている甲1発明の「はんだ金属粉」も、上記5つのロットと同じ製品であり、これら5つのロットと同様の組成であると考えられるから、甲1発明の「はんだ金属粉」は、相違点1に係る本件発明5(1)の特定事項の条件の全てを満たしているといえる。 オ したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 (2-3)相違点2についての検討 ア 甲1の段落【0020】には、フラックスベースに(A)成分(甲1発明における樹脂A1が該当。)と併用することができる公知の樹脂として、「ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水添重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、変性ロジン(例えば、アクリル酸変性ロジン等)、水添変性ロジン(例えば、アクリル酸変性ロジンの水素化物等)、各種ロジンエステル類、その他各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂」があげられ、「これらは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。」と記載されている。 イ したがって、甲1発明の「はんだ用フラックス」に含まれる樹脂として、「水添アクリル化ロジン」に加えて、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン等の「酸変性ロジン以外のロジン」を併用するようにすること、すなわち相違点2に係る本件発明5(1)の特定事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、複数種のロジンを併用することによって、酸化抑制等のロジンの機能が向上することは、当業者が予測し得る程度のことであり、格別のこととはいえない。 (2-4)相違点3についての検討 上記(2-3)で検討したとおり、甲1には、フラックスベースに(A)成分と併用することができる公知の樹脂として、「ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水添重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、変性ロジン(例えば、アクリル酸変性ロジン等)、水添変性ロジン(例えば、アクリル酸変性ロジンの水素化物等)、各種ロジンエステル類、その他各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂」があげられているが、「フラックス全体の総量」に対する「酸変性ロジン以外のロジン」の割合をどの程度にするかについて記載も示唆もされておらず、「酸変性ロジン以外のロジン」について「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」ものとする動機を見出せない。 したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明5(1)の特定事項とすることが当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 なお、申立人は、本件訂正前の請求項8に係る発明について、すなわち、本件訂正後の請求項5に係る発明について、甲1を主引例とする進歩性についての申立理由を主張していない。 (2-5)小括 したがって、本件発明5(1)は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明5(1)を引用する本件発明6、7、9、10、13、15、16、についても同様の理由によって、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10、13、15、16であって本件発明5の特定事項を含まないものについて (3-1)本件発明1と甲1発明との対比 上記(2)(2-1)と同様に検討すると、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnを含む合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。」の点。 <相違点4> 「はんだ粉末」が、本件発明1では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる」ものであるのに対して、甲1発明では、「Sn-Ag-Cu系はんだ金属粉(Sn96.5重量%、Ag3重量%、Cu0.5重量%;商品名「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」、三井金属鉱業(株)製)」である点。 (3-2)相違点4についての検討 本件発明1のはんだ粉末に含まれる必須成分は、As,Bi,Pb,残部Snの4元素のみに限られている(いわゆるクローズド形式の合金組成である)のに対して、甲1発明のはんだ金属粉には、必須成分としてAg及びCuが含まれるから、両者ははんだ粉末に含まれる必須成分の点で相違しているので、相違点4は実質的な相違点である。 そして、甲1発明のはんだ金属粉は、Sn96.5重量%、Ag3重量%、Cu0.5重量%という組成の、三井金属鉱業(株)製の「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」という商品名のはんだ金属粉であって、このような商品として販売されており特定の性能を備えることを担保された特定組成のはんだ金属粉において、必須成分であるAg及びCuを排除する動機を見出すことができない。 したがって、甲1発明において、そのはんだ金属粉からAgとCuを排除すること、すなわち相違点4に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 (3-3)小括 よって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10、13、15、16であって本件発明5の特定事項を含まないものについても同様である。 2 甲2を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由3、4及び取消理由3、4について) (1)甲2に記載された事項と発明 ア 甲2には、以下の事項が記載されている。 2ア 「発明が解決しようとする課題 [0005] かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、絶縁抵抗性の低下を招く臭素系活性剤を含有するフラックスにおいて、はんだ金属の濡れ性を確保しながら、リフロー工程で生じるフラックス残渣が優れた絶縁抵抗性を示し、かつはんだペーストの保存安定性をも向上させる鉛フリーはんだ用フラックスを提供することにある。」 2イ 「発明を実施するための形態 [0020]〔鉛フリーはんだ用フラックス〕 本発明の鉛フリーはんだ用フラックス(以下「本件フラックス」という)は、(A)ロジン系ベース樹脂(以下、「(A)成分」という)、(B)活性剤(以下、「(B)成分」という)、(C)チキソトロピック剤(以下、「(C)成分」という)および(D)溶剤(以下、「(D)成分」という)を含有し、当該活性剤が(b1)二塩基酸活性剤(以下、「(b1)成分」という)、(b2)臭素系活性剤(以下、「(b2)成分」という)および(b3)一般式(1)で表されるアミン系活性剤(以下、「(b3)成分」という)を含むものである。 [0021][化2] R1-NH-R2 (1) [0022](式(1)中、R1およびR2は独立して、炭素数6~10のアルキル基を示す。) 本件フラックスを、はんだ粉末と混合することにより、濡れ性を維持しながら、リフロー工程後のフラックス残渣が優れた絶縁抵抗性を示すはんだペーストを得ることができる。 [0023] 前記(A)成分としては、各種公知のものを特に限定なく利用することができる。前記(A)成分として、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の天然ロジンもしくはこれらの水素化物(水素化ロジン);アクリル化ロジン、不均化ロジン、ホルミル化ロジン、フマル化ロジン、マレイン化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン類もしくはこれらの水素化物などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、はんだペーストの濡れ性の点からアクリル化ロジンの水素化物、水素化ロジンおよび重合ロジンが好ましい。」 2ウ 「[0050]〔鉛フリーはんだペースト〕 本発明の鉛フリーはんだペーストは、本件フラックスと、鉛フリーはんだ粉末とを含有するものである。 [0051] 前記鉛フリーはんだ粉末は、鉛を含有しないものであれば、各種公知のものを特に制限なく使用することができる。前記鉛フリーはんだ粉末として、Snをベースとする鉛フリーはんだ粉末、例えばSn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Sb系、Sn-Zn系、Sn-Bi系の鉛フリーはんだ粉末が好ましい。また、前記鉛フリーはんだ粉末は、Ag、Al、Au、Bi、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、In、Ni、P、Pt、Sb、Znの1種又は2種以上の元素がドープされたものであってよい。前記鉛フリーはんだ粉末の具体例としては、Sn95Sb5、Sn99.3Cu0.7、Sn97Cu3、Sn92Ag2Cu6、Sn99Ag0.3Cu0.7、Sn95Ag1Cu4、Sn96.5Ag3Cu0.5、Sn97Ag3、Sn96.3Ag3.7、Sn42-Bi58、Sn-10Sb等を例示することができる。また、前記鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径は特に限定されず、通常は1~50μm程度、好ましくは15~40μmである。また、粉末の形状も特に限定されず、例えば、球形および不定形が挙げられる。なお、球形とは、好ましくは、粉末の縦横のアスペクト比が1.2以内であることを意味する。」 2エ 「[0055]<フラックスの調製> 実施例1 アクリル化ロジンの水素化物(商品名「KE-604」、荒川化学工業(株)製)を45重量%、グルタル酸(東京化成工業(株)製)を1重量%、アミド系チキソトロピック剤(製品名「MA-WAX-O」、12-ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド、KFトレーディング(株)製)を6重量%、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールを2重量%、ジオクチルアミンを1.5重量%およびヘキシルジグリコールを44.5重量%となるように混合し、加熱下で溶融させ、鉛フリーはんだ用フラックスを調製した。」 2オ 「[0058](鉛フリーはんだペーストの調製) 市販の鉛フリーはんだ粉末(96.5Sn/3Ag/0.5Cu、三井金属(株)製、粒径20~38μm、通常品)および実施例1のフラックスを順に89重量%および11重量%となるようソフナーにて混練し、はんだペーストを調製した。実施例2~13および比較例1~5のフラックスについても、実施例1と同様の方法ではんだペーストを調製した。」 2カ 「[0065][表1] [図:0001380932000008.jpg] 」(当審注:表1の一部のみ抜粋) 2キ 「[0066](化合物の略号) ・KE-604:アクリル化ロジンの水素化物(荒川化学工業(株)製) … ・GA:グルタル酸 … ・BMPD:2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール … ・DOA:ジオクチルアミン … ・MAWAXO:12-ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド(KFトレーディング(株)製) ・HeDG:ジエチレングリコールモノへキシルエーテル(ヘキシルジグリコール) …」 イ 上記2イの記載によれば、甲2に記載された鉛フリーはんだ用フラックスは、(A)ロジン系ベース樹脂、(B)活性剤、(C)チキソトロピック剤および(D)溶剤を含有してなるものである([0020])。 ウ 上記2エと2カの[表1]には、鉛フリーはんだ用フラックスの実施例が記載されており、そのうち、実施例1に注目すると、アクリル化ロジンの水素化物(商品名「KE-604」、荒川化学工業(株)製)を45.0重量%、グルタル酸(GA)(東京化成工業(株)製)を1.0重量%、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール(BMPD)を2.0重量%、ジオクチルアミン(DOA)を1.5重量%、アミド系チキソトロピック剤(製品名「MA-WAX-O」、12-ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド、KFトレーディング(株)製)を6.0重量%、およびヘキシルジグリコール(HeDG)を44.5重量%含有するものである。 エ 上記2オの[0058]によれば、上記ウの鉛フリーはんだ用フラックスを11重量%と、鉛フリーはんだ粉末(96.5Sn/3Ag/0.5Cu、三井金属(株)製、粒径20~38μm、通常品))を89重量%をソフナーで混練することにより、はんだペーストが調製されている。 オ 甲2には、上記イ~エの検討を総合すれば、実施例1の鉛フリーはんだ用フラックスと鉛フリーはんだ粉末から調製された上記エのはんだペーストに注目すると、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲2発明」という。)。 「鉛フリーはんだ用フラックス11重量%と、鉛フリーはんだ粉末89重量%から調製されたはんだペーストであって、 前記鉛フリーはんだ粉末は、「96.5Sn/3Ag/0.5Cu」(三井金属(株)製)であり、 前記鉛フリーはんだ用フラックスは、 (A)ロジン系ベース樹脂として、アクリル化ロジンの水素化物(商品名「KE-604」、荒川化学工業(株)製)を45.0重量%、 (b1)二塩基酸活性剤として、グルタル酸(東京化成工業(株)製)を1.0重量%、 (b2)臭素系活性剤として、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールを2.0重量%、 (b3)アミン系活性剤として、ジオクチルアミンを1.5重量%、 (C)チキソトロピック剤として、アミド系チキソトロピック剤(製品名「MA-WAX-O」、12-ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド、KFトレーディング(株)製)を6.0重量%、 (D)溶剤として、ヘキシルジグリコールを44.5重量% を含有する、はんだペースト。」 (2)本件発明1を引用する本件発明5と本件発明5を引用する本件発明6、7、9~12、15、16について (2-1)本件発明5(1)と甲2発明との対比 ア 甲2発明の「鉛フリーはんだ粉末」、「鉛フリーはんだ用フラックス」、「はんだペースト」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」に相当する。 イ 甲2発明の「(A)ロジン系ベース樹脂」としての「アクリル化ロジンの水素化物(商品名「KE-604」、荒川化学工業(株)製)」は、本件発明5(1)の「ロジン」及び「酸変性ロジン」に相当する。また、甲2発明において「鉛フリーはんだ用フラックス」が「(A)ロジン系ベース樹脂として、アクリル化ロジンの水素化物を45重量%」「含有する」ことは、本件発明5(1)の「ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下」であること、及び、「酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である」ことに相当する。 ウ 甲2発明の「(C)チキソトロピック剤として、アミド系チキソトロピック剤(製品名「MA-WAX-O」、12-ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド、KFトレーディング(株)製)」は、本件発明5(1)の「チキソ剤」に相当する。 エ 甲2発明の「(D)溶剤として、ヘキシルジグリコール」は、本件発明5(1)の「溶剤」に相当する。 オ 甲2発明の「96.5Sn/3Ag/0.5Cu」は、本件発明5(1)の「Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種」及び「残部がSn」の条件を満たすものである。 カ 上記1(2)(2-2)の検討を参照すれば、甲2発明の「鉛フリーはんだ粉末」である「96.5Sn/3Ag/0.5Cu」(三井金属(株)製)は、甲8号証の試験成績書に示されるように、微量成分としてAs,Pb,Biを含有しており、その含有量は、本件発明5(1)の条件である「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下」及び「下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり」、「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」との条件を満たすものである。 キ そうすると、本件発明5(1)と甲2発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnを含む合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。」の点。 <相違点5> 「酸変性ロジン以外のロジン」について、本件発明5(1)では、「重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含」むのに対して、甲2発明が含むロジンは、「アクリル化ロジンの水素化物(商品名「KE-604」、荒川化学工業(株)製)」すなわち「酸変性ロジン」のみであるから、甲2発明は「酸変性ロジン以外のロジン」を含まない点。 <相違点6> 「酸変性ロジン以外のロジン」について、本件発明5(1)では、「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」のに対して、甲2発明では、「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」含むことは特定されていない点。 (2-2)相違点5についての検討 ア 甲2の段落[0023]には、(A)ロジン系ベース樹脂として、「ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の天然ロジンもしくはこれらの水素化物(水素化ロジン);アクリル化ロジン、不均化ロジン、ホルミル化ロジン、フマル化ロジン、マレイン化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン類もしくはこれらの水素化物など」があげられ、「これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。」と記載されている。 イ したがって、甲2発明の「(A)ロジン系ベース樹脂」として、「アクリル化ロジンの水素化物(商品名「KE-604」、荒川化学工業(株)製)」に加えて、水素化ロジン、重合ロジン、不均化ロジン等の「酸変性ロジン以外のロジン」を併用するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、複数種のロジンを併用することによって、酸化防止等のロジンの機能が向上することは、当業者が予測し得る程度のことであり、格別のこととはいえない。 (2-3)相違点6についての検討 上記(2-2)で検討したとおり、甲2には、(A)ロジン系ベース樹脂である、アクリル化ロジンの水素化物(商品名「KE-604」、荒川化学工業(株)製)と組み合わせて使用することができる樹脂として、水素化ロジン、重合ロジン、不均化ロジン等の「酸変性ロジン以外のロジン」があげられているが、「フラックス全体の総量」に対する「酸変性ロジン以外のロジン」の割合をどの程度にするかについて記載も示唆もされておらず、「酸変性ロジン以外のロジン」について「フラックス全体の総量に対して」「0質量%超45質量%以下含む」ものとする動機を見出せない。 したがって、甲2発明において、相違点6に係る本件発明5(1)の特定事項とすることが当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 なお、申立人は、本件訂正前の請求項8に係る発明について、すなわち、本件訂正後の請求項5に係る発明について、甲2を主引例とする進歩性についての申立理由を主張していない。 (2-4)小括 したがって、本件発明5(1)は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明5(1)を引用する本件発明6、7、9~12、15、16についても、同様の理由によって、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9~12、15、16であって本件発明5の特定事項を含まないものについて (3-1)本件発明1と甲2発明との対比 上記(2)(2-1)と同様に検討すると、本件発明1と甲2発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnを含む合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。」の点。 <相違点7> 「はんだ粉末」が、本件発明1では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる」ものであるのに対して、甲2発明では、「96.5Sn/3Ag/0.5Cu」(三井金属(株)製)である点。 (3-2)相違点7についての検討 本件発明1のはんだ粉末に含まれる必須成分は、As,Bi,Pb,残部Snの4元素のみに限られている(いわゆるクローズド形式の合金組成である)のに対して、甲2発明のはんだ金属粉には、必須成分としてAg及びCuが含まれるから、両者ははんだ粉末に含まれる必須成分の点で相違しているので、相違点7は実質的な相違点である。 そして、甲2発明のはんだ金属粉は、Sn96.5重量%、Ag3重量%、Cu0.5重量%という組成の、三井金属鉱業(株)製の「Sn96.5/Ag3/Cu0.5」という商品名のはんだ金属粉であり、このような商品として販売されており特定の性能を備えることを担保された特定組成のはんだ粉末において、必須成分であるAg及びCuを排除する動機を見出すことができない。 したがって、甲2発明において、その鉛フリーはんだ粉末からAgとCuを排除すること、すなわち相違点7に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 (3-3)小括 よって、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9~12、15、16であって本件発明5の特定事項を含まないものについても同様である。 3 甲3を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由5、6について) (1)甲3に記載された事項と発明 ア 甲3には、以下の事項が記載されている。 3ア 「[0004] プリヒートにおいては、印刷されたソルダペーストが軟化し、プリント基板上の電子部品の下やそれの周囲に流れる現象、所謂熱だれを生じることがある。熱だれは、メインヒートにおいてハンダボールやハンダブリッジを誘発するため、ハンダ付け不良の原因となっている。この熱だれを抑制するのに、加熱だれ抑制成分であるワックス状生成物を、揺変剤として含んでいるフラックスと、ハンダ粉末とを混和したソルダペースト(クリームハンダ)が、特許文献1に記載されている。このワックス状生成物は、高級脂肪族モノカルボン酸、多塩基酸、及びジアミンを脱水反応することによって得られる。」 3イ 「発明が解決しようとする課題 [0008] 本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、加熱だれ抑制成分を、均一にかつ速やかに分散させることにより、フラックスやソルダペーストに添加したときフラックス樹脂や加熱だれ抑制成分の熱ダメージを生じさせず、またフラックスやソルダペーストの熱だれを引き起こさない揺変剤、並びにこれを含むフラックス及びソルダペーストを提供することを目的とする。」 3ウ 「[0019]本発明の揺変剤は、アマイドワックスと、樹脂と、分散媒とが、混合されて含まれているものである。 [0020] アマイドワックスは、(a)飽和脂肪族モノカルボン酸類及びヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸類、並びに(b)多塩基酸類の少なくとも何れかの酸類と、(c)ジアミン類及びテトラアミン類の少なくとも何れかのアミン類とが、(a):(b):(c)=1~3:0~5:1~6のモル比で、脱水縮合した縮合物である。このアマイドワックスは、加熱だれ抑制成分である。 … [0027] 揺変剤をハンダ付けに用いることの観点から、このような樹脂としてロジン系樹脂が好ましい。ロジン系樹脂は、170~174℃の融点を有しているので、150~190℃で行われるプリヒートで活性化し、ハンダ付けすべき金属表面の酸化膜を除去することができる。またロジン系樹脂は常温で不活性なので、ハンダ付け後の洗浄を要しない。ロジン系樹脂として、具体的にガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの誘導体としては、重合ロジン、アクリル化ロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びロジン変性アルキド樹脂等が挙げられる。 [0028] ロジン系樹脂として具体的に、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの誘導体としては、重合ロジン、アクリル化ロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びロジン変性アルキド樹脂が挙げられる。」 3エ 「[0049] 本発明のフラックスは、上記の揺変剤と、フラックス樹脂と、溶剤とを、少なくとも含んでいる。このフラックス樹脂として、揺変剤に含まれる樹脂として挙げた上記の樹脂が挙げられる。また上記の樹脂に代えて、又は加えて、ε-カプロラクタム、γ-ラクタム、及びδ-ラクタムのような環状アミドが重合又は共重合したポリアミドを挙げることができる。ポリアミドが含まれていることにより、フラックスの耐熱性が向上する。 [0050]フラックスに含まれる溶剤として、揺変剤に含まれる分散媒として挙げた上記のモノオール及び/又はポリオールが挙げられる。フラックス樹脂及び溶剤は、揺変剤に含まれる樹脂及び分散媒と、夫々同種であるものが好ましい。それによって、揺変剤とフラックスとの相溶性が良好となるので、揺変剤に含まれるアマイドワックスが、フラックス中に均一に、かつ速やかに分散する。」 3オ 「[0053] フラックスに、活性剤が含まれていてもよい。それにより、銅のようなハンダ付けすべき金属の表面を覆っている酸化膜が速やかに除去されるので、ソルダペーストに含まれるハンダと金属の表面との濡れ性が向上し、確実にハンダ付けすることができる。その結果、ハンダブリッジやハンダボールのようなハンダ付け不良を防止することができる。活性剤として、例えば、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン臭化水素酸塩、及びモノエタノールアミン臭化水素酸塩のような有機アミンのハロゲン化水素酸塩;マロン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、及びセバシン酸のような有機酸、特にジカルボン酸;クエン酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸、及び1,2-ヒドロキシオレイン酸のようなヒドロキシ脂肪酸;テトラブロモメタン、1,1,2,2-テトラブロモブタン、1,2-ジブロモ-2-ブテン、2,3-ジボロモ-1-プロパノール、1,2-ジボロモ-2,3-ブタンジオール、トランス-2,3-ジボロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールのような有機ハロゲン化物が挙げられる。」 3カ 「実施例 [0064](揺変剤の調製) 本発明を適用する揺変剤を調製した調製例1~4及びこの揺変剤を含む実施例1~4のフラックス、並びに本発明を適用外の揺変剤を調製した比較調製例1~5及びこの揺変剤を含む比較例1~5のフラックスを、夫々示す。 [0065](調製例1)アマイドワックスと樹脂と分散媒とを含有した揺変剤の調製 攪拌機、温度計、分水器を備えた反応装置に、(a)ヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸である12-ヒドロキシステアリン酸1000.0質量部と、(b)脂肪族ジカルボン酸であるセバシン酸1010.0質量部とを加え、80~100℃に加温して12-ヒドロキシステアリン酸を溶解させた。そこへ、(c)ジアミンであるヘキサメチレンジアミン780.5質量部を加え、窒素雰囲気下、210~220℃で3~5時間、脱水しながら縮合反応を行ってアミド化させ、酸価3.2、アミン価2.4のアマイドワックスを得た(モル比で(a):(b):(c)=2モル:2.7モル:3.3モル)。得られたアマイドワックスを、粉砕機に投入して平均粒子径20μm以下に粉砕した。次に、このアマイドワックスの20質量%、ロジン系樹脂であるパインクリスタルKE-604(荒川化学工業株式会社製、分子量350)の40質量%、及びヘキシルジグリコールの40質量%を混合し、90~110℃に加熱しながら1~2時間加熱分散し、その後冷却した。それにより調製例1の揺変剤を得た。」 3キ 「[0074](フラックスの調製) フラックス樹脂、活性剤、溶剤、並びに調製例1~4及び比較調製例1~5で得られた揺変剤を表1の割合で配合して混合し、80~120℃で1~3時間、加熱溶融した。その後取り出して放置することにより常温(25℃)に冷却し、実施例1~4、及び比較例1~5のフラックスを得た。」 3ク 「[0075][表1] [図:0001380932000009.jpg] 」(当審注:表1の一部のみ抜粋) 3ケ 「[0082](ソルダペーストの調製) 実施例1のフラックスの11質量%と、鉛フリーハンダ合金粉末(Sn96.5%-Ag3.0%-Cu0.5%;三井金属鉱業株式会社製)の89質量%とを、ペースト混練機(ソルダソフナー)にて混練し、ソルダペーストを調製した。これと同様にして、実施例2~4のフラックスを含むソルダペーストを調製した。このソルダペーストを、ハンダ付けに用いた。」 イ 上記3イによれば、甲3は、フラックスやソルダペーストの熱だれを引き起こさない揺変剤を含むフラックス及びソルダペーストを提供することを目的としている。 ウ 上記3ウによれば、甲3の揺変剤は、アマイドワックスと、樹脂と、分散媒とが、混合されて含まれているものであり([0019])、上記樹脂としてロジン系樹脂が好ましい([0027])。 エ 上記3エによれば、甲3のフラックスは、上記揺変剤と、フラックス樹脂と、溶剤とを、少なくとも含んでおり、上記フラックス樹脂としては、揺変剤に含まれる樹脂、すなわち、上記ウのロジン系樹脂を用いることができる([0049])。 オ 上記3オによれば、甲3のフラックスは、更に、活性剤が含まれていてもよく、当該活性剤として、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩のような有機アミンのハロゲン化水素酸塩や、グルタル酸、アジピン酸のような有機酸が挙げられる([0053])。 カ 上記3カによれば、揺変剤の調製例1は、(a)ヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸である12-ヒドロキシステアリン酸1000.0質量部と、(b)脂肪族ジカルボン酸であるセバシン酸1010.0質量部とを加え、80~100℃に加温して12-ヒドロキシステアリン酸を溶解させたところへ、(c)ジアミンであるヘキサメチレンジアミン780.5質量部を加え、窒素雰囲気下、210~220℃で3~5時間、脱水しながら縮合反応を行ってアミド化させ、酸価3.2、アミン価2.4のアマイドワックスを得た後、当該アマイドワックスの20質量%、ロジン系樹脂であるパインクリスタルKE-604(荒川化学工業株式会社製、分子量350)の40質量%、及びヘキシルジグリコールの40質量%を混合し、90~110℃に加熱しながら1~2時間加熱分散し、その後冷却することにより得られたものである([0065])。 キ 上記3キ及び3クによれば、表1に実施例1として記載されているフラックスは、フラックス樹脂として、パインクリスタルKE-604を50質量%と、活性剤として、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩を1質量%及びアジピン酸を1質量%と、溶剤として、ヘキシルジグリコールを38質量%と、調製例1の揺変剤を10質量%とを混合し、加熱溶融し、冷却することによって得られたものである。 ク 上記3ケによれば、実施例1のフラックスの11質量%と、鉛フリーハンダ合金粉末(Sn96.5%-Ag3.0%-Cu0.5%;三井金属鉱業株式会社製)の89質量%とを、ペースト混練機(ソルダソフナー)にて混練し、ソルダペーストを調製した。 ケ 甲3には、上記イ~クの検討を総合すれば、実施例1のフラックスを用いて調製されたソルダペーストに注目すると、次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲3発明」という。)。 「フラックス11質量%と、鉛フリーはんだ合金粉末89質量%から調製されたはんだペーストであって、 前記鉛フリーはんだ合金粉末は、「Sn96.5%-Ag3.0%-Cu0.5%」(三井金属鉱業株式会社製)であり、 前記フラックスは、 フラックス樹脂として、パインクリスタルKE-604を50質量%、 活性剤として、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩を1質量%及びアジピン酸を1質量%、 溶剤として、ヘキシルジグリコールを38質量%と、 調製例1の揺変剤を10質量% を含有するものであり、 前記調製例1の揺変剤は、 (a)ヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸である12-ヒドロキシステアリン酸1000.0質量部と、(b)脂肪族ジカルボン酸であるセバシン酸1010.0質量部とを加え、80~100℃に加温して12-ヒドロキシステアリン酸を溶解させたところへ、(c)ジアミンであるヘキサメチレンジアミン780.5質量部を加え、窒素雰囲気下、210~220℃で3~5時間、脱水しながら縮合反応を行ってアミド化させたアマイドワックスを得た後、当該アマイドワックスの20質量%、ロジン系樹脂であるパインクリスタルKE-604(荒川化学工業株式会社製、分子量350)の40質量%、及びヘキシルジグリコールの40質量%を混合し、90~110℃に加熱しながら1~2時間加熱分散し、その後冷却することにより得られたものである、 はんだペースト。」 (2)本件発明1を引用する本件発明5と本件発明5を引用する本件発明6、7、9、10~12、15、16について (2-1)本件発明5(1)と甲3発明との対比 ア 甲3発明の「鉛フリーはんだ合金粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」に相当する。 イ 甲3発明の「フラックス樹脂」としての「パインクリスタルKE-604」は、甲2発明においても使用されていたロジン樹脂であって、荒川化学工業(株)製のアクリル化ロジンの水素化物のことであるから、本件発明5(1)の「ロジン」及び「酸変性ロジン」に相当する。また、甲3発明において「フラックス」が「フラックス樹脂として、パインクリスタルKE-604を50質量%」「含有する」ことは、本件発明5(1)の「ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下」であること、及び、「酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である」ことに相当する。 ウ 甲3発明の「調製例1の揺変剤」は、ヘキサメチレンジアミンを脱水しながら縮合反応を行ってアミド化させたアマイドワックス(c)を含むものであり、当該アマイドワックスはアミド化合物である。一方、本件発明1の「チキソ剤」は本件発明10で特定されるように「アミド化合物」である場合を含むものである。 したがって、甲3発明のフラックスと、本件発明1のフラックスは、いずれも「アミド化合物」を含有する点で共通する場合がある。 エ 甲3発明の「溶剤」としての「ヘキシルジグリコール」は、本件発明5(1)の「溶剤」に相当する。 オ 甲3発明と本件発明5(1)のはんだ粉末の合金組成を対比すると、甲3発明の「Sn96.5%-Ag3.0%-Cu0.5%」は、本件発明5(1)の「Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%」及び「残部がSn」の条件を満たすものである。 また、甲3発明の鉛フリーはんだ合金粉末である「Sn96.5%-Ag3.0%-Cu0.5%」(三井金属鉱業株式会社製)は、甲1発明のはんだ金属粉と同じメーカーの同じ商品であるから、上記1(2)(2-2)の「相違点1についての検討」において検討したと同じ理由によって、微量成分としてAs,Pb,Biを含有しており、その含有量は、本件発明5(1)の条件である「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下」及び「下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり」、「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」との条件を満たすものである。 カ そうすると、本件発明5(1)と甲3発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnを含む合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり、 前記フラックスは、ロジンと、アミド化合物と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。」の点。 <相違点8> 「フラックス」が含む「アミド化合物」が、本件発明5(1)では「チキソ剤」であるのに対して、甲3発明では「揺変剤」中に混合される「アマイドワックス」である点。 (2-2)相違点8についての検討 ア 甲3発明の「揺変剤」とは、上記3アによれば、印刷されたソルダペーストがプリヒートにおいて軟化し、プリント基板上の電子部品の下やその周囲に流れる現象、すなわち熱だれを抑制するためのワックス状生成物のことである。 一方、「チキソ剤」とは、ソルダペーストにチキソ性を与えるための添加剤であって、外力が加わったときにソルダペーストの粘度を下げる働きをするものであり、ソルダペーストを塗布する際に粘度を下げることで塗布し易くなるとともに、塗布後のソルダペーストの粘度を上げてその変形を抑制するものである。 したがって、「揺変剤」に含まれる「アマイドワックス」と「チキソ剤」がいずれも「アミノ化合物」からなるものであるとしても、「揺変剤」に含まれる「アミノ化合物」である「アマイドワックス」が「チキソ剤」として機能するものであるとはいえず、その機能は全く異なるものであるから、「アマイドワックス」が含まれる「揺変剤」が「チキソ剤」の機能を兼ねるものであるとはいえない。 よって、甲3発明の「揺変剤」は「チキソ剤」であるとはいえないから、相違点8は実質的な相違点である。 イ また、甲3発明が解決しようとする課題は、上記3イによれば、加熱だれ抑制成分を、均一にかつ速やかに分散させることにより、フラックスやソルダペーストに添加したときフラックス樹脂や加熱だれ抑制成分の熱ダメージを生じさせず、またフラックスやソルダペーストの熱だれを引き起こさない揺変剤、並びにこれを含むフラックス及びソルダペーストを提供することであるから、甲3発明において「アマイドワックス」が含まれる「揺変剤」を用いることは、課題を解決するための手段における本質的部分であって、「揺変剤」に代えて「チキソ剤」とすることが容易になし得ることであるとはいえない。 また、甲3には、甲3発明の「フラックス」に「チキソ剤」を含有させてもよいとの記載はないし、仮に、「フラックス」に「チキソ剤」を含有させることが周知の技術であるとしても、「揺変剤」と「チキソ剤」がそれぞれの機能を維持したまま「フラックス」内で共存し得るか不明であるから、甲3発明の「フラックス」に「チキソ剤」を含有させることが容易になし得ることであるということもできない。 ウ したがって、本件発明5(1)は、相違点8の点で甲3発明と相違しており、また、甲3発明において、相違点8に係る本件発明5(1)の特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易になし得ることであるともいえない。 (2-3)小括 したがって、本件発明5(1)は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明5(1)を引用する本件発明6、7、9、10~12、15、16についても、同様の理由によって、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10~12、15、16であって本件発明5の特定事項を含まないものについて (3-1)本件発明1と甲3発明との対比 上記(2)(2-1)と同様に検討すると、本件発明1と甲3発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記はんだ粉末は、As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnを含む合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり、 前記フラックスは、ロジンと、アミド化合物と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。 275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。」の点。 <相違点9> 「はんだ粉末」が、本件発明1では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる」ものであるのに対して、甲3発明では、「Sn96.5%-Ag3.0%-Cu0.5%」(三井金属鉱業株式会社製)である点。 <相違点10> 「フラックス」が含む「アミド化合物」が、本件発明1では「チキソ剤」であるのに対して、甲3発明では「揺変剤」中に混合される「アマイドワックス」である点。 (3-2)相違点10についての検討 相違点10は、相違点8と同じであるから、相違点9について検討するまでもなく、上記(2)(2-2)で検討したと同じ理由により、本件発明1は、相違点10の点で甲3発明と相違しており、また、甲3発明において、相違点10に係る本件発明1の特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易になし得ることであるともいえない。 (3-3)小括 よって、本件発明1は、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10~12、15、16であって本件発明5の特定事項を含まないものについても同様である。 4 甲4を主たる引用文献とする新規性について(申立理由7について) (1)甲4に記載された事項と発明 ア 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【0028】 本実施形態のフラックスは、樹脂成分をロジン成分として含んでいてもよい。 テルペンフェノール樹脂以外の樹脂成分としては、合成樹脂、天然樹脂など、フラックスの樹脂成分として用いられる公知の樹脂成分であれば特に限定されるものではない。例えば、重合ロジン、水添ロジン、天然ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン等が挙げられる。 前記樹脂は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。 この場合、前記樹脂成分のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、固形物換算で1.0質量%以上80質量%以下、好ましくは10質量%以上40質量%以下等が挙げられる。」 「【0044】 (フラックスの作製) 以下に示すような材料を表1に記載の配合で各実施例、比較例に用いるフラックスを作製した。 作製方法は各材料を適当な容器に投入して、室温にて全材料が均一に溶解するまで混合することで各フラックスを得た。 【0045】 <フラックス材料> ロジン成分 ・アクリル酸変性ロジン(荒川化学工業社製) ・水添ロジン(荒川化学工業社製) 溶剤成分 ・ヘキシルジグリコール(日本乳化剤社製) チキソ剤 ・ビスアマイド系チキソ剤(日本化成社製) 活性剤成分(いずれも東京化成工業社製) ・イソシアヌル酸ビス(2-カルボキシエチル) ・イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル) ・イソシアヌル酸トリス(3-カルボキシプロピル) ・イソシアヌル酸トリス(2,3-ジブロモプロピル) ・トランス-2.3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール ・グルタル酸 ・コハク酸 ・メチルコハク酸 ・アゼライン酸 【0046】 <ソルダペースト> はんだ合金粉末(SAC305、平均30μm、弘輝社製S3X58)と前記フラックス各とを88±1質量%と12±1質量%となる比率で混合し、ペースト状の各はんだ材料(ソルダーペースト)を作製した。」 「【0050】 【表1】 [図:0001380932000010.jpg] 」(当審注:表1の一部のみ抜粋) イ 甲4に記載されたソルダペーストのうち、はんだ合金粉末(SAC305、平均30μm、弘輝社製S3X58)と実施例1のフラックス成分を混合して作製されたものに注目すると、甲4には次のソルダペーストが記載されているものと認められる(以下「甲4発明」という。)。 「はんだ合金粉末とフラックスとからなる、ソルダペーストであって、 前記はんだ合金粉末は、SAC305(弘輝社製S3X58)であり、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、活性剤からなり、 前記ロジンは、アクリル酸変性ロジン(荒川化学工業社製 KE-604)と水添ロジン(荒川化学工業社製 KR-612)であり、 フラックス全体の総量に対して、前記アクリル酸変性ロジンは30%、前記水添ロジンは10%である、ソルダペースト。」 (2)本件発明1を引用する本件発明5と本件発明5を引用する本件発明6~12、15について (2-1)本件発明5(1)と甲4発明との対比 ア 甲4発明の「はんだ合金粉末」、「フラックス」、「ソルダーペースト」、「アクリル酸変性ロジン」、「水添ロジン」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「酸変性ロジン」、「水添ロジン」に相当する。 イ そうすると、本件発明5(1)と甲4発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下であり、 前記酸変性ロジン以外のロジンとして、重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、 フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含む、はんだペースト。」の点。 <相違点11> 「はんだ粉末」が、本件発明5(1)では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲4発明は「SAC305(弘輝社製S3X58)」である点。 (2-2)相違点11についての検討 ア 甲4発明のはんだ合金粉末はSAC305であり、当該SAC305の組成の詳細については甲4には記載されていないが、SAC305については、甲9の「JISZ3282:2017 はんだ-化学成分及び形状」で規定された成分を有するものであり、当該成分の詳細は「表2-鉛フリーはんだの種類及び化学成分」の「Sn96.5Ag3Cu0.5」の欄に表示されているとおりのものであると認められるところ、その化学成分は「%(質量分率)」を単位として次のように記載されている。 Sn 残部 Pb 0.07 Bi 0.10 Cu 0.3~0.7 Ag 2.8~3.2 Al 0.001 As 0.03 Cd 0.002 Fe 0.02 Ni 0.01 Zn 0.001 Ge - P - Ga - また、欄外の注記1には「範囲指定のない化学成分値は、上限値を示す。」と記載されている。 イ 上記エの表2によれば、JISによって規定されているSAC305の組成において、 Asについては上限が0.03%すなわち300質量ppmであり、 Biについては上限が0.10%すなわち1000質量ppmであり、 Pbについては上限が0.07%すなわち700質量ppmである。 なお、Sn、Ag、Cuが所定範囲の含有量で含まれていることから、これらの元素は必須元素であり、その他の元素は上限のみが規定されているので不可避不純物を表しており、不可避不純物がその許容可能な含有量とともに規定されているものと認められる。 ウ すると、甲4発明の「はんだ合金粉末」である「SAC305(弘輝社製S3X58)」は、JISによって規定されているSAC305の組成から判断すると、本件発明5(1)の「Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下」との条件は満たすものの、Asについては、上限が300質量ppmであって下限値の限定がないから、25質量ppm未満である場合を含み得るものであり、また、「2As+Bi+Pb」の値については「2300以下」であることがいえるのみであり、「2As+Bi+Pb」の値が275未満である場合を含み得るものであるといえる。 また、申立人は、甲4発明の「SAC305(弘輝社製S3X58)」について試料を微量分析した測定結果については提示していないため、実際の試料のAs、Bi、Pbの含有量は不明であるし、そのため(1)式の値も算出することができない。 なお、甲8には三井金属工業株式会社の「Sn96.5Ag3.0Cu0.5」の微量分析結果が、甲10には千住金属工業株式会社の「M705(Sn96.5Ag3.0Cu0.5)」の微量分析結果が示されているが、これらの微量分析結果は「SAC305(弘輝社製S3X58)」の組成を示すものではない。 したがって、相違点11は実質的な相違点である。 (2-3)小括 したがって、本件発明5(1)は、甲4に記載された発明ではない。 また、本件発明5(1)を引用する本件発明6~12、15についても、同様の理由によって、甲4に記載された発明ではない。 (3)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明2~4、6~12、15であって本件発明5の特定事項を含まないものについて (3-1)本件発明1と甲4発明との対比 ア 甲4発明の「はんだ合金粉末」、「フラックス」、「ソルダーペースト」、「アクリル酸変性ロジン」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「酸変性ロジン」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲4発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。」の点。 <相違点12> 「はんだ粉末」が、本件発明1では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲4発明は「SAC305(弘輝社製S3X58)」である点。 (3-2)相違点12についての検討 ア 甲4発明の「SAC305(弘輝社製S3X58)」は、上記(2)(2-2)ア、イに記載したとおりの組成を有するものと認められる。 イ すると、本件発明1のはんだ粉末に含まれる必須成分が、As,Bi,Pb,残部Snの4元素のみに限られている(いわゆるクローズド形式の合金組成である)のに対して、甲4発明のはんだ合金粉末には、必須成分としてSn以外に、Agが2.8~3.2%、及びCuが0.3~0.7%含まれるから、両者は少なくともはんだ粉末に含まれる必須成分の点で相違しているので、相違点12は実質的な相違点である。 そして、甲4発明のはんだ合金粉末である「SAC305(弘輝社製S3X58)」は、甲9の「JISZ3282:2017 はんだ-化学成分及び形状」で規定された成分を有するものであると考えられるから、当該はんだ合金粉末において、必須成分であるAg及びCuを排除する動機を見出すことができない。 したがって、甲4発明において、そのハンダ合金粉末から少なくともAgとCuを排除することによって相違点12に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 (3-3) 小括 よって、本件発明1は、甲4に記載された発明ではない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~4、6~12、15であって本件発明5の特定事項を含まないものについても同様である。 5 甲5を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由8、9について) (1)甲5に記載された事項と発明 ア 甲5には、以下の事項が記載されている。 「[0025] 本発明のフラックス組成物は、上記式(1)で表される飛散防止剤を含む。 [0026] …式(1)で表される飛散防止剤としては、例えば、…2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]を使用することができ、特に、フラックスの飛散を抑制する点から2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]を使用することが好ましい。本発明におけるフラックス組成物に対する上記式(1)で表される飛散防止剤の重量割合は、0.5~10重量%が好ましく、1~6重量%がより好ましい。」 「[0030] ロジンとしては、水添ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、ロジンエステルなどを使用することができる。本発明におけるフラックス組成物に対するロジンの重量割合は、10~70重量%が好ましく、30~60重量%がより好ましい。」 「[0031] 活性剤としては、有機酸、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物が挙げられる。これらの活性剤は水溶性またはアルコール可溶性であることが望ましい。 活性剤の具体例を例示すると、次の通りである。有機酸としては、ステアリン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などが挙げられる。…有機ハロゲン化合物としては、1-ブロモ-2-ブタノール、1-ブロモ-2-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、1,4-ジブロモ-2-ブタノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4ジオールなどが挙げられる。本発明におけるフラックス組成物に対する活性剤の重量割合は、0.1~50重量%が好ましく、1~40重量%がより好ましく、5~30重量%が最も好ましい。 [0032] チキソトロピック剤としては、高級脂肪酸アマイド、高級脂肪酸エステル、ひまし硬化油などを使用することができる。本発明におけるフラックス組成物に対するチキソトロピック剤の重量割合は、1~15重量%が好ましい。」 「実施例 [0039] 以下の表1に示す組成で実施例1~4と比較例1~4のフラックス組成物を調合した。実施例1~4及び比較例1~4のフラックス組成物11重量%とはんだ合金の粉末89重量%とを混合し、ソルダペースト組成物を得た。はんだ合金の組成はSn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)を用いた。なお、表1中の各成分の数値は、フラックス組成物に対する各成分の重量%である。 [0040][表1] [図:0001380932000011.jpg] 」 イ 甲5に記載されたソルダペースト組成物のうち、組成が「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」であるはんだ合金の粉末89重量%と、実施例1のフラックス組成物11重量%を混合して得られたものに注目すると、甲5には次のソルダペースト組成物が記載されているものと認められる(以下「甲5発明」という。) 「はんだ合金粉末とフラックス組成物とからなる、ソルダペースト組成物であって、 前記はんだ合金粉末の組成はSn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)であり、 前記フラックス組成物は、ロジンとして酸変性ロジンと、活性剤としてセバシン酸及び2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4ジオールと、飛散防止剤として2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]と、チキソトロピック剤として硬化ひまし油と、溶剤からなり、 フラックス組成物全体の総量に対して、前記酸変性ロジンは45%である、ソルダペースト。」 (2)本件発明1を引用する本件発明5と、本件発明5を引用する本件発明7、9、10、13~15について (2-1)本件発明5(1)と甲5発明との対比 ア 甲5発明の「はんだ合金粉末」、「フラックス組成物」、「ソルダーペースト組成物」、「酸変性ロジン」、「チキソトロピック剤」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「ロジン」又は「酸変性ロジン」、「チキソ剤」に相当する。 イ そうすると、本件発明5(1)と甲5発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。」の点。 <相違点13> 「はんだ粉末」が、本件発明5(1)では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲5発明は「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」である点。 <相違点14> 「酸変性ロジン以外のロジン」について、本件発明5(1)では、「重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含」んでいるのに対して、甲5発明では、含んでいない点。 (2-2)相違点13についての検討 ア 事案に鑑みて、相違点13について検討する。 甲5発明の「はんだ合金粉末」はその組成が「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」で表されるものであり、必須元素として含まれるSn,Ag,Cu以外の微量含有成分がどのようなものであるか不明であるから、相違点13は実質的な相違点である。 また、仮に、甲5発明の上記「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」が、甲9の「JISZ3282:2017 はんだ-化学成分及び形状」の「表2-鉛フリーはんだの種類及び化学成分」において「Sn96.5Ag3Cu0.5」として規定されているものであったとしても、上記4(2)(2-2)で検討したと同様の理由によって、Asについては25質量ppm未満である場合を含み得るものであり、また、「2As+Bi+Pb」の値については「2As+Bi+Pb」の値が275未満である場合を含み得るものである点で本件発明5(1)と相違しているから、やはり、相違点13は実質的な相違点である。 また、甲8には三井金属工業株式会社の「Sn96.5Ag3.0Cu0.5」の微量分析結果が、甲10には千住金属工業株式会社の「M705(Sn96.5Ag3.0Cu0.5)」の微量分析結果が示されているが、これらの微量分析結果は甲5発明の「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」の組成を示すものではない。 したがって、いずれにしても、相違点13は実質的な相違点である。 イ そして、甲5には、甲5発明の「はんだ合金粉末」である「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」に含まれる微量成分As,Bi,Pbについて、相違点13に係る本件発明5(1)の特定事項のものとすることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲5発明において、「はんだ合金粉末」である「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」の組成を、相違点13に係る本件発明5(1)の特定事項のものとすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。 ウ また、本願明細書の段落【0044】には「本発明によれば、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、濡れ性に優れ、高い機械的特性を有し、かつ、はんだの濡れ速度が向上したはんだペーストを提供することができる。」と記載されていることから、本件発明5(1)は相違点13に係る本件発明5(1)の特定事項の条件を満たすことにより、優れた増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、高い機械的統制を有するという格別の効果を奏するものである。 (2-3)小括 したがって、本件発明5(1)は、相違点14について検討するまでもなく、甲5に記載された発明ではないし、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明5(1)を引用する本件発明7、9、10、13~15についても、同様の理由によって、甲5に記載された発明ではないし、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明2~4、7、9、10、13~15であって本件発明5の特定事項を含まないものについて (3-1)本件発明1と甲5発明との対比 ア 甲5発明の「はんだ合金粉末」、「フラックス組成物」、「ソルダーペースト組成物」、「酸変性ロジン」、「チキソトロピック剤」は、それぞれ、本件発明1の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「ロジン」又は「酸変性ロジン」、「チキソ剤」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲5発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。」の点。 <相違点15> 「はんだ粉末」が、本件発明1では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲5発明は組成「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」である点。 (3-2)相違点15についての検討 甲5発明の「はんだ合金粉末」は、その組成が「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」であるから、必須成分がSn,Ag,Cuである。 一方、本件発明1の「はんだ粉末」はその必須成分が、As,Bi,Pb,残部Snの4元素のみである。 したがって、本件発明1と甲5発明は、少なくとも「はんだ粉末」に含まれる必須成分の点で相違しているので、相違点15は実質的な相違点である。 そして、甲5発明において、「はんだ合金粉末」に含まれる必須成分であるAg及びCu元素を排除する動機を見出すことができないし、微量成分であるAs,Bi,Pbを本件発明1で特定される含有量とするための動機も見出すことができない。 したがって、甲5発明において、そのハンダ合金粉末から少なくともAgとCuを排除するとともに、微量成分であるAs,Bi,Pbを本件発明1で特定される含有量とすることによって相違点15に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 (3-3)小括 よって、本件発明1は、甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~4、7、9、10、13~15であって本件発明5の特定事項を含まないものについても同様である。 6 甲6を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由10、11について) (1)甲6に記載された事項と発明 ア 甲6には、以下の事項が記載されている。 「【0006】 本発明の目的は、分子構造の80%以上が1,4結合で構成されており、分子末端にOH基を持ち、水素添加により臭素価が10g/100g以下であるポリイソプレンをフラックスに含有させることにより、はんだ付け性、フラックス残渣の耐割れ性、経時安定性等に優れたはんだ付け用フラックスを提供することにある。」 「【0018】 〔実施例A〕 アクリル変性ロジン40%(質量%、以下同じ)、カスターワックス6%、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩1%、末端OH水添1,4-ポリイソプレン13%(水酸基含有量は0.9mol/kg以下、酸価は0.03mgKOH/g以下)、へキシレングリコール40%を混合して液状フラックスを作成し、この液状フラックス11%にSn-3.0Ag-0.5Cuはんだ粉末(平均粒径20μm)89wt%を混ぜてソルダペーストを調製した。…」 「【0022】 〔実施例B〕 wwロジン77.5%(質量%、以下同じ)、trans-2,3-ジブロモブテンジオール2%(活性剤)、トリエチルアミン臭化水素酸塩0.5%(活性剤)、末端OH水添1,4-ポリイソプレン13%(水酸基含有量は0.9mol/kg以下、酸価は0.03mgKOH/g以下)を混合して半液状フラックスを作成し、この半液状フラックスをSn-3.0Ag-0.5Cuはんだの中空管に導入し、伸線して外径Φ1mmのやに入りはんだを作製した。」 イ 上記アの記載において、カスターワックスはヒマシ硬化油のことであり、技術常識によればチキソ剤として機能するものである。また、ヘキシレングリコールが溶剤であることは明らかである。また、実施例Bにおいてトリエチルアミン臭化水素酸塩が活性剤であることから、実施例Aのジフェニルグアニジン臭化水素酸塩は活性剤であると推定される。 ウ そこで、甲6に記載された実施例Aのソルダペーストに注目すると、甲6には次のソルダペーストが記載されているものと認められる(以下「甲6発明」という。) 「はんだ粉末と液状フラックスとからなる、ソルダペーストであって、 前記はんだ粉末の組成はSn-3.0Ag-0.5Cuであり、 前記液状フラックスは、ロジンとしてアクリル変性ロジンと、チキソトロピック剤としてカスターワックスと、末端OH水添1,4-ポリイソプレンと、活性剤としてジフェニルグアニジン臭化水素酸塩と、溶剤からなり、 フラックス組成物全体の総量に対して、前記アクリル変性ロジンは40%である、ソルダペースト。」 (2)本件発明1を引用する本件発明5と、本件発明5を引用する本件発明6、7、9、10、13、14について (2-1)本件発明5(1)と甲6発明との対比 ア 甲6発明の「はんだ粉末」、「液状フラックス」、「ソルダペースト」、「アクリル変性ロジン」、「カスターワックス」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「ロジン」又は「酸変性ロジン」、「チキソ剤」に相当する。 イ そうすると、本件発明5(1)と甲6発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。」の点。 <相違点16> 「はんだ粉末」が、本件発明5(1)では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲6発明は「Sn-3.0Ag-0.5Cu」である点。 <相違点17> 「酸変性ロジン以外のロジン」について、本件発明5(1)は、「重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含」んでいるのに対して、甲6発明は、含んでいない点。 (2-2)相違点についての検討 ア 事案に鑑みて、相違点16について検討する。 甲6発明の「はんだ粉末」はその組成が「Sn-3.0Ag-0.5Cu」で表されるものであり、必須元素として含まれるSn,Ag,Cu以外の微量含有成分がどのようなものであるか不明であるから、相違点16は実質的な相違点である。 また、仮に、甲6発明の上記「Sn-3.0Ag-0.5Cu」が、甲9の「JISZ3282:2017 はんだ-化学成分及び形状」の「表2-鉛フリーはんだの種類及び化学成分」において「Sn96.5Ag3Cu0.5」として規定されているものであったとしても、上記4(2)(2-2)で検討したと同様の理由によって、Asについては25質量ppm未満である場合を含み得るものであり、また、「2As+Bi+Pb」の値については「2As+Bi+Pb」の値が275未満である場合を含み得るものである点で本件発明5(1)と相違しているから、やはり、相違点16は実質的な相違点である。 また、甲8には三井金属工業株式会社の「Sn96.5Ag3.0Cu0.5」の微量分析結果が、甲10には千住金属工業株式会社の「M705(Sn96.5Ag3.0Cu0.5)」の微量分析結果が示されているが、これらの微量分析結果は甲6発明の「Sn-3.0Ag-0.5Cu」の組成を示すものではない。 したがって、いずれにしても、相違点16は実質的な相違点である。 イ そして、甲6には、甲6発明の「はんだ粉末」である「Sn-3.0Ag-0.5Cu」に含まれる微量成分について、相違点16に係る本件発明5(1)の特定事項のものとすることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲6発明において、「はんだ粉末」である「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」の組成を、相違点16に係る本件発明5(1)の特定事項のものとすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。 ウ そして、本願明細書の段落【0044】には「本発明によれば、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、濡れ性に優れ、高い機械的特性を有し、かつ、はんだの濡れ速度が向上したはんだペーストを提供することができる。」と記載されていることから、本件発明5(1)は相違点16に係る本件発明5(1)の特定事項の条件を満たすことにより、優れた増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、高い機械的統制を有するという格別の効果を奏するものである。 (2-3)小括 したがって、本件発明5(1)は、相違点17について検討するまでもなく、甲6に記載された発明ではないし、甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明5(1)を引用する本件発明6、7、9、10、13、14についても、同様の理由によって、甲6に記載された発明ではないし、甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10、13、14のうち本件発明5の特定事項を含まないものについて (3-1) 本件発明1と甲6発明との対比 ア 甲6発明の「はんだ粉末」、「液状フラックス」、「ソルダペースト」、「アクリル変性ロジン」、「カスターワックス」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「ロジン」又は「酸変性ロジン」、「チキソ剤」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲6発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。」の点。 <相違点18> 「はんだ粉末」が、本件発明1では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲6発明は組成「Sn-3Ag-0.5Cu」である点。 (3-2)相違点18についての検討 甲6発明の「はんだ粉末」は、その組成が「Sn-3.0Ag-0.5Cu」であるから、必須成分がSn,Ag,Cuである。 一方、本件発明1の「はんだ粉末」はその必須成分が、As,Bi,Pb,残部Snの4元素のみである。 したがって、本件発明1と甲6発明は、少なくとも「はんだ粉末」に含まれる必須成分の点で相違しているので、相違点18は実質的な相違点である。 そして、甲6発明において、「はんだ粉末」に含まれる必須成分であるAg及びCu元素を排除する動機を見出すことができないし、微量成分であるAs,Bi,Pbを本件発明1で特定される含有量とするための動機も見出すことができない。 したがって、甲6発明において、そのハンダ合金粉末から少なくともAgとCuを排除するとともに、微量成分であるAs,Bi,Pbを本件発明1で特定される含有量とすることによって相違点18に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 (3-3)小括 よって、本件発明1は、甲6に記載された発明ではなく、甲6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10、13、14であって本件発明5の特定事項を含まないものについても同様である。 7 甲7を主たる引用文献とする新規性・進歩性について(申立理由12、13について) (1)甲7に記載された事項と発明 ア 甲7には、以下の事項が記載されている。 「【0023】 従来から一般的にフラックスに用いられているロジンおよびその誘導体としては、例えば、通常のガムロジン、トールロジン、ウッドロジン等が挙げられる。また、それらの誘導体としては、熱処理した樹脂、重合ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂等が挙げられる。従来から一般的にフラックスに用いられている合成樹脂としては、例えば、スチレン-マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。」 「【0025】 活性剤としては、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン等のハロゲン化水素酸塩、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、アジピン酸、ジフェニル酢酸等の有機カルボン酸等が挙げられる。 活性剤の含有量は、フラックス総量に対して0.1~30重量%であるのがよい。活性剤が0.1重量%未満であると、活性力が不足し、はんだ付け性が低下するおそれがある。一方、活性剤が30重量%を超えると、フラックスの皮膜性が低下し、親水性が高くなるので、腐食性および絶縁性が低下するおそれがある。 【0026】 チキソ剤としては、例えば、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が挙げられる。チキソ剤の含有量は、フラックス総量に対して1.0~25重量%であるのがよい。 【0027】 有機溶剤としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、トルエン、テレピン油等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの中でも、揮発性や活性剤の溶解性の点でイソプロピルアルコールが好ましい。」 「【0042】 (製造例4) ガムロジン100重量部に対し、t-アミルフェノールジスルフィドオリゴマー(イオウ含有量23重量%)0.30重量部と、ヨウ素0.05重量部と、ナフテン酸鉄0.01重量部とを添加し、260℃に昇温した後、同温度で3時間保持して、合成ロジンDを得た。 この合成ロジンDは、軟化点が35℃であり、セコデヒドロアビエチン酸を21.2重量%含有するものであった。」 「【0046】 (実施例5~8および比較例2) ベース樹脂として、上記各製造例で得られた合成ロジン、アクリル樹脂(重量平均分子量8000、酸価75mgKOH/g)、アクリル化ロジン(軟化点105℃、酸価200mgKOH/g)およびガムロジン(軟化点77℃、酸価165mgKOH/g)、のうちのいずれかと、表2に示す活性剤、チキソ剤および溶剤とを、表2に示す配合組成で混合し、均一になるように充分に熱を加えて溶解させ、フラックスをそれぞれ得た。 次いで、得られた各フラックスと、Sn-Ag-Cu合金(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比))からなるはんだ合金粉末(粒径38~25μm)とを、フラックス:はんだ合金粉末=12:88(重量比)の比率で混合して、はんだペースト組成物をそれぞれ得た。 得られた各はんだペースト組成物を用いて、はんだボール試験、残渣亀裂試験、絶縁抵抗試験および腐食試験を行った。結果を表2に示す。 【0047】 【表2】 [図:0001380932000012.jpg] 」(当審注:表2の一部のみ抜粋) イ 上記アの表2に記載の実施例8のフラックスに注目すると、合成ロジンD、アクリル樹脂、アクリル化ロジン、活性剤としてのアジピン酸及びアニリン臭化水素酸塩と、チキソ剤としての硬化ひまし油と、溶剤としてのブチルカルビトールを含み、当該フラックス12.0重量部に対してはんだ合金粉末88.0重量部を混合してはんだペースト組成物を得ている。ここで合成ロジンとは、ガムロジンを原料として合成したロジンである。 ウ したがって、そこで、甲7に記載された実施例8のはんだペースト組成物に注目すると、甲7には次のはんだペースト組成物が記載されているものと認められる(以下「甲7発明」という。) 「はんだ合金粉末とフラックスとからなる、はんだペースト組成物であって、 前記はんだ合金粉末はSn-Ag-Cu合金(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比))であり、 前記フラックスは、ロジンとして合成ロジンD及びアクリル化ロジンと、チキソ剤として硬化ひまし油と、アクリル樹脂と、活性剤としてアジピン酸及びアニリン臭化水素酸塩と、溶剤からなり、 フラックス全体の総量に対して、合成ロジンD及びアクリル化ロジンは45.0%であり、 フラックス全体の総量に対して、アクリル化ロジンは20.0%である、ソルダペースト。」 (2)本件発明1を引用する本件発明5と、本件発明5を引用する本件発明6、7、9、10、13~16について (2-1)本件発明5(1)と甲7発明との対比 ア 甲7発明の「はんだ合金粉末」、「フラックス」、「ソルダペースト」、「アクリル化ロジン」、「硬化ひまし油」は、それぞれ、本件発明5(1)の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「ロジン」又は「酸変性ロジン」、「チキソ剤」に相当する。 イ 甲7発明の「合成ロジンD」は、ガムロジンを原料として合成したロジンであるから、本件発明5(1)の「酸変性ロジン以外のロジンとして」の「重合ロジン」に相当する。 ウ そうすると、本件発明5(1)と甲7発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下であり 前記酸変性ロジン以外のロジンとして、重合ロジン、水添ロジン及び不均化ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、 フラックス全体の総量に対して前記酸変性ロジン以外のロジンを0質量%超45質量%以下含む、はんだペースト。」の点。 <相違点19> 「はんだ粉末」が、本件発明5(1)では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、Ag:0~4質量%及びCu:0~0.9質量%からなる群より選択される少なくとも一種、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲7発明は「Sn-Ag-Cu合金(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比))」である点。 (2-2)相違点19についての検討 ア 甲7発明の「はんだ合金粉末」である「Sn-Ag-Cu合金」はその組成が「Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比)」で表されるものであり、必須元素として含まれるSn,Ag,Cu以外の微量含有成分がどのようなものであるか不明であるから、相違点19は実質的な相違点である。 また、仮に、甲7発明の上記「Sn-Ag-Cu合金」が、甲9の「JISZ3282:2017 はんだ-化学成分及び形状」の「表2-鉛フリーはんだの種類及び化学成分」において「Sn96.5Ag3Cu0.5」として規定されているものであったとしても、上記4(2)(2-2)で検討したと同様の理由によって、Asについては25質量ppm未満である場合を含み得るものであり、また、「2As+Bi+Pb」の値については「2As+Bi+Pb」の値が275未満である場合を含み得るものである点で本件発明5(1)と相違しているから、やはり、相違点19は実質的な相違点である。 また、甲8には三井金属工業株式会社の「Sn96.5Ag3.0Cu0.5」の微量分析結果が、甲10には千住金属工業株式会社の「M705(Sn96.5Ag3.0Cu0.5)」の微量分析結果が示されているが、これらの微量分析結果は甲7発明の「Sn-3.0Ag-0.5Cu」の組成を示すものではない。 したがって、いずれにしても、相違点19は実質的な相違点である。 イ そして、甲7には、甲7発明の「はんだ粉末」である「Sn-Ag-Cu合金」に含まれる微量成分について、相違点19に係る本件発明5(1)の特定事項のものとすることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲7発明において、「はんだ粉末」である「Sn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)」の組成を、相違点19に係る本件発明5(1)の特定事項のものとすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。 ウ そして、本願明細書の段落【0044】には「本発明によれば、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、濡れ性に優れ、高い機械的特性を有し、かつ、はんだの濡れ速度が向上したはんだペーストを提供することができる。」と記載されていることから、本件発明5(1)は相違点19に係る本件発明5(1)の特定事項の条件を満たすことにより、優れた増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、高い機械的統制を有するという格別の効果を奏するものである。 (2-3)小括 したがって、本件発明5(1)は、甲7に記載された発明ではないし、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明5(1)を引用する本件発明6、7、9、10、13~16についても、同様の理由によって、甲7に記載された発明ではないし、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10、13~16であって本件発明5の特定事項を含まないものについて (3-1)本件発明1と甲7発明との対比 ア 甲7発明の「はんだ合金粉末」、「フラックス」、「ソルダペースト」、「アクリル化ロジン」、「硬化ひまし油」は、それぞれ、本件発明1の「はんだ粉末」、「フラックス」、「はんだペースト」、「ロジン」又は「酸変性ロジン」、「チキソ剤」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲7発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 「はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、 前記フラックスは、ロジンと、チキソ剤と、溶剤と、を含み、 前記ロジンは酸変性ロジンを含み、 前記ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して35質量%以上60質量%以下であり、 前記酸変性ロジンの含有量は、フラックス全体の総量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下である、はんだペースト。」の点。 <相違点20> 「はんだ粉末」が、本件発明1では、「As:25~300質量ppm、Bi:0質量ppm以上25000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え8000質量ppm以下、及び残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からな」るものであって「275≦2As+Bi+Pb (1) 0<2.3×10-4×Bi+8.2×10-4×Pb≦7 (2) 上記(1)式及び(2)式中、As、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す」のに対して、甲7発明は組成「Sn-Ag-Cu合金(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比))」である点。 (3-2)相違点20についての検討 甲7発明の「はんだ合金粉末」である「Sn-Ag-Cu合金」は、その組成が「Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(重量比)」であるから、必須成分がSn,Ag,Cuである。 一方、本件発明1の「はんだ粉末」はその必須成分が、As,Bi,Pb,残部Snの4元素のみである。 したがって、本件発明1と甲7発明は、少なくとも「はんだ粉末」に含まれる必須成分の点で相違しているので、相違点20は実質的な相違点である。 そして、甲7発明において、「はんだ粉末」に含まれる必須成分であるAg及びCu元素を排除する動機を見出すことができないし、微量成分であるAs,Bi,Pbを本件発明1で特定される含有量とするための動機も見出すことができない。 したがって、甲7発明において、そのハンダ合金粉末から少なくともAgとCuを排除するとともに、微量成分であるAs,Bi,Pbを本件発明1で特定される含有量とすることによって相違点20に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 (3-3)小括 よって、本件発明1は、甲7に記載された発明ではなく、甲7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~4、6、7、9、10、13~16であって本件発明5の特定事項を含まないものについても同様である。 第7 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書の申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700586

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