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特許異議申立

2024-700276

泡消火剤

審判番号
2024-700276
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-031595
登録番号
7352122
請求日
2024年03月27日
審決日
2025年02月12日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】千住金属工業株式会社
  • 【権利者代理人】大野 浩之
  • 【異議申立人】西村 裕之
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 原 賢一
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.537-YAA(A62D) / P1651.536-YAA(A62D) / P1651.121-YAA(A62D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7352122号発明「泡消火剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7352122号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7352122号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7352122号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和5年3月2日を出願日とする出願であり、同年9月20日にその特許権の設定登録がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年3月27日に、その請求項1~4に係る特許を対象として特許異議申立人西村裕之(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、同年7月4日付けで取消理由が通知され、同年8月8日に上申書にて、取消理由通知書において指定した期間を職権により30日延長する求めがなされ、同年8月14日付けの通知書にて、職権により、指定期間を当該取消理由通知書発送の日から90日とすることが通知され、その延長された期間内である同年10月3日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、それに対し、同年11月14日に異議申立人より意見書の提出があり、同年同月29日に異議申立人より、この意見書に添付された甲第11号証の不鮮明な箇所を鮮明に印刷したものを添付する手続補正書(方式)の提出があったものである。 第2 訂正の適否 1 訂正事項 本件訂正は、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「フッ素系界面活性剤を含有しない、」とあるのを、「フッ素系界面活性剤を含有せず、 前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む、」に訂正する。 (請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む、」とあるのを、「前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む、」に訂正する。 (請求項2を引用する請求項3、4も同様に訂正する。) 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項2の「前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む」との記載に基づいて、ノニオン界面活性剤を「ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正前の請求項2の「前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む」との記載において、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル」、「ポリオキシエチレンステアリルエーテル」及び「ポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテル」は、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」に包含されるものであって、訂正前の請求項2のように選択肢として同列に記載するのは不明確であった。訂正事項2は、「ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む」とすることにより、両者の包含関係を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。 また、上述の内容からすれば、訂正前の請求項2の「ノニオン界面活性剤」の範囲は、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む」ものと実質的に変わらないところ、この内容が訂正事項1によって請求項1に特定されたのであるから、請求項1を引用する請求項2の範囲は、訂正前の請求項2と変わらないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~4〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1~4に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。なお、「本件発明」については、本件訂正前のものに対しても区別せずに用いることがある。)は、次のとおり特定されるものである。 「【請求項1】 14質量%以上のアニオン系界面活性剤、0.2質量%以上10質量%以下の両性界面活性剤、1.0質量%以上のHLBが15以上のノニオン界面活性剤、及び溶剤を含有し、 フッ素系界面活性剤を含有せず、 前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む、泡消火剤原液。 【請求項2】 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む、請求項1に記載の泡消火剤原液。 【請求項3】 前記ノニオン界面活性剤のHLBが18以上となる、請求項1又は2に記載の泡消火剤原液。 【請求項4】 無機紛体、シリコーン成分、金属石鹸及び炭酸塩を含有しない、請求項1又は2に記載の泡消火剤原液。」 第4 令和6年7月4日付けで通知した取消理由、及び異議申立人による特許異議の申立理由の概要 1 令和6年7月4日付けで通知した取消理由の概要 (1)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反) 設定登録時の請求項2~4に係る特許は、その請求項2~4の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由1」とする。)。 記 設定登録時の請求項2には、「前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む」との記載があるが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルに含まれるものであり、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテル」と、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」との構成間の関係が明らかでないから、上記の記載を含む設定登録時の請求項2の記載は、不明確である。 設定登録時の請求項2を引用する設定登録時の請求項3、4も、同様である。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反) 設定登録時の請求項1、3、4に係る特許は、その請求項1、3、4の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由2」とする。)。 記 ア サポート要件の判断の規範と本件発明の課題 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、【発明が解決しようとする課題】との項目に続く、【0004】に、特許文献1で示される泡消火剤に関する問題として、「含フッ素系界面活性剤が含まれているが、フッ素自体が環境に悪影響を及ぼす可能性があることから、泡消火剤の原料としてはその利用を控えたいニーズがある」と記載され、これを受け、【0005】には、「本発明は、フッ素系界面活性剤を含有せず、消火性能の高い泡消火剤を提供する。」と記載されているから、本件発明の課題は、【0005】に記載されるように、「フッ素系界面活性剤を含有せず、消火性能の高い泡消火剤を提供する」ことにあるといえる。 イ 本件発明の課題に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載 上記アの発明の課題に対応して、【課題を解決するための手段】に続く【0006】に「本発明による泡消火剤は、14質量%以上のアニオン系界面活性剤、0.2質量%以上の両性界面活性剤、1.0質量%以上のHLBが15以上のノニオン界面活性剤、及び溶剤を含有し、フッ素系界面活性剤を含有しなくてもよい。」と記載され、アニオン系界面活性剤について、【0014】に「アニオン系界面活性剤の含有量は発泡性・泡持ち性の観点から14質量%以上であることが好まし」いこと、アニオン系界面活性剤としては、【0015】に各種の具体的なアニオン系界面活性剤が例示され、両性界面活性剤について、【0016】に各種の両性界面活性剤が例示されると共に、「両性界面活性剤の含有量は消火性が向上することから0.2質量%以上であることが好ましく・・・界面活性剤の希釈溶液への可溶性、発泡性の悪化からすると、両性界面活性剤の含有量の上限は10%であることが好ましい。」と記載されている。 他方、ノニオン界面活性剤について【0017】には、「HLBが15以上のノニオン界面活性剤の含有量は泡持ち性が良くなることから1.0質量%以上であることが好まし」いと記載されているが、ノニオン界面活性剤の例示は、各種のノニオン界面活性剤が存在する中で、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテル」でしかない。 そして、【0023】~【0037】に記載される実施例では、「実施例及び比較例における泡消火剤に含まれる成分として、アニオン系界面活性剤としては、ラウリル硫酸トリエタノールアミンを用い、両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミンオキサイドを用いた。溶剤としては、水の他、ブチルカルビトールを用いた。このブチルカルビトールは、発泡向上剤としても機能する。泡持ち性向上のためにミスチルアルコールを用い」(【0024】)、「実施例では、HLBが15以上のノニオン界面活性剤の含有量及び成分を変えつつ、発泡倍率及び25%還元時間を測定し」(【0025】)ている(発泡倍率が高ければ高いほど、また25%還元時間が長ければ長いほど消火性が高くなる。)。 【0028】【表1】には、実施例1~3として、HLBが15.3のポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテルが、4.8質量%~16.7質量%(【0026】)含まれる態様、実施例4~6として、HLBが16.2のポリオキシエチレン(30)オレイルエーテルが、4.8質量%~16.7質量%含まれる態様が記載され、【0029】【表2】には、実施例7~9として、HLBが16.4のポリオキシエチレン(7~30)ウンデシルエーテルが、4.8質量%~16.7質量%含まれる態様、実施例10~12として、HLBが16.9のポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルが、4.8質量%~16.7質量%含まれる態様が記載され、【0030】【表3】には、実施例13~15として、HLBが17.8のポリオキシエチレン(50)ステアリルエーテルが、4.8質量%~16.7質量%含まれる態様、実施例16~18として、HLBが17.9のポリオキシエチレン(20~50)ウンデシルエーテルが、3.3質量%~11.7質量%(【0031】)含まれる態様が記載され、【0032】【表4】には、実施例19~21として、HLBが18.1のポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテルが、3.3質量%~11.7質量%(【0033】)含まれる態様、実施例22~24として、HLBが18.5のポリオキシエチレン(35~65)ウンデシルエーテルが、2.9質量%~10.0質量%(【0033】)含まれる態様が記載され、さらに、これらの態様が、発泡倍率及び還元時間において、ノニオン系界面活性剤が含有されていない比較例1、添加するノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテルのHLBが13.6である比較例2~4に比べて良好な結果を示すことが記載されている。 また、【0036】【表7】には、HLBが18.5からなるノニオン界面活性剤の含有量を増加させるに従い、消化時間が短くなっていく相関があることが記載されている。 以上の本件明細書の発明の詳細な説明の記載、特に、ノニオン系界面活性剤が含有されていない比較例1、及び添加するノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル)のHLBが13.6である比較例2~4と実施例との比較、及び、HLBが18.5からなるノニオン界面活性剤の含有量が増加するに従い、消化時間が短くなっていく相関が示されていることを考慮すると、本件発明において、上記アの発明の課題を解決するには、まずは、泡消化剤に特定のノニオン界面活性剤を含むことが肝要であり、それに比べればアニオン界面活性剤及び両性界面活性剤の寄与は従来知られている範囲にとどまることが理解できることから、実施例における、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤について、それぞれ、ラウリル硫酸トリエタノールアミン及びラウリルジメチルアミンオキサイドが、18.3質量%(実施例3等)~21.0質量%(実施例1等)及び1.5質量%(実施例3等)~1.7質量%(実施例1等)での結果と、それぞれの種類及び含有量における、上述の【0014】~【0016】の記載も考慮すると、ノニオン界面活性剤以外については、上記(1)の発明の課題を解決するには、泡消火剤原液が、14質量%以上のアニオン系界面活性剤、0.2質量%以上10質量%以下の両性界面活性剤、及び溶剤を含有し、フッ素系界面活性剤を含有しな」ければよいことが理解できる。 他方で、本件明細書には、上記アの発明の課題を解決するのに、肝要な成分であるノニオン界面活性剤について、HLBが15以上のノニオン界面活性剤を1.0質量%含みさえすれば、泡消火剤原液の消化性能が高くなることを理解することができるための作用機序等に関する記載がないため、上記アの発明の課題を解決するための、1.0質量%以上含まれるHLBが15以上のノニオン界面活性剤については、客観的な事実である実施例の記載を参照するしかない。 しかしながら、実施例で消火性能が向上することが検証されているのは、上述の【0017】で例示されている、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレオレイルエーテルのみである。そして、HLBが15以上のノニオン界面活性剤の構造によって、泡消火剤原液に与える消火性能は変化すると考えるのが妥当であり、HLBが15以上のノニオン界面活性剤の構造にかかわらず、泡消火剤原液に与える消火性能の寄与が良好であることを認めるに足りる証拠(本件明細書の発明の詳細な説明の記載や出願当時の技術常識)があるとはいえない。 そうすると、上記アの発明の課題を解決するには、単に、HLBが15以上のノニオン界面活性剤を1.0質量%以上含むだけでは足りず、HLBが15以上のノニオン界面活性剤が、HLBが15以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレオレイルエーテルであることが肝要であるといえる。 ウ 特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明の記載との対比 上記イで述べたように、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと、上記アの発明の課題を解決するには、HLBが15以上のノニオン界面活性剤が、HLBが15以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレオレイルエーテルであることが肝要であると理解されるところ、設定登録時の請求項1、3、4に係る発明には、それらの特定はなされていない。 そうすると、設定登録時の請求項1、3、4に係る発明は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。 エ まとめ 上記ウについて、上記アのサポート要件判断の規範への当てはめを行うと、設定登録時の請求項1、3、4に係る発明は、サポート要件を満たしていない。 2 異議申立人による特許異議の申立理由の概要 (1)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~4に係る発明は、下記3に記載の甲第1号証に記載された発明及び技術常識(甲第2~9号証)に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由1」という。)。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反) 設定登録時の請求項1~4に係る特許は、請求項1~4の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由2」という。)。 記 本件発明は、フッ素系界面活性剤を含有せず、消火性能の高い泡消火剤を提供することを課題とする(【0005】)。 しかしながら、実施例としては、特定の界面活性剤(実施例1ないし実施例24)を含む泡消火剤原液のみが記載されている。すなわち、 ア 設定登録時の請求項1に係る発明のアニオン系界面活性剤としては、18.3質量%~21.0質量%のラウリル硫酸トリエタノールアミン(実施例1ないし実施例24)のみを含み、 イ 設定登録時の請求項1に係る発明の両性界面活性剤としては、1.5質量%~1.7質量%のラウリルジメチルアミンオキサイド(実施例1ないし実施例24)のみを含み、 ウ 設定登録時の請求項1に係る発明のノニオン界面活性剤としては、4.8質量%~16.7質量%のポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル(HLB:15.3)(実施例1ないし実施例3)、ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル(HLB:16.2)(実施例4ないし実施例6)、ポリオキシエチレン(7~30)ウンデシルエーテル(HLB:16.4)(実施例7ないし実施例9)、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(HLB:16.9)(実施例10ないし実施例12)及びポリオキシエチレン(50)ステアリルエーテル(HLB:17.8)(実施例13ないし実施例15)、3.3質量%~11.7質量%のポリオキシエチレン(20~50)ウンデシルエーテル(HLB:17.9)(実施例16ないし実施例18)及びポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテル(HLB:18.1)(実施例19ないし実施例21)、並びに、2.0質量%~16.7質量%のポリオキシエチレン(35~65)ウンデシルエーテル(HLB:18.5)(実施例22ないし実施例24)のいずれかのみを含む泡消火剤原液が実施例として記載されているにすぎない。これら特定の界面活性剤以外のものを含む泡消火剤原液の場合に、前記課題を解決できることが明らかではない。そうすると、設定登録時の請求項1~4に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、設定登録時の請求項1~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (3)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反) 設定登録時の請求項1~4に係る特許は、請求項1~4の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(甲第11号証を引用している。以下、「申立理由3」という。)。 記 設定登録時の請求項1及び3に係る発明では、ノニオン界面活性剤の特定に「HLB」の値を用いているが、「HLB」が、どのように求められるものであるのか不明であるから、設定登録時の請求項1及び3、並びに両発明を引用する設定登録時の請求項2及び4に係る発明は明確ではない。 すなわち、甲第10号証に記載されているように、HLBの計算法としては、Griffin氏の方法、川上博士の方法及びDavies氏の方法等があり、計算式が異なることから、それぞれの計算法で求めたHLBの値は同一ではない。 したがって、特許請求範囲の構成要件としてHLBの値を用いる場合には、どの方法で計算したものであるのかが明細書に記載されているか、HLBの定義が記載されている必要がある。 本件明細書には、HLBの計算法が特定されていないから、本件明細書の記載を踏まえても、設定登録時の請求項1及び3に係る発明の「HLB」の定義及びそれがどのように測定されるものであるのかが不明確である。 (4)特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反) 本件特許は、設定登録時の請求項1~4に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由4」という。)。 記 ア HLBについて 設定登録時の請求項1及び3に係る発明では、ノニオン界面活性剤の特定に「HLB」の値を用いているが、上記申立理由3で述べたとおり、「HLB」が、どのように求められるものであるのかが、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいては当業者が理解できないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 イ 数値範囲について 設定登録時の請求項1に係る発明は、「14質量%以上のアニオン系界面活性剤」、「0.2質量%以上10質量%以下の両性界面活性剤」、「1.0質量%以上のHLBが15以上のノニオン界面活性剤」との記載があり、「アニオン系界面活性剤」、「両性界面活性剤」及び「ノニオン界面活性剤」について「質量%」の数値範囲が、並びに、「ノニオン界面活性剤」について「HLB」の数値範囲が特定されている。これらの数値範囲に関して、本件明細書の発明の詳細な説明においては、設定登録時の請求項1に係る発明で特定された数値範囲に対応する記載はあるものの、当該数値範囲の下限及び上限に対応した実施例の記載はなく、また、請求項で特定した条件を満たせば漏れなく所望の効果を奏するといえるのかも不明であるから、前記数値範囲の境界の技術上の意義が不明瞭である。したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 3 提出された証拠 (1)特許異議申立書に添付して提出された証拠 甲第1号証:特表2003-508549号公報 甲第2号証:特表2002-529580号公報 甲第3号証:「界面活性剤ってなんだろう?界面活性剤の主な性質と種類」日本界面活性剤工業会のホームページ(https://jp-surfactant.jp/surfactant/nature/index.html)出力日2024年3月7日 甲第4号証:米国特許出願公開第2016/0038779号明細書 甲第5号証:米国特許出願公開第2022/0362601号明細書 甲第6号証:特開2012-157589号公報 甲第7号証:国際公開第2023/009675号 甲第8号証:特公平3-11811号公報 甲第9号証:特開2018-122291号公報 甲第10号証:西一郎 他編、「界面活性剤便覧」、産業図書株式会社、昭和35年7月5日初版、306~327頁、奥付き (2)異議申立人からの令和6年11月14日提出の意見書に添付して提出された証拠 甲第11号証:「界面活性剤入門2(乳化剤、可溶化、エマルション編)」三洋化成工業株式会社のホームページ(https://solution.sanyo-chemical.co.jp/technology/2023/07/102496/)出力日2024年11月6日 甲第12号証:「テクノロジー 有機概念図による乳化処方設計とは?」日本エマルジョン株式会社のホームページ(https://www.nihon-emulsion.co.jp/tech/organic.html)出力日2024年11月6日 (以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。) 第5 当審の判断 当審は、上記取消理由1、2及び申立理由1~4のいずれの理由によっても、本件特許を取り消すことはできないと判断する。 以下、その理由について詳述する。 1 記載要件に関する理由 (1)明確性要件反に関する取消理由1、申立理由3について ア 取消理由1について 本件訂正の訂正事項1によって、請求項1において、ノニオン界面活性剤が、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む」ものと訂正された上で、訂正事項2によって、請求項1に記載された「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」は、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテルを含む」ものであることが訂正された。 これらの訂正によって、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテル」は、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」に含まれるものであることが明らかとなり、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレン(7~65)ウンデシルエーテル」と、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」との構成間の関係が明らかとなった。 そうすると、取消理由1に係る点で、本件発明2~4は、明確であるから、取消理由1には、理由がない。 イ 申立理由3について (ア)申立理由3に対する判断 甲10には、HLBの定義には、Griffin氏によるもの(307頁「7.2」~312頁「7.4」)の他、川上博士によるものや、Davies氏等によるものがある(313頁~317頁「7.5」)ことが記載されているところ、請求項1、3及び本件明細書に記載されるHLBについては、どの定義によるものであるかの直接的な記載はない。 しかしながら、甲10には、 a 「7.HLB価 界面活性剤の利用(特に乳化)に際してその適正なものを選ぶのに試行錯誤法によって膨大な実験を行わなければならなかったのが普通であった。10年ほど前Atras社のGriffin氏1)がHLB価の槻念を発表してからはかなり系統的に実験できるようになり,界面活性剤選定の手数はずいぶん簡単になった。」(307頁1~5行目) b 「7.2 HLB価の定義 現在一般に使われている表示法は親水性部分と親油性部分との分子量に着目する方法である。この場合両者の合計がその界面活性剤の分子量となる。 いま,親水性部分として (1) ポリオキシエチレン (2) 多価アルコール だけを考え,Griffin氏2)はHLB価を次のように定義している。 HLB価=20(1-S/A)・・・(II.7.1) ここに S:けん化価 A:使用脂肪酸の酸価 HLB価=(E+P)/5・・・(II.7.2) ここに E:分子中のポリオキシエチレンの重量% P:分子中の多価アルコールの重量% (II.7.1)式はちょっと見ると親水性部分や親油性部分の分子量に関係ないように見えるがこの分子の分子量をM,親油性部分の重量をM0とすればM,M0はけん化価S,使用脂肪酸(親油性部分に対応)の酸価Aとの間に M=56100/S M0=56100/A という関係があるから(II.7.1)式の右辺は 20(1-S/A) =20(1-M0/M) 親水性部分の重量MwはMw=M-M0であるから =20(1-M0/M0+Mw) =20Mw/M0+Mw・・・(II.7.3’) =20Mw/M・・・(II.7.3) となって親水性部分親油性部分の重量に関係しているのがわかる。」(307頁23行~308頁19行) c 「7.5 Griffin氏以外の方法 7.5.1 川上博士の方法 Atras Powder Co.は油相ならびに諸工業における所要HLB価と自社製の非イオン活性剤にそれぞれそのHLB価を公示して非イオン活性剤の販売を行ったのであるが,HLB価の計算法は長い間秘密にしていた。このためAtras社(Griffin氏の)のHLB価に近似する値を得る計算方法がわが国でも検討された。 川上博士は分子量Mなる非イオン活性剤について親水性部分の分子量をMw(=M-M0)とすれば,M0は分子中の親油性部分の分子量に相当する溶液が中性EのときそのpHを7と定めるような方式をとり, Mw=M0であるときHLB価=7 Mw/M0=4〃 〃 =14 Mw/M0=1/4〃 〃 =0 と定め,この条件を満足するHLB価とMw/M0との関係式を HLB価=7+1.17logMw/M0・・・(II.7.6) としている3)。 この(II.7.6)式から求めるHLB価は実用の範囲内でGriffin氏の方法で求めるHLB価とかなり一致している。 7.5.2 Davies氏の方法 Davies氏は乳化現象の合併動力学立場に立ってHLB価を化学両論的に導き出す新らしい方法を発表した4)。すなわちDavies氏は HLB価=7+Σ(親水基の基数)-n(CH2基の基数)としている。 ・・・ 基数から求めたHLB値とAtlas Powder Co.で公表している方法に基くHLB値とは極めてよく一致していることはII.7.5表をみれば明らかであろう。」(313頁1行~314頁2行) との記載があり、上記aで、HLB価の書き出しの部分にまず、Griffin氏の方法に関する言及がなされていること、上記bで、「現在一般に使われている表示法は親水性部分と親油性部分との分子量に着目する方法である。」との記載に続いて、Griffin氏の方法が記載されると共に、Griffin氏の方法は、親水性部分親油性部分の重量(分子量)に着目する方法であること、上記cで、川上博士の方法は、その当時公表されていなかったGriffin氏の方法の代替的なものとされていること、Davies氏の方法は、Atlas Powder Co.で公表している方法(Griffin氏の方法)に基づくHLB値と極めてよく一致しているとの記載がなされていることを踏まえると、HLB値を求める方法は、Griffin氏の方法が代表的なものであり、川上博士の方法及びDavies氏の方法等は、Griffin氏の方法の代替的なものであるか、補完的なものであることが理解できる。 そうすると、請求項1、3及び本件明細書に記載されるHLBは、その定義が記載されていないことから、HLBを求めるにあたって最も一般的な方法であるGriffin氏の方法の方法に従ったと理解でき、「HLB」が、どのように求められるものであるのか不明であるということはないから、請求項1及び3、並びに両発明を引用する設定登録時の請求項2及び4に係る発明は明確である。 (イ)異議申立人が令和6年11月14日に提出した意見書における主張について なお、上記意見書での主張は、申立理由3及び申立理由4に関するものであるが、申立理由の繰り返しの主張(6頁18行~7頁11行の「(2)数値範囲について」)については、記載を省略すると共に、上記意見書での主張は、最も関連があると考えられる申立理由3の中で判断する。 a 主張の内容 (a)HLBについて 審判合議体は、「請求項1及び本件明細書に記載されるHLBは、その定義が記載されていないことから、HLBを求めるにあたって最も一般的な方法であるGriffin氏の方法に従ったと考えるのが妥当であるといえるが、その理解で正しいかどうか、回答されたい。」と審尋しているが、この審尋の内容は記載不備を指摘するものであるから本来取消理由とすべきであったが、審尋で対応したため、特許権者は意見書による回答に留まることとなった。 しかしながら、審尋に対する回答として意見書で主張したとしても、本件明細書における記載不備が解消するわけではないから、依然として特許異議申立書の申立理由3により、本件特許は取り消されるべきである。 審判合議体は、審尋において、「HLBを求めるにあたって最も一般的な方法であるGriffin氏の方法に従ったと考えるのが妥当である」と説示しているが、その根拠となった甲10は、昭和35年に発行されたものであり、60年以上も前のものである。 実際、平成12年に国際出願された甲1や2022年に出願された甲7では、別のHLBの測定方法が記載されているように、証拠もなしに、本件特許出願時においてもGriffin氏の方法が最も一般的な方法であると言うことはできない。 また、最近の掲載記事である甲11及び甲12には、次の記載がある。 甲11:「 [図:0001423482000001.jpg] 」(8/25頁) 甲12:「 [図:0001423482000002.jpg] 」(2/4頁) 甲11及び甲12のとおり、最近ではHLBとして、Griffin氏の方法ではなく、無機性値/有機性値×10が一般に採用されていることが理解できる。 したがって、本件特許が出願された令和5年では、Griffin氏の方法が最も一般的な方法とはいえないから、たとえ特許権者がGriffin氏の方法によりHLBを測定したと主張したとしても、明細書に訂正により記載することができる技術常識ではない。 (b)界面活性剤の濃度について アニオン系界面活性剤と両性界面活性剤の濃度が、純分なのか、それとも製品としての濃度なのか不明である。 b 上記aの主張に対する判断 (a)上記a(a)の主張に対する判断 まず、上記a(a)での審尋は、特許権者に審尋の形式はとっているものの、甲10に示される技術常識によれば、本件発明におけるHLBは、上記(ア)で述べたように、Griffin氏の方法に従ったと理解できることを述べるものであるから、申立理由3での記載不備を指摘するものではなく、特許権者の対応が、意見書での回答であったとしても何ら問題となるものではない。 そして、審判合議体が、技術常識の根拠とした甲10が、60年以上も前に刊行されたものであるとしても、何ら技術常識の根拠とならないということはなく、むしろ、これだけ前に知られている技術であれば、本件特許出願日では極めて広範にしられている技術であるといえる。 また、甲11、甲12には、HLBを、無機性値/有機性値×10で求めていることが記載されているが、これは甲10で、Griffin氏の方法、川上博士の方法、Davies氏の方法に対して、「その他の方法」として、「 [図:0001423482000003.jpg] 」(316頁26~末行) と記載される方法に対応するものであるから、上記(ア)で述べた理由を考慮すると、川上博士の方法及びDavies氏の方法と同様に、Griffin氏の方法の代替的なものであるか、補完的なものであるといえる。そして、甲11、甲12の存在は、単に、甲10でいうところの「その他の方法」で求められるHLBが採用されることがあるということを示すにとどまり、異議申立人がいうような、「最近ではHLBとして、Griffin氏の方法ではなく、無機性値/有機性値×10が一般に採用されていること」を示すものではない。また、甲1や甲7も、何ら「最近ではHLBとして、Griffin氏の方法ではなく、無機性値/有機性値×10が一般に採用されていること」を示すものではない。 むしろ、甲11には、「HLBの表し方には、グリフィンの方法などいくつかの方法がある」と記載されるように、近時であっても、HLBの表し方として、まず、グリフィンの方法が言及されることが理解できるから、本件出願時であっても、HLBの表し方として、Griffin氏の方法を採用することが一般的であったといえる。 そうすると、上記a(a)の主張は、採用することができない。 (b)上記a(b)の主張について この主張に係る事項は、特許異議申立書での申立理由にはないものであり、本件訂正に付随して生じる事項でもないから、特許異議申立書に記載された申立理由に対して新たな内容を含むものである。 また、主張の内容が判然としない。 そうすると、上記a(b)の主張は、採用することができない。 c 以上によれば、異議申立人が令和6年11月14日に提出した意見書における主張は採用できない。 (2)サポート要件反に関する取消理由2、申立理由2について ア 取消理由2について 本件発明のサポート要件の判断は、上記第4の1(2)アに記載の「サポート要件の判断の規範」に従って判断すべきところ、この「サポート要件の判断の規範」に従って判断すると、同ウで述べたように、本件発明1、3、4が、サポート要件を充足するには、本件発明1、3、4において「HLBが15以上のノニオン界面活性剤が、HLBが15以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレオレイルエーテルであること」が必要である。 そして、第2の1で述べた本件訂正によって、本件発明1、3、4は、第3に記載されるとおりのものとなり、「ノニオン界面活性剤」は、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む」ものとされた。 ここで、この特定では、ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を「含む」との記載形式がとられているが、この記載であっても、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方が、ノニオン界面活性剤を特徴付ける成分であることが理解できるし、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方が、ノニオン界面活性剤を特徴付ける成分である限りにおいて、それを阻害しない範囲で、他の成分が存在したとしても、本件発明の課題が解決されなくなるとはいえない。 そうすると、本件訂正によって、本件発明1、3、4において、サポート要件を充足するために必要な事項が全て特定されたことになるから、本件発明1、3、4は、サポート要件を充足するものであり、取消理由2には、理由がない。 イ 申立理由2について 上記アで述べたように、サポート要件の判断は、上記第4の1(2)アに記載の「サポート要件の判断の規範」によって判断すべきところ、本件訂正によって、本件発明1~4において、本件発明の課題を解決するのに必要とされている事項が特定されていることになる(本件発明2は、本件訂正前に既に上記アで述べた本件発明の課題を解決するのに必要とされている事項と実質的に同じ事項が特定されていた。)から、申立理由2には、理由がない。 また、申立理由2の内容は、要は、実施例で開示されている範囲を、本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない、というものであるが、なぜ、実施例で開示されている範囲を、本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できないのか、その根拠が明らかでない。 さらにいえば、第4の1(2)イで述べたように、本件明細書の発明の詳細な説明の記載、特に、ノニオン系界面活性剤が含有されていない比較例1、及び添加するノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル)のHLBが13.6である比較例2~4と実施例との比較、及び、HLBが18.5からなるノニオン界面活性剤の含有量が増加するに従い、消化時間が短くなっていく相関が示されていることを考慮すると、本件発明において、同アの発明の課題を解決するには、まずは、泡消化剤に特定のノニオン界面活性剤を含むことが肝要であり、それに比べればアニオン界面活性剤及び両性界面活性剤の寄与は従来知られている範囲にとどまることが理解できることから、実施例における、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤について、それぞれ、ラウリル硫酸トリエタノールアミン及びラウリルジメチルアミンオキサイドが、18.3質量%(実施例3等)~21.0質量%(実施例1等)及び1.5質量%(実施例3等)~1.7質量%(実施例1等)での結果と、それぞれの種類及び含有量における、上述の【0014】~【0016】の記載も考慮すると、ノニオン界面活性剤以外については、同アの発明の課題を解決するには、泡消火剤原液が、14質量%以上のアニオン系界面活性剤、0.2質量%以上10質量%以下の両性界面活性剤、及び溶剤を含有し、フッ素系界面活性剤を含有しな」ければよいことが理解できる。 そうすると、「アニオン系界面活性剤」及び「両性界面活性剤」については、実施例での開示に対して、本件発明の記載の範囲が広いとしても、サポート要件違反となるものではない。 他方で、同アの発明の課題を解決するのに、肝要な成分であるノニオン界面活性剤について、同イで述べたように、HLBが15以上のノニオン界面活性剤を1.0質量%含みさえすれば、本件発明の課題を解決することができるとはいえないところ、本件訂正によって、ノニオン界面活性剤は、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む」ものに限定された。 ここで、本件発明1では、ノニオン界面活性剤は、実施例で使用されている、各ポリオキシエチレンラウリルエーテル、各ポリオキシエチレンステアリルエーテル及び各ポリオキシエチレンウンデシルエーテルまでは特定されず、これらを包含する「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」と特定されているが、本件明細書の【0017】等には、泡消火剤原液に1.0質量%以上含まれるHLBが15以上のノニオン界面活性剤として、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」があげられていること、「HLBが15以上」との限定によって「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」の「アルキル」の性状や、「ポリオキシエチレン」の数に実質的に限定が加わること、実施例において、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」に含まれる、各ポリオキシエチレンラウリルエーテル、各ポリオキシエチレンステアリルエーテル及び各ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを用いて本件発明の課題が解決することが確認されていることなどから、本件発明のノニオン界面活性剤の特定が、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」にとどまるとしても、本件発明1~4が、サポート要件違反となるものではない。 さらに、ノニオン界面活性剤が存在していれば相応のノニオン界面活性剤の機能が果たされること、実施例において、ノニオン界面活性剤の存在量が、1質量%に近接する2質量%の実施例(実施例25(【0036】))があることから、ノニオン界面活性剤の含有量が、1.0質量%以上の範囲で本件発明の課題を解決することが理解できる。 そうすると、実施例での具体的な開示に対して、本件発明の範囲が記載上広いとしても、本件発明1~4は、発明の課題を解決するものであることが理解でき、サポート要件に違反するものではないから、申立理由2には、理由がない。 (3)実施可能要件反に関する申立理由4について ア HLBについて 上記(1)イ(ア)で述べたように、本件発明1、3及び本件明細書に記載される「HLB」は、Griffin氏の方法により求められたものであると理解できるから、「HLB」の点で、本件明細書の発明の詳細な説明について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないということはない。 イ 数値範囲について 本件発明は、「泡消火剤原液」という物の発明であるところ、物の発明について、特許法第36条第4項第1号に記載された要件(実施可能要件)を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。 この判断規範からすると、本件発明1の「アニオン系界面活性剤」、「両性界面活性剤」及び「ノニオン界面活性剤」における「質量%」の数値範囲の上限、下限に対応する実施例、並びに「ノニオン界面活性剤」の「HLB」の数値範囲の下限に対応する実施例がないこと自体は、実施可能要件違反の直接の理由とはならない。 しかも、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される実施例では、「アニオン系界面活性剤」、「両性界面活性剤」及び「ノニオン界面活性剤」における「質量%」の値、並びに「ノニオン界面活性剤」の「HLB」の値が、本件発明1に含まれる「泡消火剤原液」が多数、実際に製造され、実際に泡消火剤として使用される(【0023】)ことも示されているから、上述の判断手法に照らせば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に違反するものではない。 また、この申立理由で問題にしている本件発明1の「アニオン系界面活性剤」、「両性界面活性剤」及び「ノニオン界面活性剤」における「質量%」の数値範囲の上限、下限、並びに「ノニオン界面活性剤」の「HLB」の数値範囲の下限の場合における実施であるが、実施例における記載を参考にして、適宜、「アニオン系界面活性剤」、「両性界面活性剤」及び「ノニオン界面活性剤」における「質量%」の値、並びに「ノニオン界面活性剤」の「HLB」の値を調整して、上記の場合における「泡消火剤原液」を製造することに、過度の試行錯誤が必要であるとはいえない。 さらに、本件明細書の【0014】の記載によれば、アニオン系界面活性剤の「14質量%以上」は、発泡性・泡持ち性の観点から決められていること、同【0016】の記載によれば、両性界面活性剤の「0.2質量%以上」は、消火性が向上する観点から、同じく「10質量%以下」は、界面活性剤の希釈溶液への可溶性、発泡性の悪化の観点から決められていること、同【0017】の記載によれば、ノニオン界面活性剤の「1.0質量%以上」及びHLBの「15以上」は、泡持ち性が良くなる観点から、また、同【0035】の記載によれば、HLBの「15以上」は、消火時間の観点でも決められていることが理解できるから、本件発明1において、数値範囲の境界の技術上の意義が不明瞭であるということもない。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に違反するものではないから、申立理由4には、理由がない。 2 進歩性欠如に関する申立理由1について (1)各甲号証に記載された事項 ア 甲1に記載された事項 (ア)「【請求項1】 泡の容積を増やし且つ泡の保持力を上げる泡形成組成物および/または泡状物質形成組成物において、前記泡形成組成物および泡状物質形成組成物の10%水溶液のpHが約4~約12であり、前記組成物に、 a)有効量の双性イオンポリマー性泡安定剤、 b)有効量の洗浄力のある界面活性剤、および c)残部のキャリアーとその他の付随成分、 が含まれている前記組成物。 ・・・ 【請求項9】 請求項1に記載の組成物において、前記洗浄力のある界面活性剤(b)を、アミンオキサイド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、ベタイン、スルホベタイン、アルキルポリグリコシド、アルキルエトキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択する前記組成物。 【請求項10】 請求項1に記載の組成物において、前記身体ケア組成物、洗濯用洗浄剤組成物、硬質表面浄化組成物、農芸化学用発泡組成物、油田用発泡組成物、消火用発泡組成物およびそれらを混合したものからなる群から選択する組成物である前記組成物。」 (イ)「【0013】 さらに別の態様では、消火しながら、一方、泡の容積を増やし且つ泡の保持力を上げる方法には、消火用発泡組成物の水溶液と前記火災の火を接触するステップが含まれ、前記消火用発泡組成物には、前記消火用発泡組成物の10%水溶液のpHが約4~約12であるとき、 a)明細書の中で定義されるようなポリマー性泡安定剤の有効量、 b)有効量の洗浄力のある界面活性剤、および c)残部のキャリアーとその他の付随成分、 が含まれている。」 (ウ)「【0140】 洗濯洗剤用組成物および使用方法 汚れ遊離剤として使われたこの発明の双性イオンポリマー性泡安定剤の他に、この発明の洗濯用洗剤には付随成分が含まれている。洗濯用洗剤の種々の付随成分は、全体がこの明細書の引用文献の一つであるPCTによる国際的刊行物であるWO 98/39401により開示されている。 【0141】 一般に、洗濯用洗剤組成物は固体粒子,液体またはゲルであり、大量の洗剤とこの発明の少量の汚れ放出ポリマーが含まれている。また、一般に、この発明の織物洗浄方法には、大量の水と少量の洗剤および汚れ放出ポリマーを含む洗浄媒体における織物製品の洗浄が含まれている。少量の付随成分も存在する。 【0142】 I.アミノアルキルおよびアルコキシシラン-シリコーン化合物 この発明の組成物と方法の付随成分の一つは、アミノシリコーン化合物であり、通常この化合物の化学式は下記の通りであり: ・・・ 【0152】 III.洗剤 この洗濯用洗剤に関する発明の組成物と方法はすべて、洗剤および随意にその他の機能性成分を用いている。使用できる洗剤およびその他の機能性成分の例は、1996年10月4日に提出された米国特許出願第08/726,437号で開示され、その内容はこの明細書の引用文献の一つである。洗剤は多種多様な界面活性剤から選択することができる。 【0153】 A.非イオン性界面活性剤 5-17のHLBを有するものを含む非イオン性界面活性剤は、洗剤の分野ではよく知られている。この種の界面活性剤の例は、1973年2月20日に発行されたBoothの米国特許第3,717,630号および1967年7月25日に発行されたKesslerらの米国特許第3,332,880号にリストされ、これらの特許の各々はこの明細書の引用文献の一つである。この発明で使用できる適切な非イオン性界面活性剤の無数の例には、次のようなものがある: ・・・ 【0164】 液体,粉末,およびゲル状の組成物として使用するのに好適なアルコールエトキシレート非イオン性界面活性剤は、生分解性であり且つ下記化学式を有し: R(OC2H4)nOH ここで、Rは、約8~約22個、好適には約10~約20個の炭素原子からなる1級または2級アルキル鎖であり、nの平均値は約2~約12、好適には約2~約9である。非イオン性界面活性剤のHLB(親水性-親油性バランス)は約5~約17、好適には約6~約15である。HLBは、この明細書の引用文献の一つである、1966年にMarCel Dekker,InC.から発行されたM.J.SChiCkの「NonioniC SurfaCtants」の606-613頁に詳細に規定されている。好適な非イオン性界面活性剤ではnは3-7である。1級線状アルコールエトキシレート(たとえば、約20%の2-メチル分岐異性体を含む有機アルコールからつくられ、商標NeodolとしてShell ChemiCal Co.から商業的に利用できる、アルコールエトキシレート)は、性能の観点から好ましい。」 (エ)「【0232】 D.両性界面活性剤 両性界面活性剤には、酸性またはアルカリ性媒体中で分子の親水性部分に正または負電荷または両方の電荷がある。 【0233】 この明細書で使用できる両性界面活性剤の例には、アミノ酸,ベタイン,サルテイン,ホスホベタイン,イミダゾリニウム誘導体,大豆りん脂質,および卵黄レシチンがある。適切な両性界面活性剤の例には、アルキルアンホカルボキシグリシネートとアルキルアンホカルボキシプロピオネート,アルキルアンホジプロピオネート,アルキルアンホジアセテート,アルキルアンホグリシネートとアルキルアンホプロピオネート(ここで、アルキルは6-20個の炭素原子を有するアルキル基である)のアルカリ金属,アルカリ土類金属,アンモニウムまたは置換アンモニウム塩がある。適切な両性界面活性剤には、他に、12-18個の炭素原子を有するアルキルイミノプロピオネート,アルキルイミノジプロピオネートおよびアルキルアミノプロピルスルホネートがあり、そしてアルキルが6-20個の炭素原子を有するアルキル基であるアルキルベタインとアミドプロピルベタインとアルキルサルテインおよびアルキルアミドプロピルヒドロキシサルテインがとくに好ましい。」 (オ)「【0379】 織物浄化液体組成物 この発明の織物浄化液体組成物には、有効量の酵素が、組成物の活性プロテアーゼ酵素の重量で、好適には約0.0001~約10%、より好適には約0.001~約1%、最も好適には約0.001~約0.1%含まれている。(たとえば、米国特許第5,679,630号を参照のこと)。 ・・・ 【0384】 実施例20 織物浄化液体組成物 日本の機械洗浄条件下で特定の効用がある織物浄化液体組成物はこの発明によりつくられる: 【0385】 【表14】 [図:0001423482000004.jpg] 」 イ 甲2に記載された事項 (ア)「【請求項1】 界面活性剤系を含んでなり、該界面活性剤系が、界面活性剤系の0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~19重量%、より好ましくは1重量%~18重量%のアルキルベンゼンスルホネート界面活性剤を含んでなり、前記界面活性剤系の親水性指数HIC、ここで、 HIC=Σy(界面活性剤系における界面活性剤yの重量%)x(HISy) ただし、HISは、前記界面活性剤系の各界面活性剤について次のようにして計算される: HISy=20x(界面活性剤成分yの親水性部分の分子量)/(界面活性剤成分yの分子量) が8.0~9.2、好ましくは8.2~9.1、より好ましくは8.4~9.0である、重質液体洗濯洗剤組成物。」 (イ)「【0178】 実施例 AE=アルコールエトキシレート APA=アミノプロピルアミン AS=アルキルサルフェート #EO=界面活性剤1分子当たりのエトキシル化単位の平均数 FA=脂肪酸 CMG=N-ココイルN-メチルグルカミン LAS=鎖状アルキルベンゼンスルホネート LTAC=ラウリルトリメチル塩化アンモニウム MEA=モノエタノールアミン ポリマーA=平均エトキシル化度15のテトラエチレンペンタミン RPS=菜種 TMS/TDS=酒石酸塩モノコハク酸および酒石酸塩ジコハク酸の混合物 S=サルフェート 【0179】 実施例1 表1に、洗濯洗剤に一般的に用いられる様々な界面活性剤の親水性指数の計算方法を示す。以下の表において、「Cn」は界面活性剤分子の平均鎖長であり、「phobe」は界面活性剤分子の疎水性部分の分子量を表す。同様に、「phil」は界面活性剤分子の親水性部分の分子量である。「Total」は、phobeとphilの合計、すなわち、界面活性剤分子の平均分子量である。「WF phil」は、親水性部分の重量分数、すなわち、親水性部分の分子量を総分子量で割ったものである。「HLS」は、WF philに20を乗算したものである。イオン性界面活性剤については、HIS値は、界面活性剤のイオンのみで計算し、対イオンは無視した。 【表1】 [図:0001423482000005.jpg] 【0180】 実施例2 以下の組成物は、本発明による親水性指数の重要性を説明するためのものである。表2Aの組成物AおよびBは本発明により作成される。表2Cおよび2Dの組成物CからJは本発明の範囲外の組成物であり、比較のためのものに過ぎない。組成物AおよびBは、本発明の範囲外の組成物に比べて優れたクリーニング効果をもたらす。 ・・・ 【表4】 [図:0001423482000006.jpg] 」 ウ 甲3に記載された事項 (ア)「 [図:0001423482000007.jpg] [図:0001423482000008.jpg] ・・・ [図:0001423482000009.jpg] 」(2/4頁~3/4頁) エ 甲4に記載された事項(甲4は外国語で記載された公報であるところ、外国語の摘示は省略し、その該当箇所の訳文のみを記載する。翻訳は、異議申立人が提出したものである。甲5、甲7についても同じ。) (ア)「[0002] 消火泡沫濃縮物は,発泡剤として働く界面活性剤の混合物と,泡を望ましい機械的および化学的性質にするための溶剤およびその他の添加剤を含む。濃縮物は現場で水と混ぜ合わされ,機械的な方法で発泡される。これより生じた泡は火,典型的には,燃焼する液体の表面に放射される。通常,濃縮物は約1~6%の濃度で使用される。」 (イ)「[0026] AFFFおよびAR-AFFF濃縮物の調製に使用される代表的な成分を,代表的な%濃度(w/w)とともに以下の表に示す。 成分 重量% 高分子量フッ素化ポリマー(HMW-FP) 0.2-15 両性炭化水素界面活性剤 0-10 陰イオン性炭化水素界面活性剤 0-10 非イオン性炭化水素界面活性剤 0-10 フッ素系界面活性剤 0-10 グリコールエーテルを含む泡助剤 0-15 金属イオン封鎖剤,緩衝剤,腐食包装 0-5 高分子膜形成剤 0-5 防腐剤,抗菌剤 0-0.05 電解質 0-5 高分子泡安定剤および増粘剤 0-10 水 残り100%まで」 (ウ)「[0054] 濃縮物配合例は下記に示されている。これらの配合例は,TMGを含む泡濃縮剤における成分の範囲や,成分の量や比率に制約を与えるものではない。配合例で特定された成分は,配合例で特定された成分は,それらが混合物である可能性も含まれていることを示している。したがって,たとえば下記の配合でアニオン界面活性剤が指定されている場合,それは1種類以上のアニオン界面活性剤を指す。界面活性剤は特定されていなければパーフルオロアルキル基を含むものや非フッ素系のものも含まれる。 AFFF配合: [0055] 陰イオン界面活性剤 3% 非イオン界面活性剤 5% 双性イオン界面活性剤 2% 溶剤 15% トリメチルグリシン 25% 防錆剤 0.1% 殺菌剤 0.1% 水 残り100%まで AFFF配合: [0056] 陰イオン界面活性剤 3% 非イオン界面活性剤 5% 双性イオン界面活性剤 2% 溶剤 15% トリメチルグリシン 25% バイオポリマー/ポリマー 1% 防錆剤 0.1% 殺菌剤 0.1% 水 残り100%まで」 オ 甲5に記載された事項 (ア)「[0005] 本出願は、水性希釈剤で希釈して泡前駆体組成物を作ることができ、空気を含ませて消火泡を形成することができる水性濃縮物に向けられたものである。本出願の水性消化剤濃縮物は、脂肪族アルコールベースの成分、および陰イオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、任意で非イオン界面活性剤のうちの1つ以上を含む界面活性剤成分を含む。水性消火剤濃縮物は、有機溶媒、例えば、アルキレングリコール、グリセロール、水溶性ポリエチレングリコールおよび/またはグリコールエーテルなどの水混和性有機溶媒を含むことがある。濃縮物には、天然ガムなどの増粘多糖類も含むことがある。組成物は、フッ素化化合物を実質的に含まないことがある。例えば組成物は0.01wt%を超えるフッ素化界面活性剤/フッ素化化合物を含まず、多くの場合、フッ素化界面活性剤または他のフッ素化化合物を完全に含まない。いくつかの実施形態では、濃縮物および/または組成物は非イオン界面活性剤を含まない。」 (イ)「[0020] 水性消火泡濃縮物は、任意で非イオン界面活性剤を含むことがある。いくつかの実施形態では、濃縮物および/または組成物は非イオン界面活性剤を含まない。非イオン界面活性剤が存在する場合、アルキルポリグリコシド界面活性剤を含むことがある。アルキルポリグリコシドの好適な例としては、約1.0-2.0、または約1.0-1.5の平均重合度を有するC8-16-アルキルポリグリコシドが挙げられる。アルキルポリグリコシド界面活性剤は、好適には、C8-12-アルキルポリグリコシドなどのC8-12-アルキルポリグルコシドが含まれることがある。アルキルポリグリコシドの好適な例としては、例えば約1.4-1.7の平均重合度を有するC9-11-アルキルポリグルコシドなどのC9-11-アルキルポリグルコシドが挙げられる。例示的なC9-11-アルキルポリグルコシドには、ノニル、デシルおよび/またはウンデシルポリグルコシドが含まれる。アルキルポリグリコシドの他の例示的な例としては、約1.0-1.5の平均重合度を有することがあるC8-10-アルキルポリグルコシドが含まれる。非イオン界面活性剤を含む実施形態では、水性消火泡組成物は、好適に約2~20wt%の非イオン界面活性剤を含むことがある。水性消火泡組成物は、C8-12-アルキルポリグリコシドなどの非イオン界面活性剤を約3~15wt%、場合によっては約5~12wt%含むことがある。いくつかの実施形態において、組成物は、約7~10wt%の非イオン界面活性剤を含むことがある。」 (ウ)「[0037] 以下の表AからKは、本発明の消火用泡濃縮物のさまざまな好適な配合を例示したものである。・・・ 表E 例示的な濃縮物の配合 成分 量(wt%) 防腐剤 0-1.0 防錆剤 0-0.2 アルキルポリグリコシド非イオン性界面活性剤 0-20 双性イオン界面活性剤 1-10 炭化水素陰イオン性界面活性剤 1-20 脂肪族アルコールベース成分 0.2-5 水混和性有機溶剤 1-30 多糖類ガム 0.1-5 水 50-85」 カ 甲6に記載された事項 (ア)「【0001】 本発明は、消火液剤及びそれを充填した簡易消火用具に係り、より詳しくは、普通火災(一般火災)及び油火災に使用可能な消火液剤及びそれを充填した簡易消火用具に関する。」 (イ)「【0032】 本発明の消火液剤に使用する界面活性剤に特に制限はなく、一般に普及している界面活性剤を広く利用できる。 本発明の消火液剤に使用できる界面活性剤として、例えば、水中で解離したとき陰イオンとなる陰イオン系界面活性剤(アニオン性界面活性剤)、水中で解離したとき陽イオンとなる陽イオン系界面活性剤(カチオン性界面活性剤)、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方をもち、溶液のpHに応じて陽・両性・陰イオンとなる両性界面活性剤(双性界面活性剤)及びイオン化する親水性部分を持たない非イオン系界面活性剤(非イオン性界面活性剤)のいずれも好ましく利用できる。これらの界面活性剤は1種または2種以上を組合せて使用することができる。」 (ウ)「【0035】 両性界面活性剤(双性界面活性剤)としては、アルキルジメチルアミンオキシド(RN+(CH3)2O-)、アルキルカルボキシベタイン(RN+(CH3)2CH2COO-)、アルキルアミノ脂肪酸塩(RNHCH2CH2COO-M+)等を例示することができる。」 キ 甲7に記載された事項 (ア)「フッ素フリーフォームは,難燃性の特性を有する界面活性剤を形成することによって作られています。この界面活性剤は水と混合すると,膨張比が5以上となる泡を形成します。この泡は,ガソリンタンク火災の消火に効果的で,特にミスト状にして広範囲に散布すると効果的になります。この泡はガソリンの炎と反応し,消火後にタンク表面の炭化が観察されます。」(1頁3~7行に対応する訳文) (イ)「アルキルポリグリコシドは,1つ以上のアルコールの混合物とグルコースまたはグルコースポリマーを反応させることにより,再生可能な原料から得られます。これらの界面活性剤は通常,グルコース誘導体および脂肪アルコールです。原料は通常,デンプンと脂肪であり,最終生成物は通常,親水性末端を構成する異なる糖と疎水性末端を構成する可変長のアルキル基を有する化合物の複雑な混合物である。グルコースに由来する場合,それらはアルキルポリグリコシドとして知られています。アルキルグリコシドは,酸触媒の存在下,高温でグルコースなどの糖と脂肪族アルコールを結合させることによって生成されます。ラウリルグリコシド(グルコース+ラウリル(C12-04),アルコール),デシルグリコシド(60%C8-00,40%02-04),ココグリコシド(40%C8-C10,60%02-04)。デシルグリコシド含有組成物は泡立ちが早いですが,泡が消えるのも他の組成物に比べて早いです。粘度が低いため,流体の流動性に優れます。デシルグリコシドは,その優れた起泡力のため,最初に石鹸やボディクレンザーに使用されました。発泡性界面活性剤は洗剤であり,HLB(親水性親油性バランス)値の点で乳化性界面活性剤とは異なります。発泡性界面活性剤は,一般に18を超える,さらには20を超えるHLBを持っています。液体バージョンは水で希釈され,活性物質含有量が50%~70%になります。非漂白グレードは指数「DK」で示され,茶色がかった液体ですが,漂白グレードは無色から黄色がかった液体です。脂肪族アルコールエトキシレートとは対照的に,その発泡特性は非常に強いです。さらに,優れた可溶化特性とフィルム形成特性を備えています。アルキルポリグリコシドは発泡剤として消防設備に使用できます。」(46頁9~29行に対応する訳文) ク 甲8に記載された事項 (ア)「特許請求の範囲 1 (1)式RO(R1O)t(Z)x[式中、Zは炭素数5~6を有する還元糖に由来する残基であり、そしてRはアルキル、アルキルフエニル、ヒドロキシアルキルフエニルまたはヒドロキシアルキル疎水基またはそれらの混合物であり(前記アルキル基は炭素数約8~約18);R1は炭素数2~約4を有し;tは0~約30であり;そしてxは約1.5~約10の数である]を有するアルキル多糖界面活性剤; ・・・ からなることを特徴とする起泡性組成物。」(1頁左欄1行~2頁左欄16行) (イ)「技術分野 本発明は制御可能な水性の泡を与える界面活性剤の組み合わせに関する。この種の組成物は、泡が望ましい分野、例えば洗濯、個人的クリーニング製品、食器洗い、消火(fire fighting)、サクセイ法、選鉱、溶液採鉱(solution mining)、洗髪、発泡固体構造物の製造等に使用され得る。」(3頁左欄19~25行) (ウ)「例II 最適のアルキル多糖類、特にアルキルポリグルコシドは約6~約27の親水性親油製バランスHLB*および約1000ppmよりも低く、好ましくは約500ppmよりも低い臨界ミセル濃度(CMC)**を有する。アルキル基およびグルコシド鎖長が変えられた以下の表に示されるように、アルキル基が炭素数約8未満を有する短鎖アルキル多糖類は許容できない程高いCMCを有し、そして約4よりも多い糖単位を有するアルキル多糖類は許容できない程高いHLBを有する。」(9頁左欄11行~右欄10行) ケ 甲9に記載された事項 「【請求項1】 消泡成分(A)と、アニオン界面活性剤(B)、ノニオン界面活性剤(D)、及びカチオン界面活性剤(E)から選ばれる少なくとも1種とを含む泡消火薬剤用消泡剤であって、 前記成分(A)が、無機紛体(A1)、シリコーン成分(A2)及び金属石鹸(A3)から選ばれる少なくとも1種を含み、 前記アニオン界面活性剤(B)が、スルホン酸型アニオン界面活性剤(B1)、硫酸エステル型アニオン界面活性剤(B2)、及びリン酸エステル型アニオン界面活性剤(B3)から選ばれる少なくとも1種を含み、 前記ノニオン界面活性剤(D)が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(D1)、及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(D2)から選ばれる少なくとも1種を含み、 前記カチオン界面活性剤(E)が、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(E1)を含み、 前記消泡剤の不揮発分に対する消泡成分(A)の重量割合が1~70重量%である、泡消火薬剤用消泡剤。」 (2)甲1に記載された発明 甲1の上記(1)ア(ア)の【請求項1】には、「泡の容積を増やし且つ泡の保持力を上げる泡形成組成物および/または泡状物質形成組成物において、前記泡形成組成物および泡状物質形成組成物の10%水溶液のpHが約4~約12であり、前記組成物に、 a)有効量の双性イオンポリマー性泡安定剤、 b)有効量の洗浄力のある界面活性剤、および c)残部のキャリアーとその他の付随成分、 が含まれている前記組成物。」が記載され、この「組成物」は、同(ア)の【請求項10】に「前記身体ケア組成物、洗濯用洗浄剤組成物、硬質表面浄化組成物、農芸化学用発泡組成物、油田用発泡組成物、消火用発泡組成物およびそれらを混合したもの」と記載されるように広い用途に用いられるものであるところ、同(オ)には、上記【請求項1】に記載される組成物の具体的な用途である「織物浄化液体組成物」であって、以下の【表14】で表される組成物が記載されている。 【表14】 [図:0001423482000010.jpg] ここで、「織物浄化液体組成物」に関し、同(オ)の【0379】に「この発明の織物浄化液体組成物には、有効量の酵素が、組成物の活性プロテアーゼ酵素の重量で、好適には約0.0001~約10%、より好適には約0.001~約1%、最も好適には約0.001~約0.1%含まれている。(たとえば、米国特許第5,679,630号を参照のこと)。」と記載され、組成物中のプロテアーゼ等の酵素の含有量は、重量に基づくものであること、また、【表14】中に「少量成分と不活性物質を100%になるまで」との記載があることから、【表14】中の各成分の存在量を示す数値は、「重量%」で表されるものであるといえる。 以上を踏まえると、甲1には、「織物浄化液体組成物」に関する以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「AE2.5S 15.00重量%、AS 5.50重量%、N-ココイル N-メチルグルカミン 5.00重量%、非イオン性界面活性剤 4.50重量%、クエン酸 3.00重量%、脂肪酸 5.00重量%、塩基 0.97重量%、モノエタノールアミン 5.10重量%、1,2-プロパンジオール 7.44重量%、EtOH 5.50重量%、HXS 1.90重量%、ほう酸 3.50重量%、エトキシル化テトラエチレンペンタミン 3.00重量%、泡増強ポリマー 0.30重量%、プロテアーゼ 0.069重量%、アミラーゼ 0.06重量%、セルラーゼ 0.08重量%、リパーゼ 0.18重量%、光沢剤 0.10重量%、少量成分と不活性物質を100%になるまで、からなる、織物浄化液体組成物。」 (3)本件発明1について ア 対比 (ア)甲2の上記(1)イ(ア)の記載によれば、甲2には、「重質液体洗濯洗剤組成物」についての記載がなされ、同(イ)には、その具体例である実施例についての記載がなされ、【表1】に記載される実施例の成分の中に、陰イオン性界面活性剤(陰イオン)として、「C25AS」が含まれている。ここで、同(イ)の【0179】の「以下の表において、「Cn」は界面活性剤分子の平均鎖長であり」との記載によれば、「C25AS」の「C25」は、「平均鎖長が25」であることを意味しているから、「AS」は、陰イオン性界面活性剤(陰イオン)であることが理解できる。また、【表4】に記載される実施例の成分の中に、同じく陰イオン性界面活性剤として、「C25AE2.5S」が含まれているところ、同様に「C25」は、「平均鎖長が25」であることを意味しているから、「AE2.5S」も同様に、陰イオン性界面活性剤(陰イオン)であることが理解できる。 そして、「陰イオン性界面活性剤」は、「アニオン系界面活性剤」であるから、甲1発明の「AE2.5S」及び「AS」は、「アニオン系界面活性剤」であり、合計量は、20.50重量%であるから、甲1発明の「AE2.5S 15.00重量%、AS 5.00重量%」は、本件発明1の「14質量%以上のアニオン系界面活性剤」に相当する。 (イ)同じく甲2の上記(1)イ(イ)の【表4】に記載される実施例の成分の中に、非イオン性界面活性剤として、「CMG」が含まれている。ここで、同(イ)の【0178】の「CMG=N-ココイルN-メチルグルカミン」との記載によれば、「N-ココイルN-メチルグルカミン」は、「非イオン性界面活性剤」であることが理解できる。 そうすると、甲1発明の「N-ココイル N-メチルグルカミン 5.00重量%、非イオン性界面活性剤 4.50重量%」において、「N-ココイル N-メチルグルカミン」は、非イオン性界面活性剤であり、両者の合計量は、9.50重量%であり、「非イオン性界面活性剤」は、「ノニオン界面活性剤」であるから、甲1発明の前述の構成は、本件発明1の「1.0質量%以上の」「ノニオン界面活性剤」に相当する。 (ウ)甲1発明の「織物浄化液体組成物」は、本件発明1の「泡消火剤原液」と、「液体組成物」である点で共通する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲1発明は、「14質量%以上のアニオン系界面活性剤、1.0質量%以上のノニオン界面活性剤を含有する、液体組成物。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> 「液体組成物」について、本件発明1は、「0.2質量%以上10質量%以下の両性界面活性剤」を含有しているのに対し、甲1発明は、当該「両性界面活性剤」を含有しているのか明らかでない点。 <相違点2> ノニオン界面活性剤ついて、本件発明1は、「HLBが15以上」のものであって、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの少なくともいずれか一方を含む」ものであるのに対し、甲1発明では、これらの点が明らかでない点。 <相違点3> 「液体組成物」について、本件発明1は、「溶剤」を含有しているのに対し、甲1発明では、「溶剤」を含有しているのか明らかでない点。 <相違点4> 「液体組成物」について、本件発明1は、「フッ素系界面活性剤を含有」していないのに対し、甲1発明では、「フッ素系界面活性剤」の有無が明らかでない点。 <相違点5> 「液体組成物」について、本件発明1は、「泡消火剤原液」であるのに対し、甲1発明は、「織物浄化液体組成物」である点。 イ 相違点に対する判断 事案に鑑み、上記相違点5について検討する。 (ア)まず、本件発明1の「泡消火剤原液」は、本件明細書の【0023】の記載によれば、「泡消火剤」を形成するものであるところ、「泡消火剤」と「織物浄化液体組成物」では、用途が全く異なるし、「泡消火剤」は、泡を形成することにより、燃焼している面を覆い、泡による窒息効果と泡を構成している水による冷却効果によって消火を行うものであるのに対し、「織物浄化液体組成物」は、織物の汚れを除去するものであり、それら組成物が果たすべき作用も全く異なるものである。 そうすると、「織物浄化液体組成物」に適したものが、「泡消火剤」、ひいていは「泡消火剤原液」に適するということができない。 (イ)ここで、甲1の上記(1)ア(ア)には、【請求項1】として、「泡の容積を増やし且つ泡の保持力を上げる泡形成組成物および/または泡状物質形成組成物において、前記泡形成組成物および泡状物質形成組成物の10%水溶液のpHが約4~約12であり、前記組成物に、 a)有効量の双性イオンポリマー性泡安定剤、 b)有効量の洗浄力のある界面活性剤、および c)残部のキャリアーとその他の付随成分、 が含まれている前記組成物。」が記載され、同(ア)の【請求項10】には、「請求項1に記載の組成物において、前記身体ケア組成物、洗濯用洗浄剤組成物、硬質表面浄化組成物、農芸化学用発泡組成物、油田用発泡組成物、消火用発泡組成物およびそれらを混合したものからなる群から選択する組成物である前記組成物。」と記載されているように、【請求項1】に記載される組成物が、「洗濯用洗浄剤組成物」と共に「消火用発泡組成物」としても使用されることが記載されている。 しかしながら、このことは、【請求項1】に包括的に記載される「泡形成組成物および/または泡状物質形成組成物組成物」が、「泡の容積を増やし且つ泡の保持力を上げる」という性質によって、洗濯用洗浄剤組成物や消火用発泡組成物として用いることができることを意味するにとどまり、組成物として【請求項1】に包含される「洗濯用洗浄剤組成物」を、そのまま「消火用発泡組成物」として用いることができることまでを意味するものではない。 そして、【請求項1】に記載される「泡形成組成物および/または泡状物質形成組成物組成物」が包括的に記載されるものであったとしても、「洗濯用洗浄剤組成物」として用いるには、【請求項1】に記載される構成を「洗濯用洗浄剤組成物」に適するように最適化したり、「洗濯用洗浄剤組成物」に適した他の成分を加えたりすることになる。 実際、甲1発明における「洗濯用洗浄剤組成物」は、甲1の上記(1)ア(ウ)の【0140】の「洗濯洗剤用組成物および使用方法 汚れ遊離剤として使われたこの発明の双性イオンポリマー性泡安定剤の他に、この発明の洗濯用洗剤には付随成分が含まれている。洗濯用洗剤の種々の付随成分は、全体がこの明細書の引用文献の一つであるPCTによる国際的刊行物であるWO 98/39401により開示されている。」との記載、同【0141】の「一般に、洗濯用洗剤組成物は固体粒子,液体またはゲルであり、大量の洗剤とこの発明の少量の汚れ放出ポリマーが含まれている。また、一般に、この発明の織物洗浄方法には、大量の水と少量の洗剤および汚れ放出ポリマーを含む洗浄媒体における織物製品の洗浄が含まれている。少量の付随成分も存在する。」との記載、同【0152】の「III.洗剤 この洗濯用洗剤に関する発明の組成物と方法はすべて、洗剤および随意にその他の機能性成分を用いている。使用できる洗剤およびその他の機能性成分の例は、1996年10月4日に提出された米国特許出願第08/726,437号で開示され、その内容はこの明細書の引用文献の一つである。洗剤は多種多様な界面活性剤から選択することができる。」との記載、及び【0153】の「A.非イオン性界面活性剤 5-17のHLBを有するものを含む非イオン性界面活性剤は、洗剤の分野ではよく知られている。この種の界面活性剤の例は、1973年2月20日に発行されたBoothの米国特許第3,717,630号および1967年7月25日に発行されたKesslerらの米国特許第3,332,880号にリストされ、これらの特許の各々はこの明細書の引用文献の一つである。この発明で使用できる適切な非イオン性界面活性剤の無数の例には、次のようなものがある」との記載等によれば、「洗濯用洗浄剤組成物」としてその成分が最適化されているといえる。 また、同(オ)の【0379】の「織物浄化液体組成物 この発明の織物浄化液体組成物には、有効量の酵素が、組成物の活性プロテアーゼ酵素の重量で、好適には約0.0001~約10%、より好適には約0.001~約1%、最も好適には約0.001~約0.1%含まれている。(たとえば、米国特許第5,679,630号を参照のこと)。」との記載によれば、酵素である「プロテアーゼ」(アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼも)や、「光沢剤」等、「消火用発泡組成物」には添加する必要のない、「織物浄化液体組成物」に特有といえる成分が含まれている。 そうすると、甲1に、甲1の【請求項1】に記載される「泡形成組成物および/または泡状物質形成組成物」の用途に、「洗濯用洗浄剤組成物」と共に、「消火用発泡組成物」が記載されているとしても、「洗濯用洗浄剤組成物」として最適化されている甲1発明の「織物浄化液体組成物」を、本件発明1のような「泡消火剤原液」として用いる動機付けが、甲1にあるとはいえない。 さらに、甲2~甲9は、上記(1)イ~ケに摘示したように、甲1発明の「織物浄化液体組成物」を、本件発明1のような、「泡消火剤原液」として用いることが技術常識であることを示すものではない。 以上によれば、甲2~甲9を考慮したとしても、上記相違点5を、当業者が、容易に想到し得るとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、上記相違点5に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び技術常識(甲2~甲9)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、これを、さらに限定するものであるところ、本件発明1が、甲1発明及び技術常識(甲2~甲9)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~4も同様に、甲1発明及び技術常識(甲2~甲9)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 上記第5で検討したとおり、本件特許1~4は、特許法第36条第4項第1号並びに同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとも、本件特許1~4は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由1、2及び上記申立理由1~4では、本件特許1~4を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~4を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700276

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