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特許異議申立

2023-701320

床タイル

審判番号
2023-701320
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-141343
登録番号
7292017
請求日
2023年12月14日
審決日
2024年07月11日
公報発行日
2024年08月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】田島ルーフィング株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】廣瀬 繁樹
  • 【権利者代理人】南山 知広
  • 【権利者代理人】森本 有一
  • 【権利者代理人】鶴田 準一
  • 【異議申立人】中谷 浩美
審判長/審判官
  • 審判長 古屋野 浩志
  • 審判官 太田 恒明
  • 審判官 ▲高▼橋 祐介
分類
P1651.121-Y (E04F) / P1651.537-Y (E04F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7292017号発明「床タイル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7292017号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7292017号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年7月27日に出願された特願2018-141343号であって、令和5年6月8日にその特許権の設定登録がされ、同月16日に特許掲載公報が発行された。 その特許について、特許異議申立人中谷 浩美(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てが同年12月14日に特許庁で受理され、当審は令和6年3月4日付けで取消理由を通知し、特許権者はその指定期間内である同年4月5日に意見書の提出を行った。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、各々を「本件特許発明1」等という。)は、特許請求の範囲の請求項1~3に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、本件特許発明1等における符号A等は分説のため当審で付与した。分説された本件特許発明1等の発明特定事項を、符号に基づき以下「発明特定事項A」等という。 「 【請求項1】 A 基盤層と、 B 前記基盤層に積層され、前記基盤層と色調が異なる表面層と、を備え、 C 少なくとも一辺の端部周辺において前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されているとともに、 D 前記一辺において前記境界面を含むように面取り加工されており、 E 敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することができる、 F 床タイル。 【請求項2】 G 前記エンボスはランダム形状である、請求項1に記載の床タイル。 【請求項3】 H 前記基盤層は、ガラス不織布層を含む複数の層からなる、請求項1又は2に記載の床タイル。」 第3 異議申立理由、及び取消理由の概要 1 異議申立理由の概要 申立人による異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)異議申立理由1 本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3、4号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)異議申立理由2 本件特許発明1~3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、4号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)異議申立理由3 本件特許発明1は、「太さが不揃いな目地を形成する」条件として「少なくとも一辺の端部周辺において前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」と「前記一辺において前記境界面を含むように面取り加工されており」と記載されているため、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)異議申立理由4 本件特許発明1は、「太さが不揃いな目地を形成する」と記載されているが、どのような太さの目地であれば、太さが不揃い、或いは、太さが揃った目地となるのか不明であり、また、本件特許発明2は、「前記エンボスはランダム形状である」と記載されているが、ランダム形状とはどのような形状であるのかが不明であるから、本件特許発明1~2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 取消理由の概要 当審が令和6年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1 本件特許発明1は、「少なくとも一辺の端部周辺において前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」と記載されているが、「エンボス」は、動作を意味するのか、エンボス加工が行われた部分を意味するのか、その他のことを意味するのかが、明らかでなく、また、本件特許発明2は、「前記エンボスはランダム形状である」と記載されているが、ランダム形状とはどのような形状を意味するのか明らかでないから、本件特許発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 証拠 1 証拠一覧 申立人により、特許異議申立書とともに提出された証拠は、次のとおりである。 甲第1号証:特開昭59-211687号公報 甲第2号証:特開平6-2416号公報 甲第3号証:特開2017-227092号公報 甲第4号証:特許第4672503号公報 甲第5号証:新村出編、「広辞苑」第四版、株式会社岩波書店、1996年12月10日、2675頁・2491頁・1018~1019頁 2 各証拠について (1)甲1 申立人が甲第1号証として提出した特開昭59-211687号公報(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 記載事項 特許請求の範囲 「(1) 印刷模様層32をはさんで透明なポリ塩化ビニルの表面層33と不透明なポリ塩化ビニルの裏面層31とが構成し凹凸模様を有する化粧シート3の、表面層33の上をさらに紫外線硬化樹脂の層4で被覆し、裏面層31の下にプラスチック基材2をインジェクションモールディングにより与えてなるプラスチックタイル1。」 第2頁左上欄第17行~右上欄第4行 「図面を参照して本発明を説明すれば、プラスチックタイル1は、印刷模様層32をはさんで透明なポリ塩化ビニルの表面層33と不透明なポリ塩化ビニルの裏面層31とが構成し凹凸模様を有する化粧シート3の、表面層33の上をさらに紫外線硬化樹脂の層4で被覆し、裏面層31の下にプラスチッキ基材2(当審注:「プラスチッキ基材2」は「プラスチック基材2」の誤記と認める。)をインジェクションモールディングにより与えてなるものである。」 第2頁左下欄第17行~右下欄第8行 「凹凸模様の形成には、上記のようにして紫外線硬化樹脂の層を与えた化粧シートを、真空および(または)圧力成形することが推奨される。 プラスチック基材は、ポリ塩化ビニルのほか、適宜のプラスチック材料たとえばナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニルあるいはポリスチレンに、充填剤として、カーボンブラック、マイカ、紙粉、木粉、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、シラスなどを混練したものを使用する。 物性およびコストの点から、ポリ塩化ビニルに炭酸カルシウムを加えたものが最適である。」 第2頁右下欄第12行~第17行 「基材プラスチックを与えるためのインジェクションモールディングは、前記のようにして用意した、表面に紫外線硬化樹脂層を有する凹凸化粧シートを金型の一方の面に密着させておき、そこへ融着した基材プラスチックをインジェクションして一体化することによって行う。」 第3頁左上欄第7行~第14行 「このようにして、絵柄と凹凸とが完全に調和したプラスチックタイルが得られる。 このタイルは、化粧シートおよび応答模様の組み合わせにより、高度の意匠感を与える一方で、表面には紫外線硬化樹脂の層が存在して保護層を形成しているので、耐摩耗性、耐溶剤性が高い。 従って本発明のプラスチックタイルは、床材としてとくに適している」 図面 [図:0001413348000001.jpg] イ 認定事項 上記アにおける図面から、甲1には、 化粧シート3と、化粧シート3に面するプラスチック基材2の境界面とに凹凸模様が施されていること(以下「認定事項1」という。) が記載されているといえる。 ウ 甲1発明 以上のことから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、発明特定事項A等に概ね対応させたa等を含む符号を付与した。 「1a,b 印刷模様層32をはさんで透明なポリ塩化ビニルの表面層33と不透明なポリ塩化ビニルの裏面層31とが構成し凹凸模様を有する化粧シート3の、表面層33の上をさらに紫外線硬化樹脂の層4で被覆し、裏面層31の下にプラスチック基材2をインジェクションモールディングにより与えてなり、 1c 化粧シート3と、化粧シート3に面するプラスチック基材2の境界面とに凹凸模様が施されている(認定事項1)、 1f プラスチックタイル1。」 (2)甲2 申立人が甲第2号証として提出した特開平6-2416号公報(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 記載事項 「【請求項1】 上側表面に露出した第一の着色層と、この第一の着色層の裏面に積層された第二の着色層とを備えたタイル基材を作製し、この際第一の着色層と第二の着色層との色を異ならせ、 次いで少なくとも前記第一の着色層の周縁部を除去してこの除去部分に前記第二の着色層の周縁部を露出させ、前記除去部分において目地模様を形成できるように構成した、タイルの製造方法。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、各種オフィス、ロビー、ホール、屋内体育施設、クラブハウス、屋内遊戯場等の床面に敷設するためのタイルを製造する方法に関するものである。」 「【0006】本発明の課題は、施工が容易で、目地模様を鮮明かつ確実に現出させることができ、目地模様が摩滅しないようなタイルを製造することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、上側表面に露出した第一の着色層と、この第一の着色層の裏面に積層された第二の着色層とを備えたタイル基材を作製し、この際第一の着色層と第二の着色層との色を異ならせ、次いで少なくとも前記第一の着色層の周縁部を除去してこの除去部分に前記第二の着色層の周縁部を露出させ、前記除去部分において目地模様を形成できるように構成した、タイルの製造方法に係るものである。 【0008】 【実施例】以下、本発明の実施例に係るタイルの製造方法を、順を追って説明する。まず、図1,図2に示すようなタイル基材2を作製する。このタイル基材2においては、第一の着色層3がタイル基材2の上側表面に露出し、第一の着色層3の裏面に第二の着色層4が積層されている。本実施例では更に、第二の着色層4の裏面にベース層1が積層されている。ベース層1は省略することもできる。また、本実施例では、タイル基材2の平面形状を正方形としたが、他の四角形、五角形、六角形、三角形としてもよい。タイル基材2の厚さは、その用途に応じて選択する。第一の着色層3と第二の着色層4とは、互いに色を異ならせる必要がある。 【0009】本発明で使用できるタイル材料としては、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン-ブタジエンブロックポリマー系樹脂、スチレン-イソブチレン系樹脂、天然ゴム、合成ゴムなどがある。これらの熱可塑性樹脂又はゴムは、常法に従ってコンパウンドとして使用する。」 「【0011】次いで、少なくとも第一の着色層3の周縁部を除去し、この除去部分に第二の着色層4の周縁部を露出させる。本実施例においては、図2に一点鎖線Aで示すように、斜め方向に真っすぐに除去する。この結果、第一の着色層3における除去部分の断面は台形となり、第二の着色層4における除去部分の断面は直角三角形となる。この後、図3に示すようなタイル12が得られる。タイル12においては、第一の着色層3の周縁部に斜面3bが形成され、この斜面3bを取り囲むように、第二の着色層4の周縁部に斜面4aが形成されている。 【0012】施工現場においては、このタイル12を図4に示すように、互いに接触させながら隙間なく敷設する。この結果、第一の着色層3の表面3aが、互いに所定間隔を置いて規則的に配列され、表面3aの周囲を斜面3bが取り囲み、斜面3bの周囲を斜面4aが取り囲む。第一の着色層3と第二の着色層4とは互いに色が異なっており、斜面4aが基盤目形状の目地模様を構成する。」 「【0014】また、タイル基材2の周縁部を除去して第二の着色層4を露出させ、目地模様を形成しているので、印刷によって目地模様を形成する場合と異なり、目地模様が摩滅することはない。しかも、目地模様と表面3aとの境界線は明確かつ確実に現出する。 【0015】また、図4に示すようにタイル12を敷設した状態で、隣合うタイル12の間に除去部分が介在し、隣合うタイル12の表面3a同士が直接に連続しない。このため、タイル12の厚さに若干バラツキがあったり、コンクリート躯体面に不陸があったりすることで、表面3aの高さにズレが生じても、このズレは視覚上ほとんど目立たない。」 イ 甲2発明 以上のことから、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、発明特定事項A等に概ね対応させたa等を含む符号を付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。 「2a,b 第一の着色層3がタイル基材2の上側表面に露出し、第一の着色層3の裏面に第二の着色層4が積層されており、第一の着色層3と第二の着色層4とは、互いに色を異ならせ(【0008】)、 2d 少なくとも第一の着色層3の周縁部を除去し、この除去部分に第二の着色層4の周縁部を露出させ、この結果、第一の着色層3における除去部分の断面は台形となり、第二の着色層4における除去部分の断面は直角三角形となり、第一の着色層3の周縁部に斜面3bが形成され、この斜面3bを取り囲むように、第二の着色層4の周縁部に斜面4aが形成されており(【0011】)、 2e 施工現場においては互いに接触させながら隙間なく敷設し、斜面4aが基盤目形状の目地模様を構成する(【0012】)、 2f タイル12(【0008】)。」 (3)甲3 申立人が甲第3号証として提出した特開2017-227092号公報(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 記載事項 「【0001】 本発明は、床や壁等の敷設対象に敷設されるタイル、タイルセット、及び該タイルの製造方法に関する。」 「【0024】 図3に示すように、目地部3は、表面2の端縁から延び、表面2の端縁に沿って設けられている。目地部3は、表面2が広がる面方向に対して裏面5側に向かって傾斜した傾斜面31を構成している。複数のタイル1が並べて敷設されると、目地部3が隣り合うタイル1とタイル1との間に位置することで、隣り合うタイル1の意匠同士が目地部3を介して連続し、該意匠同士が直接連続することを避けることができる。即ち、隣り合うタイル1の意匠同士が、目地部3で一度途切れつつ連続する。そのため、タイル1の製造の精度によってタイル1間で意匠が多少ずれていたとしても、タイル1の意匠同士の連続性を曖昧にすることができるので、目地部3は、デザインのずれを緩和することができる。」 「【0029】 表層F1は、所定の厚みを有するシート状の部材である。表層F1は、透明に形成されており、表層F1を通して柄層F2が視認可能となっている。表層F1は、端縁が傾斜面F1Cを構成している。本実施形態の表層F1は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、安定剤、及び滑剤等を混合した材料で形成されている。表層F1は、例えば、0.1mm~0.5mmの厚みで形成されている。また、耐傷付き性や耐久性を向上させるために、表層F1の上に、さらに表面保護層を設けてもよい。表面保護層は、たとえば紫外線硬化樹脂などの電離放射線硬化樹脂で形成することができる。」 「【0031】 下層F3は、2層構造となっている。下層F3は、上側に位置する第1バック層F31と、下側に位置する第2バック層F4とを備える。また、下層F3には、ガラス繊維などの織布、ガラス繊維、スパンボンドなどの不織布を、中間層または最裏面に設けてもよい。第1バック層F31と第2バック層F4との間に、ガラス繊維などの織布、ガラス繊維、スパンボンドなどの不織布を設けてもよい。 【0032】 第1バック層F31は、所定の厚みを有するシート状の部材である。第1バック層F31は、該第1バック層F31の一方の面から下方に延びる第1面F31Cであって、該一方の面から拡径する方向に傾斜した傾斜面を構成する第1面F31Cと、該第1面F31Cから下方に延びる第2面F32Cであって、第1バック層F31の厚み方向に延びる第2面F32Cとを有する。本実施形態の第1バック層F31は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、安定剤、充填剤、着色剤、及びリサイクル材等の各種の材料を混合した材料で形成されている。」 「【0034】 タイル1は、例えば、柄層F2が最も薄く、第1バック層F31が最も厚くなるように形成されている。タイル1は、表層F1の傾斜面F1C、柄層F2の端縁、及び第1バック層F31の第1面F31Cが目地部3の傾斜面31を構成し、第1バック層F31の第2面F32C及び第2バック層F4の側面F4Cが側面部4を構成している。また、第1バック層F31の第1面F31Cと第2面F32Cとの境界が、境界部BRとなっている。目地部3に傾斜面31が形成されている場合、タイル1同士を並べた際に、隣り合うタイル1間に傾斜面31が表れるので、タイル1間の意匠のずれが目立ちにくくなる。後述するグラデーション領域D2の作用に傾斜面31の効果が加わることによって、タイル1間の意匠のずれは、さらに目立ち難くなる。」 「【0050】 図1に示すように、タイル1の表面2には、凹凸CVが形成されている。本実施形態では、表面2の全域に大きさ及び形状が異なる多数の凹凸CVが方向性無く不規則に表れるように、表面2にエンボス加工が施されている。具体的には、表面2には、石目調のエンボス加工が施されている。本実施形態では、エンボスの深度は平均で0.1mm~0.2mmとなっている。このようなエンボス深度とすることによって、タイル1の敷設時に表出する凹凸CVの陰影が、タイル1の意匠性を損なうことなく、意匠全体に一体感を持たせる効果を奏することができる。また、凹凸CVの陰影は、第1斑点DT1と同様のゆらぎの効果をタイル1の意匠にもたらすことができ、本発明のグラデーション領域D2の効果をさらに増して、タイル1間の意匠のずれをさらに目立ち難くすることが出来る。」 (4)甲4 申立人が甲第4号証として提出した特許第4672503号公報(以下「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 記載事項 「【0001】 本発明は耐汚染性及びエンボス加工による凹凸追従性に優れ、厚さによる段差の問題がなく、張替え及び取外し等の施行が容易な、電離放射線硬化性樹脂を表面保護層に有する床材用シートに関する。」 「【0007】 すなわち、本発明は、 (1)基材シート上に表面保護フィルムが積層される床材用シートであって、基材シートが基材上に発泡剤及び無機充填剤を含む熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層と、絵柄層とが順に積層され、表面保護フィルムがオレフィン系熱可塑性樹脂からなるフィルム層上に表面保護層が積層され、該表面保護層側から該発泡樹脂層にかけて凹凸模様が施され、表面保護層が1乃至2官能シリコーン(メタ)アクリレートを含有する電離放射線硬化性樹脂を架橋硬化した層であることを特徴とする床材用シート、 (2)前記フィルム層を構成する熱可塑性樹脂がエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂である上記(1)に記載の床材用シート。 (3)前記発泡樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が塩化ビニル樹脂である上記(1)又は(2)に記載の床材用シート、 (4)前記シリコーン(メタ)アクリレートの含有量が電離放射線硬化性樹脂100質量部に対し、1質量部以上であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の床材用シート、 (5)前記絵柄層とフィルム層との層間に接着剤層が設けられていることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の床材用シート、 (6)前記基材が不織布である上記(1)~(5)のいずれかに記載の床材用シート、及び (7)熱可塑性樹脂からなるフィルム層の一方の面に電離放射線硬化性樹脂からなる表面保護層を設け、他方の面に必要に応じて接着剤層を設けた表面保護フィルムを準備する工程と、基材に発泡剤及び無機充填剤を含む熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂組成物を塗工し、絵柄層を設けた後に加熱発泡炉で該発泡樹脂組成物を発泡させて発泡樹脂層とし、基材シートを得る工程と、表面にエンボス型が形成された加圧ロールによって、該基材シートと該表面保護シートとを貼り合わせると同時に、表面保護層側から該発泡樹脂層にかけて凹凸模様を形成する工程を含むことを特徴とする床材用シートの製造方法、 を提供するものである。」 「【0009】 本発明の床材用シートの典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の床材用シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、本発明の床材用シート1は、基材2上に、発泡剤と無機充填剤を含む熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層3を介して、フィルム層6の下面に絵柄層4及び接着剤層5を設け、上面にプライマー層7及び1乃至2官能シリコーンメタクリレートを含有する電離放射線硬化性樹脂が架橋硬化してなる表面保護層8が順次積層されたものである。 【0010】 [基材2] 以下、本発明の好ましい実施形態の一つを示した図1に基づいて、詳細に説明する。 本発明で用いられる基材2は、例えば裏打紙、難燃紙、合成樹脂シート、織布、不織布、編布等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。また、必要に応じて難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等を適宜添加してもよい。中でも、繊維質基材、例えば、ガラスやパルプ等の混抄紙や、ガラス繊維織布、あるいは不織布等が好ましく用いられる。また、カール防止の観点より、水中伸度1%以下であることが好ましい。なお、水中伸度はJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.27:2000に準拠して測定された値である。 基材2の厚さについては特に制限はないが、坪量は、通常50~300g/m2程度、好ましくは60~160g/m2の範囲である。」 「【0035】 [凹凸模様10] 本発明の床材用シートは、意匠性に優れた床材用シートとするために、エンボス加工による凹凸模様が施されることを特徴とする。意匠性に優れたシャープな凹凸模様を得る観点より、絵柄層4とフィルム層6と表面保護層8とからなる表面保護フィルムの引張伸度(縦方向)は30%以上であることが好ましい。該引張伸度(縦方向)が30%以上であれば、エンボス加工により凹凸模様を形成する場合、表面保護層8に微小の亀裂が発生し、耐汚染性等の表面物性を著しく低下させることはない。 ここで、引張伸度(縦方向)とは、前記表面保護フィルムを縦方向に引張る前の長さと引張った後の長さの割合(%)のことをいう。 本発明の凹凸模様10は、製造過程にある床材用シートがいずれかの手段によってエンボス可能な温度となっているときに、表面保護層8の上面、すなわち最外層側からエンボス版で加熱加圧することにより形成することができる。凹凸模様10の形成には、周知の枚葉、もしくは輪転式のエンボス機が用いられ、凹凸模様10の形状としては、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。 【0036】 [製造方法] 本発明の床材用シートは、例えば以下の製造方法によって製造される。 熱可塑性樹脂からなるフィルム層6の一方の面に1乃至2官能シリコーンメタクリレートを所定量含んだ電離放射線硬化性樹脂を塗工し、他方の面に必要に応じて接着剤及び/又はプライマー層を構成する樹脂を塗工し、さらに所定の電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂を硬化させて表面保護シートを得る。また、基材2上に発泡剤、無機充填剤、その他添加剤を必要に応じて含む熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂組成物をコンマコーター法にてコーティングし、さらに絵柄層4を印刷塗工した後、加熱発泡炉を用いて250℃程度で前記発泡樹脂組成物を発泡させて発泡樹脂層3を形成させて基材シートを得る。次いで、該基材シートを冷却した後、150℃程度まで再加熱してから、前記表面保護シートの最外層側よりエンボス版が形成された冷却ロール(表面保護シート側)と加圧ロール間を通すことで両シートを熱圧着し、かつ凹凸模様10を形成した後、冷却することで、表面保護層8の最外層側から発泡樹脂層3にかけて凹凸模様10を形成した本発明の床材用シートを得ることができる。なお、前記のように、プライマー層7及び接着剤層5は必要に応じて、所望の層間に設けることができる。」 (5)周知技術1 上記(2)アにおける甲2の記載、及び、上記(3)アにおける甲3の記載から、 床タイルの技術分野において、端部周辺の少なくとも一辺に、表面層に面する基盤層の境界面を含むように面取り加工すること(以下「周知技術1」という。) は、本件特許出願前に周知であったと認められる。 (6)周知技術2 上記(1)アにおける甲1の記載、及び、上記(4)アにおける甲4の記載から、 床タイルの技術分野において、意匠性や絵柄との調和を考慮して、表面層と、表面層に面する基盤層の境界面とに凹凸模様を施すこと(以下「周知技術2」という。) は、本件特許出願前に周知であったと認められる。 第5 取消理由について 1 特許権者が提出した意見書における主張について (1)「エンボス」について 特許権者は、取消理由に対する意見書において、 「エンボス」との用語の一般的な意義を確認するため、広辞苑第7版を参照すると、『紙・布・皮革などに浮き出しの模様fをつけること。「-加工」』とされており、「表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」との記載から、「エンボス」が「床タイル」の「表面層」と「表面層に面する基盤層の境界面」とに付加された「凹凸状の構成」であることは、文言から明らかであること、 本件特許明細書では、特に「エンボス加工を施して凹凸のエンボスを形成」との記載のとおり、「エンボス加工」と「エンボス」の両方が用いられ、かつ「加工(手段、方法)」と「エンボス(物、構成)」とで明確に使い分けられていることから、「エンボス」が「エンボス加工」によって形成された「凹凸状の構成(エンボス)」と明確に理解できること を主張した。 (2)「エンボスはランダム形状である」ことについて 特許権者は、取消理由に対する意見書において、 「ランダム」とは『「手当たり次第」「無作為」の意。』(広辞苑第7版)であるから、「ランダム形状」が「形状に規則性がないこと」を意味することは用語の一般的な意義から明らかであること、 本件特許明細書では、例示として「半径0.5mmから3.0mmの半円球状の突起がランダムに配置してあるエンボス板を用いて形成」、「半円球をランダムに崩し配置した(エンボス板を用いて形成)」が記載されていることから、「配置」が「ランダム」であるだけではなく、サイズも形状もランダムなエンボスを配置すること(「半円球を不規則に崩して、不規則に配置すること」)が実施形態として記載されていること を主張した。 2 当審の判断 (1)明確性の判断基準について 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)「エンボス」について 「エンボス」との用語の一般的な意義が「紙・布・皮革などに浮き出しの模様をつけること。「-加工」」であること、及び、本件特許明細書では、「エンボス加工」と「エンボス」の両方が用いられ、かつ「加工(手段、方法)」と「エンボス(物、構成)」とで明確に使い分けられていることから、本件特許発明1における「エンボス」とは、「エンボス加工」によって形成された「凹凸状の構成(エンボス)」を意味すると解することができる。 したがって、本件特許発明1における「少なくとも一辺の端部周辺において前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」との記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (3)「エンボスはランダム形状である」ことについて 「ランダム」とは「「手当たり次第」「無作為」の意。」であるから、「ランダム形状」が「形状に規則性がないこと」を意味すると認められる。。また、本件特許明細書の【0012】には、「床タイル10の表面層12に施されるエンボスの形状はランダムであり、例えば半径0.5mmから3.0mmの半円球状の突起がランダムに配置してあるエンボス板を用いて形成される」と記載されているから、例えば、あるエンボスは半径1.0mmの半円球の突起で形成され、他のエンボスは半径3.0mmの半円球の突起で形成され、さらに別のエンボスは半径0.5mmの半円球の突起で形成された場合のように、エンボスの形状に規則性がないことが、本件特許発明2の「前記エンボスはランダム形状である」ことに対応すると認められる。そうすると、本件特許発明2における「前記エンボスはランダム形状である」とは、エンボスの形状に規則性がないことを意味すると解することができる。 したがって、本件特許発明2における「前記エンボスはランダム形状である」との記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (4)小括 以上のとおり、本件特許発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。 第6 取消理由に採用しなかった異議申立理由について 1 異議申立理由1 (1)本件特許発明1と甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 ア 発明特定事項Aについて 甲1発明の「プラスチック基材2」は、本件特許発明1の「基盤層」に相当する。 よって、甲1発明は、発明特定事項Aに相当する構成を含む。 イ 発明特定事項Bについて 甲1発明の「化粧シート3」は、発明特定事項Bの「表面層」に相当する。 また、上記アより、甲1発明の「プラスチック基材2」は、発明特定事項Bの「前記基盤層」に相当するところ、甲1発明では、「プラスチック基材2」は「化粧シート3」を「構成」する「裏面層31の下」であるから、甲1発明の「化粧シート3」は、「プラスチック基材2」に積層されるといえる。 ここで、甲1発明では、「化粧シート3」は「印刷模様層32をはさんで透明なポリ塩化ビニルの表面層33と不透明なポリ塩化ビニルの裏面層31とが構成」するものであるのに対し、「プラスチック基材2」は「印刷模様層32」等を有するものではないから、「印刷模様層32」等の有無により、「化粧シート3」は「プラスチック基材2」と色調が異なるものであると認められる。 よって、甲1発明は、発明特定事項Bに相当する構成を含む。 ウ 発明特定事項Cについて また、上記アより、甲1発明の「プラスチック基材2」は、発明特定事項Cの「前記基盤層」に相当する。 また、上記イより、甲1発明の「化粧シート3」は、発明特定事項Cの「前記表面層」に相当する。 また、甲1発明では、「化粧シート3と、化粧シート3に面するプラスチック基材2の境界面とに凹凸模様が施されている」ところ、「凹凸模様」は「エンボス」を含むと認められるから(上記第5の2(2)で述べたように、本件特許発明1における「エンボス」とは、「エンボス加工」によって形成された「凹凸状の構成(エンボス)」を意味すると解することができる。)、甲1発明は発明特定事項Cと、「前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とに」凹凸模様「が施されている」点で共通する。 エ 発明特定事項Fについて 甲1発明の「プラスチックタイル1」は、発明特定事項Fの「床タイル」に相当する。 よって、甲1発明は、発明特定事項Fに相当する構成を含む。 オ 一致点・相違点 上記ア~エからみて、本件特許発明1と甲1発明とは、 「A 基盤層と、 B 前記基盤層に積層され、前記基盤層と色調が異なる表面層と、を備え、 C’ 前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とに凹凸模様が施されている、 F 床タイル。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1(発明特定事項C)> 本件特許発明1と甲1発明とは、「前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とに凹凸模様が施されている」点で共通するものの、 本件特許発明1では、「前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とに凹凸模様が施されている」部分が「少なくとも一辺の端部周辺」であるのに対し、甲1発明では、そのような部分であるのか否かが明らかでなく、 また、本件特許発明1では、「凹凸模様」が「エンボス」であるのに対し、甲1発明では、そのように構成されていない点。 <相違点2(発明特定事項D)> 本件特許発明1では、「前記一辺において前記境界面を含むように面取り加工されて」いるのに対し、 甲1発明では、そのように構成されていない点。 <相違点3(発明特定事項E)> 本件特許発明1では、「敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することができる」のに対し、 甲1発明では、そのように構成されていない点。 (2)相違点1~3について ア 当審の判断 本件特許発明1は、「前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」部分が「少なくとも一辺の端部周辺」であり(発明特定事項C)、かつ、「前記一辺において前記境界面を含むように面取り加工されて」いる(発明特定事項D)ことにより、「敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することができる」(発明特定事項E)ものであると認められる。 すなわち、相違点1~3に係る本件特許発明1の発明特定事項C~Eは、技術的に関連するものである。 これに対して、甲1発明は、凹凸模様が施される部分が「少なくとも一辺の端部周辺」であるのか否かが明らかでないし、仮に、凹凸模様が施される部分が「少なくとも一辺の端部周辺」であったならば、甲1の第3頁左上欄第7行~第14行には、「このようにして、絵柄と凹凸とが完全に調和したプラスチックタイルが得られる。」と記載されているから、絵柄と調和した凹凸には、面取り加工する動機付けが認められない。また、周知技術1は、端部周辺において境界面を含むように面取り加工することにとどまり、凹凸模様が施されている端部周辺において境界面を含むように面取り加工することではないから、甲1発明に周知技術1を適用したとしても、凹凸模様が施されている端部周辺において境界面を含むように面取り加工しない。加えて、甲1発明に端部周辺において境界面を含むように面取り加工することを適用したとしても、端部周辺において凹凸模様が施されていなければ、敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成すること(発明特定事項E)は実現できないし、甲1~3のいずれにも発明特定事項Eは記載されていないから、本件特許出願前に、敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することを予測できたともいえない。 したがって、甲1発明に周知技術1を適用したとしても、相違点1~3に係る本件特許発明1の構成とすることはできない。 よって、甲1発明に周知技術1を適用することにより、相違点1~3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 イ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第13頁において、凹凸模様は、プラスチックタイルの絵柄と調和させるために設けられるものであるから、プラスチックタイルの一辺の端部周辺にも設けられることが当然に予定されている旨を主張する。 しかしながら、上記アで述べたように、甲1の第3頁左上欄第7行~第14行には、「このようにして、絵柄と凹凸とが完全に調和したプラスチックタイルが得られる。」と記載されており、絵柄と調和した凹凸には、面取り加工する動機付けが認められない。 また、申立人は、特許異議申立書の第25頁において、甲1発明に甲2~3に例示される周知技術を適用したものでは、化粧シートとプラスチック基材の表面に凹凸模様が形成され、タイルの端縁に、化粧シートとプラスチック基材とにわたる斜面となる面取り加工が施されており、本件特許発明1と同じく発明特定事項Eが得られる旨を主張する。 しかしながら、上記アで述べたように、甲1~3のいずれにも発明特定事項Eは記載されていないから、本件特許出願前に、敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することを予測できたともいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件特許発明1に他の構成を付加した本件特許発明2~3も、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 異議申立理由2 (1)本件特許発明1と甲2発明との対比 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 ア 発明特定事項Aについて 甲2発明の「第二の着色層4」は、本件特許発明1の「基盤層」に相当する。 よって、甲2発明は、発明特定事項Aに相当する構成を含む。 イ 発明特定事項Bについて 甲2発明の「第一の着色層3」は、発明特定事項Bの「表面層」に相当する。 また、上記アより、甲2発明の「第二の着色層4」は、発明特定事項Bの「前記基盤層」に相当するところ、甲2発明では、「第一の着色層3がタイル基材2の上側表面に露出し、第一の着色層3の裏面に第二の着色層4が積層されて」いるから、甲2発明の「第一の着色層3」は「第二の着色層4」に積層されるといえる。 ここで、甲2発明では、「第一の着色層3と第二の着色層4とは、互いに色を異ならせ」ているから、甲2発明の「第一の着色層3」は「第二の着色層4」と色調が異なるものであるといえる。 よって、甲2発明は、発明特定事項Bに相当する構成を含む。 ウ 発明特定事項Dについて また、上記アより、甲2発明の「第二の着色層4」は、発明特定事項Cの「前記基盤層」に相当する。 また、上記イより、甲2発明の「第一の着色層3」は、発明特定事項Cの「前記表面層」に相当する。 また、甲2発明では、「少なくとも第一の着色層3の周縁部を除去し、この除去部分に第二の着色層4の周縁部を露出させ、この結果、第一の着色層3における除去部分の断面は台形となり、第二の着色層4における除去部分の断面は直角三角形となり、第一の着色層3の周縁部に斜面3bが形成され、この斜面3bを取り囲むように、第二の着色層4の周縁部に斜面4aが形成されて」いるから、甲2発明は、発明特定事項Dのように、端部周辺における少なくとも一辺において表面層に面する基盤層の境界面を含むように面取り加工されているといえる。 よって、甲2発明は、発明特定事項Dに相当する構成を含む。 エ 発明特定事項Eについて 甲2発明では、「施工現場においては互いに接触させながら隙間なく敷設し、斜面4aが基盤目形状の目地模様を構成する」から、甲2発明は発明特定事項Eと、「敷き詰めて敷設した際に、」「目地を形成することができる」点で共通する。 オ 発明特定事項Fについて 甲2発明の「タイル12」は、発明特定事項Fの「床タイル」に相当する。 よって、甲2発明は、発明特定事項Fに相当する構成を含む。 カ 一致点・相違点 上記ア~オからみて、本件特許発明1と甲2発明とは、 「A 基盤層と、 B 前記基盤層に積層され、前記基盤層と色調が異なる表面層と、を備え、 D 端部周辺における少なくとも一辺において表面層に面する基盤層の境界面を含むように面取り加工されており、 E’ 敷き詰めて敷設した際に、目地を形成することができる、 F 床タイル。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4(発明特定事項C)> 本件特許発明1では、「少なくとも一辺の端部周辺において前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」のに対し、 甲2発明では、そのように構成されていない点。 <相違点5(発明特定事項E)> 本件特許発明1と甲2発明とは、「敷き詰めて敷設した際に、目地を形成することができる」点で共通するものの、「形成することができる」「目地」が、 本件特許発明1では、「太さが不揃いな目地」であるのに対し、 甲2発明では、そのように構成されていない点。 (2)相違点4~5について ア 当審の判断 上記1(2)アで述べたことと同様に、本件特許発明1の発明特定事項C~Eは、技術的に関連するものであるところ、甲2発明では「形成することができる」「目地」が「太さが不揃いな目地」ではなく、周知技術2では意匠性や絵柄との調和を考慮して凹凸模様を施すことから凹凸模様を面取り加工する動機付けがなく、甲2、甲1、甲4のいずれにも発明特定事項Eは記載されていないから、本件特許出願前に、敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することを予測できたともいえない。 よって、甲2発明に周知技術2を適用することにより、相違点4~5に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 イ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第30~31頁において、甲2発明において、意匠性や絵柄との調和を考慮して周知技術2を用いて第一の着色層と第二の着色層における第一の着色層との境界面に凹凸模様を施すことは当業者が容易になし得た旨を主張する。 しかしながら、意匠性や絵柄との調和を考慮して施される凹凸模様は、少なくとも一辺の端部周辺において施されるか否かが明らかでないし、また、意匠性や絵柄との調和を考慮して施される凹凸模様には、面取り加工される動機付けがない。 また、申立人は、特許異議申立書の第32頁において、甲2発明に周知技術2を適用したものでは、敷設したタイルの間に形成される目地部に、必然的に太さが不揃いの目地が形成されるという効果が得られる旨を主張する。 しかしながら、本件特許発明1では、発明特定事項Eの「敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することができる」ことは、発明特定事項Cの「少なくとも一辺の端部周辺において前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」ことと、発明特定事項Dの「前記一辺において前記境界面を含むように面取り加工されて」いることとの相乗効果であるところ、発明特定事項Cがなければ「前記一辺」が存在せず、発明特定事項Dに至らないので、必然ではない。また、上記アで述べたように、甲2、甲1、甲4には発明特定事項Eは記載されていない。したがって、本件特許出願前に、敷き詰めて敷設した際に、太さが不揃いな目地を形成することを予測できたともいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のとおり、本件特許発明1は、甲2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件特許発明1に他の構成を付加した本件特許発明2~3も、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 異議申立理由3 申立人は、特許異議申立書の第34~36頁において、請求項1には、「少なくとも一辺の端部周辺において前記表面層と、前記表面層に面する前記基盤層の境界面とにエンボスが施されている」ことが特定されているが、これには一定間隔配置のエンボスが含まれるところ、一定間隔配置のエンボスでは目地が波模様となるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超える旨を主張する。 しかしながら、本件特許発明1では、「太さが不揃いな目地を形成することができる」ことが特定されているから、目地が波模様となるものを除外している。 よって、申立人の主張は採用できない。 以上のとおり、本件特許発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではない。 4 異議申立理由4 申立人は、特許異議申立書の第36頁において、請求項1には、「太さが不揃いな目地を形成することができる」と記載されているが、「不揃いな目地」とはどの部分が「不揃い」なのかが明細書中に明記されておらず、「太さ」の対象が不明確であり、どの部分がどのような太さの目地であれば、太さが不揃い、或いは、太さが揃った目地となるのか不明である旨を主張する。 しかしながら、請求項1には「太さが不揃いな目地」と記載されているから、本件特許発明1の「不揃いな目地」とは「目地」の「太さ」が「不揃い」であるものと解される。 また、本件特許明細書の【0015】には、「一定間隔で配置」すると「規則的な波模様」が形成される旨の記載があるので、「ランダム」とした場合には、反対解釈として「規則性のない波模様」が形成されるので、目地としての幅が不規則に変化することになり、そのような態様を「太さの不揃いな目地」としていると認められる。 よって、申立人の主張は採用できない。 以上のとおり、本件特許発明1に係る特許は、申立人の主張によって特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたということはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701320

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