特許異議申立
2020-700538
樹脂供給材料、強化繊維の使用方法、プリフォーム、および繊維強化樹脂の製造方法
- 審判番号
- 2020-700538
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-524624外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6642423
- 請求日
- 2020年07月30日
- 審決日
- 2021年10月25日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】丸林 敬子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.237-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6642423号発明「樹脂供給材料、強化繊維の使用方法、プリフォーム、および繊維強化樹脂の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6642423号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3、5ないし11、22ないし24〕、4について訂正することを認める。
特許第6642423号の請求項1ないし24に係る特許を維持する。
理由
理 由
特許第6642423号の請求項1ないし24に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)2月24日を国際出願日(優先日 平成27年2月27日 日本国 2件)とする出願であって、令和2年1月8日にその特許権の設定登録がされ、同年2月5日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 7月30日 : 特許異議申立人 丸林 敬子(以下、「
特許異議申立人」という。)による特許
異議の申立て
同年10月23日付け : 取消理由通知
同年12月24日 : 特許権者 東レ株式会社(以下、「特許
権者」という。)による訂正請求及び意
見書の提出
令和3年 2月26日付け : 訂正拒絶理由通知
同年 3月30日 : 特許権者による意見書及び手続補正書の
提出
同年 5月 7日付け : 取消理由通知(決定の予告)
同年 6月 3日 : 特許権者による訂正請求及び意見書の
提出
同年 6月25日付け : 特許法第120条の5第5項の通知
なお、特許異議申立人からは、指定期間内に意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和3年6月3日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「強化繊維(織物基材の形態を除く)と樹脂からなり、」と記載されているのを、「強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)と、該ウェブに含浸された樹脂からなり、該樹脂は熱硬化性樹脂であり、」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、3、5ないし11、22ないし24も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「繊維強化樹脂の成形に用いる強化繊維(織物基材の形態を除く)と樹脂からなる樹脂供給材料」と記載されているのを、「繊維強化樹脂の成形に用いる強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)と、該ウェブに含浸された樹脂からなり、該樹脂は熱硬化性樹脂である樹脂供給材料」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、強化繊維について、その形態を「ウェブ」に限定するものであり、樹脂についても、「該ウェブに含浸された」ものに限定すると共に、その種類について「熱硬化性樹脂」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2、3、5ないし11、22ないし24についての訂正について
請求項2、3、5ないし11、22ないし24についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の明細書又は特許請求の範囲面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項4についての訂正について
訂正事項2による請求項4についての訂正は、強化繊維について、その形態を「ウェブ」に限定するものであり、樹脂についても、「該ウェブに含浸された」ものに限定すると共に、その種類について「熱硬化性樹脂」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、請求項1ないし3、5ないし11、22ないし24、及び請求項4についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし3、5ないし11、22ないし24は、一群の請求項に該当するものである。
そして、請求項1ないし3、5ないし11、22ないし24についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3、5ないし11、22ないし24〕、請求項4について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められるため、本件特許の請求項1ないし24に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし24を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料であって、強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)と、該ウェブに含浸された樹脂からなり、該樹脂は熱硬化性樹脂であり、下記式(I)で表される、前記強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%以下である、および/または、下記式(II)で表される、前記強化繊維の繊維体積含有率Vfiが20%以下である樹脂供給材料。
Wfi=Wf1/(Wf1+Wr1)×100(%)・・・(I)
Wf1:樹脂供給材料内繊維重量(g)
Wr1:樹脂供給材料内樹脂重量(g)
Vfi=Vf1/Vp1×100(%)・・・(II)
Vf1:樹脂供給材料内繊維体積(mm3)
Vp1:樹脂供給材料の体積(mm3)
【請求項2】
下記式(III)で表される、前記樹脂の重量の成形前と成形後の変化率Pが0.03~0.99の範囲内になるものである、請求項1に記載の樹脂供給材料。
P=Wr2/Wr1・・・(III)
Wr1:成形前の樹脂供給材料内樹脂重量(g)
Wr2:成形後の樹脂供給材料内樹脂重量(g)
【請求項3】
下記式(IV)で表される、前記強化繊維の体積含有率の成形前と成形後の変化率Qが1.1~30の範囲内になるものである、請求項1または2に記載の樹脂供給材料。
Q=Vft/Vfi・・・(IV)
Vfi:成形前の繊維体積含有率
Vft:成形後の繊維体積含有率
【請求項4】
繊維強化樹脂の成形に用いる繊維強化樹脂の成形に用いる強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)と、該ウェブに含浸された樹脂からなり、該樹脂は熱硬化性樹脂である樹脂供給材料に用いるための強化繊維の使用方法であって、下記式(V)で表される、前記強化繊維の成形前と成形後の厚み変化率Rが1.1~10の範囲内になるウェブとして使用する、強化繊維の使用方法。
R=t0/t1・・・(V)
t0:ウェブの初期厚み(mm)
t1:ウェブに0.1MPaで加圧した状態の厚み(mm)
【請求項5】
前記強化繊維が、下記式(V)で表される、前記強化繊維の成形前と成形後の厚み変化率Rが1.1~10の範囲内になるウェブである、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂供給材料。
R=t0/t1・・・(V)
t0:ウェブの初期厚み(mm)
t1:ウェブに0.1MPaで加圧した状態の厚み(mm)
【請求項6】
前記強化繊維が、空隙率90%における圧縮応力(スプリングバック力)が5kPa以上のウェブである、請求項1~3、5のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項7】
前記強化繊維が、基材形態である、請求項1~3、5、6のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項8】
前記強化繊維のX-Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値が5~85度である、請求項1~3、5~7のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項9】
前記強化繊維のX-Y面の繊維二次元配向角の平均値が5度以上である、請求項1~3、5~8のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項10】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、および金属繊維から選択される少なくとも1種である、請求項1~3、5~9のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項11】
前記強化繊維の平均繊維長が0.1~100mmである、請求項1~3、5~10のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項12】
繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料であって、熱可塑性樹脂からなる閉空間を形成する被膜と、該空間内に存在する熱硬化性樹脂から構成されており、前記被膜の引張試験(JISK7127(1999))で測定される降伏点における引張荷重Fを試験片の幅Wで除した値Xが、25℃において1N/mm以上であり、かつ以下に示す温度Tにおいて1N/mm未満である、樹脂供給材料。
温度T:熱硬化性樹脂を30℃から1.5℃/分の昇温速度で加熱したときに、熱硬化性樹脂の粘度が極小となる温度
【請求項13】
前記被膜が閉空間を形成してなる、請求項12に記載の樹脂供給材料。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂が前記閉空間の90%以上を占める、請求項13に記載の樹脂供給材料。
【請求項15】
前記被膜がシート状である、請求項12~14のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項16】
前記被膜の厚みが1μm以上300μm以下である、請求項12~15のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂の融点が100℃以上200℃以下である、請求項12~16のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項18】
前記熱可塑性樹脂の融点より20℃低い温度における前記熱硬化性樹脂の粘度が100Pa・s以下である、請求項12~17のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂の主成分がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルから選択される少なくとも1種である、請求項12~18のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項20】
前記熱可塑性樹脂が、フィラー、可塑剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項12~19のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項21】
前記熱硬化性樹脂の40℃における粘度が0.01Pa・s以上4000Pa・s以下である、請求項12~20のいずれかに記載の樹脂供給材料。
【請求項22】
請求項1~3、5~21のいずれかに記載の樹脂供給材料と基材とを積層し、一体化させてなるプリフォーム。
【請求項23】
前記基材が、強化繊維からなる織物基材、一方向基材、およびマット基材から選択される少なくとも1種の基材である、請求項22に記載のプリフォーム。
【請求項24】
請求項22または23に記載のプリフォームを加熱、加圧することにより、前記樹脂供給材料から前記基材に前記樹脂または前記熱硬化性樹脂を供給し、成形する繊維強化樹脂の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議申立書に記載した申立理由の概要
令和2年7月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許発明1、2、3、7、10、11、22ないし24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許発明1、2、3、6、7、10、11、22ないし24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第2号証を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許発明1ないし5、7、10、11、22及び24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許発明1ないし7、10、11、22及び24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(甲第3号証を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許発明1、2、7、10、11、22ないし24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許発明1、2、6、7、10、11、22ないし24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由4(甲第4号証を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許発明1、2、7ないし11、22ないし24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許発明1、2、6ないし11、22ないし24は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)申立理由5(明確性要件)
本件特許の請求項12ないし21に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は以下の通り。
本件特許発明13は、前記被膜が閉空間を形成してなる、請求項12に記載の樹脂供給材料を規定する。しかし、この記載においては、請求項12の「熱可塑性樹脂からなる閉空間を形成する被膜」との相違が明確ではない。
(6)証拠方法
特許異議申立書に添付して以下の証拠を提出した。
甲第1号証:特開平5-311556号公報
甲第2号証:特開昭63-126955号公報
甲第3号証:特公昭63-11758号公報
甲第4号証:特開2013-176984号公報
以下、それぞれ「甲1」ないし「甲4」という。
2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が令和3年5月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりであり、特許異議申立書に記載した申立理由(1)ないし(4)を含むものである。
(1)取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1、2、3、7、10、11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許の請求項1、2、3、6、7、10、11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲2を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1ないし5、7、10、11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許の請求項1ないし7、10、11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)取消理由3(甲3を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1、2、7、10、11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許の請求項1、2、6、7、10、11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)取消理由4(甲4を主引用文献とする新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1、2、7ないし11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、あるいは本件特許の請求項1、2、6ないし11、22ないし24に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 証拠について
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、「繊維複合体の製造方法」に関し、以下の記載がある(下線については当審において付与したものである。以下、同様。)。
(ア)「【請求項1】主として無機繊維からなる不織マット状物に熱可塑性樹脂からなるフィルムを多数枚積層して積層体を形成する積層工程と、この積層体を上記樹脂成分の溶融温度以上の温度に加熱して樹脂成分を溶融せしめる加熱工程と、この溶融状態で積層体を圧縮する圧縮工程と、上記樹脂成分が溶融した状態でこの積層体を拡開して該積層体の厚みを増大させる拡開工程とを順次行う繊維複合体の製造方法であって、
前記積層工程において、長さ0.1~5mmの無機短繊維を含む熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも1枚積層することを特徴とする繊維複合体の製造方法。」
(イ)「【0014】また、この時、使用される熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも1枚に、0.1~5mmの無機短繊維を混入した熱可塑性樹脂フィルムを使用する。この無機短繊維を混入した熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムと一体に製造したものであってもよい。すなわち、熱可塑性樹脂フィルムの多層フィルムを製造する際に、その一層中に無機短繊維を混入させて一体としたものであってもよい。ただし、無機短繊維混入熱可塑性樹脂フィルムの内側に無機短繊維が混入していない熱可塑性樹脂フィムルを配置して積層を行うのが好ましい。
【0015】また、無機短繊維を混入した熱可塑性樹脂フィルムに代えて、無機繊維と熱可塑性樹脂成分とからなる複合体の粉砕品をシート状にしたものを用いてもよい。この粉砕品は、一般に市販されているスタンパブルシート〔商品名:アズデル(アズデル社製)、ラドライト(ウィギンス社製)等〕のように、主に無機繊維と熱可塑性樹脂とからなる複合体を粉砕したものを使用することができる。また、これらのリサイクル品や製造かす等を適宜粉砕して使用することも可能である。ただし、粉砕後の大きさは、無機繊維が0.1~5mmの長さを保つ程度に粉砕するのが好ましい。」
(ウ)「【0018】圧縮工程では、上記積層体を溶融状態のままで圧縮する。この際、任意の方法が採用されてよく、たとえばプレスする方法、ロールで圧縮する方法等が挙げられる。プレス圧力は0.1~20Kg/cm2であって圧縮時間は1~10秒あればよい。また、ロールで圧縮する際には、ロール間を材料厚みの80~5%に設定するのが好ましい。
【0019】プレス、ロールともに圧縮する際には、熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱されているのが好ましい。この際圧縮されると、溶融した熱可塑性樹脂は無機繊維中に含浸される。
【0020】次に解圧すると材料は元の厚さに回復しようとするが無機繊維は一度押しつぶされているので充分に回復しない。そこで、上下から真空吸引を行う等の拡開工程を経るのが好ましい。拡開工程では、圧縮工程で加えた圧力を解圧し、熱可塑性樹脂が溶融した状態で、拡開し、材料の厚みを増大させる。」
(エ)「【0022】
【作用】請求項1記載の本発明によると、積層工程において、0.1~5mmの無機短繊維を含む熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも1枚積層するので、この無機短繊維および樹脂等が、マット状物に均等に分散するとともに、マット状物のニードルパンチング孔や局所的くぼみ等を埋めることとなる。」
(オ)「【0025】
【実施例1】長さ50mm,直径13μmのガラス繊維と、長さ50mm、直径10μmのポリプロピレン繊維とを重量比3:1でカードマシンに供給し、解織した後1cm2当り60箇所のニードルパンチを行って厚さ6mm、平均重量450g/m2 のマット状物を得た。
【0026】次に、この両面にそれぞれ2枚のフィルムを積層し、積層体を形成した。ただし、内層側のフィルムは、厚さ80μm(77g/m2)、MI5の高密度ポリエチレンフィルムを積層した。また、外層側のフィルムは、厚さ60μm、MI15で2mm長のガラス繊維を30重量%混入した(ガラス繊維20g/m2、樹脂50g/m2)高密度ポリエレンフィルム(当審注:「高密度ポリエチレンフィルム」の誤記と認める。)を積層した。
【0027】次いで、全体をテフロンシートの間に挟み、200℃で3分間加熱し、5Kg/cm2の圧力で、200℃に加熱したプレスで圧縮し、次に200℃に保ってテフロンシートを両側から真空吸引して3.5mmまで拡開した後、冷却した。
【0028】得られたサンプルの曲げ強度を、JISK7221に従って測定した。
【0029】測定数は30で強度の平均値と強度バラツキの標準偏差を算出した。結果を表1に示す。
【0030】
【実施例2】厚さ60μm、MI12で2mm長のガラス繊維を30重量%混入した(ガラス繊維20g/m2、樹脂50g/m2)高密度ポリエレンフィルムを外層側のフィルムとして積層した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作成した。また、同様にして曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。」
イ 甲1に記載された発明
甲1の上記記載事項(ア)、(オ)の特に下線部の記載からみて、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
「繊維複合体の製造方法に用いられる、厚さ60μm、MI15で2mm長のガラス繊維を30重量%混入した(ガラス繊維20g/m2、樹脂50g/m2)高密度ポリエチレンフィルム。」(以下、「甲1A発明」という。)
(2) 甲2の記載事項等
ア 甲2の記載事項
甲2には、「繊維質シート複合体の製造方法」に関し、以下の記載がある。
(ア)「1.ガラス繊維と有機繊維とを含有する不織布基材の片面又は両面に、ガラス繊維と有機繊維と必要に応じてそれらの結合剤とを含有する不織布シートを積層し、この積層体を前記不織布基材中の有機繊維の融点又は前記不織布シートの有機繊維の融点のいずれか高い方の温度以上に加熱し、これらの有機繊維を溶融し滴状の溶融物となし、該滴状の溶融物により骨格となるガラス繊維同士をその交点において接着せしめることを特徴とする繊維質シート複合体の製造方法。」(特許請求の範囲)
(イ)「本発明の繊維質シート複合体の製造方法は、ガラス繊維と有機繊維とを含有する不織布基材の片面又は両面に、ガラス繊維と有機繊維と必要に応じてそれらの結合剤とを含有する不織布シートを積層し、この積層体を前記不織布基材中の有機繊維の融点又は前記不織布シートの有機繊維の融点のいずれか高い方の温度以上に加熱し、これらの有機繊維を溶融し滴状の溶融物となし、該滴状の溶融物により骨格となるガラス繊維同士をその交点において接着せしめる方法であり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明に用いられるガラス繊維の繊維径は5~30μmで繊維長は5~200mmである。」(第2ページ右上欄下から第5行~左下欄第9行)
(ウ)「繊維質シート複合体は、ガラス繊維と有機繊維とでなる比較的低密度の不織布基材の少なくとも片表面に不織布シートを積層加熱・圧縮成形して得られる。このような基材及び不織布シート中の有機繊維は加熱工程でその大部分が溶融し、水滴状となってガラス繊維に付着すると考えられる。金型による圧縮工程でガラス繊維が圧縮されると、この水滴状の溶融樹脂もガラス繊維上を移動し繊維と繊維との接触点に留まる確率が高いと考えられる。温度が降下すると有機繊維に由来する樹脂は硬化し、繊維(主としてガラス繊維)同士を強固に接着するバインダーの働きを示す。このように、得られる成形体はガラス繊維を主骨格とし、このガラス繊維同士が樹脂により固定された状態にあるため、剛性および形状維持性に優れる。ガラス繊維が使用されているため、その熱安定性は従来の熱可塑性樹脂発泡体に比べてはるかに高い。目的とする複合体の厚みよりも暑い素材を圧縮・成形するため賦形性にも優れる。
また本発明に用いられる不織布シートは、シート状であるため、取扱いやすく、従来のガラス繊維や接着剤を使用した際の作業性の悪さを充分改善できる。
本発明により得られる複合体は比較的低密度の不織布基材から得られるため軽量であり、複合体の空隙率は80~99.5%と高い。複合体の空隙率(密度)はその部分により異なるが、例えば自動車天井の周辺部は充分に圧縮して成形されているため高密度であり、中央部は圧縮度が小さいため低密度である。高密度部分では特に剛性が高く、低密度部分では弾力性を有し吸音効果が高い。」(第4ページ左上欄第8行~右欄第20行)
(エ)「第1図に示す様に、繊維供給容器1に収容されたガラス繊維と有機繊維とからなる開繊繊維が所定量づつベルトコンベアー21に供給する。この繊維2をカードマシン5に供給し、充分に混綿した後、連続状の不織布基材6に形成し、ガラス繊維と有機繊維とからなる不織布シート3が積層した後巻取機7にて巻取り、成形用素材4とする。巻取られた素材4は所望の形状サイズに切断する。
第2図に示すように、切断された素材4と内装化粧材8との積層体10をベルトコンベアー22上を加熱炉51に導き、ここで加熱した積層体10を次に成形用金型11において圧縮成形し、繊維質シート複合体12を得る。」(第4ページ左下欄第8行~右下欄第1行)
(オ)「実施例1
(A)複合体の製造
ガラス繊維、(直径10μm、繊維長50~100mm)
有機繊維、ポリプロピレン繊維
(直径13μm、繊維長50~100mm、融点160℃)
不織布シート、阿波製紙 PP紙
(ポリプロピレン繊維:ガラス繊維、バインダー
=60:30:10(重量比)
厚み 0.45mm、密度0.2g/cm2)
内装用化粧材、ポリエステル製不織布
(厚み15mm)
上記ガラス繊維および有機繊維(重量比1:1)をカードマシンにかけて、均一に混綿した厚み20mm、密度0.04の不織布基材を得た。
この基材の両表面に不織布シートを積層させ成形用素材を得た。この素材を幅1150mm、長さ1400mmに切断し、これに同サイズの上記内装用化粧材を積層して、周囲をクランプでピンチした。この積層体を200℃の熱風で3分間加熱した後、速やかに温度30℃の金型を用い、圧縮力1kg/cm2の力で1分間圧縮成形した。この金型は、最小肉厚部が3.0mm、最大肉厚部が8.Ommに設計されており、得られた複合体はほぼこの金型の形状に対応していた。」(第4ページ右下欄第4行~第5ページ左上欄第6行)
イ 甲2に記載された発明
甲2の上記記載事項(オ)の特に下線部の記載からみて、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。
「繊維質シ-ト複合体の製造方法に用いる不織布シートであって、ポリプロピレン繊維:ガラス繊維(直径10μm、繊維長50~100mm):バインダー=60:30:10(重量比)、厚み0.45mm、密度0.2g/cm2である不織布シート。」(以下、「甲2A発明」という。)
「繊維質シ-ト複合体の製造方法に用いる不織布シートにおけるガラス繊維の使用方法であって、不織布シートが、ポリプロピレン繊維:ガラス繊維(直径10μm、繊維長50~100mm):バインダー=60:30:10(重量比)、厚み0.45mm、密度0.2g/cm2である不織布シートの使用方法。」(以下、「甲2B発明」という。)
(3)甲3の記載事項等
ア 甲3の記載事項
甲3には、「面発熱体の製造方法」に関し、以下の記載がある。
(ア)「1 熱硬化性樹脂と導電性繊維と充填剤とを主体とする樹脂組成物をガラス繊維マツトに積層し、加圧して上記樹脂をガラス繊維マツトに含浸させ、加熱加圧し、硬化成形して得られた成形体の両側面に絶縁層を積層することを特徴とする面発熱体の製造方法。
2 熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である特許請求の範囲第1項記載の製造方法。
3 導電性繊維が炭素繊維である特許請求の範囲第1項記載の製造方法。」(特許請求の範囲)
(イ)「即ち、本発明の要旨は、熱硬化性樹脂と導電性繊維と充填剤とを主体とする樹脂組成物をガラス繊維マツトに積層し、加圧して上記樹脂をガラス繊維マツトに含浸させ、加熱加圧し、硬化成形して得られた成形体の両側面に絶縁層を積層することを特徴とする面発熱体の製造方法に存する。」(第2欄第7~12行)
(ウ)「本発明に用いる導電性繊維としては、例えばスチールフアイバー、ステンレスフアイバー等の金属繊維、炭素繊維等があげられ炭素樹脂が好適である。導電性繊維の好ましい形状としては、繊維長が0.3mm~25mmの範囲、更に好ましくは4mm~10mmの範囲であり、繊維の太さが50ミクロン以下のものである。
本発明における成形体は上記熱硬化性樹脂と導電性繊維と充填剤とを主体とする組成物をガラス繊維マツトに積層、加圧し、加熱して、硬化成形することにより得られるが、熱硬化性樹脂に対する導電性繊維と充填剤の混合量としては、熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性繊維が0.4~30重量部、充填剤が50~150重量部の範囲となすのが好ましい。」(第2欄第22行~第3欄10行)
(エ)「本発明において、成形体を作成する具体的な方法としては、チヨツプドスランドマツト、ロービングクロス、コンテイニユアスストランドマツト、ガラスペーパーの如きガラス繊維マツトを上記組成物の層に重ね合わせ、ロール等で加圧すると、熱硬化性樹脂と充填剤はガラス繊維マツトに含浸させるが、導電性繊維は該マツトに含浸されずに該マツト表面上にのこり、層状になるので、これを加熱加圧し、硬化成形する方法が採用される。」(第3欄第22~31行)
(オ)「図中1はホツパー、2は撹拌機である。ホツパー1に不飽和ポリエステル樹脂72重量部、収縮抑制剤(ポリスチレン、スチレンモノマー混合物)30重量部、増粘剤(酸化マグネシウム)0.5重量部、充填剤(炭酸カルシウム)70重量部、内部離型剤(ステアリン酸亜鉛)4.5重量部、重合禁止剤(ベンゾキノン)0.03重量部、硬化触媒(ターシヤリーブチルパーベンゾエイト)1.0重量部及び炭素繊維(繊維長6mm、繊維径12.5μ)2.0重量部を供給し撹拌機2で混合し得られた組成物3を離型フイルム4上に供給しナイフコーター5で約1mmの厚みに敷設し、その上にガラス繊維マツト(チヨツプドストランドマツト、450g/m2)6を敷設し、さらにその上に離型フイルム7を敷設し、ロール8で加圧しガラス繊維マツトに樹脂組成物を含浸し、カツター9で切断し24時間熟成して成型体用SMC10を得た。得られた成形体用SMC10から離型フイルムを剥離しギヤーオーブンに供給し140℃で10分間加熱硬化して成形体を得た。」(第4欄第7~26行)
イ 甲3に記載された発明
甲3の上記記載事項(オ)の特に下線部の記載からみて、甲3には、以下の発明が記載されているといえる。
「樹脂組成物をガラス繊維マツトに積層し、加圧して上記樹脂をガラス繊維マツトに含浸させ、加熱加圧し、硬化成形して得られた成形体の両側面に絶縁層を積層する面発熱体の製造に用いる樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂と、繊維長が0.3mm~25mmの範囲である金属繊維、炭素繊維等の導電性繊維と充填剤とを主体とする樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂100重量部に対して導電性繊維が0.4~30重量部、充填剤が50~150重量部の範囲である樹脂組成物。」(以下、「甲3A発明」という。)
(4)甲4の記載事項等
ア 甲4の記載事項
甲4には、「リブ構造を有する成形品の製造方法」に関し、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いプレス成形でリブ構造を有する成形品を製造する方法に関する。」
(イ)「【0011】
本発明の課題は、かかる従来技術の問題点を解消し、シート状の成形材料を用いたプレス成形において、表面外観、寸法精度、信頼性に優れた面板部の形成と、リブ構造の形成を両立した繊維強化複合材料の成形品を得ることである。
・・・<略>・・・
【0015】
本発明によれば、不連続な強化繊維と熱可塑性樹脂を含むシート状の成形材料を積層し、プレス成形するにあたり、構成の異なる2種類以上の成形材料を用いることで、表面外観、寸法精度、信頼性に優れた面板部の形成と、リブ構造の形成を両立した、リブ構造を有する成形品を得ることができる。」
(ウ)「【0024】
本発明において、プリフォームは不連続な強化繊維と熱可塑性樹脂を含むシート状の成形材料を含んでいる。プリフォームとは、少なくとも強化繊維に樹脂が含浸した成形材料を含み、成形材料を積層、あるいは横並びに配置して構成され、直接もしくは二次加工工程を経て、成形工程に供されるものであり、成形品に加工される前の状態のものを意味し、本発明におけるプリフォームは成形材料として後述する成形材料(A)と成形材料(B)を含んでいる。ここで、積層とは少なくとも成形材料どうしの一部が重なる状態をいい、また横並びとは実質的に成形材料どうしの一部も重ならない、隣り合った配置のことをいう。さらに、本発明では、2つ以上のプリフォームを組み合わせてプレス成形に供しても良い。また、金型の型締め時におけるプリフォーム形態のことを最終形態のプリフォームと呼ぶこととする。なお、二次加工工程には特に制限はないが、成形材料を所定のサイズや形状にカットする切削工程、成形材料同士を接着してプリフォームの取扱性を向上させるボンディング工程、プリフォームからエアを抜く脱泡工程などが例示できる。次に、本発明に用いられる、不連続な強化繊維と熱可塑性樹脂を含むシート状の成形材料について説明する。本発明で用いる成形材料の形態はシート状であり、成形材料の構成は不連続な強化繊維と熱可塑性樹脂とからなり、不連続な強化繊維で補強された熱可塑性樹脂であれば、特に制限はされない。強化繊維の形態としては、成形材料あるいはプリフォームの賦形性を考慮して不連続な強化繊維であることが重要である。ここで、本発明でいう不連続な強化繊維とは、強化繊維からなる中間体あるいは成形材料を製造する過程で強化繊維が実質的に切断される工程を含んで得られる強化繊維を指す。不連続な強化繊維の形態としては、例えば不連続な強化繊維が束状および/または単繊維に分散された状態で強化繊維を一方向にひきそろえた形態や、不連続な強化繊維が束状および/または単繊維に分散された状態で強化繊維がランダムに配向した形態などが挙げられる。積層の方向を厳密に考慮しなくても良いという観点からは、成形材料に含まれる強化繊維の配置が、不連続な強化繊維の束状および/または単繊維に分散された状態で、該強化繊維がランダムに配向した形態であることが好ましい。
【0025】
本発明で用いる成形材料としては、例えば不連続な複数本のストランド状強化繊維に針を突き刺し、互いに繊維を絡まり合わせたマット状ストランド強化繊維に熱可塑性樹脂を積層し、これを加熱、加圧して得られる成形材料、不連続な強化繊維束をランダムに配置したものと、粉末形状、繊維形状、フィルム形状、不織布形状の熱可塑性樹脂とを加熱、加圧して得られる成形材料、強化繊維と溶融させた熱可塑性樹脂とを混練したものを加圧して得られる成形材料、強化繊維のみ、あるいは粉末形状、繊維形状の熱可塑性樹脂を空中で分散させたものを加熱、加圧して得られる成形材料、強化繊維と粉末形状、繊維形状の熱可塑性樹脂を水中に分散、混合した懸濁液から抄造して得られる不織材料を加熱、加圧して得られる成形材料、強化繊維のみを水中に分散した懸濁液から抄造して得られる不織材料に粉末形状、繊維形状、フィルム形状、不織布形状の熱可塑性樹脂を加熱、加圧して、抄造して得られた該強化繊維の不織布材料に該熱可塑性樹脂を接着してなる成形材料などの成形材料が挙げられる。これらの中でも、成形材料中に長い繊維を残すことで高剛性、かつ等方性にも優れる観点から、強化繊維の不織布材料に熱可塑性樹脂が接着してなる成形材料が好ましく用いられる。また、短い強化繊維を成形材料中に分散させる方法として、経済性の観点から、強化繊維と溶融させた熱可塑性樹脂とを混練したものを加圧して得られる成形材料が好ましく用いられる。
【0026】
本発明で用いる強化繊維としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属繊維や、ポリアクリロニトリル(以下、PAN)系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系などの炭素繊維や、黒鉛繊維や、ガラスなどの絶縁性繊維や、アラミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレンなどの有機繊維や、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機繊維が挙げられる。また、これらの繊維に表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、導電体として金属の被着処理のほかに、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などがある。また、これらの強化繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、比強度、比剛性が高く軽量化効果の観点から、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が好ましく用いられる。また、得られる成形品の経済性を高める観点から、ガラス繊維が好ましく用いることができ、とりわけ力学特性と経済性のバランスから炭素繊維とガラス繊維を併用することが好ましい。さらに、得られる成形品の衝撃吸収性や賦形性を高める観点から、アラミド繊維が好ましく用いることができ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性のバランスから炭素繊維とアラミド繊維を併用することが好ましい。また、得られる成形品の導電性を高める観点から、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。これらの中で、強度と弾性率などの力学的特性と価格とのバランスに優れるPAN系の炭素繊維は、より好ましく用いられる。」
(エ)「【0056】
本発明で用いられる成形材料(A)の数平均繊維長Laは、面板部の強度を確保するために、2mm以上であることが好ましい。より好ましくは、3mm以上である。成形材料(A)の数平均繊維長Laの上限については、特に制限はないが、長すぎる繊維長は面板部の賦形性を損ねる恐れがあるため、20mm以下であることが好ましく、より好ましくは、10mm以下である。」
(オ)「【0057】
本発明における強化繊維の配向としては、二次元配向角で整理することができる。一般的に強化繊維からなる基材は強化繊維が束状になって構成されているケースが多く、このため成形材料として等方性を確保することが難しく、かつ束内への樹脂含浸が十分でなく、成形品の強度低下の原因となる場合がある。強化繊維束が単糸に分散したとしても、強化繊維の単糸同士が平行して接触してしまうと同様の結果となる。さらには、厚み方向への繊維配向は、成形材料またはそれを積層して得られるプリフォームの厚み膨張の原因となり、取扱い性や成形性を著しく損なう場合がある。
【0058】
ここで、二次元配向角としては、本発明における、強化繊維である単繊維と該単繊維と交差する単繊維とで形成される二次元配向角について図面を用いて説明する。図9は本発明の成形材料の一例の強化繊維のみを面方向から観察した場合の、強化繊維の分散状態を表した模式図である。単繊維4-1に着目すると、単繊維4-1は他の単繊維4-2~4-7と交差している。ここで交差とは、観察した二次元平面において着目した単繊維が他の単繊維と交わって観察される状態のことを意味する。ここで実際の成形材料において、単繊維4-1と単繊維4-2~4-7が必ずしも接触している必要はない。二次元配向角は交差する2つの単繊維が形成する2つの角度のうち、0度以上90度以下の角度12と定義する。
【0059】
具体的に成形材料から二次元配向角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、成形材料の表面から強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、成形材料表面を研磨して繊維を露出させることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、成形材料に透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、成形材料を薄くスライスすることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、成形材料をX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0060】
また、上記方法で測定が困難な場合には、強化繊維の構造を崩さないように樹脂を除去した後に強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。例えば、成形材料をアルミホイルで包み、樹脂成分を焼き飛ばし、得られる強化繊維からなる基材を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察して測定することができる。本発明の二次元配向角の平均値とは、以下の手順i、iiで測定する。 i.無作為に選択した強化繊維である単糸(図9における単繊維4-1)に対して交差している全ての単繊維(図1における単繊維4-2~4-7)との二次元配向角の平均値を測定する。たとえばある単繊維に交差する別の単繊維が多数の場合には、交差する別の単繊維を無作為に20本選び測定した平均値を代用してもよい。 ii.上記iの測定を別の単繊維に着目して合計5回繰り返し、その平均値を二次元配向角の平均値として算出する。本発明での強化繊維の二次元配向角の平均値は10~80度であることが好ましい。より好ましくは20~70度であり、さらに好ましくは30~60度であり、理想的な角度である45度に近づくほど好ましい。二次元配向角の平均値が10度未満または80度より大きいと、強化繊維が束状のまま多く存在していることを意味しており、力学特性が低下するだけでなく、二次元の等方性が損なう場合や、厚み方向の強化繊維が無視できず積層工程での経済的負担が大きくなる場合がある。」
(カ)「【0105】
(参考例1)炭素繊維の調整
ポリアクリロニトリルを主成分とする重合体から紡糸、焼成処理を行い、総フィラメント数12000本の炭素繊維連続束を得た。該炭素繊維連続束に浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥しPAN系炭素繊維束を得た。このPAN系炭素繊維束の特性は次の通りであった。
【0106】
単繊維径;7μm
単位長さ当たりの質量:0.83g/m
比重:1.8g/cm3
引張強度:4.0GPa
引張弾性率:235GPa
サイジング種類:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
サイジング付着量:2質量%
(参考例2)チョップド炭素繊維束1
カートリッジカッターを用いて、参考例1の炭素繊維をカットし、繊維長9mmのチョップド炭素繊維束を得た。
【0107】
(参考例3)チョップド炭素繊維束2
参考例2と同様にして、繊維長6mmのチョップド炭素繊維束2を得た。
【0108】
(参考例4)チョップド炭素繊維束3
参考例2と同様にして、繊維長100mmのチョップド炭素繊維束3を得た。
【0109】
(参考例5)チョップド炭素繊維束4
参考例2と同様にして、繊維長3mmのチョップド炭素繊維束4を得た。
【0110】
(参考例6)チョップドガラス繊維束
日東紡製、商品名CS13G-874
単繊維径;10μm
比重:2.5g/cm3
繊維長:13mm(カタログ値)
【0111】
(参考例7)無変性ポリプロピレン樹脂
プライムポリマー(株)社製、“プライムポリプロ”(登録商標)J105G、融点160℃
【0112】
(参考例8)酸変性ポリプロピレン樹脂
三井化学(株)社製、“アドマー” (登録商標)QE510、融点160℃
【0113】
(参考例9)ナイロン6樹脂
東レ(株)社製、“アミラン” (登録商標)CM1001、融点225℃
【0114】
(参考例10)炭素繊維マット1の調製
界面活性剤(和光純薬工業(株)社製、「n-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム」(製品名))の1.5wt%水溶液100リットルを攪拌し、予め泡立てた分散液を作製した。この分散液に、参考例2で得られたチョップド炭素繊維束1を投入し、10分間撹拌した後、長さ500mm×幅500mmの抄紙面を有する抄紙機に流し込み、吸引により脱水後、150℃の温度で2時間乾燥し、炭素繊維からなる炭素繊維マット1を得た。
【0115】
(参考例11)炭素繊維マット2の調製
参考例10と同様にして、参考例3で得られたチョップド炭素繊維束2を用いて、炭素繊維からなる炭素繊維マット2を得た。
【0116】
(参考例12)炭素繊維マット3の調製
参考例10と同様にして、参考例4で得られたチョップド炭素繊維束3を用いて、炭素繊維からなる炭素繊維マット3を得た。
【0117】
(参考例13)ガラス繊維マットの調整
参考例10と同様にして、参考例6のチョップドガラス繊維を用いて、ガラス繊維からなるガラス繊維マットを得た。
【0118】
(参考例14)ポリプロピレン樹脂フィルムの調整
参考例7の無変性ポリプロピレン樹脂90質量%と、参考例8の酸変性ポリプロピレン樹脂10質量%を用意し、これらをドライブレンドした。このドライブレンド品を二軸押出機のホッパーから投入し、押出機にて溶融混練した後、T字ダイ(500mm幅)から押出した。その後、60℃のチルロールで引き取ることによって冷却固化させ、ポリプロピレン樹脂フィルムを得た。
【0119】
(参考例15)ナイロン6樹脂フィルムの調整
参考例9のナイロン6樹脂を、参考例14と同様に溶融混練し、ナイロン6樹脂フィルムを得た。
【0120】
(参考例16)成形材料1の調製
参考例10で得られた炭素繊維マット1と参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとを交互積層し、積層体を用意した。金属製のツール板の上に離型シートで挟んだ積層体を載せ、さらに上にツール板を配置した。離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用いた。ついで、210℃に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に該積層体を配置し、面圧5MPaでプレスした。次に、80℃の温度に温度制御された別の油圧式プレス機に搬送し、冷却盤間に配置後、面圧5MPaで冷却プレスを行い、炭素繊維マットとポリプロピレン樹脂からなる長さ500mm、幅500mm、厚み0.5mm、繊維重量分率が33.3wt%の成形材料1を得た。その他の材料特性は、表1に示す。
【0121】
(参考例17)成形材料2の調製
参考例16と同様にして、参考例11で得られた炭素繊維マット2と参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み2.0mm、繊維重量分率が14.8wt%の成形材料2を得た。その他の材料特性は、表1に示す。
【0122】
(参考例18)成形材料3の調製
参考例16と同様にして、参考例10で得られた炭素繊維マット1と参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み0.5mm、繊維重量分率が18.2wt%の成形材料3を得た。その他の材料特性は、表1に示す。
【0123】
(参考例19)成形材料4の調製
参考例16と同様にして、参考例10で得られた炭素繊維マット1と参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み0.5mm、繊維重量分率が57.1wt%の成形材料4を得た。その他の材料特性は、表1に示す。
【0124】
(参考例20)成形材料5の調製
参考例16と同様にして、参考例12で得られた炭素繊維マット3と参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み0.5mm、繊維重量分率が33.3wt%の成形材料5を得た。その他の材料特性は、表1に示す。
【0125】
(参考例21)成形材料6の調整
参考例16と同様にして、参考例11で得られた炭素繊維マット2と参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み0.5mm、繊維重量分率が33.3wt%の成形材料6を得た。その他の材料特性は、表1に示す。
【0126】
(参考例22)成形材料7の調整
参考例16と同様にして、参考例10で得られた炭素繊維マット1と参考例15で得られたナイロン6樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み0.5mm、繊維重量分率が28.6wt%の成形材料7を得た。ただし、プレス機の熱盤面温度は250℃とした。その他の材料特性は、表1に示す。
【0127】
(参考例23)成形材料8の調製
参考例16と同様にして、参考例13で得られたガラス繊維マットと参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み0.5mm、繊維重量分率が64.9wt%の成形材料8を得た。その他の材料特性は、表2に示す。
【0128】
(参考例24)成形材料9の調製
参考例16と同様にして、参考例13で得られたガラス繊維マットと参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムとからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み2.0mm、繊維重量分率が2.7wt%の成形材料9を得た。その他の材料特性は、表2に示す。
【0129】
(参考例25)成形材料10の調製
参考例7の無変性ポリプロピレン樹脂90質量%と、参考例8の酸変性ポリプロピレン樹脂10質量%を用意し、ドライブレンドを行った。200℃の二軸押出機で該ドライブレンド品を溶融混練させた後、該押出機のサイドフィーダーから参考例3で得られたチョッブド炭素繊維束2を投入し、さらに混練した。該押出機にて溶融混練した後、T字ダイ(500mm幅)から押出した。その後、60℃のチルロールで引き取ることによって冷却固化させ、厚み0.5mmのCF/PPシートを得た。
【0130】
次に、参考例16と同様の方法を用いてプレス成形を行い、長さ500mm、幅500mm、厚み2.0mm、繊維重量分率が33.3wt%の成形材料10を得た。その他の材料特性は、表2に示す。
【0131】
(参考例26)成形材料11の調製
参考例25と同様にして、参考例3で得られたチョッブド炭素繊維束2と参考例9で得られたナイロン6樹脂とからなる、長さ500mm、幅500mm、厚み2.0mm、繊維重量分率が28.6wt%の成形材料11を得た。ただし、プレス機の熱盤面温度は250℃とした。その他の材料特性は、表2に示す。
【0132】
(参考例27)成形材料12の調製
金属製のツール板の上に離型シート(テフロン(登録商標)、厚さ1mm)を配置し、さらに参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルムを上に配置した。該ポリプロピレン樹脂フィルムの上に参考例5のチョップド炭素繊維束4をランダムに散りばめ、炭素繊維束がランダム方向に分布していることを目視で確認した。さらに、その上に参考例14で得られたポリプロピレン樹脂フィルム、離型シート、ツール板の順番で配置した。
【0133】
次に、参考例16と同様の方法を用いてプレス成形を行い、長さ500mm、幅500mm、厚み2.0mm、繊維重量分率が57.1wt%の成形材料12を得た。その他の材料特性は、表2に示す。
【0134】
(参考例28)一文字リブ成形用金型
図1に示す、面板と一文字のリブからなる形状を有した成形品を得るための、対向する一対の金型であり、下記に示す寸法を有する。また、上金型(開口金型)、下金型(対向金型)の寸法をそれぞれ図10、11に示す。
・図10:W1;2mm、W2;199mm、W3;199mm、W4;400mm、W5;500mm、W6;200mm、W7;300mm、H1;10mm、H2;20mm、H3;120mm
・図11:W1;392mm、W2;500mm、W3;192mm、W4;300mm、H1;7mm、H2;150mm
【0135】
(参考例29)十字リブ成形用金型
図12に示す、面板と十字のリブからなる形状を有した、対向する一対の金型であり、下記に示す寸法を有する。また、上金型(開口金型)、下金型(対向金型)の寸法をそれぞれ図13、11に示す。
・図13:W1;2mm、W2;199mm、W3;199mm、W4;400mm、W5;500mm、W6;200mm、W7;300mm、W8;2mm、H1;10mm、H2;20mm、H3;120mm
・図11:W1;392mm、W2;500mm、W3;192mm、W4;300mm、H1;7mm、H2;150mm」
(キ)「・・・
(実施例1)
参考例16で得た成形材料1と参考例25で得た成形材料10とを用いた。ここで、成形材料1、成形材料10の濃度パラメーターpから、成形材料1は成形材料(A)に、成形材料10は成形材料(B)に分類される。成形材料1、成形材料10を以下の寸法に裁断し、成形材料1を8枚、成形材料10を10枚用意した。
成形材料1:長さ440mm、幅220mm
成形材料10:長さ200mm、幅20mm
次に成形材料のプリフォームとして、2枚の成形材料1の上にリブの真上の位置に成形材料10を10枚配置した。この積層体をプリフォーム1Aとする。また、成形材料1を2枚積層した積層体をプリフォーム1Bとし、3体用意した。成形金型は参考例27を用い、金型温度を80℃に温調した。
【0136】
遠赤外線ヒーターを具備したオーブン中に、各プリフォームを個別に配置し、10分間予熱した。各プリフォームの成形材料に設置した熱電対の温度が210℃に達していることを確認した後、オーブン中でプリフォーム1Bの上にプリフォーム1Aを、さらにその上にプリフォーム1Bを2体積層し、プリフォーム1Cとした。
【0137】
ついで、予熱したプリフォーム1Cを下金型の凸部の上に配置し、リブの真上の位置に成形材料10が配置されていることを確認した後、該上金型を降下させ、面圧20MPaでプレス成形した。この状態で3分間加圧、冷却した後、上金型を上昇させ、成形体を得た。リブ部の一部にかすれ状の跡が見られたが、その他は良好な表面外観であり、得られた成形品にソリは見られなかった。さらに、リブへは材料が完全に充填しており、樹脂リッチ部は見られなかった。特性および評価結果は、まとめて表3に記載した。
・・・<略>・・・
【0165】
(実施例16)
参考例18で得た成形材料3と参考例17で得た成形材料2とを用いた。ここで、成形材料3、成形材料2の濃度パラメーターpから、成形材料3は成形材料(A)に、成形材料2は成形材料(B)に分類される。
【0166】
成形材料1、成形材料10の代わりに、それぞれ成形材料3、成形材料2を用いた以外は、実施例1と同様にしてプリフォーム、予熱および成形を行い、成形品を得た。得られた成形品の天板は、ソリはほぼなく、良好な表面外観を有していた。リブには、樹脂リッチ部はあるものの、完全充填であった。天板は等方性がやや低くなっていた。特性および評価結果は、まとめて表6に記載した。」
(ク)「【0206】
【表1】
[図:0001381641000001.jpg]
)「【0207】
【表2】
[図:0001381641000002.jpg]
」
(ケ)「【図9】
[図:0001381641000003.jpg]
」
(コ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
不連続な強化繊維と熱可塑性樹脂を含み、次の一般式(1)で表される濃度パラメーターpが1×104以上であって1×108以下であるシート状の成形材料(A)と、不連続な強化繊維と熱可塑性樹脂を含み、次の一般式(1)で表される濃度パラメーターpが1×101以上であって前記成形材料(A)の濃度パラメーターの0.1倍以下であるシート状の成形材料(B)を含むプリフォームを、リブ構造を形成するための開口部を有する開口金型とそれに対向する対向金型とを用いてプレス成形してリブ構造を有する成形品を製造するにあたり、前記成形材料(A)の面積を成形品の投影面積の70%以上とし、前記成形材料(B)を前記開口部の投影位置に配置する、リブ構造を有する成形品の製造方法。
【数1】
[図:0001381641000004.jpg]
n:成形材料の単位面積(1mm2)当たりに含まれる強化繊維からなる流動単位の数
h:成形材料の厚み(mm)
Ln:強化繊維の数平均繊維長(mm)
【請求項2】
前記プレス成形が、以下の工程(I)~(IV)を含む、請求項1に記載のリブ構造を有する成形品の製造方法。工程(I):プリフォームを、該プリフォームに含まれる熱可塑性樹脂の軟化温度あるいは融点以上に加熱する工程。工程(II):工程(I)で加熱したプリフォームを搬送し、金型に配置する工程。工程(III):熱可塑性樹脂の軟化温度あるいは融点より20℃~150℃低い温度を有する金型を型締めすることにより、プリフォームを加圧冷却する工程。工程(IV):冷却後、金型を開放し、金型から成形品を取り出す工程。」
イ 甲4に記載された発明
甲4の上記記載事項(イ)(カ)(キ)(キ)の特に下線部の記載からみて、甲4には、以下の発明が記載されているといえる。
「リブ構造を有する強化繊維複合材料の成形品の製造方法に使用するための、炭素繊維マットとポリプロピレン樹脂フィルム又はナイロン6樹脂フィルムとからなる、繊維重量分率が2.7、14.8、18.2、22.0、28.1,28.6wt%の成形材料。」(以下、「甲4A発明」という。)
2 検討
(1)取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性及び進歩性)について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1A発明とを対比すると、甲1A発明の「繊維複合体の製造方法」、「高密度ポリエチレン」は、本件特許発明1の「繊維強化樹脂の成形」、「樹脂」に相当する。また、甲1A発明の「ガラス繊維」は、本件特許発明1の「強化繊維」に相当する。
そして、甲1には、「積層工程において、0.1~5mmの無機短繊維を含む熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも1枚積層するので、この無機短繊維および樹脂等が、マット状物に均等に分散するとともに、マット状物の二ードルパンチング孔や局所的くぼみ等を埋めることとなる。」と記載されている(上記1(1)ア(エ)) ことから、甲1A発明の「厚さ60μm、MI15で2mm長のガラス繊維を30重量%混入した(ガラス繊維20g/m2、樹脂50g/m2)高密度ポリエチレンフィルム」は、本件特許発明1の「強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%である樹脂供給材料」に相当する。
そうすると、両者は、
「繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料であって、強化繊維(織物基材の形態を除く)と、樹脂からなり、下記式(I)で表される、前記強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%以下である樹脂供給材料。
Wfi=Wf1/(Wf1+Wr1)×100(%)・・・(I)
Wf1:樹脂供給材料内繊維重量(g)
Wr1:樹脂供給材料内樹脂重量(g)」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-A>
強化繊維の形態について、本件特許発明1は、「ウェブ(織物基材の形態を除く)」と特定されているのに対し、甲1A発明は「2mm長の繊維」である点。
<相違点1-B>
樹脂について、本件特許発明1は、「該ウェブに含浸された」と特定されているのに対し、甲1A発明はそのような特定がされていない点。
<相違点1-C>
樹脂について、本件特許発明1は、「熱硬化性樹脂」と特定されているのに対し、甲1A発明は「高密度ポリエチレン」である点。
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点1-A>及び<相違点1-B>について
甲1には、その【請求項1】に、「・・・前記積層工程において、長さ0.1~5mmの無機短繊維を含む熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも1枚積層することを特徴とする繊維複合体の製造方法。」と記載され、また、段落【0022】に、「請求項1記載の本発明によると、積層工程において、0.1~5mmの無機短繊維を含む熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも1枚積層するので、この無機短繊維および樹脂等が、マット状物に均等に分散するとともに、マット状物のニードルパンチング孔や局所的くぼみ等を埋めることとなる。」と記載されていることから、甲1には、強化繊維の形態として、「単繊維」を使用することを前提とした事項しか開示されておらず、単繊維を「ウェブ(織物基材の形態を除く)」に代替する動機付けとなるような記載があるとはいえないし、たとえその他の証拠を参照したとしても、むしろ代替することに阻害要因があるといえる。
<相違点1-C>について
甲1A発明の樹脂である高密度ポリエチレン」は、熱可塑性樹脂であり、甲1には、その【請求項1】に、「・・・前記積層工程において、長さ0.1~5mmの無機短繊維を含む熱可塑性樹脂フィルムを、少なくとも1枚積層することを特徴とする繊維複合体の製造方法。」と記載され、また、段落【0019】に、「プレス、ロールともに圧縮する際には、熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱されているのが好ましい。この際圧縮されると、溶融した熱可塑性樹脂は無機繊維中に含浸される。」と記載されているように、甲1には、樹脂として、「熱可塑性樹脂」を使用することを前提とした事項しか記載されておらず、熱可塑性樹脂を「熱硬化性樹脂」に代替する動機付けとなるような記載があるとはいえないし、たとえその他の証拠を参照したとしても、むしろ代替することに阻害要因があるといえる。
よって、本件特許発明1は甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2、3、6、7、10、11、22ないし24について
本件特許発明2、3、6、7、10、11、22ないし24はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、本件特許発明2、3、7、10、11、22ないし24も、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2、3、6、7、10、11、22ないし24も同様に、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)取消理由2(甲2を主引用文献とする新規性及び進歩性)について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2A発明とを対比すると、甲2A発明の「繊維質シ-ト複合体の製造方法」、「ポリプロピレン」は、本件特許発明1の「繊維強化樹脂の成形」、「樹脂」に相当する。また、甲2A発明の「ガラス繊維」は、不織布シートであるから、本件特許発明1の「強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)」に相当する。そして、当該ガラス繊維の繊維重量含有率は、30%である。
さらに、甲2には、不織布シート中の有機繊維は加熱工程でその大部分が溶融し、水滴状となってガラス繊維に付着すること、及び金型による圧縮工程でガラス繊維が圧縮されると、この水滴状の溶融樹脂もガラス繊維上を移動する旨記載されている(上記1(2)ア(ウ)) ことから、甲2A発明の「不織布シート(ポリプロピレン繊維:ガラス繊維(直径10μm、繊維長50~100mm):バインダー=60:30:10(重量比)、厚み0.45mm、密度0.2g/cm2)」は、本件特許発明1の「強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%である樹脂供給材料」に相当する。
そうすると、両者は、
「繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料であって、
強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)と、樹脂からなり、下記式(I)で表される、
前記強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%以下である樹脂供給材料。
Wfi=Wf1/(Wf1+Wr1)×100(%)・・・(I)
Wf1:樹脂供給材料内繊維重量(g)
Wr1:樹脂供給材料内樹脂重量(g)」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-B>
樹脂について、本件特許発明1は、「該ウェブに含浸された」と特定されているのに対し、甲2A発明はそのような特定がされていない点。
<相違点2-C>
樹脂について、本件特許発明1は、「熱硬化性樹脂」と特定されているのに対し、甲2A発明は「ポリプロピレン」である点。
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点2-B>について
甲2には、その請求項1に、「・・・ガラス繊維と有機繊維と必要に応じてそれらの結合剤とを含有する不織布シート」と記載されているように、樹脂である有機繊維は、強化繊維であるガラス繊維と混抄して使用する事項しか記載されておらず、樹脂を「ウェブに含浸」させる動機付けとなるような記載があるとはいえない、たとえその他の証拠を参照したとしても、むしろ代替することに阻害要因があるといえる。
<相違点2-C>について
甲2A発明の樹脂である「ポリプロピレン」は、熱可塑性樹脂であり、甲2には、その請求項1に、「ガラス繊維と有機繊維とを含有する不織布基材の片面又は両面に、ガラス繊維と有機繊維と必要に応じてそれらの結合剤とを含有する不織布シートを積層し、この積層体を前記不織布基材中の有機繊維の融点又は前記不織布シートの有機繊維の融点のいずれか高い方の温度以上に加熱し、これらの有機繊維を溶融し滴状の溶融物となし、該滴状の溶融物により骨格となるガラス繊維同士をその交点において接着せしめることを特徴とする繊維質シート複合体の製造方法。」と記載されているように、甲2には、樹脂として、「熱可塑性樹脂」を使用することを前提とした事項しか記載されておらず、熱可塑性樹脂を「熱硬化性樹脂」に代替する動機付けとなるような記載があるとはいえないし、たとえその他の証拠を参照したとしても、むしろ代替することに阻害要因があるといえる。
よって、本件特許発明1は甲2に記載された発明であるとはいえないし、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2、3、5ないし7、10、11、22ないし24について
本件特許発明2、3、5ないし7、10、11、22ないし24はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないから、本件特許発明2、3、5、7、10、11、22ないし24も、甲2に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2、3、5ないし7、10、11、22ないし24も同様に、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明4
本件特許発明4と甲2B発明とを対比すると、上記アで検討したのと同様に、甲2B発明の「繊維質シ-ト複合体の製造方法」、「ポリプロピレン」、「ガラス繊維」、「不織布シート(ポリプロピレン繊維:ガラス繊維(直径10μm、繊維長50~100mm):バインダー=60:30:10(重量比)、厚み0.45mm、密度0.2g/cm2)」は、本件特許発明4の「繊維強化樹脂の成形」、「樹脂」、「強化繊維(織物基材の形態を除く)」、「樹脂供給材料」に相当する。
そうすると、両者は、
「繊維強化樹脂の成形に用いる強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)と、樹脂からなり、樹脂供給材料に用いるための強化繊維の使用方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-b>
樹脂について、本件特許発明4は、「該ウェブに含浸された」と特定されているのに対し、甲2B発明はそのような特定がされていない点。
<相違点2-c>
樹脂について、本件特許発明4は、「熱硬化性樹脂」と特定されているのに対し、甲2B発明は「ポリプロピレン」である点。
<相違点2-3>
本件特許発明4が、「下記式(V)で表される、前記強化繊維の成形前と成形後の厚み変化率Rが1.1~10の範囲内になるウェブとして使用する
R=t0/t1・・・(V)
t0:ウェブの初期厚み(mm)
t1:ウェブに0.1MPaで加圧した状態の厚み(mm)」と特定しているのに対し、甲2B発明はそのような特定がされていない点。
そこで、上記相違点について検討するに、上記<相違点2-b>及び<相違点2-c>は、上記<相違点2-B>及び<相違点2-C>と同じである。
そうすると、上記<相違点2-3>について検討するまでもなく、上記アで検討したのと同様、本件特許発明4は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由3(甲3を主引用文献とする新規性及び進歩性)について
ア 本件特許発明1
本件特許発明1と甲3A発明とを対比する。
甲3A発明の「熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維長が0.3mm~25mmの範囲である金属繊維、炭素繊維等の導電性繊維が0.4~30重量部、充填剤が50~150重量部の範囲である樹脂組成物」は、樹脂組成物をガラス繊維マツトに積層し、加圧して上記樹脂をガラス繊維マツトに含浸させ、加熱加圧し、硬化成形するものであるから、本件特許発明1の「繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料」に相当する。
また、甲3A発明の「金属繊維、炭素繊維等の導電性繊維」は、織物基材の形態とはなっていないから、本件特許発明1の「強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)」と「強化繊維(織物基材の繊維を除く)」の限りで相当する。
そして、上記導電性繊維が、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.4~30重量部含有されていて、導電性繊維の繊維重量含有率Wfiは、0.99~23.1重量%である(=0.4/(100+0.4)×100~30/(100+30)×100)といえるから、甲3A発明は、本件特許発明1の強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%以下である点を満足している。
そうすると、両者は、
「繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料であって、
強化繊維(織物基材の形態を除く)と樹脂からなり、該樹脂は熱硬化性樹脂であり、下記式(I)で表される、
前記強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%以下である樹脂供給材料。
Wfi=Wf1/(Wf1+Wr1)×100(%)・・・(I)
Wf1:樹脂供給材料内繊維重量(g)
Wr1:樹脂供給材料内樹脂重量(g)」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-A>
強化繊維の形態について、本件特許発明1は、「ウェブ」と特定されているのに対し、甲3A発明は単繊維である点。
<相違点3-B>
樹脂について、本件特許発明1は、「該ウェブに含浸された」と特定されているのに対し、甲3A発明はそのような特定がされていない点。
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点3-A>及び<相違点3-B>について
甲3には、その請求項1に、「熱硬化性樹脂と導電性繊維と充填剤とを主体とする樹脂組成物をガラス繊維マツトに積層し、加圧して上記樹脂をガラス繊維マツトに含浸させ、加熱加圧し、硬化成形して得られた成形体の両側面に絶縁層を積層することを特徴とする面発熱体の製造方法。」と記載され、第3欄第22~31行に、「本発明において、成形体を作成する具体的な方法としては、チヨツプドスランドマツト、ロービングクロス、コンテイニユアスストランドマツト、ガラスペーパーの如きガラス繊維マツトを上記組成物の層に重ね合わせ、ロール等で加圧すると、熱硬化性樹脂と充填剤はガラス繊維マツトに含浸させるが、導電性繊維は該マツトに含浸されずに該マツト表面上にのこり、層状になるので、これを加熱加圧し、硬化成形する方法が採用される。」と記載されていることから、甲3には、強化繊維の形態として、「単繊維」を使用することを前提とした事項しか開示されておらず、単繊維を「ウェブ(織物基材の形態を除く)」に代替する動機付けとなるような記載があるとはいえないし、たとえその他の証拠を参照したとしても、むしろ代替することに阻害要因があるといえる。
よって、本件特許発明1は甲3に記載された発明であるとはいえないし、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2、6、7、10、11、22ないし24について
本件特許発明2、6、7、10、11、22ないし24はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえないから、本件特許発明2、7、10、11、22ないし24も、甲3に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2、6、7、10、11、22ないし24も同様に、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)取消理由4(甲4を主引用文献とする新規性及び進歩性)について
ア 本件特許発明1
本件特許発明1と甲4A発明とを対比すると、甲4A発明の「リブ構造を有する強化繊維複合材料の成形品の製造方法」、「ポリプロピレン樹脂又はナイロン6樹脂」は、本件特許発明1の「繊維強化樹脂の成形」、「樹脂」に相当する。また、甲4A発明の「炭素繊維マット」は、織物基材の形態とはなっていないから、本件特許発明1の「強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)」に相当する。
そして、甲4の実施例を参照すれば、繊維重量分率が異なる(即ち、樹脂含有率が異なる)複数の成形材料を積層してプレス成形していることから、各成形材料間における樹脂の移動(供給)は当然に生じていると判断される。そうすると、甲4A発明の「炭素繊維マットとポリプロピレン樹脂フィルム又はナイロン6樹脂フィルムとからなる、繊維重量分率が2.7、14.8、18.2、22.0、28.6wt%の成形材料」は、本件特許発明1の「強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%以下である樹脂供給材料」に相当する。
そうすると、両者は、
「繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料であって、強化繊維からなるウェブ(織物基材の形態を除く)と、該ウェブに含浸された樹脂からなり、下記式(I)で表される、前記強化繊維の繊維重量含有率Wfiが30%以下である材料。
Wfi=Wf1/(Wf1+Wr1)×100(%)・・・(I)
Wf1:樹脂供給材料内繊維重量(g)
Wr1:樹脂供給材料内樹脂重量(g)」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4-C>
樹脂について、本件特許発明1は、「熱硬化性樹脂」と特定されているのに対し、甲4A発明は「ポリプロピレン又はナイロン6」である点。
そこで、上記<相違点4-C>について検討する。
<相違点4-C>は、実質的な相違点である。また、甲4A発明の樹脂である「ポリプロピレン又はナイロン6」は、熱可塑性樹脂であり、甲4には、段落【0001】に「本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いプレス成形でリブ構造を有する成形品を製造する方法に関する。」と記載され、請求項2に「前記プレス成形が、以下の工程(I)~(IV)を含む、請求項1に記載のリブ構造を有する成形品の製造方法。工程(I):プリフォームを、該プリフォームに含まれる熱可塑性樹脂の軟化温度あるいは融点以上に加熱する工程。」と記載されているように、甲4には、樹脂として、「熱可塑性樹脂」を使用することを前提とした事項しか記載されておらず、「熱可塑性樹脂」を「熱硬化性樹脂」に代替する動機付けとなるような記載があるとはいえないし、たとえその他の証拠を参照したとしても、むしろ代替することに阻害要因があるといえる。
よって、本件特許発明1は甲4に記載された発明であるとはいえないし、また、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2、6ないし11、22ないし24について
本件特許発明2、6ないし11、22ないし24はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえないから、本件特許発明2、7ないし11、22ないし24も、甲4に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2、6ないし11、22ないし24も同様に、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由5(明確性要件)である。そこで、この申立理由について検討する。
1 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。
2 検討
特許異議申立人は、上記第4 1(5)において、具体的理由について主張しているので、以下検討する。
本件特許発明12及び13の「前記被膜が閉空間を形成している」ことと、引用する請求項12の「熱可塑性樹脂からなる閉空間を形成する被膜」とは、実質同じ事項を意味することは明らかであり、発明特定事項が重複していることをもって、本件特許発明12及び13が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明12及び13は明確である。
また、請求項12又は請求項13を、直接又は間接的に引用する本件特許発明14ないし21も明確である。
3 申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許の請求項12ないし21に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、申立理由5によっては、本件特許の請求項12ないし21に係る特許を取り消すことはできない。
第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1ないし24に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700538