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特許異議申立

2020-700510

セルロース含有ギヤ

審判番号
2020-700510
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-557002外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年07月21日
審決日
2021年07月02日
公報発行日
2021年10月29日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(F16H) / P1651.161-YAA(F16H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法29条の2特許法184条の13
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第184条の13、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6633821号発明「セルロース含有ギヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6633821号の特許請求の範囲及を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~24、27~32〕について訂正することを認める。 特許第6633821号の請求項1ないし32に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6633821号の請求項1~32に係る特許についての出願は、2019年4月22日(優先権主張 平成30年(2018年)4月23日(以下、「優先日」という。) 日本国、平成31年(2019年)1月7日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和1年12月20日にその特許権の設定登録がされ、令和2年1月22日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、令和平成2年7月21日に特許異議申立人野中恵(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年10月28日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年12月25日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、本件訂正請求に対して、異議申立人は、令和3年4月2日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)~(6)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤ。」とあるのを、 「前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤ。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項7~24、27~32も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤ。」とあるのを、 「前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤ。」に訂正する。 (請求項2の記載を引用する請求項7~24、27~32も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「射出成型品である、請求項1又は2に記載のギヤ。」とあるのを、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み、 前記樹脂組成物が、溶融混練物であり、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有し、 前記ギヤが、射出成型品である、ギヤ。」に訂正する。 (請求項3の記載を引用する請求項7~24、27~32も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「削り出し成形品である、請求項1又は2に記載のギヤ。」とあるのを、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み、 前記樹脂組成物が、溶融混練物であり、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有し、 前記ギヤが、削り出し成形品である、ギヤ。」に訂正する。 (請求項4の記載を引用する請求項7~24、27~32も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「丸棒成型体からの切削加工品である、請求項4に記載のギヤ。」とあるのを 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み、 前記樹脂組成物が、溶融混練物であり、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有し、 前記ギヤが、丸棒成型体からの切削加工品である、ギヤ。」に訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項7~24、27~32も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に 「前記樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のギヤ。」とあるのを 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス3.1~10を有し、 前記樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%を含む、ギヤ。」に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項7~24、27~32も同様に訂正する。) (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1、3~24、27~32について、請求項3~24、27~32は、請求項1を直接または間接的に引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 また、訂正前の請求項2、3~24、27~32について、請求項3~24、27~32は、請求項2を直接または間接的に引用しているものであるから、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。 そして、訂正前の請求項1、3~24、27~32と、訂正前の請求項2、3~24、27~32とは、請求項3~24、27~32が共通している。 したがって、訂正前の請求項1、2、3~24、27~32に対応する訂正後の請求項1~24、27~32は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~24、27~32〕について請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1及び2について ア 訂正の目的について 訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1及び2に特定されている「(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバー」について、「変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み」との限定を加えるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書には「(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーの好適例は、特に限定されないが、例えばセルロースパルプを原料としたセルロースファイバー又はこれらセルロースの変性物の1種以上を用いることが出来る。これらの中でも、安定性、性能などの点から、セルロースの変性物の1種以上が好ましく使用可能である。」(段落【0048】参照。)との記載があるから、変性されたセルロースナノファイバーを含むことを特定することは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のことである。 また、令和2年10月28日付け取消理由通知書において引用した先願である国際出願PCT/JP2018/042050号の請求項1には、「セルロース由来の水酸基の一部が親水性の置換基で変性されたセルロース繊維」が記載されており、親水性の置換基での変性を除くことは、いわゆる「除くクレーム」の形態とするものであって、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項3~5について ア 訂正の目的について 訂正事項3~5は、訂正前の請求項3~5が直接または間接的に引用する請求項1に特定されている「樹脂組成物」について、「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み、 前記樹脂組成物が、溶融混練物であり、」との限定を加えるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3~5は、訂正前の請求項3及び4が訂正前の請求項1又は2を引用し、訂正前の請求項5が訂正前の請求項4を引用する記載であったものを、それぞれの請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1の記載を組み込んで、訂正後の請求項3~5を、独立形式の請求項に改める訂正でもあり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものでもある。 イ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書には「(A)熱可塑性樹脂100質量部に対する(B)セルロースナノファイバーの配合量は、良好な機械的特性、熱安定性及び耐久性の観点から、好ましくは5質量部以上、好ましくは8質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、十分な成形性を得る観点から、50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。」(段落【0071】参照。)及び「本実施形態のギヤは、(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーと、任意にその他の成分とを含む樹脂組成物を溶融混練し、特定の形状の樹脂成形体に成形すること等により製造することができる。」(段落【0266】参照。)との記載があるから、樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含むこと、及び、樹脂組成物が、溶融混練物であることを特定することは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のことであって、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項3~5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3~5は、特許請求の範囲の限定的減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項6について ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項6が直接または間接的に引用する請求項1に特定されている「樹脂組成物」について、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、」との限定を加えるとともに、「チキソトロピーインデックス2~10」の下限値「2」を「3.1」に減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~5のいずれか1項を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1の記載を組み込んで、訂正後の請求項6を、独立形式の請求項に改める訂正でもあり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものでもある。 イ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書には「(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーの好適例は、特に限定されないが、例えばセルロースパルプを原料としたセルロースファイバー又はこれらセルロースの変性物の1種以上を用いることが出来る。これらの中でも、安定性、性能などの点から、セルロースの変性物の1種以上が好ましく使用可能である。」(段落【0048】参照。)との記載があるから、樹脂組成物が、変性されたセルロースナノファイバーを含むことを特定することは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のことである。 そして、令和2年10月28日付け取消理由通知書において引用した先願である国際出願PCT/JP2018/042050号の請求項1には、「セルロース由来の水酸基の一部が親水性の置換基で変性されたセルロース繊維」が記載されており、親水性の置換基での変性を除くことは、いわゆる「除くクレーム」の形態とするものであって、新たな技術的事項を導入するものではない。 また、願書に添付した明細書の段落【0344】の【表5】には、「チキソトロピーインデックス」が「3.1」となる「実施例6」の記載があるから、チキソトロピーインデックスの下限値として「3.1」を特定することは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のことであって、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、特許請求の範囲の限定的減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 3 独立特許要件 本件特許異議申立事件において、請求項1~32が異議申立ての対象となっているので、請求項1~24、27~32に関する訂正である訂正事項1~6は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~24、27~32〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~32に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明32」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~32に記載された事項により特定されるとおりのものであり、特に本件発明1~6、25,26は次のとおりである。 1 本件発明1 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤ。」 2 本件発明2 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるEPS(電動パワーステアリング)用のギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤ。」 3 本件発明3 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み、 前記樹脂組成物が、溶融混練物であり、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有し、 前記ギヤが、射出成型品である、ギヤ。」 4 本件発明4 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み、 前記樹脂組成物が、溶融混練物であり、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有し、 前記ギヤが、削り出し成形品である、ギヤ。」 5 本件発明5 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み、 前記樹脂組成物が、溶融混練物であり、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有し、 前記ギヤが、丸棒成型体からの切削加工品である、ギヤ。」 6 本件発明6 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記ギヤが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス3.1~10を有し、 前記樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%を含む、ギヤ。」 7 本件発明25 「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び 前記駆動ギヤを駆動する駆動源、 を備えるギヤシステムであって、 前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、 前記ウォームホイールが、(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物の射出成形体であるギヤであり、 前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤシステム。」 8 本件発明26 「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び 前記駆動ギヤを駆動する駆動源、 を備えるEPS(電動パワーステアリング)用のギヤシステムであって、 前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、 前記ウォームホイールが、(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物の射出成形体であるギヤであり、 前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有し、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する、ギヤシステム。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1~32に係る特許に対して、当審が令和2年10月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1 (進歩性)本件特許の請求項1~32に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された以下の引用文献1~7に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は取り消すべきものである。 理由2 (拡大先願)本件特許の請求項、1、3~6、15に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた以下の先願に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願の日前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)から、本件特許は取り消すべきものである。 引用文献1:特開2014-136745号公報(異議申立人の提出した甲第1号証) 引用文献2:国際公開2016/140240号(異議申立人の提出した甲第2号証) 引用文献3:伊藤彰浩ほか「セルロースナノファイバー強化ポリアミド6の流動特性と発泡射出成形性」研究報告No.8(2018)、京都市産業技術研究所、2018年、第1~7頁(異議申立人の提出した甲第5号証) 引用文献4:伊藤彰浩「セルロースナノファイバー強化樹脂材料の発泡成形」、ケミカルエンジニアリング2017年6月号、32-36頁(異議申立人の提出した甲第7号証) 引用文献5:特開2002-96366号公報(異議申立人の提出した甲第3号証) 引用文献6:特開2016-200185号公報(異議申立人の提出した甲第9号証に記載された公報) 引用文献7:特開2013-248824号公報(異議申立人の提出した甲第9号証に記載された公報) 先願:国際出願PCT/JP2018/042050号(国際公開2019/098210号、優先日2017年11月16日、2018年7月2日、国際出願日2018年11月14日、国際公開日2019年5月23日。異議申立人の提出した甲第8号証) 2 引用文献の記載等 (1)引用文献1の記載等 本件特許の優先日前に頒布された引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア 「【0052】 その他、本発明のポリアミド樹脂成形体が適用される成形体としては、(中略)コピー機用ギア、(中略)ワイパーモーターギア、(中略)が挙げられる。」 イ 「【0055】 実施例2 セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY100S(ダイセルファインケム社製:平均繊維径が140nmのセルロース繊維が25質量%含有されたもの)を使用した。このセルロース繊維の水分散液98質量部と、ε-カプロラクタム216質量部と、アミノカプロン酸44質量部と、精製水157質量部とを、均一な分散液となるまでミキサーで攪拌、混合した。続いて、この混合分散液を徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、240℃まで温度を上げ、240℃にて1時間攪拌し、重合反応を行った。重合が終了した時点で得られた樹脂組成物を払い出し、これを切断してペレットとした。得られたペレットを95℃の熱水で処理し、精練を行い、乾燥させた。 得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の条件にて射出成形して、試験片、エンジンカバーおよび筺体を得た。」 ウ 引用文献1の段落【0063】の【表1】からは、ポリアミド樹脂が「ナイロン6」であり、セルロース繊維が「KY100S」という種類であり、セルロース繊維の平均繊維径が88nmであり、ポリアミド樹脂100質量部に対するセルロース繊維の含有量10.0質量部である「実施例2」のものは、曲げ強度「178MPa」及び引張降伏強度「95MPa」の特性であることが読み取れる。 以上の記載事項を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明1] 「ナイロン6と、平均繊維径88nmであるセルロース繊維とを含む樹脂組成物で構成されたポリアミド樹脂成形体であって、前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する、ポリアミド樹脂成形体。」 (2)引用文献2の記載等 本件特許の優先日前に頒布された引用文献2には、次の事項が記載されている。 ア 「[0043] 本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形することにより、成形体とすることができる。(省略) [0044] 本発明のポリアミド樹脂組成物は、良好な色調を有しつつ、高粘度であることにより優れた機械的強度を有する。このため、本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車用途、電気電子機器用途、農業・水産用途、医療用機器用途、雑貨等に好適に供することができる。 [0045] 自動車用途としては、例えば、(中略)ワイパーモーターギア、(中略)が挙げられる。」 イ 「[0063] 実施例1 [セルロース繊維の水分散液の調整] セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY110N(ダイセルファインケム社製:平均繊維径が125nmのセルロース繊維が15質量%含有されたもの)を用いた。この水分散液に精製水を加えてミキサーで撹拌することで、セルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液を調製した。 [0064][溶融重合] 得られたセルロース繊維の水分散液70質量部と、ε-カプロラクタム100質量部とを、均一な分散液となるまでさらにミキサーで撹拌、混合した。この混合分散液を撹拌し、0.7MPaの圧力に制圧しながら、4時間かけて240℃に昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、240℃にて0.5時間溶融重合をおこなった。」 ウ 「[0068] 実施例2~8、比較例2 [溶融重合] 実施例1と比べて、セルロース繊維の含有量、重合触媒の使用の有無と使用時にはその種類および含有量、反応時間を、表1に記載のとおりに変更した。それ以外は実施例1と同様に溶融重合をおこなった。」 エ 引用文献2の段落[0088]の[表1]からは、モノマーのε-カプロラクタム100質量部に対して「KY110N」という、平均繊維径が「75nm」であるセルロース繊維を20重量部加えて熔融重合した「実施例4」のものは、曲げ強度が195MPaであることが読み取れる。そして、モノマーとしてのε-カプロラクタムを溶融重合するとポリアミド樹脂組成物のポリアミド6になり、当該ポリアミド6の重量は、モノマーとして配合したε-カプロラクタムの重量に等しいと認められる。 上記の記載事項及び認定事項を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明2] 「ポリアミド6と、平均繊維径75nmであるセルロース繊維とを含むポリアミド樹脂組成物で構成された成形体であって、前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する、成形体。」 (3)先願 上記先願に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。 ア「[0074] 本発明の摺動部材は、機械特性(特に曲げ特性)のみならず摺動性にも優れていることから、電気用品、事務機・動力機器の軸受け、各種ギア、カム、ベアリング、メカニカルシールの端面材、バルブの弁座、Vリング、ロッドパッキン、ピストンリング、圧縮機の回転軸・回転スリーブ、ピストン、インペラー、ベーン、ローター等として用いることができる。」 イ「[0082]B.原料 (1)ポリアミド樹脂モノマー成分 ・ε-カプロラクタム:宇部興産社製 [0083](2)セルロース繊維 ・KY100G:ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100G、平均繊維径が125nmの未変性のセルロース繊維が10質量%含有されたもの。 ・KY100S:ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100S、平均繊維径が140nmの未変性のセルロース繊維が25質量%含有されたもの。」 ウ 「[0092]実施例1 セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY100Gを用いて、これに精製水を加えてミキサーで撹拌し、セルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液を調製した。 このセルロース繊維の水分散液100質量部と、ε-カプロラクタム100質量部とを、均一な分散液となるまでさらにミキサーで撹拌、混合した。続いて、この混合分散液を重合装置に投入後、撹拌しながら240℃に加熱し、徐々に水蒸気を放出しつつ、0MPaから0.5MPaの圧力まで昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、240℃で1時間重合反応をおこなった。重合が終了した時点で樹脂組成物をストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。 得られたペレットを95℃の熱水で精練した後、乾燥して、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。 [0093]実施例2~4 セルロース繊維の含有量が表1に示す値になるように、セリッシュKY100Gの配合量を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、乾燥した樹脂組成物のペレットを得た。」 エ 段落[0118]の[表1]からは、PA6(ポリアミド6)100質量部に対して、種類が「KY100G」であるセルロース繊維10質量部とした実施例3の曲げ強度が172MPaであることが読み取れる。 上記の記載事項を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。 [先願発明] 「ポリアミド6と、平均繊維径が125nmの未変性のセルロース繊維とを含む樹脂組成物で構成された摺動部材である各種ギアであって、 前記ポリアミド6を100質量部に対して前記セルロース繊維を10質量部含有する、各種ギア。」 (4)引用文献3の記載 本件特許の優先日前に頒布された引用文献3には、次の事項が記載されている。 「しかしセルロースは230~240℃を超えると分解が始まるため,成形温度の高い樹脂との複合化は困難であった。その状況下,セルロースに特定の疎水化学変性を行うことで耐熱性が向上し、ポリアミド6樹脂(PA6)などの加工温度の高いプラスチックに対しても熱劣化を抑えつつ複合化することが可能になったことが報告されている。さらにこの疎水化学変性はセルロース同士の水素結合を抑え,溶融混錬時の解繊性を高めることが確かめられている。それにより,CNFではなく数十ミクロンの幅を有するパルプを変性したのちプラスチックとの熔融混錬することで変性CNF強化プラスチックを得ることが可能になった。」(第1頁左欄13行~右欄2行) (5)引用文献4の記載等 本件特許の優先日前に頒布された引用文献4には、次の事項が記載されている。 ア「ところが,セルロースは230~240℃を超えると分解が始まるため,従来成形温度の高い樹脂との複合化は困難であった.しかしセルロースにある種の化学変性を行うことで耐熱性の向上が確認され,PPよりも成形温度の高いポリアミド6(PA6)に対しても熱劣化を抑えつつ複合化することが可能になる。さらにこの疎水化学変性はセルロース同士の水素結合を抑え,溶融混錬時の解繊性およびセルロース/樹脂の接着性も高める効果を有する.これにより現在は,CNFを樹脂と複合化するのではなく、化学変性したパルプなどの比較的太いセルロース繊維束を樹脂との混錬時にCNFへと解繊する方法へと効率化を果たしている.」(第32頁右欄7~21行) イ 第34頁左欄の図3のグラフの、周波数0.16Hzのときの複素粘性率と、周波数1.6Hzのときの複素粘性率に注目すると、変性CNF10%の曲線の、周波数0.16Hzのときの複素粘性率が180000Paであり、周波数1.6Hzのときの複素粘性率が21000Paと読めるから、測定対象の変性CNF/PA6のチキソトロピーインデックスは180000/21000≒8.6であると解され、同様に、変性CNF5%の曲線から、測定対象の変性CNF/PA6のチキソトロピーインデックスは21000/3300≒6.4であり、変性CNF3%の曲線から、測定対象の変性CNF/PA6のチキソトロピーインデックスは8300/2000≒4.2であると解される。 (6)引用文献5の記載等 本件特許の優先日前に頒布された引用文献5には、次の事項が記載されている。 ア「【0060】 【実施例5~7】レオナ1300Sを用いて、TR50S2成形機の加熱筒中央部に設けられたガス注入部より、二酸化炭素の溶解量が0.32重量%となるように、加熱筒内の溶融樹脂中に二酸化炭素を溶解させた後、二酸化炭素ガスにより4.8MPaに圧力調整された金型キャビティに充填することにより、図2、図3に示したφ60ギアを得た。成形歯車の内部に発泡層を有するように、保圧の設定値を充填圧の35%、50%、85%にそれぞれ相当する値とした。射出成形された歯車の断面を観察し、発泡部分の有無を確認し、得られた歯車の真円度を測定した。結果を表2に示す。」 イ 引用文献5の表2の真円度の欄の数値の記載から、実施例5、6及び7の成形歯車の真円度は、それぞれ36μm、22μm及び28μmであることが読み取れる。 (7)引用文献6の記載等 本件特許の優先日前に頒布された引用文献6には、次の事項が記載されている。 「【0002】 たとえば、電動パワーステアリング装置は、操舵補助用の電動モータの回転を、減速機を介して減速すると共に出力を増幅して転舵機構に伝える。これにより、運転者の操作による転舵機構の動作をトルクアシストする。その減速機は、通常、互いに噛み合う小歯車としての金属製ウォームと、大歯車としての樹脂製ウォームホイールとを備えている。ウォームホイールは、たとえば、金属製の芯金(スリーブ)の外周に、射出成形(インサート成形)等によって円環状の樹脂部材を形成後、樹脂部材の外周に切削加工等によって歯を形成することによって製造される。樹脂部材は、例えば、ポリアミド(PA6、PA66、PA46等)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)等の樹脂を用いて形成される。」 (8)引用文献7の記載等 本件特許の優先日前に頒布された引用文献7には、次の事項が記載されている。 「【0017】 第一の複合材料は、CNFおよび樹脂の他、フィラー、難燃助剤、難燃剤、酸化防止剤、離形剤、分散剤等の添加剤を、機械的物性が阻害されない程度に含有しても良い。(中略)離型剤としては、高級アルコール、カルボン酸エステル、ポリオレフィンワックス、ポリアルキレングリコールなどを使用できる。分散剤としては、CNFの樹脂への分散性を向上できるものであればよく、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤、高分子型分散剤等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。」 (9)甲第4号証 本件特許の優先日前に頒布され、異議申立人の提出した甲第4号証:Takeshi SEMBAほか「Biocomposites Composed of Polyamide 11 and Cellulose Nanofibers Pretreated with a Cationic Reagents」Nihon Reoroji Gakkaishi Vol.45 No.1(2017)、39-47のFig.3.の、「No treatment」の曲線の横軸「1.E+00/sec」「1.E+01/sec」に対する縦軸の数値は、それぞれ、およそ「40000Pa・sec」「10000Pa・sec」と読めるから、測定対象の、表面処理していないセルロースナノファイバ/ポリアミド11複合材料について、せん断速度1/sのときの粘度が40000Pa・sであり、せん断速度10/sのときの粘度が10000Pa・sであると解される。 3 当審の判断 (1)請求項1の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明1の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明1と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 [相違点1] 本件発明1は、樹脂成形体が「ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点2] 本件発明1の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明1は、「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する」構成である点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点2について検討する。 引用発明1のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換える動機付けは、引用文献1中に置換可能性について記載も示唆もないことから、ないといえる。 また、仮に引用発明1のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換えることができたとしても、その置き換えた後の樹脂組成物の、250℃(ナイロン6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを2~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明1の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明1と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点3及び4で相違する。 [相違点3] 本件発明1は、樹脂成形体が「ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成が特定されていない点。 [相違点4] 本件発明1の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明2は、「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する」構成である点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点4について検討する。 引用発明2のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換える動機付けは、引用文献2中に置換可能性について記載も示唆もないことから、ないといえる。 また、仮に引用発明2のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換えることができたとしても、その置き換えた後の樹脂組成物の、250℃(ナイロン6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを2~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明1の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明1と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含むギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点5及び6で相違する。 [相違点5] 本件発明1は、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明は、このような構成が特定されていない点。 [相違点6] 本件発明1の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、先願発明は、「未変性のセルロース繊維」を含む樹脂組成物で構成される点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点6について検討する。 「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(本件特許の明細書の段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であり、上記相違点6は設計上の微差とはいえず、発明の実質的な相違点であるといえるから、本件発明1は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (2) 請求項2の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明2と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明2の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明2と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点7及び8で相違する。 [相違点7] 本件発明2は、樹脂成形体が「EPS(電動パワーステアリング)用のギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点8] 本件発明2の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明1は、「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する」構成である点。 (イ)判断 相違点8は上記(1)ア(ア)の相違点2と同じであるから、上記(1)ア(イ)と同様の理由により、本件発明2は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明2の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明2と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点9及び10で相違する。 [相違点9] 本件発明2は、樹脂成形体が「EPS(電動パワーステアリング)用のギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成が特定されていない点。 [相違点10] 本件発明2の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明2は、「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する、」構成である点。 (イ)判断 相違点10は上記(1)イ(ア)の相違点4と同じであるから、上記(1)イ(イ)と同様の理由により、本件発明2は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明2と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明2の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明2と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含むギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点11及び12で相違する。 [相違点11] 本件発明2は、ギヤが「EPS(電動パワーステアリング)用のギヤ」であって、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明は、このような構成が特定されていない点。 [相違点12] 本件発明2の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、先願発明は、「未変性のセルロース繊維」を含む樹脂組成物で構成される点。 (イ)判断 相違点12は上記(1)ウ(ア)の相違点6と同じであるから、上記(1)ウ(イ)と同様の理由により、本件発明2は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (3) 請求項3の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明3と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明3の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1のセルロース繊維の平均繊維径は88nmであるから、引用発明1の「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する」との数値限定は、本件発明3の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明3と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点13及び14で相違する。 [相違点13] 本件発明3は、樹脂成形体が「射出成型品である、ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点14] 本件発明3の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点14について検討する。 引用発明1の樹脂組成物は、セルロース繊維とε-カプロラクタムを含む水分散液から「溶融重合」(上記2(1)イ等参照。)したものとして引用文献1に記載されており、これを「溶融混練物」の樹脂組成物に置き換える動機付けはない。 また、仮に引用発明1のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換えることができたとしても、その置き換えた後の樹脂組成物の、250℃(ナイロン6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを2~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 そうすると、相違点13について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明3と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明3の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明2のセルロース繊維の平均繊維径は75nmであるから、引用発明2の「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する」との数値限定は、本件発明3の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明3と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点15及び16で相違する。 [相違点15] 本件発明3は、樹脂成形体が「射出成型品である、ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。 [相違点16] 本件発明3の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点16について検討する。 引用発明2の樹脂組成物は、セルロース繊維とε-カプロラクタムを含む水分散液から「溶融重合」(上記2(2)イ等参照。)したものとして引用文献2に記載されており、これを「溶融混練物」の樹脂組成物に置き換える動機付けはない。 また、仮に引用発明2のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換えることができたとしても、その置き換えた後の樹脂組成物の、250℃(ポリアミド6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを2~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 そうすると、相違点15について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明3と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明3の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 また、先願発明のセルロース繊維の平均繊維径は125nmであるから、先願発明の「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10重量部含有する」との数値限定は、本件発明3の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明3と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含むギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点17及び18で相違する。 [相違点17] 本件発明3は、ギヤが「射出成型品である、ギヤ」であって、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明の各種ギヤは、このような構成を有しない点。 [相違点18] 本件発明3の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、先願発明は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点18について検討する。 先願発明の樹脂組成物は、セルロース繊維とε-カプロラクタムを含む水分散液から「溶融重合」(上記2(3)ウ等参照。)したものとして先願明細書に記載されており、「溶融混練物」の樹脂組成物と異なる。 また、先願明細書の記載を参照しても、先願発明の樹脂組成物の、250℃(ポリアミド6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、上記相違点18は設計上の微差とはいえず、発明の実質的な相違点であるといえるから、本件発明3は、先願発明と同一でない。 そうすると、相違点17について検討するまでもなく、本件発明3は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (4) 請求項4の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明4と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明4の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1のセルロース繊維の平均繊維径は88nmであるから、引用発明1の「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する」との数値限定は、本件発明4の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明4と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点19及び20で相違する。 [相違点19] 本件発明4は、樹脂成形体が「削り出し成型品である、ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点20] 本件発明4の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 相違点20は上記(3)ア(ア)の相違点14と同じであるから、上記(3)ア(イ)と同様の理由により、本件発明4は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明4と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明3の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明2のセルロース繊維の平均繊維径は75nmであるから、引用発明2の「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する」との数値限定は、本件発明4の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明4と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点21及び22で相違する。 [相違点21] 本件発明4は、樹脂成形体が「削り出し成型品である、ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成が特定されていない点。 [相違点22] 本件発明4の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 相違点22は上記(3)イ(ア)の相違点16と同じであるから、上記(3)イ(イ)と同様の理由により、本件発明4は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明4と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明4の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 また、先願発明のセルロース繊維の平均繊維径は125nmであるから、先願発明の「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10重量部含有する」との数値限定は、本件発明4の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明4と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含むギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点23及び24で相違する。 [相違点23] 本件発明4は、ギヤが「削り出し成型品である、ギヤ」であって、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明は、このような構成が特定されていない点。 [相違点24] 本件発明4の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、先願発明は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 相違点24は上記(3)ウ(ア)の相違点18と同じであるから、上記(3)ウ(イ)と同様の理由により、本件発明4は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (5) 請求項5の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明5と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明5の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1のセルロース繊維の平均繊維径は88nmであるから、引用発明1の「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する」との数値限定は、本件発明5の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明5と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点25及び26で相違する。 [相違点25] 本件発明5は、樹脂成形体が「丸棒成型体からの切削加工品である、ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点26] 本件発明5の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 相違点26は上記(3)ア(ア)の相違点14と同じであるから、上記(3)ア(イ)と同様の理由により、本件発明5は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明5と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明5の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明2のセルロース繊維の平均繊維径は75nmであるから、引用発明2の「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する」との数値限定は、本件発明5の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明5と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点27及び28で相違する。 [相違点27] 本件発明5は、樹脂成形体が「丸棒成型体からの切削加工品である、ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。 [相違点28] 本件発明5の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 相違点28は上記(3)イ(ア)の相違点16と同じであるから、上記(3)イ(イ)と同様の理由により、本件発明5は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明5と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明5の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 また、先願発明のセルロース繊維の平均繊維径は125nmであるから、先願発明の「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10重量部含有する」との数値限定は、本件発明5の「前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含み」の数値範囲に含まれる。 したがって、本件発明5と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーを5~50質量部含むギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点29及び30で相違する。 [相違点29] 本件発明5は、ギヤが「丸棒成型体からの切削加工品である、ギヤ」であって、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明は、このような構成を有しない点。 [相違点30] 本件発明5の樹脂組成物は、「溶融混練物であり、前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有」するのに対し、先願発明は、このような構成を有しない点。 (イ)判断 相違点30は上記(3)ウ(ア)の相違点18と同じであるから、上記(3)ウ(イ)と同様の理由により、本件発明5は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (6) 請求項6の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明6と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明1の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1の「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部」は、本件発明6の「(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%」の範囲内のものである。 したがって、本件発明6と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%を含む、樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点31及び32で相違する。 [相違点31] 本件発明6は、樹脂成形体が「ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点32] 本件発明6の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス3.1~10を有」するのに対し、引用発明1は、セルロース繊維が変性されたものとの特定はなく、樹脂組成物のチキソトロピーインデックスが不明である点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点32について検討する。 引用発明1のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換える動機付けは、引用文献1中に置換可能性について記載も示唆もないことから、ないといえる。 また、仮に引用発明1のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換えることができたとしても、その置き換えた後の樹脂組成物の、250℃(ナイロン6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、3.1~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、3.1~10の範囲にあるかどうかは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを3.1~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 したがって、相違点31について検討するまでもなく、本件発明6は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明1の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 また、引用発明2の「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部」の数値範囲は、本件発明6の「(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%」の数値範囲内のものである。 したがって、本件発明6と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%を含む、樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点33及び34で相違する。 [相違点33] 本件発明6は、樹脂成形体が「ギヤ」であり、「前記ギヤが、真円度400μm以 下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成が特定されていない点。 [相違点34] 本件発明6の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス3.1~10を有」するのに対し、引用発明2は、セルロース繊維が変性されたものとの特定はなく、樹脂組成物のチキソトロピーインデックスが不明である点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点34について検討する。 引用発明2のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換える動機付けは、引用文献2中に置換可能性について記載も示唆もないことから、ないといえる。 また、仮に引用発明2のセルロース繊維を、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含むものに置き換えることができたとしても、その置き換えた後の樹脂組成物の、250℃(ポリアミド6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、3.1~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、3.1~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを3.1~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 したがって、相違点33について検討するまでもなく、本件発明6は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明6と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明6の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 また、先願発明の「前記ポリアミド6を100質量部に対して前記セルロース繊維を10質量部」は、本件発明6の「(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%」の範囲内のものである。 したがって、本件発明6と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、 前記樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂45~95質量%、及び(B)セルロースナノファイバー5~50質量%を含む、ギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点35及び36で相違する。 [相違点35] 本件発明6は、「前記ギヤが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明は、このような構成が特定されていない点。 [相違点36] 本件発明6の樹脂組成物は、「前記(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーが、変性(但し親水性の置換基での変性は除く)されたセルロースナノファイバーを含み、 前記樹脂組成物が、前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス3.1~10を有」するのに対し、先願発明は、「未変性のセルロース繊維」を含む樹脂組成物で構成される点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点36について検討する。 「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(本件特許の明細書の段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、3.1~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であり、上記相違点36は設計上の微差とはいえず、発明の実質的な相違点であるといえるから、相違点35について検討するまでもなく、本件発明6は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (7) 請求項25の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明25と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明25の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明25と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点37及び38で相違する。 [相違点37] 本件発明25は、樹脂成形体が、「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び前記駆動ギヤを駆動する駆動源、を備えるギヤシステムであって、前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、前記ウォームホイール」の「射出成形体であるギヤ」であり、「前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点38] 本件発明25の樹脂組成物は、「前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明1は、「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する」構成である点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点38について検討する。 引用発明1の樹脂組成物の、250℃(ナイロン6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを2~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 したがって、相違点37について検討するまでもなく、本件発明25は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明25と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明25の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明25と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点39及び40で相違する。 [相違点39] 本件発明25は、樹脂成形体が、「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び前記駆動ギヤを駆動する駆動源、を備えるギヤシステムであって、前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、前記ウォームホイール」の「射出成形体であるギヤ」であり、「前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。 [相違点40] 本件発明25の樹脂組成物は、「前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明2は、「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する」構成である点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点40について検討する。 引用発明2の樹脂組成物の、250℃(ナイロン6の融点225℃より25℃高い温度)におけるチキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあるかどうかは不明であって、その数値範囲を選択する証拠はないし、動機付けがあるともいえない。 そして、本件特許の明細書の「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であるから、チキソトロピーインデックスを2~10の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえない。 したがって、相違点39について検討するまでもなく、本件発明25は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明25と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明25の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明25と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含むギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点41及び42で相違する。 [相違点41] 本件発明25は、樹脂成形体が、「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び前記駆動ギヤを駆動する駆動源、を備えるギヤシステムであって、前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、前記ウォームホイール」の「射出成形体であるギヤ」であり、「前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明は、このような構成を有しない点。 [相違点42] 本件発明25の樹脂組成物は、「前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、先願発明は、「未変性のセルロース繊維」を含む樹脂組成物チキソトロピーインデックスが2~10であるか不明である点。 (イ)判断 事案に鑑み、先に相違点42について検討する。 「チキソトロピーインデックスの上限は、(中略)成形容易性の観点から、10であることが好ましく、(中略)チキソトロピーインデックスの下限は、本実施形態のギヤによる良好な寸法安定性の観点の利点を得る観点から、(中略)好ましくは1.3、より好ましくは2.0である。」(本件特許の明細書の段落【0260】)との記載からみて、チキソトロピーインデックスが、2~10の範囲にあることは発明の本質的な部分であり、上記相違点42は設計上の微差とはいえず、発明の発明の実質的な相違点であるといえるから、本件発明25は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項25に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (8) 請求項26の検討 ア 引用発明1との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明26と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ナイロン6」は、融点225℃の熱可塑性のポリアミド樹脂であるから、本件発明26の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径88nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明25と引用発明1とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点43及び44で相違する。 [相違点43] 本件発明26は、樹脂成形体が、「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び前記駆動ギヤを駆動する駆動源、を備えるEPS(電動パワーステアリング)用のギヤシステムであって、前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、前記ウォームホイール」の「射出成形体であるギヤ」であり、「前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明1は、このような構成を有しない点。 [相違点44] 本件発明26の樹脂組成物は、「前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明1は、「前記ナイロン6を100重量部に対して前記セルロース繊維を10.0重量部含有する」構成である点。 (イ)判断 相違点44は上記(7)ア(ア)の相違点38と同じであるから、上記(7)ア(イ)と同様の理由により、本件発明26は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 イ 引用発明2との対比・判断(進歩性) (ア)対比 本件発明26と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明26の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径75nmであるセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「ポリアミド樹脂組成物」は「樹脂組成物」に、 「成形体」は「樹脂成形体」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明26と引用発明2とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む樹脂成形体。」 の点で一致し、以下の相違点45及び46で相違する。 [相違点45] 本件発明26は、樹脂成形体が、「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び前記駆動ギヤを駆動する駆動源、を備えるEPS(電動パワーステアリング)用のギヤシステムであって、前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、前記ウォームホイール」の「射出成形体であるギヤ」であり、「前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有」するのに対し、引用発明2は、このような構成を有しない点。 [相違点46] 本件発明26の樹脂組成物は、「前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、引用発明2は、「前記ポリアミド6を100重量部に対して前記セルロース繊維を20重量部含有する」構成である点。 (イ)判断 相違点46は上記(7)イ(ア)の相違点40と同じであるから、上記(7)イ(イ)と同様の理由により、本件発明26は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めらない。 ウ 先願発明との対比・判断(拡大先願) (ア)対比 本件発明26と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアミド6」は、融点225℃の熱可塑性ポリアミド樹脂であるから、本件発明1の「(A)熱可塑性樹脂」及び「ポリアミド樹脂」に相当し、以下同様に、 「平均繊維径が125nmである未変性のセルロース繊維」は「(B)平均繊維径1000nm以下であるセルロースナノファイバー」に、 「摺動部材」は「樹脂成形体」に、 「各種ギア」は「ギヤ」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明26と先願発明とは、 「(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径が1000nm以下であるセルロースナノファイバーとを含む樹脂組成物で構成された樹脂成形体であるギヤであって、 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含むギヤ。」 の点で一致し、以下の相違点47及び48で相違する。 [相違点47] 本件発明26は、樹脂成形体が、「従動ギヤと前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤとで構成されるギヤ機構、及び前記駆動ギヤを駆動する駆動源、を備えるEPS(電動パワーステアリング)用のギヤシステムであって、前記ギヤ機構が、ウォームとウォームホイールとで構成されるウォームギヤ機構であり、前記ウォームホイール」の「射出成形体であるギヤ」であり、「前記ウォームホイールが、真円度400μm以下を有」するのに対し、先願発明は、このような構成を有しない点。 [相違点48] 本件発明26の樹脂組成物は、「前記(A)熱可塑性樹脂の融点よりも25℃高い温度におけるチキソトロピーインデックス2~10を有する」のに対し、先願発明は、「未変性のセルロース繊維」を含む樹脂組成物チキソトロピーインデックスが2~10であるか不明である点。 (イ)判断 相違点48は上記(7)ウ(ア)の相違点42と同じであるから、上記(7)ウ(イ)と同様の理由により、本件発明26は、先願発明と同一でない。 エ 小括 本件の請求項26に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 (9)請求項7~24及び27~32について 本件発明7~24、27~32は、本件発明1~6、25又は26の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるので、上記(1)~(8)に示した理由と同様の理由により、引用発明1または2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、先願発明と同一の発明でもないから、本件の請求項7~24及び請求項27~32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないし、特許法第184条の13で読み替えた同法第29条の2の規定に違反してなされたものでもない。 4 異議申立人の主張について (1)特許異議申立書の主張について 異議申立人は、令和平成2年7月21日付け特許異議申立書において、甲第7号証(引用文献4)の第34頁の図3の、変性CNF10%の変性CNF/PA6のチキソトロピーインデックスは8.46であり、変性CNF5%の変性CNF/PA6のチキソトロピーインデックスは6.19であり、変性CNF3%の変性CNF/PA6のチキソトロピーインデックスは4.14であるから、CNF添加量にかかわらず、変性CNF/PA6のチキソトロピーインデックスは2.0~10の範囲にある旨主張する(第19頁下から5行~第22頁末行)。 しかしながら、引用発明1、2のセルロース繊維を変性CNFに置換する理由付けはなく、また仮に置換できたとしても、引用発明1、2における置換後の変性CNF及びPA6と、甲第7号証の第34頁の図3の、測定対象となった変性CNF/PA6における変性CNF及びPA6が同じであることの立証はされていない。 また、異議申立人は、ポリアミド樹脂とセルロースナノフィバーとを含む樹脂組成物がチキソトロピーインデックス2.0~10を有することは普通のことと主張している(第23頁11~13行)。 しかしながら、チキソトロピーインデックス2.0~10であるポリアミド樹脂とセルロースナノフィバーとを含む樹脂組成物の例が甲第7号証に記載されているからといって、先願発明の樹脂組成物が、甲第7号証の樹脂組成物と同じであるとか、チキソトロピーインデックス2.0~10を有することが普通のこととはいえないので、先願発明の樹脂組成物のチキソトロピーインデックスが2.0~10であるとはいえない。 したがって、異議申立人の、令和平成2年7月21日付け異議申立書の主張は採用できない。 (2)意見書の主張について 異議申立人は、令和3年4月2日付け意見書において、引用文献3(甲第5号証)や引用文献4(甲第7号証)の記載を引用し、引用発明1及び2のセルロース繊維を、疎水化学変性したセルロースに変更することは何ら困難性を伴わない旨主張している(第2頁下から7行~末行)。 しかしながら、引用発明1及び2は、セルロース繊維とε-カプロラクタムを含む水分散液からの溶融重合(上記2(1)イ及び2(2)イ参照。)を前提としているといえるから、引用発明1及び2のセルロース繊維を、水分散液から分離しやすい疎水化学変性したセルロースに変更することは困難である。 したがって、異議申立人の令和3年4月2日付け意見書の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1~32に係る特許は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1~7に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない特許出願に対してされたものでなく、 また本件特許の請求項1~32に係る発明は、その優先日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた先願に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一でないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない特許出願に対してされたものでない(同法第184条の13参照)。 したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立書に記載した特許異議申立て理由によっては、本件の請求項1~32に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1~32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700510

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