特許異議申立
2020-700472
錠剤印刷方法
- 審判番号
- 2020-700472
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-160340外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月10日
- 審決日
- 2021年06月08日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社SCREENホールディングス
- 【権利者代理人】吉竹 英俊
- 【権利者代理人】有田 貴弘
- 【異議申立人】早房 長隆
- 分類
- P1651.121-YAA(A61J) / P1651.537-YAA(A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6633704号発明「錠剤印刷方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6633704号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第6633704号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6633704号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成26年5月28日に出願された特願2014-109859号の一部を、平成29年1月11日に新たな特許出願とした特願2017-2484号の一部を、平成30年8月29日に新たな特許出願としたものであって、令和1年12月20日にその特許権の設定登録がされ、令和2年1月22日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 7月10日 :特許異議申立人早房長隆(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和2年10月12日付け:取消理由通知
令和2年12月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年 1月 5日付け:訂正請求があった旨の通知
なお、訂正請求があった旨の通知において期間を指定して申立人に対して意見書を提出する機会を与えたが、上記期間に意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年12月10日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6633704号の明細書、特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、
前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、
前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、
前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、
前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、」
と記載されているのを、
「搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、
前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、
前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、
前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記第1印刷工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2,3も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0009】に
「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、表面に割線が刻設されるとともに裏面には割線が刻設されていない錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法において、搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、を備えることを特徴とする。」
と記載されているのを、
「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、表面に割線が刻設されるとともに裏面には割線が刻設されていない錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法において、搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、前記第1撮像工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記第1印刷工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、を備えることを特徴とする。」
に訂正する。
2 一群の請求項、及び、願書に添付した明細書の訂正に係る請求項について
訂正事項1について、請求項2、3は、記載を訂正する請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1は、一群の請求項[1-3]について訂正請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。また、訂正事項2は、上記一群の請求項[1-3]に関係する明細書について訂正請求されたものであり、同条第9項において準用する同法第126条第4項に適合する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、請求項1において、本件訂正前の「前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程」、「前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程」について、それぞれ、「前記第1撮像工程の後に前記錠剤の表裏を反転し」、その後に第2撮像工程を実行する点、「前記第1印刷工程の後に前記錠剤の表裏を反転し」、その後に第2印刷工程を実行する点を限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、上記(1)のとおりであるところ、願書に添付した明細書には、「第1割線カメラ51は、搬送ドラム10によって搬送される複数の錠剤2の一方面を撮像する。搬送ドラム10から第1搬送ベルト20に錠剤2が受け渡されるときに、全ての錠剤2の表裏が反転する。そして、第2割線カメラ52は、第1搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2の他方面を撮像する。」([0058])、「第2割線カメラ52によって撮像された錠剤2が第1搬送ベルト20によってさらに搬送されて第1インクジェットヘッド61に対向する位置に到達する。そして、第1インクジェットヘッド61が錠剤2に対する印刷処理を行う(ステップS6)。」([0057])、「第1搬送ベルト20から第2搬送ベルト30に錠剤2が受け渡されるときに、それぞれの錠剤2は表裏反転することとなる。」([0068])及び「第2インクジェットヘッド62は、第2搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2の一方面に対して印刷処理を行うこととなる。」([0076])との記載があるから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記(1)のとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、表面に割線が刻設されるとともに裏面には割線が刻設されていない錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法において、搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、を備えることを特徴とする。」を「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、表面に割線が刻設されるとともに裏面には割線が刻設されていない錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法において、搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、前記第1撮像工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記第1印刷工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、を備えることを特徴とする。」とする訂正は、上記(1)の特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、上記(2)の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1~3」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
表面に割線が刻設されるとともに裏面には割線が刻設されていない錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法であって、
搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、
前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、
前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、
前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記第1印刷工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、
を備えることを特徴とする錠剤印刷方法。
【請求項2】
請求項1記載の錠剤印刷方法において、
前記所定方向は前記割線に対して平行な方向であることを特徴とする錠剤印刷方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の錠剤印刷方法において、
前記第1印刷工程の後であって前記第2印刷工程の前に前記錠剤の一方面を撮像する第3撮像工程をさらに備え、
前記第3撮像工程にて取得された画像データに基づいて前記錠剤の位置ずれを検出し、その検出した位置ずれに基づいて前記第2印刷工程での前記錠剤のそれぞれに対する印刷位置を調整することを特徴とする錠剤印刷方法。」
第4 当審の判断
1 取消理由の概要
当審が令和2年10月12日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、本件特許異議申立てにおいて申立てられた全ての申立理由が通知された。
(1)取消理由1(進歩性)
請求項1~3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
請求項1~3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
請求項1~3に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
[証拠方法]
甲第1号証:国際公開第2014/013973号
甲第2号証:国際公開第2014/013974号
2 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証(国際公開第2014/013973号)には、図面と共に以下の記載がある。
(ア)「よって、本発明は、かかる事情に鑑み、搬送されている錠剤の両方側の面に印刷したり、搬送されている錠剤の一方側の面及び他方側の面のうち、所望の一方の面に印刷したりできる印刷機を提供することを課題とする。」([0006])
(イ)「前記錠剤は、前記一方側を向いた面又は前記他方側を向いた面に当該錠剤を分割するための溝状の割線を有する」([0020])
(ウ)「次に、本実施形態に係る印刷機を用いた別の錠剤1の製造方法が、図8を参酌して、以下に説明されている。なお、印刷される対象物は、割線11を有していない錠剤1である。
対象物が割線11のない錠剤1であるため、下方割線判定部622aが割線の有無を判定すること(ステップ102、104)、上方割線判定部626aが割線の有無を判定すること(ステップ111、113)、割線検査部629が各割線判定部622a,626aの判定結果を検査すること(ステップ117)は、実施されない。そして、ステップ101、103、105~110、112、114~116及118~119は、上述しているので、説明を繰り返さない。
以上より、本実施形態に係る印刷機によれば、搬送装置23は、錠剤1を搬送する。そして、下方撮像装置43は、搬送される錠剤1の下方側の面を撮像する。その後、下方検査部623は、下方撮像装置43で撮像された画像に基づいて、当該錠剤1の下方側の面を検査する。また、上方撮像装置54は、搬送される錠剤1の上方側の面を撮像する。その後、上方検査部627は、上方撮像装置54で撮像された画像に基づいて、当該錠剤1の上方側の面を検査する。
さらに、下方撮像装置43の下流側に配置される下方印刷装置44は、搬送される錠剤1の下方側の面に印刷すると共に、上方撮像装置54の下流側に配置される上方印刷装置55は、搬送される錠剤1の上方側の面に印刷する。これにより、印刷機は、搬送されている錠剤1の両方側の面を検査できる。また、印刷機は、搬送されている錠剤1の両方側の面に印刷したり、搬送されている錠剤1の上方側の面及び下方側の面のうち、所望の一方の面に印刷したりできる。
また、本実施形態に係る印刷機によれば、下方印刷判定部622bは、下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて、当該錠剤1の下方側の面に印刷するか否かを判定すると共に、上方印刷判定部626bは、上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて、当該錠剤1の上方側の面に印刷するか否かを判定する。これにより、印刷機は、各印刷判定部622b,626bの判定に基づいて、搬送されている錠剤1の両方側の面に印刷したり、搬送されている錠剤1の上方側の面及び下方側の面のうち、所望の一方の面に印刷したりできる。」([0080]-[0084])
(エ)「印刷機は、割線11がさまざまな位置(向き)の状態で、錠剤1が搬送されていても、割線11が設けられた面と反対側の面において割線11と対応する部位110を避けた状態で、当該部位110を基準として同じように印刷できる構成であってもよい。」([0113])
(オ)「搬送装置23は、錠剤1の上方側に接した状態で錠剤1を搬送方向Xに搬送する第1の搬送部24と、第1の搬送部24の下流側に配置され、錠剤1の下方側に接した状態で錠剤1を搬送方向Xに搬送する第2の搬送部25と、を備える。」([0035])
(カ)「印刷機は、搬送される複数の錠剤1の各割線11の方向を所定の方向にそれぞれ揃える割線方向揃え部を有する。」([0128])、
(キ)「第1の搬送部24は、下方撮像装置43と下方印刷装置44と間に、割線11の位置・・・を揃える割線位置揃え装置245を備える。」([0129])
(ク)「上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて、割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを演算し、さらに、演算した角度に基づいて、各接触体245a~245dの回転速度を演算する。そして、接触体制御部620は、各接触体245a~245dが錠剤1と接触する際に、演算した回転速度となるように各接触体245a~245dを制御する。」([0133])、
(ケ)「割線位置揃え装置245は、錠剤1を回転させることで、割線11を所定の位置にする」([0134])
(コ)「下方印刷装置44は、割線11の設けられた面と反対側の面の割線11と対応する部位110を避けた状態で当該部位110を基準として、錠剤1に対して同じように印刷できる。」([0134])
(サ)「第2の搬送部25も、上方印刷装置55の上流側に、割線11の位置を揃える割線位置揃え装置を備えてもよい。」([0135])
a 上記(ア)の記載から、甲第1号証には、錠剤の両方の面に印刷することについて一応の示唆がある。しかし、上記(ウ)の記載を併せみれば、錠剤の両方の面への印刷は、「割線11を有していない錠剤1」を対象としたものに限られるといえる。
b 上記(ア)、(イ)の記載から、甲第1号証には、一方側を向いた面又は他方側を向いた面に分割するための溝状の割線を有する錠剤に印刷する方法であって、錠剤の割線の向きに対応して、割線が設けられた面と反対側の面において割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う錠剤印刷方法が記載されているといえる。
c 上記(ウ)及び図1の記載から、印刷機における錠剤の搬送経路は、その上流側から順に搬入装置22、第1の搬送部24、第2の搬送部25で構成されているといえる。
d 上記(エ)、(オ)の各記載から、錠剤の印刷機の第1の搬送部24には、その上流側からみて順に、下方撮像装置43、割線位置揃え装置245、下方印刷装置44が配置されるといえる。
e 上記(カ)、(キ)の各記載から、当該印刷機の上方撮像装置54は、割線位置揃え装置245よりも上流側に配置されていなければならず、また、当該割線位置揃え装置245が配置される第1の搬送部24においては錠剤がその上方側を接した状態で搬送され、錠剤を上方から撮像できないことから、上方撮像装置54は、第1の搬送部24よりも上流側の搬入装置22に配置される必要がある。そうすると、上方撮像装置54は下方撮像装置43よりも上流側に配置されることは明らかである。そして、上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて、割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかの特定を行い、さらに、特定した角度に基づいて、錠剤1を回転させることで、割線11を所定の位置にしているといえる。
f 上記(ク)の記載から、下方印刷装置44は、錠剤の下方の面が割線11のない面である場合に、割線11と対応する部位110を避けた状態で当該部位110を基準として錠剤1に対して印刷する印刷工程を実行するといえる。
g 上記(ケ)の記載から、第1の搬送部24よりも下流側の第2の搬送部25に上方印刷装置55が配置され、上方印刷装置55も、当該下方印刷装置44と同じように、錠剤の上方の面が割線11のない面である場合に、割線11と対応する部位110を避けた状態で当該部位110を基準として印刷する印刷工程を実行するといえる。この場合において、下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて、割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを演算し、割線位置揃え装置が錠剤1を回転させることで割線11を所定の位置にする役割を担い、上方印刷装置55が、割線11の設けられた面と反対側の面の割線11と対応する部位110を避けた状態で当該部位110を基準として、錠剤1に対して印刷を行うことになるが、当該割線位置揃え装置は、上方印刷装置55の上流側にあればよく、[0135]の上記記載が選択的記載にすぎないことを踏まえると、第2の搬送部25が割線位置揃え装置を備えない場合には、第1の搬送部24が備える「割線位置揃え装置245」がその役割を担うことができることは、当業者であれば当然に理解できることである。
h 甲第1号証に記載された錠剤印刷方法において、上方撮像装置54が上方撮像工程を実行するといえ、以下同様に、下方撮像装置43が下方撮像工程を、割線位置揃え装置245が割線位置揃え工程を、下方印刷装置44が下方印刷工程を、上方印刷装置55が上方印刷工程を、それぞれ実行するといえる。
上記(ア)~(サ)の記載事項及びa~hの認定事項を踏まえると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「一方側を向いた面又は他方側を向いた面に分割するための溝状の割線を有する錠剤に印刷する方法であり、錠剤の割線の向きに対応して、割線が設けられた面と反対側の面において割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う錠剤印刷方法であって、
その上流側からみて順に、下方撮像工程と、割線位置揃え工程と、下方印刷工程と、上方印刷工程とを備え、かつ、上方撮像工程は、下方撮像工程よりも上流側に配置され、
上方撮像工程又は下方撮像工程にて撮像された画像に基づいて、割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを特定し、さらに、特定した角度に基づいて、錠剤1を回転させることで、割線11を所定の位置にし、
下方印刷工程は、錠剤の下方の面が割線のない面である場合に、割線と対応する部位を避けた状態で当該部位を基準として錠剤に対して印刷する印刷工程であり、
上方印刷工程は、錠剤の上方の面が割線のない面である場合に、割線と対応する部位を避けた状態で当該部位を基準として錠剤に対して印刷する印刷工程である、
錠剤印刷方法。」
(2)甲第2号証
甲第2号証(国際公開第2014/013974号)には、図面と共に以下の記載がある。
(ア)「上記実施形態に係る印刷機において、各印刷装置44,55及び各印刷制御部622,626は、錠剤1の一方側(上記実施例では下方側)を向いた面及び他方側(上記実施例では上方側)を向いた面のうち、割線11を有する面に、印刷しない構成である。しかしながら、本発明に係る印刷機は、かかる構成に限られない。例えば、各印刷装置44,55及び各印刷制御部622,626は、錠剤1の割線11を有する面にも、印刷する構成でもよい。」([0105])
(イ)「次に、割線11を有する面にも印刷する印刷機の第2の具体例が、図21~図23を参酌して、以下に説明されている。
かかる印刷機において、図21~23に示すように、第1の搬送部24は、下方撮像装置43と下方印刷装置44と間に、割線11の位置(即ち、真っ直ぐに延びる溝状の割線11の方向)を揃える割線位置揃え装置245を備える。そして、割線位置揃え装置245は、錠剤1の両側に配置される一対の第1の接触体245a,245bと、錠剤1の両側に配置される一対の第2の接触体245c,245dとを備える。また、制御装置62は、各接触体245a~245dを制御する接触体制御部620を備える。
尚、この具体例では、割線位置揃え装置245が割線方向揃え部を構成する。
第1の接触体245a,245bは、下方撮像装置43の下流側に配置されると共に、第1の搬送ベルト241の下方側に配置される。また、第1の接触体245a,245bは、底面視において(図21に示すように)、円形状に形成されると共に、それぞれ外周部が錠剤1の外周部(円筒状の周面103)に接触できるように、所定距離を離間して配置されている。そして、第1の接触体245a,245bは、異なる速度で回転することにより、同時に接触する錠剤1を回転(詳しくは、周面103の中心軸周りに回転)させる。
第2の接触体245c,245dは、第1の接触体245a,245bの下流側に配置されると共に、第1の搬送ベルト241の下方側に配置される。また、第2の接触体245c,245dは、底面視において(図21に示すように)、円形状に形成されると共に、それぞれ外周部で錠剤1の外周部(周面103)に接触できるように、所定距離を離間して配置されている。そして、第2の接触体245c,245dは、異なる速度で回転することにより、同時に接触する錠剤1を回転させる。
接触体制御部620は、下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて、割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを演算し、さらに、演算した角度に基づいて、各接触体245a~245dの回転速度を演算する。そして、接触体制御部620は、各接触体245a~245dが錠剤1と接触する際に、演算した回転速度となるように各接触体245a~245dを制御する。
かかる構成によれば、割線11がさまざまな位置の状態で、錠剤1が搬送ベルト241によって搬送されていても、割線位置揃え装置245は、錠剤1を回転させることで、割線11を所定の位置にすることができる。これにより、下方印刷装置44は、割線11を基準として、錠剤1に対して同じように印刷できる。
なお、第2の搬送部25も、上方撮像装置54と上方印刷装置55と間に、割線11の位置を揃える割線位置揃え装置を備えてもよい。また、印刷機は、一対の接触体245a,245b(245c,245d)を2組備える構成だけでなく、1組、又は3組以上備える構成でもよい。)」([0117]-[0124])
(ウ)「錠剤1の表面は、・・・一方側を向いた面である第1の面101と、他方側を向いた面である第2の面102と・・・によって構成されている。・・・割線11が第1の面101に設けられている。」([0143])
(エ)また、図32、33には、錠剤の割線11の向きに対応して、錠剤の各面101、102において、割線や割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う点が記載されている。
(オ)「錠剤1が割線11の設けられた第1の面101を下方に向けて第1の搬送部24によって搬送されている場合には、下方印刷装置45と上方印刷装置55とが錠剤1の各面101、102に対して以下の通りに印刷する。」([0144])
(カ)「下方印刷装置45は、図32及び図34に示すように、第1の面101において、割線11に対して一方側(図32では左側)の第1領域111に第1の符号121を印刷すると共に、他方側(図32では右側)の第2領域112に第2の符号122を印刷する。この第2の符号122は、第1の符号121と異なる符合である。また、上方印刷装置55は、図33及び図34に示すように、第2の面102において、第1領域111と対応する第3領域(即ち、第1の面101の割線11と対応する部位110に対して一方側(図33では左側)の領域)113に第2の符号122を印刷すると共に、第2領域112と対応する第4領域(即ち、第1の面101の割線11と対応する部位110に対して他方側(図33では右側)の領域)114に第1の符号121を印刷する。」([0145])、
(キ)「錠剤1が割線11のない第2の面102を下方に向けて第1の搬送部24によって搬送されている場合には、下方印刷装置45と上方印刷装置55が錠剤1の各面101、102に対して以下の通りに印刷する。」([0146])
(ク)「下方印刷装置45は、第2の面102において、第3領域113に第1の符号121を印刷すると共に第4領域114に第2の符号122を印刷する。また、上方印刷装置55は、第1の面101において、第1の領域111に第2の符号122を印刷すると共に第2領域に第1の符号121を印刷する。」([0147])
a 上記(ア)、(イ)の各記載から、甲第2号証には、下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて、割線位置揃え装置245が錠剤1を回転させ、下方印刷装置44が印刷を行うことによって、または、上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて、割線位置揃え装置が錠剤1を回転させ、上方印刷装置55が印刷を行うことによって、錠剤の割線のある面に割線に沿って印刷する錠剤印刷方法(以下「甲2記載の技術1」という。)が記載されているといえる。
b 上記(ウ)~(ク)の各記載から、甲第2号証には、一方側を向いた面又は他方側を向いた面に分割するための溝状の割線を有する錠剤に印刷する方法であって、錠剤の割線の向きに対応して、割線が設けられた面及びその反対側の面において、割線や割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う錠剤印刷方法(以下「甲2記載の技術2」という。)が記載されているといえる。
c 上記(ア)、(ウ)の各記載から、甲第2号証に記載された発明は、一方側を向いた面101と他方側を向いた面102とを有し、一方側を向いた面101に分割するための溝状の割線11を有する錠剤に印刷する方法であって、錠剤の割線の向きに対応して、割線が設けられた面と、当該割線が設けられた面と反対側の面において、割線や割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う錠剤印刷方法であると認められる。
d 上記(オ)~(ク)の各記載から、甲第2号証に記載された発明は、錠剤1が割線11の設けられた第1の面101を下方に向けて第1の搬送部24によって搬送されている場合には、下方印刷装置45は、第1の面101において、割線11に対して一方側の第1領域111に第1の符号121を印刷し、他方側の第2領域112に第2の符号122を印刷するとともに、上方印刷装置55は、第2の面102において、第1領域111と対応する第3領域113に第2の符号122を印刷し、第2領域112と対応する第4領域114に第1の符号121を印刷し、錠剤1が割線11のない第2の面102を下方に向けて第1の搬送部24によって搬送されている場合には、下方印刷装置45は、第2の面102において、第3領域113に第1の符号121を印刷し、第4領域114に第2の符号122を印刷するとともに、上方印刷装置55は、第1の面101において、第1の領域111に第2の符号122を印刷し、第2領域に第1の符号121を印刷する錠剤印刷方法であるといえる。
なお、甲第2号証の全体記載から、上記の「下方印刷装置45」は、「下方印刷装置44」の誤記であると認められる。
e 甲第2号証に記載された錠剤印刷方法において、上方撮像装置54が上方撮像工程を実行するといえ、以下同様に、下方撮像装置43が下方撮像工程を、割線位置揃え装置245が割線位置揃え工程を、下方印刷装置44が下方印刷工程を、上方印刷装置55が上方印刷工程を、それぞれ実行するといえる。
上記(ア)、(ウ)~(ク)の記載事項及びb~eの認定事項を踏まえると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が開示されているといえる。
「一方側を向いた面101と他方側を向いた面102とを有し、一方側を向いた面101に分割するための溝状の割線11を有する錠剤に印刷する方法であって、錠剤の割線の向きに対応して、割線が設けられた面と、当該割線が設けられた面と反対側の面において、割線や割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う錠剤印刷方法であって、
錠剤が割線11の設けられた第1の面101を下方に向けて搬送部によって搬送されている場合には、
下方印刷装置44は、第1の面101において、割線11に対して一方側の第1領域111に第1の符号121を印刷し、他方側の第2領域112に第2の符号122を印刷するとともに、
上方印刷装置55は、第2の面102において、第1領域111と対応する第3領域113に第2の符号122を印刷し、第2領域112と対応する第4領域114に第1の符号121を印刷し、
錠剤が割線11のない第2の面102を下方に向けて搬送部によって搬送されている場合には、
下方印刷装置44は、第2の面102において、第3領域113に第1の符号121を印刷し、第4領域114に第2の符号122を印刷するとともに、
上方印刷装置55は、第1の面101において、第1の領域111に第2の符号122を印刷し、第2領域に第1の符号121を印刷する、
錠剤印刷方法。」
3 当審の判断
(1)取消理由1について
ア 本件発明1
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は以下の各点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点1]
割線が刻設される表面について、本件発明1では、第1印刷工程で、錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行い、第2印刷工程で、錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うのに対して、甲1発明では、下方印刷工程及び上方印刷工程において、表面に対して印刷処理を行わない点。
[相違点2]
第2撮像工程について、本件発明1では、第1撮像工程の後に錠剤の表裏を反転して撮像を行うのに対して、甲1発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。
[相違点3]
第2印刷工程について、本件発明1では、第1印刷工程の後に錠剤の表裏を反転して印刷を行うのに対して、甲1発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。
上記相違点1について検討する。
上記2(2)a、bの認定のとおり(「甲2記載の技術1」、「甲2記載の技術2」)、甲第2号証には、いずれか一方の面に割線を有する錠剤の割線を有する面や表裏両面に印刷を行う錠剤印刷方法が記載されているといえる。
一方、甲第1号証は、上記2(1)aにおいて認定したとおり、錠剤の両方の面への印刷は、「割線を有していない錠剤1」を対象としたものに限られるから、割線を有する錠剤に対してその表面及び裏面の両方の面にどのように印刷するのかについては、甲第1号証に記載がないし、むしろ、割線を有する錠剤に印刷を行う場合は、割線を有する表面への印刷は敢えて行わないとする態様が記載されているのみである。してみると、甲第1号証には、割線を有する錠剤に対してその表面及び裏面の両方の面に対して印刷するという示唆はないといわざるを得ない。
そうすると、甲第1号証には、一方側の面に割線を有する錠剤の、割線を有しない面のみならず、割線を有する面にも印刷を行うことの動機づけは存在しない。そして、割線を有する錠剤に印刷を行う場合は、割線を有する表面への印刷は敢えて行わないとする態様が記載されているのみであることを考慮すると、割線を有する面への印刷を行う技術である上記甲2記載の技術1及び2(以下「甲第2号証の記載事項」という。)を適用することについて阻害要因があるというべきである。
したがって、上記相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
イ 本件発明2、3
本件発明2~3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、本件発明1が上記アのとおり、甲1発明及び甲第2号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本件発明2~3も、甲1発明及び甲第2号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
(2)取消理由2について
ア 本件発明1
本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は以下の各点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点4]
本件発明1では、搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、を備え、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って第1印刷工程及び第2印刷工程での印刷処理が行われるのに対して、甲2発明では、搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程とを有するものの、前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程を備えるか否か明らかでなく、また、第1印刷工程及び第2印刷工程での印刷処理が、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って行われるのか否か明らかでない点。
[相違点5]
第2撮像工程について、本件発明1では、第1撮像工程の後に錠剤の表裏を反転して撮像を行うのに対して、甲2発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。
[相違点6]
第2印刷工程について、本件発明1では、第1印刷工程の後に錠剤の表裏を反転して印刷を行うのに対して、甲2発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。
上記相違点4について検討する。
甲2発明は、一方側を向いた面101と他方側を向いた面102とを有し、一方側を向いた面101に分割するための溝状の割線11を有する錠剤に印刷する方法であって、錠剤の割線の向きに対応して、割線が設けられた面と、当該割線が設けられた面と反対側の面において、割線や割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う錠剤印刷方法であるところ、錠剤が搬送部によって搬送される際、各錠剤の割線の向きはさまざまであるのに対して、これら割線の向きをどのように認識し、割線の向きに対応した印刷を行うのかについて、明らかでない。
ここで、上記2(1)のとおり、甲第1号証には、一方側を向いた面又は他方側を向いた面に分割するための溝状の割線を有する錠剤に印刷する方法であり、錠剤の割線の向きに対応して、割線が設けられた面と反対側の面において割線と対応する部位を避けた部分に印刷を行う錠剤印刷方法であって、その上流側からみて順に、下方撮像工程と、割線位置揃え工程と、下方印刷工程と、上方印刷工程とを備え、かつ、上方撮像工程は、下方撮像工程よりも上流側に配置され、上方撮像工程又は下方撮像工程にて撮像された画像に基づいて、割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを特定し、さらに、特定した角度に基づいて、錠剤1を回転させることで、割線11を所定の位置にし、下方印刷工程は、錠剤の下方の面が割線のない面である場合に、割線と対応する部位を避けた状態で当該部位を基準として印刷する印刷工程であり、上方印刷工程は、錠剤の上方の面が割線のない面である場合に、割線と対応する部位を避けた状態で当該部位を基準として印刷する印刷工程である、錠剤印刷方法が記載されている(以下「甲第1号証の記載事項」という。)。しかし、仮に、上記のような装置構成を甲2発明に係る錠剤印刷方法に適用し、甲2発明において、上方撮像工程及び下方撮像工程の下流に割線位置揃え工程を備え、さらにその下流に下方印刷工程及び上方印刷工程を備える構成を採用したとしても、甲1は、上記3(1)で検討したとおり、錠剤の両方の面に印刷することについて一応の示唆はあるが、その具体的態様は、「割線11を有していない錠剤1」を対象としたものであって、割線を有する錠剤に対してその表面及び裏面の両方の面にどのように印刷するのかについては記載がないし、むしろ、割線を有する錠剤に印刷を行う場合は、割線を有する表面への印刷は敢えて行わないとする態様が記載されているのみであり、割線を有する錠剤に対してその表面及び裏面の両方の面に対して印刷するという示唆はないことに鑑みれば、甲2発明は、一方側を向いた面に割線を有する錠剤の、割線を有しない面にのみ印刷を行う錠剤印刷方法に改変されることとなり、本件発明の要件を備えたものとはならない。
したがって、上記相違点5及び6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲第1号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲2発明及び甲第1号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
イ 本件発明2、3
本件発明2~3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、本件発明1が上記アのとおり、甲2発明及び甲第1号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本件発明2~3も、甲2発明及び甲第1号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
(3)取消理由3について
請求項1に係る発明は、本件訂正が認められたことにより「表面に割線が刻設されるとともに裏面には割線が刻設されていない錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法であって、
搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と、前記第1撮像工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と、前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて、前記錠剤のそれぞれにおける前記割線の方向を特定する割線方向特定工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線方向特定工程にて特定された前記割線の方向に対する所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と、前記錠剤の搬送方向に沿って前記第1撮像工程および前記第2撮像工程の撮像位置よりも下流において、前記第1印刷工程の後に前記錠剤の表裏を反転して前記錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行うとともに、前記錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対し、前記割線の方向に対する前記所定方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と、を備えることを特徴とする錠剤印刷方法。」となった。
一方、発明の詳細な説明の段落[0051]には、「また、搬送ドラム10から第1搬送ベルト20に錠剤2が受け渡されるときに、それぞれの錠剤2は表裏反転することとなる。」との記載があり、段落[0068]には「また、第1搬送ベルト20から第2搬送ベルト30に錠剤2が受け渡されるときに、それぞれの錠剤2は表裏反転することとなる。」との記載がある。すなわち、発明の詳細な説明には、第1撮像工程の後、錠剤2の表裏を反転してから第2撮像工程を実施し、第1印刷工程の後、錠剤2の表裏を反転してから第2印刷工程を実施することが記載されている。
したがって、請求項1に係る発明並びに請求項1を引用する請求項2及び3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700472