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特許異議申立

2021-700913

固体製剤及びその検査方法

審判番号
2021-700913
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-115942外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6865116
請求日
2021年09月21日
審決日
2022年06月30日
公報発行日
2022年10月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.121-YAA(G01N) / P1652.537-YAA(G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6865116号発明「固体製剤及びその検査方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6865116号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-4〕について訂正することを認める。
特許第6865116号の請求項2ないし4に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 26項目
理 由

第1.手続の経緯

特許第6865116号の請求項2~4に係る特許についての出願は、平成29年6月13日に出願され、令和3年4月7日にその特許権の設定登録がされ、同年4月28日に特許掲載公報が発行された。

その後、その特許について、令和3年9月21日に特許異議申立人 川口真弓(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年12月24日に取消理由を通知(以下「本件取消理由通知」という。)した。特許権者は、その指定期間内である令和4年3月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、これによる訂正を「本件訂正」という。)を行った。該訂正の請求について当審は申立人に対し当該訂正の請求書の副本等を送付し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、指定期間内に申立人から応答はなかった。

第2.訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)・(2)のとおりである。

本件訂正請求は、一群の請求項〔2-4〕に対して請求されたものである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項2に「表面の少なくとも一部にコーティング層」と記載されているのを、「表面の一部にコーティング層」に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「オーバーコート層である前記顔料定着成分」と記載されているのを、「オーバーコート層であり、前記顔料定着成分」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的について

本件訂正前の請求項2に係る「表面の少なくとも一部にコーティング層」とは、「コーティング層」が表面の一部である場合と全部である場合とを含む概念であるが、本件訂正後の同「表面の一部にコーティング層」は、前記概念のうち、表面の一部である場合に限定するものであるから、当該訂正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について

例えば、課題を解決するための手段に関する、本件特許明細書の【0008】には、

「表面の少なくとも一部にコーティング層が設けられた固体製剤であって、波長域が380nm~760nmの可視光を透過し、かつ、波長域が380nm未満の紫外線を反射する前記コーティング層、が設けられたコーティング領域と、前記波長域の紫外線を吸収し、かつ、前記コーティング層が設けられていない非コーティング領域とを少なくとも有し、」

なる記載があり、この記載から、固体製剤の表面には、コーティング層が設けられたコーティング領域と、該層が設けられていない非コーティング領域とが存在する、との技術事項を読み取ることができる。この技術事項は、コーティング層が(固体製剤の)表面の全部を占めるのではなく、また、該表面に存在しないのでもなく、該「表面の一部」に存在すること、を意味するといえる。

よって、訂正事項1に係る、「表面の一部にコーティング層が設けられた固体製剤の検査方法」は、本件特許明細書に記載されており、新規事項の追加には該当しない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

上記アで説示したとおり、訂正事項1は、請求項2に記載された発明を特定するための事項について、択一的事項の削除または下位概念への変更をする訂正にあたるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的について

当該訂正事項は、本件訂正前の請求項2の

「前記コーティング層は、前記インク層に含まれる顔料を前記固体製剤の表面に定着させ、かつ前記波長域の紫外線に対し光反射性を有する顔料定着成分を少なくとも含むオーバーコート層である
前記顔料定着成分が、数平均分子量2000~200000の範囲内のポリビニルピロリドンであり、」

なる記載が、

(ア)「コーティング層は・・・オーバーコート層である前記顔料定着成分が・・・ポリビニルピロリドンであり」という文章構造となっており、コーティング層及びオーバーコート層・顔料定着成分・ポリビニルピロリドンなる、明らかに異なる3組の各要素が同一の概念であるかのような、技術的にみて不正確な記載となっていること、

(イ)構文上も、コーティング層及び顔料定着成分という2つの主語を持つ文章となっており、記載上の不備が疑われること、

(ウ)「含むオーバーコート層である」を「含むオーバーコート層であり、」と変更することで、前記技術的な不正確性や構文上の不備が解消すること、

(エ)請求項1においては、同じく固体製剤についての特定事項について、

「前記コーティング層は、前記インク層に含まれる顔料を前記固体製剤の表面に定着させ、かつ前記波長域の紫外線に対し光反射性を有する顔料定着成分を少なくとも含むオーバーコート層であり、
前記顔料定着成分が、数平均分子量2000~200000の範囲内のポリビニルピロリドンである」

なる記載となっており、前記変更を適用した結果の記載と一致すること、

に照らし、本件訂正前の請求項2の「含むオーバーコート層である」が、「含むオーバーコート層であり、」の誤記であることが明らかであるといえることからみて、誤記の訂正を目的とするものであると認められる。

イ 新規事項の有無について

訂正事項2により、本件訂正後の請求項2は、該訂正事項2による訂正箇所前後で、

記載B6:「前記コーティング層は、前記インク層に含まれる顔料を前記固体製剤の表面に定着させ、かつ前記波長域の紫外線に対し光反射性を有する顔料定着成分を少なくとも含むオーバーコート層であり、」
記載B7:「前記顔料定着成分が、数平均分子量2000~200000の範囲内のポリビニルピロリドンであり、」

との各記載となった。

これらのうち、記載B6は、本件特許出願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。)の【0011】における同様の記載により裏付けられる。

また、記載B7は、同じく【0021】における同様の記載により裏付けられる。

よって、訂正事項2による訂正がなされたあとの請求項2の記載は、当初明細書に記載された事項の範囲内のものであるから、当該訂正事項2は新規事項を追加する訂正には該当しない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項2は上記アで説示したとおり、誤記であることが明らかな記載を正しい記載に変更するものであるから、訂正の前後において実質的な意味に変更も拡張も生じさせるものではない。よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-4〕について訂正することを認める。

第3.訂正後の本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項2~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」~「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。ここで、各構成単位冒頭の「A」などは当審にて付与した構成番号であり、以下、該各構成単位について該構成番号を用い「構成A」などという。

「【請求項2】
A 表面の一部にコーティング層が設けられた固体製剤の検査方法であって、
B 前記固体製剤は、
B1 波長域が380nm~760nmの可視光を透過し、かつ、波長域が380nm未満の紫外線を反射する前記コーティング層、が設けられたコーティング領域と、
続きを表示(全19行)
B2 前記波長域の紫外線を吸収し、かつ、前記コーティング層が設けられていない非コーティング領域とを少なくとも有し、
B3 前記コーティング領域及び非コーティング領域に前記波長域の可視光を照射した場合の前記非コーティング領域に対する前記コーティング領域の階調値の差が5未満であり、
B4 前記コーティング領域及び非コーティング領域に前記波長域の紫外線を照射した場合の前記非コーティング領域に対する前記コーティング領域の階調値の差が5以上のものであり、
B5 前記固体製剤の表面と前記コーティング層の間の少なくとも一部にインク層が設けられており、
B6 前記コーティング層は、前記インク層に含まれる顔料を前記固体製剤の表面に定着させ、かつ前記波長域の紫外線に対し光反射性を有する顔料定着成分を少なくとも含むオーバーコート層であり、
B7 前記顔料定着成分が、数平均分子量2000~200000の範囲内のポリビニルピロリドンであり、
C 前記コーティング領域及び非コーティング領域に、前記波長域の紫外線を少なくとも含む照射光を照射する照射工程と、
D 前記照射光が前記コーティング領域で反射された反射光を受光し、前記コーティング領域及び非コーティング領域を撮像する撮像工程とを含む
E 固体製剤の検査方法。
【請求項3】
3A 前記照射工程は、前記照射光として波長域が380nm未満の紫外線のみを用いる工程である
3B 請求項2に記載の固体製剤の検査方法。
【請求項4】
4A 前記撮像工程は、前記反射光として波長域が380nm未満の紫外線のみを受光して撮像する工程である
4B 請求項2又は3に記載の固体製剤の検査方法。」

第4.取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の要旨

本件訂正前の請求項2~4に係る特許に対して、当審が本件取消理由通知により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次の(1)・(2)のとおりである。以下、便宜上、それぞれ「当審取消理由1」・「当審取消理由2」という。

(1)当審取消理由1

請求項2~4に係る発明は、請求項2の記載が、その「表面の少なくとも一部にコーティング層が設けられた固体製剤」なる記載について不備であるため、該各発明に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)当審取消理由2

請求項2~4に係る発明は、請求項2の記載が、その「・・・オーバーコート層である 前記顔料定着成分が・・・」なる記載について不備であるため、該各発明に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 当審の判断

(1)当審取消理由1について

請求項2に対し上記訂正事項1に係る訂正をしたことにより、本件発明2の検査方法が対象とする固体製剤は「表面の一部にコーティング層が設けられた固体製剤」に限定され、表面の全部にコーティング層が設けられた固体製剤が排除された。これにより、請求項2における、固体製剤が「非コーティング領域」を有することを前提とする下記ア~ウの特定事項との矛盾が解消し、訂正事項1に係る訂正前の記載に存した明確性要件に関する当審取消理由1は解消した。

ア 「前記波長域の紫外線を吸収し、かつ、前記コーティング層が設けられていない非コーティング領域とを少なくとも有し、」

イ 「前記コーティング領域及び非コーティング領域に前記波長域の可視光を照射した場合の前記非コーティング領域に対する前記コーティング領域の階調値の差が5未満であり、」

ウ 「前記コーティング領域及び非コーティング領域に前記波長域の紫外線を照射した場合の前記非コーティング領域に対する前記コーティング領域の階調値の差が5以上のものであり、」

(2)当審取消理由2について

請求項2に対し上記訂正事項2に係る訂正をしたことにより、「前記コーティング層は・・・オーバーコート層である前記顔料定着成分が・・・ポリビニルピロリドンであり」なる、主語が2つあって技術的に意味が通らない文章構造は解消し、特定事項が、「コーティング層は・・・オーバーコート層であ」ることと、「顔料定着成分が・・・ポリビニルピロリドンであ」ることと、であることが明確となった。

よって、訂正事項2に係る訂正前の記載に存した明確性要件に関する当審取消理由2は解消した。

第5.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

申立人は、特許異議申立書において、上記第4.に挙げた当審取消理由1・2と同様の取消理由以外に、本件発明2~4は、下記甲第1号証に記載された発明、及び下記甲第2~第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明2~4(請求項2~4)に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨の取消理由(以下「申立人取消理由1」という。)、及び、構成B1・B3~B5と、構成C~Eの工程との技術的関連性が不明であり、本件発明2は不明確であることから、本件発明2並びにそれを引用する本件発明3及び4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたもので取り消されるべきものである旨の取消理由(以下「申立人取消理由2」という。)を主張する。

そこで、前記申立人取消理由1・2について、以下に検討する。

第5-1.申立人取消理由1について

1 甲号証について

(1)申立人が提示した甲号証

申立人は本件特許異議の申立てにおいて、下記の甲号証を提示している。何れも、本件特許の出願日前に公知となったものである。以下、各甲号証について、「甲1」~「甲6」という。

甲第1号証(甲1):特開2014-162081号公報

甲第2号証(甲2):特開2016-206691号公報

甲第3号証(甲3):特開2015-75443号公報

甲第4号証(甲4):特開2003-279334号公報

甲第5号証(甲5):特開2011-194823号公報

甲第6号証(甲6):国際公開第2016/117515号

(2)甲1の記載事項

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ア 甲1に記載された事項

甲1には次の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオーバーコート剤検出装置及びオーバーコート剤検出方法、並びに上記オーバーコート剤検出装置を備えた画像形成装置に関する。
続きを表示(全49行)
【背景技術】
【0002】
例えば複写機、プリンタ等の画像形成装置において、透明のオーバーコート剤を塗布する、いわゆるオーバーコート工程を行うことがある。このオーバーコート工程は、普通紙や記録媒体等(以下、用紙という)上に、三原色(イエロー、シアン、マゼンタ)のインクと黒のインクとを噴射して所定の画像を形成した後に、透明のオーバーコート剤を噴射することにより行われる。このようなオーバーコート剤を形成することにより、用紙の耐擦過性を向上させたり、用紙の印刷面の光沢を制御して画質を向上させたりすることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述のオーバーコート工程において、オーバーコート剤を噴射させるプリントヘッドのノズルの目詰まり等によって、用紙上にオーバーコート剤が塗布されていない部分があっても、当該部分を検出することが困難であるという問題があった。この問題は、オーバーコート剤が可視光のほとんどを透過する透明であるという特性に起因するものである。
・・・
【0007】
本発明の目的は、以上の問題点を解決し、ノズルの目詰まり等によるオーバーコート剤が塗布されていない部分の検出ができるオーバーコート剤検出装置を提供することにある。
・・・
【0015】
オーバーコート剤検出装置10-1は、ここでは、オーバーコート剤塗布部11と検出部12とを備えて構成され、後述するように用紙SHのオーバーコート剤の塗布の有無を検出する。オーバーコート剤塗布部11は、画像形成部101により所定の画像が形成された用紙SH上に、可視光を透過し不可視光を吸収する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤を塗布するように構成される。検出部12は、図1において図示しないオーバーコート剤が塗布された用紙SHの表面上に不可視光を照射する不可視光源12Aと、用紙SHから反射された当該不可視光の光強度を検出する不可視光検出部12Bとを備えて構成される。これらの詳細については、後述する。全体制御部117は、画像形成装置100-1の全体の動作を制御する。例えば、全体制御部117は、用紙SHの搬送速度に応じてインク噴射部101K~101Yの各プリントヘッドから各色のインクを選択的に噴射し、用紙SH上に所定の画像を形成するように画像形成部101を制御する。
【0016】
ここで、用紙SH上に、オーバーコート剤を塗布する主な目的は、次の4通りである。
(1)印刷表面の光沢を制御すること。印刷物の使用目的に応じてオーバーコート剤の種類を選択し、印刷表面を光沢を出した状態や、反射を抑えた艶消し状態に制御する。
(2)印刷表面の耐擦過性を向上させること。印刷表面にオーバーコート剤を塗布することにより、印刷表面が何かと擦れた際に、傷がつきにくいように保護する。
(3)ブロッキングを防止すること。印刷済みの用紙SHを積み重ねた際に、印刷表面のインクが他の別の用紙SHの裏面に付着してはがれるブロッキング現象を、オーバーコート剤を塗布することで防止する。
(4)耐水性及び耐候性を向上させること。用紙SH上にオーバーコート剤を塗布することで、用紙SHへの水の浸透を防止し、紫外線等による用紙の劣化を防止することにより、用紙の耐水性及び耐候性を向上させる。
・・・
【0019】
オーバーコート剤塗布部(オーバーコート剤塗布手段の一例)11は、画像形成部101により所定の画像が形成された用紙SH上に、可視光を透過しかつ不可視光を吸収する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤を塗布する。また、オーバーコート剤塗布部11は、インク噴射部101K~101Yが備えるプリントヘッドと同様なプリントヘッドやインクタンク等を備えて構成される。検出部12は、不可視光源12Aと、不可視光検出部12Bとを備えて構成される。不可視光源(不可視光照射手段の一例)12Aは、オーバーコート剤が塗布された用紙SHの表面上に不可視光を照射する。不可視光源12Aが照射する不可視光は、後述するように紫外光である。不可視光検出部(不可視光検出手段の一例)12Bは、用紙SHから反射された不可視光の光強度を検出する。
・・・
【0021】
図3は、図2の検出部12が備える不可視光源12A及び不可視光検出部12Bの詳細構成と、用紙SHに塗布されたオーバーコート剤201と、オーバーコート剤201が塗布されていない部分202との関係を説明するための拡大図である。図3に示すように、不可視光源12Aは、紫外光源203を備えて構成される。紫外光源203は、用紙SHに対して所定の角度で配置され、紫外領域の入射光206Iを用紙SHの表面に対して照射する。ここで、紫外光源203は、図4にて後述するように、例えば波長が355nm近傍の紫外光を出力する紫外線発光ダイオード等を適用することが可能である。
・・・
【0023】
図3に戻り、不可視光検出部12Bは、紫外光検出素子204を備えて構成される。紫外光検出素子204は、用紙SHに対して所定の角度で配置され、用紙SHから反射された紫外光206RC,206RSを受光し、受光した紫外光206RC,206RSの光強度を検出する。紫外光検出素子204は、例えば窒化ガリウム(GaN)と窒化アルミニウムガリウム(ALGaN)を用いた紫外光検出センサ、一般的なフォトトランジスタ、その他フォトダイオード等を適用することが可能である。ただし、紫外光検出素子204は、紫外光源203から照射される入射光206Iの波長(355nm近傍)に感度があることが必要である。また、紫外光検出素子204が、入射光206I以外の波長に感度があっても、紫外光源203が、図4に示した特定の波長(355nm近傍)のみを選択的に出力するものであれば、フィルター等を用いて当該特定の波長以外をフィルタリングする必要はない。
【0024】
図3に示す用紙SHに塗布されたオーバーコート剤201は、例えば図5の超微粒子の各金属酸化物のように可視光を透過し紫外光を吸収する特性の物質が混入されることにより、可視光を透過し紫外光を吸収する特性を備える。そのため、図3に示すオーバーコート剤201が塗布された部分の反射光206RCの場合、紫外光検出素子204により検出される当該355nm近傍の紫外光の光強度は、反射光206RSの光強度に比較して、非常に小さく例えば0程度として検出される。これに対して、オーバーコート剤201が塗布されていない部分202の反射光206RSの場合、検出される反射光206RSの当該355nm近傍の紫外光の光強度は、実質的には用紙SHの反射特性に対応する。
そのため、当該用紙SHの光強度は、前述のオーバーコート剤201が塗布された部分の反射光206RCの光強度に比較して、大きな光強度として紫外光検出素子204により検出される。
・・・
【0034】
さらに、透明なオーバーコート剤に紫外線等の不可視光を吸収する特性を持たせ、オーバーコート剤に紫外光を吸収させることで、オーバーコート剤の下に形成される所定の画像を構成するインクの色素(染料や顔料)に当該紫外光が到達する光の量を低減することができる。そのため、紫外光によるインクの色あせや変色等の経年劣化を少なくする効果も期待できる。
【0046】
(他の実施形態)
・・・
【0048】
不可視光源12A,23Aが照射する不可視光は、図4に示した波長が355nm近傍をピークとする紫外光に限られず、例えばその波長が800nm以上の赤外光であってもよい。但し、赤外光は、その波長が長い性質上、オーバーコート剤及びプレコート剤の塗布の有無を光学的に検出する不可視光検出部12B,23Bの分解能が、紫外光に比較して大きくなる。そのため、より精密なノズルの目詰まり、例えば1ドット単位のような細かい目詰まりを検出するためには、より分解能が小さい紫外光を照射して、不可視光検出部12B,23Bにより検出する方が有効である。
【0049】
さらに、可視光を透過し不可視光をある程度反射する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤及びプレコート剤を用いた場合であっても、図10及び図11に示すように、第1及び第2の実施形態と同様に実施でき、同様の作用効果を得ることが可能である。図10は、他の実施形態に係るオーバーコート剤検出装置により実行されるオーバーコート剤の塗布の有無検出処理を示すフローチャートである。ここで、図10に示す他の実施形態に係るオーバーコートの塗布の有無検出処理は、図6に示した第1の実施形態に係るオーバーコートの塗布の有無検出処理と比較して、以下の(1)、(2)の点で相違する。
【0050】
(1)ステップS11に代えて、ステップS11Aを備えたこと。ここで、図10のステップS11Aにおいて、オーバーコート剤塗布部11により、画像が形成された用紙SHの表面上に、可視光を透過し不可視光を所定の反射率で反射する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤を塗布する。ここで、可視光を透過しかつ不可視光をある程度反射する特性を有する物質としては、例えば、各粒子の粒径が0.1μmよりも大きい酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができ、より好ましくは、例えば、各粒子の粒径が0.2μm以上0.4μm以下の酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができる。
【0051】
(2)ステップS14に代えて、ステップS14Aを備えたこと。ここで、図10のステップS14Aにおいて、制御部17は、不可視光検出部12Bにより検出された不可視光の光強度が、所定のしきい値以下か否かを判定する。ここで、前述のような不可視光を反射する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤は当該不可視光を実質的に全反射するが、用紙SHは当該不可視光をその反射特性に応じてある程度反射する。そのため、用紙SHからの反射光の光強度は、オーバーコート剤の反射光の光強度に比較して、小さくなる。よって、前述の所定のしきい値は、オーバーコート剤からの反射光の光強度と、用紙SHからの反射光の光強度との間に設定される。その結果、検出された光強度が所定のしきい値以下のときに(YES)、同様にステップS15においてオーバーコート剤が塗布されていない部分があることを検出して検出信号を出力する。」

イ 甲1発明

上記アに摘記した甲1の記載事項によれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。分説番号については上記第3.と同様である。また、各構成単位末尾括弧内には、認定の主たる根拠となる甲1の記載箇所を示した。

「a 用紙上にオーバーコート剤が塗布されたオーバーコート層を有する用紙について、オーバーコート剤が塗布されていない部分を検出するオーバーコート剤検出方法であって、(【0002】・【0007】)
b 前記用紙は、
b1 該用紙上に塗布されたオーバーコート剤には可視光を透過し紫外光をある程度反射する特性を有する物質(例えば、各粒子の粒径が0.1μmよりも大きい酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができ、より好ましくは、例えば、各粒子の粒径が0.2μm以上0.4μm以下の酸化チタンや酸化亜鉛等)が混入され、(【0049】・【0050】)
紫外光を反射する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤は当該紫外光を実質的に全反射するのに対し、(【0051】)
続きを表示(全12行)
b2 用紙は当該紫外光をその反射特性に応じてある程度反射するものであり、(【0051】)
b4 例えば紫外線発光ダイオード等からなる紫外光源から波長が355nm近傍の紫外光を出力した際の紫外光の用紙からの反射光の光強度は、オーバーコート剤の反射光の光強度に比較して小さくなるものであり、(【0021】・【0051】)
b5 用紙上には、画像形成部により所定の画像が形成された上に、前記オーバーコート剤が塗布されており、(【0015】)
b6 該オーバーコート剤の下に形成される所定の画像を構成するインクの色素は染料や顔料からなるものであり、(【0034】)
オーバーコート剤の塗布目的は、印刷表面の光沢の制御、印刷表面の耐擦過性の向上、印刷済み用紙を積み重ねた際に印刷表面のインクが他の用紙の裏面に付着して剥がれるブロッキングの防止、耐水性・耐候性の向上にあり、(【0016】)
c 前記紫外光源により用紙に対し355nm近傍の紫外光を出力する工程を備え、(【0021】)
d 前記紫外光源からの355nm近傍の紫外光が前記用紙で反射された紫外光を、窒化ガリウム(GaN)と窒化アルミニウムガリウム(ALGaN)を用いた紫外光検出センサ、一般的なフォトトランジスタ、その他フォトダイオード等の、前記紫外光の波長に感度を有する紫外光検出素子により検出する工程を備える、(【0023】)
e オーバーコート剤検出方法。」

(3)甲2の記載事項

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甲2には次の記載がある。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基準画像と検査画像の画像検査を行う画像検査装置及び画像検査プログラムに関する。
続きを表示(全29行)
【背景技術】
【0002】
従来より、校了紙や印刷物等の画像検査においては、両画像の検査箇所における相違点について、検出された差分に対し一つのしきい値を適用して画像表示を行ったりすることが行われていた。そして、このしきい値を操作入力等により変動させて、相違点の画像表示を変化させるようにして、容易に相違点を検出可能にする画像比較装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来技術の画像比較装置では、検査精度が好ましくない場合はその都度しきい値を変えて画像検査を行う必要があり、一度の画像検査で所望の検査結果を得ることは難しかった。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、安全で且つ安価に構成可能で簡便な処理により一度の画像検査で所望の検査結果を得ることができる画像検査装置及び画像検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像検査装置は、検査基準となる基準画像を表すデータとして作成された第1画像データと、検査対象となる検査画像を表すデータとして作成された第2画像データとを比較することで、前記第1画像データと前記第2画像データとの相違点を自動的に抽出する画像検査装置であって、前記基準画像及び検査画像を記憶する記憶手段と、記憶された基準画像の少なくとも一部及び検査画像の少なくとも一部を第1及び第2画像データとして画素レベルで対応させて画像重合処理を行う画像処理手段と、画像重合された第1及び第2画像データを比較して両画像データ間での差分を検出する差分検出手段と、検出された差分に対して設定された複数のしきい値毎の相違点表示画像データを生成して画像検査処理を行う画像検査手段とを備えたことを特徴とする。
・・・
【0034】
画像検査装置10は、例えば検査基準となる基準画像を表すデータとして作成された第1画像データと、検査対象となる検査画像を表すデータとして作成された第2画像データとを比較することで、第1画像データと第2画像データとの相違点(ゴミ、汚れ等を含む)を自動的に抽出するものである。第1画像データは、RIP(RasterImageProcessor)装置により出力された二値或いは多値の印刷用画像データ(印刷用デジタルデータ)を含む。第1画像データと第2画像データは、刷り出しの色調整中の印刷画像或いは本刷中の印刷画像、また印刷される前のDTPソフトウェアにより作成された画像データ或いは印刷用画像データを含む。
【0035】
基準画像は、各種媒体のうち、例えば印刷会社と顧客との印刷校正が終了した校了紙としての基準媒体に、プリント(印刷)された画像、或いは印刷用画像データにより構成される画像のことをいう。検査画像は、例えば印刷物等の検査媒体に印刷される前の画像データ或いは印刷用画像データにより構成される画像又は検査媒体に印刷された画像のことをいう。これら基準画像及び検査画像には、文字、数字、図形、記号、紋様、写真、コード等及びIT8の色チャートや色調整用のカラーコントロールストリップ等の視認可能なあらゆる画像が含まれる。但し、不可視の電子透かし等のデータにより構成される画像を含む場合がある。
【0036】
基準媒体及び検査媒体としては、上記校了紙及び印刷物の他に、例えば各種の素材で形成された平面物又は僅かな凹凸のある紙、ビニール、セロハン、PET、PP(ポリプロピレンフィルム)貼り、布、金属、蒸着紙、樹脂、木材、石材などがある。また、色材、色光、発光体等には、油性インキ・塗料などの顔料、水性インク・染色液などの染料、或いは液晶やEL、レーザ等のカラーディスプレイを含めた発光物体がある。
【0037】
更に、その他の媒体の形状には、印刷や塗布等の加工可能な各種のビン、缶、PETボトル、壺・皿・家電など、また薬の錠剤や、機器のプレート部品、電子ボードなど直接印字や溶接等取り付け加工されたものがあり、媒体は様々な素材で作られた立体物に描かれた或いは貼られた色帯・文様・イラスト・写真・絵画・文字などの画像を有する製品等の物体であってもよい。以下、一般的な印刷工程での活用事例として示す。
・・・
【0060】
また、カメラ16を、例えばRGB、CIEXYZ、CIEXYZ等価、分光などのフィルタを用いた画像取得手段として利用してもよい。例えばカラーフィルタを用いた場合、CIELABやマンセルなどの表色系で画像の色を表すことができる。その他、カメラ16を、赤外線・紫外線カメラやレーザ画像、磁気画像、超音波画像をデジタル変換可能な入力装置等を用いた画像取得手段として利用してもよい。」

(4)甲3の記載事項

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甲3には次の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性印刷物の券面に付与した機能性印刷状態を検査する検査装置であって、積載した被検査シートを検査手段に供給する供給手段と、前記被検査シートの機能性印刷状態を検査する前記検査手段と、検査後、前記検査手段から前記被検査シートを排出し積載する排出手段から成り、前記供給手段は、前記被検査シートを供給するとき、積載した前記被検査シートの最上紙を1枚ずつ前記検査手段に搬送する搬送手段と、前記検査手段は、前記被検査シートを検査台に搬送する搬送機構と、前記被検査シートを前記検査台上の定位置に誘導するための位置補正機構と、前記検査台に前記被検査シートを平面状態に固定するための固定機構と、前記被検査シートの機能性印刷状態を検査するカメラ及び/又はセンサと、前記機能性印刷状態の検査の位置補正をするために、前記カメラ及び/又はセンサの位置を確認し補正するための検査位置補正機能を持つ検査機構と、前記検査結果により、合否判定を記憶する記憶部と、前記合否判定を表示する表示部と、前記表示部と連動して、前記被検査シートが合格と判定された場合は、前記排出手段が稼働して、被検査シートが排出され、異常製品と判定された場合は、警報装置により警報を発する警報部から成る警報表示機構と、前記排出手段は、前記検査手段における合否判定後、前記被検査シートを排出し、積載する排出手段と、から成ることを特徴とした機能性検査装置。
・・・
続きを表示(全16行)
【請求項7】
前記機能性検査装置は、赤外線吸収インキ、赤外線透過インキ、赤外線反射インキ、紫外線発光インキ、磁性インキのうち、いずれか一つ以上を検査することが可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の機能性検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に赤外線機能性インキや磁気インキで印刷された印刷物の付加機能の検査装置に関するものである。
・・・
【0018】
本発明の機能性検査装置は、赤外線吸収インキ、赤外線透過インキ、赤外線反射インキ、紫外線発光インキ、磁性インキのうち、いずれか一つ以上を検査することが可能であることを特徴とする機能性検査装置である。
・・・
【0034】
ここで、検査台7上の固定された被検査シートAを読み取りセンサ15が測定ライン20方向にスライドするとともにスキャニングを行い、公知の方法で測定及び分析を行い、演算によって、検査を行う。このとき、スキャニング位置が適正であるかについて、読み取りセンサ15と同時にスライドした、検査位置補正カメラ14の機能によって、スキャニング中、適宜読み取り位置を修正しながら検査する。このとき、同時に赤外線インキまたは紫外線インキの印刷状態を検査するときは、読み取りセンサ15に隣接して、図示しない赤外線カメラまたは紫外線カメラによって画像取得し、検査することが可能である。」

(5)甲4の記載事項

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甲4には次の記載がある。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定対象物の三次元形状等を位相シフト法を用いて計測する三次元計測装置に関するものである。
続きを表示(全15行)
・・・
【0073】
さて、制御装置7は画像メモリを備えており、画像データを順次記憶する。この記憶した画像データに基づいて、制御装置7は各種画像処理を行う。かかる画像処理が行われている間に、制御装置7は、モータ5,6を駆動制御してテーブル2を次の検査エリアへと移動せしめる。制御装置7は、ここでの画像データについても画像メモリへ格納する。一方、画像メモリでの画像処理が一旦終了した場合、すでに画像メモリには次の画像データが記憶されているので、速やかに制御装置7は次の画像処理を行うことができる。つまり、検査は、一方で次なる検査エリア(m+1番目)への移動及び画像入力を行い、他方ではm番目の画像処理及び比較判定を行う。以降、全ての検査エリアでの検査が完了するまで、交互に同様の上記並行処理が繰り返し行われる。このように、本実施の形態の印刷状態検査装置1においては、制御装置7の制御により検査エリアを移動しながら、順次画像処理を行うことにより、プリント基板K上のクリームハンダHの印刷状態を高速かつ確実に検査することができるようになっている。
【0074】
次に、制御装置7の行う画像処理及び演算処理、並びに、比較判定処理について説明する。まず、第1の撮像において得られた画像データを用いて、クリームハンダHの印刷されたハンダ領域が抽出される。すなわち、制御装置7は、画像データのうち輝度に関するデータを所定の閾値によって二値化する。第1の撮像による画像データは、上述のように、ハンダ領域は明るく、それ以外の領域は暗くなっている。このため、明るい領域をハンダ領域として認識させることで、ハンダ領域及びクリームハンダHの印刷されていない非計測対象分物としてのプリント基板K面である非ハンダ領域が抽出されるようになっている。
・・・
【0108】
(j)上記実施の形態では、印刷状態検査装置1は白色光照明L及び照明装置3を備えているが、白色光照明Lを省略するとともに、照明装置3に代えて、赤、緑、青のそれぞれ位相の異なる光成分パターン及び紫外線を照射可能な照明装置を設けてもよい。すなわち、該照明装置は、光源と、集光レンズと、照射レンズと、フィルタ格子縞板を備えている。光源は、赤、緑、青色の波長(白色光)に加えて、紫外線も同時に発光可能となっている。また、フィルタ格子縞板は、赤、緑、青色のそれぞれの波長について縞状に遮光(透光)させるとともに、紫外線の全透光を許容するようになっている。また、この場合、CCDカメラ4に代えて、赤、緑、青色の波長域、及び、紫外線について同時に撮像し、各波長域毎に分離した画像データを得られるCCDカメラが採用される。
【0109】
このような構成とすることで、1回の撮像を行うだけで、4つの画像データを得ることができる。
そして、これら4つの画像データのうち、紫外線の画像データは、計測対象物の領域抽出に利用でき、赤、緑、青色のそれぞれの波長域の3画像データは、高さ算出に利用できる。」

(6)甲5の記載事項

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甲5には次の記載がある。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式を用いた印刷方法に関する。
続きを表示(全16行)
・・・
【0023】
本発明のインクジェット記録方式の印刷方法(以下、印刷方法ともいう)では、第1印刷工程で水性インク組成物によってインク非吸収性または低吸収性の記録媒体上に記録された印刷画像に耐擦性を付与するため、第2印刷工程でオーバーコート液としての水性液体組成物を前記印刷画像表面に印刷する。本発明における水性液体組成物は、その組成により、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対して優れた濡れ性を有し、また乾燥特性にも優れるため、乾燥後は記録媒体表面にムラや曇りがなく、耐擦性に優れたオーバーコート層(以下、塗布層ともいう)を形成することができる。従って、記録媒体と記録媒体上に形成された記録画像との境界面で剥離する現象も抑制される。また、本発明における水性インク組成物は、その組成により、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対して優れた濡れ性を有し、また乾燥特性にも優れるため、滲みや濃淡ムラが抑制された印刷画像を形成することができる。
・・・
【0027】
着色剤として使用できる染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建築染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録方式に使用される各種染料を用いることができるが、上述のように耐久性の点から水不溶性の分散染料が好ましい。
・・・
【0090】
1.1.7.4ピロリドン樹脂誘導体
本発明の印刷方法に用いられる水性インク組成物及び水性液体組成物は、好ましくはピロリドン樹脂誘導体を含むことができる。本発明におけるピロリドン樹脂誘導体は水溶性を示すものから選ばれる。またピロリドン樹脂誘導体は前述のピロリドン誘導体とは機能が異なり、これを含んだ水性インク組成物及び水性液体組成物のフィルム系メディアへの濡れ性を向上させ、さらに印刷画像の耐擦性を向上させる効果がある。記録媒体としてポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルム系であるインク非吸収性のものを用いた場合、水性インク組成物及び水性液体組成物の小滴を付着させた際の濡れ拡がりが均一となって、水性インク組成物においては濃淡ムラや滲みの少ない印刷画像が得られ、水性液体組成物においてはムラやはじきの少ない均一なオーバーコート層が得られるという特性を持つ。その理由は定かではないが、推察するに、ピロリドン樹脂誘導体の分子骨格構造に含まれるピロリドン構造がフィルム系記録媒体に対して親和性が高いため、それを含む水性インク組成物及び水性液体組成物にもフィルムに対する濡れ性が向上するものと思われる。
【0091】
そのようなピロリドン樹脂誘導体として試薬品や市販品をそのまま用いることができ、具体的には試薬品としてポリビニルピロリドンK-15、ポリビニルピロリドンK-30、ポリビニルピロリドンK-60、ポリビニルピロリドンK-90、ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)コポリマー(以上全て東京化成工業株式会社製)、N-ビニルピロリドン/スチレン共重合体、N-ビニルピロリドン/メタクリル酸ジエチルアミノメチル共重合体(以上全て純正化学株式会社製)等が挙げられる。また市販品として詳しくは、ルビスコースK17(ポリビニルピロリドン)、ルビスコースK30(ポリビニルピロリドン)、ルビスコースK90(ポリビニルピロリドン)、ルビスコースVA73E(酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体)、ルビスコースVA64P(酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体)、ルビスコースVA55I(酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体)、ルビスコースVA37E(酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体)、ルビスコースVA37I(酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体)、ルビスコースPlus(ポリビニルカプロラクタム)、ルビセットClear(<ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール>コポリマー)(以上全てBASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。」

(7)甲6の記載事項

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甲6には次の記載がある。

「[0001]本発明は、特に錠剤やカプセル剤、食品等の経口製品の表面にマーキングを施すために、インクジェット方式での印刷に好適なインクに関する。
・・・
[0070][実施例1]
以下に示す成分を配合し、プロペラ攪拌機にて室温で1時間攪拌した。
続きを表示(全58行)
成分 量
(重量部(以下、部という))
活性炭 10.0
(平均粒径;25μ,m、平均細孔直径;2.8nm)
ポリビニルピロリドン 8.5
(粘度平均分子量;4万、K値30、数平均分子量6,401、
重量平均分子量27,739、Z平均分子量71,598)
水 81.5
[0071]ついで、えられた混合物に対し、0.7mm径ガラスビーズ150gをペイントシェイカー用ポットに入れ、3時間振とうした。
この分散液に含まれている粗大粒子を除去処理して全粒子の90%以上の分散粒子径が500nm以下、固形分濃度が10重量%となるように調整して「分散液1」とし、以下の方法でインク化をおこなった。
[0072]成分 量(部)
分散液1(固形分10%) 50.0
グリセリン 10.0
エタノール 10.0
脂肪酸モノグリセリド 3.0
水 27.0
上記配合にて30分間撹拌し、インクを作製した。
得られたインクは、平均分散粒子径が350nm、粘度が3.1mPa・S、表面張力が33mN/mであった。また、得られたインクは、外観上均ーな黒色を示していた。
さらに、上記インクについて、経時安定性、吐出性、定着性、耐光性、耐水性を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
・・・
[0075](ハ)定着性乾燥性試験
インクジェット印刷機で印刷した直後の錠剤を試料とし、不織布で試料の印字部を擦り、インクの伸展の有無および不織布へのインクの転写の有無を調査した。
・・・
[0078][比較例1]
実施例1において、活性炭を弁柄に、ポリビニルピロリドンをアラビアゴムに代えた以外は、同様にして、インクを作製した。
[比較例2]
実施例1において、活性炭を黒色酸化鉄に代えた以外は、同様にして、インクを作製した。
[0079][実施例2]
以下に示す成分を配合し、プロペラ撹拌機にて室温で1時間撹拌した。
[0080] 成分 量
活性炭 10.0
(平均粒径;30μm、平均細孔直径;2.1nm)
ポリビニルピロリドン 10.0
(粘度平均分子量;2.5万、K値25、数平均分子量4,495、
重量平均分子量18,291、Z平均分子量51,018)
水 80.0
・・・
[0083][実施例3]
以下に示す成分を配合し、プロペラ撹拌機にて室温で1時間撹拌した。
[0084] 成分 量
活性炭 10.0
(平均粒径;35μm、平均細孔直径;3.4nm)
ポリビニルピロリドン 7.0
(粘度平均分子量;4万、K値30、数平均分子量6,401、
重量平均分子量27,739、Z平均分子量71,598)
水 83.0
[0085]ついで、えられた混合物に対し、0.5mm径ジルコニアビーズを370gをペイントシェイカー用ポットに入れ、7時間振とうした。
この分散液に含まれている粗大粒子を除去処理して全粒子の90%以上の分散粒子径が500nm以下、固形分濃度が10重量%となるように調整して分散液3とし、つぎのインク化をおこなった。
[0086]成分 量(部)
分散液3(固形分10%) 48.0
ショ糖脂肪酸エステル 10.9
水 41.1
[0087]上記配合にて30分間撹拌し、インクを作製した。
得られたインクは、平均分散粒子径が316nm、粘度が4.8mPa・S、表面張力が33mN/mであった。また、得られたインクは、外観上均ーな黒色を示していた。」

2 対比・判断

2-1 本件発明2について

(1)本件発明2と甲1発明との対比

ア(ア)構成aの「オーバーコート剤が塗布されたオーバーコート層」は構成Aの「コーティング層」に相当する。

(イ)構成aの「用紙上」は用紙の表面にほかならないから、構成Aの「表面」に相当する。

(ウ)構成aでは、「オーバーコート剤が塗布されていない部分を検出する」のであるから、少なくとも前記用紙上の一部においてオーバーコート剤が塗布されていない場合が想定されているといえ、よって、構成aで、「用紙」が「用紙上にオーバーコート剤が塗布されたオーバーコート層を有する」ことは、構成Aの「表面の一部にコーティング層が設けられた」ことに相当する。

(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、構成aの「用紙」と構成Aの「固体製剤」とは、共に「表面の一部にコーティング層が設けられた物品」である点で共通する。

イ(ア)構成b・b1の「該用紙上に塗布されたオーバーコート剤には可視光を透過し紫外光をある程度反射する特性を有する物質(例えば、各粒子の粒径が0.1μmよりも大きい酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができ、より好ましくは、例えば、各粒子の粒径が0.2μm以上0.4μm以下の酸化チタンや酸化亜鉛等)が混入され、紫外光を反射する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤は当該紫外光を実質的に全反射する」こと、における「紫外光」は、構成b4において、該紫外光の反射特性が「例えば紫外線発光ダイオード等からなる紫外光源から波長が355nm近傍の紫外光を出力した際の紫外光用紙からの反射光の光強度」を測定することによって検出されていることに照らし、「波長355nm近傍の紫外光」であるといえる。

よって、構成b・b1の「紫外光」は構成B1の「波長域が380nm未満の紫外線」に相当し、構成b・b1の

「該用紙上に塗布されたオーバーコート剤には可視光を透過し不可視光をある程度反射する特性を有する物質(例えば、各粒子の粒径が0.1μmよりも大きい酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができ、より好ましくは、例えば、各粒子の粒径が0.2μm以上0.4μm以下の酸化チタンや酸化亜鉛等)が混入され、紫外光を反射する特性を有する物質が混入されたオーバーコート剤は当該紫外光を実質的に全反射する」

ことは、構成B1の、

「前記コーティング層、が設けられたコーティング領域」が「可視光を透過し、かつ、波長域が380nm未満の紫外線を反射する」

ことに相当する。

(イ)構成aの「オーバーコート剤が塗布されていない部分」は、構成B2の「非コーティング領域」に相当し、構成aの該部分では、用紙が露出していることになる。よって、構成b2の「用紙」は、構成B2の「前記コーティング層が設けられていない非コーティング領域」に相当するといえる。

また、構成b2の「紫外光をその反射特性に応じてある程度反射する」ことは、構成b1の(コーティング剤が)「紫外光を実質的に全反射する」ことと比べると、コーティング剤よりも用紙の方が紫外光の反射率が低く、その分、コーティング剤よりも用紙の方が紫外光を相対的に多く吸収・透過することを意味するといえる。

そうすると、構成b2の、「当該紫外光をその反射特性に応じてある程度反射するものであ」る「用紙」は、構成B2の「前記波長域の紫外線を吸収し、かつ、前記コーティング層が設けられていない非コーティング領域」に相当するといえる。

ウ 構成b4の「例えば紫外線発光ダイオード等からなる紫外光源から波長が355nm近傍の紫外光を出力した際の紫外光の用紙からの反射光の光強度は、オーバーコート剤の反射光の光強度に比較して小さくなる」ことは、構成B4の「前記コーティング領域及び非コーティング領域に前記波長域の紫外線を照射した場合の前記非コーティング領域に対する前記コーティング領域の階調値の差が」一定値「以上のもの」であることに相当する。

エ(ア)構成b6の「該オーバーコート剤の下に形成される所定の画像を構成するインク」は、「オーバーコート剤」・「画像」・「用紙」の関係が構成b5で「用紙上には、画像形成部により所定の画像が形成された上に、前記オーバーコート剤が塗布されており」と特定されていることに照らし、構成B5の「表面と前記コーティング層の間の少なくとも一部に」「設けられ」た「インク層」に相当する。

(イ)構成b6で、「インクの色素」を構成する「顔料」は、構成B6の「前記インク層に含まれる顔料」に相当する。

(ウ)構成b6の「印刷表面の耐擦過性の向上、印刷済み用紙を積み重ねた際に印刷表面のインクが他の用紙の裏面に付着して剥がれるブロッキングの防止、耐水性・耐候性の向上」なる「オーバーコート剤の塗布」は、構成B6の「顔料定着」と、その機能の点で共通する。

(エ)また、上記イ(ア)で説示したとおり、構成b6の「オーバーコート剤」(が塗布されたオーバーコート層)は「波長355nm近傍の紫外光」を反射する機能を有するものであり、この機能は、構成b1によれば、「紫外光をある程度反射する特性を有する物質(例えば、各粒子の粒径が0.1μmよりも大きい酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができ、より好ましくは、例えば、各粒子の粒径が0.2μm以上0.4μm以下の酸化チタンや酸化亜鉛等)」なる成分「が混入され」ることにより発揮されるものである。

よって、構成b6の「オーバーコート剤」(が塗布されたオーバーコート層)と構成B6の「オーバーコート層」とは、その「前記波長域の紫外線に対し光反射性を有する」との機能、及び、この機能がオーバーコート層に含まれる「成分」により発揮される点において共通する。

(オ)構成aの「オーバーコート剤が塗布されたオーバーコート層」、その他、構成b6ほかで「オーバーコート剤が塗布され」ている領域の該「オーバーコート剤」の塗布層は、構成B6の「オーバーコート層」に相当する。

オ 構成cの「前記紫外光源により用紙に対し355nm近傍の紫外光を出力する工程」は、上記のとおり用紙上にはオーバーコート剤(層)の塗布領域と塗布されていない部分とが存在することから、構成Cの「前記コーティング領域及び非コーティング領域に、前記波長域の紫外線を少なくとも含む照射光を照射する照射工程」に相当するといえる。

カ 構成dの「前記紫外光源からの355nm近傍の紫外光が前記用紙で反射された紫外光を、窒化ガリウム(GaN)と窒化アルミニウムガリウム(ALGaN)を用いた紫外光検出センサ、一般的なフォトトランジスタ、その他フォトダイオード等の、前記紫外光の波長に感度を有する紫外光検出素子により検出する工程」は、構成Dの「前記照射光が前記コーティング領域で反射された反射光を受光し、前記コーティング領域及び非コーティング領域を撮像する撮像工程」と、共に「前記照射光が前記コーティング領域で反射された反射光を受光し、前記コーティング領域及び非コーティング領域を検出する工程」である点で共通する。

(2)本件発明2と甲1発明との一致点・相違点

本件発明2と甲1発明とは下記アの点で一致し、下記イの各点で相違する。

ア 一致点

「A’表面の一部にコーティング層が設けられた物品の検査方法であって、
B’ 前記物品は、
B1’ 可視光を透過し、かつ、波長域が380nm未満の紫外線を反射する前記コーティング層、が設けられたコーティング領域と、
B2 前記波長域の紫外線を吸収し、かつ、前記コーティング層が設けられていない非コーティング領域とを少なくとも有し、
B4’ 前記コーティング領域及び非コーティング領域に前記波長域の紫外線を照射した場合の前記非コーティング領域に対する前記コーティング領域の階調値の差があり、
B5’ 前記物品の表面と前記コーティング層の間の少なくとも一部にインク層が設けられており、
B6’ 前記コーティング層は、前記インク層に含まれる顔料を前記物品の表面に定着させ、かつ前記波長域の紫外線に対し光反射性を有するオーバーコート層であり、
C 前記コーティング領域及び非コーティング領域に、前記波長域の紫外線を少なくとも含む照射光を照射する照射工程と、
D’ 前記照射光が前記コーティング領域で反射された反射光を受光し、前記コーティング領域及び非コーティング領域を検出する検出工程とを含む
E’ 物品の検査方法。」

イ 相違点

(ア)相違点1(構成Aほか)

物品(検査対象物)が、本件発明2では「固体製剤」であるのに対し、甲1発明では「用紙」である点。

(イ)相違点2(構成B1)

コーティング領域が透過する可視光の波長域が、本件発明2では「380nm~760nm」と特定されるのに対し、甲1発明では波長域の特定がない点。

(ウ)相違点3(構成B3)

コーティング領域と非コーティング領域とに可視光を照射した場合の両領域の階調差が、本件発明2では5未満であるのに対し、甲1発明では、前提として該両領域に可視光を照射する構成を備えず、該階調差の有無についても特定がない点。

(エ)相違点4(構成B4)

コーティング領域と非コーティング領域とに紫外光を照射した場合の両領域の階調差が、本件発明2では5以上であるのに対し、甲1発明では、該階調差の値について特定がない点。

(オ)相違点5(構成B6・B7)

オーバーコート層の「前記インク層に含まれる顔料を前記固体製剤の表面に定着させ、かつ前記波長域の紫外線に対し光反射性を有する」という機能が、本件発明2ではコーティング層が該機能を有する「数平均分子量2000~200000の範囲内のポリビニルピロリドン」である「顔料定着成分を少なくとも含む」ことにより発揮されるのに対し、甲1発明では、コーティング層(のコーティング剤)が当該機能を有する特定の顔料定着成分を含むのか、不明である点。

(カ)相違点6(構成D)

コーティング領域及び非コーティング領域を検出する工程が、本件発明2では「撮像する撮像工程」であるのに対し、甲1発明は、「窒化ガリウム(GaN)と窒化アルミニウムガリウム(ALGaN)を用いた紫外光検出センサ、一般的なフォトトランジスタ、その他フォトダイオード等の、前記紫外光の波長に感度を有する紫外光検出素子」なる単センサによる検出工程である点。

(3) 相違点についての判断

ア 相違点5について

(ア)事案に鑑み相違点5について検討する。

(イ)甲5・6何れにも、ポリビニルピロリドンが紫外光反射能を有することについては言及がないし、証拠を要しない程度に周知の技術事項であるともいえない。

(ウ)上記(イ)によれば、オーバーコート層(剤)に対し、「可視光を透過し紫外光をある程度反射する特性を有する物質(例えば、各粒子の粒径が0.1μmよりも大きい酸化チタンや酸化亜鉛等を用いることができ、より好ましくは、例えば、各粒子の粒径が0.2μm以上0.4μm以下の酸化チタンや酸化亜鉛等)が混入され」る甲1発明において、当業者が、該物質に替えて、紫外線を反射する性質を有する物質として、甲5・6の記載事項に基づいて、当該性質を有するか否か不明であるポリビニルピロリドンを採用する動機付けは存在しない。

よって、甲5・6の記載事項を参照したとしても、甲1発明において、当業者が、ポリビニルピロリドンなる成分を採用する動機付けは、それが顔料インクへの混入であっても存在せず、まして、相違点5に係る、オーバーコート層へ前記目的で該成分を混入する動機付けは存在しない。

(エ)仮に、ポリビニルピロリドンの紫外線反射能が周知の技術事項であるとしても、下記a~cのとおり、相違点5に係る、顔料インクのオーバーコート層における顔料定着成分として、数平均分子量が2000~200000の範囲内のポリビニルピロリドンを採用するとの技術事項について、甲5・6の記載事項個々から、また、組み合わせたとしても、導き出すことができない。

a インク印刷層の耐擦性や剥離防止など、広義のインク層定着性向上のためにポリビニルピロリドンを用いることは、甲5に記載されている。

しかし、甲5に開示されるのは顔料ではなく染料インクのオーバーコート層への含有に関する技術事項であり、さらに、ポリビニルピロリドンの数平均分子量については特定されない。

顔料と染料とでは、少なくとも着色成分の粒子径が大きく異なることから、染料インクに対し甲5に開示されるとおりポリビニルピロリドンが定着性向上に有効であったとしても、直ちに顔料インクに対し同等の効果があるとはいえない。また、仮に前記同等の効果が推定・予測できたとしても、甲5の記載事項から、相違点5に係るポリビニルピロリドンの数平均分子量範囲を導き出すことはできない。

b また、甲6の記載では、インクについては平均分散粒子径が100nmのオーダーであるから顔料インクであるといえ、用いられるポリビニルピロリドンの数平均分子量は構成B7に特定される数値範囲内のものである。

しかし、ポリビニルピロリドンは当該顔料インク自体の成分として含有しており、顔料インクによる印刷層のオーバーコート層に当該数平均分子量数値範囲内のポリビニルピロリドンを含有させることについては開示がない。

また、該成分と、顔料インクの印刷対象への定着などの作用効果との直接的な因果関係についても開示がない。

c また、甲5・甲6の記載事項を合わせ読んだとしても、上記a・bのとおり、そもそも顔料インクの顔料定着成分としてポリビニルピロリドンをオーバーコート層の成分として採用することについての開示が両文献を通じ見出せず、顔料インクのオーバーコート層における顔料定着成分として、数平均分子量が2000~200000の範囲内のポリビニルピロリドンを採用するとのまとまった技術事項を導き出すことはできない。

(オ)その他、甲2~4にも、相違点5に相当する技術事項は開示されない。

(カ)以上のとおりであるから、甲1発明において、相違点5の構成とすることは、当業者であっても甲2~6及び周知技術に基づいて容易に想到し得たこととはいえない。

イ 小括

上記アのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された技術事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に相当し得るものとはいえない。

2-2 本件発明3・4について

本件発明3・4は、本件発明2をさらに減縮した発明であり、上記相違点5に係る構成B6・B7を含むから、本件発明3・4と甲1発明との間には、相違点5と同様の相違点が存在する。

よって、上記2-1(3)で説示したものと同様の理由により、本件発明3・4は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された技術事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に相当し得るものとはいえない。

3 申立人取消理由1についてのまとめ

以上、1・2のとおりであるから、申立人取消理由1によって本件発明2~4に係る特許を取り消すことはできない。

第5-2.申立人取消理由2について

1 構成B1・B2はそれぞれ、コーティング層(領域)の光学的性質について、可視光を透過すること、紫外光を反射することを特定するものである。

2 構成B3では、前記コーティング層(領域)の光学的性質について、構成B1で特定した可視光透過性に関して、その程度を、可視光を照射した場合の反射光を撮像した結果における階調差を尺度として特定するものである。

3 構成B4では、前記コーティング層(領域)の光学的性質について、構成B2で特定した紫外光反射性に関して、その程度を、紫外光を照射した場合の反射光を撮像した結果における階調差を尺度として特定するものである。

4 本件特許明細書【0015】の「前記波長域の可視光照射下では、目視又はカメラ等による撮像手段によってコーティング領域を視認することが困難となっている。」、「コーティング層をオーバーコート層として使用する場合には印刷画像の視認性が低下するのを抑制することができる。」なる記載、及び、本件発明の目的に係る【0007】の「印刷画像の視認性が低下するのを抑制し、かつ、プライマーコート層やオーバーコート層等のコーティング層の印刷不良の有無を確認することが可能な固体製剤及びその検査方法を提供することにある。」なる記載からみて、本件発明2において、可視光照射下での視認性については、目視を観察手段とすることも想定され、また、印刷画像の視認性を確保することを目的としているといえる。

一方、前記【0007】の記載から、本件発明2の検査方法の目的は、「プライマーコート層やオーバーコート層等のコーティング層の印刷不良の有無を確認すること」にあるといえ、本件発明の効果に関する同【0022】の「本発明によれば、前記波長域の紫外線照射によりコーティング領域の識別が可能となり」なる記載に照らし、前記オーバーコート層の印刷不良の有無は、紫外線照射による撮像によって検出することが想定されている。

そうすると、構成B3は、固体製剤の印刷画像(文字等)が、オーバーコート層を介しても可視光照射下において視認可能であるべきであるという、固体製剤表面の印刷形態に要求される一般的な課題を含めて特定したものであり、該視認性は、本件発明において、必ずしも可視光照射下においての撮像により検査されることを要しないといえるから、構成B1・B3は、固体製剤表面の印刷画像を覆うコーティング層に対し要求される性光学的質を該製剤の需要者にとってのものも含め特定したものと理解され、構成B1・B3と、撮像検査に係る構成C・Dとの間に必ずしも技術的な関連性を要するものではなく、構成AやEの、検査対象としての「固体製剤」との技術的関連性があることで足りるといえる。

5 構成B4は、オーバーコート層の有無(領域)を、「紫外線を少なくとも含む照射光を照射」した状況下(構成C)で撮像(構成D)することで検出するために必要な紫外線反射能に関する性質を特定するものであるから、構成C~Eとの間に技術的関係を有するといえる。

6 また、構成B5は、固体製剤表面上のインク層(印刷画像)とオーバーコート層(コーティング層)との層序を特定するものであり、ここで特定される層序であるから、可視光照射下の目視によってインク層が視認できる必要性のもと、オーバーコート層の存在確認のためには、該オーバーコート層に、その下のインク層の視認を困難にする可視光反射物質を混入することが不適切であることとなり、構成B6・B7において特定されるように、非可視光である紫外線を反射する物質の混入が必要となる。

よって、構成B5は、構成C~Eで特定されるように、オーバーコート層の紫外線反射能を利用して該層の有無検査を行うという本件発明の方法の前提となる、固体製剤とその表面のインク層に対するオーバーコート層の位置関係を特定するものと位置づけることができるから、構成B5は、構成C~Eと技術的関係性を有するといえる。

7 以上1~6のとおりであるから、構成B1・B3~B5は、構成C~Eの工程、及び該工程が対象とする固体製剤との間に技術的関係性を有するということができ、本件発明2~4はこの点で明確であり、上記申立人取消理由2によって本件発明2~4に係る特許を取り消すことはできない。

第6.むすび

上記第4.・第5.で説示したとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項2~4に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項2~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2021-700913

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