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特許拒絶査定不服審判

2024-003393

支持フィルム、積層基材、塗工装置、および塗工方法

審判番号
2024-003393
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-004912
請求日
2024年02月27日
審決日
2025年08月22日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社SCREENホールディングス
  • 【請求人代理人】西田 隆美
審判長/審判官
  • 審判長 川俣 洋史
  • 審判官 濱本 禎広
  • 審判官 山本 一
分類
P18 .121-Z (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022- 4912「支持フィルム、積層基材、塗工装置、および塗工方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 7月28日出願公開、特開2023-104110〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和4年1月17日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和 5年 8月23日付け:拒絶理由通知 同年10月18日 :意見書の提出 同年12月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月12日 :原査定の謄本の送達) 令和 6年 2月27日 :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 なお、後記第5の対比の議論のために、請求項1の記載を便宜上次のように構成A~E、Xに分説する。 「【請求項1】 (構成A)厚みが50μm以上の電解質膜を支持するための支持フィルムであって、 (構成B)ベースフィルムと、 (構成C)前記ベースフィルムの一方の面を覆う接着剤層と、 を有し、 (構成D)前記ベースフィルムの厚みは、50μm以上かつ300μm以下であり、 (構成E)被着体をPETフィルムとしたときの、JISZ0237の試験方法により測定される前記接着剤層の粘着力は、0.05N/cm以上である、 (構成X)支持フィルム。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由1(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 (進歩性の欠如)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2016-219180号公報(主たる引用例) 引用文献2.国際公開第2015/151923号 第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定 (1) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、前記引用文献1(特開2016-219180号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は、当審において付したものであり、以下同様である。 ア 【0010】~【0014】、【図1】 「【発明を実施するための形態】 【0010】 次に、本発明の一実施形態を説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に記す実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の実施形態の範囲に含まれるものである。 図1は、本発明の一実施形態に係る膜-電極接合体4の製造方法を説明するための概略図である。まず、本実施形態に係る膜-電極接合体4の製造方法では、図1(A)に示すように、電解質膜基材1を、平滑に保持した状態で加熱部2に積載する。電解質膜基材1は、固体高分子電解質膜10と、第1の多層構成プラスチックフィルム11と、第2の多層構成プラスチックフィルム12とからなり、固体高分子電解質膜10の上下面に、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12が不図示の粘着層を介して貼合されることで形成される。なお、第1の多層構成プラスチックフィルム11は、固体高分子電解質膜10の上下面にそれぞれ設けられ、固体高分子電解質膜10の各面の中央には少なくとも1つの開口部111が形成される。第2の多層構成プラスチックフィルム12は、第1の多層構成プラスチックフィルム11の少なくとも1つの開口部111に嵌合して、固体高分子電解質膜10の上下面にそれぞれ設けられる。さらに、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12は、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12で形成される電解質膜基材1の上下面側がそれぞれ平滑となるように設けられる。さらに、電解質膜基材1の上下面は、第1の多層構成プラスチックフィルム11と第2の多層構成プラスチックフィルム12とが隙間なく、重ならずに設けられるため、不連続な平面が形成される。」 「【図1】 [図:0001427455000001.jpg] 」 「【0011】 次いで、図1(B)に示すように、電解質膜基材1より上面の第2の多層構成プラスチックフィルム12を除去する。これにより、電解質膜基材1の上面は、第1の多層構成プラスチックフィルム11により形成された開口部111が露出した状態となる。 さらに、図1(C)に示すように、電解質膜基材1を加熱部2で加熱しながら、不図示の塗布装置にて液状の触媒インク3を、少なくとも固体高分子電解質膜10の第2の多層構成プラスチックフィルム12が貼合されていた領域に、露出した開口部111を介して塗布する。そして、図1(D)に示すように、加熱部20の熱により揮発成分を除去することで、電解質膜基材1の上面に触媒層31を形成する。 【0012】 その後、図1(E)に示すように、電解質膜基材1の表裏を逆転させ、電解質膜基材1の下面が図1(E)の紙面に対して上下方向の上側となるように配し、電解質膜基材1を平滑に保持した状態で加熱部2に積載する。 次いで、図1(F)に示すように、電解質膜基材1の下面に貼合された第2の多層構成プラスチックフィルム12を除去する。この際、第2の多層構成プラスチックフィルム12の除去は、図1(B)での処理と同様に行われる。 さらに、図1(G)に示すように、塗布装置にて液状の触媒インク3を、図1(C)での処理と同様に、電解質膜基材1の下面側に塗布する。そして、図1(H)に示すように、加熱部2の熱により揮発成分を除去することで触媒層31を付与することにより、両面に触媒層を有する膜-電極接合体4を得ることができる。 【0013】 なお、上記実施形態において、固体高分子電解質膜10は、湿潤状態で良好なプロトン導電性を示す高分子材料である。第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12は、粘着層を有するフィルムである。触媒インク3は、白金や白金と他の金属との合金等からなる触媒を担持した粉末カーボンと、樹脂とにより形成され、乾燥することで固化し触媒層31を形成する。 以下、固体高分子電解質膜10、触媒層31、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12を構成する材料の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。 【0014】 固体高分子電解質膜10を構成する高分子材料としては、具体的には、炭化水素系高分子電解質、フッ素系高分子電解質を用いることができる。炭化水素系高分子電解質膜としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどの電解質膜を用いることができる。フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン製Nafion(登録商標)、旭硝子製Flemion(登録商標)、旭化成製Aciplex(登録商標)、ゴア製GoreSelect(登録商標)などを用いることができる。炭化水素系電解質膜は、フッ素系高分子電解質に比べ、溶剤に対する染み込み、膨潤が少ないため、触媒インクを固体電解質膜に塗布するのにより好ましい。固体高分子電解質膜10の厚みは、5μm以上300μm以下程度に形成される。」 イ 【0022】、【0023】 「【0022】 上記構成によれば、ガラス転移温度付近での熱圧着が必要な工程を用いないため、熱ジワ、平面性に優れた高品質の膜-電極接合体4を製造することができる。加えて、固体高分子電解質膜10の対向する平面に、平面を形成する第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12を貼合することで、固体高分子電解質膜10の寸法変化が抑えられ、シワの発生を防止することができ、平面性に優れた膜-電極接合体4を製造することができる。また、ロール・ツー・ロール方式で固体高分子電解質膜10を使用しても不要な巻き跡の発生を抑制することができる。ここで、膜-電極接合体4を用いた燃料電池では、各電極に反応ガスを供給し、且つ電気化学反応により生成する水分や余剰のガスを排出するためのセパレータが、膜-電極接合体4に積層されることでセルが形成される。このとき、シワが無く平面性の良好な膜-電極接合体4を用いることにより、セパレータと膜-電極接合体4との間に隙間を生じさせることなくセルを形成することができるため、発電性能に優れた燃料電池を提供することができる。 【0023】 (2)粘着層の25℃における剥離力を0.02N/25mm以上、70℃以上100℃以下における剥離力が0.2N/25mm以上3.0N/25mm未満とする。 上記構成によれば、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12が固体高分子電解質膜10から、不用意に剥がれることを防止することができる。また、固体高分子電解質膜10への糊残りなく、固体高分子電解質膜10から第2の多層構成プラスチックフィルム12を剥離することができ、第2の多層構成プラスチックフィルム12が除去された第1の多層構成プラスチックフィルム11の粘着層への塗布した触媒インク3の染み込みを防止することができる。」 ウ 【0026】~【0029】 「【実施例1】 【0026】 実施例1では、ロール・ツー・ロール方式を用いて、膜-電極接合体4を上記実施形態と同様に製造し、その平面性等をした。 まず、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12の基となる、連続した多層構成プラスチックフィルムの基材として、ポリエチレンナフタレート(帝人デュポンフィルム製テオネックスQ51、厚み25μm)を用い、この連続した多層構成プラスチックフィルムの表面にアクリル系の粘着層(厚み10μm)を形成した。次いで、粘着層が形成された多層構成プラスチックフィルムを、セパレータでラミネートすることでフィルムを得た。さらに、得られたフィルムに、5cm×5cmの正方形形状の打抜き加工によりポリエチレンナフタレート側から粘着層まで切り込みを入れ、ポリエチレンナフタレート面に表面保護フィルム(サンエー化研製サニテクトPAC-3-60T)を貼合することで、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12を得た。更に、ロール・ツー・ロール方式で、第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12のセパレータを剥離し、固体高分子電解質膜10である炭化水素系フィルム(厚み11μm)の両面に位置合わせしてそれぞれ貼合し、両面の表面保護フィルムを剥離することにより、電解質膜基材1のロールを得た。このとき、固体高分子電解質膜10と第1および第2の多層構成プラスチックフィルム11,12との25℃における剥離力が0.07N/25mm、80℃における剥離力が1.0N/25mmとなるように粘着層を調整した。その後、得られたロール形態の電解質膜基材1を切り出し、加熱部2として80℃の吸着ステージ上で加熱した後、電解質膜基材1の上面の第2の多層構成プラスチックフィルム12を除去した。次いで、電解質膜基材1の上面の第2の多層構成プラスチックフィルム12が貼合されていた領域に、フッ素系高分子電解質膜分散溶液(旭化成イーマテリアルズ製SS700C/20)、白金触媒(田中貴金属製TEC10F50E-HT)、1-プロパノールおよび水からなる触媒インク3をダイコーターにて塗布し、10分間乾燥することで電解質膜基材1の上面に触媒層31を付与した。次いで、この電解質膜基材1を80℃の吸着ステージ上で表裏逆転して、電解質膜基材1の下面の第2の多層構成プラスチックフィルム12を除去した後、上面と同様にして触媒インク3を塗布・乾燥することで、両面に触媒層31が付与された膜-電極接合体4を得た。 【0027】 実施例1では、平面性等の評価として、触媒インク3を塗布する前の固体高分子電解質膜10の外観(巻き跡、多層構成プラスチックの形状の歪み、浮きの有無)と、得られた膜-電極接合体4の外観(巻き跡による線状ムラの有無、平面性、触媒インク3の染み込みの有無)を確認した。 また、実施例1の比較として、第2の多層構成プラスチックフィルム12を有しない電解質膜基材を作成し、この電解質膜基材を用いて膜-電極接合体を作成し、実施例1と同様の評価を行った(比較例1)。比較例1では、まず、実施例1と同様に連続した多層構成プラスチックフィルムの基材上に粘着層を形成し、これらをセパレータでラミネートすることでフィルムを得た。次いで、得られたフィルムを打抜き加工により貫通させ、第2の多層構成プラスチックフィルム12に相当する部分を除去することで、第1の多層構成プラスチックフィルム11を得た。さらに、第1の多層構成プラスチックフィルム11のセパレータを剥離し、固体高分子電解質膜10の両面に位置合わせしてそれぞれ貼合することで、第2の多層構成プラスチックフィルム12を有しない電解質膜基材のロールを得た。その後、この電解質膜基材のロールを用いて、実施例1と同様の方法で、電解質膜基材の両面に触媒層31を形成することで膜-電極接合体を得た。 【0028】 表1に、実施例1および比較例1における評価結果を示す。表1に示すように、実施例1では、固体高分子電解質膜10と多層構成プラスチックフィルムとを貼合する際に、第2の多層構成プラスチックフィルム12を除去することなく、加熱部2にて除去することで、触媒インク3塗布前の固体高分子電解質膜10の露出部に巻き跡が発生しないことが確認された。また、実施例1では、巻き跡が発生しなかったことから、第1の多層構成プラスチックフィルム11の形状の歪みや固体高分子電解質膜10からの浮きがないことも確認した。さらに、実施例1では、触媒インク3塗布後においても、巻き跡による線状ムラや、触媒インク3の染み込みがなく、平面性が確保されることを確認した。一方、比較例1では、第2の多層構成プラスチックフィルム12を除去することで、固体高分子電解質膜10に巻き跡が線状に発生することが確認された。このため、比較例1でのみ、巻き跡に起因する線状ムラが発生することが確認された。また、比較例1では、5cm×5cmの正方形の形状の開口部の角部においてシワ、歪み及び浮きが発生し、触媒インク3の塗布後に触媒インク3の染み込みが発生し、さらに、膜-電極接合体における触媒層31に発生したシワによって平面性の低下が確認された。 【0029】 【表1】 [図:0001427455000002.jpg] 」 エ 【0030】~【0032】 「【実施例2】 【0030】 次に、実施例2では、粘着層の剥離力による平面性等への影響を調査した。実施例2では、実施例1と同じ固体高分子電解質膜10、触媒インク3、および多層構成プラスチックフィルムの基材を用い、粘着層だけを変更し、固体高分子電解質膜10と多層構成プラスチックフィルムとの剥離力を調整することで、実施例1と同様の方法で膜-電極接合体4を作製した。さらに、加熱部2である吸着ステージ上で第2の多層構成プラスチックフィルム12を除去したときの固体高分子電解質膜10上への糊残りの有無と、膜-電極接合体4の第1の多層構成プラスチックフィルム11の浮きによる平面性、触媒インク3の粘着層への染み込みの有無を評価した。なお、実施例2では、25℃における剥離力が0.02N/25mm以上、且つ70℃以上100℃以下における剥離力が0.2N/25mm以上3.0N/25mm未満となる条件として、実施例2-1~2-3の3条件について評価を行った。また、比較例として、25℃または70℃における剥離力の条件のうち少なくとも一方の条件が、上記範囲を超える比較例2-1~2-3の3条件についても同様に評価を行った。 【0031】 表2に、実施例2および比較例2における剥離力の条件および評価結果を示す。評価の結果、25℃での剥離力が0.02N/25mm未満であると、電解質膜基材1を切り出したときに剥がれが生じることが確認された。また、表2に示すように、80℃での剥離力が0.2N/25mm未満では、不連続な平面部を除去したときに際に浮きが発生し、インクの染み込みが発生するだけでなく、シワにより平面性が低下することが確認された(比較例2-1,2-3)。さらに、80℃での剥離力が3.0N/25mm以上であると、不連続な平面部を除去したときに、固体高分子電解質膜上に糊残りが発生してしまうことがわかった(比較例2-2)。 【0032】 【表2】 [図:0001427455000003.jpg] 」 (2) 引用文献1から読み取れる認定事項 ア 引用文献1の【0010】及び【0014】から読み取れる「5μm以上300μm以下程度に厚みが形成される固体高分子電解質膜10の上下面にそれぞれ設けられる第1の多層構成プラスチックフィルム11」には、次に示す「第1の多層構成プラスチックフィルム11」も含まれていることは明らかである。 「50μm以上300μm以下程度に厚みが形成される固体高分子電解質膜10の上下面にそれぞれ設けられる第1の多層構成プラスチックフィルム11。」 イ 引用文献1の【0030】から、次の事項が読み取れる。 「(実施例2-3)の膜-電極接合体4は、(実施例1)と同じ、多層構成プラスチックフィルムの基材を用い、粘着層だけを変更したものであること。」 ウ 引用文献1の【0032】から、次の事項が読み取れる。 「(実施例2-3)の膜-電極接合体4の第1の多層構成プラスチックフィルム11の25℃剥離力が、0.5(N/25mm)であること。」 (3) 引用発明の認定 前記(1)の記載事項及び前記(2)の認定事項を総合すると、引用文献1には、(実施例2-3)の膜-電極接合体4の第1の多層構成プラスチックフィルム11に関する、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた記載箇所を参考までに括弧内に付してある。以下同様である。)。 <引用発明> 「50μm以上300μm以下程度に厚みが形成される固体高分子電解質膜10の上下面にそれぞれ設けられる、第1の多層構成プラスチックフィルム11であって、(前記(2)ア) 第1の多層構成プラスチックフィルム11の基となる、多層構成プラスチックフィルムの基材として、ポリエチレンナフタレート(厚み25μm)を用い、この多層構成プラスチックフィルムの表面に粘着層を形成し、(【0026】、前記(2)イ) 第1の多層構成プラスチックフィルム11の25℃剥離力が、0.5(N/25mm)である、(【0032】、前記(2)ウ) 膜-電極接合体4の第1の多層構成プラスチックフィルム11。」 2 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定 (1) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、前記引用文献2(国際公開第2015/151923号)には、以下の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は、特定の表面状態を有する基材フィルム、触媒転写シート、膜電極複合体の製造方法および触媒層被覆電解質膜の製造方法に関するものである。」 「[0024] 本発明の基材フィルムの厚みは製造する触媒層の厚みや製造装置により適宜決定でき、特に制限はない。5μm~500μmがハンドリングの観点から好ましい。また、生産性、コストや乾燥時の変形などの低減効果より50μm~200μmの厚みがより好ましい。」 (2) 引用文献2技術事項の認定 前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 <引用文献2技術事項> 「基材フィルムの厚みは製造する触媒層の厚みにより適宜決定でき、乾燥時の変形などの低減効果より50μm~200μmの厚みがより好ましいこと。([0024])」 3 引用文献4及び5に記載された事項並びに技術常識の認定 (1) 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2015-76276号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0014】 本発明の電解質膜搬送用粘着シートのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)に対する初期粘着力は、好ましくは0.3N/20mm~20N/20mmであり、より好ましくは0.5N/20mm~10N/20mmである。このような範囲であれば、電解質膜をハンドリング性よく搬送することができる粘着シートを得ることができる。なお、初期粘着力とは、外部刺激を与える前の粘着剤層の粘着力を意味する。また、粘着力は、JIS Z 0237:2000に準じた方法(試験温度:23℃、貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。粘着力測定用のPETフィルムとしては、例えば、東レ社製の商品名「ルミラーS10#25」が用いられ得る。」 (2) 引用文献5に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2021-164630号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0226】 なお、生体接触層の粘着力としては、0.5N/25mm以上20N/25mm以下の範囲が好ましい。粘着力の測定方法は、JIS Z 0237に示される方法が一般的であり、基材としてはSUS(ステンレス鋼)のような金属基板やPET(ポリエチレンテレフタラート)基板を用いることができるが、人の肌を用いて測定することもできる。人の肌の表面エネルギーは、金属や各種プラスチックより低く、テフロン(登録商標)に近い低エネルギーであり、粘着しにくい性質である。」 (3) 技術常識の認定 前記引用文献4及び引用文献5に例示されているように、次の事項は当業者にとって技術常識であると認められる。 <技術常識> 「粘着力の測定方法として、JIS Z 0237に示される方法が一般的であり、粘着力測定用の基材として、PETフィルムを用いること。」 第5 対比 1 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 (1) 構成Xについて ア 引用発明の「第1の多層構成プラスチックフィルム11」は、「固体高分子電解質膜10の上下面にそれぞれ設けられ「る」」ものであり、「固体高分子電解質膜10」を支持しているものといえるから、本願発明の「支持フィルム」に相当する。 イ したがって、本願発明である「支持フィルム」と引用発明である「第1の多層構成プラスチックフィルム11」は、「支持フィルム」の発明である点において一致する。 (2) 構成Aについて ア 引用発明の「50μm以上300μm以下程度に形成される厚みの固体高分子電解質膜10」は、本願発明の「厚みが50μm以上の電解質膜」に相当する。 イ したがって、前記(1)の検討も踏まえると、本願発明と引用発明は、「厚みが50μm以上の電解質膜を支持するための支持フィルム」である点において一致する。 (3) 構成Bについて ア 引用発明の「第1の多層構成プラスチックフィルム11の基となる、多層構成プラスチックフィルムの基材」は、本願発明の「ベースフィルム」に相当する。 イ したがって、本願発明と引用発明は、「ベースフィルム」を有する点において一致する。 (4) 構成Cについて ア 引用発明の「多層構成プラスチックフィルムの表面に」「形成し[た]」「粘着層」は、本願発明の「接着剤層」に相当する。 イ したがって、本願発明と引用発明は、「前記ベースフィルムの一方の面を覆う接着剤層」を有する点において一致する。 (5) 構成Dについて 本願発明と引用発明は、構成Dに関して、次に示す点において相違する。 本願発明においては、 「前記ベースフィルムの厚みは、50μm以上かつ300μm以下であ[る]」のに対して、 引用発明においては、 第1の多層構成プラスチックフィルム11の基となる、多層構成プラスチックフィルムの基材の厚みは、25μmである点。 (6) 構成Eについて 本願発明と引用発明は、構成Eに関して、次に示す点において相違する。 本願発明においては、 「被着体をPETフィルムとしたときの、JISZ0237の試験方法により測定される前記接着剤層の粘着力は、0.05N/cm以上である」のに対して、 引用発明においては、 第1の多層構成プラスチックフィルム11の25℃剥離力が、0.5(N/25mm)であるものの、当該剥離力が、どのような方法により測定されたものであるのか不明な点。 2 一致点及び相違点 前記1の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。 (1) 一致点 (構成A)厚みが50μm以上の電解質膜を支持するための支持フィルムであって、 (構成B)ベースフィルムと、 (構成C)前記ベースフィルムの一方の面を覆う接着剤層と、 を有する、 (構成X)支持フィルム、である点。 (2) 相違点 ア 相違点1(構成D) 本願発明においては、 「前記ベースフィルムの厚みは、50μm以上かつ300μm以下であ[る]」のに対して、 引用発明においては、 第1の多層構成プラスチックフィルム11の基となる、多層構成プラスチックフィルムの基材の厚みは、25μmである点。 イ 相違点2(構成E) 本願発明においては、 「被着体をPETフィルムとしたときの、JISZ0237の試験方法により測定される前記接着剤層の粘着力は、0.05N/cm以上である」のに対して、 引用発明においては、 第1の多層構成プラスチックフィルム11の25℃剥離力が、0.5(N/25mm)であるものの、当該剥離力が、どのような方法により測定されたものであるのか不明な点。 第6 当審の判断 1 相違点1についての判断 (1) 前記第4の2(2)において引用文献2技術事項として示したとおり、引用文献2には、次の事項が記載されている。 「基材フィルムの厚みは製造する触媒層の厚みにより適宜決定でき、乾燥時の変形などの低減効果より50μm~200μmの厚みがより好ましいこと。」 (2) 引用発明及び引用文献2技術事項は、いずれも基材フィルムに関するものであり、引用文献1の段落【0022】に記載されているように、引用発明においては、第1の多層構成プラスチックフィルム11は、固体高分子電解質膜10の寸法変化を抑えるものであるから、引用文献2技術事項に倣って、その厚みを50μm~200μmとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3) したがって、引用発明において、前記相違点1に係る本願発明の構成を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 相違点2についての判断 (1) 前記第4の3(3)において技術常識として示したとおり、次の事項は、本願出願前において技術常識である。 「粘着力の測定方法として、JIS Z 0237に示される方法が一般的であり、粘着力測定用の基材として、PETフィルムを用いること。」 (2) したがって、前記技術常識を踏まえれば、引用発明において、第1の多層構成プラスチックフィルム11の25℃剥離力を、被着体をPETフィルムとしたときの、JISZ0237の試験方法により測定したものとすることに格別の困難性は認められない。 (3) そして、前記方法により測定した25℃剥離力が「0.5(N/25mm)」であれば、「0.05N/cm以上」であることも明らかである。 3 総合検討 前記1及び2を総合的に勘案しても、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 請求人の主張について 請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしているので、以下、検討する。 (1) 請求人の主張の内容 引用文献1には、接着剤層の粘着力をJISZ0237の試験方法により測定することは記載されていない。粘着力の測定値は、試験方法により異なる値となるから、引用文献1に「25℃剥離力」の数値が記載されているとしても、引用文献1においてその試験方法が特定されていない以上、本願発明の「JISZ0237の試験方法により測定される接着剤層の粘着力は、0.05N/cm以上である」という事項が、引用文献1に開示されているとはいえない。 また、本願発明では、「被着体をPETフィルムとしたときの粘着力」が、0.05N/cm以上であることを限定している。これに対し、引用文献1には、「被着体をPETフィルムとしたときの粘着力」は記載されていない。 (2) 請求人の主張についての検討 前記2において検討したとおり、接着剤層の粘着力を、被着体をPETフィルムとしてJISZ0237の試験方法により測定することは技術常識にすぎないから、引用発明において、前記技術常識を踏まえ、25℃剥離力を前記方法により測定したものとすることに、格別の困難性はなく、当該試験方法による剥離力の値が前記相違点2に係る値を充足することも明らかである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-003393

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