特許異議申立
2019-700205
錠剤印刷方法
- 審判番号
- 2019-700205
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-002484外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年03月14日
- 審決日
- 2019年10月29日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社SCREENホールディングス
- 【権利者代理人】吉竹 英俊
- 【権利者代理人】有田 貴弘
- 【異議申立人】早房 長隆
- 分類
- P1651.121-YAA(A61J) / P1651.537-YAA(A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6397061号発明「錠剤印刷方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6397061号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2〕について訂正することを認める。
特許第6397061号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6397061号(以下,「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は,平成26年5月28日にされた出願(特願2014-109859号)の一部を平成29年1月11日に新たな出願(特願2017-2484号)としたものであり,平成30年9月7日にその特許権の設定登録がされ,平成30年9月26日に特許掲載公報が発行された。
その後,その特許について,平成31年3月14日に特許異議申立人早房長隆により特許異議の申立てがされ,当審は,令和1年5月21日付けで取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である令和1年7月17日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。その訂正の請求に対して,当審は,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,特許異議申立人からは応答がなかった。
2 訂正の適否
(1)訂正の内容(下線は訂正箇所を示す。)
特許権者は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1を,以下の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する(訂正事項1)。
「【請求項1】
表面に割線が刻設された錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法であって,
搬送されている搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と,
搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と,
前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対して前記割線に対して平行な方向に沿って印刷処理を行うとともに,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対して前記割線に対して平行な方向に印刷処理を行う第1印刷工程と,
前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された前記画像データに基づいて,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対して前記割線に対して平行な方向に沿って印刷処理を行うとともに,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対して前記割線に対して平行な方向に印刷処理を行う第2印刷工程と,
を備えることを特徴とする錠剤印刷方法。」(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)
また,特許権者は,本件特許の特許請求の範囲の請求項2について,以下の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する(訂正事項2)。
「【請求項2】
請求項1記載の錠剤印刷方法において,
前記第1印刷工程の後であって前記第2印刷工程の前に搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤の一方面を撮像する第3撮像工程をさらに備え,
前記第3撮像工程にて取得された画像データに基づいて搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤の位置ずれを検出し,その検出した位置ずれに基づいて前記第2印刷工程での搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のそれぞれに対する印刷位置を調整することを特徴とする錠剤印刷方法。」
さらに,特許権者は,本件特許の明細書の段落【0009】,【0011】,及び【0012】について,以下のとおりに訂正することを請求する(訂正事項3~5)。
(訂正事項3)
「【0009】
上記課題を解決するため,請求項1の発明は,表面に割線が刻設された錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法において,搬送されている搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と,前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち他方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対して前記割線に対して平行な方向に沿って印刷処理を行うとともに,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち他方面が表面である各錠剤の当該表面に対して前記割線に対して平行な方向に印刷処理を行う第1印刷工程と,前記第1撮像工程および前記第2撮像工程にて取得された前記画像データに基づいて,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち一方面が裏面である各錠剤の当該裏面に対して前記割線に対して平行な方向に沿って印刷処理を行うとともに,搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のうち一方面が表面である各錠剤の当該表面に対して前記割線に対して平行な方向に印刷処理を行う第2印刷工程と,を備えることを特徴とする。」
(訂正事項4)
「【0011】
また,請求項2の発明は,請求項1の発明に係る錠剤印刷方法において,前記第1印刷工程の後であって前記第2印刷工程の前に搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤の一方面を撮像する第3撮像工程をさらに備え,前記第3撮像工程にて取得された画像データに基づいて搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤の位置ずれを検出し,その検出した位置ずれに基づいて前記第2印刷工程での搬送方向と垂直な方向の前記複数の錠剤のそれぞれに対する印刷位置を調整することを特徴とする。」
(訂正事項5)
「【0012】
請求項1および請求項2の発明によれば,搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤の一方面および他方面を撮像して取得した画像データに基づいて,搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤の表面および裏面に対して割線に対して平行な方向に沿って印刷処理を行うため,割線が刻設された錠剤の裏面に対しても印刷処理を行うことができる。」
本件訂正請求は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1,2〕に対して請求されたものである。また,本件特許の明細書に係る訂正は,前記一群の請求項〔1,2〕を対象とするものであり,同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に適合する。
(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 請求項1及び2に係る訂正について(訂正事項1及び2)
請求項1及び2に係る「複数の錠剤」は,「搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤」を選択肢として含む上位概念であるから,「複数の錠剤」を「搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤」に変更する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に,明細書の発明の詳細な説明には,「複数の錠剤」の具体例として「搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤」が示されている(【0044】,【0047】,【0052】,【0054】,【0069】,【0070】,【図2】,【図6】~【図10】)。よって,「複数の錠剤」を「搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤」とする発明は,明細書に記載された事項の範囲内のものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないと認められる。
イ 段落【0009】,【0011】,【0012】の訂正について(訂正事項3~5)
「複数の錠剤」を「搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤」とする訂正は,訂正事項1及び2の特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると,訂正事項3乃至5の訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(3)小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条4項,並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合する。
したがって,本件特許の明細書,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2〕について訂正することを認める。
3 本件発明
上記2のとおり訂正の請求は認められるから,本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記2(1)参照。)。
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
本件発明1及び2に係る特許に対して,当審が令和1年5月21日に特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
なお,特許異議の申し立てで申し立てられた理由はすべて通知された。
ア [理由1]本件発明1は,甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。よって,本件発明1に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。
甲第1号証:国際公開2014/013973号
甲第2号証:国際公開2014/013974号
甲第3号証:特開2013-13711号公報
イ [理由2]本件発明1及び2に係る特許は,特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。
(2)甲号証の記載
ア 甲第1号証には,図面と共に次の記載がある。
「【0006】
よって,本発明は,かかる事情に鑑み,搬送されている錠剤の両方側の面に印刷したり,搬送されている錠剤の一方側の面及び他方側の面のうち,所望の一方の面に印刷したりできる印刷機を提供することを課題とする。」
「【0012】
かかる構成によれば,第1の印刷判定部は,第1の撮像装置によって撮像された画像に基づいて,錠剤の前記一方側を向いた面に印刷するか否かを判定すると共に,第2の印刷判定部は,第2の撮像装置で撮像された画像に基づいて,錠剤の前記他方側を向いた面に印刷するか否かを判定する。これにより,印刷機は,各印刷判定部の判定に基づいて,搬送されている錠剤の両方側の面に印刷したり,搬送されている錠剤の前記一方側を向いた面及び前記他方側を向いた面のうち,所望の一方の面に印刷したりできる。」
「【0013】
また,前記錠剤が,前記一方側を向いた面及び前記他方側を向いた面の何れか一方に前記割線を有する場合がある。この場合,前記印刷機は,前記第1の撮像装置によって撮像された画像に基づいて,前記錠剤の一方側を向いた面の溝状の割線の有無を判定する第1の割線判定部と,前記第2の撮像装置によって撮像された画像に基づいて,前記割線の有無を判定する第2の割線判定部とを備える。そして,前記第1の印刷判定部は,前記第1の割線判定部が割線有りと判定した際に,当該錠剤の一方側を向いた面に印刷しないと判定し,前記第2の印刷判定部は,前記第2の割線判定部が割線有りと判定した際に,当該錠剤の他方側を向いた面に印刷しないと判定することが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば,搬送装置は,前記一方側を向いた面及び前記他方側を向いた面の何れか一方の面に,分割するための割線を有する錠剤を搬送する。また,第1の割線判定部は,第1の撮像装置で撮像された画像に基づいて,割線の有無を判定する。そして,第1の割線判定部が,割線有りと判定した際に,第1の印刷判定部は,当該錠剤の前記一方側を向いた面に印刷しないと判定する。
【0015】
また,第2の割線判定部は,第2の撮像装置で撮像された画像に基づいて,割線の有無を判定する。そして,第2の割線判定部が,割線有りと判定した際に,第2の印刷判定部は,当該錠剤の前記他方側を向いた面に印刷しないと判定する。これにより,印刷機は,搬送されている錠剤のうち,割線を有する側の面に印刷することを防止でき,割線を有していない側の面に印刷することができる。」
「【0034】
貯留装置21は,上方から給入された錠剤1を内部に貯留すると共に,貯留している錠剤1を下方から排出する。そして,搬入装置22は,錠剤1を搬送する方向(以下「搬送方向」という)Xに沿う部位を上部に有して無端回転する搬入ベルト221と,搬入ベルト221に載置される錠剤1を複数列(本実施形態において4列)に整列させる整列部222とを備える。これにより,搬入装置22は,複数列に整列した状態の錠剤1を搬送装置23に供給できる。
【0035】
搬送装置23は,錠剤1の上方側に接した状態で錠剤1を搬送方向Xに搬送する第1の搬送部24と,第1の搬送部24の下流側に配置され,錠剤1の下方側に接した状態で錠剤1を搬送方向Xに搬送する第2の搬送部25と,を備える。なお,図示していないが,搬送装置23は,搬入装置22で整列させた錠剤1の列数に応じて,複数(本実施形態では,例えば4つ)並列されている。それに伴って,各撮像印刷ユニット4,5も,搬送装置23の数に応じて,複数(本実施形態では,例えば4つずつ)並列されている。」
「【0062】
下方印刷判定部622bは,下方割線判定部622aの判定結果に基づいて判定する。具体的には,下方印刷判定部622bは,下方割線判定部622aが「割線無し」と判定した際に,下方印刷装置44によって当該錠剤1の下方側の面に「印刷する」と判定する。反対に,下方印刷判定部622bは,下方割線判定部622aが「割線有り」と判定した際に,下方印刷装置44によって当該錠剤1の下方側の面に「印刷しない」と判定する。」
「【0068】
上方印刷判定部626bは,上方割線判定部626aの判定結果に基づいて判定する。具体的には,上方印刷判定部626bは,上方割線判定部626aが「割線無し」と判定した際に,上方印刷装置55によって当該錠剤1の上方側の面に「印刷する」と判定する。反対に,上方印刷判定部626bは,上方割線判定部626aが「割線有り」と判定した際に,上方印刷装置44によって当該錠剤1の上方側の面に「印刷しない」と判定する。」
「【0085】
また,本実施形態に係る印刷機において,搬送装置23は,分割するための割線11を一方側の面及び他方側の面の何れか一方に有する錠剤1を搬送する。また,下方割線判定部622aは,下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて,割線11の有無を判定する。そして,下方割線判定部622aが,「割線有り」と判定した際に,下方印刷判定部622bは,当該錠剤1の下方側の面に「印刷しない」と判定する。
【0086】
また,上方割線判定部626aは,上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて,割線11の有無を判定する。そして,上方割線判定部626aが,「割線有り」と判定した際に,上方印刷判定部626bは,当該錠剤1の上方側の面に「印刷しない」と判定する。これにより,印刷機は,搬送されている錠剤1のうち,割線11を有する面に印刷することを防止できる。即ち,印刷機は,割線11を有していない面に確実に印刷できる。」
「【0095】
図9に示す印刷機において,下方印刷判定部622bは,下方割線判定部622a及び下方検査部623の判定結果に基づいて判定する。具体的には,下方割線判定部622aが「割線有り」と判定する場合,及び,下方検査部623が異常と判定する場合のうち,何れか一つに該当する場合に,下方印刷判定部622bは,下方印刷装置44によって当該錠剤1の下方側の面に「印刷しない」と判定する。
【0096】
また,上方印刷判定部626bは,下方検査部623,下方印刷検査部624,側方検査部625,上方割線判定部626a及び上方検査部627の判定結果に基づいて判定する。具体的には,上方割線判定部626aが「割線有り」と判定する場合,下方検査部623が異常と判定する場合,下方印刷検査部624が異常と判定する場合,側方検査部625が異常と判定する場合,及び上方検査部627が異常と判定する場合のうち,何れか一つに該当する場合に,上方印刷判定部626bは,上方印刷装置55によって当該錠剤1の上方側の面に「印刷しない」と判定する。」
「【0113】
上記実施形態に係る印刷機において,各印刷装置44,45及び各印刷制御部622,626は,錠剤1の割線11の向きに関わらず,割線11が設けられた面と反対側の面に印刷する構成である。しかしながら,本発明に係る印刷機は,かかる構成に限られない。例えば,印刷機は,割線11がさまざまな位置(向き)の状態で,錠剤1が搬送されていても,割線11が設けられた面と反対側の面において割線11と対応する部位110を避けた状態で,当該部位110を基準として同じように印刷できる構成であってもよい。かかる構成の印刷機の5つの具体例が,以下に説明されている。
【0114】
まず,割線11と対応する部位110を基準として同じように印刷できる印刷機の第1の具体例が,図15~図20を参酌して,以下に説明されている。
【0115】
この印刷機では,上方撮像装置54が搬送装置23の上流側(例えば搬入装置22等)に配置されている。」
「【0121】
まず,上方割線判定部1622aは,上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて,割線11の有無を判定する(ステップ105b)。そして,錠剤1の上方側の面に割線11が有る場合(ステップ105bの「Y」),割線位置演算部1622dは,上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて,割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを演算する(ステップ105c)。その後,印刷情報演算部1622eは,印刷情報記憶部1622cに記憶されている印刷情報を呼び出し,呼び出した情報を,割線位置演算部1622dによって演算した角度だけ回転させるように演算する(ステップ105d)。そして,下方印刷装置44は,印刷情報演算部622eにおいて演算した情報に基づいて,錠剤1の下方側の面に印刷する。
【0122】
反対に,錠剤1の上方側の面に割線11が無い場合(ステップ105bの「N」),下方印刷が終了する。」
「【0124】
まず,下方割線判定部1626aは,下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて,割線11の有無を判定する(ステップ114b)。そして,錠剤1の下方側の面に割線11が有る場合(ステップ114bの「Y」),割線位置演算部1626dは,下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて,割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを演算する(ステップ114c)。その後,印刷情報演算部1626eは,印刷情報記憶部1626cに記憶されている印刷情報を呼び出し,呼び出した情報を,割線位置演算部1626dにおいて演算した角度だけ回転させるように演算する(ステップ114d)。上方印刷装置55は,印刷情報演算部1626eにおいて演算した情報に基づいて,錠剤1の上方側の面に印刷する。
【0125】
反対に,錠剤1の下方側の面に割線11が有る場合(ステップ114bの「N」),上方印刷が終了する。
【0126】
かかる構成によれば,割線11がさまざまな位置(向き)の状態で,錠剤1が搬送ベルト241によって搬送されていても,図19及び図20に示すように,下方印刷装置44は,割線11と対応する部位110を避けた状態で当該部位110を基準として,同じように印刷できる。例えば,印刷部位(符号)12は,錠剤1の割線11と対応する部位110に沿って印字されたものでもよい。具体的には,下方印刷装置44は,錠剤1における割線11の設けられた面と反対側の面102において,割線11と対応する部位110に対して一方側の領域113に第1の符号121を印刷すると共に,他方側の領域114に第2の符号122を印刷してもよい。
【0127】
同様に,割線11がさまざまな位置(向き)の状態で,錠剤1が搬送ベルト251によって搬送されていても,上方印刷装置55は,割線11と対応する部位110を避けた状態で当該部位110を基準として,同じように印刷できる。」
イ 上記記載及び図面の図示内容から,甲第1号証には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「割線が設けられた錠剤に対して印刷を行う錠剤印刷方法であって,
搬送されている錠剤の上方側の面を撮像し,
前記錠剤の下方側の面を撮像し,
上方撮像装置によって撮像された画像に基づいて,前記錠剤のうち上方側の面に割線がある錠剤の下方側の面に対して前記割線と対応する部位に沿って印刷を行い,
下方撮像装置によって撮像された画像に基づいて,前記錠剤のうち下方側の面に割線がある錠剤の上方側の面に対して前記割線と対応する部位に沿って印刷を行う,錠剤印刷方法。」
ウ さらに,甲第2号証には,図面と共に次の記載がある。
「【0105】
また,上記実施形態に係る印刷機において,各印刷装置44,55及び各印刷制御部622,626は,錠剤1の一方側(上記実施例では下方側)を向いた面及び他方側(上記実施例では上方側)を向いた面のうち,割線11を有する面に,印刷しない構成である。しかしながら,本発明に係る印刷機は,かかる構成に限られない。例えば,各印刷装置44,55及び各印刷制御部622,626は,錠剤1の割線11を有する面にも,印刷する構成でもよい。かかる構成の印刷機の6つの具体例が,以下に説明されている。」
「【0111】
まず,下方割線判定部622aは,下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて,割線11の有無を判定する(ステップ105b)。そして,錠剤1の下方側の面に割線11が無い場合(ステップ105bの「N」),印刷情報演算部622eが印刷情報記憶部622cに記憶されている印刷情報を呼び出し(ステップ105d),下方印刷装置44が,印刷情報演算部622eによって呼び出された情報を,錠剤1の下方側の面に印刷する。【0112】
反対に,錠剤1の下方側の面に割線11が有る場合(ステップ105bの「Y」),割線位置演算部622dは,下方撮像装置43によって撮像された画像に基づいて,割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを演算する(ステップ105c)。その後,印刷情報演算部622eは,印刷情報記憶部622cに記憶されている印刷情報を呼び出し,呼び出した情報を,割線位置演算部622dによって演算した角度だけ回転させるように演算する(ステップ105d)。そして,下方印刷装置44は,印刷情報演算部622eにおいて演算した情報に基づいて,錠剤1の下方側の面に印刷する。」
「【0114】
まず,上方割線判定部626aは,上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて,割線11の有無を判定する(ステップ114b)。そして,錠剤1の上方側の面に割線11が無い場合(ステップ114bの「N」),印刷情報演算部626eは,印刷情報記憶部626cに記憶されている印刷情報を呼び出す(ステップ114d)。上方印刷装置55は,印刷情報演算部626eによって呼び出された情報を,錠剤1の上方側の面に印刷する。
【0115】
反対に,錠剤1の上方側の面に割線11が有る場合(ステップ114bの「Y」),割線位置演算部626dは,上方撮像装置54によって撮像された画像に基づいて,割線11が所定の位置に対して何度回転した角度であるかを演算する(ステップ114c)。その後,印刷情報演算部626eは,印刷情報記憶部626cに記憶されている印刷情報を呼び出し,呼び出した情報を,割線位置演算部626dにおいて演算した角度だけ回転させるように演算する(ステップ114d)。上方印刷装置55は,印刷情報演算部626eにおいて演算した情報に基づいて,錠剤1の上方側の面に印刷する。
【0116】
かかる構成によれば,割線11がさまざまな位置の状態で,錠剤1が搬送ベルト241によって搬送されていても,図19及び図20に示すように,下方印刷装置44は,割線11を基準として,同じように印刷できる。したがって,例えば,印刷部位(符号)12は,錠剤1の割線11に沿って印字されたものでもよい。具体的には,下方印刷装置44は,錠剤1における割線11の設けられた面101において,割線11に対して一方側の領域111に第1の符号121を印刷すると共に,他方側の領域112に第2の符号122を印刷してもよい。」
「【0143】
次に,割線11を有する面にも印刷する印刷機の第6の具体例が,図32~図34を参酌して,以下に説明されている。尚,本具体例の錠剤1の表面は,図32~図34に示すように,一方側(図34では上側)を向いた面である第1の面101と,他方側(図34では下側)を向いた面である第2の面102と,第1の面101と第2の面102との周縁同士を接続する円筒状の周面103と,によって構成されている。また,本具体例の錠剤1では,割線11が第1の面101に設けられている。
【0144】
かかる印刷機において,錠剤1が割線11の設けられた第1の面101を下方に向けて第1の搬送部24によって搬送されている場合には,下方印刷装置45と上方印刷装置55とが錠剤1の各面101,102に対して以下の通りに印刷する。
【0145】
下方印刷装置45は,図32及び図34に示すように,第1の面101において,割線11に対して一方側(図32では左側)の第1領域111に第1の符号121を印刷すると共に,他方側(図32では右側)の第2領域112に第2の符号122を印刷する。この第2の符号122は,第1の符号121と異なる符合である。また,上方印刷装置55は,図33及び図34に示すように,第2の面102において,第1領域111と対応する第3領域(即ち,第1の面101の割線11と対応する部位110に対して一方側(図33では左側)の領域)113に第2の符号122を印刷すると共に,第2領域112と対応する第4領域(即ち,第1の面101の割線11と対応する部位110に対して他方側(図33では右側)の領域)114に第1の符号121を印刷する。
【0146】
一方,錠剤1が割線11のない第2の面102を下方に向けて第1の搬送部24によって搬送されている場合には,下方印刷装置45と上方印刷装置55が錠剤1の各面101,102に対して以下の通りに印刷する。
【0147】
下方印刷装置45は,第2の面102において,第3領域113に第1の符号121を印刷すると共に第4領域114に第2の符号122を印刷する。また,上方印刷装置55は,第1の面101において,第1の領域111に第2の符号122を印刷すると共に第2領域に第1の符号121を印刷する。
【0148】
かかる構成によれば,当該印刷機によって印刷された錠剤1は,割線11の位置において分割されたときにいずれの分割片においても第1の符号121と第2の符号122との両符号がそれぞれ印刷されている状態となる。」
エ 上記記載及び図面の図示内容から,甲第2号証には,次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「錠剤に印刷を行うに際し,
一方の面に割線を有する錠剤の両方の面に印刷を行うべく,
下方印刷装置で,下方側の面に割線のない錠剤の下方側の面に対して印刷を行うとともに下方側の面に割線がある錠剤の下方側の面に対しても印刷を行い,
上方印刷装置で,上方側の面に割線のない錠剤の上方側の面に対して印刷を行うとともに上方側の面に割線がある錠剤の上方側の面に対しても印刷を行い,
また,割線を有する面に印刷を行うに際しては,割線に沿って印刷を行うべく,
下方側の面に割線がある錠剤の下方側の面に対する上記の印刷を下方撮像装置によって撮像された画像に基づいて行い,
上方側の面に割線がある錠剤の上方側の面に対する上記の印刷を上方撮像装置によって撮像された画像に基づいて行う,錠剤印刷方法。」
オ 甲第3号証には,図面と共に次の記載がある。
「【0066】
<第1の搬送コンベア>
図13ないし図15は,第1の搬送コンベアを説明するための図である。
図13に示すように,第1の搬送コンベア4の上流端は,整列トラフ31の下流端の下方にオーバラップして配置されている。第1の搬送コンベア4は,搬送方向(図13左右方向)と直交する幅方向に所定の間隙4eを隔てて並設された複数本(ここでは8本)のタイミングベルト4aから構成されている。各間隙4eは,整列トラフ31の各溝31gの幅方向中央に配置されている。第1の搬送コンベア4の下方には,図14に示すように,当該第1の搬送コンベア4の幅方向および搬送方向に延在する支持プレート45が設けられている。支持プレート45の上面には,第1の搬送コンベア4の搬送方向に延びる8本の溝45aが一定間隔で形成されており,各溝45a内に各タイミングベルト4aがスライド自在に収容されている。」
「【0111】
<錠剤に対する検出・印刷・検査処理>
次に,第1,第2の搬送コンベア4,4’上の各錠剤Tに対する検出処理,印刷処理および検査処理について,図30ないし図35を用いて説明する。これらの図のうち,図30ないし図32は,第1の搬送コンベア4上の錠剤Tに対する各処理を,図33ないし図35は,第2の搬送コンベア4’上の錠剤Tに対する各処理をそれぞれ示している。
【0112】
各図においては,図示の便宜上,第1,第2の搬送コンベア4,4’上の各錠剤Tが,搬送方向と直交する幅方向に整列した状態を示している。実際の運転においては,第1,第2の搬送コンベア4,4’上の各錠剤Tは,搬送方向と直交する幅方向に整列しておらず,ランダムに配置されている。しかしながら,この場合でも,第1,第2の搬送コンベア4,4’の幅方向に隣り合う各錠剤Tの間隔は一定に維持されている。また,図示の簡略化のために,錠剤Tが幅方向に7列ではなく,4列で搬送される状態を示している。なお,錠剤Tとしては,一方の面に割線が形成された割線錠を例にとって示しており,ここでは,割線の形成されていない側の面にのみ印刷処理を施す場合を例にとって説明する。」「【0115】
各錠剤Tは,図30に示す検出位置において,第1の検出用ラインセンサカメラ5により検出される。このとき,各錠剤Tは,第1の検出用ラインセンサカメラ5のカメラレンズ51により撮影され,撮影された画像データがラインセンサ50により検出される。ラインセンサ50により検出された各錠剤Tの検出データには,錠剤Tの種別や位置,姿勢(向き),表裏の情報等を含んでいる。また,第1の検出用ラインセンサカメラ5による撮影は,錠剤Tの移動速度(第1の搬送コンベア4の搬送速度)と同期して行われる。」
「【0116】
第1の検出用ラインセンサカメラ5により検出された各錠剤Tは,図31に示すように,印刷位置において,第1のインクジェットプリンタ部6により印刷処理を受ける。このとき,第1のインクジェットプリンタ部6は,第1の検出用ラインセンサカメラ5で検出された各錠剤Tの検出データに基づいて,搬送中の各錠剤Tに印刷を行う。この例では,割線が形成された側の面には印刷処理が行われず,割線が形成されていない側の面にのみ印刷処理が行われる。また,印刷時には,第1のインクジェットプリンタ部6による印字タイミングは,錠剤Tの移動速度(第1の搬送コンベア4の搬送速度)と同期しており,これにより,移動中の錠剤Tに正確に印刷処理を施すことができる。」
「【0120】
このように,第1の搬送コンベア4上で検出・印刷・検査処理を受けた各錠剤Tは,反転装置8(図1)により表裏を反転されて,第2の搬送コンベア4’上に受け渡される。受け渡された各錠剤Tは,図33に示すように,第2の搬送コンベア4’により,複数列のまま図示矢印方向(第2の搬送方向)にランダムに搬送されてくる。このとき,各錠剤Tの表裏は,第1の搬送コンベア4上での表裏の状態と逆になっている。また,この場合でも,搬送方向と直交する幅方向において隣り合う各錠剤Tの間隔は一定である。
【0121】
各錠剤Tは,図33に示す検出位置において,第2の検出用ラインセンサカメラ5’により検出される。このとき,各錠剤Tは,第2の検出用ラインセンサカメラ5’のカメラレンズ51’により撮影され,撮影された画像データがラインセンサ50’により検出される。ラインセンサ50’により検出された各錠剤Tの検出データには,錠剤Tの位置や姿勢(向き),表裏の情報等を含んでいる。また,第2の検出用ラインセンサカメラ5’による撮影は,錠剤Tの移動速度(第2の搬送コンベア4’の搬送速度)と同期して行われる。
【0122】
第2の検出用ラインセンサカメラ5’により検出された各錠剤Tは,図34に示すように,印刷位置において,第2のインクジェットプリンタ部6’により印刷処理を受ける。このとき,第2のインクジェットプリンタ部6’は,第2の検出用ラインセンサカメラ5’で検出された各錠剤Tの検出データに基づいて,搬送中の各錠剤Tに印刷を行う。この例では,割線が形成された側の面には印刷処理が行われず,割線が形成されていない側の面にのみ印刷処理が行われる。また,印刷時には,第2のインクジェットプリンタ部6’による印字タイミングは,錠剤Tの移動速度(第2の搬送コンベア4’の搬送速度)と同期しており,これにより,移動中の錠剤Tに正確に印刷処理を施すことができる。」
カ 上記記載及び図面の図示内容から,甲第3号証には,次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「割線が形成された錠剤に印刷するに際して,搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤を撮像し,搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤に印刷を行う,錠剤印刷方法」
(3)取消理由についての当審の判断
(3-1)理由2:特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 請求項1及び2の記載に対するサポート要件違反の具体的な内容は次のとおりである。
「(1)請求項1には…(中略)…撮像や印刷処理の対象として「複数の錠剤」が特定されているものの,「複数の錠剤」がどのようなものであるかについては特定がない。
つまり,請求項1に記載された発明の「複数の錠剤」には,例えば搬送方向に沿った複数の錠剤が含まれる。
一方,発明の詳細な説明には,撮像や印刷処理の対象として,搬送方向と直交する方向の「複数の錠剤」が記載されているにすぎず(図2の記載等),搬送方向に沿った「複数の錠剤」は記載されていない。
そして,技術常識を考慮しても,搬送方向と直交する方向の「複数の錠剤」の記載から,請求項1の「複数の錠剤」にまで拡張ないし一般化できるものではない。
したがって,請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)請求項2は請求項1を引用するものであり,そして,請求項2にも「複数の錠剤」についての特定はない。
したがって,上記(1)で述べたのと同様の理由により,請求項2に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでない。」
イ これに対して、本件訂正の請求が認められたことにより、請求項1の「複数の錠剤」は「搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤」に訂正された。これは、明細書の「【0044】・・・搬送ドラム10には、搬送方向(搬送ドラム10の周方向)に垂直な方向、つまり搬送ドラム10の中心軸方向に沿って5列に吸着孔11が形設されている。従って、搬送ドラム10は、搬送方向と垂直な方向に5個の錠剤を整列させた5列にて複数の錠剤2を搬送する。本明細書では、搬送ドラム10の搬送方向と垂直な方向に5個の錠剤を配列した単位を「行」と表記する。」との記載からも明らかなように、発明の詳細な説明に記載された範囲内のものであるといえる。
したがって、請求項1の記載について、上記理由2の取消理由は理由のないものとなった。
また、請求項2は、請求項1を引用して記載するものであり、また、請求項2の「複数の錠剤」も上記した請求項1についての訂正と同様に「搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤」に訂正された。
したがって、請求項2の記載についても、上記理由2の取消理由は理由のないものとなった。
ウ 小括
以上のとおりであるから、請求項1及び2に係る特許は、上記理由2によっては,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないとすることはできない。
(3-2)理由1:特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると,
甲1発明の「割線が設けられた」は,明らかに本件発明1の「表面に割線が刻設された」に相当する。
以下同様に,
「印刷」は「印刷処理」に,
「上方側の面」は「一方面」に,
(上方側の面を)「撮像」することは「撮像する第1撮像工程」を備えることに,
「下方側の面」は「他方面」に,
(下方側の面を)「撮像」することは「撮像する第2撮像工程」を備えることに,
「上方撮像装置によって撮像された画像」は「前記第1撮像工程にて取得された画像データ」に,
「上方側の面に割線がある」は「他方面が裏面である」に,
「前記割線と対応する部位に沿って」は「前記割線に対して平行な方向に沿って」に,
(下方側の面に)「印刷を行」うことは,下方側の面に印刷を行う限りにおいて「印刷処理を行う第1印刷工程」を備えることに,
「下方撮像装置によって撮像された画像」は「前記第2撮像工程にて取得された画像データ」に,
「下方側の面に割線がある」は「一方面が裏面である」に,
(上方側の面に)「印刷を行」うことは,上方側の面に印刷を行う限りにおいて「印刷処理を行う第2印刷工程」を備えることに,
それぞれ相当する。
(イ)そうすると,本件発明1と甲1発明との一致点,相違点は次のとおりである。
【一致点】
「表面に割線が刻設された錠剤に対して印刷処理を行う錠剤印刷方法であって,
搬送されている錠剤の一方面を撮像する第1撮像工程と,
前記錠剤の他方面を撮像する第2撮像工程と,
前記第1撮像工程にて取得された画像データに基づいて,前記錠剤のうち他方面が裏面である錠剤の当該裏面に対して前記割線に対して平行な方向に沿って印刷処理を行う第1印刷工程と,
前記第2撮像工程にて取得された前記画像データに基づいて,前記錠剤のうち一方面が裏面である錠剤の当該裏面に対して前記割線に対して平行な方向に沿って印刷処理を行う第2印刷工程と,を備える錠剤印刷方法。」である点。
【相違点1】
撮像及び印刷処理の対象となる錠剤が,請求項1に係る発明は「搬送方向と垂直な方向の複数の」錠剤であるのに対し,甲1発明は,搬送方向と垂直な方向の複数の錠剤かどうか不明である点。
【相違点2】
第1印刷工程において,請求項1に係る発明は他方面が表面である錠剤の表面に対しても印刷処理を行い,該印刷処理は,第1撮像工程及び第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて,割線に対して平行な方向に行うのに対し,甲1発明は他方面が表面である錠剤の表面に対して印刷処理を行わない点。
【相違点3】
第2印刷工程において,請求項1に係る発明は一方面が表面である錠剤の表面に対しても印刷処理を行い,該印刷処理は,第1撮像工程及び第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて,割線に対して平行な方向に行うのに対し,甲1発明は一方面が表面である錠剤の表面に対して印刷処理を行わない点。
(ウ)相違点の判断にあたり,まず,甲1発明において,本件発明1の相違点2及び3に係る発明特定事項を備えるように導かれる動機付けがあるかどうか検討する。
甲第1号証には,印刷処理に関し,「割線有りと判定した際に,…(中略)…面に印刷しないと判定することが好ましい。」(【0013】),「下方割線判定部622aが「割線有り」と判定した際に、下方印刷装置44によって当該錠剤1の下方側の面に「印刷しない」と判定する」(【0062】),「上方割線判定部626aが「割線有り」と判定した際に、上方印刷装置44によって当該錠剤1の上方側の面に「印刷しない」と判定する。
」(【0068】),「下方割線判定部622aが、「割線有り」と判定した際に、下方印刷判定部622bは、当該錠剤1の下方側の面に「印刷しない」と判定する。」(【0085】),「上方割線判定部626aが、「割線有り」と判定した際に、上方印刷判定部626bは、当該錠剤1の上方側の面に「印刷しない」と判定する。」(【0086】),「下方割線判定部622aが「割線有り」と判定する場合、…(中略)…場合のうち、何れか一つに該当する場合に、下方印刷判定部622bは、下方印刷装置44によって当該錠剤1の下方側の面に「印刷しない」と判定する。」(【0095】),「上方割線判定部626aが「割線有り」と判定する場合、…(中略)…場合のうち、何れか一つに該当する場合に、上方印刷判定部626bは、上方印刷装置55によって当該錠剤1の上方側の面に「印刷しない」と判定する。」(【0096】)とあるように,甲1発明は,表面に割線を有する錠剤については,一貫して,錠剤の裏面には印刷するが割線を有する表面に対しては印刷しないようにするものである。
してみると,甲1発明には,そもそも錠剤の表面に割線がある場合において,本件発明1の相違点2及び3に係る発明特定事項を備えるよう,言い換えると,その錠剤の両面に印刷をするように導かれる動機付けがあるとはいえない。甲第1号証の【0006】には「搬送されている錠剤の両方側の面に印刷したり,搬送されている錠剤の一方側の面及び他方側の面のうち,所望の一方の面に印刷したりできる印刷機を提供することを課題とする。」という記載があり,錠剤の両面に印刷したりすることが他の印刷パターンとともに一般的な課題として示されているが,甲1発明のように表面に割線を有する錠剤についてはその裏面にのみ印刷するようにしたものについて,あえて両面に印刷を施そうとする動機を与えるほどの強い示唆とみることはできない。
さらに,第1撮像工程及び第2撮像工程にて取得された画像データに基づいて印刷処理を行う点は,甲第1号証~甲第3号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
(エ)小括
以上のとおり、甲1発明において、相違点2及び3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるように導かれる動機付けがあるとはいえないから、本件発明1は、甲1~甲3発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記「ア 本件発明1について」の理由と同様の理由により、甲1~甲3発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
ウ 上述のとおり,甲1発明において相違点2及び3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるように導かれる動機付けがないのであるから,相違点2及び3に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより生じる効果は,当業者が予測する範囲を超えるものとなる。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、甲1~甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって,本件発明1及び2に係る特許は,上記理由1によっては特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700205