特許異議申立
2024-700422
画像処理装置及び方法
- 審判番号
- 2024-700422
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-571162
- 登録番号
- 7375049
- 請求日
- 2024年05月02日
- 審決日
- 2024年12月04日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】富士フイルムメディカル株式会社
- 【権利者代理人】松浦 憲三
- 【異議申立人】IPセイル 合同会社
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 村上 哲
- 審判官 土田 嘉一
- 分類
- P1651.113-Y (A61J) / P1651.121-Y (A61J) / P1651.537-Y (A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7375049号発明「画像処理装置及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7375049号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7375049号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2021年(令和 3年) 1月 7日(優先権主張 令和 2年 1月17日)を国際出願日とする出願であって、令和 5年10月27日にその特許権の設定登録がされ、令和 5年11月 7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和 6年 5月 2日に特許異議申立人IPセイル合同会社(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1~7」という。)は、本件特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
薬剤を撮影した第1撮影画像を取得し、
前記第1撮影画像から前記薬剤を検出し、
検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成し、
前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し、
視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う、
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、前記薬剤のエッジを強調する画像処理を施して、視認性を向上させる、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記薬剤を前記第1撮影画像とは異なる背景色となる条件で撮影した第2撮影画像を取得し、
視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、前記第2撮影画像から切り出した画像に置き替えて、視認性を向上させる、
請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記個別薬剤画像を一覧表示した表示画像を生成する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記表示画像を表示装置に表示する、
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1撮影画像が、一包化された薬剤を撮影した画像である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
薬剤を撮影した第1撮影画像を取得するステップと、
前記第1撮影画像から前記薬剤を検出するステップと、
検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成するステップと、
前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定するステップと、
視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行うステップと、
を含む画像処理方法。」
第3 特許異議申立理由
申立人の主張する特許異議申立理由は概ね以下のとおりである。
1.サポート要件について
申立人は、本件発明1~7の課題は、撮影した薬剤の画像を表示する際に、必要に応じて視認性が向上されるようにすることで、目視による薬剤の検査を軽減することであるところ、本件発明1~7では、視認性の良否の判定の結果、視認性が良い場合の処理について特定されていないので、上記課題を解決することができる範囲を超えているから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2.新規性、進歩性について
申立人は、下記の証拠を提出し、本件発明1~7に係る特許は、以下の(1)~(3)のとおり特許法第29条第1項第3号、又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号、又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠>
甲第1号証:特開2004-118335号公報
甲第2号証:特許第6369456号公報
甲第3号証:国際公開第2019/193912号
甲第4号証:国際公開第2018/221065号
(1)甲第1号証を主引例とする場合
a 本件発明1~2、5、7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明である。
b 本件発明1~7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
(2)甲第2号証を主引例とする場合
c 本件発明1、3、7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明である。
d 本件発明1~7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~4号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
(3)甲第4号証を主引例とする場合
本件発明1、7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明に基いて、又は甲第4号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
なお、特許異議申立書の「3 申立ての理由」の「(7)むすび」の欄の「特許法第36条第4項第1号」は、「特許法第36条第6項第1号」の誤記である。
第4 当審の判断
上記特許異議申立理由について検討する。
1 サポート要件について
本件明細書には、
「【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2016/047569号
【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、各薬剤が同じ条件で撮影される。このため、特許文献1の装置では、各薬剤の撮影画像が、同じ背景色で表示される。
【0006】
薬剤の色は、さまざまである。このため、特許文献1の装置では、撮影画像を表示した際に、薬剤の視認性が著しく低下する場合がある。たとえば、透明な薬剤の場合、背景が黒くなる条件で撮影すると、薬剤が背景と同化して、薬剤の視認性が著しく低下する。同種の問題は、薬剤の色が背景色と同系色となる場合にも発生する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、薬剤の視認性を向上できる画像処理装置及び方法を提供することを目的とする。」
と記載されており、本件発明1~7が解決する課題は、撮影画像を表示した際に、薬剤の視認性が著しく低下する場合があるので、薬剤の視認性を向上できる画像処理装置及び方法を提供することである。
そして、【0008】- 【0011】には、「(1)プロセッサを備え、プロセッサは、薬剤を撮影した第1撮影画像を取得し、第1撮影画像から薬剤を検出し、検出した薬剤の画像を第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成し、視認性の悪い個別薬剤画像に対し、視認性を向上させる処理を行う、画像処理装置。」、「(2)プロセッサは、個別薬剤画像の視認性の良否を判定し、視認性の悪い個別薬剤画像に対し、視認性を向上させる処理を行う、(1)の画像処理装置。」「(3)プロセッサは、個別薬剤画像の薬剤の領域の画素値と基準値との差分に基づいて、個別薬剤画像の視認性の良否を判定する、(2)の画像処理装置。」、「(4)基準値が、個別薬剤画像又は第1撮影画像の薬剤以外の領域の画素値である、(3)の画像処理装置。」により、当該課題を解決することが記載されている。
そうすると、本件発明1~6は、「前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し、視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う」ことを、また、本件発明7は、「前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定するステップと、視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行うステップ」を、具体的に備えることにより、当該課題を解決していると理解できる。
してみると、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものである。
2 新規性・進歩性について
(1)甲各号証の記載事項
ア 甲第1号証
(ア)甲第1号証には次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
撮影手段によって観察対象を撮影して観察対象画像を生成し、前記観察対象画像における隣接する領域の輝度値の差を検出し、検出された前記隣接する領域の輝度値の差が、所定のしきい値を超えた場合における前記隣接する領域の間をエッジ部と非エッジ部の境界として、前記エッジ部を抽出し、前記観察対象画像のうち、前記非エッジ部を除いた前記エッジ部に対して微分処理を施して、前記エッジ部を強調することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記微分処理を、前記観察対象画像に前記エッジ部の微分処理画像を加算もしくは減算する微分画像加減算処理によって行う、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記微分処理を、前記隣接する領域の輝度値の差が大きいほど、前記エッジ部の強調度合いを大きくする画像調整処理によって行う、請求項1または請求項2に記載の画像処理方法。」
「【請求項4】
撮影手段によって観察対象を撮影して観察対象画像を生成する観察対象画像生成手段と、前記観察対象画像における隣接する領域の輝度値の差が、所定のしきい値を超えた場合における前記隣接する領域の間をエッジ部と非エッジ部の境界として、前記エッジ部を抽出するエッジ部抽出手段と、前記観察対象画像のうち、前記非エッジ部を除いた前記エッジ部に対して微分処理を施して、前記エッジ部を強調する微分演算手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。」
「【請求項7】
撮影手段によって撮影された観察対象画像における隣接する領域の輝度値の差を検出するステップと、検出された前記隣接する領域の輝度値の差が、所定のしきい値を超えた場合における前記隣接する領域の間をエッジ部と非エッジ部の境界として、前記エッジ部を抽出するステップと、前記観察対象画像のうち、非エッジ部を除いた前記エッジ部に対して微分処理を施すことにより、前記エッジ部を強調するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示されている技術では、照射されたレーザ光が微細な塵埃にあたり、その散乱光から塵埃を測定しているに過ぎないものであるため、目視に供される像の鮮明度が高くないものであった。そのため、被測定空間内の微粒子は視認しやすいものとはいえず、その数を直接測定することができるものの、精度は高くないものであった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、クリーンルームなどに浮遊する塵埃などを視認しやすくして、クリーンルーム内の塵埃管理などを確実に行うことができるようにすることにある。」
「【0008】
ここで、たとえば塵埃を検出してこの塵埃のエッジ部を強調することにより、観察対象画像内で塵埃を強調することができる。ところが、非エッジ部にまで微分処理を施してしまうと、非エッジ部におけるノイズが微分処理によって強調されてしまい、画像全体に粒状感が生じてしまう。そこで、本発明では、エッジ部を抽出したら、そのエッジ部のみを微分処理するようにしている。こうすることにより、観察対象画像におけるエッジ部が非エッジ部に対して際立って見やすくなり、その結果としてたとえば塵埃などのエッジ部分を高い鮮明度をもって視認することができるようになる。そして、たとえばクリーンルーム内の塵埃を明瞭に視認することができるようになり、クリーンルーム内の塵埃管理を確実に行うことができるようになる。」
「【0022】
画像処理装置2は、図2に示すように、A/D変換部11、エッジ抽出部12および微分処理部13を備えている。観察画像生成手段であるA/D変換部11には、CCDカメラ3からアナログ画像が出力される。このアナログ画像を観察対象画像であるデジタル画像に変換して、エッジ部抽出手段であるエッジ抽出部12に出力している。エッジ抽出部12では、デジタル化されてA/D変換部11から出力されたデジタル画像を、隣接する領域の輝度値の差に基づいて、画像内における特徴部分となる塵埃部分(エッジ部)と非特徴部分となるクリーンルーム内の非塵埃部分(非エッジ部)に分ける。」
「【0024】
微分演算手段である微分処理部13では、デジタル画像において抽出されたエッジ部にのみ微分処理を施す。この微分処理を施すことにより、デジタル画像における塵埃部分と非塵埃部分とをより明確に区分して表示することができる。本実施形態では、微分処理部13には、微分画像を原画像に加算もしくは減算する図示しない微分画像加減算手段が設けられている。さらに、微分処理部13には、隣接する領域の輝度が大きいほど、エッジ部の強調度合いを大きくする図示しない画像調整手段が設けられている。」
「【0029】
図1に示すCCDカメラで観察対象となるクリーンルーム内を撮像したら、アナログ画像が画像処理装置2におけるA/D変換部11に出力される。A/D変換部11では、出力されたアナログ画像をデジタル画像に変換する(S1)。変換されたデジタル画像は、エッジ抽出部12に出力される。エッジ抽出部12では、隣接する領域の輝度値の差に基づいて塵埃部分のエッジ部を抽出し(S2)、抽出されたエッジ部から、塵埃部分と非塵埃部分とを区別する。
【0030】
ここで、エッジ部の抽出方法について説明する。図4(a)に示すように、デジタル画像における領域A1~A3,B1~B3に着目する。本実施形態では、これらの各領域A1~A3,B1~B3は、それぞれCCDカメラ3の1画素によって形成されている。いま、画素A1を対象画素、対象画素A1の横方向に隣接している画素B1を隣接画素とする。また、対象画素A1の上下に隣接して位置する画素A2,A3を対象画素近傍画素とし、隣接画素B1の上下に隣接して位置する画素B2,B3を隣接画素近傍画素とする。対象画素A1が隣接画素B1に対してエッジ部として抽出されるか否かを判断するため、次の(1)式を利用することができる。
|(Avr)A-(Avr)B|>X・・・(1)
ただし、(Avr)A:画素A1~A3の各輝度の平均値
(Avr)B:画素B1~B3の各輝度の平均値
X:しきい値
【0031】
上記(1)式が成り立つ場合には、画素A1がエッジ部と判断されて抽出される。一方、(1)式が成り立たない場合には、画素A1はエッジ部でないと判断される。このエッジ抽出を行う際には、適宜しきい値Xを選択する(S3)。しきい値を適宜選択することにより、塵埃部分と非塵埃部分とをより的確に区別することができる。」
「【0034】こうして、エッジ検出を行ったら、検出されたエッジ部に微分処理を施すが、この微分処理を施す前に、微分係数を決定するため、対象画素および対象画素近傍画素の輝度の平均値と隣接画素および隣接画素近傍画素の輝度の平均値との差に基づく傾斜配分を行う。傾斜配分の方法としては、あらかじめ設定した微分係数に対して、対象画素および対象画素近傍の輝度の平均値と隣接画素および隣接画素近傍画素の輝度の平均値との差が大きい場合には、微分係数を増加させる。
逆に、対象画素および対象画素近傍画素の輝度の平均値と隣接画素および隣接画素近傍画素の輝度の平均値との差が小さい場合には、微分係数を減少させる。また、このように微分係数に対して傾斜配分を行うことにより、輝度の差が大きい場合には、より大きな強調効果を発揮する一方で、輝度値の差が小さい場合には、ノイズの発生を好適に抑制することができる。」
「【0038】
上記(2)式において、(-P(i-1)+P(i))が微分画素を示しており、P(i)が原画素を示している。この(2)式を用いることにより、原画素に微分画素を加算して、画像として強調画像を得ることができる。そして、塵埃部分のエッジ部のみにこの微分処理を施し、他の部分には微分処理を施さないようにしてエッジ部を強調した強調画像を得ることができる。クリーンルーム内における特徴部分となる塵埃の画像が、他の部分に対して強調された画像を得ることができ、塵埃を明瞭に視認することができるようになる。
【0039】
こうして形成された強調画像は、図1に示すモニタ4に表示される。クリーンルームの管理者は、そのモニタ4の画面を目視することにより、クリーンルーム内に生じている塵埃の状況を的確に把握することができる。したがって、クリーンルーム内の塵埃の管理を確実に行うことができるようになる。」
「【0057】
パーソナルコンピュータ33は、図示しないメモリを有しており、このメモリには、上記各実施形態で用いられる画像処理装置2におけるA/D変換部11、エッジ抽出部12、および微分処理部13とそれぞれ同等の処理を行うプログラムが書き込まれている。そして、画像入力ボード32を介して入力されたアナログ画像をデジタル画像に変換して、上記各実施形態と同様の画像処理を行っている。画像処理されて形成された画像は、モニタ34に出力されて、モニタ34に表示される。
【0058】
このように、専用の画像処理装置を用いることなく、汎用のパーソナルコンピュータに所定のプログラムを書き込んだものを利用する態様とすることもできる。また、この態様のように、パーソナルコンピュータ33のメモリに所定のプログラムが書き込まれている態様ではなく、図7に示すCD-ROM40などの記憶媒体を利用する態様とすることもできる。このCD-ROM40には、上記各実施形態で利用されるA/D変換部11、エッジ抽出部12、および微分処理部13とそれぞれ同等の処理を行うプログラムが書き込まれている。また、パーソナルコンピュータ33には図示しないCDドライブが設けられており、このCDドライブにCD-ROM40を挿入して、パーソナルコンピュータ33で画像処理を行う態様とすることもできる。もちろん、記憶媒体としては、CD-ROMのほか、フロッピーディスクなどの磁気ディスク、DVDなどの光ディスク、半導体記憶装置などを利用することもできる。
【0059】
また、上記実施形態に係る画像処理装置は、クリーンルーム内の塵埃の測定を行う塵埃測定装置に利用する態様について説明したが、他の装置に利用することもできる。それらの例を挙げると、流れの可視化として、上記実施形態で示したクリーンルーム内の埃観察、液体中粒子の流動観察、あるいは風洞実験などを挙げることができる。また、傷検査として、ウエハ表面の割れ、ヒビや傷検出、また、赤外透過像によるウエハ内部欠陥検出、金属の傷やクラック検出、切削面評価、コンクリート等のヒビ割れ検出、強調などが挙げられる。さらに、埃や汚れ確認として、ハウスダスト、カビ、ダニの観察、指紋、タイヤ痕検出などが挙げられる。また、干渉縞の観察として、干渉縞の観察、表面結晶形状の観察などを挙げることができ、美容として肌表面観察、しみやしわの検出などを挙げることができる。画像強調およびノイズ除去としてX線画像などのコントラスト改善および量子化ノイズの抑制、X線や赤外線透過画像強調による内部異物検査などを挙げることができる。また、表面強調として、塗装表面の異物観察、塗装欠陥検査および塗装前表面観察、シミ、ムラの観察など各種外観検査を挙げることができ、細胞観察として細胞の形状および細胞数の計測しやすさの向上などを挙げることができる。そして、ピンホール検査としてピンホール、アワ、ハジキ、スルーホールなどの観察を挙げることができ、突起やへこみ観察としてウエハへこみの観察などを挙げることができる。」
(イ)上記(ア)から、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
[甲1発明]
「所定のプログラムを書き込んだコンピュータを備え、
前記コンピュータは、
撮影手段によって観察対象を撮影して生成した観察対象画像における隣接する領域の輝度値の差が、所定のしきい値を超えた場合における前記隣接する領域の間をエッジ部と非エッジ部の境界として、前記エッジ部を抽出し、前記観察対象画像のうち、前記非エッジ部を除いた前記エッジ部に対して微分処理を施して、前記エッジ部を強調する、画像処理装置であって、
前記微分処理を、前記隣接する領域の輝度値の差が大きいほど、前記エッジ部の強調度合いを大きくする画像調整処理によって行う、画像処理装置。
」
イ 甲第2号証
(ア)甲第2号証には次の記載がある。
「【0025】
また、本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤分包装置によって薬剤を処方に基づいて一包ずつ分包することにより形成された分包袋内に薬剤が処方通りに分包されているか否かを鑑査するための薬剤鑑査装置であって、分包袋が境界を介して連続的に形成された分包袋連続体を搬送する搬送手段と、鑑査対象である分包袋が配置される鑑査部と、前記搬送手段による搬送により前記鑑査部に配置された分包袋を撮影する撮影装置と、薬剤の外観形状に係るマスター画像を含む薬剤についての情報を蓄積した鑑査用データベースと、前記鑑査用データベースに登録されているマスター画像と、前記撮影装置によって取得された画像とをマッチングする画像マッチング処理を実行し、分包袋に処方通りに薬剤が包装されているか否かを鑑査する薬剤鑑査処理、及び前記分包袋連続体を前記搬送手段により搬送して供給する供給制御を実施可能な制御装置とを有し、前記供給制御により鑑査対象である分包袋を前記鑑査部に供給し、前記撮影装置によって撮影された画像に、前記鑑査部に到達した分包袋に対して搬送方向上流側の境界及び下流側の境界の双方が含まれていることを条件として前記鑑査部に対して鑑査対象である分包袋が精度良く位置決めされた状態であり、前記鑑査部に到達した分包袋に対して搬送方向上流側の境界及び下流側の境界のいずれか一方のみが含まれていることを条件として、前記鑑査部に対する分包袋が位置ズレした状態であると前記制御装置によって判定されるものであってもよい。」
「【0046】
鑑査部30は、鑑査対象の薬剤が分包袋に収容された状態で配置される部分である。図4に示すように、鑑査部30は、分包袋が配置される撮影用ステージ32を有する。撮影用ステージ32は、透光性を有する板体によって形成されており、一包分の分包袋を搭載可能な大きさを有する。撮影装置40は、鑑査部30に配置された分包袋及びこれに収容されている薬剤を撮影するためのものである。図3に示すように、撮影装置40は、鑑査部30の真上に配置されている。」
【0047】
照明装置50は、鑑査部30に配置された分包袋を照明するためのものである。照明装置50は、正面側照明装置52(図3参照)と背面側照明装置54(図4参照)とを有する。正面側照明装置52は、鑑査部30に配置された分包袋を撮影装置40側、すなわち鑑査部30の上方側から照射するためのものである。正面側照明装置52は、いかなる照明装置によって構成されていても良いが、本実施形態では拡散光を発生させることが可能な照明装置が用いられている。背面側照明装置54は、鑑査部30に配置された分包袋を背面側、すなわち鑑査部30を介して撮影装置40とは反対側(下方)から照射するためのものである。背面側照明装置54は、撮影用ステージ32の略全体を照明領域とするものであり、撮影用ステージ32上に搭載された分包袋全体を背面側から照明することができる。
【0048】
制御装置60は、コンピュータに対してソフトウェアをインストールすることにより、コンピュータ上に実現されている。制御装置60は、各分包袋に収容されている薬剤が処方通りであるかを鑑査する薬剤鑑査処理や、分包袋を帯状に連続するように連続させた分包袋連続体を薬剤鑑査装置10に供給する供給制御等の処理を実行させることができる。以下、薬剤鑑査処理、及び分包袋連続体の供給制御について説明する。
【0049】
≪薬剤鑑査処理について≫
制御装置60は、薬剤の画像をマスター画像として蓄積した鑑査用データベース62を備えている。制御装置60は、鑑査用データベース62に登録されているマスター画像と、撮影装置40によって取得された薬剤の画像とをマッチングする処理(画像マッチング処理)を実行し、分包袋に処方通りに薬剤が包装されているか否かを鑑査する鑑査業務を実施することができる。具体的には、制御装置60は、分包袋に分包されている薬剤の種類についての鑑査(薬種照合鑑査)と、分包袋に包装されている薬剤の数量についての鑑査(数量照合鑑査)とを実施することができる。制御装置60は、薬種照合鑑査を実行することにより、分包されている薬剤が処方に合致する種類のものであるか否かの判定(薬種合致判定)に加え、画像マッチング処理により分包袋に包装されている薬剤と類似する薬剤(類似薬)が鑑査用データベース62に存在するか否かの判定(類似判定)を実行し、類似薬が存在する場合に警告を発することができる。すなわち、薬種照合鑑査を実行することにより、薬種合致判定及び類似判定が実施される。また、制御装置60は、数量照合鑑査を実施することにより、分包袋に包装されている薬剤の数量を検出し、処方通りの数量の薬剤が分包されているか否かの判定(数量判定)を実施することができる。」
「【0109】
≪透光性を有する薬剤に係るマスター画像の登録方法≫
上述した薬剤鑑査装置10による鑑査においては、マスターデータベースに登録されている薬剤の外観形状を示す画像データを用いて照合がなされる。そのため、マスターデータベースに薬剤の画像データを登録するためには、薬剤の輪郭線を略正確に把握し、切り出す等の画像処理が必要となる。薬剤の輪郭線を導出するための手段として以下のようなものがある。
【0110】
すなわち、薬剤の輪郭線を導出する際には、先ず鑑査部30に配置された分包袋を照明するための照明装置50のうち、背面側照明装置54による照明を行った状態で鑑査部30を照明し、この状態で撮影装置40により鑑査部30上に配置された薬剤を撮影した画像(以下、「バックライト画像」とも称す)を取得する(図12(a)参照)。また併せて、鑑査部30に配置された分包袋を撮影装置40側から正面側照明装置52によって撮影した画像(「正面側画像」とも称す)を取得する(図12(b)参照)。バックライト画像及び正面側画像は、照明状態が相違するものの同一の撮影装置40により撮影されたものである。そのため、バックライト画像及び正面側画像に含まれる領域の位置関係はそれぞれ対応する関係にある。
【0111】
ここで、上述したように、鑑査部30は、透光性を有する板体によって構成されている。そのため、バックライト画像中において薬剤が配置されていない領域(背景領域)は、光が透過した状態で明るく写った状態になる。これに対し、薬剤が透光性を有さないものである場合には、バックライト画像中において薬剤が配置された領域は暗く略黒色に写った状態になる。そのため、薬剤が透光性のないものである場合には、バックライト画像中における明暗の差を基準とすることで、薬剤の輪郭線を導出することができる。
【0112】
具体的には、本実施形態では背面側照明装置54として赤色光を発するものが採用されている。そのため、バックライト画像をRGBに分解して得られるR成分の画像を取得すると、図12(c)に示すように背景部分と薬剤部分との陰影差が明確に現れる。図12(c)の画像についてノイズ除去を行うことで図12(d)に示すような画像を取得する。その後、図12(d)の画像中において所定の輝度よりも低輝度の領域を低輝度領域として抽出する(図12(e)参照)。このようにして抽出された低輝度領域の輪郭線を薬剤の外縁をなす線として導出することができる(図12(f)参照)。
【0113】
一方、正面側画像は、鑑査部30上にある薬剤を正面側から撮影した画像であり、薬剤に加えて鑑査部30をなす板体が背景に写った状態になっている。また、上述したようにバックライト画像及び正面側画像に含まれる領域の位置関係はそれぞれ対応する関係にある。そのため、正面側画像において、バックライト画像を用いて導出された薬剤の輪郭線によって囲まれた領域に対応する領域は、薬剤に相当する領域である。具体的には、上述したようにして図12(f)に示すような輪郭線を導出した場合、図12(g)に示すように正面側画像において輪郭線によって囲まれた領域に相当する領域は薬剤に相当する領域である。従って、前述した輪郭線を指標として正面側画像中の領域を抽出することで、薬剤の画像を背景画像と切り離して取得することができる。
【0114】
ここで、上述したように、薬剤が不透明(透光性を有しないもの)である場合には、バックライト画像から比較的容易かつ正確に薬剤の輪郭線を導出することができる。しかしながら、薬剤が透光性を有するものである場合には、バックライト画像において薬剤が影として撮影されず、背景部分と同様に光が透過した状態で明るく写った状態になってしまう。そのため、透光性を有する薬剤については、バックライト画像における陰影差を基準として輪郭線を導出することが困難である(図13(b)参照)。
【0115】
一方、透光性を有する薬剤の場合においては、正面側画像において薬剤が配置された領域(以下、「薬剤配置領域」とも称す)と、他の領域(背景領域)とで彩度が明確に相違している。具体的には、図13(c)に示すように、正面側画像の彩度成分に係る画像(以下、「彩度画像」とも称する)を取得した場合、薬剤配置領域を背景領域から明確に区別することができる。すなわち、薬剤配置領域と背景領域とで輝度が大幅に相違しており、薬剤配置領域が背景領域よりも高輝度である。そのため、図13(c)示す彩度画像からノイズを除去した画像(図13(d))について、輝度を基準として高輝度な領域を導出する処理を行う(図13(e)参照)。このようにして得られた高輝度領域の輪郭線を図13(f)のように導出することにより、透光性を有する薬剤についての薬剤配置領域を、背景領域から区別できる状態になる。図13(g)に示すように、このようにして得られた輪郭線をバックライト画像に適用することにより、透光性を有する薬剤の画像を背景画像から切り分け、抽出することができる。このようにして抽出された透光性を有する薬剤の画像を、鑑査用のマスター画像としてマスターデータベースに登録することができる。
【0116】
すなわち、透光性を有する薬剤の場合においては、図14に示すようなフローチャートに則って画像処理を行うことで鑑査用のマスター画像を取得することができる。具体的には、先ずステップ2-1の正面側画像取得工程において、図13(a)に示すような正面側画像を取得する。その後、ステップ2-2の彩度成分抽出工程において、正面側画像から彩度成分のみを抽出した画像(彩度成分抽出画像)を取得する。
【0117】
彩度成分抽出画像が取得されると、ステップ2-3の輪郭線導出工程において輪郭線を取得するための画像処理が行われる。すなわち、ステップ2-3では、先ず彩度成分抽出画像において高輝度である領域(高輝度領域)を抽出する画像処理が行われる(図13(e)参照)。その後、高輝度領域の外縁を輪郭線として導出する(図13(f)参照)。
【0118】
上述したようにして輪郭線が導出されると、ステップ2-4のマスター画像取得工程においてマスター画像が取得される。すなわち、ステップ2-3において取得された輪郭線を図13(a)の正面側画像に重ね合わせる画像処理が行われる。これにより、図13(g)のように、正面側画像中において薬剤が写っている領域が輪郭線によって囲まれた状態になる。正面側画像中の輪郭線によって囲まれた領域を切り出すことにより、マスター画像を取得することができる。
【0119】
上述したようにしてステップ2-4においてマスター画像が取得されると、ステップ2-5においてマスター画像が薬剤の種類等と関連づけた状態でマスターデータベースに登録される。これにより、一連の制御フローが完了する。」
図12「
[図:0001418250000001.jpg]
」
図13「
[図:0001418250000002.jpg]
」
図14「
[図:0001418250000003.jpg]
」
(イ)上記(ア)から、甲第2号証には、以下の発明が記載されている。
[甲2発明]
「コンピュータ上に実現されている制御装置60は、
分包袋を撮影する撮影装置40によって取得された薬剤の画像を、鑑査用データベース62に登録されているマスター画像とマッチングする画像マッチング処理を実行し、分包袋に処方通りに薬剤が包装されているか否かを鑑査する鑑査業務を実施するものであり、
撮影装置40により、背面側照明装置54による照明を行った状態で薬剤を撮影するバックライト画像と、正面側照明装置52による照明を行った状態で薬剤を撮影する正面側画像を、取得でき、
薬剤が透光性のないものである場合には、
薬剤を撮影したバックライト画像を取得し、
バックライト画像中における明暗の差を基準とすることで、薬剤の輪郭線を導出し、
当該輪郭線を指標として正面側画像中の領域を抽出することで、薬剤の画像を背景画像から切り離して取得し、マスター画像としてマスターデータベース登録し、
薬剤が透光性を有するものである場合には、バックライト画像において薬剤が影として撮影されず、背景部分と同様に光が透過した状態で明るく写った状態になってしまうため、透光性を有する薬剤については、バックライト画像における陰影差を基準として輪郭線を導出することが困難であるので、
正面側画像を取得し、
前記正面側画像から彩度成分のみを抽出した彩度成分抽出画像を取得し、
前記彩度成分抽出画像において、高輝度領域を抽出する画像処理を行い、前記高輝度領域の外縁を薬剤の輪郭線として導出し、
正面側画像中の輪郭線によって囲まれた領域を切り出すことにより取得した画像を、マスター画像としてマスターデータベース登録する、
薬剤鑑査装置。」
ウ 甲第3号証
(ア)甲第3号証には次の記載がある。
「[0067]
なお、画像取得部23は、画像撮影部16が画像を撮影する度、画像撮影部16から画像を取得する。より詳しく説明すると、本実施形態では、前述したように、薬剤が分包された一つの包装袋1につき、画像が撮影条件別に複数回(具体的には8回)撮影されることになっている。したがって、画像取得部23は、各包装袋1及びその包装袋1に包まれた薬剤について、撮影条件別の画像(すなわち、8枚の画像)を取得することになる。また、配置部15に配置される包装袋1が切り換わると、画像撮影部16が新たに画像を撮影条件別に撮影するため、これに伴って、画像取得部23が、新たに撮影された撮影条件別の画像を取得することになる。
[0068]
前処理部24は、画像取得部23が画像撮影部16から取得した画像(つまり、判定対象の薬剤の画像データ)に対して前処理を実行する。前処理とは、画像取得部23が取得した画像に写った薬剤の表面に形成された識別情報を強調するための処理である。
[0069]
具体的に説明すると、本実施形態では、前述したように、一つの包装袋1に包まれた薬剤に対して、画像を光の照射方向を変えて複数回(具体的には、4回)撮影する。ここで、光の照射方向別の画像のそれぞれでは、画像に写った薬剤の表面において光の照度ムラが生じている。こうした光の照度ムラは、薬剤の表面に形成された識別情報を検出及び特定する際に影響を及ぼす。また、光の照度ムラは、光の照射方向に応じて異なる。そこで、前処理部24は、前処理を実行する。前処理では、光の照射方向別に撮影した画像に対して、照射方向に応じた方向のエッジ抽出フィルタであって、各画像に写った識別情報のエッジ(刻印の溝)の画素数に応じたサイズのエッジ抽出フィルタをそれぞれ用いて、照射方向別のエッジ画像を生成し、その後に複数のエッジ画像を合成して合成画像を生成する。エッジ抽出フィルタとしては、ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタ、及びキャニーフィルタのうちの少なくとも一つを含むことができ、後の判定方法に応じて適宜選択することができる。」
「[0093]
本実施形態では、特性情報取得部28が取得した特性情報が示す光学特性が、判定対象の薬剤の撮影画像の鮮明度をマスタ画像の鮮明度よりも低くさせる光学特性であると光学特性判断部30が判断したとき、補正処理部31は、補正処理を実行する。より具体的に説明すると、特性情報取得部28が取得した特性情報が示す光透過率(すなわち、判定対象の薬剤を包んだ包装袋1の光透過率)が、マスタ画像に写った薬剤を包んだ包装袋1の光透過率よりも低いと光学特性判断部30が判断したとき、補正処理部31が補正処理を実行する。
[0094]
なお、本実施形態において、補正処理部31は、画像をぼかすための画像処理法を用いて、判定対象の薬剤を包んだ包装袋1の光透過率に応じてマスタ画像をぼかす補正処理を実行する。より詳しく説明すると、補正処理部31は、ガウス関数(つまり、ガウシアンフィルタ)を用いてガウスぼかしを実行し、具体的には、判定対象の薬剤を包んだ包装袋1の光透過率と対応する広がり関数(spread function)を求め、この広がり関数をマスタ画像に適用することでマウス画像をぼかす。
[0095]
また、本実施形態では、ガウス関数(つまり、ガウシアンフィルタ)を用いてマスタ画像をぼかすこととしたが、これに限定されるものではなく、画像をぼかす他の画像処理、例えば、移動平均フィルタ(すなわち、平滑化フィルタ)を用いた画像処理、及び、変調伝達関数(Modulation Transfer Function)を用いて画像中の高周波成分を減衰させる画像処理を利用してもよい。
[0096]
そして、補正処理部31が上記の補正処理を実行したとき、判定部25は、鮮明度が補正されたマスタ画像(つまり、ぼかしたマスタ画像)を用いて、判定対象の薬剤の種類を判定することになる。
[0097]
<<薬剤適否の判定の流れ>>
次に、包装袋連続体3中の各包装袋1に薬剤が処方条件どおりに正しく分包されているかを判定するための一連の工程(以下、判定フロー)について、図9を参照しながら説明する。図9は、判定フローの大まかな流れを示す図である。
[0098]
判定フローでは、図9に示すように、先ず、前処理部24によって前処理が実施された画像から、判定対象の薬剤が写っている領域を特定する工程が行われる(S001)。以下では、前処理が実施された画像を「前処理後画像」と呼ぶこととし、前処理後画像の中で薬剤が写っている領域を「薬剤存在領域」と呼ぶこととする。
なお、本実施形態では、前処理を先に実行してから、前処理によって得られた前処理後画像に対して薬剤存在領域特定工程S001、及び後述の画素群抽出工程S002を実施することとしたが、これに限定されるものではない。光の照射方向別に取得した撮影画像のそれぞれに対して薬剤存在領域特定工程S001及び画素群抽出工程S002を実施し、これらの工程が実施された照射方向別の撮影画像(厳密には、後述の薬剤抽出画像X)
に対して、前処理を実施する形でもよい。
[0099]
薬剤存在領域特定工程S001では、前処理後画像に対して公知のエッジ抽出処理及びセグメンテーション処理を行い、画像内の薬剤の輪郭を特定する。そして、特定された輪郭に囲まれた領域を薬剤存在領域として特定する。前処理後画像に複数の薬剤が写っている場合には、薬剤の個数だけ薬剤存在領域を特定する。
[0100]
薬剤存在領域特定工程S001の実施後、判定部25は、前処理後画像を構成する画素群の中から、薬剤存在領域に該当する画素群を抽出する(S002)。抽出された画素群は、図10に示すように、薬剤存在領域を取り囲む矩形(図10中の符号Xが付された矩形領域)をなしている。以下では、抽出された画素群を「薬剤抽出画像X」と呼ぶこととする。なお、薬剤存在領域特定工程S001において複数の薬剤存在領域を特定した場合には、薬剤存在領域別に薬剤抽出画像Xを特定することになる。
ちなみに、図10は、薬剤抽出画像Xの説明図である。なお、図10に図示の画素サイズ(画像に対する画素1つあたりの大きさ)は、図示の都合上、実際の画素サイズよりも大きく描かれている。
[0101]
また、画素群抽出工程S002では、薬剤抽出画像Xのサイズ及び位置を特定する。ここで、薬剤抽出画像Xのサイズは、薬剤抽出画像Xをなす矩形状の画素群の面積であり、図10に図示した二辺の長さd1、d2の積に相当する。」
「[0105]
その後、光学特性判断部30は、処方条件情報取得部22が取得した特性情報から、判定対象の薬剤を包んだ包装袋1の光学特性(すなわち、光透過率)を特定する。そして、光学特性判断部30は、特定した光透過率が、判定対象の薬剤の撮影画像の鮮明度をマスタ画像の鮮明度よりも低くさせる光透過率であるかどうかを判断する(S005)。具体的に説明すると、光学特性判断部30は、処方条件情報取得部22が取得した特定情報から特定した光透過率と、前ステップS004にて読み出した特性情報が示す光透過率と、を対比する。このとき、前者の光透過率が後者の光透過率よりも低いとき、光学特性判断部30は、特性情報取得部28が取得した特性情報が示す光透過率が、判定対象の薬剤の撮影画像の鮮明度をマスタ画像の鮮明度よりも低くさせる光透過率であると判断することになる。
なお、包装袋1の光透過率が、判定対象の薬剤の撮影画像の鮮明度をマスタ画像の鮮明度よりも低くさせる光透過率であるかどうかを判断するステップS005は、光学特性判断部30ではなく、人又は別の機器によって行われてもよい。
[0106]
そして、特性情報取得部28が取得した特性情報が示す光透過率が、判定対象の薬剤の撮影画像の鮮明度をマスタ画像の鮮明度よりも低くさせる光透過率であると光学特性判断部30が判断すると、補正処理部31が、判定部25が読み出したマスタ画像に対して補正処理を実行する(S006)。反対に、特性情報取得部28が取得した特性情報が示す光透過率が、判定対象の薬剤の撮影画像の鮮明度をマスタ画像の鮮明度よりも高くさせる光透過率であると光学特性判断部30が判断すると、補正処理部31による補正処理が実行されないまま、次のステップS007に進む。」
(イ)上記(ア)から甲第3号証には、以下の記載事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
[甲3記載事項]
「画像取得部が、包装袋に包まれた薬剤について、撮影条件の異なる画像を取得する。」
エ 甲第4号証
(ア)甲第4号証には次の記載がある。
「[0020]
第13の態様に係る薬剤検査支援装置は第1から第12の態様のいずれか1つにおいて、照合対象画像は、撮影画像または撮影画像に画像処理を施した処理済み撮影画像である。第13の態様のように必要に応じて撮影画像に画像処理を施すことにより、薬剤の視認、照合を容易に行うことができる。」
「[0037]
上述した処理部10の機能は、各種のプロセッサ(processor)を用いて実現できる。各種のプロセッサには、例えばソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能を実現する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)が含まれる。また、上述した各種のプロセッサには、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)も含まれる。さらに、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路なども上述した各種のプロセッサに含まれる。」
「[0043]
ステップS110では、撮像部10Bがカメラ15A,15Bを制御して薬包帯PBの分包袋TPに分包された薬剤を複数の方向(上下方向)から撮影し、複数の撮影画像を取得する。図7Aは分包袋TPを上方向から撮影した画像であり、図7B部分は同じ分包袋を下方向から撮影した画像である。薬剤は分包袋TPの中で全て同じ向き(表裏及び面内での回転度合い)を向いているとは限らず、図7A及び図7Bのように薬剤によって向きが異なる場合がある。処理部10(薬剤照合部10C)は、分包袋TPの画像に対し分包袋を特定するID(identification)を関連づける。」
「[0046]
ステップS130では、撮影画像から各薬剤の薬剤領域を抽出し、必要に応じて拡大または縮小、明るさ調整等の画像処理を施す。他の薬剤についても同様の処理を行い、抽出した薬剤領域の画像またはその画像に画像処理を施した画像(処理済み撮影画像)を照合対象画像として取得する。図7A及び図7Bの例では、薬剤Aについて照合対象画像iS1,iS2(複数の撮影画像にそれぞれ対応した複数の照合対象画像)を取得する。照合対象画像iS1は薬剤Aの表面についての画像であり、照合対象画像iS2は薬剤Aの裏面に対する画像である。処理部10(薬剤照合部10C)は、照合対象画像に対し薬剤を特定するIDを関連づける。なお、上述のように撮影画像から照合対象画像を取得するのではなく、記憶部20に既に記憶されている照合対象画像20Cを読み出してもよい。
[0047]
基準画像及び照合対象画像を取得したら、処理部10(薬剤照合部10C)は、基準画像と照合対象画像とを照合して(ステップS140:薬剤照合工程)、照合対象画像が示す薬剤と基準画像が示す薬剤とが同一の薬剤であるか否かを判断する(ステップS150:薬剤照合工程)。同一の薬剤であると判断した場合は、処理部10(一覧表作成部10F)は照合対象画像を一覧表に追加して(ステップS160:一覧表作成工程)、ステップS170に進む。なお、基準画像と照合対象画像との照合は基準画像に設定したテンプレートと照合対象領域に設定した関心領域とが一致するか否か(テンプレートマッチング)、基準画像と照合対象画像の局所特徴量が一致するか否か等により行うことができる。また、照合の際に照合対象画像を拡大または縮小、回転等することにより基準画像と方向を揃えて照合してもよい。
[0048]
図7A、図7B及び図8に示す例では、処理部10(薬剤照合部10C)は「照合対象画像iS1が示す薬剤は基準画像(マスタ画像iM1)が示す薬剤と同一である(共に薬剤Aを示す)」と判断し、照合対象画像iS1を薬剤Aについての一覧表に追加する。なお、処理部10(薬剤照合部10C、一覧表作成部10F)は薬種ごとに一覧表を作成する。
[0049]
一方、照合の結果「基準画像が示す薬剤と照合対象画像が示す薬剤とは同一の薬剤ではない」と判断された場合(ステップS150でNO)、処理部10(薬剤照合部10C)は、ステップS170(薬剤照合工程)において(ある1つの基準画像と)全ての照合対象画像についての照合が終了したか否かを判断する。判断が肯定された場合(ステップS170でYES)はステップS180に進み、否定された場合(ステップS170でNO)はステップS130へ戻り次の照合対象画像を取得して照合(ステップS140:薬剤照合工程)を行う。
[0050]
ステップS180では処方箋に記載された全ての薬剤(分包袋TPに分包されるべき全ての薬剤)について照合が終了したか否かを判断し、判断が肯定されるまでステップS120~S170の処理(薬剤照合工程、一覧表作成工程)を繰り返して、判断が肯定されたら(ステップS180でYES)、ステップS190へ進む。ステップS190では、処理部10(薬剤照合部10C、一覧表作成部10F)は薬包帯PBに含まれる全ての分包袋TPについての処理が完了したか否かを判断し、判断が肯定されるまでステップS110~S180の処理(薬剤照合工程、一覧表作成工程)を繰り返して一覧表を作成する。なお、分包袋TPに含まれる薬剤のうち処方箋に記載の薬剤のいずれでもない薬剤がある場合は、一覧表とは別にそのような薬剤のリストを作成してもよい。
[0051]
<一覧表の表示>
処理部10(表示制御部10G)は、処方箋に記載された薬剤のうち単一の薬種の薬剤について、ステップS190までで作成した一覧表をモニタ32の表示画面に表示する(ステップS200:表示制御工程)。以下、一覧表の表示例について説明する。
[0052]
(表示例1)
図9は、薬剤Aについての一覧表L1(一覧表)の例を示す図である。表示例1では、一覧表L1の左側(領域L1A,L1B)に薬剤Aの基準画像(この場合マスタ画像)及び属性情報(薬剤の属性を示す情報)がそれぞれ表示され、右側(領域L1C)に「薬剤Aを示す」と判別された全ての照合対象画像が表示される。図9では一覧表L1に薬剤の表面(刻印が施されている面)についての画像(例えば、上述した照合対象画像iS1)のみを含めているが、薬剤の裏面についての画像(例えば、上述した照合対象画像iS2)を含めてもよい(表示例7の図16を参照)。一覧表L1の領域L1Cには、照合対象が分包袋ごと、かつ服用タイミングごとに表示され、また分包袋TPに関連する検査支援情報(薬剤の照合、検査を効率的に行うための情報)が照合対象画像と合わせて表示される。図9の例では、検査支援情報は服用タイミング、分包袋番号、服用日であるが、他の情報(基準画像と照合対象画像の類似度等)を含めてもよい。なお、表示例1においては全ての分包袋(1日3度服用×7日=21包)に薬剤Aが2錠ずつ正しく分包されているものとし、服用期間は7日とする。
[0053]
一覧表L1において、基準画像及び照合対象画像は、処理部10(一覧表作成部10F)が画像を拡大または縮小、及び回転することにより大きさ及び向きを揃えて表示される。下部の領域L1Dには、前の薬剤(この場合、薬剤D)について一覧表を表示させるためのボタンB1、次の薬剤(この場合、薬剤B)について一覧表を表示させるためのボタンB2、及び表示条件等の設定を行うメニュー画面に移行するためのボタンB3が表示されている。ユーザは操作部40を介したユーザ操作によりこれらのボタンB1~B3を操作することができる。なお、一覧表の作成及び表示の対象となる薬剤をあらかじめユーザに選択させてもよい(後述する図22を参照)。このようなボタン操作及び/または薬剤選択画面での操作により処理部10(薬剤選択部10D)が薬剤の選択(一覧表の表示指示)を受け付け、選択を受け付けた薬剤について処理部10(表示制御部10G)が一覧表を表示させる。なお、以下で説明する他の表示例においても、同様の領域及びボタンが設けられる(参照符号及び説明は省略する)。」
[図9]「
[図:0001418250000004.jpg]
」
(イ)上記(ア)から、甲第4号証には、以下の発明が記載されている。
[甲4発明]
「処理部10の機能を実現するプロセッサを備え、
薬剤を複数の方向から撮影し、複数の撮影画像を取得し、
撮影画像から各薬剤の薬剤領域を抽出し、必要に応じて拡大または縮小、明るさ調整等の画像処理を施し、
薬剤の視認を容易に行うことができる、
薬剤検査支援装置。」
(2)対比、判断
ア 甲第1号証を主引例とする場合
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「所定のプログラムを書き込んだコンピュータ」は、本件発明1の「プロセッサ」に相当し、
甲1発明の「観察対象画像」は、本件発明の「第1撮影画像」に相当し、
甲1発明の「前記コンピュータは、撮影手段によって観察対象を撮影して生成した観察対象画像における隣接する領域の輝度値の差が、所定のしきい値を超えた場合における前記隣接する領域の間をエッジ部と非エッジ部の境界として、前記エッジ部を抽出」することと、本願発明の「前記プロセッサは、薬剤を撮影した第1撮影画像を取得し、前記第1撮影画像から前記薬剤を検出し、検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成」することとは、プロセッサが、対象を撮影した第1撮影画像を取得し、前記前記第1撮影画像から対象を検出する限りにおいて一致し、
甲1発明の「前記観察対象画像のうち、前記非エッジ部を除いた前記エッジ部に対して微分処理を施して、前記エッジ部を強調する」ことと、本件発明1の「視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う」こととは、所定の画像に画像処理を施して、視認性を向上させる、限りにおいて一致する。
なお、異議申立人は、甲第1号証には、「e1.前記観察対象画像の前記観察対象以外の領域の輝度値と、前記観察対象画像の前記観察対象の領域の輝度値との差が、所定のしきい値を超えるか否かを判定(【請求項1】、【請求項4】、【請求項7】、【0058】参照)」することが記載され、e1の「所定のしきい値を超えるか否かを判定」は、視認性の悪い観察対象画像の視認性を向上させるための判定であるから、本件発明1における「前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定」に相当すると主張する。
しかし、甲第1号証は、撮影手段によって観察対象を撮影して生成した観察対象画像における隣接する領域の輝度値の差が、所定のしきい値を超えた場合における前記隣接する領域の間をエッジ部と非エッジ部の境界として、前記エッジ部を抽出し、前記観察対象画像のうち、前記非エッジ部を除いた前記エッジ部に対して微分処理を施して、前記エッジ部を強調するのであり(【請求項1】、【請求項4】、【請求項7】、【0030】-【0031】、【0034】参照)、)、一般に、前記輝度値の差がしきい値を超えた場合の方が、前記輝度値の差がしきい値未満の場合より、視認性が良好であることを考慮すると、視認性の悪い観察対象画像に対して視認性を向上させるための判定ではないことが明らかであるから、本件発明1の「前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて」の「前記個別薬剤画像の視認性の良否」の「判定」とは、異なる。
よって、異議申立人の上記主張を採用することはできない。
すると、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
対象を撮影した第1撮影画像を取得し、
前記前記第1撮影画像から前記対象を検出し、
所定の画像に画像処理を施して、視認性を向上させる、
画像処理装置。
<相違点1>
本件発明1は、対象が「薬剤」であるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本件発明は、「検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成」するのに対して、甲1発明は、観察対象画像からエッジ部を抽出する点。
<相違点3>
画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う条件及び対象について、本件発明1は、「前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し、視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う」のに対して、甲1発明は、撮影手段によって観察対象を撮影して生成した観察対象画像における隣接する領域の輝度値の差が、所定のしきい値を超えた場合における前記隣接する領域の間をエッジ部と非エッジ部の境界として、前記エッジ部を抽出し、前記観察対象画像のうち、前記非エッジ部を除いた前記エッジ部に対して微分処理を施して、前記エッジ部を強調するものであって、前記微分処理を、前記隣接する領域の輝度値の差が大きいほど、前記エッジ部の強調度合いを大きくする画像調整処理によって行うものである点。
事案に鑑み、相違点3から検討する。
本件発明1における薬剤の領域の画素値と薬剤以外の領域の基準値との差分に基づく視認性の良否の判定は、当該差分が大きい場合に視認性が良く、当該差分が小さい場合に視認性が悪いと判定することであるから、本件発明1は、当該差分の小さい場合の個別薬剤画像を、視認性の悪い画像として、視認性を向上される画像処理の対象としている。
甲1発明は、隣接する領域の輝度値の差が所定のしきい値を超えて大きいところをエッジ部として抽出し、エッジ部に対し画像処理を行うものであって、一般に、前記輝度値の差がしきい値を超えた場合の方が、前記輝度値の差がしきい値未満の場合より、視認性が良好であることを考慮すると、本件発明1のように対象の領域の画素値と対象以外の領域の基準値との差分に基づき画像の視認性の良否を判定して、視認性の悪い画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させるものとは異なる。
してみると、両者は、画像処理を施す状況が異なっており、画像処理を施す対象画像の選択条件・選択基準が全く異なっているから、甲1発明には、相違点3に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
また、甲第2~4号証のいずれにも、相違点3に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1~2について検討するまでもなく、本件発明1が、甲1発明であるいうことはできないし、本件発明1が、甲1発明に基いて、又は甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(イ)本件発明2~7について
本件発明1を引用する発明である本件発明2~6、及び本件発明1に係る方法発明である本件発明7については、上記(ア)と同様の理由により、甲1発明であるいうことはできないし、甲1発明に基いて、又は甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
イ 甲第2号証を主引例とする場合
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「コンピュータ上に実現されている制御装置60」は、本件発明1の「プロセッサ」に相当する。
甲2発明の「正面側照明装置52による照明を行った状態で薬剤を撮影する正面側画像」は、本件発明1の「第1撮影画像」に相当し、
甲2発明の「正面側画像を取得」することは、本件発明1の「薬剤を撮影した第1撮影画像を取得」することに相当する。
甲2発明の「前記正面側画像から彩度成分のみを抽出した彩度成分抽出画像を取得し、前記彩度成分抽出画像において、高輝度領域を抽出する画像処理を行い、前記高輝度領域の外縁を薬剤の輪郭線として導出」することは、本件発明1の「前記第1撮影画像から前記薬剤を検出」することに相当し、
甲2発明の「正面側画像中の輪郭線によって囲まれた領域を切り出すことにより」「画像」を「取得」することは、本件発明1の「検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成」することに相当する。
なお、異議申立人は、甲第2号証には、以下の発明が記載されていると主張する。
「a2.コンピュータを備え(【0048】参照。)、
前記コンピュータは、
b2.薬剤を撮影したバックライト画像を取得し(【0110】参照。)、
c2.前記バックライト画像から前記薬剤を検出し(【0111】参照。)、
d2. 検出した前記薬剤の画像を前記バックライト画像から切り出し(【0111】参照。)、
e2.前記バックライト画像における前記薬剤以外の領域(背景領域)と前記薬剤の領域(薬剤部分)との陰影差(明暗差)に基づいて、前記薬剤が不透明(透光性を有しないもの)か透光性を有するものかを判定し(【0111】、【0114】、【0115】、図12,13参照。)、
f2.透光性を有する前記薬剤の前記バックライト画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う(【0115】、 図13参照。)、
g2.画像処理装置(【0109】参照。)。」
しかし、甲第2号証の【0111】には、薬剤の輪郭線を導出することは、記載されているが、「d2」の「検出した前記薬剤の画像を前記バックライト画像から切り出」すことは、記載されておらず、示唆もされていない。
また、甲第2号証の「【0111】、【0114】、【0115】、図12,13」のどこにも、「e2」の「前記バックライト画像における前記薬剤以外の領域(背景領域)と前記薬剤の領域(薬剤部分)との陰影差(明暗差)に基づいて、前記薬剤が不透明(透光性を有しないもの)か透光性を有するものかを判定」することは、記載されていない。
そして、甲第2号証の【0115】、図13に、「f2」の「透光性を有する前記薬剤の前記バックライト画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う」ことは、記載されておらず、示唆もされていない。 そして、甲第2号証の【0116】-【0118】には、透光性を有する薬剤の場合、取得した正面側画像から抽出した彩度成分抽出画像における高輝度領域の外側を輪郭線として導出し、その輪郭線を正面側画像に重ね合わせる画像処理を行うことが記載されているところ、「f2」は、記載されていないし、示唆もされていない。
そのため、上記主張は、採用できない。
すると、本件発明1と甲2発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
薬剤を撮影した第1撮影画像を取得し、
前記第1撮影画像から前記薬剤を検出し、
検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成する、
画像処理装置。
<相違点>
本件発明1は、「前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し、視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う」のに対して、甲2発明は、そのような判定および処理を行うものではない点。
上記相違点について検討する。
甲2発明には、相違点に係る本件発明1の構成を有しないし、それを示唆するものでもない。
また、甲第1、3~4号証のいずれにも、相違点に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1が、甲2発明であるいうことはできないし、本件発明1が、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲第1、3~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(イ)本件発明2~7について
本件発明1を引用する発明である本件発明2~6、及び本件発明1に係る方法発明である本件発明7については、上記(ア)と同様の理由により、甲2発明であるいうことはできないし、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲第1、3~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
ウ 甲第4号証を主引例とする場合
(ア)本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「処理部10の機能を実現するプロセッサ」は、本件発明1の「プロセッサ」に相当し、
甲4発明の「薬剤を複数の方向から撮影し、複数の撮影画像を取得し、撮影画像から各薬剤の薬剤領域を抽出し、必要に応じて拡大または縮小、明るさ調整等の画像処理を施し、薬剤の視認を容易に行うことができる」と、本件発明1の「薬剤を撮影した第1撮影画像を取得し、前記第1撮影画像から前記薬剤を検出し、検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成し、前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し、視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う」とは、薬剤を撮影した第1撮影画像を取得し、前記第1撮影画像から前記薬剤を検出し、検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成し、個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う、限りにおいて一致する。
なお、異議申立人は、甲第4号証の[0020]、[0046]によれば、薬剤領域の画像に対して「必要に応じて」画像処理を施すことにより、視認性を向上することが記載されているから、本件発明1の「前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し」に相当することが記載される旨主張する。
しかし、薬剤領域の画像に対して必要に応じて画像処理を施すことにより、薬剤の視認性を向上することは、本件発明1の「前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し」とは異なるから、上記主張は採用できない。
すると、本件発明1と甲4発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
薬剤を撮影した第1撮影画像を取得し、
前記第1撮影画像から前記薬剤を検出し、
検出した前記薬剤の画像を前記第1撮影画像から切り出して個別薬剤画像を生成し、
個別薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行う、
画像処理装置。
<相違点>
画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行うことにおいて、本件発明1は、「前記個別薬剤画像又は前記第1撮影画像の前記薬剤以外の領域の画素値を基準値とした場合に、前記個別薬剤画像の前記薬剤の領域の画素値と前記基準値との差分に基づいて、前記個別薬剤画像の視認性の良否を判定し、視認性の悪い前記個別薬剤画像に対し」てであるのに対して、甲4発明は、必要に応じて、画像処理を施すものである点。
上記相違点について検討する。
甲4発明には、相違点に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証にも、相違点に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1が、甲4発明に基いて、又は甲4発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
なお、異議申立人は、薬剤が不透明である場合、バックライト画像において薬剤の視認性が良い(=画像処理が不要)のに対して、薬剤が透明である場合、バックライト画像において薬剤が影として撮影されず、背景部分と同様に光が透過した状態で明るく写った状態になってしまうために、薬剤の視認性が悪い(=画像処理が必要)ことは、従来周知の事項である(例えば、甲第2号証の段落[0114]、図12、13等参照)から、甲第4号証に記載された発明において、撮影画像における「薬剤領域」とそれ以外の領域(背景領域)との画素値の差分に着目し、当該画素値の差分から「画像処理の必要性」(つまり視認性の良否)を判定するようにすることは、 当業者が容易に想到し得ることである旨主張する。
しかし、甲第2号証によって例示する上記周知の事項は、薬剤の領域とそれ以外の領域(背景領域)との画素値の差分に着目し、当該画素値の差分から視認性の良否を判定し、視認性の悪い薬剤画像に対し、画像処理を施して、視認性を向上させる処理を行うことを、示唆するものではないので、上記主張は、採用できない。
(イ)本件発明7について
本件発明1に係る方法発明である本件発明7については、上記(ア)と同様の理由により、甲4発明に基いて、又は甲4発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
エ 小括
したがって、本件発明1~2、5、7が、甲第1号証に記載された発明であるということはできないし、本件発明1、3、7が、甲第2号証に記載された発明であるということはできない。また、本件発明1~7が、甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないし、本件発明1~7が、甲第2号証に記載された発明に基いて、又は甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないし、本件発明1、7が、甲第4号証に記載された発明に基いて、又は甲第4号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
よって、申立人の新規性、進歩性についての主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700422