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特許異議申立

2020-700173

銀ナノプレート組成物および方法

審判番号
2020-700173
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-076470外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年03月11日
審決日
2021年02月01日
公報発行日
2021年05月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(B22F) / P1651.121-YAA(B22F) / P1651.537-YAA(B22F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6574867号発明「銀ナノプレート組成物および方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6574867号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~8〕,〔9~11〕について訂正することを認める。
特許第6574867号の請求項1~12に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 41項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第6574867号(請求項の数12。以下,「本件特許」という。)は,2013年(平成25年)10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2012年10月11日,米国(US))を国際出願日とする特許出願(特願2015-536844号)の一部を,平成30年4月12日に新たな出願とした特許出願(特願2018-76470号)に係るものであって,令和1年8月23日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,令和1年9月11日である。)。

その後,令和2年3月11日に,本件特許の請求項1~12に係る特許に対して,特許異議申立人である松井伸一(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。

本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。

令和2年 3月11日   特許異議申立書

6月22日付け 取消理由通知書

9月23日   意見書,訂正請求書

11月 9日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)

12月11日   意見書(申立人)

第2 訂正の請求について

1 訂正の内容

令和2年9月23日提出の訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~11について訂正することを求めるものであり,その内容は,以下のとおりである。下線は,訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程」と記載されているのを,「安定化剤及び緩衝液を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程であって,前記緩衝液がホウ酸塩緩衝液を含む工程」に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項1に「銀ナノプレートの該濃度を増加させ,該溶液の該光学濃度を増加させる工程」と記載されているのを,「接線流濾過によって銀ナノプレートの該濃度を増加させ,該溶液の該光学濃度を増加させる工程」に訂正する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項1に「銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成される,方法」と記載されているのを,「銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成され,前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法」に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項6に「銀ナノプレートの該溶液が,1または複数の形状安定化剤および銀源を含む溶液から形成される,請求項1~5のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを,「銀ナノプレートの該溶液が,1または複数の形状安定化剤および銀源を含む溶液から形成され,前記形状安定化剤がポリビニルアルコールである,請求項1~5のいずれかに記載の方法。」に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項9に「工程とを含む,方法」と記載されているのを,「工程とを含み,前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法」に訂正する。

(6)一群の請求項について

訂正前の請求項1~8について,請求項2~8は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1~8は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。

訂正前の請求項9~11について,請求項10及び11は,請求項9を直接引用するものであり,上記の訂正事項5によって記載が訂正される請求項9に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項9~11は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。

2 訂正の適否についての当審の判断

(1)訂正事項1について

訂正事項1に係る訂正は,訂正前の請求項1に対して,「及び緩衝液」,「であって,前記緩衝液がホウ酸塩緩衝液を含む工程」との記載を追加するものである。

この訂正は,訂正前の請求項1における「安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程」について,安定化剤のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものに限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面には,銀ナノプレートの溶液に安定化剤を添加するとともに,水溶性の塩を含有する緩衝液等の緩衝液を添加すること(【0010】),水溶性の塩にはホウ酸塩が含まれ得ること(【0011】)が記載されているから,この訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2に係る訂正は,訂正前の請求項1に対して,「接線流濾過によって」との記載を追加するものである。

この訂正は,訂正前の請求項1における「銀ナノプレートの該濃度を増加させ,該溶液の該光学濃度を増加させる工程」について,「接線流濾過によって」行うものに限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面には,「一実施形態では,銀ナノプレートの濃度は,接線流濾過を用いて増加させる。」(【0029】)との記載があるから,この訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(3)訂正事項3及び5について

訂正事項3及び5に係る訂正は,それぞれ,訂正前の請求項1及び9に対して,「前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である」との記載を追加するものである。

これらの訂正は,訂正前の請求項1及び9における「安定化剤」について,具体的に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面には,「安定化剤は,濃縮の前,間,および/または後にナノプレートを安定化させ,それによって銀ナノプレートの安定した高光学濃度溶液の製造を可能にする生物学的薬剤または化学薬剤であり得る。」(【0007】),「安定化剤には,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,(例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよび/またはスルホン酸塩で誘導体化された炭化水素ポリマーなど),ポリビニル系ポリマー(例えばポリビニルアルコール(PVA)および/またはポリビニルピロリドン(PVP)など),ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸,またはデキストランの1またはそれ以上が含まれ得る。」(【0011】)との記載があるから,これらの訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について

訂正事項4に係る訂正は,訂正前の請求項6に対して,「前記形状安定化剤がポリビニルアルコールである」との記載を追加するものである。

この訂正は,訂正前の請求項6における「形状安定化剤」について,具体的に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面には,「一実施形態では,濃度安定化化学薬剤は,形状安定化剤として働く。」(【0024】),「濃度安定化化学薬剤は,水溶性ポリマーである。様々な実施形態では,ポリマーは,ポリスルホン酸塩,ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの誘導体,ビニルポリマーの誘導体,およびポリビニルアルコール(PVA)のいずれかまたは複数である。」(【0025】)との記載があるから,この訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(5)独立特許要件について

本件においては,訂正前の全ての請求項1~12について特許異議の申立てがされているので,特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。

3 まとめ

上記2のとおり,各訂正事項に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものに該当し,同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものであるから,結論のとおり,本件訂正を認める。

第3 本件発明

前記第2で述べたとおり,本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1~12に係る発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

【請求項1】

極めて高い光学濃度をもつ銀ナノプレートの溶液を生成するための方法であって,

安定化剤及び緩衝液を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程であって,前記緩衝液がホウ酸塩緩衝液を含む工程と;

接線流濾過によって銀ナノプレートの該濃度を増加させ,該溶液の該光学濃度を増加させる工程と

を含み,

銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成され,

前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。

【請求項2】

該銀ナノプレートが,1.5~25の間のアスペクト比を有する,請求項1に記載の方法。

【請求項3】

該ナノプレートが,10nm~250nmの間のエッジ長さを有する,請求項1に記載の方法。

【請求項4】

該ナノプレートの横断面が三角形である,請求項1に記載の方法。

【請求項5】

該ナノプレートの横断面が円形である,請求項1に記載の方法。

【請求項6】

銀ナノプレートの該溶液が,1または複数の形状安定化剤および銀源を含む溶液から形成され,前記形状安定化剤がポリビニルアルコールである,請求項1~5のいずれかに記載の方法。

【請求項7】

電磁線を用いて該銀源が還元される,請求項1~5のいずれかに記載の方法。

【請求項8】

熱を用いて該銀源が還元される,請求項1~5のいずれかに記載の方法。

【請求項9】

安定した銀ナノプレート溶液の光学濃度を増加させるための方法であって,

板形状を有する複数の銀ナノプレートを含み,0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する溶液を準備する工程と;

安定化剤を該溶液に添加する工程と;

緩衝液を該溶液に添加する工程と;

該緩衝液を含有する溶液を濃縮して濃縮溶液を形成する工程であって,該濃縮溶液が該板形状を有する複数の銀ナノプレートを含み,該濃縮溶液が,10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する,工程と

を含み,

前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。

【請求項10】

該濃縮したナノプレートを単離する工程と

該単離した濃縮ナノプレートをシリカで封入する工程と

をさらに含む,請求項9に記載の方法。

【請求項11】

ナノプレートが,接線流濾過によって濃縮される,請求項9に記載の方法。

【請求項12】

金属酸化物で被覆された銀ナノプレートを生成するための方法であって,

500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する銀ナノプレートの溶液を準備する工程と;

該溶液を,該銀ナノプレートの外面に金属酸化物被膜を形成するのに十分な量の金属酸化物と接触させる工程と

を含む,方法。

第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要

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1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由

本件特許の請求項1~12に係る特許は,下記(1)~(14)のとおり,特許法113条2号及び4号に該当する。証拠方法は,下記(15)の甲第1号証~甲第10号証の2(以下,単に「甲1」等という。)である。

(1)申立理由1(新規性)

本件訂正前の請求項1~4及び6に係る発明は,甲2に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(2)申立理由2-1(進歩性)

本件訂正前の請求項1~4及び6に係る発明は,甲2に記載された発明並びに甲3,4及び8に記載された事項に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(3)申立理由2-2(進歩性)

本件訂正前の請求項1~9及び11に係る発明は,甲2に記載された発明及び甲3~8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~9及び11に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(4)申立理由3(新規性)

本件訂正前の請求項1~4及び6に係る発明は,甲3に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(5)申立理由4-1(進歩性)

本件訂正前の請求項1~4及び6に係る発明は,甲3に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(6)申立理由4-2(進歩性)

本件訂正前の請求項1~12に係る発明は,甲3に記載された発明及び甲4~9に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~12に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(7)申立理由5(新規性)

本件訂正前の請求項1~3,5及び6に係る発明は,甲4に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~3,5及び6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(8)申立理由6-1(進歩性)

本件訂正前の請求項1~3,5及び6に係る発明は,甲4に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~3,5及び6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(9)申立理由6-2(進歩性)

本件訂正前の請求項1~12に係る発明は,甲4に記載された発明並びに甲2,3及び5~9に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~12に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(10)申立理由7(新規性)

本件訂正前の請求項1~6に係る発明は,甲5に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(11)申立理由8-1(進歩性)

本件訂正前の請求項1~6に係る発明は,甲5に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~6に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(12)申立理由8-2(進歩性)

本件訂正前の請求項1~12に係る発明は,甲5に記載された発明並びに甲4及び6~10に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~12に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(13)申立理由9(サポート要件)

本件訂正前の請求項1~12に係る発明については,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから,本件特許の請求項1~12に係る特許は,同法113条4号に該当する。

(14)申立理由10(明確性要件)

本件訂正前の請求項1~11に係る発明については,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではないから,本件特許の請求項1~11に係る特許は,同法113条4号に該当する。

(15)証拠方法

・甲1 特許第6574867号公報

・甲2 "Highly Stable Silver Nanoplates for Surface Plasmon Resonance Biosensing", Angewandte Chemie International Edition, 2012.6.4, Vol. 51, p. 5629-5633及びSupporting Information, p.S1-S10

・甲2の2 甲2の抄訳

・甲3 特表2011-508072号公報

・甲4 特開2011-253093号公報

・甲5 "Silver Nanoplates as inkjet ink particles for metallization at a low baking temperature of 100℃", Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects, 2011, Vol. 381, p.85-91

・甲5の2 甲5の抄訳

・甲6 「銀ナノ粒子 Silver Nanoparticle」,日本接着学会誌, 2008, Vol. 44, No. 11, p. 414-419

・甲7 "Size Selection and Concentration of Silver Nanoparticles by Tangential Flow Ultrafiltration for SERS-Based Biosensors", J. Am. Chem. Soc., 2010, Vol. 132, p. 10970-10972

・甲7の2 甲7の抄訳

・甲8 "A Systematic Study of the synthesis of Silver Nanoparticles: Is Citrate a "Magic" Reagent ?", J. Am. Chem. Soc., 2011, Vol. 133, p. 18931-18939

・甲8の2 甲8の抄訳

・甲9 特表2010-535938号公報

・甲10 "Silver Nanoplates: Size Control in Two Dimensions and Formation Mechanisms", J. Phys. Chem. B, 2004, Vol. 108, p. 5500-5506

・甲10の2 甲10の抄訳

2 意見書(申立人)とともに提出された証拠方法

・甲11 特開2007-31753号公報

・甲12 特開2007-178915号公報

・甲13 特開2010-271022号公報

・甲14 特開2011-225974号公報

3 取消理由通知書に記載した取消理由

(1)取消理由1(新規性)

上記1の申立理由1(新規性)(ただし,本件訂正前の請求項5に係る発明も対象)と同旨

(2)取消理由2(進歩性)

本件訂正前の請求項1~8に係る発明は,甲2に記載された発明に基いて,あるいは,さらに技術常識(甲2~5)及び周知技術(甲6)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~8に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(3)取消理由3(新規性)

上記1の申立理由3(新規性)(ただし,本件訂正前の請求項5に係る発明も対象)と同旨

(4)取消理由4(進歩性)

本件訂正前の請求項1~8に係る発明は,甲3に記載された発明に基いて,あるいは,さらに技術常識(甲2~5)及び周知技術(甲6)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~8に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(5)取消理由5(新規性)

上記1の申立理由5(新規性)と同旨

(6)取消理由6(進歩性)

本件訂正前の請求項1~8に係る発明は,甲4に記載された発明に基いて,あるいは,さらに技術常識(甲2~5)及び周知技術(甲6)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~8に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(7)取消理由7(新規性)

上記1の申立理由7(新規性)と同旨

(8)取消理由8(進歩性)

本件訂正前の請求項1~8に係る発明は,甲5に記載された発明に基いて,あるいは,さらに技術常識(甲2~5)及び周知技術(甲6)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~8に係る特許は,同法113条2号に該当する。

(9)取消理由9(サポート要件)

上記1の申立理由9(サポート要件)(うち,安定化剤に関するものについて,本件訂正前の請求項1~11に係る発明に対するもの)と同旨

(10)取消理由10(明確性要件)

上記1の申立理由10(明確性要件)と同旨

第5 当審の判断

以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。

1 取消理由1(新規性),申立理由1(新規性),取消理由2(進歩性),申立理由2-1(進歩性),申立理由2-2(進歩性)

(1)甲2に記載された発明

甲2の記載(Supporting Informationのp.S1の3行~p.S2の16行,抄訳である甲2の2を参照)によれば,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「200μlの硝酸銀(AgNO3)(0.1M),12mlのクエン酸三ナトリウム二水和物(TSC),及び480μlの過酸化水素(H2O2)(30wt%)を,200mlの水(H2O)に溶解し,そこに激しい撹拌下で1.2mlの氷冷水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)(0.1M)を注入し,その溶液はすぐに青色になり,30分後に回収し,
回収した溶液を40ml取り,遠心分離し,水(H2O)で2回洗浄して,9mlの水(H2O)に再分散し,
この溶液に,Agナノプレートの垂直成長のために,1mlのポリビニルピロリドン(PVP)(繰り返し単位0.0175M)及び37.5μlのアスコルビン酸(0.5M)を添加し,次にシリンジポンプによって0.6mlの硝酸銀(AgNO3)(0.6mM)を撹拌下0.1ml/分の速度で添加し,
その後,Agナノプレートの沿面成長のために,300μlのクエン酸三ナトリウム二水和物(TSC)を続いて添加し,次にシリンジポンプを使用することで0.75mMの硝酸銀(AgNO3)及び1.13mMのクエン酸三ナトリウム二水和物(TSC)を含む3mlの混合溶液を0.1ml/分の速度でゆっくりと添加し,
反応は追加の1時間の間に進めることができ,得られたAgナノプレートは,調製されたままで,さらなる精製はせずにAu沈着のために用いられ,
Agナノプレートの上記溶液に,1mlのポリビニルピロリドン(PVP)(5wt%),150μlのジエチルアミン,及び200μlのアスコルビン酸(0.5M)を添加し,
別のAu用成長溶液を,3mlの水(H2O)中に400μlのポリビニルピロリドン(PVP)(5wt%),80μlのヨウ化カリウム(KI)(0.2M),及び20μlのテトラクロロ金酸(HAuCl4)(0.25M)を取り込むことによって調製し,
シリンジポンプを使用することで,典型的には1.2mlのAuの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に0.05ml/分の速度でゆっくりと添加し,Agナノプレートの表面上にAuの層を沈着させ,
遠心分離によってAg@Auナノプレートを回収し,水(H2O)で2回洗浄し,4mlの水(H2O)中で保管する,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)の製造方法。」(以下,「甲2発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲2発明とを対比する。

(ア)甲2発明における「Ag@Auナノプレート」は,「Agナノプレートの表面上にAuの層を沈着させ」たものであるところ,本件発明1においては,本件明細書に,「一実施形態では,ナノ粒子の外面の少なくとも一部分は,例えば・・・金属(例えば,金属薄膜・・・)・・・を含むように修飾される。」(【0040】)と記載されるように,銀ナノプレートの外面(表面)が,金属を含むように修飾される場合を包含するものであるから,本件発明1における「銀ナノプレート」に相当する。

そして,甲2発明における「Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)の製造方法」は,本件発明1における「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法」に相当する。

(イ)a 甲2発明では,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)を製造する際に,「Auの成長溶液」を「Agナノプレートの溶液」中に添加し,Agナノプレートの表面上にAuの層を沈着させている。

b 上記のうち,「Agナノプレートの溶液」の製造については,まず,硝酸銀,クエン酸三ナトリウム二水和物,過酸化水素,水,水素化ホウ素ナトリウムから,青色の溶液を製造し,回収した溶液を遠心分離し,水で洗浄して,水に再分散しているが,その後,Agナノプレートの成長が行われているから,この時点で,その成長のもととなるAgナノ粒子が形成されていると認められる。

そして,この溶液に,Agナノプレートの垂直成長のために,ポリビニルピロリドン,アスコルビン酸,硝酸銀を添加し,その後,Agナノプレートの沿面成長のために,クエン酸三ナトリウム二水和物,硝酸銀及びクエン酸三ナトリウム二水和物を含む混合溶液を添加することによりAgナノプレートが得られ,この得られたAgナノプレートの上記溶液に,ポリビニルピロリドン,ジエチルアミン,アスコルビン酸を添加して,「Agナノプレートの溶液」を製造している。

以上によれば,甲2発明における「Agナノプレートの溶液」は,まず,成長のもととなるAgナノ粒子を形成し,その後,成長させてAgナノプレートを得ることにより製造しており,シード媒介成長法を用いて製造しているといえる。

c 甲2発明では,この「Agナノプレートの溶液」を用いて,上記aのとおり,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)を製造している。

そうすると,甲2発明において,「Agナノプレートの溶液」をシード媒介成長法を用いて製造し,この「Agナノプレートの溶液」を用いて,「Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)」を「製造」することは,本件発明1において,「銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成される」ことに相当する。

(ウ)甲2発明における「Agナノプレートの溶液」の製造では,「クエン酸三ナトリウム二水和物」,「ポリビニルピロリドン」が添加されているが,これらは,本件発明1における「安定化剤」に相当するといえる。

甲2発明では,この「Agナノプレートの溶液」を用いて,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)を製造している。

そうすると,甲2発明において,「Agナノプレートの溶液」を製造する際に,「クエン酸三ナトリウム二水和物」,「ポリビニルピロリドン」を「添加」し,この「Agナノプレートの溶液」を用いて,「Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)」を「製造」することは,本件発明1において,「安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する」ことに相当する。

(エ)甲2発明では,硝酸銀,クエン酸三ナトリウム二水和物,過酸化水素,水,水素化ホウ素ナトリウムから,青色の溶液を製造し,回収した溶液を遠心分離し,水で洗浄して,9mlの水に再分散し(上記(イ)bのとおり,この時点で,所定の濃度のAgナノ粒子が形成されていると解される。),この9mlの溶液に,1mlのポリビニルピロリドン,37.5μlのアスコルビン酸,0.6mlの硝酸銀を添加し,その後,300μlのクエン酸三ナトリウム二水和物,硝酸銀及びクエン酸三ナトリウム二水和物を含む3mlの混合溶液を添加することによりAgナノプレートが得られ(合計13.938ml),Agナノプレートの上記溶液に,1mlのポリビニルピロリドン,150μlのジエチルアミン,200μlのアスコルビン酸を添加して,「Agナノプレートの溶液」を製造し(合計15.288ml),別途調製した1.2mlの「Auの成長溶液」を「Agナノプレートの溶液」中に添加し(合計16.488ml),Agナノプレートの表面上にAuの層を沈着させ,Ag@Auナノプレートとしている。

そして,甲2発明では,「Auの成長溶液」を「Agナノプレートの溶液」中に添加して得られた溶液(合計16.488ml)は,遠心分離によってAg@Auナノプレートが回収され,水で洗浄し,4mlの水中で保管される。

ここで,Ag@Auナノプレートの濃度については,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水における濃度のほうが,「Auの成長溶液」を「Agナノプレートの溶液」中に添加して得られた溶液(合計16.488ml)における濃度よりも,増加していることは,明らかである。

そうすると,甲2発明において,「Auの成長溶液」を「Agナノプレートの溶液」中に添加して得られた溶液を,「遠心分離によってAg@Auナノプレートを回収し,水(H2O)で2回洗浄し,4mlの水(H2O)中で保管する」ことは,本件発明1において,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液における,「銀ナノプレートの該濃度を増加させ」ることに相当する。

(オ)以上によれば,本件発明1と甲2発明とは,

「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法であって,
安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程と;
銀ナノプレートの該濃度を増加させる工程と
を含み,
銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成され,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点1-1

本件発明1では,銀ナノプレートの該濃度を増加させ,「該溶液の該光学濃度を増加させる」ものであり,また,生成する銀ナノプレートの溶液が,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるのに対して,甲2発明では,Ag@Auナノプレートの濃度については,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水における濃度のほうが,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液(合計16.488ml)における濃度よりも,増加しているものの,「該溶液の該光学濃度」が「増加」しているかどうか不明であり,また,製造されるAg@Auナノプレートが保管された4mlの水が,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるかどうか不明である点。

・相違点1-2

本件発明1では,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に,安定化剤のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するのに対して,甲2発明では,Agナノプレートの溶液を製造する際に,クエン酸三ナトリウム二水和物,ポリビニルピロリドンを添加し,このAgナノプレートの溶液を用いて,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)を製造するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない点。

・相違点1-3

本件発明1では,「接線流濾過によって」,溶液における銀ナノプレートの該濃度を増加させるのに対して,甲2発明では,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液を,「遠心分離によって」,Ag@Auナノプレートを回収し,水(H2O)で2回洗浄し,4mlの水(H2O)中で保管する点。

イ 相違点1-2の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点1-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲2発明は,Agナノプレートの溶液を製造する際に,クエン酸三ナトリウム二水和物,ポリビニルピロリドンを添加し,このAgナノプレートの溶液を用いて,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)を製造するものであり,クエン酸三ナトリウム二水和物及びポリビニルピロリドン(いずれも,本件発明1における「安定化剤」に相当する。)を添加するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない。

甲2には,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについて,何ら記載されていない。

以上によれば,相違点1-2は実質的な相違点である。

したがって,相違点1-1及び1-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲2に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点1-2の容易想到性について検討する。

甲11には,金属イオン含有化合物を溶液中で還元して金属ナノ粒子化する際に,反応系中へホウ素等の無機酸等の緩衝材を加えることについて記載されている(【0023】,【0024】)。

一方,甲2発明も,硝酸銀を溶液中で還元してAgナノ粒子を製造するものといえるから,この点では,甲11に記載された事項と技術的に共通するところがある。

しかしながら,甲2発明では,特に問題なく,硝酸銀を溶液中で還元してAgナノ粒子を製造することができるものであり,このような甲2発明において,甲11に記載された事項をあえて適用する動機付けがあるとはいえない。

また,甲2のほか,甲3~10及び12~14のいずれにも,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについては,何ら記載されていない。

そして,本件発明1は,銀ナノプレートの溶液を安定化させ,濃縮による銀ナノプレートの形状の変化や銀ナノプレートの溶液の光学的性質(光学濃度)の変化を減少させながら,高い光学濃度の銀ナノプレートの溶液を生成することができる(【0006】,【0051】~【0053】)という,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲2発明において,Agナノプレートの溶液を製造し,このAgナノプレートの溶液を用いて,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)を製造する際に,クエン酸三ナトリウム二水和物,ポリビニルピロリドンのほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点1-1及び1-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明1は,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2~8について

本件発明2~8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2~8についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明9について

ア 対比

本件発明9と甲2発明とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,

「方法であって,
板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液を準備する工程と;
安定化剤を該溶液に添加する工程と;
該溶液を濃縮して濃縮溶液を形成する工程であって,該濃縮溶液が該板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む,工程と
を含み,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点1-4

本件発明9は,「安定した銀ナノプレート溶液の光学濃度を増加させるための」方法であるのに対して,甲2発明は,「Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)の製造方法」である点。

・相違点1-5

本件発明9では,板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであり,濃縮溶液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのに対して,甲2発明では,Ag@Auナノプレートの濃度については,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水における濃度のほうが,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液(合計16.488ml)における濃度よりも,増加しているものの,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明であり,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である点。

・相違点1-6

本件発明9では,さらに「緩衝液を該溶液に添加する工程」を有し,安定化剤のほかに,さらに「緩衝液を含有する」溶液を濃縮するのに対して,甲2発明では,Agナノプレートの溶液を製造する際に,クエン酸三ナトリウム二水和物,ポリビニルピロリドンを添加し,このAgナノプレートの溶液を用いて,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水(H2O)を製造するものの,さらに「緩衝液を該溶液に添加する」ものではない点。

イ 相違点1-5の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点1-5が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

a 甲2発明では,Ag@Auナノプレートの濃度については,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水における濃度のほうが,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液(合計16.488ml)における濃度よりも,増加しているものの,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかは不明であり,また,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかも不明である。また,そのように認めるに足りる証拠もない。

b この点,申立人は,銀ナノプレートの極大吸収波長における吸光度(光学濃度)は,原料となる銀の量に概ね依存しているとして,本件明細書の実施例1における銀濃度と光学濃度との関係から,銀ナノプレート溶液の銀濃度に対する光学濃度の換算係数を7.7cm-1と算出した上で,この換算係数を用いれば,甲2発明における,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液については,光学濃度は約3.0cm-1と見積もられ,同Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水については,光学濃度は約12cm-1と見積もられると主張する。

しかしながら,銀ナノプレートの極大吸収波長における吸光度(光学濃度)が,原料となる銀の量のみで一義的に定まるかどうかは不明であり,また,そのように認めるに足りる証拠もない。

そうすると,本件明細書の実施例1における銀濃度と光学濃度の関係が,そのまま,甲2発明における銀濃度と光学濃度の関係に当てはまるかどうかは不明であるから,甲2発明における,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液の光学濃度が約3.0cm-1であり,同Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水の光学濃度が約12cm-1であるということはできない。

よって,申立人の主張は採用できない(なお,後述する甲3~5についても,同様である。)。

c 以上によれば,相違点1-5は実質的な相違点である。

したがって,相違点1-4及び1-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲2に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点1-5の容易想到性について検討する。

甲2発明における,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液と,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水のいずれについても,それらの「ピーク光学濃度」が具体的にどの程度であるのかは不明であるから,それらの「ピーク光学濃度」を,それぞれ,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,動機付けられるとはいえない。

また,甲2のほか,甲3~14のいずれにも,そのようなことを動機付ける記載は見当たらない。

そして,本件発明9は,上記(2)イ(イ)で本件発明1について述べたのと同様の,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲2発明において,Auの成長溶液をAgナノプレートの溶液中に添加して得られた溶液を,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,Ag@Auナノプレートが保管された4mlの水を,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点1-4及び1-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明9は,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明11について

本件発明11は,本件発明9を直接引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明9が,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明11についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえず,また,甲2に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)まとめ

したがって,取消理由1(新規性),申立理由1(新規性),取消理由2(進歩性),申立理由2-1(進歩性),申立理由2-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1~9及び11に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由3(新規性),申立理由3(新規性),取消理由4(進歩性),申立理由4-1(進歩性),申立理由4-2(進歩性)

(1)甲3に記載された発明

甲3の記載(請求項1,24,【0005】,【0061】~【0063】,実施例1~3)によれば,特に実施例1~3に着目すると,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる。

「2.5mMのクエン酸三ナトリウム水溶液5ml,500mg.L-1の1000kDaポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)0.25ml,及び新たに溶解した10mMのNaBH4水溶液0.3mlを混合し,次いで継続して撹拌しながら,0.5mMのAgNO3水溶液5mlを2ml.min-1で添加することにより銀シードを生産し,
蒸留水5ml,10mMのアスコルビン酸水溶液75μl,及び様々な量のシード溶液を混合し,次いで0.5mMのAgNO3水溶液3mlを1ml.min-1の速度で添加することによって,銀シードを成長させ,ナノプリズムを生産し,
合成の後,25mMのクエン酸三ナトリウム0.5mlを添加して粒子を安定化させ,このサンプルを水で希釈し,
遠心分離により銀ナノプリズムサンプルを濃縮する,
X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する方法。」(以下,「甲3発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲3発明とを対比する。

(ア)甲3発明における「銀ナノプリズム」は,甲3の記載(【0054】,図1)によれば,本件発明1における「銀ナノプレート」に相当する。

甲3発明におけるX線回折(XRD)測定のためのサンプルは,銀ナノプリズムを含む溶液といえるから,甲3発明における「X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する方法」は,本件発明1における「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法」に相当する。

(イ)甲3発明において,「X線回折(XRD)測定のためのサンプル」が,まず,「銀シードを生産」し,その後,「銀シードを成長させ,銀ナノプリズムを生産」することにより「調製」されることは,本件発明1において,「銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成される」ことに相当する。

(ウ)甲3発明におけるX線回折(XRD)測定のためのサンプルの調製では,「クエン酸三ナトリウム水溶液」,「ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)」が添加されているが,これらは,本件発明1における「安定化剤」に相当するといえる。

そうすると,甲3発明において,「X線回折(XRD)測定のためのサンプル」を調製する際に,「クエン酸三ナトリウム水溶液」,「ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)」を添加することは,本件発明1において,「安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する」ことに相当する。

(エ)甲3発明では,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルを,遠心分離により濃縮することにより,X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製している。

ここで,銀ナノプリズムの濃度については,X線回折(XRD)測定のためのサンプルにおける濃度のほうが,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルにおける濃度よりも,増加していることは,明らかである。

そうすると,甲3発明において,銀シードを生産し,その銀シードを成長させ,銀ナノプリズムを生産し,その後,クエン酸三ナトリウムを添加して粒子を安定化させて得られた「サンプルを水で希釈し」,「遠心分離により銀ナノプリズムサンプルを濃縮する」ことは,本件発明1において,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液における,「銀ナノプレートの該濃度を増加させ」ることに相当する。

(オ)以上によれば,本件発明1と甲3発明とは,

「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法であって,
安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程と;
銀ナノプレートの該濃度を増加させる工程と
を含み,
銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成され,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点2-1

本件発明1では,銀ナノプレートの該濃度を増加させ,「該溶液の該光学濃度を増加させる」ものであり,また,生成する銀ナノプレートの溶液が,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるのに対して,甲3発明では,銀ナノプリズムの濃度については,X線回折(XRD)測定のためのサンプルにおける濃度のほうが,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルにおける濃度よりも,増加しているものの,「該溶液の該光学濃度」が「増加」しているかどうか不明であり,また,調製されるX線回折(XRD)測定のためのサンプルが,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるかどうか不明である点。

・相違点2-2

本件発明1では,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に,安定化剤のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するのに対して,甲3発明では,X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する際に,クエン酸三ナトリウム水溶液,ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)を添加するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない点。

・相違点2-3

本件発明1では,「接線流濾過によって」,溶液における銀ナノプレートの該濃度を増加させるのに対して,甲3発明では,銀シードを生産し,その銀シードを成長させ,銀ナノプリズムを生産し,その後,クエン酸三ナトリウムを添加して粒子を安定化させて得られたサンプルを水で希釈し,「遠心分離により」銀ナノプリズムサンプルを濃縮する点。

イ 相違点2-2の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点2-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲3発明は,X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する際に,クエン酸三ナトリウム水溶液,ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)(いずれも,本件発明1における「安定化剤」に相当する。)を添加するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない。

甲3には,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについて,何ら記載されていない。

以上によれば,相違点2-2は実質的な相違点である。

したがって,相違点2-1及び2-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲3に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点2-2の容易想到性について検討する。

甲11には,金属イオン含有化合物を溶液中で還元して金属ナノ粒子化する際に,反応系中へホウ素等の無機酸等の緩衝材を加えることについて記載されている。

一方,甲3発明も,AgNO3を溶液中で還元して銀シードを製造するものといえるから,この点では,甲11に記載された事項と技術的に共通するところがある。

しかしながら,甲3発明では,特に問題なく,AgNO3を溶液中で還元して銀シードを製造することができるものであり,このような甲3発明において,甲11に記載された事項をあえて適用する動機付けがあるとはいえない。

また,甲3のほか,甲2,4~10及び12~14のいずれにも,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについては,何ら記載されていない。

そして,本件発明1は,上記(2)イ(イ)で述べたとおりの,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲3発明において,X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する際に,クエン酸三ナトリウム水溶液,ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点2-1及び2-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明1は,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2~8について

本件発明2~8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2~8についても同様に,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明9について

ア 対比

本件発明9と甲3発明とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,

「方法であって,
板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液を準備する工程と;
安定化剤を該溶液に添加する工程と;
該溶液を濃縮して濃縮溶液を形成する工程であって,該濃縮溶液が該板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む,工程と
を含み,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点2-4

本件発明9は,「安定した銀ナノプレート溶液の光学濃度を増加させるための」方法であるのに対して,甲3発明は,「X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する方法」である点。

・相違点2-5

本件発明9では,板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであり,濃縮溶液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのに対して,甲3発明では,銀ナノプリズムの濃度については,X線回折(XRD)測定のためのサンプルにおける濃度のほうが,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルにおける濃度よりも,増加しているものの,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルが,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明であり,X線回折(XRD)測定のためのサンプルが,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である点。

・相違点2-6

本件発明9では,さらに「緩衝液を該溶液に添加する工程」を有し,安定化剤のほかに,さらに「緩衝液を含有する」溶液を濃縮するのに対して,甲3発明では,X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する際に,クエン酸三ナトリウム水溶液,ポリ(ナトリウムスチレンスルホネート)(PSSS)を添加するものの,さらに「緩衝液を該溶液に添加する」ものではない点。

イ 相違点2-5の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点2-5が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲3発明では,銀ナノプリズムの濃度については,X線回折(XRD)測定のためのサンプルにおける濃度のほうが,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルにおける濃度よりも,増加しているものの,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルが,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかは不明であり,また,X線回折(XRD)測定のためのサンプルが,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかも不明である。また,そのように認めるに足りる証拠もない。

以上によれば,相違点2-5は実質的な相違点である。

したがって,相違点2-4及び2-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲3に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点2-5の容易想到性について検討する。

甲3発明における,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルと,X線回折(XRD)測定のためのサンプルのいずれについても,それらの「ピーク光学濃度」が具体的にどの程度であるのかは不明であるから,それらの「ピーク光学濃度」を,それぞれ,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,動機付けられるとはいえない。

また,甲3のほか,甲2及び4~14のいずれにも,そのようなことを動機付ける記載は見当たらない。

そして,本件発明9は,上記(2)イ(イ)で本件発明1について述べたのと同様の,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲3発明において,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルを,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,X線回折(XRD)測定のためのサンプルを,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点2-4及び2-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明9は,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明10及び11について

本件発明10及び11は,本件発明9を直接引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明9が,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明10及び11についても同様に,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)本件発明12について

ア 対比

本件発明12と甲3発明とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,

「銀ナノプレートを生成するための方法であって,
銀ナノプレートの溶液を準備する工程と;
を含む,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点2-7

本件発明12は,「金属酸化物で被覆された」銀ナノプレートを生成するための方法であって,「該溶液を,該銀ナノプレートの外面に金属酸化物被膜を形成するのに十分な量の金属酸化物と接触させる工程」を有するのに対して,甲3発明は,「X線回折(XRD)測定のためのサンプルを調製する方法」である点。

・相違点2-8

本件発明12では,銀ナノプレートの溶液が,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのに対して,甲3発明では,銀ナノプリズムの濃度については,X線回折(XRD)測定のためのサンプルにおける濃度のほうが,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルにおける濃度よりも,増加しているものの,X線回折(XRD)測定のためのサンプルが,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である点。

イ 相違点2-8の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点2-8が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲3発明では,銀ナノプリズムの濃度については,X線回折(XRD)測定のためのサンプルにおける濃度のほうが,水で希釈して得られた銀ナノプリズムサンプルにおける濃度よりも,増加しているものの,X線回折(XRD)測定のためのサンプルが,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのかどうかは不明である。また,そのように認めるに足りる証拠もない。

以上によれば,相違点2-8は実質的な相違点である。

したがって,相違点2-7について検討するまでもなく,本件発明12は,甲3に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点2-8の容易想到性について検討する。

甲3発明における,X線回折(XRD)測定のためのサンプルについては,少なくとも,その「光学濃度」が具体的にどの程度であるのかは不明であるから,その「光学濃度」を,「10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものとすることが,動機付けられるとはいえない。

また,甲3のほか,甲2及び4~14のいずれにも,そのようなことを動機付ける記載は見当たらない。

そうすると,甲3発明において,X線回折(XRD)測定のためのサンプルを,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点2-7について検討するまでもなく,本件発明12は,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明12は,甲3に記載された発明であるとはいえず,また,甲3に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)まとめ

したがって,取消理由3(新規性),申立理由3(新規性),取消理由4(進歩性),申立理由4-1(進歩性),申立理由4-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由5(新規性),申立理由5(新規性),取消理由6(進歩性),申立理由6-1(進歩性),申立理由6-2(進歩性)

(1)甲4に記載された発明

甲4の記載(請求項1,2,5,【0010】,【0017】,【0034】,【0075】,【0076】)によれば,特に実施例1(【0075】,【0076】)に着目すると,甲4には,以下の発明が記載されていると認められる。

「2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液50mlに0.5g/lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5ml添加し,35℃まで加熱し,この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3ml添加し,0.5mMの硝酸銀水溶液50mlを20ml/minで攪拌しながら添加し,この溶液を30分間攪拌し,種溶液を作製し,
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mlにイオン交換水127.6mlを添加し,35℃まで加熱し,この溶液に10mMのアスコルビン酸水溶液を2ml添加し,前記種溶液を42.4ml添加し,0.5mMの硝酸銀水溶液79.6mlを10ml/minで攪拌しながら添加し,30分間攪拌した後,0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1ml添加し,7%ゼラチン水溶液を200g添加し,この溶液に,0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液107mlと0.47Mの硝酸銀水溶液107mlを混合してできた白色沈殿物混合液を添加し,前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.08MのNaOH水溶液72mlを添加し,このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加し,これを300分間攪拌し,銀平板粒子分散液を得て,
この銀平板粒子分散液中には,平均円相当径が170nm,厚みが平均10nm,アスペクト比が17.0の銀六角平板粒子が生成しており,
前記銀平板粒子分散液16mlに1NのNaOHを0.75ml添加し,イオン交換水24ml添加し,遠心分離器で5,000rpm5分間遠心分離を行い,銀六角平板粒子を沈殿させ,
遠心分離後の上澄み液を捨て,水を6ml添加し,沈殿した銀六角平板粒子を再分散させ,
この分散液に2質量%の水メタノール溶液(水:メタノール=1:1(質量比))を1.6ml添加する,塗布液の作製方法。」(以下,「甲4発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲4発明とを対比する。

(ア)甲4発明における「銀六角平板粒子」は,本件発明1における「銀ナノプレート」に相当する。

甲4発明における塗布液は,銀六角平板粒子を含む溶液といえるから,甲4発明における「塗布液の作製方法」は,本件発明1における「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法」に相当する。

(イ)甲4発明において,「塗布液」が,まず,硝酸銀水溶液等を用いて「種溶液を作製」し,その後,「銀平板粒子分散液を得」ることにより作製されることは,本件発明1において,「銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成される」ことに相当する。

(ウ)甲4発明における塗布液の作製では,「クエン酸ナトリウム水溶液」,「ポリスチレンスルホン酸水溶液」が添加されているが,これらは,本件発明1における「安定化剤」に相当するといえる。

そうすると,甲4発明において,「塗布液」を調製する際に,「クエン酸ナトリウム水溶液」,「ポリスチレンスルホン酸水溶液」を添加することは,本件発明1において,「安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する」ことに相当する。

(エ)甲4発明では,銀平板粒子分散液16mlにNaOHを0.75ml添加し,イオン交換水24ml添加し(合計40.75ml),遠心分離を行うことにより,銀六角平板粒子を沈殿させ,遠心分離後の上澄み液を捨て,水を6ml添加し,沈殿した銀六角平板粒子を再分散させ,この分散液に水メタノール溶液を1.6ml添加し,塗布液(合計7.6ml)を作製している。

ここで,銀六角平板粒子の濃度については,塗布液(合計7.6ml)における濃度のほうが,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液(合計40.75ml)における濃度よりも,増加していることは,明らかである。

そうすると,甲4発明において,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液を,「遠心分離器で5,000rpm5分間遠心分離を行い,銀六角平板粒子を沈殿させ,遠心分離後の上澄み液を捨て,水を6ml添加し,沈殿した銀六角平板粒子を再分散させ,この分散液に2質量%の水メタノール溶液(水:メタノール=1:1(質量比))を1.6ml添加する」ことは,本件発明1において,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液における,「銀ナノプレートの該濃度を増加させ」ることに相当する。

(オ)以上によれば,本件発明1と甲4発明とは,

「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法であって,
安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程と;
銀ナノプレートの該濃度を増加させる工程と
を含み,
銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成され,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点3-1

本件発明1では,銀ナノプレートの該濃度を増加させ,「該溶液の該光学濃度を増加させる」ものであり,また,生成する銀ナノプレートの溶液が,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるのに対して,甲4発明では,銀六角平板粒子の濃度については,塗布液(合計7.6ml)における濃度のほうが,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液(合計40.75ml)における濃度よりも,増加しているものの,「該溶液の該光学濃度」が「増加」しているかどうか不明であり,また,作製される塗布液が,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるかどうか不明である点。

・相違点3-2

本件発明1では,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に,安定化剤のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するのに対して,甲4発明では,塗布液を調製する際に,クエン酸ナトリウム水溶液,ポリスチレンスルホン酸水溶液を添加するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない点。

・相違点3-3

本件発明1では,「接線流濾過によって」,溶液における銀ナノプレートの該濃度を増加させるのに対して,甲4発明では,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液を,「遠心分離器で5,000rpm5分間遠心分離を行い」,銀六角平板粒子を沈殿させ,遠心分離後の上澄み液を捨て,水を6ml添加し,沈殿した銀六角平板粒子を再分散させ,この分散液に2質量%の水メタノール溶液(水:メタノール=1:1(質量比))を1.6ml添加する点。

イ 相違点3-2の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点3-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲4発明は,塗布液を調製する際に,クエン酸ナトリウム水溶液,ポリスチレンスルホン酸水溶液(いずれも,本件発明1における「安定化剤」に相当する。)を添加するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない。

甲4には,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについて,何ら記載されていない。

以上によれば,相違点3-2は実質的な相違点である。

したがって,相違点3-1及び3-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲4に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点3-2の容易想到性について検討する。

甲11には,金属イオン含有化合物を溶液中で還元して金属ナノ粒子化する際に,反応系中へホウ素等の無機酸等の緩衝材を加えることについて記載されている。

一方,甲4発明も,硝酸銀を溶液中で還元して銀平板粒子の種を含む溶液を製造するものといえるから,この点では,甲11に記載された事項と技術的に共通するところがある。

しかしながら,甲4発明では,特に問題なく,硝酸銀を溶液中で還元して銀平板粒子の種を含む溶液を製造することができるものであり,このような甲4発明において,甲11に記載された事項をあえて適用する動機付けがあるとはいえない。

また,甲4のほか,甲2,3,5~10及び12~14のいずれにも,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについては,何ら記載されていない。

そして,本件発明1は,上記(2)イ(イ)で述べたとおりの,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲4発明において,塗布液を調製する際に,クエン酸ナトリウム水溶液,ポリスチレンスルホン酸水溶液のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点3-1及び3-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明1は,甲4に記載された発明であるとはいえず,また,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2~8について

本件発明2~8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲4に記載された発明であるとはいえず,また,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2~8についても同様に,甲4に記載された発明であるとはいえず,また,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明9について

ア 対比

本件発明9と甲4発明とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,

「方法であって,
板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液を準備する工程と;
安定化剤を該溶液に添加する工程と;
該溶液を濃縮して濃縮溶液を形成する工程であって,該濃縮溶液が該板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む,工程と
を含み,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点3-4

本件発明9は,「安定した銀ナノプレート溶液の光学濃度を増加させるための」方法であるのに対して,甲4発明は,「塗布液の作製方法」である点。

・相違点3-5

本件発明9では,板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであり,濃縮溶液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのに対して,甲4発明では,銀六角平板粒子の濃度については,塗布液(合計7.6ml)における濃度のほうが,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液(合計40.75ml)における濃度よりも,増加しているものの,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明であり,塗布液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である点。

・相違点3-6

本件発明9では,さらに「緩衝液を該溶液に添加する工程」を有し,安定化剤のほかに,さらに「緩衝液を含有する」溶液を濃縮するのに対して,甲4発明では,塗布液を調製する際に,クエン酸ナトリウム水溶液,ポリスチレンスルホン酸水溶液を添加するものの,さらに「緩衝液を該溶液に添加する」ものではない点。

イ 相違点3-5の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点3-5が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲4発明では,銀六角平板粒子の濃度については,塗布液(合計7.6ml)における濃度のほうが,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液(合計40.75ml)における濃度よりも,増加しているものの,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかは不明であり,また,塗布液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかも不明である。また,そのように認めるに足りる証拠もない。

以上によれば,相違点3-5は実質的な相違点である。

したがって,相違点3-4及び3-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲4に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点3-5の容易想到性について検討する。

甲4発明における,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液と,塗布液のいずれについても,それらの「ピーク光学濃度」が具体的にどの程度であるのかは不明であるから,それらの「ピーク光学濃度」を,それぞれ,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,動機付けられるとはいえない。

また,甲4のほか,甲2,3及び5~14のいずれにも,そのようなことを動機付ける記載は見当たらない。

そして,本件発明9は,上記(2)イ(イ)で本件発明1について述べたのと同様の,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲4発明において,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液を,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,塗布液を,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点3-4及び3-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明9は,甲4に記載された発明であるとはいえず,また,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明10及び11について

本件発明10及び11は,本件発明9を直接引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明9が,甲4に記載された発明であるとはいえず,また,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明10及び11についても同様に,甲4に記載された発明であるとはいえず,また,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)本件発明12について

ア 対比

本件発明12と甲4発明とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,

「銀ナノプレートを生成するための方法であって,
銀ナノプレートの溶液を準備する工程と;
を含む,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点3-7

本件発明12は,「金属酸化物で被覆された」銀ナノプレートを生成するための方法であって,「該溶液を,該銀ナノプレートの外面に金属酸化物被膜を形成するのに十分な量の金属酸化物と接触させる工程」を有するのに対して,甲4発明は,「塗布液の作製方法」である点。

・相違点3-8

本件発明12では,銀ナノプレートの溶液が,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのに対して,甲4発明では,銀六角平板粒子の濃度については,塗布液(合計7.6ml)における濃度のほうが,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液(合計40.75ml)における濃度よりも,増加しているものの,塗布液が,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である点。

イ 相違点3-8の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点3-8が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲4発明では,銀六角平板粒子の濃度については,塗布液(合計7.6ml)における濃度のほうが,銀平板粒子分散液にNaOHとイオン交換水を添加して得られた溶液(合計40.75ml)における濃度よりも,増加しているものの,塗布液が,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのかどうかは不明である。また,そのように認めるに足りる証拠もない。

以上によれば,相違点3-8は実質的な相違点である。

したがって,相違点3-7について検討するまでもなく,本件発明12は,甲4に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点3-8の容易想到性について検討する。

甲4発明における塗布液については,少なくとも,その「光学濃度」が具体的にどの程度であるのかは不明であるから,その「光学濃度」を,「10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものとすることが,動機付けられるとはいえない。

また,甲4のほか,甲2,3及び5~14のいずれにも,そのようなことを動機付ける記載は見当たらない。

そうすると,甲4発明において,塗布液を,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点3-7について検討するまでもなく,本件発明12は,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明12は,甲4に記載された発明であるとはいえず,また,甲4に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)まとめ

したがって,取消理由5(新規性),申立理由5(新規性),取消理由6(進歩性),申立理由6-1(進歩性),申立理由6-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。

4 取消理由7(新規性),申立理由7(新規性),取消理由8(進歩性),申立理由8-1(進歩性),申立理由8-2(進歩性)

(1)甲5に記載された発明

甲5の記載(p.86左欄下から9行~p.87の左欄2行,抄訳である甲5の2を参照)によれば,甲5には,以下の発明が記載されていると認められる。

「Agナノプレートの調製のためにシード成長法を用い,
初めに,0.05Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液50μLを,2.5×10-4Mのクエン酸ナトリウム水溶液10mLに添加し,調製されたままの0.02MのNaBH4溶液25μLを,連続的に撹拌しながら,クエン酸ナトリウム及びAgNO3の混合液に徐々に添加することにより,淡黄色のAgシード溶液が得られ,
その後,1.2mLの0.05MのAgNO3を120mLの0.1Mのヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16TAB)水溶液に添加し,さらに,0.1Mのアスコルビン酸6mLと,調製したAgシード溶液620μLとを,C16TAB水溶液にゆっくりと添加し,2MのNaOH水溶液480μLを添加した後に,Agナノプレートが調製され,
10wt%インクを調整するために,この合成法を繰り返すことによって追加のAgナノプレート溶液を取得し,
得られた溶液を,4000rpmでの遠心分離によって沈殿させ,0.6mLの脱イオン水を用いて再分散する,質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する方法。」(以下,「甲5発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲5発明とを対比する。

(ア)甲5発明における「Agナノプレート」は,本件発明1における「銀ナノプレート」に相当する。

甲5発明における「質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する方法」は,本件発明1における「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法」に相当する。

(イ)甲5発明において,「質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液」が,「Agナノプレートの調製のためにシード成長法を用い」て「取得」されることは,本件発明1において,「銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成される」ことに相当する。

(ウ)甲5発明における質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液の取得では,「クエン酸ナトリウム水溶液」が添加されているが,これは,本件発明1における「安定化剤」に相当するといえる。

そうすると,甲5発明において,「質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液」を取得する際に,「クエン酸ナトリウム水溶液」を添加することは,本件発明1において,「安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する」ことに相当する。

(エ)甲5発明では,1.2mLのAgNO3を120mLのヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16TAB)水溶液に添加し,さらに,アスコルビン酸6mLと,調製したAgシード溶液620μLとを,C16TAB水溶液に添加し,NaOH水溶液480μLを添加した後に,Agナノプレートが調製され(合計128.3mL),得られた溶液を遠心分離によって沈殿させ,0.6mLの脱イオン水を用いて再分散して,質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得している。

ここで,Agナノプレートの濃度については,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液における濃度のほうが,その前の溶液における濃度よりも,増加していることは,明らかである。

そうすると,甲5発明において,調製されたAgナノプレートを含む溶液を,「4000rpmでの遠心分離によって沈殿させ,0.6mLの脱イオン水を用いて再分散」して,「質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する」ことは,本件発明1において,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液における,「銀ナノプレートの該濃度を増加させ」ることに相当する。

(オ)以上によれば,本件発明1と甲5発明とは,

「銀ナノプレートの溶液を生成するための方法であって,
安定化剤を,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程と;
銀ナノプレートの該濃度を増加させる工程と
を含み,
銀ナノプレートの該溶液が,シード媒介成長法を用いて形成され,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点4-1

本件発明1では,銀ナノプレートの該濃度を増加させ,「該溶液の該光学濃度を増加させる」ものであり,また,生成する銀ナノプレートの溶液が,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるのに対して,甲5発明では,Agナノプレートの濃度については,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液における濃度のほうが,その前の溶液における濃度よりも,増加しているものの,「該溶液の該光学濃度」が「増加」しているかどうか不明であり,また,取得される質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液が,「極めて高い光学濃度をもつ」ものであるかどうか不明である点。

・相違点4-2

本件発明1では,銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に,安定化剤のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するのに対して,甲5発明では,質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する際に,クエン酸ナトリウム水溶液を添加するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない点。

・相違点4-3

本件発明1では,「接線流濾過によって」,溶液における銀ナノプレートの該濃度を増加させるのに対して,甲5発明では,調製されたAgナノプレートを含む溶液を,4000rpmでの「遠心分離によって」沈殿させ,0.6mLの脱イオン水を用いて再分散して,質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する点。

イ 相違点4-2の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点4-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲5発明は,質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する際に,クエン酸ナトリウム水溶液(本件発明1における「安定化剤」に相当する。)を添加するものの,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加するものではない。

甲5には,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについて,何ら記載されていない。

以上によれば,相違点4-2は実質的な相違点である。

したがって,相違点4-1及び4-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲5に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点4-2の容易想到性について検討する。

甲11には,金属イオン含有化合物を溶液中で還元して金属ナノ粒子化する際に,反応系中へホウ素等の無機酸等の緩衝材を加えることについて記載されている。

一方,甲5発明も,硝酸銀を溶液中で還元してAgシードを製造するものといえるから,この点では,甲11に記載された事項と技術的に共通するところがある。

しかしながら,甲5発明では,特に問題なく,硝酸銀を溶液中で還元してAgシードを製造することができるものであり,このような甲5発明において,甲11に記載された事項をあえて適用する動機付けがあるとはいえない。

また,甲5のほか,甲2~4,6~10及び12~14のいずれにも,「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することについては,何ら記載されていない。

そして,本件発明1は,上記(2)イ(イ)で述べたとおりの,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲5発明において,質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する際に,クエン酸ナトリウム水溶液のほかに,さらに「ホウ酸塩緩衝液を含む」「緩衝液」を添加することが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点4-1及び4-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明1は,甲5に記載された発明であるとはいえず,また,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2~8について

本件発明2~8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲5に記載された発明であるとはいえず,また,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2~8についても同様に,甲5に記載された発明であるとはいえず,また,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明9について

ア 対比

本件発明9と甲5発明とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,

「方法であって,
板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液を準備する工程と;
安定化剤を該溶液に添加する工程と;
該溶液を濃縮して濃縮溶液を形成する工程であって,該濃縮溶液が該板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む,工程と
を含み,
前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点4-4

本件発明9は,「安定した銀ナノプレート溶液の光学濃度を増加させるための」方法であるのに対して,甲5発明は,「質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する方法」である点。

・相違点4-5

本件発明9では,板形状を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであり,濃縮溶液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのに対して,甲5発明では,Agナノプレートの濃度については,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液における濃度のほうが,その前の溶液における濃度よりも,増加しているものの,その前の溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明であり,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である点。

・相違点4-6

本件発明9では,さらに「緩衝液を該溶液に添加する工程」を有し,安定化剤のほかに,さらに「緩衝液を含有する」溶液を濃縮するのに対して,甲5発明では,質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する際に,クエン酸ナトリウム水溶液を添加するものの,さらに「緩衝液を該溶液に添加する」ものではない点。

イ 相違点4-5の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点4-5が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲5発明では,Agナノプレートの濃度については,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液における濃度のほうが,その前の溶液における濃度よりも,増加しているものの,その前の溶液が,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかは不明であり,また,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液が,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものであるのかどうかも不明である。また,そのように認めるに足りる証拠もない。

以上によれば,相違点4-5は実質的な相違点である。

したがって,相違点4-4及び4-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲5に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点4-5の容易想到性について検討する。

甲5発明における,その前の溶液と,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液のいずれについても,それらの「ピーク光学濃度」が具体的にどの程度であるのかは不明であるから,それらの「ピーク光学濃度」を,それぞれ,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,動機付けられるとはいえない。

また,甲5のほか,甲2~4及び6~14のいずれにも,そのようなことを動機付ける記載は見当たらない。

そして,本件発明9は,上記(2)イ(イ)で本件発明1について述べたのと同様の,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。

そうすると,甲5発明において,その前の溶液を,「0.1~10cm-1の間のピーク光学濃度を有する」ものとし,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液を,「10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する」ものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点4-4及び4-6について検討するまでもなく,本件発明9は,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明9は,甲5に記載された発明であるとはいえず,また,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明10及び11について

本件発明10及び11は,本件発明9を直接引用するものであるが,上記(4)で述べたとおり,本件発明9が,甲5に記載された発明であるとはいえず,また,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明10及び11についても同様に,甲5に記載された発明であるとはいえず,また,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)本件発明12について

ア 対比

本件発明12と甲5発明とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,

「銀ナノプレートを生成するための方法であって,
銀ナノプレートの溶液を準備する工程と;
を含む,方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

・相違点4-7

本件発明12は,「金属酸化物で被覆された」銀ナノプレートを生成するための方法であって,「該溶液を,該銀ナノプレートの外面に金属酸化物被膜を形成するのに十分な量の金属酸化物と接触させる工程」を有するのに対して,甲5発明は,「質量パーセントの高いAgナノプレートを含む溶液を取得する方法」である点。

・相違点4-8

本件発明12では,銀ナノプレートの溶液が,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのに対して,甲5発明では,Agナノプレートの濃度については,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液における濃度のほうが,その前の溶液における濃度よりも,増加しているものの,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液が,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である点。

イ 相違点4-8の検討

(ア)事案に鑑み,まず,相違点4-8が実質的な相違点であるか否かについて検討する。

甲5発明では,Agナノプレートの濃度については,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液における濃度のほうが,その前の溶液における濃度よりも,増加しているものの,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液が,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものであるのかどうか不明である。また,そのように認めるに足りる証拠もない。

以上によれば,相違点4-8は実質的な相違点である。

したがって,相違点4-7について検討するまでもなく,本件発明12は,甲5に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に,相違点4-8の容易想到性について検討する。

甲5発明における,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液については,少なくとも,その「光学濃度」が具体的にどの程度であるのかは不明であるから,その「光学濃度」を,「10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものとすることが,動機付けられるとはいえない。

また,甲5のほか,甲2~4及び6~14のいずれにも,そのようなことを動機付ける記載は見当たらない。

そうすると,甲5発明において,遠心分離による沈殿及び脱イオン水を用いた再分散後の溶液を,「500~1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する」ものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。

したがって,相違点4-7について検討するまでもなく,本件発明12は,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括

以上のとおり,本件発明12は,甲5に記載された発明であるとはいえず,また,甲5に記載された発明及び甲2~14に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)まとめ

したがって,取消理由7(新規性),申立理由7(新規性),取消理由8(進歩性),申立理由8-1(進歩性),申立理由8-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。

5 取消理由10(明確性要件),申立理由10(明確性要件)

(1)令和2年6月22日付けの取消理由通知書では,本件訂正前の請求項1及び9における「安定化剤」について,「安定化」とは,何がどのように「安定化」するのか不明であり,具体的にどのような化学物質が,「安定化剤」に該当するのかも不明であり,また,上記「安定化剤」と,本件訂正前の請求項6における「形状安定化剤」との異同も不明であるため,本件訂正前の請求項1~11に係る発明は明確ではない旨,指摘した。

また,上記取消理由通知書では,本件訂正前の請求項6における「形状安定化剤」について,具体的にどのような化学物質が,「形状安定化剤」に該当するのか不明であるため,本件訂正前の請求項6に係る発明は明確ではない旨,指摘した。

(2)これに対して,前記第2のとおり,本件訂正により,本件発明1及び9における「安定化剤」について,「前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である」ことが特定されるとともに,本件発明6における「形状安定化剤」について,「前記形状安定化剤がポリビニルアルコールである」ことが特定された結果,それらの意味が明確にされたから,取消理由10(明確性要件),申立理由10(明確性要件)は解消した。

(3)したがって,取消理由10(明確性要件),申立理由10(明確性要件)によっては,本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。

6 取消理由9(サポート要件),申立理由9(サポート要件)

(1)令和2年6月22日付けの取消理由通知書では,本件発明1及び9は,「安定化剤」について何ら具体的に特定しないものであるところ,本件明細書には,何ら具体的に特定しない「安定化剤」を用いることによって,本件発明1及び9の課題(粒子濃度を増加させた場合に,調製された銀ナノプレートの形状及び光学的性質を実質的に部分的に又は完全に保存する,銀ナノプレートの高光学濃度溶液を,希薄な銀ナノプレート溶液から調製する方法を提供すること)が解決される機序については,何ら記載されておらず,また,本件明細書の実施例1~5では,わずか数種のものが用いられているにすぎないから,当業者は,実施例1~5で具体的に示された特定の安定化剤以外のものであっても,何らかの意味で「安定化剤」に該当すると解されるものであれば,本件発明1の課題が解決できることが理解できるとはいえないため,本件発明1~11は,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1~11の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものである旨,指摘した。

(2)これに対して,前記第2のとおり,本件訂正により,本件発明1及び9における「安定化剤」について,「前記安定化剤が,クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストランから選ばれる1又はそれ以上であって,濃縮の前,間,および/または後に前記銀ナノプレートを安定化させる安定化剤である」ことが特定された結果,本件発明1~11は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1~11の課題を解決できると認識できる範囲のものとなったから,取消理由9(サポート要件),申立理由9(サポート要件)(うち,安定化剤に関するものについて,本件訂正前の請求項1~11に係る発明に対するもの)は解消した。

(3)申立人は,本件発明1~8について,本件明細書には,銀ナノプレートをホウ酸塩の溶液中でポリビニルアルコールによって安定化させれば,濃縮の前後でピーク波長の位置が変化しないことが示され(【0053】,図6,7),ポリビニルアルコールによる銀ナノプレートを安定化効果は,ホウ酸塩と水素結合を介して複合体化してゲルを形成し,それによって銀ナノプレートの形状を保持することによって発揮される旨が記載されている(【0064】)ところ,本件明細書には,ポリビニルアルコール以外の安定化剤を使用したときの銀ナノプレートの安定化効果は,具体的に記載されておらず,また,「クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストラン」の中には,ポリビニルアルコールとは化学構造や物性の異なる物質が多数包含されており,当該物質が,総じて,ポリビニルアルコールと同様の安定化効果を発揮できるとは考えられないと主張する。

また,申立人は,本件発明9~11は,緩衝液については特に限定されていないが,本件発明9~11の課題が解決できることが本件明細書に具体的に記載されている態様は,ホウ酸塩の溶液中でポリビニルアルコールによって銀ナノプレートを安定化させる態様だけであるから,安定化剤としてポリビニルアルコール以外のものを使用したり,緩衝液としてホウ酸塩以外のものを使用したりしても,本件発明9~11の課題が解決できることは,本件明細書の記載から理解することはできないと主張する。

しかしながら,本件明細書には,「安定化剤は,濃縮の前,間,および/または後にナノプレートを安定化させ,それによって銀ナノプレートの安定した高光学濃度溶液の製造を可能にする」こと(【0007】),「安定化剤と,1または複数の水溶性塩を含有する緩衝液との組合せが,ナノプレート配合物に対する安定化を提供し,この際,塩の成分の1つが安定化剤と相互作用して安定化剤を架橋し,銀ナノプレート上の被膜の安定性を向上させることができる」こと(【0011】)が記載されており,また,上記のような安定化剤の例として,「クエン酸ナトリウム,水溶性ポリマー,ポリビニル系ポリマー,ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びデキストラン」(【0011】)が記載されている。そして,本件明細書には,具体例として,ホウ酸塩の溶液中でポリビニルアルコールによって銀ナノプレートを安定化させる態様(【0053】)が記載されているのであるから,当業者であれば,ポリビニルアルコール以外の安定化剤を使用した場合でも,また,ホウ酸塩以外の緩衝液を使用した場合でも,銀ナノプレートの安定化効果が得られることが理解できるといえる。

この点,申立人は,なぜ,ポリビニルアルコールとは化学構造や物性の異なる物質が,総じて,ポリビニルアルコールと同様の安定化効果を発揮できるとは考えられないといえるのか,また,なぜ,緩衝液としてホウ酸塩以外のものを使用しても,本件発明9~11の課題が解決できるとは理解できないのか,その理由を具体的に主張するものではない。

よって,申立人の主張は採用できない。

(4)申立人は,本件発明12について,「10cm-1よりも高い光学濃度を有する銀ナノプレートの溶液」を準備する工程が規定されているが,そのために必要な安定化剤について何の規定もないから,本件発明12は,発明の詳細な説明の記載により当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えていると主張する。

しかしながら,本件明細書の記載(【0014】)によれば,本件発明12の課題は,「10cm-1よりも高い光学濃度を有する銀ナノプレートの溶液」を提供することではなく,金属酸化物で被覆された銀ナノプレートを生成するための方法を提供することであると解されるから,本件発明12において,安定化剤について何ら特定されていないとしても,サポート要件に適合しないとはいえない。

なお,「10cm-1よりも高い光学濃度を有する銀ナノプレートの溶液」をどのように準備するかについては,本件明細書に記載されている。

よって,申立人の主張は採用できない。

(5)したがって,取消理由9(サポート要件),申立理由9(サポート要件)によっては,本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび

以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。

また,他に本件特許の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり決定する。

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2020-700173

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  • 2025-701017異議申立 / 2026-02-27 / 維持接合用ペースト、及び接合体
    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F
  • 2024-701158異議申立 / 2025-08-29 / 訂正認容造形用金属粉末およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F
  • 2024-700505異議申立 / 2024-11-29 / 訂正認容金属元素含有粉及び成形体
    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F
  • 2024-700569異議申立 / 2024-09-30 / 維持金属粉およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F

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