特許異議申立
2020-700148
遊技機
- 審判番号
- 2020-700148
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-043585
- 登録番号
- 特許第6570563号(P6570563)
- 請求日
- 2020年03月04日
- 審決日
- 2020年10月15日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】重信 和男
- 【権利者代理人】溝渕 良一
- 【権利者代理人】石川 好文
- 【権利者代理人】堅田 多恵子
- 【権利者代理人】林 修身
- 【権利者代理人】大久保 岳彦
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人平木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬津 太朗
- 審判官 鉄 豊郎
- 審判官 蔵野 いづみ
- 分類
- P1651.537-YAA(A63F) / P1651.113-YAA(A63F) / P1651.121-YAA(A63F) / P1651.1 -YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6570563号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6570563号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について、訂正することを認める。
特許第6570563号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6570563号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成29年3月8日に出願され、令和1年8月16日にその特許権の設定登録がされ、同年9月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年3月4日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において同年5月19日付けで取消理由を通知した。特許権者である株式会社三共は、その指定期間内である同年7月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、これに対して、特許異議申立人は、同年7月16日に上申書を、同年9月10日に意見書(以下単に「意見書」という。)を、同年同月24日に上申書をそれぞれ提出した。
第2 訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6570563号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を特定値で除算した商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」とあるのを、
「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」(下線は、訂正箇所を示す。以下同様。)に訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0006】に、
「上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の遊技機は、
遊技を行う遊技機において、
所定時間を計測するためのタイマ値を更新するとともに、該所定時間を計測するためのタイマ値が規定値となるまでの期間にわたり電子部品のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うことが可能な制御手段を備え、
前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を特定値で除算した商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える
ことを特徴としている。
本発明の手段1の遊技機は、
遊技を行う遊技機(スロットマシン1)において、
所定時間にわたり電子部品(クレジット表示器11、遊技補助表示器12)のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御(点滅制御)を行うことが可能な制御手段(メインCPU41a)を備え、
前記制御手段(メインCPU41a)は、所定時間を計測するためのタイマ値(表示モニタ選択用タイマ値)を更新するとともに、該タイマ値と特定値(536)を用いて演算し、演算の結果(商の値)に応じてオン制御とオフ制御とを切り替える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、所定時間を計測するためのタイマ値と特定値を用いて演算し、演算の結果に応じてオン制御とオフ制御とを切り替えるので、切り替えのためのデータを別個に必要としないため、オン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うためのデータ容量を削減することができる。」と記載されているのを、
「上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の遊技機は、
遊技を行う遊技機において、
所定時間を計測するためのタイマ値を更新するとともに、該所定時間を計測するためのタイマ値が規定値となるまでの期間にわたり電子部品のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うことが可能な制御手段を備え、
前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える
ことを特徴としている。
本発明の手段1の遊技機は、
遊技を行う遊技機(スロットマシン1)において、
所定時間にわたり電子部品(クレジット表示器11、遊技補助表示器12)のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御(点滅制御)を行うことが可能な制御手段(メインCPU41a)を備え、
前記制御手段(メインCPU41a)は、所定時間を計測するためのタイマ値(表示モニタ選択用タイマ値)を更新するとともに、該タイマ値と特定値(536)を用いて演算し、演算の結果(商の値)に応じてオン制御とオフ制御とを切り替える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、所定時間を計測するためのタイマ値と特定値を用いて演算し、演算の結果に応じてオン制御とオフ制御とを切り替えるので、切り替えのためのデータを別個に必要としないため、オン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うためのデータ容量を削減することができる。」に訂正する。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の「特定値」を、「1以上の整数である特定値」と限定するとともに、本件訂正前の「除算した商」を、「除算して整数の商を算出し、算出した整数の商」に訂正するとすることで、「商」に関して、整数である点を限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、「特定値」及び「除算した商」に関する発明特定事項を新たに加えるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1のうち、「タイマ値を1以上の整数である特定値で除算」とする訂正について、本件特許明細書には、以下の記載がある。
(ア)「【0376】
具体的には、図30に示すように、クレジット表示器11に表示させる比率表示の種類を示す略記を、0.3秒間隔で繰り返し点灯消灯させる点滅制御(オン‐オフ制御)を行う際には、一の比率表示を表示する期間(例えば5秒)を計測するための表示モニタ選択用タイマの値(本実施例では、8927~0)を、0.3秒にあたる値(本実施例では、536)で除算して得られる商が偶数である場合、すなわち2進数表記で最下位ビットの値が0である場合は、クレジット表示器11の出力データとしてクリアデータを設定することで、クレジット表示器11を消灯状態に制御する。一方、表示モニタ選択用タイマの値を、0.3秒にあたる値で除算して得られる商が奇数である場合、すなわち2進数表記で最下位ビットの値が1である場合は、クレジット表示器11の出力データとして役物比率の略記を表示するためのデータを設定することで、クレジット表示器11を点灯状態に制御する。」
(イ)「
」
これらの記載によれば、本件特許明細書には、表示モニタ選択用タイマの値(8927~0)を、0.3秒にあたる値である、536という整数で除算することが記載されているといえる。また、図30の記載によれば、本件特許明細書には、タイマ値/536の商が、16、15、14・・2、1、0の整数であることが記載されているといえる。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正事項1により、本件特許明細書の段落【0006】の記載が特許請求の範囲の記載と整合が取れなくなったことを是正するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アのとおり、訂正事項2は、訂正事項1と同様の訂正であるから、訂正事項1と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0006】の記載を、特許請求の範囲の記載と整合を取るためのものであるから、訂正事項1のウで説明したとおり、訂正事項2は、本件特許明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
4 独立特許要件
本件特許異議の申立てにおいては、請求項1が申立ての対象であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定の独立特許要件につき検討することを要しない。
5 まとめ
上記1ないし4において検討したとおりであるから、本件訂正請求に係る上記訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、上記訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正請求に係る訂正を認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、記号AないしCは、分説するため合議体が付した。
【請求項1】
A 遊技を行う遊技機において、
B 所定時間を計測するためのタイマ値を更新するとともに、該所定時間を計測するためのタイマ値が規定値となるまでの期間にわたり電子部品のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うことが可能な制御手段を備え、
C 前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える、
A 遊技機。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和2年5月19日付けで特許権者に通知した取消理由は、概略、次のとおりである。
(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
記
ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を特定値で除算した商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」と記載されているが、「特定値」が如何なる値であるかを特定していないことから、タイマ値を特定値で除算した商は、1未満の小数を含み得ることになる。すると、商の小数点以下が0である場合には、商を奇数と偶数のいずれかと評価することが可能であるが、商の小数点以下に0でない値が含まれる場合には、商が奇数でも偶数でもない値を含むこととなり、そのような場合において、制御手段がオン制御とオフ制御の何れを行うかが特定できない。
イ 「特定値」が0としたときには、除算の解は不定であるので、そもそも制御手段がどのような制御を行うのかが特定できない。
2 当合議体の判断
取消理由は、本件訂正前の本件特許の請求項1に、「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を特定値で除算した商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」と記載されているが、「特定値」が如何なる値であるかを特定していないことから、タイマ値を特定値で除算した商は、1未満の小数を含み得ることになるため、商の小数点以下に0でない値が含まれる場合には、商が奇数でも偶数でもない値を含むこととなり、そのような場合において、制御手段がオン制御とオフ制御の何れを行うかが特定できず、また、「特定値」が0としたときには、除算の解は不定であるので、そもそも制御手段がどのような制御を行うのかが特定できない、というものであった。
これに対して、本件訂正の訂正事項1により、分説Cの「特定値」が「1以上の整数である」ことが特定され、同「特定値で除算した商」が、「特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商」であることが特定された。
これにより、タイマ値を特定値で除算した商は整数であり、オン制御とオフ制御を判断する値が、奇数または偶数のいずれかの値となることが明らかとなり、また、本件訂正発明の「特定値」は「1以上の整数」であるため、タイマ値を特定値で除算した商は不定とならないことが明らかとなった。
そうすると、本件訂正後の請求項1に記載は、特許を受けようとする発明が明確でないということはできない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものとはいえない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、取消理由通知において採用した理由の他に、次の理由により、本件特許は、特許法第29条第1項及び第2項並びに同法第36条第6項の規定により、取り消されるべきものである旨主張している。
・特許法第29条第1項柱書
本件訂正前の請求項1に係る発明は、発明として未完成であり、産業上利用可能性を欠如し、また自然法則を利用していない
・特許法第29条第1項第3号又は第2項
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開2003-210764号公報)(以下「甲1」という。)又は甲第2号証(特開2017-42392号公報)(以下「甲2」という。)に記載された発明であるか、甲1又は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
・特許法第36条第6項第1号
本件訂正前の請求項1に係る発明は、遊技機固有の構成を有するものではないことから、請求項1の記載は、明細書に記載されたスロットマシンに関する実施例から敷衍し得る範囲を超えたものを請求するものであり、明細書に記載された発明ではない。
以上の理由について、以下検討する。
1 特許法第29条第1項柱書
(1)発明未完成
本件の発明が解決しようとする課題は、本件の明細書に以下のとおり記載されている。
「【0003】
【特許文献1】特開2016-220746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の遊技機では、 リールのバックライトのオンとオフを繰り返す制御を行うために、所定会の割込毎に点灯と消灯を繰り返すデータに基づいて制御しており、そのためのデータを必要とするものであった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、 電子部品のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うためのデータ容量を削減することができる遊技機を提供することを目的とする。」
特許権者の提示した「【特許文献1】特開2016-220746号公報」には、特許異議申立人が主張するように、「リールのバックライトのオンとオフを繰り返す制御を行うために、所定回の割込毎に点灯と消灯を繰り返すデータに基づいて制御して」いることは直接的には記載されていないが、当該課題は、従来の遊技機が包含していた課題であることは理解可能である。
してみると、「このような問題点」というものが何かを明細書の記載から読み取ることは可能である。
そうすると、本件特許の明細書の記載から、解決しようとする課題が明確であり、当該課題を解決するための手段が「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」と具体的に特定されているから、本件訂正発明は未完成であるとはいえない。
したがって、本件訂正発明は、発明として完成したものといえる。
(2)産業上利用可能性
本件訂正により、訂正前の請求項1の「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を特定値で除算した商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」を「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」とすることにより、タイマ値を特定値で除算した商を奇数と偶数のいずれかと評価することは可能であり、オン制御とオフ制御のいずれを行うかが特定できるものであり、本件訂正発明は、(i)人間を手術、治療又は診断する方法の発明、(ii)業として利用できない発明、(iii)実際上、明らかに実施できない発明、のいずれにも該当しないものであるから、産業上の利用可能性の要件を満たすものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載から把握できる発明は、産業上利用可能なものといえる。
(3)自然法則の利用
本件訂正発明には、「前記制御手段は、前記所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」との構成があり、この構成は、数式を演算する方法に関わるものである。
しかしながら、本件訂正発明は、「所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」「制御手段」によって、遊技機という装置(ハードウェア資源)において、機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うものであるから、自然法則を利用していることは明らかである。
したがって、本件訂正発明は、全体として、上述の演算を用いた制御を具体的に行うものであり、自然法則を利用していることは明らかであるから、本件訂正発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に当たるものと理解することができる。
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、特許法第29条第1項柱書の要件を満たすものである。
2 特許法第29条第1項第3号又は第2項について
(1)甲1に基づく新規性及び進歩性について
ア 甲1の記載及び甲1発明
本件特許の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1(特開2003-210764号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は合議体が付した。以下同様。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、識別情報の可変表示を実行することが可能なパチンコ機またはスロット機等の遊技機に関する。」
(イ)「【0018】パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠(図示せず)と、外枠の内側に開閉可能に取り付けられた遊技枠とで構成される。また、パチンコ遊技機1は、遊技枠に開閉可能に設けられている額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。遊技枠は、外枠に対して開閉自在に設置される前面枠(図示せず)と、機構部品等が取り付けられる機構板と、それらに取り付けられる種々の部品(後述する遊技盤を除く。)とを含む構造体である。」
(ウ)「【0148】図23は、ランプ制御用CPU351が実行するメイン処理を示すフローチャートである。ランプ制御用CPU351は、メイン処理において、まず、レジスタ、ワークエリアを含むRAMおよび出力ポート等を初期化する初期化処理を実行する(ステップS441)。次いで、受信したランプ制御コマンドを解析する(コマンド解析実行処理:ステップS442)。また、受信したランプ制御コマンドの内容に応じて乱数を更新する処理を行う(ステップS443)。
・・・略・・・
【0150】その後、この実施の形態では、ランプ制御用CPU351は、タイマ割込フラグの監視(ステップS445)を行うループ処理に移行する。そして、図24に示すように、タイマ割込が発生すると、ランプ制御用CPU351は、タイマ割込フラグをセットする(ステップS450)。メイン処理において、タイマ割込フラグがセットされていたら、ランプ制御用CPU351は、そのフラグをクリアするとともに(ステップS446)、ランププロセス更新処理およびポート出力処理を行う(ステップS447,S448)。そして、ランプ制御用CPU351は、遊技演出装置25A,25B,29,30,33A,33Bによる演出を行う場合に、ソレノイド回路352に駆動指令を行う(ステップS449:ソレノイド出力処理)。遊技演出装置25A,25B,29,30,33A,33Bを動作させるために、ソレノイド回路352は、駆動指令に応じてソレノイド16,21,21A,25Aa,25Ba,29a,29b,30a,33Aa,33Baや、転倒用ソレノイドを駆動する。その後、ステップS442に戻る。
・・・略・・・
【0153】ランププロセス更新処理では、プロセスタイマ値に応じた値が初期設定されたタイマの値の減算処理が行われ、そのタイマがタイムアウトすると、ランプデータにおける次のアドレスに設定されているデータに応じてランプ・LEDを消灯または点灯させることに決定されるとともに、その決定結果に応じたプロセスタイマ値がタイマに設定される。また、プロセスタイマ値がタイマに設定されたときには点灯/消灯の切替がなされたときであるから、ポート出力処理において、ランプ・LEDを点灯または消灯するためのデータが該当する出力ポートに出力される。また、プロセスタイマ値がタイマに設定されたときにはオン/オフの切替がなされたときでもあるから、ソレノイド出力処理において、遊技演出装置を制御するための制御信号がソレノイド回路352に出力される。
【0154】また、この実施の形態では、タイマ割込は2ms毎にかかるとする。すなわち、ランププロセス更新処理、ポート出力処理、およびソレノイド出力処理は、2ms毎に起動される。」
(エ)「【0179】演出態様を決定すると、ランプ制御用CPU351は、決定した演出態様に応じた変動パターンが設定されている変動パターンテーブルを特定し、その変動パターンテーブルを使用する変動パターンテーブルとして設定する(ステップS829)。なお、変動パターンテーブルについては後述する。また、ランプ制御用CPU351は、決定した演出態様に応じた動作パターンが設定されている動作パターンテーブルを特定し、その動作パターンテーブルを使用する動作パターンテーブルとして設定する(ステップS830)。使用する動作パターンテーブルを設定すると、ランプ制御用CPU351は、演出中フラグをセットする(ステップS831)。演出中フラグは、後述するランププロセス更新処理にて参照される。なお、決定した演出態様に応じて設定されている動作パターンテーブルがない場合(遊技演出装置の動作を行わない演出がさなれる場合)には、ステップS830の処理は行われない。動作パターンテーブルについては後述する。そして、ランプ制御用CPU351は、使用する変動パターンテーブルに設定されている変動パターンに応じた点灯/消灯制御を開始するとともに、使用する動作パターンデータに設定されている動作パターンに応じたオン/オフ制御を開始する(ステップS832)。具体的には、ステップS832にて、変動パターンテーブルにおける最初のプロセスタイマ値に対応して定められているランプ実行テーブル(図40参照)が示す点灯/消灯状態に設定するとともに、動作パターンテーブルにおける最初のプロセスタイマ値に対応して定められている動作実行テーブル(図39参照)が示すオン/オフ状態に設定する。この設定に応じて、ポート出力処理にて該当するランプ・LEDに対する点灯/消灯制御が実行され、ソレノイド出力処理にて該当する遊技演出装置に対するオン/オフ制御が実行される。」
(オ)「【0182】図38に示すように、動作パターンテーブルは、上述したステップS801の演出態様決定処理にてランプ制御用CPU351が決定した各演出態様に対応して設けられており、本例では動作パターン1~動作パターンXXの動作パターンテーブルがROMなどの記録媒体に格納されている。動作パターンテーブルには、ソレノイド16,21,21A,25Aa,25Ba,29a,29b,30a,33Aa,33Baをオンまたはオフすることを示すデータ、およびオンまたはオフの期間を示すデータが設定されている。具体的には、例えば図39に示すように、期間を示すデータ(動作期間データ)に対応して、その期間の制御状態(オンまたはオフ)を示すデータ(動作内容データ)が設定されている。そして、動作を実行する際には、動作パターンテーブルに設定されている動作期間データが順次参照され、その期間に対応して定められている動作内容データに従った制御が実行される。なお、本例では、動作パターンテーブル(動作配列データが設定されるテーブル)は、動作期間データと動作内容データとの組合せからなる動作パターンデータを複数備え、各動作パターンデータが動作順序(実行順序)に従って配列されることによって構成される。図39に示す例では、動作パターン2において、遊技演出装置25Aを、待ち時間である500msの期間オフ状態としたあと、100msの期間オンし、500msの期間オフ状態としたあと再度100msオン状態とするなどしてリーチ予告1の演出が行われる。
【0183】図40は、変動パターンテーブルの内容の例を示す説明図である。変動パターンテーブルは、例えば、ランプ制御基板35に搭載されているROMや外付けのROMなどの記録媒体に格納されている。ここで、ランプ制御基板35に搭載されたROMのアドレスマップについて説明する。ROM領域には制御用データ領域と制御プログラム領域とがある。制御用データ領域には、レジスタ、RAMおよび出力ポート等の初期化に際して用いられる初期化データテーブル、始動記憶表示器18などの点灯/消灯制御に際して用いられる記憶表示LED表示テーブル、ランプデータが設定されている変動パターンテーブル、動作データが設定されている動作パターンテーブルなどが格納されている。また、制御プログラム領域には、メイン処理プログラムや、初期化処理、コマンド認識処理、コマンド実行処理の各プログラムが格納され、また、特定ランプ・LED処理、ランププロセス更新処理、ポート出力処理、ソレノイド出力処理、コマンド受信割込処理、タイマ割込処理のプログラムが格納されている。
【0184】各変動パターンテーブルは、上述した演出態様決定処理にてランプ制御用CPU351が決定した各演出態様に対応して設けられている。また、各変動パターンテーブルには、ランプ・LED(例えば天枠ランプ28a)の点灯のパターンを示すデータが格納されている。各変動パターンテーブルには、図40に示すようなランプ・LEDの点灯のパターンが、ランプ制御用CPU351が決定した演出態様に対応して定められている。変動パターンテーブルには、動作パターンテーブルと同様に、ランプ・LEDをオンまたはオフすることを示すデータ、およびオンまたはオフの期間を示すデータが設定されている。具体的には、例えば図40に示すように、期間を示すデータ(演出期間データ)に対応して、その期間の制御状態(オンまたはオフ)を示すデータ(演出内容データ)が設定されている。そして、演出を実行する際には、変動パターンテーブルに設定されている演出期間データが順次参照され、その期間に対応して定められている演出内容データに従った制御が実行される。なお、本例では、変動パターンテーブル(演出パターンテーブル:演出配列データが設定されるテーブル)は、演出期間データと演出内容データとの組合せからなる演出パターンデータを複数備え、各演出パターンデータが演出順序(実行順序)に従って配列されることによって構成される。
【0185】この実施の形態では、図39に示すように、遊技演出装置に対する制御信号をオンすることを示すデータとして動作実行テーブルに「1」が設定され、オフすることを示すデータとして動作実行テーブルに「0」が設定される。また、図40に示すように、ランプ・LEDを点灯(オン)することを示すデータとしてランプ実行テーブルに「1」が設定され、消灯(オフ)することを示すデータとしてランプ実行テーブルに「0」が設定される。すなわち、遊技演出装置のオン/オフ状態、およびランプ・LEDの点灯/消灯状態を示すデータとして、それぞれ1ビットのデータが用いられる。なお、本例では2ms毎にタイマ割込が発生するようにしているので、プロセスタイマ設定値には、例えば500msの場合には、250(500ms/2ms)を示すデータが設定される。
【0186】図41は、ステップS447のランププロセス更新処理の例を示すフローチャートである。ランププロセス更新処理において、ランプ制御用CPU351は、演出中であるか否かを確認する(ステップS447a)。この確認は、演出中フラグがセットされているか否かによって行われる。演出中であれば、現在使用中のプロセスタイマの値を減算する(ステップS447b)。次いで、ランプ制御用CPU351は、プロセスタイマがタイムアウトしていれば(ステップS447c)、演出を終了するか否か判定する(ステップS447d)。この判定では、タイムアウトしたタイマの初期値を示すプロセスタイマ値が設定されているアドレスの例えば次のアドレスに、終了コードが設定されていれば演出を終了すると判定され、終了コードが設定されていなければ演出を終了しないと判定される。
【0187】演出を終了しないと判定した場合には、ランプ制御用CPU351は、タイムアウトしたタイマの初期値を示すプロセスタイマ値が設定されているアドレスの次のアドレスに設定されているプロセスタイマ値をセットする(ステップS447e)。そして、セットしたプロセスタイマ値に対応して設定されているテーブル(ランプ実行テーブル、動作実行テーブル)の内容に応じてランプ・LEDの点灯/消灯や遊技演出装置のオン/オフの設定を切り替える(ステップS447f)。なお、ランプ・LEDの点灯/消灯や遊技演出装置のオン/オフの状態の変更がない場合には、設定の切り替えは行わない。」
(カ)「【図40】
」
(キ)認定事項
甲1の【0185】には、「図40に示すように、ランプ・LEDを点灯(オン)することを示すデータとしてランプ実行テーブルに「1」が設定され、消灯(オフ)することを示すデータとしてランプ実行テーブルに「0」が設定される。」と記載され、
同【0186】には、「ランププロセス更新処理において、ランプ制御用CPU351は、演出中であるか否かを確認する(ステップS447a)。この確認は、演出中フラグがセットされているか否かによって行われる。演出中であれば、現在使用中のプロセスタイマの値を減算する(ステップS447b)。次いで、ランプ制御用CPU351は、プロセスタイマがタイムアウトしていれば(ステップS447c)、演出を終了するか否か判定する(ステップS447d)。この判定では、タイムアウトしたタイマの初期値を示すプロセスタイマ値が設定されているアドレスの例えば次のアドレスに、終了コードが設定されていれば演出を終了すると判定され、終了コードが設定されていなければ演出を終了しないと判定される。」と記載され、
同【0187】には、「演出を終了しないと判定した場合には、ランプ制御用CPU351は、タイムアウトしたタイマの初期値を示すプロセスタイマ値が設定されているアドレスの次のアドレスに設定されているプロセスタイマ値をセットする(ステップS447e)。そして、セットしたプロセスタイマ値に対応して設定されているテーブル(ランプ実行テーブル、動作実行テーブル)の内容に応じてランプ・LEDの点灯/消灯や遊技演出装置のオン/オフの設定を切り替える(ステップS447f)。」と記載されている。
これらの記載を踏まえると、甲1の図40(上記(カ))には、ランプ・LEDの点灯(オン)と、消灯(オフ)が繰り返されるアドレスが設定されることが記載されていると認められる。
同図40には、パターンが定められた変動パターンテーブルにおけるアドレスが、変動パターン2であるときに、「プロセスタイマ設定値500ms;ランプ・LED消灯」、「プロセスタイマ設定値120ms;ランプ・LED点灯」、「プロセスタイマ設定値200ms;ランプ・LED消灯」、「プロセスタイマ設定値120ms;ランプ・LED点灯」の順に設定されること、すなわち、ランプ実行テーブルの内容に応じてランプ・LEDの点灯、消灯の切り替えを交互に繰り返すことが見て取れる。
(ク)上記(ア)ないし(キ)の記載事項及び認定事項から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる(aないしcは、本件訂正発明のAないしCに概ね対応させて合議体が付与した。)。
「a パチンコ遊技機1において(【0018】)、
b ランプ制御用CPU351が実行するメイン処理(【0148】)のランププロセス更新処理(【0150】)では、プロセスタイマ値に応じた値が初期設定されたタイマの値の減算処理が行われ(【0153】)、そのタイマがタイムアウトし(【0186】)、かつ、演出を終了しないと判定した場合には、タイムアウトしたタイマの初期値を示すプロセスタイマ値が設定されているアドレスの次のアドレスに設定されているプロセスタイマ値をセットすることで、セットしたプロセスタイマ値に対応して設定されているランプ実行テーブルの内容に応じてランプ・LEDの点灯、消灯の切り替えを交互に繰り返す(【0187】、認定事項)、
a パチンコ機1(【0018】)。」
イ 対比
本件訂正発明と甲1発明とを、本件訂正発明の分説に従い対比する。
(a)甲1発明の「パチンコ機1」は、本件訂正発明の「遊技を行う遊技機」に相当する。
してみると、甲1発明の構成aは、本件訂正発明の構成Aに相当する。
(b)甲1発明の「タイマの値」は、「プロセスタイマ値に応じた値が初期設定された」値から「タイムアウト」するまで「減算処理」されることから、「初期設定」の値から「タイムアウト」までの所定時間を計測するためのタイマ値であるといえる。
また、甲1発明において、「タイムアウト」することは、「タイマの値」が、「初期設定された」値から、「減算処理」によって0という規定値になることであると認められるから、本件訂正発明の「タイマ値が規定値となる」ことに相当するといえる。
さらに、甲1発明の「タイマの値」の「減算処理」、「ランプ・LED」及び「ランプ制御用CPU351」は、それぞれ本件訂正発明の「タイマ値を更新する」こと、「電子部品」及び「制御手段」に相当する。
してみると、甲1発明の構成bは、本件訂正発明の構成Bに相当する。
(c)上記(b)で説示のとおり、甲1発明におけるランプ制御用CPU351(本件訂正発明の「制御手段」に相当。)は、「タイマの値」(同「タイマ値」に相当。)が「タイムアウト」する(同「タイマ値が規定値となる」ことに相当。)ことに基づいて、ランプ・LED(同「電子部品」に相当。)の点灯、消灯の切り替えを行っていることから、甲1発明は、本件訂正発明の構成Cと、「前記制御手段は、」「タイマ値」に応じて「オン制御とオフ制御とを切り替える」点で共通するといえる。
してみると、本件訂正発明と甲1発明とは、
「A 遊技を行う遊技機において、
B 所定時間を計測するためのタイマ値を更新するとともに、該所定時間を計測するためのタイマ値が規定値となるまでの期間にわたり電子部品のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うことが可能な制御手段を備え、
C’前記制御手段は、タイマ値に応じてオン制御とオフ制御とを切り替える
A 遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。
・相違点1(構成C)
オン制御とオフ制御とを切り替えるタイマ値の条件が、
本件訂正発明では、「タイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じて」であるのに対して、
甲1発明では、タイマがタイムアウトしたことに応じて、であるものの、本件訂正発明のように、タイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じて、ではない点。
以上のとおり、本件訂正発明と甲1発明とは、上記相違点において相違するから、本件訂正発明は、甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、本件特許は、同法同条第1項の規定に違反してなされたものではない。
ウ 相違点1についての判断
本件訂正発明は、「制御手段」が、「オン制御とオフ制御とを切り替える」ために、「タイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出」するという演算処理をし、「算出した整数の商」が「奇数」であるか「偶数」であるかという判断処理をしているものと解される。このような演算処理等の結果に応じてオン制御とオフ制御とを切り替えるので、切り替えのためのデータを別個に必要としないため、オン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うためのデータ容量を削減することができるという効果(本件特許の明細書【0006】、【0421】)を奏するものである。
しかしながら、甲1には、前記演算処理及び前記判断処理自体に関する記載も示唆もないだけでなく、前記演算処理及び前記判断処理を想起させるようなフローチャートやプログラム等についても記載されていないから、当業者であっても、甲1発明において、前記演算処理及び前記判断処理に想到することは困難である。
また、甲1発明において、前記演算処理及び前記判断処理を実行することが当業者にとって任意に設定可能な単なる設計上の手段に過ぎないとまではいえない。さらに、「所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」という処理が周知であったとも認められない。
してみると、甲1発明において、上記相違点1に係る本件訂正発明の特定事項のようになすことは当業者が甲1の記載に基づいて容易になし得たものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
(2)甲2に基づく新規性及び進歩性について
ア 甲2の記載及び甲2発明
本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2(特開2017-42392号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0880】
また、上述した第3の実施形態(変形例1から変形例5を含む)の遊技機10は、一側面において、さらに以下のような特徴を有する。 (1)遊技機10は、前面側に配置された複数の発光部(第1の弧状発光群:発光部L00~L0B、第2の弧状発光群:L10~L17、第3の弧状発光群:プッシュボタンLED251~258)を備える。遊技機10は、制御部(遊技制御装置100、演出制御装置300)を備える。制御部は、複数の発光色を順次切り替える発光態様(虹色表示演出)で複数の発光部を発光させて第1の状態(大当り、大当り予告等)を報知する(第1の状態報知)。制御部は、複数の発光部について、第1の遊技(右打ち)を実行する第1の遊技状態(大当り、普電サポート)の発生に関連して所定順序の時間差を設けて発光色を切り替える第1の表示態様(たとえば、時計回り虹色表示演出)、または第2の遊技(左打ち)を実行する第2の遊技状態(通常遊技状態)の発生に関連して所定順序の逆順の時間差を設けて発光色を切り替える第2の表示態様(たとえば、反時計回り虹色表示演出)で第2の状態(遊技球の発射)を報知する第2の状態報知と、(操作案内報知)をおこなう。」
(イ)「【0886】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態の遊技機10について図136から図141を用いて説明する。第4の実施形態の遊技機10は、遊技盤30に配した注意喚起表示により、遊技者への注意喚起をおこなう。また、第4の実施形態の遊技機10は、遊技演出を発光部によりおこなう。まず、遊技機10の前面側における注意喚起表示と発光部の配置について図136を用いて説明する。図136は、第4の実施形態の遊技機における注意喚起表示と発光部の配置の一例を示す図である。
【0887】
遊技機10は、第3の実施形態で説明したのと同様に、前面枠12に発光部L00~L0B(第1の弧状発光群)と、発光部L10~L17(第2の弧状発光群)を備える。また、遊技機10は、注意喚起表示610を備える。注意喚起表示610は、遊技機10の前面に位置し、より具体的には遊技盤30の遊技領域内にあって、遊技領域内の最上部に位置する。注意喚起表示610は、遊技者に向けて注意を喚起する表示であり、文字やピクトグラム等の視覚情報を含む。
・・・
【0901】
次に、図138に示した注意喚起始点移動表示における発光部L00~L0Bおよび発光部L10~L17の点灯と消灯の切替タイミングについて図139を用いて説明する。図139は、第4の実施形態の第1の弧状発光群と第2の弧状発光群における移動表示演出の表示態様切替タイミングの一例を示す図である。
【0902】
遊技機10は、発光部L00~L0B(第1の弧状発光群)と発光部L10~L17(第2の弧状発光群)について所定時間ごとに点灯(ON)と消灯(OFF)を切り替えることで注意喚起始点移動表示をおこなう。
【0903】
まず、遊技機10は、発光部L00~L0B(第1の弧状発光群)と発光部L10~L17(第2の弧状発光群)の全灯をタイミングt0で消灯する。これにより、遊技機10は、遊技者の注意をリセットする。次に、遊技機10は、タイミングt1で発光部L05,L06,L12,L13を点灯し、その余の消灯を継続する。これにより、遊技機10は、発光部L05,L06,L12,L13に遊技者の注意を向けることができる。また、遊技機10は、発光部L05,L06,L12,L13の近傍に位置する注意喚起表示610に遊技者の注意を向けることができる。
【0904】
次に、遊技機10は、タイミングt2で発光部L05,L06,L12,L13を点灯から消灯に切り替え、発光部L04,L07,L11,L14を消灯から点灯に切り替える。これにより、遊技機10は、注意喚起表示610を始点とする注意喚起始点移動表示をおこなう。また、遊技機10は、タイミングt2で発光部L05,L06,L12,L13を消灯することで注意喚起表示610に対する遊技者の注目後の視認性を高めることができる。
【0905】
以降、遊技機10は、タイミングt3で発光部L04,L07,L11,L14を点灯から消灯に切り替え、発光部L03,L08,L10,L15を消灯から点灯に切り替える。遊技機10は、タイミングt4で発光部L03,L08,L10,L15を点灯から消灯に切り替え、発光部L02,L09,L16を消灯から点灯に切り替える。遊技機10は、タイミングt5で発光部L02,L09,L16を点灯から消灯に切り替え、発光部L01,L0A,L17を消灯から点灯に切り替える。遊技機10は、タイミングt6で発光部L01,L0A,L17を点灯から消灯に切り替え、発光部L00,L0Bを消灯から点灯に切り替える。なお、遊技機10は、タイミングt0に戻り全灯を消灯してタイミングt0~t6の表示態様切替をループしてもよいし、タイミングt0~t6を一巡した後その他の変動パターンに移行してもよい。また、注意喚起始点移動表示を含む移動表示演出は、複数の発光部が形成する列の一端から他端に向かって点灯態様が移動する表示演出であればよく、単色の点灯と消灯の切替に限らず、表示色の切替、点滅周期の切替、点灯強度の切替、第3の実施形態で説明したような虹色表示のタイミング切替を含め、その他の表示態様を適用可能である。
【0906】
このような遊技機10は、注意喚起表示610を常に掲出していることから、注意喚起始点移動表示によって注意喚起表示610に対する注目度を十分に向上させることができる。また、遊技機10は、表示装置等により新たに注意喚起をおこなうものでないことから、遊技の興趣低下を限定的にできる。したがって、遊技機10は、発光部L00~L0B(第1の弧状発光群)と発光部L10~L17(第2の弧状発光群)において、注意喚起表示610に対する注目度向上と演出表示とを両立する。」
(ウ)上記(ア)及び(イ)の記載事項から、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が開示されていると認められる。
「a 前面側に配置された複数の発光部である、L00~L0Bと、発光部L10~L17と、複数の発光部を発光させる制御部である遊技制御装置100、演出制御装置300を備えた遊技機10(【0880】、【0887】)において、
b、c 遊技者への注意喚起をおこなう注意喚起表示を(【0886】)、以下の(i)~(viii)のタイミング;
(i)タイミングt0で、発光部L00~L0Bと発光部L10~L17の全灯を消灯し(【0903】)、
(ii)次に、タイミングt1で発光部L05,L06,L12,L13を点灯し、その余の消灯を継続し(【0903】)、
(iii)次に、タイミングt2で発光部L05,L06,L12,L13を点灯から消灯に切り替え、発光部L04,L07,L11,L14を消灯から点灯に切り替え(【0904】)、
(iv)タイミングt3で発光部L04,L07,L11,L14を点灯から消灯に切り替え、発光部L03,L08,L10,L15を消灯から点灯に切り替え(【0905】)、
(v)タイミングt4で発光部L03,L08,L10,L15を点灯から消灯に切り替え、発光部L02,L09,L16を消灯から点灯に切り替え(【0905】)、
(vi)タイミングt5で発光部L02,L09,L16を点灯から消灯に切り替え、発光部L01,L0A,L17を消灯から点灯に切り替え(【0905】)、
(vii)タイミングt6で発光部L01,L0A,L17を点灯から消灯に切り替え、発光部L00,L0Bを消灯から点灯に切り替え(【0905】)、
(viii)タイミングt0に戻り全灯を消灯してタイミングt0~t6の表示態様切替をループする(【0905】)、
で行う、
a 遊技機10。」
イ 対比
本件訂正発明と甲2発明とを、本件訂正発明の分説に従い対比する。
(a)甲2発明の「遊技機10」は、本件訂正発明の「遊技を行う遊技機」に相当する。
してみると、甲2発明は、本件訂正発明の構成Aに相当する構成を有する。
(b、c)甲2発明の「発光部L00~L0B、L10~L17」、「制御部」が「発光部」を「点灯」すること、「制御部」が「発光部」を「消灯」すること、及び、「制御部」が、それぞれ、本件訂正発明の「電子部品」、「オン制御」、「オフ制御」、及び、「制御手段」に相当する。
また、発光部L00及びL0Bに着目すると、発光部L00及びL0Bは、タイミングt6において発光し、その他のタイミングt0~t5において消灯することをループして行っていることから、甲2発明は、制御部が、発光部L00及びL0Bを、タイミングt6~t0の間点灯し、タイミングt0~t6の間消灯する制御を繰り返しているといえる。
そして、遊技機又は一般の電子回路の技術常識に照らせば、タイミングt0~t6を測定するために、タイマを用いることは自明であり、所定時間を計測するためにタイマ値を更新するとともに、該タイマ値が規定値となるまで、該タイマ値に応じてオン制御とオフ制御を切り替えることも自明である。
すると、甲2発明b、cは、本件訂正発明の構成Bを備える。
また、本件訂正発明の構成Cと、甲2発明のb、cとは、「前記制御手段は、タイマ値に応じてオン制御とオフ制御とを切り替える」点で共通するといえる。
してみると、本件訂正発明と甲2発明とは、
「A 遊技を行う遊技機において、
B 所定時間を計測するためのタイマ値を更新するとともに、該所定時間を計測するためのタイマ値が規定値となるまでの期間にわたり電子部品のオン制御とオフ制御とを繰り返す制御を行うことが可能な制御手段を備え、
C’前記制御手段は、タイマ値に応じてオン制御とオフ制御とを切り替える
A 遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。
・相違点2(構成C)
制御手段によるオン制御とオフ制御の切り替えを、
本件訂正発明では、「前記所定時間を計測するためのタイマ値を1以上の整数である特定値で除算して整数の商を算出し、算出した整数の商が奇数であるか偶数であるかに応じて」行っているのに対して、
甲2発明では、発光部L00及びL0Bに着目すると、発光部L00及びL0Bは、タイミングt6において発光し、その他のタイミングt0~t5において消灯することをループして行っているものの、本件訂正発明のような演算をしていない点。
以上のとおり、本件訂正発明と甲2発明とは、上記相違点2及び3において相違するから、本件特許発明は、甲2発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、本件特許は、同法同条第1項の規定に違反してなされたものではない。
ウ 相違点2についての判断
上記「(1)甲1に基づく新規性及び進歩性について」の「ウ 相違点1についての判断」での検討と同様に、甲2にも、前記演算処理及び前記判断処理自体に関する記載も示唆もないだけでなく、前記演算処理及び前記判断処理を想起させるようなフローチャートやプログラム等についても記載されていないから、当業者であっても、甲2発明において、前記演算処理及び前記判断処理に想到することは困難である。そして、上記相違点1と同様に相違点2に係る本件訂正発明の特定事項が周知であるともいえない。
してみると、甲2発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明の特定事項のようになすことは当業者が甲2の記載に基づいて容易になし得たものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
3 特許法第36条第6項第1号
特許異議申立人は、本件特許の明細書には、実施例として「スロットマシン」の例しか記載されておらず、如何なる遊技機であってもその対象とする特許発明の構成を、十分に裏付けるだけの記載がされていないと主張する。
しかしながら、本件特許の明細書の【0001】には、「本発明は、パチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機に関する。」と記載されており、このことから、本件訂正発明の「遊技機」は、特定の遊技機を対象とするものではないことが明らかである。
そうすると、本件訂正発明は、「遊技機」に係る発明として記載されており、オン制御とオフ制御とを切り替える制御を行う電子機器としての構成を部分的に把握することができるが、当該構成は、遊技機一般の固有の構成と密接に関連している構成であると解することができる。
してみると、本件訂正発明は、特定の遊技を行う遊技機に限定されるものではないことは勿論、本件特許の明細書の【0001】等で裏付けられるとおり、遊技機一般の構成を前提としているものである。
よって、本件請求項1に記載した事項で特定される発明が、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。
第6 特許異議申立人の意見
特許異議申立人の主張を踏まえて上述のとおり検討をしたが、以下、補足する。
特許異議申立人は、意見書(8頁15行ないし22行)において、進歩性欠如の取消理由の主張の一部として、本件訂正発明において、「特定値」が「1」の値の場合、タイマ値を除算しても、商はタイマ値それ自体となるから、商が奇数であるか偶数であるかは、タイマ値それ自体が奇数であるか偶数であるかを判別することに等しいから、そこで敢えて除算し商を算出する必要がないと主張する。
確かに、「特定値」が「1」の値の場合、タイマ値を除算しても、商はタイマ値それ自体となり、タイマ値それ自体が奇数であるか偶数であるかを判別することになるが、そのことをもって、除算し商を算出する必要がない理由とはならない。「特定値」は、「1」に限らず、1以上の任意の整数を用いることが可能であり、該整数のいずれも用いても、商が奇数であるか偶数であるかを判別することにより、オン制御とオフ制御を切り替えるという技術的意義を有するものである。
したがって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件訂正請求により訂正された請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正請求により訂正された請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700148