特許異議申立
2023-700699
遊技機
- 審判番号
- 2023-700699
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-090128
- 登録番号
- 7201531
- 請求日
- 2023年07月07日
- 審決日
- 2023年10月04日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 俊久
- 審判官 北川 創
- 審判官 渋谷 知子
- 分類
- P1651.1 -Y (A63F) / P1651.113-Y (A63F) / P1651.121-Y (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第2条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7201531号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7201531号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7201531号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和元年5月10日に出願した特願2019-90128号であって、令和4年12月26日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月10日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対し、令和5年7月7日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
第2 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(符号A等は、分説するために合議体が付した。分説された本件特許発明の発明特定事項を、符号に基づき「構成A」等という。)。
「【請求項1】
A 遊技を行う遊技機であって、
B 遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段と、
C 前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段と、を備え、
D 前記設定示唆手段によって設定示唆が行われる期間には、設定示唆に関する特定表示が表示される第1期間と、当該第1期間の後の期間であって当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される第2期間とが含まれ、
E 前記第1期間において、一の特定表示が表示された後に当該一の特定表示が他の特定表示に切り替わることがあり、
F 前記第1期間で表示された一の特定表示の表示期間よりも、前記第2期間で履歴として表示された当該一の特定表示の表示期間の方が長い、
G 遊技機。」
2 特許異議申立ての理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、証拠方法として甲第1号証を提出し、本件特許に対し次の理由を申し立てている。
(理由1:発明該当性要件)
本件特許発明は、自然法則を利用するものではなく、また、技術的思想にも該当しないので、特許法第2条第1項においていう「発明」に該当するものではなく、本件特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものである。
(理由2:新規性要件)
本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内において、甲第1号証により電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、同条同項の規定に違反してされたものである。
(理由3:進歩性要件)
本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内において、甲第1号証により電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、本件特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきである。
<証拠方法>
甲第1号証: 特開2019-37528号公報
第3 当審の判断
1 理由1(発明該当性要件)について
(1) 発明該当性
申立人は、特許法第29条第1項柱書において「産業上利用することができる発明をした者は特許を受けることができる」旨を規定しており、そこでいう発明とは、特許法第2条第1項において「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されているところ、本件特許発明は、自然法則を利用するものではなく、また、技術的思想にも該当しないことを理由に、特許法第29条第1項柱書にいう「発明」に該当しない旨申し立てているから、以下、この点について検討する。
請求項に記載された特許を受けようとする発明が、特許法第2条第1項に規定する「発明」といえるか否かは、それが、特許請求の範囲の記載や願書に添付した明細書の記載及び図面に開示された、「特許を受けようとする発明」が前提とする技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かによって判断すべきものである(知財高裁令和2年6月18日判決、令和元年(行ケ)第10110号参照)。
そして、本件特許発明が、遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段と、前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段と、を備える遊技機に関するものであることからみて、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決しようとしたものであり、それが全体として一定の技術的意義を有するのであれば、同発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であると解することができる(知財高裁平成21年6月16日判決、平成20年(行ケ)第10279号参照)。
そこで、以下において、本件特許発明の技術的課題及び技術的意義の観点から、本件特許発明の発明該当性について検討する。
(2) 本件特許発明の技術的課題について
本件特許発明が解決しようとする技術的課題は、本件特許の明細書に以下のとおり記載されている(下線は合議体が付した。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技を行う遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な遊技機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この遊技機では、特別状態中の遊技において、遊技者にとっての有利度に係る設定示唆を行うように構成されている。」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した遊技機のように特別状態中の遊技において設定示唆を行うことで、遊技の興趣を向上させることができるが、設定示唆を行うことに関しては未だ改良の余地があった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、遊技者に対して好適に設定示唆を行うことができる遊技機を提供することである。」
以上によれば、本件特許発明は、遊技機において「遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能」(【0002】)であるという背景技術を前提として、「特別状態中の遊技において設定示唆を行うことで、遊技の興趣を向上させることができるが、設定示唆を行うことに関しては未だ改良の余地があった」(【0004】)ことから「遊技者に対して好適に設定示唆を行う」(【0005】)という技術的課題を解決しようとするものであるといえる。
(3) 本件特許発明の技術的意義について
本件特許発明の技術的意義について、本件特許の明細書において、以下の事項が記載されている。
「このように、ED第2期間において設定示唆カードを振り返る期間を、ED第1期間のときよりも長く設けることで、ED第2期間において最終設定示唆が行われるまでの演出に対してより遊技者の注目を集めることができ、遊技者に対して好適に設定示唆を行うことができる。」(【0548】)
「このように、ED第2期間においては、ED第1期間において表示された設定示唆アイコンが示された設定示唆カードの履歴が表示される。そして、履歴として表示された設定示唆カードの中から1または複数の設定示唆カードが選択されて、選択された1または複数の設定示唆カードが強調して表示される。これにより、ED第1期間において表示された設定示唆カードのうち、最終的に選択された設定示唆カードを遊技者に分かり易く伝えることができ、その選択された設定示唆カードを利用して最終設定示唆を行うことで、遊技者に設定値を示唆することができる。」(【0551】)
「・・・ED第2期間においては、ED第1期間で表示された設定示唆カードの履歴が表示されるため、ED第1期間で表示された設定示唆カードを振り返りながら遊技者に選択肢として挙げられた設定示唆カードを認識させることができる。・・・」(【0597】)
「・・・ED第2期間において一の設定示唆カードが提示される期間Tbは、ED第1期間において当該一の設定示唆カードが提示される期間Taよりも長くなるように、ED第1期間およびED第2期間における演出や時間が構成されている。これにより、ED第2期間において最終設定示唆が行われるまでの演出に対してより遊技者の注目を集めることができ、遊技者に対して好適に設定示唆を行うことができる。」(【0640】)
「・・・ED第2期間においてED第1期間で表示された設定示唆カードの履歴が表示されるため、設定示唆カードを振り返りながら遊技者に認識させることができる。」(【0644】)
以上によれば、本件特許発明は、構成Dの「前記設定示唆手段によって設定示唆が行われる期間には、設定示唆に関する特定表示が表示される第1期間と、当該第1期間の後の期間であって当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される第2期間とが含まれ」るという構成を採用することにより、「第2期間(ED第2期間)においては、第1期間(ED第1期間)で表示された特定表示(設定示唆カード)の履歴が表示されるため、第1期間(ED第1期間)で表示された特定表示(設定示唆カード)を振り返りながら遊技者に選択肢として挙げられた特定表示(設定示唆カード)を認識させることができる」との効果が得られ(【0551】、【0597】、【0644】)、構成Fの「前記第1期間で表示された一の特定表示の表示期間よりも、前記第2期間で履歴として表示された当該一の特定表示の表示期間の方が長い」という構成を採用することにより、「第2期間(ED第2期間)において特定表示(設定示唆カード)を振り返る期間を、第1期間(ED第1期間)のときよりも長く設けることで、第2期間(ED第2期間)において最終設定示唆が行われるまでの演出に対してより遊技者の注目を集めることができ、遊技者に対して好適に設定示唆を行うことができる」との効果が得られる(【0548】、【0640】)という技術的意義を有するといえる。
よって、本件特許発明は、パチンコ機やスロットマシン等の遊技機(【0151】)という機器において、上記(2)で検討したように、「遊技者に対して好適に設定示唆を行う」という技術的課題を解決しようとするものであり、この技術的課題を解決するために、特に構成D、Fに係る技術的手段を採用することで、全体として、「第2期間(ED第2期間)においては、第1期間(ED第1期間)で表示された特定表示(設定示唆カード)の履歴が表示されるため、第1期間(ED第1期間)で表示された特定表示(設定示唆カード)を振り返りながら遊技者に選択肢として挙げられた特定表示(設定示唆カード)を認識させることができ」、「第2期間(ED第2期間)において特定表示(設定示唆カード)を振り返る期間を、第1期間(ED第1期間)のときよりも長く設けることで、第2期間(ED第2期間)において最終設定示唆が行われるまでの演出に対してより遊技者の注目を集めることができ」るという効果が得られるという技術的意義を有するものであるといえる。
(4) 本件特許発明の「発明」該当性について
本件特許発明は、上記第2の1に記載したとおり、「遊技機」(構成G)という機器に関する発明であり、「遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段と、前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段と、を備え」(構成B,C)るものである。
そして、上記(2)で検討したとおり、本件特許発明は、遊技機において「遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能」とした背景技術を前提として、「特別状態中の遊技において設定示唆を行うことで、遊技の興趣を向上させることができるが、設定示唆を行うことに関しては未だ改良の余地があった」ことから「遊技者に対して好適に設定示唆を行う」という技術的課題を解決しようとするものであって、上記(3)で検討したとおり、特に構成D、Fに係る技術的手段を採用することで、全体として、「第2期間においては、第1期間で表示された特定表示の履歴が表示されるため、第1期間で表示された特定表示を振り返りながら遊技者に選択肢として挙げられた特定表示を認識させることができ」、かつ、「第2期間において特定表示を振り返る期間を、第1期間のときよりも長く設けることで、第2期間において最終設定示唆が行われるまでの演出に対してより遊技者の注目を集めることができ」るという効果が得られるという技術的意義を有するものである。
したがって、本件特許発明は特許法第2条第1項でいう「発明」に該当し、本件特許は同法第29条第1項柱書に違反してなされたものとはいえない。
(5) 申立人の主張
ア 申立人は、異議申立書の「(4-3)発明該当性について ア)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」において、
「本件特許発明の構成要件について検討する前に、前記した解決しようとする技術的課題の前提となる前記特許文献技術に記載された事項を検討する。
前記特許文献の抜粋から明らかなとおり、前記特許文献に記載された技術は、構成a)「遊技を行う遊技機であって、」、b)「遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段と、」c)「前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段と、」
を備えていることは明らかである。
そうすると、本件特許発明は、そのような技術を前提として、解決しようとする技術的課題を設定し、特許請求の範囲の請求項1に記載された構成要件A)~G)により、かかる技術的課題を達成しようとするのであるから、その構成要件A)~C)及びG)は、かかる前提となる技術に属し、本件特許発明の解決しようとする技術的課題の達成に貢献する技術的事項は、構成要件D)、E)及びF)となる。
そこで、本件特許発明の解決しようとする技術的課題の達成に貢献する技術的事項(以下「本件「特許発明の本質」と略記する。)について検討する。」
と主張する。
しかしながら、特許法第2条第1項が「「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め、同法第29条第1項柱書において、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」とした上で、「次に掲げる発明」として、1~3号に公知発明等を挙げている。このような特許法の規定の仕方からすると、特許法は、特許を受けようとする発明が自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであり、かつ産業上利用することができるものであるかをまず検討した上で、これらの要件を満たす発明であっても公知発明等に当たる場合には特許を受けることができないものと定めていると解すべきである。そうすると、特許法第29条第1項柱書該当性の判断に当たっては、特許法第29条第1項及び第2項のように、2つの発明を対比することにより特許要件の有無を判断する場合とは異なり、特許請求の範囲によって特定された発明全体が自然法則を利用した技術的思想の創作に当たるかどうかを全体的に検討すべきであって、公知発明等に当たらない新規な部分だけを取り出して判断すべきではない(知財高裁平成21年6月16日判決、平成20年(行ケ)第10279号参照)。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
イ また、申立人は異議申立書の「(4-3)発明該当性について ア)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」において、以下を主張する。
「そこで、本件特許発明の解決しようとする技術的課題の達成に貢献する技術的事項(以下「本件「特許発明の本質」と略記する。)について検討する。
構成要件D)、E)及びF)を再掲すると以下のとおりである。
構成要件D)「前記設定示唆手段によって設定示唆が行われる期間には、設定示唆に関する特定表示が表示される第1期間と、当該第1期間の後の期間であって当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される第2期間とが含まれ、」
構成要件E)「前記第1期間において、一の特定表示が表示された後に当該一の特定表示が他の特定表示に切り替わることがあり、」
構成要件F)「前記第1期間で表示された一の特定表示の表示期間よりも、前記第2期間で履歴として表示された当該一の特定表示の表示期間の方が長い、」
これらの構成要件をまとめると、「設定示唆が行われる期間には、設定示唆に関する特定表示が表示される第1期間と、特定表示の履歴が表示される第2期間」が存在し、「第1期間において、一の特定表示が表示された後に他の特定表示に切り替わること」があり、「第1期間と第2期間とである特定表示が表示される期間では後者の期間の方が長い」ということであり、これらの構成要件が、技術的に意味するところは何ら特定されておらず、裏付けも見いだせず、ただ、これら構成要件のように、各期間、各特定表示及び特定表示の期間の態様を「定めただけ」のものに解される。
ここで、さらに、本件特許発明の本質が、自然法則を利用しているか否かがを検討すると、各期間、各特定表示及び特定表示の期間の態様は、各構成要件のとおりに「定めただけ」のものであって、自然法則との関係が見いだせない。せいぜい、「期間」という時間の経過だけである。
そして、これらの構成要件としてどのような態様を採るかは、本件特許発明の前提が遊技機であることに鑑みれば、元来人為的な遊技取り決めの設定であり、また、それによってどのような作用効果が生じるかは、所詮遊技の興趣を目指すものである以上、人間の五感を通じて人間の精神的活動にどのように影響するかにより、かつ、人間それぞれ固有の性質を有するものであることにより、一定の成果が得られるものではなく、かかる態様は人為的な取り決めを超えるものではないし、人の精神活動に作用することを期待するもの、すなわち人の精神活動に向けたものであるといえる。
このような、人為的な取り決めと人の精神活動とは、どちらも自然法則を利用するものではないし、両者の関係も自然法則によって規律されるものではないことは明白である。
したがって、かかる構成要件D)、E)及びF)は、自然法則を利用するものではない。
しかも、本件特許発明の解決しようとする技術的課題は、明細書によれば、文字表示に関する遊技の興趣を向上させる、ところにあり、それ自体、人である遊技者の五感を通じて、遊技の興趣という精神活動への作用を期待するものであるから、解決しようとすべき技術的課題及びその解決手段並びにその効果は、いずれも自然法則を利用したものではない。
よって、本件特許発明は、その本質において、自然法則を利用したものではないといえる。
他方、他の構成要件の存在により、構成要件に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が、全体として自然法則を利用していると判断される場合は、その発明は、自然法則を利用したものともいい得ることがあり得るので、以下、その観点からさらに検討を進める。
本件特許発明は、遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段と、前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段とを備えた遊技機であるが、それ以外に具体的な解決手段を備えておらず、かかる遊技機に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うものとはいえないし、遊技機を対象とする物理的性質、電気的性質等の技術的性質に基づく情報処理を具体的に行うものでもない。
そして、本件特許発明の技術的手段ともいえる前記設定手段、前記設定示唆手段は、本件特許発明の前提とするものであって、その創作の前提となる全ての遊技機が備えているものである。また、当業者にとっても周知の手段であるから、本件特許発明の前提を構成するだけで、その解決しようとする技術的課題との関係においては、なんらその解決手段を提供するものではない。
よって、上述した技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義を綜合して検討すれば、本件特許発明の本質は、専ら特定表示等の態様についての人為的取り決めそのものに向けられたものであると評価される。
したがって、本件特許発明は、その本質が専ら人為的な取り決めそのものに向けられているものであり、自然界の現象や秩序について成立している科学的法則を利用するものではないから、全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しない。
以上によれば、本件特許発明は、法29条1項柱書においていう「発明」、すなわち法2条1項に規定する「発明」に該当しないものである。」
上記主張について検討するに、上記(4)で検討したとおり、本件特許発明は、設定値の設定手段と設定示唆手段とを備えた機器により、「遊技者に対して好適」な「設定示唆」を実行するものであるところ、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決するものであり、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、全体として一定の技術的意義を有するものといえるから、単に人である遊技者の五感を通じて遊技の興趣という精神活動への作用を期待するものや、専ら特定表示等の態様についての人為的取り決めそのものに向けられたものということはできず、本件特許発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であるといえる。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
ウ また、申立人は、異議申立書の「(4-3)発明該当性について ア)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」において、裁判例を参考として説明し、
「かかる裁判例は、本件特許発明が、設定示唆手段を備えた遊技機について技術的特徴をなんら備えておらず、具体的な構成も見当たらないから、発明を全体として考察した結果、発明の本質が自然法則を利用したものといえない点で、本件異議申立の事例と共通する事案に係るものである。
…
本件異議申立においては、以上の考え方のもと、「特許を受けようとする発明」としてコンピュータを用いることが可能な処理が記載されているとみても、その処理については、やはり、何らの技術的工夫は特定されておらず、あくまで、人為的な取り決めの範囲にとどまる限りにおいて意義を有するものでしかないから、自然法則を利用したものとはいえないとの結論に至ったものである。」
と主張する。
しかし、上記(4)で検討したとおり、本件特許発明は、設定値の設定手段と設定示唆手段とを備えた機器により、「遊技者に対して好適」な「設定示唆」を実行するものであるところ、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決するものであり、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、全体として一定の技術的意義を有するものといえるから、専ら特定表示等の態様についての人為的取り決めそのものに向けられたものということはできず、本件特許発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であるといえる。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(6) 理由1(発明該当性要件)についての小括
以上により、本件特許は、特許法第29条第1項柱書に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定には該当せず、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものではない。
2 理由2(新規性要件)及び理由3(進歩性要件)について
(1) 本件特許発明
本件特許発明を再掲すると以下のとおりである。
「【請求項1】
A 遊技を行う遊技機であって、
B 遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段と、
C 前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段と、を備え、
D 前記設定示唆手段によって設定示唆が行われる期間には、設定示唆に関する特定表示が表示される第1期間と、当該第1期間の後の期間であって当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される第2期間とが含まれ、
E 前記第1期間において、一の特定表示が表示された後に当該一の特定表示が他の特定表示に切り替わることがあり、
F 前記第1期間で表示された一の特定表示の表示期間よりも、前記第2期間で履歴として表示された当該一の特定表示の表示期間の方が長い、
G 遊技機。」
(2) 甲第1号証の記載及び甲1発明
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体が付した。)。
「【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、パチンコ遊技機(以下、「パチンコ機」と略称する。)1の正面図である。また、図2は、パチンコ機1の背面図である。パチンコ機1は、遊技球を遊技媒体として用いるものであり、遊技者は、遊技場運営者から遊技球を借り受けてパチンコ機1による遊技を行う。なお、パチンコ機1における遊技において、遊技球はその1個1個が遊技価値を有した媒体であり、遊技の成果として遊技者が享受する特典(利益)は、例えば遊技者が獲得した遊技球の数に基づいて遊技価値に換算することができる。以下、図1及び図2を参照しつつパチンコ機1の全体構成について説明する。」
「【0081】
さらに、主制御装置70には、設定変更装置73が設けられている。設定変更装置73は、設定を切り替える装置であり、パチンコ機1に備えられた設定変更スイッチ99等の操作により作動する。また、設定とは、作動確率の組み合わせをいう。さらに、作動確率とは、条件装置が作動することとなる(大当り遊技が実行されることとなる)特別図柄の組み合わせが表示される確率をいう。設定の変更の手順は、様々な手法を採用することができるが、例えば、以下の手順で行うことができる。」
「【0548】
〔設定示唆演出の第1演出例〕
図55~図58は、設定示唆演出の第1演出例について示す連続図である。
ここで、設定示唆演出とは、少なくとも抽選要素(保留、入賞時に獲得される各種乱数)が取得されてから抽選要素が消費されるまで(当該変動が開始されるまで)の一部又は全部の期間を利用して実行される演出であり、パチンコ機1の設定を示唆する演出である。
【0549】
また、設定示唆演出の第1演出例は、液晶表示器42に表示する画像によって設定を示唆する演出例である。
…
【0559】
また、入賞時には設定示唆演出の実行抽選が行われる。そして、ここでは、設定示唆演出の第1演出例の実行条件が満たされ、設定示唆演出の第1演出例のシナリオとして、第1特別図柄の記憶数が2個になった際に(保2の状態で)設定示唆キャラクターを3人まで登場させ、第1特別図柄の記憶数が1個になった際に(保1の状態で)設定示唆キャラクターを6人まで登場させるシナリオが選択されたものとする。
…
【0561】
〔変動表示演出開始前〕
図56中(F):液晶表示器42の画面内には3本の演出図柄の列が大きく表示されている(「1」-「1」-「4」)。図示の例では、マーカM1が3つ表示されているため、第1特別図柄の作動記憶が3個存在していることが表されている。
【0562】
〔変動表示演出開始〕
図56中(G):第1特別図柄の変動開始とともに、液晶表示器42の表示画面上で3本の図柄列がスクロール変動することで変動表示演出が開始される。このとき、第1特別図柄の作動記憶に対応するマーカM1が1つ変動中表示領域X2に移動する。また、液晶表示器42の画面右上では第4図柄Z1が変動表示されている。なお、ここでの第1特別図柄の変動は、非リーチはずれ変動パターンが選択されているものとする。
【0563】
〔設定示唆演出〕
設定示唆演出として、設定示唆キャラクターSC1が大きく表示される演出が実行されている。この設定示唆演出は、最終的に設定示唆キャラクターが「何人まで増えるか」という演出内容になっている。そして、設定示唆キャラクターが増えれば増えるほど、示唆する設定の値が上昇していく。なお、設定示唆演出を実行する際には、設定示唆専用の特殊背景を表示してもよい。
…
【0566】
〔設定示唆演出〕
設定示唆演出として、表示画面が2分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1に加えて、設定示唆キャラクターSC2が表示される演出が実行されている。
…
【0568】
〔設定示唆演出〕
設定示唆演出として、表示画面が3分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1,SC2に加えて、設定示唆キャラクターSC3が表示される演出が実行されている。
【0569】
〔中演出図柄停止〕
図56中(J):右演出図柄の停止に続けて、数字の「2」を表す中演出図柄が停止している。また、第4図柄Z1も、「はずれ」に対応する態様(例えば白表示色)で停止表示されている。第1特別図柄の変動が終了すると、変動中表示領域X2に表示されているマーカM1が消滅する演出が実行される。
【0570】
〔変動表示演出開始前〕
図57中(K):液晶表示器42の画面内には3本の演出図柄の列が大きく表示されている(「2」-「2」-「5」)。図示の例では、マーカM1が2つ表示されているため、第1特別図柄の作動記憶が2個存在していることが表されている。
【0571】
〔変動表示演出開始〕
図57中(L):第1特別図柄の変動開始とともに、液晶表示器42の表示画面上で3本の図柄列がスクロール変動することで変動表示演出が開始される。このとき、第1特別図柄の作動記憶に対応するマーカM1が1つ変動中表示領域X2に移動する。また、液晶表示器42の画面右上では第4図柄Z1が変動表示されている。なお、ここでの第1特別図柄の変動は、非リーチはずれ変動パターンが選択されているものとする。
【0572】
〔設定示唆演出〕
設定示唆演出として、表示画面が4分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC3に加えて、設定示唆キャラクターSC4が表示される演出が実行されている。
…
【0574】
〔設定示唆演出〕
設定示唆演出として、表示画面が5分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC4に加えて、設定示唆キャラクターSC5が表示される演出が実行されている。
…
【0576】
〔設定示唆演出〕
設定示唆演出として、表示画面が6分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC5に加えて、設定示唆キャラクターSC6が表示される演出が実行されている。なお、設定示唆演出によって表示した設定示唆キャラクターSC1~SC6は、この時点で非表示としてもよい。また、設定示唆キャラクターSC1~SC6は、リーチ状態が発生するまで、又は、リーチ状態が発生した後も、継続して表示してもよい。
【0577】
〔中演出図柄停止〕
図57中(O):右演出図柄の停止に続けて、数字の「6」を表す中演出図柄が停止している。また、第4図柄Z1も、「はずれ」に対応する態様(例えば白表示色)で停止表示されている。第1特別図柄の変動が終了すると、変動中表示領域X2に表示されているマーカM1が消滅する演出が実行される。」
「【0616】
ステップS703a:演出制御CPU126は、設定示唆演出管理処理を実行する(設定示唆演出実行手段)。
この処理では、演出制御CPU126は、設定示唆演出を実行するか否かについての判定処理を実行し、設定示唆演出を実行すると決定した場合には、設定示唆演出の具体的な内容を決定する処理(いずれの種類の設定示唆演出を、どのようなシナリオ(抽選要素が取得されてから抽選要素が消費されるまでの一部又は全部の期間のうちいずれの期間を利用して設定示唆演出を実行するかについてのシナリオ)で実行するかを決定する処理)を実行する。」
以上によれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「a パチンコ機1であって(【0025】)、
b 大当り遊技が実行されることとなる特別図柄の組み合わせが表示される確率である作動確率の組み合わせである設定を切り替える設定変更装置73を備え(【0081】)、
c 設定示唆演出とは、少なくとも抽選要素(保留、入賞時に獲得される各種乱数)が取得されてから抽選要素が消費されるまで(当該変動が開始されるまで)の一部又は全部の期間を利用して実行される演出であり、パチンコ機1の設定を示唆する演出であり(【0548】)、設定示唆演出は、液晶表示器42に表示する画像によって設定を示唆し(【0549】)、演出制御CPU126は、設定示唆演出を実行するか否かについての判定処理を実行し、設定示唆演出を実行すると決定した場合には、設定示唆演出の具体的な内容を決定する処理を実行する設定示唆演出管理処理を実行し(【0616】)、
de 入賞時には設定示唆演出の実行抽選が行われ、設定示唆演出の第1演出例の実行条件が満たされ、設定示唆演出の第1演出例のシナリオとして、第1特別図柄の記憶数が2個になった際に(保2の状態で)設定示唆キャラクターを3人まで登場させ、第1特別図柄の記憶数が1個になった際に(保1の状態で)設定示唆キャラクターを6人まで登場させるシナリオが選択された場合(【0559】)、マーカM1が3つ表示されているため、第1特別図柄の作動記憶が3個存在していることが表され(【0561】)、第1特別図柄の変動開始とともに、液晶表示器42の表示画面上で3本の図柄列がスクロール変動することで変動表示演出が開始され、このとき、第1特別図柄の作動記憶に対応するマーカM1が1つ変動中表示領域X2に移動し(【0562】)、設定示唆演出として、設定示唆キャラクターSC1が大きく表示される演出が実行され、この設定示唆演出は、最終的に設定示唆キャラクターが「何人まで増えるか」という演出内容になっており、設定示唆キャラクターが増えれば増えるほど、示唆する設定の値が上昇していき(【0563】)、設定示唆演出として、表示画面が2分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1に加えて、設定示唆キャラクターSC2が表示される演出が実行され(【0566】)、表示画面が3分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1,SC2に加えて、設定示唆キャラクターSC3が表示される演出が実行され(【0568】)、右演出図柄の停止に続けて、中演出図柄が停止し、第1特別図柄の変動が終了すると、変動中表示領域X2に表示されているマーカM1が消滅する演出が実行され(【0569】)、マーカM1が2つ表示されているため、第1特別図柄の作動記憶が2個存在していることが表され(【0570】)、第1特別図柄の変動開始とともに、液晶表示器42の表示画面上で3本の図柄列がスクロール変動することで変動表示演出が開始され、このとき、第1特別図柄の作動記憶に対応するマーカM1が1つ変動中表示領域X2に移動し(【0571】)、設定示唆演出として、表示画面が4分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC3に加えて、設定示唆キャラクターSC4が表示される演出が実行され(【0572】)、表示画面が5分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC4に加えて、設定示唆キャラクターSC5が表示される演出が実行され(【0574】)、表示画面が6分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC5に加えて、設定示唆キャラクターSC6が表示される演出が実行され(【0576】)、右演出図柄の停止に続けて、中演出図柄が停止し、第1特別図柄の変動が終了すると、変動中表示領域X2に表示されているマーカM1が消滅する演出が実行される(【0577】)
g パチンコ機1(【0025】)。」
(3) 対比・検討
本件特許発明と甲1発明とを対比する。
(a、g) 甲1発明の「パチンコ機1」は、本件特許発明の「遊技を行う遊技機」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件特許発明の構成A、Gに相当する構成を備える。
(b) 甲1発明の「大当り遊技が実行されることとなる特別図柄の組み合わせが表示される確率である作動確率の組み合わせである設定」は、本件特許発明の「遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値」に相当する。
甲1発明の「設定を切り替える設定変更装置73」は、本件特許発明の「遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件特許発明の構成Bに相当する構成を備える。
(c) 甲1発明の「パチンコ機1の設定を示唆する演出であ」る「設定示唆演出」は、本件特許発明の「前記設定手段に関する設定示唆」に相当する。
甲1発明の「設定示唆演出を実行するか否かについての判定処理を実行し、設定示唆演出を実行すると決定した場合には、設定示唆演出の具体的な内容を決定する処理を実行する設定示唆演出管理処理を実行」する「演出制御CPU126」は、本件特許発明の「前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件特許発明の構成Cに相当する構成を備える。
(d) 甲1発明の「設定示唆キャラクターSC1」、「設定示唆キャラクターSC2」及び「設定示唆キャラクターSC3」は、本件特許発明の「設定示唆に関する特定表示」に相当する。
甲1発明の「設定示唆演出として、設定示唆キャラクターSC1が大きく表示される演出が実行され」てから、「設定示唆演出として、表示画面が2分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1に加えて、設定示唆キャラクターSC2が表示される演出が実行され、表示画面が3分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1,SC2に加えて、設定示唆キャラクターSC3が表示される演出が実行され」るまでの期間(以下「期間A」という。)は、本件特許発明の「設定示唆に関する特定表示が表示される第1期間」に相当する。
甲1発明の「設定示唆演出として、表示画面が4分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC3に加えて、設定示唆キャラクターSC4が表示される演出が実行され」てから、「表示画面が5分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC4に加えて、設定示唆キャラクターSC5が表示される演出が実行され、表示画面が6分割される演出が実行され、設定示唆キャラクターSC1~SC5に加えて、設定示唆キャラクターSC6が表示される演出が実行され」るまでの期間(以下「期間B」という。)は、上記期間Aの後の期間であって、上記期間Aで表示された「設定示唆キャラクターSC1~SC3」が表示されることから、本件特許発明の「当該第1期間の後の期間であって当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される第2期間」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件特許発明の構成Dに相当する構成を備える。
以上によれば、本件特許発明と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。
(一致点)
「A 遊技を行う遊技機であって、
B 遊技者にとっての有利度が異なる複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を設定可能な設定手段と、
C 前記設定手段に関する設定示唆を行う設定示唆手段と、を備え、
D 前記設定示唆手段によって設定示唆が行われる期間には、設定示唆に関する特定表示が表示される第1期間と、当該第1期間の後の期間であって当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される第2期間とが含まれる、
G 遊技機。」
(相違点1)[構成E]
本件特許発明は、「前記第1期間において、一の特定表示が表示された後に当該一の特定表示が他の特定表示に切り替わることがあ」るのに対して、甲1発明は、上記期間A(第1期間)において、設定示唆キャラクターSC1(一の特定表示)が表示された後に、設定キャラクターSC1は、他の設定示唆キャラクター(他の特定表示)に切り替わることなく表示され続ける点。
(相違点2)[構成F]
本件特許発明は、「前記第1期間で表示された一の特定表示の表示期間よりも、前記第2期間で履歴として表示された当該一の特定表示の表示期間の方が長い」のに対して、甲1発明は、期間A(第1期間)で表示された設定示唆キャラクターSC1(一の特定表示)の表示期間よりも、期間B(第2期間)で履歴として表示された設定示唆キャラクターSC1(当該一の特定表示)の表示期間の方が長いか、明らかでない点。
ア 理由2(新規性要件)についての判断
上記のとおり、本件特許発明と甲1発明とは、相違点1及び相違点2で相違し、相違点1及び相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明は、甲1発明ではない。
イ 理由3(進歩性要件)についての判断
相違点1について検討する。甲1発明の「設定示唆演出」は、「最終的に設定示唆キャラクターが「何人まで増えるか」という演出内容になっており、設定示唆キャラクターが増えれば増えるほど、示唆する設定の値が上昇してい」くものであるところ、仮に、表示された設定示唆キャラクターが他の設定示唆キャラクターに切り替わると、設定示唆演出で表示される設定示唆キャラクターの連続性が失われ、演出効果が損なわれることとなるため、相違点1に係る本件特許発明の構成Eのように、上記期間A(第1期間)において、設定示唆キャラクターSC1(一の特定表示)が表示された後に、設定示唆キャラクターSC1(当該一の特定表示)が他の設定示唆キャラクター(他の特定表示)に切り替わることがあるように構成することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
また、甲1発明において、仮に、上記期間A(第1期間)において、設定示唆キャラクターSC1(一の特定表示)が表示された後に、設定示唆キャラクターSC1(当該一の特定表示)が他の設定示唆キャラクター(他の特定表示)に切り替わることがあるように構成すると、本件特許発明の構成Dにおける「当該第1期間の後の期間であって当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される第2期間とが含まれ」ることを充足するためには、期間Aにおいて表示された設定示唆キャラクターSC1の履歴だけでなく、設定示唆キャラクターSC1から切り替えて表示された他の設定示唆キャラクターの履歴も、期間Bにおいて表示される必要が生じるが、このように構成することの動機付けがなく、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
したがって、相違点1に係る本件特許発明の構成を容易に想到し得たこととは認められない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、申立人は、異議申立書の「(4-3)本件特許発明と甲1発明との対比・検討」において、上記相違点1に関連して、以下の旨を主張する。
「オ)構成要件E)
甲1発明は、「第1特別図柄の作動記憶に対応するマーカMlが1つ変動中表示領域X2に移動する(X1にはマーカM1が2つ表示されている)」「設定示唆演出」を行う期間には、「設定示唆キャラクター」「SCl」が図56(G)のように全画面を用いて表示されている態様と、図56(H)のように「表示画面が2分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2」あるいは図56(I)のように「表示画面が3分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2、SC3」が表示される態様に切り替わることが可能である。
そして、かかる表示される態様が切り替わるのは、前記した「第1特別図柄の作動記憶に対応するマーカM1が1つ変動中表示領域X2に移動する(X1にはマーカM1が2つ表示されている)」「設定示唆演出」を行う期間である。
したがって、甲1発明の構成e)は、本件特許発明の構成要件E)「前記第1期間において、一の特定表示が表示された後に当該一の特定表示が他の特定表示に切り替わることがあり、」を充足する。
よって、甲1発明は、本件特許発明の構成要件E)を備えている。」
そこで、上記の異議申立書における主張のように、甲1発明の「設定示唆キャラクター」「SCl」が全画面を用いて表示されている態様と、「表示画面が2分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2」あるいは「表示画面が3分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2、SC3」が表示される態様を、本件特許発明の「一の特定表示」及び「他の特定表示」に相当させる場合について検討する。
上記のように相当させた場合、本件特許発明の構成Eが一致点になるとしても、本件特許発明の構成Dについて、本件特許発明は、「第2期間」において「当該第1期間で表示された当該特定表示の履歴が表示される」のに対して、甲1発明は、上記の期間B(第2期間)において、上記の期間A(第1期間)で表示された「設定示唆キャラクター」「SCl」が全画面を用いて表示されている態様と、「表示画面が2分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2」あるいは「表示画面が3分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2、SC3」が表示される態様の、それぞれの態様での履歴は表示されない点(以下「相違点3」という。)で相違することになるとともに、本件特許発明の構成Fが相違点(以下「相違点4」という。)となる。
相違点3について検討するに、甲1発明の「設定示唆演出」は、「最終的に設定示唆キャラクターが「何人まで増えるか」という演出内容になっており、設定示唆キャラクターが増えれば増えるほど、示唆する設定の値が上昇してい」くものであるところ、甲1発明において、上記の期間B(第2期間)において、上記の期間A(第1期間)で表示された「設定示唆キャラクター」「SCl」が全画面を用いて表示されている態様と、「表示画面が2分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2」あるいは「表示画面が3分割される」「設定示唆キャラクター」「SC1、SC2、SC3」が表示される態様のそれぞれの履歴を表示することは、遊技者が「最終的に設定示唆キャラクターが「何人まで増えるか」」を認識することがかえって困難となり、設定示唆演出の演出効果が損なわれるため、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
したがって、異議申立書の「(4-3)本件特許発明と甲1発明との対比・検討」の「オ)構成要件E)」に記載された、本件特許発明と甲1発明の相当関係を考慮しても、本件特許発明は、甲1発明ではなく、また、相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 理由2(新規性要件)及び理由3(進歩性要件)についての小括
以上により、本件特許は、特許法第29条第1項及び同法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定には該当せず、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものではない。
第4 むすび
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700699