2020-700005
ソーラー充電器
- 審判番号
- 2020-700005
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-083469外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年01月08日
- 審決日
- 2020年10月19日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.536-YAA(H01G) / P1651.537-YAA(H01G) / P1651.121-YAA(H01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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特許第6542019号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願(以下、「本願」という。)は、平成27年 4月15日に出願されたものであって、令和 1年 6月21日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、令和2年 1月 8日に特許異議申立人 服部昇(以下、「申立人A」という。)、及び同年 1月10日に特許異議申立人 安藤宏(以下、「申立人B」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされ、同年 3月31日付けで取消理由が通知され、同年 5月20日に特許権者との面接が行われ、同年 6月 2日に特許権者から訂正請求書及び意見書が提出されたものである。
なお、当審は、令和 2年 6月30日付けで、申立人A及び申立人Bに対し訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、いずれの申立人からも意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨、及び訂正の内容について
令和2年 6月 2日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正を求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである(なお、訂正箇所には当審が下線を付した。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されている「前記色素増感太陽電池モジュールは、基板と、電解質媒体と、前記基板の前記電解質媒体側に設けられた透明導電層と、前記透明導電層の前記電解質媒体側に形成された金属酸化物層と、前記金属酸化物層の前記電解質媒体側に設けられた多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層に担持された増感色素とを有し」を「前記色素増感太陽電池モジュールは、基板と、電解質媒体と、前記基板の前記電解質媒体側に設けられた透明導電層と、前記透明導電層の前記電解質媒体側に形成された金属酸化物層と、前記金属酸化物層の前記電解質媒体側に設けられた多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層に担持された増感色素と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁層と、前記多孔質絶縁層上に形成された対極と、を有し」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されている「前記電解質媒体は、I-とI3-とを含み、I3-の濃度は0.02M超0.05M以下である」を「前記電解質媒体は、前記多孔質絶縁層内に侵入し、I-とI3-とを含み、I3-の濃度は0.02M超0.05M以下である」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4について、引用する請求項から請求項3を削除する。
2 本件訂正についての当審の判断
(1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無
ア 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1では、色素増感太陽電池モジュールが多孔質半導体層と該多孔質半導体層に担持された増感色素を有することが特定されていた一方で、上記多孔質半導体層上の構造については特定されていなかったところ、訂正後の請求項1では、当該構造が、多孔質半導体層上に多孔質絶縁層が形成され、さらに、該多孔質絶縁層上に対極が形成されたものであることを具体的に特定する事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
さらに、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0027】には、「図1に示すように、DSC100は、透明基板12と、透明基板12上に形成された光アノード15と、光アノード15の上に形成された多孔質絶縁層22と、多孔質絶縁層22上に形成された対極34と、基板32と、光アノード15と基板32との間に充填された電解質媒体42とを有している。」と記載され、【0030】には、「DSC100の光アノード15は、基板12の電解質媒体42側に設けられた透明導電層14と、透明導電層14の電解質媒体42側に形成された金属酸化物層16と、金属酸化物層16の電解質媒体42側に設けられた多孔質半導体層18と、多孔質半導体層18に担持された増感色素(不図示)とを有している。」と記載されていることから、上記訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加にも該当しない。
イ 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1では、色素増感太陽電池モジュールの電解質媒体が、I-とI3-とを含み、I3-の濃度は0.02M超0.05M以下であることは特定されているものの、当該電解質媒体がどのような形態で上記色素増感太陽電池モジュールに保持されているかは特定されていなかったところ、訂正後の請求項1では、「前記電解質媒体は、前記多孔質絶縁層内に侵入し、」との特定事項を付加することにより、電解質媒体が保持される形態を具体的に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
さらに、本件明細書等の【0027】には、「電解質媒体42は、光アノード15と対極34との間に設けられた多孔質絶縁層22内に侵入し、多孔質絶縁層22に保持された電解質媒体42は、キャリア輸送層として機能する。」と記載されていることから、上記訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加にも該当しない。
ウ 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4について、引用する請求項から請求項3を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項4について、請求項3を引用する部分を単に削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加にも該当しない。
(2)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~3について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~4について、訂正前の請求項2~4はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~4は、一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
また、本件訂正請求は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1~4〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。
3 本件訂正請求についての結言
以上のとおりであるから、本件訂正は、請求項〔1~4〕について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するものである。
よって、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求によって訂正された本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、総称して「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】複数の色素増感太陽電池を備える色素増感太陽電池モジュールと、モバイル電子機器に電気的に直接接続され且つ一体化される構造であって、前記モバイル電子機器に一体化され、前記モバイル電子機器を使用する状態において、前記色素増感太陽電池モジュールの受光面を露出させる構造とを有し、前記色素増感太陽電池モジュールは、続きを表示(全22行)基板と、電解質媒体と、前記基板の前記電解質媒体側に設けられた透明導電層と、前記透明導電層の前記電解質媒体側に形成された金属酸化物層と、前記金属酸化物層の前記電解質媒体側に設けられた多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層に担持された増感色素と、前記多孔質半導体層上に形成された多孔質絶縁層と、前記多孔質絶縁層上に形成された対極と、を有し、前記金属酸化物層の電気抵抗は、前記多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、前記透明導電層の電気抵抗よりも大きく、前記電解質媒体は、前記多孔質絶縁層内に侵入し、I-とI3-とを含み、I3-の濃度は0.02M超0.05M以下である、ソーラー充電器。【請求項2】前記金属酸化物層の厚さは10nmを超えない、請求項1に記載のソーラー充電器。【請求項3】前記色素増感太陽電池モジュールの出力と、前記モバイル電子機器との間に電圧安定化回路をさらに有する、請求項1または2に記載のソーラー充電器。【請求項4】前記色素増感太陽電池モジュールの出力を、前記モバイル電子機器に直接出力するように構成されている、請求項1または2に記載のソーラー充電器。」
2 特許異議申立理由の概要
(1)申立人Aは、証拠方法として、後記する甲第1~8号証を提出し、以下の理由により、請求項1~4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。なお、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明を順に「本件特許発明1」~「本件特許発明4」といい、総称して「本件特許発明」ということがある。
ア 申立理由A1(取消理由として不採用)
(ア)本件特許発明1、2、4は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ)本件特許発明3は、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由A2(取消理由として採用)
本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~4の「電解質媒体は、I-とI3-とを含み、I3-の濃度は0.02M超0.05M以下である」という要件を満たすようにソーラー充電器を製造することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
<証拠方法>
甲第6号証:Gerrit Boschloo 他, “Characteristics of the Iodide/Triiodide Redox Mediator in Dye-Sensitized Solar Cells”, Accounts of Chemical Research, November 2009,Vol.42, No.11, p.1819-1826
(なお、以下において、申立人Aが提出した甲第1号証~甲第8号証を「甲第A1号証」~「甲第A8号証」という。)
(2)また、申立人Bは、証拠方法として、後記する甲第1~6号証を提出し、以下の理由により、請求項1~4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
ア 申立理由B1(取消理由として一部採用)
本件特許発明1~4は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由B2(取消理由として採用)
本件特許発明4は、請求項3を引用する部分について、発明特定事項同士の関係が整合せず、特許を受けようとする発明が明確とはいえないものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
<証拠方法>
甲第2号証:Jo-Lin Lan 他, “Effects of Iodine Content in the Electrolyte on the Charge Transfer and Power Conversion Efficiency of Dye-Sensitized Solar Cells under Low Light Intensities”, The Journal of Physical Chemistry C, 2012, No.116,p.25727-25733
(なお、以下において、申立人Bが提出した甲第1号証~甲第6号証を「甲第B1号証」~「甲第B6号証」という。)
3 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
本件の請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和 2年 3月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性要件)
ア 取消理由1-1(申立理由B2に対応)
本件特許発明4のうち請求項3を引用する部分については、「色素増感太陽電池モジュールの出力」と「モバイル電子機器」との間に、電圧安定化回路等の回路は形成されないと解される一方で、「色素増感太陽電池モジュールの出力」と「モバイル電子機器」との間に「電圧安定化回路」が形成されるとも解されることから、上記請求項4の「直接出力」との文言を、両者の間に電圧安定化回路などの他の回路が形成されないとの通常の意味に解する限り、発明特定事項同士の関係に不整合が生じているといえる。
したがって、請求項4の「直接出力」との文言の意味を一義的に確定することができず、当業者が本件特許発明4のうち請求項3を引用する部分について、当業者がその内容を明確に把握することは困難である。
よって、本件特許発明4は、請求項3を引用する部分について、特許を受けようとする発明が明確とはいえないものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由1-2(職権による)
本件特許の請求項1には、「前記金属酸化物層の電気抵抗は、前記多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、前記透明導電層の電気抵抗よりも大きく、」と記載されているが、本件明細書等の発明の詳細な説明には、「金属酸化物層」、「多孔質半導体層」、及び「透明導電層」の各「電気抵抗」について、「前記金属酸化物層の電気抵抗は、前記多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、前記透明導電層の電気抵抗よりも大きい。」と記載されているに留まり、それらの具体的な測定方法は記載されていない。
そうすると、請求項1に記載された「金属酸化物層の電気抵抗」、「多孔質半導体層の電気抵抗」、及び「透明導電層の電気抵抗」については、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識を考慮しても、その具体的な測定方法が不明であるため、「電気抵抗」の値を一義的に確定することができず、当業者がその内容を明確に把握することは困難である。
したがって、本件特許発明1~4は、特許を受けようとする発明が明確とはいえないものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(実施可能要件)
ア 取消理由2-1(申立理由A2に対応)
本件特許発明1~4の「電解質媒体は、I-とI3-とを含み、I3-の濃度は0.02M超0.05M以下である」との発明特定事項については、本件明細書等の記載及び本願出願時の技術常識を考慮しても、電解質媒体の「I3-」の濃度が、どのような方法により測定されたものかを理解することは困難であり、その濃度が「0.02M超0.05M以下」の範囲となるようにして本件特許発明1~4に係る「ソーラー充電器」を製造するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるといえる。
したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由2-2(職権による)
本件特許の請求項1に記載された「金属酸化物層の電気抵抗」、「多孔質半導体層の電気抵抗」、及び「透明導電層の電気抵抗」については、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識を考慮しても、その具体的な測定方法が不明であるため、「電気抵抗」の値を一義的に確定することができず、当業者がその内容を明確に把握することは困難である。
また、本件明細書等の発明の詳細な説明には、本件特許発明1~4のように、「金属酸化物層の電気抵抗」を、「多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、透明導電層の電気抵抗よりも大
きい」ものとするための具体的な方法は記載されていない。
そうすると、当業者が「金属酸化物層の電気抵抗」を、「多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、透明導電層の電気抵抗よりも大きい」ものとなるようにして本件特許発明1~4に係る「ソーラー充電器」を製造するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるといえる。
したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(進歩性;申立理由B1に対応)
本件特許発明1~4は、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証、甲第B3号証、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 取消理由についての当審の判断
当審は、令和 2年 6月 2日に提出された意見書における特許権者の主張を踏まえて検討した結果、上記3の取消理由はいずれも解消したと判断したところ、その理由は以下のとおりである。
(1)取消理由1(明確性要件)について
ア 取消理由1-1について
本件訂正により請求項4が引用する請求項から請求項3が削除されたことで、両者の発明特定事項の関係に生じていた不整合が解消したため、請求項4の「直接出力」との文言の意味を一義的に確定することはでき、当業者がその内容を明確に把握することもできるといえる。
したがって、本件請求項4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、同請求項の発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
イ 取消理由1-2について
(ア)上記取消理由1-2に対して、特許権者は、令和 2年 6月 2日提出の意見書において、参考文献として乙第1号証を示しつつ、以下のとおり主張している。
a.本願出願時の技術常識を考慮すれば、本件特許発明1の「金属酸化物層の電気抵抗」、「多孔質半導体層の電気抵抗」、及び「透明導電層の電気抵抗」のそれぞれの大きさを比較する方法に、従来公知の手法を用いることができ、その結果、当業者がその内容を明確に把握することができる。
b.具体的には、色素増感太陽電池を構成する「金属酸化物層」、「多孔質半導体層」及び「透明導電層」のそれぞれの電気抵抗の大小関係は、当業者であれば、電気化学的抵抗測定(EIS:Electrochemical Impedance Spectroscopy)のNyquistプロットの抵抗成分を「金属酸化物層」、「多孔質半導体層」及び「透明導電層」のそれぞれの部分の抵抗と対応させることで評価できる。なお、本件特許発明1の特定事項は「前記金属酸化物層の電気抵抗は、前記多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、透明導電層の電気抵抗よりも大きい」であり、「金属酸化物層の電気抵抗」、「多孔質半導体層の電気抵抗」等のそれぞれの値を具体的に特定しようとするものではない。
c.なお、乙第1号証(M.Liberatore 他, “Using EIS for diagnosis of dye-sensitized solar cells performance”, J Appl Electrochem, (2009) 39:2291-2295)には、以下の記載がある。
(a)「During the last decade interest in dye-sensitized solar cells (DSC) has grown enormously. Electrical impedance spectroscopy (EIS) is an electrochemical technique commonly used for investigation of charge carrier dynamics in these photovoltaic devices.(当審訳:過去10年間、色素増感太陽電池(DSC)への関心が高まってきた。電気化学的抵抗測定(EIS)は、これらの太陽電池の電荷キャリアダイナミクスを調べるために一般的に用いられる電気化学的手法である。)」(第2291頁「Abstract」 第1~5行)
(b)「By fitting of experimental data, we obtained values for the charge transfer resistance at the counter electrode and the electron percolation time at the photoelectrode.(当審訳:実験データをフィッティングすることで、対向電極での電荷移動抵抗と光電極での電子浸透時間の値を得ることができた。)」(第2291頁「Abstract」 第13~15行)
(c)「Regarding the catalytic activity of the Pt/FTO counterelectrode, Hauch and Georg [4] measured the charge-transfer resistance (Rct) with electrochemical impedance spectroscopy (EIS) using a symmetric cell with two identical Pt/TCO electrodes. This approach has the advantage of isolating the performance of the counterelectrode alone, allowing, through data analysis with a simple equivalent-circuit model, the evaluation of Rct. (当審訳:Pt/FTO対向電極の触媒活性に関して、HauchとGeorgは、2つの同一のPt/TCO電極を有する対称セルを用いて、電気化学的抵抗測定(EIS)で電荷移動抵抗(Rct)を測定した。このアプローチは、対向電極の性能を単独で分離できるという利点があり、単純な等価回路モデルを用いたデータ解析により、Rctの評価を可能にする。)」(第2291頁「Introduction」 第16~23行)
(d)「Impedance data were plotted on a Nyquist diagram and the fit and simulation processes were achieved using ZSimp-Win 3.22d○R software. (当審訳:インピーダンスデータは、ナイキスト線図上にプロットされ、フィッティングとシミュレーションプロセスは、ZSimp-Win 3.22d(登録商標)ソフトウェアを用いて行われた。)」(第2292頁「2.3 Fit and simulation」 第1~2行)
(イ)そこで、上記(ア)の主張について検討する。
a.まず、上記(ア)c.の乙第1号証の各記載事項からすると、色素増感太陽電池のセルにおける抵抗成分を評価する方法として、電気化学的抵抗測定(EIS)は一般的に用いられているものであり、等価回路モデルに基づいてナイキスト線図を用いたデータ解析を行うことにより、セルにおける抵抗成分を分離して評価することは可能であると認められる。
b.そうすると、本件特許の請求項1に記載された「金属酸化物層の電気抵抗」、「多孔質半導体層の電気抵抗」、及び「透明導電層の電気抵抗」について、本件明細書等の発明の詳細な説明には、具体的な測定方法が記載されていないとしても、本願出願時の技術常識を考慮すれば、この分野において、抵抗成分を評価する一般的な方法である「電気化学的抵抗測定(EIS)」によって評価されたものであることは明らかであり、各層の「電気抵抗」の値を一義的に確定して当業者がその内容を明確に把握することはできるといえる。
(ウ)したがって、本件請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、同請求項の発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
(2)取消理由2(実施可能要件)について
ア 取消理由2-1について
(ア)上記取消理由2-1に対して、特許権者は、令和 2年 6月 2日提出の意見書において、平衡定数の算出方法に関する乙第2号証を示しつつ、以下のとおり主張している。
a.「I-」と「I3-」を含む電解質媒体における「I3-」の濃度の測定は、例えば、以下の1~6の手順に従って行うことができる。1~6の手順は、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験を課すものではない。
[手順1~6]
1:調整された「I-」と「I3-」を含む電解質媒体(試料1)において、「I-」の濃度を銀滴定で求める。例えば、滴定には例えば、濃度既知の硝酸銀水溶液を用いる。
2:調整された「I-」と「I3-」を含む電解質媒体(試料1)の吸収スペクトルを分光光度計で測定する。分光光度計の測定結果では、波長365nmのピークが「I3-」の吸収に相当する。
3:別途、「I-」と「I3-」を含まず、試料1と同じ電解質媒体にI2をそれぞれ0.01M、0.02M、0.03M、0.04M、0.05M、0.06M溶かした電解質媒体(試料2~7)の吸収スペクトルを測定し、I2の溶解濃度と吸光度の検量線を作成する。
4:2で測定した吸光度と、3で作製した検量線から試料1におけるI2溶解濃度を求める。
5:室温(25℃)における電解質媒体中における、I2+I-←→I3-(式1)の平衡定数Kを求める。平衡定数の算出方法は、当業者が通常に実施される程度に例えば乙第2号証に開示されている。
具体的には、平衡定数Kは下記の(式2)で与えられ、(式2)から(式3)が得られる。ここで、C10はI-の初期濃度であり、C20はI2の初期濃度であり、C3はI3-の濃度である。
K=C3/(C20-C3)C10 (式2)
C10C20/C3=1/K+C10 (式3)
さらに具体的には、25℃において、例えば0.1~4×10-3mol/L間のI2濃度、及び0.01~1.0mol/Lのアイオダイド塩(LiI,KI,TBAIなど)の電解液を作製し、(式3)に相当する測定点をプロットして、その傾きから平衡定数Kを求める。
6:5で得られたKと、1で得られた試料1のI-濃度と、4で得られた試料1のI2濃度と、(式3)から試料1におけるI3-の濃度を求める。
(イ)そこで、上記(ア)の主張について検討する。
a.特許権者は、上記(ア)a.のとおり、電解質媒体における「I3-」の濃度の測定を銀滴定で求めることができる旨説明しているが、この方法は、イオン濃度を求める一般的な方法である滴定法の一種であって、本願出願時の技術常識を考慮すれば、これを本件発明1~4の「I3-」の濃度の測定に適用し、より具体的には、上記(ア)a.の[手順1~6]に従って測定することによりその値を確定できることは、当業者であれば十分理解できることといえる。
b.そうすると、本件発明1~4の電解質媒体の「I3-」の濃度が「0.02M超0.05M以下」の範囲になるようにして本件発明1~4に係る「ソーラー充電器」を製造するために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験等が必要であるとはいえない。
(ウ)したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
イ 取消理由2-2について
(ア)上記(1)イの「取消理由1-2について」において検討したとおり、本件特許の請求項1に記載された「金属酸化物層の電気抵抗」、「多孔質半導体層の電気抵抗」、及び「透明導電層の電気抵抗」について、本件明細書等の発明の詳細な説明には、具体的な測定方法が記載されていないとしても、本願出願時の技術常識を考慮すれば、この分野において、抵抗成分を評価する一般的な方法である「電気化学的抵抗測定(EIS)」によって評価されたものであることは明らかであり、各層の「電気抵抗」の値を一義的に確定して当業者がその内容を明確に把握することはできるといえる。
(イ)また、特許権者は、令和 2年 6月 2日提出の意見書において、「本件の明細書の段落【0052】~【0054】に記載された、実験例で試作した色素増感太陽電池の各層主の具体的な構造や製造方法の例(基板や層の材料、厚さ、サイズ、電気抵抗値、メーカ名など)に基づいて、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験を課すこともなく、本件特許発明1~4に係る『ソーラー充電器』を製造することができると考えます。」と主張しているとこと、上記(ア)のとおり本件発明1~4の各層の「電気抵抗」の値を一義的に確定して明確に把握した上で、本件明細書等の【0052】~【0054】の以下の記載を参照すれば、本件発明1~4のように、「金属酸化物層の電気抵抗」を、「多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、透明導電層の電気抵抗よりも大きい」「ソーラー充電器」を製造するために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験等が必要であるとはいえない。
a.本件明細書等の【0052】~【0054】の記載
「【0052】以下に、実験例を示して、本発明の実施形態によるソーラー充電器に好適に用いられるDSC100を詳細に説明する。上述のDSCモジュール200a~200cはいずれも図2に示したDSCモジュール200と同様の構成を有し、単位セルとして、図1に示したDSC100と同様の構成を有している。なお、7個のDSCセルを連続して設けたDSCモジュールを試作した例も併せて説明する。【0053】実験には、以下の構成を有するDSCを試作した。続きを表示(全14行)透明基板12および透明導電層14:日本板硝子社製(TEC A9X)FTO層付きガラス基板、厚さ4mm、大きさ20mm×70mm(DSCモジュールでは、大きさ70mm×70mm)、電気抵抗値9Ω/sq多孔質半導体層18:多孔質酸化チタン、酸化チタンペーストD/SP(Solaronix社製)を用いて、7mm×50mm×厚さ24μmの矩形(DSCモジュールでは、1.2mmの間隔を開けて7個連続するパターン)、電気抵抗値(一般的な物性値として10-13~10-14mho/cm)、増感色素A(商品名:Ruthenium620-1H3TBA(Solaronix社製)、担持量:約7×10- 8mol/cm 2多孔質絶縁層22:多孔質酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムペーストZr-Nanoxide Z/SP(Solaronix社製)を用いて、7.2mm×50.2mm×13μmの矩形(DSCモジュールでは、1mmの間隔を開けて7個連続するパターン)対極34:多孔質絶縁層22の表面に、スパッタ法により、触媒層として、Ptを約50nm成膜し、多孔質絶縁層22、透明導電層14および金属酸化物層16上に導電層として、Ti層を約2μm成膜したものを用いた。ここでは、触媒層およびTi層をまとめて対極と呼ぶが、Ti層だけを指して対極34と呼ぶこともある。対極34の電気抵抗値は0.6Ω/sqであった(DSCモジュールでは、隣接するDSCセルの対極同士は電気的に数百キロΩ以上絶縁されるようにパターニングして形成した。)。基板32:青板ガラス基板(松浪硝子社製)、厚さ1mm、大きさ10mm×70mm(DSCモジュールでは、大きさ60mm×70mm)封止部(不図示):紫外線硬化樹脂(型番:31X-101(スリーボンド社製))、シール幅1mm電解液42:I3-の濃度0.05M、溶媒アセトニトリル、厚さ50μm(ギャップ)金属酸化物層16の厚さが、1nm、2nm、4nm、8nm、12nmのDSCを作製し、照度差による出力電圧変化量および短絡電流密度Jscの減少量を評価した。高照度条件の照度を1.5mW/cm2とし、低照度条件の照度を0.09mW/cm2とした。金属酸化物層16として酸化チタン層を形成した。酸化チタン層は、以下の方法で形成した。【0054】シンクロン製スパッタ装置(CSS-2MT-1200R)を用いて、FTO層を有する基板表面に、厚さが約2nmのチタン層を形成した(ターゲット電力1100W、Ar流量120sccm、搬送速度100mm/s)。その後、空気中で、500℃で、1h保持し、チタン層を熱酸化することによって、厚さが約2nmの酸化チタン層を得た。なお、金属酸化物層の厚さは、通過製膜のスパッタ装置で形成する場合は搬送速度を変えることで膜厚を制御できる。例えば搬送速度のみを50mm/sとすることで厚さが約4nmの酸化チタン層が得られる。」
(ウ)したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、同発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
(3)取消理由3(進歩性)について
ア 甲第B1号証の記載事項
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本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第B1号証には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を意味する。以下、同様。)。
(ア)「【0001】本発明は、電子機器用カバー部材および電池蓋に関するものである。」
(イ)「【0003】ところで、最近では、携帯電話、携帯型のゲーム機器、電子ブック等の小型の電子機器を持ち運ぶ機会が益々増えてきており、それに伴い、電子機器を落下させあるいは移動中に何かに接触させて破損する機会も増えている。・・・」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】【0005】しかし、小型の電子機器を覆う従来のカバーやケースは、電子機器の防護性能や持ちやすさを兼ね備えたものとはいえず、カバーやケースにて外側を覆った状態の電子機器を落下した際に、電子機器が破損したり、カバーやケース自身が破損したり、あるいはカバーやケースを用いることによりかえって電子機器が持ちにくくなり、落下の頻度が高くなるという問題がある。また、電子機器に太陽電池を取り付けた場合、その上からカバーやケースを取り付けると、太陽電池が表面に露出できずに発電ができなくなるという問題がある。【0006】本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、電子機器をその落下や衝突から保護し、かつカバーにて電子機器を覆った状態で光電変換による発電を実現可能な電子機器用カバー部材および電池蓋を提供することを目的とする。」
(エ)「【0016】(1)電子機器用カバー部材の構成図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材をその開口面側から見た斜視図を示す。図2は、図1に示す電子機器用カバー部材をその開口面と反対側から見た斜視図を示す。図3は、図1に示す電子機器用カバー部材を電子機器に取り付けた状態の斜視図を示す。図4は、図1に示す電子機器用カバー部材の構成部材の一つであるトレイを一部分解した平面図を示す。図5は、図1に示す電子機器用カバー部材のA-A線断面図を示す。図6は、図5の領域Bの拡大図を示す。【0017】第一の実施の形態に係る電子機器用カバー部材(以後、単に、「カバー部材」と称する)1は、電子機器4の操作面5側を開口して当該電子機器4の外側を覆うと共に、少なくとも操作面5の方向に開口するトレイ2と、トレイ2よりも低硬度であると共にトレイ2の開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材3とを備える。」
(オ)「【0023】図1~図3に示すように、弾性部材3は、その内側に、色素増感太陽電池素子30を配置する。より具体的には、トレイ2に、それより外側を覆う弾性部材3の方向に向かって窪む開口部18を備え、色素増感太陽電池素子30を、そこに配置している。色素増感太陽電池素子30の外側の面は、少なくとも弾性部材3にて被覆されるので、カバー部材1を落下等させても壊れにくい。この実施の形態では、開口部18は、その平面形状が角形であって、トレイ2の厚さ方向に貫通する貫通口である。色素増感太陽電池素子30の外側の面を覆う弾性部材3は、その少なくとも開口部18の開口面と対向する側を透光領域とする。色素増感太陽電池素子30に光を当てることができるようにするためである。この実施の形態では、弾性部材30の外側の面は、開口部18の開口面と対向する面を除き、加飾層60にて被覆されている。ただし、カバー部材1は、弾性部材3の外側全面を加飾層60にて覆うことなく、トレイ2が完全に透けて見えるように透光性のままとしても良い。また、開口部18は、トレイ2の内側の面から外側の面に貫通しない凹部であっても良い。その場合、色素増感太陽電池素子30の外側に存在するトレイ2の少なくとも薄肉部を透光性にする必要がある。ここで、透光性を有する弾性部材3は、全波長域の光の透過性を確保するものであることが好ましいが、少なくとも色素増感太陽電池素子30に使用される増感色素の吸収波長領域の光を透過させることができれば足りる。【0024】また、トレイ2は、その内側に、開口部18内に配置される色素増感太陽電池素子30を覆うフィルム40を備えるのが好ましい。フィルム40は、開口部18を塞ぎ、かつ接着層等を介してトレイ2に着脱自在あるいは着脱不能に固定するのが好ましい。フィルム40を用いると、色素増感太陽電池素子30を開口部18から容易に抜け落ちるのを防止できる。フィルム40の材料としては、トレイ2あるいは弾性部材3と同じ材料を好適に用いることができる。【0025】トレイ2は、その底板10の内側の面に、電子機器4と電気的に接続可能な接続部50と、当該接続部50と色素増感太陽電池素子30との間を電気的につなぐ導線51,52と、を備える。接続部50は、底板10の内面に立設されており、カバー部材1に電子機器4を取り付けたときに、電子機器4側の接続凹部(不図示)と容易に接続できる構成である。接続部50は、好適には、例えば、同軸型の接続プラグの形態を有し、電子機器4側の接続凹部の一例であるプラグ接続口にプラグ・イン可能なものであるが、その形態に限定されない。また、接続部50は、トレイ2の底板10に限定されず、側壁11に配置されても良い。導線51,52は、銅製の細線の外周を樹脂にて覆うリード線の他、導電性に優れる金属をトレイ2にコートして形成される薄膜でも良い。導線51,52の金属部分が表面に露出している場合には、フィルム40にて導線51,52を覆うのが好ましい。漏電防止と、導線51,52に傷が付いて断線するのを防止する必要からである。フィルム40は、カバー部材1への電子機器4の取り付けに支障がないように、できるだけ薄く、トレイ2の内側の面からの突出を少なくする方が、好ましい。加えて、色素増感太陽電池素子30が開口部18内から突出しないように、トレイ2の厚さを色素増感太陽電池素子30の厚さより大きくする方が好ましい。【0026】この実施の形態に係るカバー部材1は、電子機器4に二次電池を入れた状態にて電子機器4に取り付けることにより、電池蓋1’としても機能するものである。このため、電子機器4に、カバー部材1以外に、二次電池の脱落を防止するための別の蓋を必要としない。ただし、カバー部材1が電池蓋1’を兼ねることは、必須ではない。電子機器4に専用の電池蓋を備え、その上からカバー部材1を取り付けても良い。カバー部材1が電池蓋1’を兼ねることが可能な点は、以後の実施の形態でも同様である。」
(カ)「【0027】図7は、図6中の色素増感太陽電池素子の概略断面図を示す。【0028】色素増感太陽電池素子30は、如何なる集積構造を持つものでも良いが、一例として、図7に示す、いわゆるW型集積構造のものを挙げることができる。図7に示す色素増感太陽電池素子30は、透明な樹脂基板70と透明な樹脂基板71との間に、断面視にてW形状の直列接続を実現する構造を有する。樹脂基板70,71は、それぞれの裏面に、ITO等から成る複数の透明導電膜75を備える。樹脂基板70側の透明導電膜75と、樹脂基板71側の透明導電膜75とは、各隙間を互い違いになるように配置される。透明導電膜75より内側には、電解質から成る電解質層80と、色素を吸着した多孔質酸化チタンの層(「色素吸着・多孔質酸化チタン層」という)81とを積層して備える。樹脂基板70,71の間には、図7中の左側から右側に向かって、色素吸着・多孔質酸化チタン層81の上に電解質層80を積層した積層体、電解質層80の上に色素吸着・多孔質酸化チタン層81を積層した逆層形態の積層体が順に配置される。色素増感太陽電池素子30は、その側面外周に封止層85を備え、電解質層80からの電解質の漏洩を防止している。ただし、電解質層80として、固体電解質を用いる場合には、封止層85を設けなくても良い。色素吸着・多孔質酸化チタン層81は、酸化チタン微粒子の表面にRu金属錯体色素等の色素を吸着し、色素のカルボキシル基と酸化チタンの脱水反応によって化学結合させた層である。一方、電解質層80は、例えば、ヨウ素系電解質からなる層である。光が樹脂基板70または樹脂基板71を通して色素吸着・多孔質酸化チタン層81中の色素に吸収されると、色素中の電子が励起され、その電子は、酸化チタンの伝導体に入り、透明導電膜75を経由して外部に移動する。酸化後の色素は、電解質層80から電子を受け取り、基底状態に戻る。色素によって酸化された電解質層80は、これと接する透明導電膜75から電子を受け取り、元に戻る。このような酸化・還元反応により、導線51と導線52との間に負荷回路を接続したときに、電子が図7中の点線の経路を移動する。なお、色素増感太陽電池素子30の集積構造は、上記のW型集積構造以外に、Z型集積構造あるいはモノリシック型集積構造としても良い。【0029】図8は、図1に示す電子機器用カバー部材に電子機器を取り付けた状態において、電子機器用カバー部材から電子機器に給電する状況の概略図を示す。【0030】電子機器4は、二次電池91と、これと電気的に接続される電子機器側負荷回路92とを備える。カバー部材1を電子機器4に取り付け、接続部50を介して電子機器4と、カバー部材1の色素増感太陽電池素子30とを電気的に接続すると、色素増感太陽電池素子30から導線51,52を介して二次電池91に給電できる。この結果、電子機器4は、二次電池91から電子機器側負荷回路92に給電できる。」
キ 「」
ク 「」
ケ 「」
コ 「」
サ 「」
イ 甲第B1号証に記載された発明
上記アの(ア)~(サ)の記載事項を総合勘案すると、甲第B1号証には、次の発明が記載されていると認める。
「携帯電話、携帯型のゲーム機器、電子ブック等の小型の電子機器4と、電子機器4の操作面5側を開口して当該電子機器4の外側を覆うと共に、少なくとも操作面5の方向に開口するトレイ2と、トレイ2よりも低硬度であると共にトレイ2の開口側内面の反対側の面を少なくとも覆う透光性の弾性部材3とを備える電子機器用カバー部材1と、弾性部材3の内側に配置される色素増感太陽電池素子30と、を備えるものであって、色素増感太陽電池素子30は、トレイ2に備えられた、それより外側を覆う弾性部材3の方向に向かって窪む開口部18に配置され、続きを表示(全11行)開口部18は、その平面形状が角形であって、トレイ2の厚さ方向に貫通する貫通口であり、色素増感太陽電池素子30の外側の面を覆う弾性部材3は、色素増感太陽電池素子30に光を当てることができるようにするために、その少なくとも開口部18の開口面と対向する側を透光領域とし、トレイ2は、その底板10の内側の面に、電子機器4と電気的に接続可能な接続部50と、当該接続部50と色素増感太陽電池素子30との間を電気的につなぐ導線51,52と、を備え、色素増感太陽電池素子30は、透明な樹脂基板70と透明な樹脂基板71との間に、断面視にてW形状の直列接続を実現する構造を有し、樹脂基板70,71は、それぞれの裏面に、ITO等から成る複数の透明導電膜75を備え、樹脂基板70側の透明導電膜75と、樹脂基板71側の透明導電膜75とは、各隙間を互い違いになるように配置され、透明導電膜75より内側には、電解質から成る電解質層80と、色素を吸着した多孔質酸化チタンの層(「色素吸着・多孔質酸化チタン層」という)81とを積層して備え、樹脂基板70,71の間には、色素吸着・多孔質酸化チタン層81の上に電解質層80を積層した積層体、電解質層80の上に色素吸着・多孔質酸化チタン層81を積層した逆層形態の積層体が順に配置され、色素吸着・多孔質酸化チタン層81は、酸化チタン微粒子の表面にRu金属錯体色素等の色素を吸着し、色素のカルボキシル基と酸化チタンの脱水反応によって化学結合させた層であり、電解質層80は、ヨウ素系電解質からなる層であり、光が樹脂基板70または樹脂基板71を通して色素吸着・多孔質酸化チタン層81中の色素に吸収されると、色素中の電子が励起され、その電子は、酸化チタンの伝導体に入り、透明導電膜75を経由して外部に移動し、酸化後の色素は、電解質層80から電子を受け取り、基底状態に戻り、色素によって酸化された電解質層80は、これと接する透明導電膜75から電子を受け取り、元に戻る、との酸化・還元反応により、導線51と導線52との間に負荷回路を接続したときに、電子が図7中の点線の経路を移動し、電子機器4は、二次電池91と、これと電気的に接続される電子機器側負荷回路92とを備え、カバー部材1を電子機器4に取り付け、接続部50を介して電子機器4と、カバー部材1の色素増感太陽電池素子30とを電気的に接続すると、色素増感太陽電池素子30から導線51,52を介して二次電池91に給電でき、この結果、電子機器4は、二次電池91から電子機器側負荷回路92に給電できる、もの。」(以下、「甲1発明」という。)
ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
a.甲1発明における、樹脂基板70、71の間の「透明導電膜75」より内側に配置された「色素吸着・多孔質酸化チタン層81の上に電解質層80を積層した積層体」、又は「電解質層80の上に色素吸着・多孔質酸化チタン層81を積層した逆層形態の積層体」は、それぞれ本件発明1の「色素増感太陽電池」に相当し、甲1発明において、上記積層体がW形状に直列接続した構造は、本件発明1の「複数の色素増感太陽電池を備える色素増感太陽電池モジュール」に相当する。
b.甲1発明における「携帯電話、携帯型のゲーム機器、電子ブック等の小型の電子機器」は、本件発明1の「モバイル電子機器」に相当する。
c.甲1発明において、「カバー部材1」に備えられた「トレイ2」が、「その底板10の内側の面に、電子機器4と電気的に接続可能な接続部50と、当該接続部50と色素増感太陽電池素子30との間を電気的につなぐ導線51,52と、を備え」ているとともに、「電子機器4は、二次電池91と、これと電気的に接続される電子機器側負荷回路92とを備え、カバー部材1を電子機器4に取り付け、接続部50を介して電子機器4と、カバー部材1の色素増感太陽電池素子30とを電気的に接続すると、色素増感太陽電池素子30から導線51,52を介して二次電池91に給電でき、この結果、電子機器4は、二次電池91から電子機器側負荷回路92に給電できる」構造を備えている点は、本件発明1の「モバイル電子機器に電気的に直接接続され且つ一体化される構造」を備える点に相当する。
d.甲1発明において、「色素増感太陽電池素子30の外側の面を覆う弾性部材3は、色素増感太陽電池素子30に光を当てることができるようにするために、その少なくとも開口部18の開口面と対向する側を透光領域とし」ている点は、上記c.の検討結果も考慮すると、本件発明1の「モバイル電子機器に一体化され、前記モバイル電子機器を使用する状態において、前記色素増感太陽電池モジュールの受光面を露出させる構造とを有」する点に相当する。
e.甲1発明における「樹脂基板70、71」、「透明導電膜75」、「色素吸着・多孔質酸化チタン層81」、及び「Ru金属錯体色素等の色素」は、それぞれ本件発明1の「基板」、「透明導電層」、「多孔質半導体層」、及び「増感色素」に相当する。
f.甲1発明における「ヨウ素系電解質からなる電解質層80」は、本件発明1の「電解質媒体」と、ヨウ素系電解質である点で一致する。
g.甲1発明における「電子機器」と、「電子機器用カバー部材」と、「色素増感太陽電池素子」とを備えるものは、本件特許発明1の「ソーラー充電器」に相当する。
h.そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「複数の色素増感太陽電池を備える色素増感太陽電池モジュールと、モバイル電子機器に電気的に直接接続され且つ一体化される構造であって、前記モバイル電子機器に一体化され、前記モバイル電子機器を使用する状態において、前記色素増感太陽電池モジュールの受光面を露出させる構造とを有し、前記色素増感太陽電池モジュールは、基板と、電解質媒体と、前記基板の前記電解質媒体側に設けられた透明導電層と、前記透明導電層の前記電解質媒体側に設けられた多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層に担持された増感色素とを有し、前記電解質媒体は、ヨウ素系電解質からなるものである、ソーラー充電器。」
i.一方、本件発明1と甲1発明とは、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の「色素増感太陽電池モジュール」は、「透明導電層」と、「多孔質半導体層」との間に「金属酸化物層」が形成されているとともに、前記「金属酸化物層」の電気抵抗が、前記多孔質半導体層の電気抵抗よりも小さく、かつ、前記透明導電層の電気抵抗よりも大きいのに対して、甲1発明は、そのような金属酸化物層が形成されていない点。
<相違点2>
「ヨウ素系電解質」である「電解質媒体」について、本件発明1では、「I-とI3-とを含み、I3-の濃度は0.02M超0.05M以下である」と特定されているのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1では、「色素増感太陽電池モジュール」の「多孔質半導体層」上にさらに「多孔質絶縁層」と「対極」とが順次形成され、当該「多孔質絶縁層」内に「電解質媒体」が侵入していると特定されているのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
a.そこで、事案に鑑み、上記相違点3について、まず検討する。
(a)上記相違点3に係る本件発明1の、「色素増感太陽電池モジュール」の「多孔質半導体層」上にさらに「多孔質絶縁層」と「対極」とが順次形成され、当該「多孔質絶縁層」内に「電解質媒体」が侵入しているとの特定事項は、本件訂正によって本件発明1が備えたものであり、甲第B1号証のみならず、甲第B2号証及び甲第B3号証のいずれにも記載も示唆もされていない事項であって、また、これらの事項が本願出願当時既に周知の技術であるといえる根拠も見出せない。
(b)また、特許権者が令和 2年 6月 2日提出の意見書において主張しているとおり、本件発明1に係る「色素増感太陽電池モジュール」が相違点3に係る上記特定事項を備えることで、電解質媒体が対極側から多孔質絶縁層内に侵入して、減少した多孔質半導体層と対極の間で消費されるI3-を補充することができるため、多孔質絶縁層内におけるI3-の濃度を維持することができ、色素増感太陽電池の寿命の向上に貢献できるという、甲1発明に対して有利な効果を奏するものと認められる。
(c)そうすると、本件発明1が上記相違点3に係る特定事項を備える点については、甲1発明、甲第B2号証又は甲第B3号証に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
b.したがって、上記相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲第B2号証又は甲第B3号証に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
エ 本件発明2~4について
上記ウ(イ)b.のとおり、本件発明1が甲1発明、甲第B2号証又は甲第B3号証に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4に係る本件発明2~4も、甲1発明、甲第B2号証又は甲第B3号証に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証、甲第B3号証、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、同発明に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
5 取消理由としなかった申立理由について
(1)申立理由A1について
ア 申立理由A1は、上記取消理由3において採用した甲第B1号証と同一の証拠である甲第A1号証(特開2013-65426号公報)に記載された発明を主たる引用発明としたものであるから、本件発明1と当該引用発明との一致点、及び相違点は、上記4(3)ウ(ア)h.i.に記載したとおりである。
イ そこで、上記4(3)ウ(ア)i.に記載した相違点3について検討する。
(ア)上記4(3)ウ(イ)a.において検討したのと同様、上記相違点3に係る本件発明1の、「色素増感太陽電池モジュール」の「多孔質半導体層」上にさらに「多孔質絶縁層」と「対極」とが順次形成され、当該「多孔質絶縁層」内に「電解質媒体」が侵入しているとの特定事項は、本件訂正によって本件発明1が備えたものであり、甲第A1号証のみならず、甲第A2号証ないし甲第A8号証のいずれにも記載も示唆もされていない事項であって、また、これらの事項が本願出願当時既に周知の技術であるといえる根拠も見出せない。
(イ)また、本件発明1に係る「色素増感太陽電池モジュール」が相違点3に係る上記特定事項を備えることで、電解質媒体が対極側から多孔質絶縁層内に侵入して、減少した多孔質半導体層と対極の間で消費されるI3-を補充することができるため、多孔質絶縁層内におけるI3-の濃度を維持することができ、色素増感太陽電池の寿命の向上に貢献できるという、甲第A1号証に記載された発明(甲1発明)に対して有利な効果を奏するものと認められる。
(ウ)そうすると、本件発明1が上記相違点3に係る特定事項を備える点については、甲第A1号証に記載された発明、甲第A2号証ないし甲第A8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第A1号証に記載された発明、甲第A2号証ないし甲第A8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
エ そして、本件発明1が、甲第A1号証に記載された発明、甲第A2号証ないし甲第A8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4に係る本件発明2~4も、甲第A1号証に記載された発明、甲第A2号証ないし甲第A8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
オ よって、本件発明1~4は、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証、甲第B3号証、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、同発明に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(2)申立理由B1について
ア 上記4(3)ウ(イ)a.において、取消理由3について検討したのと同様に、上記4(3)ウ(ア)i.に記載した相違点3に係る本件発明1の、「色素増感太陽電池モジュール」の「多孔質半導体層」上にさらに「多孔質絶縁層」と「対極」とが順次形成され、当該「多孔質絶縁層」内に「電解質媒体」が侵入しているとの特定事項は、本件訂正によって本件発明1が備えたものであり、甲第B1号証ないし甲第B3号証のみならず、甲第B4号証ないし甲第B6号証のいずれにも記載も示唆もされていない事項であって、また、これらの事項が本願出願当時既に周知の技術であるといえる根拠も見出せない。
イ また、本件発明1に係る「色素増感太陽電池モジュール」が相違点3に係る上記特定事項を備えることで、電解質媒体が対極側から多孔質絶縁層内に侵入して、減少した多孔質半導体層と対極の間で消費されるI3-を補充することができるため、多孔質絶縁層内におけるI3-の濃度を維持することができ、色素増感太陽電池の寿命の向上に貢献できるという、甲1発明に対して有利な効果を奏するものと認められる。
ウ そうすると、本件発明1が上記相違点3に係る特定事項を備える点については、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証ないし甲第B6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
エ したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証ないし甲第B6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
オ そして、本件発明1が、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証ないし甲第B6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4に係る本件発明2~4も、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証ないし甲第B6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
カ よって、本件発明1~4は、甲第B1号証に記載された発明、甲第B2号証ないし甲第B6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、同発明に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700005