特許異議申立
2024-700843
冷蔵庫
- 審判番号
- 2024-700843
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-163614
- 登録番号
- 7451643
- 請求日
- 2024年09月04日
- 審決日
- 2026年06月01日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】シャープ株式会社
- 【権利者代理人】影井 慶大
- 【権利者代理人】加藤 浩二
- 【異議申立人】藤本 拓也
- 審判長/審判官
- 審判長 大山 健
- 審判官 松永 謙一
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P1651.121-YAA(F25D) / P1651.537-YAA(F25D) / P1651.55 -YAA(F25D) / P1651.851-YAA(F25D) / P1651.853-YAA(F25D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第7項、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7451643号発明「冷蔵庫」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7451643号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7451643号の請求項1、3~4に係る特許を維持する。
特許第7451643号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7451643号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年5月15日を出願日とする特願2017-096697号の一部を令和3年6月29日に新たな特許出願とした特願2021-107193号の一部を、さらに令和4年10月12日に新たな特許出願(特願2022-163614号)としたものであって、令和6年3月8日にその特許権の設定登録がされ、同月18日に特許掲載公報が発行されたものである。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 9月 4日 :特許異議申立人 藤本拓也(以下「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
同年11月13日 :手続補正書の提出(申立人)
令和7年 1月16日付け:取消理由通知
同年 3月17日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
同年 5月14日付け:訂正拒絶理由通知
同年 6月12日 :意見書の提出(特許権者)
令和8年 1月22日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 3月26日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
同年 5月15日 :意見書の提出(申立人)
なお、令和7年3月17日の訂正の請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 訂正の内容
令和8年3月26日の訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「・・・(略)・・・前記制御部は、ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御を実行し、・・・(略)・・・前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる第2の制御を実行する」と記載されているのを、
「・・・(略)・・・前記制御部は、ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御を実行し、・・・(略)・・・前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御を実行し、前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する」との記載に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3~4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、
「前記制御部は、扉の開閉情報及び前記冷蔵庫の霜取りに関する情報のうちの少なくとも一方を外部に送信する、請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。」と記載されているのを、
「前記制御部は、扉の開閉情報及び前記冷蔵庫の霜取りに関する情報のうちの少なくとも一方を外部に送信する、請求項1に記載の冷蔵庫。」との記載に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、
「前記制御部は、扉が開放された場合、前記庫内の温度が低くなる第3の制御を実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。」
と記載されているのを、
「前記制御部は、扉が開放された場合、前記庫内の温度が低くなる第3の制御を実行する、請求項1または請求項3に記載の冷蔵庫。」との記載に訂正する。
(5)一群の請求項
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度」が、「前記庫内の温度が高くなる第1の制御」と記載されている「第1の制御」と「前記庫内の温度が低くなる第2の制御」と記載されている「第2の制御」の時系列の関係が不明であったことにも起因して、どのような温度であるかを明確に把握できないものであったところ、「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度」が「第2の制御で設定された温度」であり、また、「第2の制御」が「第1の制御」の直後に実行されるものであることを特定することによって、請求項1に係る発明を明確化したものである。
したがって、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
さらに、訂正前の請求項1に「前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する」との限定を付加するものであるから、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもある。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正後の請求項1に係る「第2の制御」は、「ユーザの位置情報」と、「ユーザからの指示に基づいてマップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録」したものである「食品を購入する場所」とに基づいて、「庫内の温度が低くなる」ようにする制御であるが、特許明細書等の段落【0014】、【0040】、【0047】、【0051】~【0056】、【0058】、【0077】~【0079】、【0086】、図4等には、ユーザ位置と、ユーザが位置登録したマップ上の冷凍食品を購入する場所とに基づいて、通常時より温度を低くする予冷処理を行うことが記載されているから、訂正後の請求項1に係る「第2の制御」は予冷処理に対応するものであると認められる。
また、訂正後の請求項1に係る「第1の制御」は、「ユーザの位置情報」に基づいて行われる制御であって、「第2の制御で設定された温度よりも前記庫内温度が高くなる」ようにする制御であり、さらに、「第2の制御」の「直後」に実行される制御であるが、「第2の制御」が予冷処理であると認められるところ、特許明細書等の段落【0005】、【0072】~【0073】、【0089】、【0129】、図12等には、ユーザの位置情報に基づいて予冷処理を中断又は中止する処理が記載されているから、訂正後の請求項1に係る「第1の制御」は予冷処理の中断又は中止に対応するものであると認められる。
そして、特許明細書等には、ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である予冷処理で設定された温度よりも庫内の温度が高くなる予冷処理の中断又は中止を実行することが記載されているから、訂正事項1に係る「前記制御部は、ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御を実行し、」との構成は特許明細書等に記載されているといえる。
また、予冷処理の中断又は中止を行うためには、その前提として、直前に予冷処理が行われている状態にあることは当業者にとって自明であり、したがって特許明細書等には、予冷処理の直後に予冷の処理の中断又は中止をすることも記載されているといえるから、訂正事項1に係る「前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する」との構成も、特許明細書等に記載されているといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度」が「第2の制御で設定された温度」であることに限定し、また、「第2の制御」と「第1の制御」の関係を限定するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1及び2を引用するものであったのを、訂正事項2により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、請求項1のみを引用するものとしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、請求項1のみを引用するものとしたものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、請求項1のみを引用するものとしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれかを引用するものであったのを、訂正事項2により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、請求項1又は3を引用するものとしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項4は、訂正事項2により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、請求項1又は3を引用するものとしたものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正事項2により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、請求項1又は3を引用するものとしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。なお、本件発明2は本件訂正により削除された。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
庫内の温度を制御する制御部を備え、
前記制御部は、ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御を実行し、
前記制御部は、ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録し、
前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御を実行し、
前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する、冷蔵庫。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記制御部は、扉の開閉情報及び前記冷蔵庫の霜取りに関する情報のうちの少なくとも一方を外部に送信する、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御部は、扉が開放された場合、前記庫内の温度が低くなる第3の制御を実行する、請求項1または請求項3に記載の冷蔵庫。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
(1)理由1(新規事項)
令和5年10月26日にした手続補正により補正された本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の請求項2の発明特定事項のうち「ユーザの位置情報に基づい」た「前記庫内の温度が高くなる第1の制御を」、「端末へのユーザからの指示に基づいて」「実行する」ことについては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ず、令和5年10月26日にした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)理由2(サポート要件)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」の式で計算される予想帰宅時間が第1所定時間以内であるか否かについて、なんら特定しておらず、本件発明の課題を解決する手段が反映されていないものも含んでいるから、発明の詳細な説明において、当業者が課題を解決することができると認識し得る範囲を超えるものといわざるを得ず、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)理由3(明確性)
本件訂正前の請求項1に係る発明における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度」とはどのような温度を意味するのか明確に特定できず、また、「前記庫内の温度が高くなる第1の制御」についてもどのような制御であるのかを明確に特定できないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
(1)理由1(新規事項)について
本件訂正により請求項2は削除されたので、訂正後の請求項1、3、4に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。
よって、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の理由1は、理由がない。
(2)理由2(サポート要件)について
ア 本件発明1の発明特定事項
本件発明1には、
「庫内の温度を制御する制御部を備え、
前記制御部は、ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御を実行し、
前記制御部は、ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録し、
前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御を実行し、
前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する、冷蔵庫。」
という発明特定事項が記載されており、本件発明1は、「第2の制御」の直後に「第1の制御」を実行する冷蔵庫において、「前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御」を実行するとともに、「ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」を実行するものであると認められる。
ここで上記第2の2(1)イに記載したとおり、「第2の制御」とは予冷処理、「第1の制御」とは予冷処理の中断又は中止にそれぞれ対応するものと認められるから、本件発明1は、予冷処理の直後に行われる予冷処理の中断又は中止に関するものであり、予冷処理の中断又は中止をユーザの位置情報に基づいて実行するものであると理解できる。
イ 発明の詳細な説明に記載された事項
これに対して発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
(ア)「【0005】
上述した引用文献1では、ユーザが家を解錠したとき、またはユーザの位置が自宅から限られた範囲内となったとき、冷蔵庫の温度を第2の設定温度に変更する、すなわち予冷を開始している。しかし、家を解錠したときに予冷を開始しても十分な予冷時間をとれる可能性は低い。また、位置情報のみから予冷を開始した場合、その位置からユーザがどのような手段(電車、自動車、自転車、徒歩等)によって家に帰ってくるのかは不明であり、予冷時間を十分に取れない可能性がある。逆に、ユーザが寄り道をした場合、予冷が無駄になる可能性もある。」
(イ)「【0071】
次に、図12を参照して、予冷中止指示を送付する処理の流れを説明する。図12に示すように、予冷判定部202は、予冷開始指示を送信後の経過時間が設定時間内であるか否かを判定する(S1201)。経過時間が設定した時間を超えた場合(S1201でNO)、予冷判定部202は、予冷中止命令を冷蔵庫1に送信し(S1208)、冷蔵庫1の設定を通常設定に戻す(S1209)。
【0072】
一方、予冷開始指示を送信後の経過時間が設定時間内であれば(S1201でYES)、予冷判定部202は、位置情報取得部201が取得したユーザの位置情報を用いて、ユーザが直帰しているか否かを判定する(S1202)。直帰していないを判定した場合(S1202でNO)、ステップS1208に進む。直帰していない=寄り道をしていると判断できるためである。
【0073】
直帰している場合(S1202でYES)、予冷判定部202は、位置情報取得部201が取得したユーザの位置情報を用いて、ユーザが帰宅後、台所に直行したか否かを判定する(S1203)。直行していない場合(S1203でNO)、ステップS1208に進む。台所に直行したか否かは、上述のように位置情報を用いてもよいし、家の状況(寝室の電気が点灯した、テレビの電源が投入された等)から判断してもよい。」
(ウ)「【0089】
なお、取得した位置情報から、ユーザが寄り道をしていると判断した場合、予冷処理を中断する構成であってもよい。」
(エ)「【図12】
[図:0001439174000001.jpg]
」
ウ 発明の詳細な説明から理解できる発明が解決しようとする課題及び課題を解決できると認識し得る範囲
上記イ(ア)から、発明の詳細な説明には、課題の一つとして、予冷が無駄になることを防ぐことが記載されていることが理解できる。
また、上記イ(イ)~(エ)から、発明の詳細な説明にはその課題を解決できると認識し得る範囲について、ユーザの位置情報を用いてユーザが直帰しているか否か、又は、帰宅後台所に直行したか否かを判定し、直帰していない、又は、台所に直行していないと判定した場合に、予冷処理を中止又は中断すること、すなわち、ユーザの位置情報に基づいて予冷処理の中止又は中断することが記載されていると理解できる。
エ 訂正後の本件発明のサポート要件について
本件発明1には、上記アに示したとおり、上記ウに示した予冷が無駄になることを防ぐという課題に対応する、「ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」を実行すること、すなわち、ユーザの位置情報に基づいて予冷処理の中断又は中止を実行するという構成が記載されている。
したがって、本件発明1は、課題を解決できると認識し得る範囲のものであり、訂正後の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たすものである。
また、本件発明1を引用する本件発明3、4も同様に課題を解決できると認識し得る範囲のものであり、訂正後の請求項3、4の記載は特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たすものである。
よって、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の理由2は、理由がない。
(3)理由3(明確性)について
上記第2の2(1)イに示したように、訂正後の請求項1において、「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度」とは予冷処理に対応する「第2の制御」による温度であることが明らかとなり、また、「前記庫内の温度が高くなる第1の制御」とは予冷の中断又は中止に対応するものであることが明らかとなった。そして、その他に本件発明1に不明確な点はない。
したがって、本件発明1は明確であり、訂正後の請求項1の記載は特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たすものである。
また、本件発明1を引用する本件発明3、4も同様に明確であり、訂正後の請求項3、4の記載は特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たすものである。
よって、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の理由3は、理由がない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)理由1(進歩性)
請求項1~4に係る発明は、以下の甲第1~6号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
なお、特許異議申立書及び令和6年11月13日付け手続補正書に記載された理由1についての具体的な理由の記載から、申立人は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明を主発明として、請求項1~4に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたと主張していると認めた。
<申立人が提出した証拠>
甲第1号証:
特開2017-20730号公報(請求項1~4に対して)
甲第2号証:
特開2003-156275号公報(請求項1~4に対して)
甲第3号証:
特開2006-113787号公報(請求項1~4に対して)
甲第4号証:
特開2002-109203号公報(請求項1~4に対して)
甲第5号証:
特開2004-69231号公報(請求項3~4に対して)
甲第6号証:
特開平7-180940号公報(請求項4に対して)
(2)理由2(サポート要件)
請求項1における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」については特許明細書等に記載されておらず、また、「前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる第2の制御を実行する」については、本件特許の明細書の記載の範囲を超えるものであり、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)理由3(明確性)
請求項1における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」については特許明細書等に記載されていないから、また、「前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる第2の制御を実行する」については発明の外延が不明確であるから、発明特定事項の技術的意味を理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)理由4(新規事項)
令和4年11月10日に提出した手続補正書でした補正について、補正後の請求項1において「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御を実行し、」との記載を行う補正、及び、「前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる第2の制御を実行する」との記載を行う補正は、発明特定事項を上位概念化する補正であって新たな技術的事項を導入するものであるから、請求項1に係る特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
(1)各甲号証に記載された事項について
ア 甲第1号証について
甲第1号証には以下の事項が記載及び図示されている。
(ア)「【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫制御システムの構成例を示す図である。冷蔵庫制御システム100は、冷蔵庫1と、制御装置2と、オートロック装置3と、POS端末6と、情報サーバ7とで構成される。冷蔵庫1は、庫内の温度をユーザによって入力された第一の設定温度に保つ。制御装置2は、冷蔵庫1に庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度に変更させる制御命令を送信して庫内の温度を制御する。オートロック装置3は、例えば、ユーザが住む建物(マンションなど)の出入口にあって、出入口の施錠および解錠を制御する。オートロック装置3は、解錠された場合に解錠されたことを示す解錠情報を制御装置2に送信する。制御装置2は、ルータ4を介して外部のネットワーク5に接続する。」
(イ)「【0014】
POS端末6は、物品を購入したユーザに対応するアドレス情報と、ユーザが購入した物品の温度情報とを情報サーバ7から取得する。POS端末6は、ユーザが購入した物品の保存温度が冷蔵または冷凍である場合に、ユーザの冷蔵庫1を制御する制御装置2の宛先アドレスに予冷運転の開始を要求する予冷要求信号を送信する。制御装置2は、POS端末6から予冷要求信号を受信した後に、オートロック装置3から解錠情報を受信すると、庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令を冷蔵庫1に送信する。冷蔵庫制御システム100では、オートロック装置3からの解錠情報に基づいて、ユーザの推定位置が自宅から限られた範囲内(ユーザが住む建物の出入口)であるか否かを判定する。本実施の形態における解錠情報は、本発明の位置推定情報である。
【0015】
冷蔵庫1は、制御装置2から受信した制御命令にしたがって、庫内の温度を第二の設定温度にする。その後、冷蔵庫1は、扉が開いたことを検知すると、庫内の温度を第一の設定温度に戻す。または、扉が一旦開いたあと再び閉じられたことを検知後、一定時間以上連続して扉が開かれないことを確認したあとで、庫内の温度を第一の設定温度に戻すように構成してもよい。」
(ウ)「【0019】
制御命令生成部24は、予冷要求受信部23から予冷要求信号を受け取ったのちに、解錠情報受信部25から解錠情報を受け取ると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する。制御命令生成部24は、生成した制御命令を制御命令送信部26に送る。制御命令送信部26は、制御命令生成部24から受け取った制御命令を冷蔵庫1に送信する。なお、制御装置2は、冷蔵庫1に内蔵されてもよいし、1つの制御装置2が複数の冷蔵庫1を制御してもよい。」
(エ)「【0044】
もしくは、制御装置2が、庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令を冷蔵庫1に送信した後、冷蔵庫1で計測された計測情報を定期的に取得し、庫内の温度を第一の設定温度に戻す条件を満たした場合(例えば、冷蔵庫1の扉の開閉を検知した検知情報を定期的に取得し、開扉を検知した場合)、庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令を生成して、冷蔵庫1に送信する構成にしてもよい。」
(オ)「【0046】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る冷蔵庫制御システムの構成例を示す図である。実施の形態2の冷蔵庫制御システム200は、実施の形態1の冷蔵庫制御システム100のPOS端末6に代えて、ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8を備える。位置検出機能は、例えば、GPS(Global Positioning System)でもよいし、無線LANによる位置検出でもよい。また、冷蔵庫制御システム200では、オートロック装置3を備えず、オートロック装置3からの解錠情報に代えて、情報端末8からの位置情報に基づいて、ユーザの推定位置が自宅から限られた範囲内であるか否かを判定する。情報端末8は、例えばユーザが所持するスマートフォンであり、冷蔵庫制御システム200の専用アプリケーションをインストールすることで、情報端末8として機能する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0047】
図10は、実施の形態2に係る情報端末の機能構成例を示す図である。情報端末8は、記憶部81と、ID情報送信部82と、アドレス情報受信部83と、購入品情報取得部84と、購入品情報送信部85と、温度情報受信部86と、位置情報生成部87と、位置情報送信部88と、開始通知受信部89と、位置検出部90とを備える。記憶部81は、あらかじめユーザのID情報を記憶している。ユーザが情報端末8の専用アプリケーションを起動すると、ID情報送信部82は、記憶部81が記憶するID情報を情報サーバ7に送信する。ID情報は、ユーザの操作によって送信してもよい。」
(カ)「【0049】
温度情報受信部86は、情報サーバ7から、ユーザが購入した物品の温度情報を受信する。温度情報受信部86は、受信した温度情報を位置情報生成部87に送る。位置検出部90は、情報端末8の位置を検出し、情報端末8の位置を示す検出情報を位置情報生成部87に送る。位置情報生成部87は、温度情報受信部86から受け取った温度情報に基づいて、ユーザが購入した物品の中に保存温度が冷蔵または冷凍のものがあるか否かを判定する。ユーザが購入した物品の中に保存温度が冷蔵または冷凍のものがある場合、位置情報生成部87は、位置検出部90から受け取った検出情報と予冷要求信号とを含む位置情報を生成し、アドレス情報受信部83から受け取ったアドレス情報と共に位置情報送信部88に送る。位置情報送信部88は、位置情報生成部87から受け取った位置情報を、共に受け取ったアドレス情報が示す制御装置2に送信する。本実施の形態における位置情報は、本発明の位置推定情報であって、位置検出部90は、本発明の位置検出手段である。」
(キ)「【0052】
図11は、実施の形態2に係る制御装置の機能構成例を示す図である。実施の形態2の制御装置2は、実施の形態1の制御装置2の予冷要求受信部23および解錠情報受信部25に代えて、位置情報受信部27および位置判定部28を備える。加えて、開始通知送信部29を備える。
【0053】
位置情報受信部27は、情報端末8から位置情報を受信する。位置情報受信部27は、受信した位置情報を、位置判定部28に送る。位置判定部28は、位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が、自宅から限られた範囲内であるか否かを判定する。自宅から限られた範囲内である場合、位置判定部28は、制御命令生成部24に、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知する。制御命令生成部24は、位置判定部28から情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する。本実施の形態における位置情報受信部27は、本発明の位置推定受信部である。」
(ク)「【図9】
[図:0001439174000002.jpg]
」
(ケ)「【図10】
[図:0001439174000003.jpg]
」
(コ)「【図11】
[図:0001439174000004.jpg]
」
(サ)上記(ア)~(コ)を踏まえると、甲第1号証には、次の「甲1発明」及び「甲1記載事項」が記載されているものと認められる。
<甲1発明>
「庫内の温度を制御する冷蔵庫1に内蔵された制御装置2を備え、
前記制御装置2は、庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令を冷蔵庫1に送信した後、冷蔵庫1の扉の開扉を検知した場合、庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令を生成して、冷蔵庫1に送信し、
情報端末8の位置情報生成部87は、ユーザが購入した物品の中に保存温度が冷蔵または冷凍のものがある場合、位置検出部90から受け取った検出情報と予冷要求信号とを含む位置情報を生成して位置情報送信部88に送り、位置情報送信部88は、位置情報生成部87から受け取った位置情報を制御装置2に送信し、制御装置2は、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知されると、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する、冷蔵庫1。」
<甲1記載事項>
「情報端末8の位置情報生成部87は、ユーザが購入した物品の中に保存温度が冷蔵または冷凍のものがある場合、位置検出部90から受け取った検出情報と予冷要求信号とを含む位置情報を生成して位置情報送信部88に送り、位置情報送信部88は、位置情報生成部87から受け取った位置情報を制御装置2に送信し 、制御装置2は、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知されると、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成すること。」
イ 甲第2号証について
甲第2号証には以下の事項が記載及び図示されている。
(ア)「【0016】本発明の第1の目的は、冷蔵庫の使用者が、適切な温度を推量して、冷凍庫の庫内温度を設定するという手間を省き、物品情報に基づき先ず庫内を通常設定温度よりも冷やし、次に通常設定温度に復帰させる冷蔵庫を提供することにある。
(イ)「【0018】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成するために、冷蔵庫は、冷凍室を有する冷蔵庫において、遠隔した位置から前記冷凍庫へ収納する物品の包装形態情報又は重量情報を取得する手段と、前記情報を取得後、冷凍庫の庫内温度が予め設定されている庫内温度よりも低い庫内温度になるように運転した後に、この運転から前記予め設定されている庫内温度となるように運転を切替える手段とを備える。
【0019】また、冷蔵庫は、運転を切替える手段が、冷凍室の一定時間以上の開放、冷凍室庫内温度の一定値以上の上昇、冷凍室の庫内収納物品増加、低い庫内温度になるように運転を開始してからの一定時間以上の時間経過、又は、解除スイッチの操作により、予め設定されている庫内温度となるように運転を切替えることが好ましい。」
(ウ)「【0023】
【発明の実施の形態】図3は、本発明による第1実施例の冷蔵庫の構成を示す図である。図3を用いて、通常使用時の冷蔵庫の運転、即ち、後述する冷蔵庫に対する物品情報(包装形態情報又は重量情報)の伝達が行われていない間の冷蔵庫運転を説明する。
【0024】図3において、1は冷蔵庫、2は冷蔵室、3は冷凍庫、28は冷蔵室扉、29は冷凍室扉、45は断熱壁である。42は冷蔵室ドアスイッチ、43は冷凍室ドアスイッチである。冷蔵室ドアスイッチ42は、冷蔵室扉28が開放されている間、冷凍室ドアスイッチ43は、冷凍室扉29が開放されている間、それぞれが扉開放信号を予冷運転制御手段25に送信し続ける。44は予冷解除ボタンである。予冷解除ボタン44は、予冷解除ボタン44が押下された際に、予冷解除信号を予冷運転制御手段25に送信する。
【0025】4は圧縮機、5は凝縮器、40は三方弁、39は冷凍室用毛細管、33は冷凍室用蒸発器、38は冷蔵室用毛細管、32は冷蔵室用蒸発器である。そして、圧縮機4と、凝縮器5と、三方弁40と、冷凍室用毛細管39と、冷凍室用蒸発器33と、冷蔵室用毛細管38と、冷蔵室用蒸発器32とを接続して冷凍サイクル8を構成している。」
(エ)「【0031】15は運転制御手段であり、第2の記録手段14に記録した運転制御規則に基づいて、圧縮機4と、三方弁40と、冷蔵室用ファン34と、冷凍室用ファン35との制御を行う。運転制御手段15による圧縮機4と、三方弁40と、冷蔵室用ファン34と、冷凍室用ファン35との運転制御を、図6及び図7を用いて説明する。」
(オ)「【0040】図1において、1は冷蔵庫、18は冷蔵庫に接続された冷蔵庫側屋内通信装置である。201は電話機、202は電話機201に接続された電話機側屋内通信装置であり、有線または無線による屋内通信回線203によって、冷蔵庫側屋内通信装置18と電話機側屋内通信装置202は接続されている。16は物品の販売店に置かれた会計装置、17は会計装置に接続された会計装置の通信装置である。会計装置の通信装置17は、公衆回線204によって電話機201と接続されている。
【0041】また、205は公衆回線204により伝達される冷凍庫への物品情報、206は会計装置16に表示される物品情報、207は会計装置16に入力される冷蔵庫利用者の電話番号である。冷蔵庫利用者が、販売店で物品を購入して会計を済ませる際、商品名と価格が会計装置16に表示される。利用者が、冷蔵庫の冷凍室に収納する物品として商品名1、商品名3、商品名5及び商品名nの物品を指定すると、会計担当者が商品名1、商品名3、商品名5及び商品名nの物品を、冷凍室に収納することを会計装置16に入力する。このとき冷凍室に収納される予定の商品名の前には丸印が表示される。また利用者は、自宅の冷蔵庫1に後述する冷凍庫への物品情報205を送信するために、冷蔵庫利用者の電話番号207を会計担当者に告げ、会計担当者は電話番号を入力する。
【0042】上記の作業を完了すると、会計装置16は、冷凍庫に収納される予定の商品名に、この商品名に対応する物品の包装形態情報と重量情報とを付加した冷凍庫への物品情報205を作成し、会計装置の通信装置17から公衆回線204を介して冷蔵庫利用者の電話番号207に対応する電話機201に冷凍庫への物品情報205を送信する。電話機201は、冷凍庫への物品情報205を受信した後、電話機側屋内通信装置202から屋内通信回線203を介して、冷蔵庫側屋内通信装置18に冷凍庫への物品情報205を送信する。
【0043】19はデータ解析手段(図3参照)であり、冷蔵庫側屋内通信装置18を介して入力された冷凍庫への物品情報205から、商品名と、商品名に対応する包装形態情報と、商品名に対応する重量情報とを抽出し、数値判定手段21と演算手段22に送信する。
【0044】20は第3の記録手段(図3参照)であり、図4に示すように、包装形態情報に対応する数値Cpを定める規則を記録している。21は数値判定手段であり、包装形態情報に対応する数値を定める規則に基づいて数値を判定する。
【0045】例えば、ある物品の包装形態が内容物と包装物とが密着した密着包装であるという情報を得た場合、予め第3の記録手段に記録されている密着包装に分類される商品に与えられるC(1)という値を、当該物品の包装形態対応数値Cpとして判定する。包装形態対応数値Cpは熱抵抗又は比熱に対応する数値であり、単位重量あたりの冷えにくさを表している。
【0046】22は包装形態情報に対応する数値と商品名に対応する重量情報との積の合計を求める演算手段(図3参照)である。演算手段22は、データ解析手段19から重量情報を受信し、数値判定手段21から包装形態対応数値Cpを受信すると、包装形態対応数値Cpと質量の積を求める。包装形態対応数値Cpと質量の積は、熱容量に対応する数値であり、各商品の冷えにくさを表している。演算手段22は、全ての商品について包装形態対応数値Cpと質量の積を求めた後、全ての商品の包装形態対応数値Cpと質量の積を合計し、合計値Xとして後述する予冷温度判定手段に送信する。合計値Xは貯蔵室3に収納される商品の熱負荷に対応する数値である。
【0047】23は第4の記録手段(図3参照)であり、図5に示すような上記の合計値Xに対するメンバシップ関数M1(X)、M2(X)、M3(X)を記録しており、またメンバシップ関数M1(X)、M2(X)、M3(X)のそれぞれに対する温度下げ幅ΔT1、ΔT2、ΔT3、及び、冷蔵室扉または冷凍室扉開閉時の温度上昇に対応する温度下げ幅ΔT4を記録している。予冷温度判定手段24は、メンバシップ関数およびメンバシップ関数に対する温度下げ幅を参照し、下記式1から温度下げ幅ΔTを決定する。
【0048】[数1]
ΔT=(ΔT1×M1(X)+ΔT2×M2(X)+ΔT3×M3(X))/(M1(X)+M2(X)+M3(X))+ΔT4・・・式1
上記の説明ではメンバシップ関数から温度下げ幅ΔTを決定しているが,合計値Xから温度下げ幅ΔTを直接決定するような関数又は対応表を用いてもよい。
【0049】予冷温度判定手段24は、入力手段10から入力された冷凍室設定温度TFSETに対し、下記式2から予冷設定温度TSET2を決定する。
【0050】[数2]
TFSET2=TFSET-ΔT・・・式2
また、予冷温度判定手段24は、予冷設定温度TFSET2に対して所定の温度だけ高い予冷上限温度TFH2と、予冷設定温度TFSET2に対して所定の温度だけ低い予冷上限温度TFL2とを決定する。
【0051】25は予冷運転制御手段(図3参照)である。予冷運転制御手段25は、第1の記録手段11に記録されている冷凍室設定温度TFSETを、予冷設定温度TFSET2に置換し、冷凍室上限温度TFHを、予冷上限温度TFH2に置換し、冷凍室下限温度TFLを、予冷下限温度TFL2に置換し、運転制御手段15を介して予冷運転制御を行う。」
(カ)「【0056】S22において、運転制御手段15は、圧縮機4と冷蔵室用ファン34とを停止し、S23に進む。S23において、予冷運転制御手段25が予冷解除信号を受信している場合、物品の収納が始まったものとして予冷運転は終了する。予冷運転制御手段25が予冷解除信号を受信していない場合にはS11に戻る。予冷運転終了後、予冷運転制御手段25は第1の記録手段に記録されている予冷設定温度TFSET2を冷凍室設定温度TFSETに置換し、予冷上限温度TFH2を冷凍室上限温度TFHに置換し、予冷下限温度TFL2を冷凍室下限温度TFLに置換し、図6に示すような通常の運転制御を運転制御手段15に行わせる。」
(キ)「【図1】
[図:0001439174000005.jpg]
」
(ク)「【図3】
[図:0001439174000006.jpg]
」
(ケ)上記(ウ)の段落【0025】には圧縮機4は冷凍室用蒸発器32を含む冷凍サイクル8を構成することが記載されており、上記(エ)の段落【0031】には運転制御手段15が圧縮機4及び冷凍室用ファン35の制御を行うことが記載されており、上記(オ)の段落【0051】には予冷運転制御手段25が運転制御手段15を介して予冷運転制御をおこなうことが記載されており、上記(カ)の【0056】には予冷運転終了後に通常の運転制御を運転制御手段15に行わせることが記載されていることを踏まえると、運転制御手段15及び予冷運転制御手段25は冷蔵庫1の冷凍室3の庫内の温度を制御するものであるといえる。
(コ)上記(ア)の段落【0016】、上記(イ)の段落【0018】、上記(オ)の段落【0041】~【0051】の記載事項及び上記(キ)の図1及び上記(ク)の図3の図示事項から、冷蔵庫利用者が、販売店で物品を購入して会計を済ませる際、利用者が、冷蔵庫の冷凍室に収納する物品を指定すると、会計装置16から物品情報205が冷蔵庫側屋内通信装置18に送信され、物品情報205に基づく情報が、データ解析手段19、数値判定手段21、演算手段22、予冷温度判定手段24等で処理されて、予冷運転制御手段25に送られ、予冷運転制御手段25は運転制御手段15を介して予冷運転制御を行うことが理解できる。したがって、予冷運転制御手段25は販売店の会計装置16から送信される購入された物品の物品情報205に基づいて予冷運転制御を実行するといえる。
(サ)上記(ア)~(コ)を踏まえると、甲第2号証には、次の「甲2発明」及び「甲2記載事項」が記載されているものと認められる。
<甲2発明>
「冷凍室3の庫内の温度を制御する運転制御手段15及び予冷運転制御手段25を備え、
予冷運転制御手段25は、予冷解除ボタン44が押されたとき、予冷解除信号を受信し予冷運転を終了し、運転制御手段15に通常の運転制御を実施させ、
予冷運転制御手段25は販売店の会計装置16から送信される購入された物品の物品情報205に基づいて予冷運転制御を実行する、冷蔵庫1。」
<甲2記載事項>
「販売店の会計装置16から送信される購入された物品の物品情報205に基づいて冷蔵庫1の予冷運転制御を実行すること。」
ウ 甲第3号証について
甲第3号証には以下の事項が記載されている。
(ア)「【0011】
このような考察から、家庭に不要品持ち込まない事前対策の一つとしてユーザの衝動買いを防ぐことは有効であり、こういった衝動買いを防ぐためには、もし不要品が事前に何らかの方法で分かり、しかもそれを入手しようとする状況が検出できた場合に、前記不要品を購入しないように警告できる技術が必要となる。
【0012】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することであって、不要品を自動的に検出することができる不要品判断方法を提供するとともに、該不要品判断方法を利用して、さらにユーザが不要品を入手しようとしているときに不要品を購入しないようにただちにユーザに警告することができる物品管理システムを提供することにある。」
(イ)「【0052】
不変属性情報を物品データベース803に取り込む有効な方法の一つが、タグシステムを利用する方法である。昨今、商品にタグをつけて在庫管理の手間を省くなどの業務効率化の実証実験があちこちで実施されている状況を鑑みるに、商品にタグを付けて販売する状況が遠い未来ではなく、にわかに現実味を帯びてきている。もし、こういった状況を想定した場合は、物品に付与されたタグTに前記物品の属性情報を記載し、一方で物品を管理する空間内での物品持ち込み部(例えば、食料の場合には冷蔵庫若しくは食品保管用ラック若しくは電子レンジ若しくはオーブン若しくはごみ箱など、食器や調理器具などの場合には食器棚など、食料や食器や調理器具などの場にはキッチンのシンク若しくは食卓若しくは調理台若しくはガスコンロなど)に前記タグリーダRを設置しておくことで、物品を持ち込んだ時に、タグリーダRで前記持ち込み物品に付与されたタグTを自動的に読み込むことにより、前記持ち込み物品の属性情報を自動的に簡単に取り込むことができる。この際、物品に付与するタグTへの属性情報の保持の仕方として、タグ内部に情報を書き込むためのメモリを格納しているタイプ、タグの内部には他のタグとの区別用番号のみを格納し、前記番号に関する情報を他に格納することで間接的にタグの情報を得るタイプ、の2通りがあるが、どちらを用いてもかまわない。」
(ウ)「【0141】
例えば、先ほど例として示したタグリーダ804R付きカート804Cを使う場合では、タグリーダ804R付きカート804Cが実際に普及しないと実現が困難である。従ってタグリーダ804R付きカート804C及びタグT付き物品69が普及するまでの間でも物品入手検出ができる他の例として、物品入手をしようとしていることを間接的に検知してユーザに警告する方法を使っても良い。「物品入手を間接的に検知する」とは、例えばユーザが物品を入手できる場所としてのスーパーマーケットやデパートに入ったことを検知することである。この実現形態としては様々な方法が考えられるが、典型的にはGPSやICカードなどを用いるとよい。例えば、GPSを用いる方法では、予めユーザが所有するGPS付き携帯端末(図示せず)に、物品を入手できる場所と、前記場所の位置情報をペアにして物品入手場所データベースとして登録しておく。一方、前記携帯端末では、所定の時間間隔でGPSによって位置情報を取得し、前記取得した位置情報と略一致する場所があるかどうかを前記物品入手場所データベースを参照して調べる。もし一致する場所があれば、ユーザは物品を入手できる場所に来ているとみなし、前記携帯端末に不必要物品のリストを表示するようにすればよい。なお、前記GPS付き携帯端末はカー・ナビゲーション・システムで代用してもよい。さらには、その場合は、カー・ナビゲーション・システムのルート検索機能を使って目的地が物品入手場所データベースに登録されている場所のいずれかに指定された場合に、その時点から目的地に到着するまでの適当な時間に不必要物品のリストをカー・ナビゲーション・システムの画面に表示しても構わない。」
(エ)上記(イ)の段落【0052】の「例えば、食料の場合には冷蔵庫」との記載、及び、上記(ウ)の段落【0141】の「例えばユーザが物品を入手できる場所としてのスーパーマーケット」との記載より、上記(ア)の段落【0012】に記載された「物品管理システム」が対象としている物品には、冷蔵庫に収納される食料が含まれることが理解できる。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、甲第3号証には、次の「甲3記載事項」が記載されているものと認められる。
<甲3記載事項>
「予めユーザが所有するGPS付き携帯端末に、ユーザが冷蔵庫に収納される食料を入手できる場所と、前記場所の位置情報をペアにして物品入手場所データベースとして登録しておき、冷蔵庫に収納される食料を入手できる場所に入ったことを検知して不要品を購入しないようにユーザに警告することができる物品管理システム。」
エ 甲第4号証について
甲第4号証には以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯端末器の現在位置が検出できる位置検索システムを用いて、携帯端末器を所持する契約ユーザに対して、契約ユーザの日常活動に連動して住戸内に設置された生活設備機器を制御できるようにした連動制御システムに関する。」
(イ)「【0036】ここで屋内通信ネットワーク5に接続された生活設備機器5aには、エアコン、照明器具、家電製品、事務機器、電子錠や防犯機器などのセキュリティ機器などが含まれる。これらの生活設備機器5aは、組込み型インターネット接続用のマイクロデバイスが内蔵されており、インターネットLに接続できる。」
(ウ)「【0039】すなわち、携帯端末器1を所持する契約ユーザが移動してある地点に到達すると、移動位置検索システム21は、その位置に関する情報を遠隔制御監視サーバ4に送信し、遠隔制御監視サーバ4は、この位置情報と契約ユーザデータベース4aとを照合して、機器を制御すべき条件に合致すれば、その契約ユーザの住宅の屋内通信ネットワーク5へ機器制御用の信号を送信する。
【0040】この契約ユーザデータベース4aには、契約ユーザごとに区分されたもので、例えば、「携帯端末器1が○○地点に到達したことを検出すれば、××機器5aを作動させる」といった連動制御条件が予め設定登録されている。」
(エ)「【0042】このようなサービスにより、契約ユーザが会社帰りに最寄駅を通過した時点でエアコンを自動的に作動させ、さらにその5分後電子錠を自動的に解錠させたり照明をつけたりすることができる。これにより一人住まいのユーザなどは、自ら鍵をあけることなく快適な環境の自宅に帰宅することができる。」
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、甲第4号証には、次の「甲4記載事項」が記載されているものと認められる。
<甲4記載事項>
「携帯端末器1を所持する契約ユーザが移動してある地点に到達すると、移動位置検索システム21は、その位置に関する情報を遠隔制御監視サーバ4に送信し、遠隔制御監視サーバ4は、この位置情報と契約ユーザデータベース4aとを照合して、「携帯端末器1が○○地点に到達したことを検出すれば、××機器5aを作動させる」といった連動制御条件に合致すれば、その契約ユーザの住宅の屋内通信ネットワーク5へ機器制御用の信号を送信する、契約ユーザの日常活動に連動して住戸内に設置されたエアコン、照明器具、家電製品、事務機器、電子錠や防犯機器などのセキュリティ機器などの生活設備機器を制御できるようにした連動制御システム。」
(2)理由1(進歩性)について
ア 甲1発明を主とした場合
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「冷蔵庫1」、「冷蔵庫1に内蔵された制御装置2」は、それぞれ本件発明1の「冷蔵庫」、「制御部」に相当する。
また、上記(1)ア(オ)の段落【0046】には情報端末8がユーザが所持する位置検出機能を搭載していることが記載されており、上記(1)ア(カ)の段落【0049】には情報端末8の位置検出部90が情報端末8の位置を検出することが記載されているから、甲1発明の「位置検出部90から受け取った検出情報」は、本件発明1の「ユーザの位置情報」に相当し、甲1発明の「位置検出部90から受け取った検出情報と予冷要求信号とを含む位置情報を生成して位置情報送信部88に送り、位置情報送信部88は、位置情報生成部87から受け取った位置情報を制御装置2に送信し、制御装置2は、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知され」た場合に設定される、「庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度」は、本件発明1の「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度」に相当する。
また、甲1発明において、「庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令」を送信した後に「庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令」が生成され、かつ、「第二の設定温度」は「第一の設定温度」より低いから、甲1発明における「庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令」により行われる制御は、本件発明1の「庫内の温度が高くなる第1の制御」に相当する。そして、甲1発明の「庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令」により行われる制御は、本件発明1の「庫内の温度が低くなる第2の制御」に相当する。
さらに、甲1発明において、「庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令」を送信した後に「庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令」が生成されるから、「庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令」により行われる制御(第2の制御)の直後に「庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令」により行われる制御(第1の制御)が行われることは明らかであり、甲1発明の「前記制御装置2は、庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令を冷蔵庫1に送信した後」、「庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令を生成して、冷蔵庫1に送信」することは、本件発明1の「第2の制御の直後に第1の制御を実行する」ことに相当するといえる。
そして制御装置2(制御部)により行われる庫内の温度の制御に関し、甲1発明においては、「庫内の温度を第一の設定温度にする制御命令」により行われる制御(第1の制御)が、「冷蔵庫1の扉の開扉を検知した場合」に行われるものである一方、本件発明1においては、第1の制御が、「ユーザの位置情報」に基づいて行われるものであるから、甲1発明と本件発明1は、「制御部は、ユーザの行動に関連する情報に基づいて、第1の制御を実行」するという点において一致する。
さらに、甲1発明においては、「庫内の温度を第二の設定温度にする制御命令」により行われる制御(第2の制御)が、「ユーザが購入した物品の中に保存温度が冷蔵または冷凍のものがある場合」に「情報端末8の位置(位置検出部90から受け取った検出情報)が自宅から限られた範囲内である」ことに基づいて行われる一方、本件発明1においては、第2の制御が、「ユーザの位置情報」と「食品を購入する場所」とに基づいて行われるから、甲1発明と本件発明1は、「制御部は、ユーザの位置情報と、食品に関連する情報とに基づいて、第2の制御を実行」するという点において一致する。
以上をまとめると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点1において一致し、次の相違点1~3において相違する。
<一致点1>
「庫内の温度を制御する制御部を備え、
制御部は、ユーザの行動に関連する情報に基づいて、ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも庫内温度が高くなる第1の制御を実行し、
制御部は、ユーザの位置情報と、食品に関連する情報とに基づいて、庫内の温度が低くなる第2の制御を実行し、
前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する、冷蔵庫。」
<相違点1>
「庫内温度が高くなる第1の制御」に関し、本件発明1は「ユーザの位置情報」に基づいて制御を行うであるが、甲1発明は「冷蔵庫1の扉の開扉」に基づいて制御を行うものである点。
<相違点2>
「庫内の温度が低くなる第2の制御」に関し、本件発明1は、「前記制御部は、ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録」し、「ユーザの位置情報」と「食品を購入する場所」に基づいて制御を行うものであるが、甲1発明は、ユーザが購入した物品の中に保存温度が冷蔵または冷凍のものがある場合に、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であると、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にするものである点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑みて相違点2について検討する。
甲2記載事項である「販売店の会計装置16から送信される購入された物品の物品情報205に基づいて冷蔵庫1の予冷運転制御を実行すること。」から、甲第2号証には「食品を購入する場所から送信される情報」に基づいて庫内の温度が低くなる制御を行うことが記載されているといえるが、「ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録し」、当該「食品を購入する場所」に基づいて庫内の温度が低くなる制御を行うことは記載も示唆もされていない。
また、甲3記載事項から、甲第3号証には「冷蔵庫に収納される食料を入手できる場所」すなわち「食品を購入する場所」に基づいて警告を行うことが記載されているといえるが、この「食品を購入する場所」は不要品を購入しないようにユーザに警告のために使用される情報であり、庫内の温度が低くなる制御のために用いるようにする動機はない。
また、甲4記載事項から、甲第4号証には「位置情報」と「特定の場所」に基づいて「生活設備機器」の制御を行うことが記載されているといえるが、「ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録し」、当該「食品を購入する場所」に基づいて庫内温度が低くなる制御を実行することは記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1の相違点2に係る構成は、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項並びにその他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項並びにその他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1の構成を全て包含する本件発明3、4も同様に、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項並びにその他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲2発明を主とした場合
(ア)本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「運転制御手段15及び予冷運転制御手段25」、「冷蔵庫1」は、それぞれ本件発明1の「制御部」、「冷蔵庫」に相当する。
また、甲2発明における「予冷運転制御を実行」することは、本件発明1の「庫内の温度が低くなる第2の制御を実行」することに相当する。
さらに、甲2発明における「予冷運転を終了し、運転制御手段15に通常の運転制御を実施」させることは、本件発明1の「第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御を実行」することに相当する。
また、甲2発明においては、「予冷運転を終了し、運転制御手段15に通常の運転制御を実施」させる制御(第1の制御)は「予冷解除ボタン44が押された」ことに基づいて行われるものである一方、本件発明1においては、第1の制御は「ユーザの位置情報」に基づいて行われるものであり、甲2発明と本件発明1は、「ユーザの行動に関連した情報に基づいて、第1の制御を実行」する点において一致する。
また、甲2発明において「予冷運転制御を実行」する制御(庫内の温度が低くなる第2の制御)は、「販売店の会計装置16から送信される購入された物品の物品情報205」に基づいて行われるものである一方、本件発明1において第2の制御は「ユーザの位置情報」と「食品を購入する場所」に基づいて行われるから、甲2発明と本件発明1は、「食品に関連する情報に基づいて、第2の制御を実行」するという点において一致する。
また、甲2発明の「予冷運転制御手段25は、予冷解除ボタン44が押されたとき、予冷解除信号を受信し予冷運転を終了し、運転制御手段15に通常の運転制御を実施させ」ることは、本件発明1の「前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する」ことに相当する。
以上をまとめると、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点2において一致し、次の相違点4~6において相違する。
<一致点2>
「庫内の温度を制御する制御部を備え、
制御部は、ユーザの行動に関連する情報に基づいて、第2の制御で設定された温度よりも庫内温度が高くなる第1の制御を実行し、
制御部は、食品に関連する情報に基づいて、第2の制御を実行し、
前記第2の制御の直後に前記第1の制御を実行する、冷蔵庫。」
<相違点3>
「第1の制御」に関し、本件発明1は「ユーザの位置情報」に基づいて制御を行うであるが、甲2発明は「予冷解除ボタン44が押された」ことに基づいて制御を行うものである点。
<相違点4>
「第2の制御」に関し、本件発明1は、「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御」とされるとともに、「前記制御部は、ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録」し、「ユーザの位置情報と食品を購入する場所」に基づいて制御を行うものであるが、甲2発明は「販売店の会計装置16から送信される購入された物品の物品情報205」に基づいて制御を行うものである点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点4について検討する。
甲1記載事項の「ユーザが購入した物品の中に保存温度が冷蔵または冷凍のものがある場合」に「情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内である」ことに基づいて庫内の低くする制御を行うという構成から、甲第1号証には「ユーザの位置情報」と「食品に関連する情報」に基づいて庫内の温度を低くする制御を行うことが記載されているといえるが、「ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録し」、当該「食品を購入する場所」に基づいて庫内の温度を低くする制御を行うことは記載も示唆もされていない。
また、甲3記載事項から、甲第3号証には「冷蔵庫に収納される食料を入手できる場所」すなわち「食品を購入する場所」に基づいて警告を行う構成が記載されているといえるが、この「食品を購入する場所」は不要品を購入しないようにする警告のために使用される情報であり、庫内の温度が低くなる制御のために用いるようにする動機はない。
また、甲4記載事項から、甲第4号証には「位置情報」と「特定の場所」に基づいて「生活設備機器」の制御を行うことが記載されているといえるが、「ユーザからの指示に基づいて、マップにおける所定の範囲を、食品を購入する場所として登録し」、当該「食品を購入する場所」に基づいて「庫内の温度が低くなる」制御を実行することは記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1の相違点4に係る構成は、甲2発明及び甲第1、3~4号証に記載された事項並びにその他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲第1、3~4号証に記載された事項並びにその他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1の構成を全て包含する本件発明3、4も同様に、甲2発明及び甲第1、3~4号証に記載された事項並びにその他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
したがって、本件発明1、3~4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(3)理由2(サポート要件)について
上記第2の2(1)イに記載したように、本件発明1の「第1の制御」、「第2の制御」は、それぞれ特許明細書等に記載された予冷処理の中断又は中止、予冷処理に対応すると認められる。そして、本件発明1における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」との構成は特許明細書等の段落【0005】、【0072】~【0073】、【0089】、【0129】、図12等に記載されたものと認められ、また、「前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御を実行」するとの構成は特許明細書等の段落【0014】、【0040】、【0047】、【0058】、【0077】~【0079】、【0086】、図4等に記載されたものと認められる。
そして、上記第4の2(2)エに記載したように、本件発明1は課題を解決できると認識し得る範囲のものであり、本件発明1は特許明細書等の記載の範囲を超えるものではない。
したがって、本件発明1に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
(4)理由3(明確性)について
上記第2の2(1)イに記載したように、本件発明1の「第1の制御」、「第2の制御」は、それぞれ特許明細書等に記載された予冷処理の中断又は中止、予冷処理に対応すると認められる。
そして、本件発明1における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」との構成は特許明細書等の段落【0005】、【0072】~【0073】、【0089】、【0129】、図12等を踏まえれば不明確な点はなく、また、「前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御を実行」するとの構成は特許明細書等の段落【0014】、【0040】、【0047】、【0058】、【0077】~【0079】、【0086】、図4等を踏まえれば、技術的意味は明確でありこの構成に不明確な点はない。
したがって、本件発明1に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
(5)理由4(新規事項)について
上記第2の2(1)イに記載したように、本件発明1の「第1の制御」、「第2の制御」は、それぞれ特許明細書等に記載された予冷処理の中断又は中止、予冷処理に対応すると認められる。
そして、本件発明1における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」との構成は当初明細書等の段落【0005】、【0072】~【0073】、【0089】、【0129】、図12等に記載されたものと認められ、また、「前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御を実行」するとの構成は当初明細書等の段落【0014】、【0040】、【0047】、【0058】、【0077】~【0079】、【0086】、図4等に記載されたものと認められる。
してみると、本件発明1における「ユーザの位置情報に基づく温度設定がされた前の温度である第2の制御で設定された温度よりも前記庫内の温度が高くなる第1の制御」との構成及び「前記制御部は、前記ユーザの位置情報と、前記食品を購入する場所とに基づいて、前記庫内の温度が低くなる前記第2の制御を実行」するとの構成は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、当初明細書等に記載した事項との関係で新たな技術的事項を導入するものでもない。
したがって、本件発明1に係る特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては本件特許の請求項1、3~4に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項1、3~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。
これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700843