特許訂正審判
2020-390097
高強度鋼板を製造する方法およびこの方法により得られる鋼板
- 審判番号
- 2020-390097
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2016-575890外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月22日
- 審決日
- 2021年02月02日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】アルセロールミタル
- 【請求人代理人】特許業務法人川口國際特許事務所
- 分類
- P141 .851-Y (C21D) / P141 .853-Y (C21D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第126条第6項、特許法第126条第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6636962号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第6636962号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~15]、[16~23]について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6636962号は、2015年(平成27年)7月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年7月3日 国際事務局(IB))を国際出願日とする出願である特願2016-575890号の請求項1~23に係る発明について、令和1年12月27日に特許権の設定登録がされ、令和2年1月29日に特許掲載公報が発行されたものである。
そして、令和2年10月22日に本件訂正審判が請求されたものである。
第2 請求の趣旨、及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6636962号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを認める、との審決を求めるものであるが、審判請求書の第3頁6(3)アを参照すると、審判請求人は、一群の請求項ごとに訂正審判を請求していると認められるから、上記本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6636962号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~15]、[16~23]について訂正することを認める、との審決を求めることを意図したものと解するのが相当である。
そして、請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線部分は訂正箇所である。)
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「以下の工程: -」の記載を「以下の工程:- 0.5mmから2mmの間の厚さを有する圧延鋼板を得るための圧延による該鋼でできた圧延鋼板を調整する工程であって、当該圧延は熱間圧延及び冷間圧延を含む工程、-」に訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「該鋼でできた圧延鋼板を、鋼のAc3変態点を超えるが1000℃未満の焼鈍温度TAにおいて均熱化し、60秒から200秒の間焼鈍温度において維持することにより焼鈍して、焼鈍された鋼板を得る工程」の記載を「該圧延鋼板を、鋼のAc3変態点を超えるが1000℃未満の焼鈍温度TAにおいて均熱化し、60秒から200秒の間焼鈍温度において維持することにより焼鈍して、焼鈍された鋼板を得る工程」に訂正する。
3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
4 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16の「少なくとも10.0%の全伸びTEを有する鋼板であって、」の記載を「少なくとも10.0%の全伸びTEを有する鋼板であって、該鋼板は、0.5mmから2mmの間の厚さを有する熱間圧延及び冷間圧延された鋼板であり、」に訂正する。
第3 当審の判断
1 一群の請求項
訂正前の請求項2~15は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、また、訂正前の請求項17~23は、訂正前の請求項16を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項16に連動して訂正されるものであるから、本件訂正審判は、特許法第126条第3項に規定する、一群の請求項である請求項[1~15]、[16~23]ごとに請求されたものである。
2 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る「工程」が、「- 0.5mmから2mmの間の厚さを有する圧延鋼板を得るための圧延による該鋼でできた圧延鋼板を調整する工程であって、当該圧延は熱間圧延及び冷間圧延を含む工程」を含むことを限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
同様に、訂正後の請求項2ないし請求項15は、訂正後の請求項1に記載された「- 0.5mmから2mmの間の厚さを有する圧延鋼板を得るための圧延による該鋼でできた圧延鋼板を調整する工程であって、当該圧延は熱間圧延及び冷間圧延を含む工程」との記載を引用することにより、訂正後の請求項2ないし請求項15に係る発明において、「- 0.5mmから2mmの間の厚さを有する圧延鋼板を得るための圧延による該鋼でできた圧延鋼板を調整する工程であって、当該圧延は熱間圧延及び冷間圧延を含む工程」を含むものに限定するものであるから、訂正事項1の請求項2ないし請求項15に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項追加の有無について
本件特許についての願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項15】
圧延鋼板が圧延により調製され、圧延による圧延鋼板の調製が、熱間圧延および冷間圧延を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。」
「【0015】
圧延による鋼板の調製は、スラブの熱間圧延および任意に冷間圧延を含むことができる。」
「【0031】
こうした鋼を用いて、熱間圧延鋼板が製造される。こうした熱間圧延鋼板は、例えば2mmから5mmの間の厚みを有する。
【0032】
任意に、例えば0.5mmから2mmの間の厚みを有する冷間圧延鋼板を得るために、熱間圧延鋼板は冷間圧延される。当業者は、こうした熱間または冷間圧延鋼板を製造する方法を知っている。
【0033】
次に熱間または冷間圧延鋼板は、鋼板を焼鈍温度まで加熱することが可能な加熱ゾーン、焼鈍温度または焼鈍温度近傍に鋼板を維持することが可能な均熱化ゾーン、焼入れ温度QTまで鋼板を急速に冷却することが可能な冷却ゾーン、過時効温度PTまで鋼板を加熱することが可能な再加熱ゾーン、および過時効温度または過時効温度近傍に時間Ptの間鋼板を維持することが可能な過時効ゾーンを少なくとも備える、連続焼鈍ラインなどの連続熱処理ラインで熱処理される。任意に、過時効ゾーンは、少なくとも、亜鉛などの液体金属を含む溶融めっき浴および任意に合金化ゾーンを備える溶融めっきゾーンとすることができる。」
「【0038】
焼入れ前の組織が完全なオーステナイト系を所望される場合、焼鈍温度ATは鋼のAc3変態点を超えなければならないが、得られる組織の延性に好ましくないオーステナイト系結晶粒を過度に粗大化させないために、1000℃未満にとどまることが好ましい。
【0039】
いずれの場合も、鋼板を焼鈍温度に少なくとも60秒維持することが好ましいが、200秒を超える必要はない。」
これらの記載によると、本件明細書等には、焼鈍された鋼板を得る工程の前に、「- 0.5mmから2mmの間の厚さを有する圧延鋼板を得るための圧延による該鋼でできた圧延鋼板を調整する工程であって、当該圧延は熱間圧延及び冷間圧延を含む工程」を含みうることについて記載されているといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
訂正事項1によって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明(以下、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明15」という。)の技術的事項は減縮されており、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正発明1~15は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなくてはならないところ、本件訂正発明1~15が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見しない。
したがって、本件訂正発明1~15は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
3 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「該鋼でできた圧延鋼板を、鋼のAc3変態点を超えるが1000℃未満の焼鈍温度TAにおいて均熱化し、60秒から200秒の間焼鈍温度において維持することにより焼鈍して、焼鈍された鋼板を得る工程」の記載を「該圧延鋼板を、鋼のAc3変態点を超えるが1000℃未満の焼鈍温度TAにおいて均熱化し、60秒から200秒の間焼鈍温度において維持することにより焼鈍して、焼鈍された鋼板を得る工程」と訂正するものであり、上記訂正事項1により訂正後の請求項1に追加された「該鋼でできた圧延鋼板を調整する工程」との記載と整合を図り、「焼鈍された鋼板を得る工程」における記載を明瞭にするものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無について
訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1によって訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載との整合を図るための訂正にすぎないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内での訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえないから、特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。
4 訂正事項3について
(1)訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項15を削除するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項15を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内での訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)独立特許要件について
訂正事項3に係る訂正は、独立特許要件の判断の対象となる訂正前の特許請求の範囲の請求項15を削除するものであるから、特許法第126条第7項の要件は課されない。
5 訂正事項4について
(1)訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項16の「鋼板」が「該鋼板は、0.5mmから2mmの間の厚さを有する熱間圧延及び冷間圧延された鋼板」であることを限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
同様に、訂正後の請求項17ないし請求項23は、訂正後の請求項16に記載された「該鋼板は、0.5mmから2mmの間の厚さを有する熱間圧延及び冷間圧延された鋼板」との記載を引用することにより、訂正後の請求項17ないし請求項23に係る発明において、「該鋼板は、0.5mmから2mmの間の厚さを有する熱間圧延及び冷間圧延された鋼板」を含むものに限定するものであるから、訂正事項4の請求項17ないし請求項23に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加について
上記2(2)で摘記した本件明細書の【0031】~【0032】の記載を踏まえると、0.5mmから2mmの間の厚みを有する冷間圧延鋼板を得るために、熱間圧延鋼板は冷間圧延されることが読み取れるから、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無について
訂正事項4によって本件訂正後の特許請求の範囲の請求項16~23に係る発明(以下、「本件訂正発明16」~「本件訂正発明23」という。)の技術的事項は減縮されており、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項4に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正発明16~23は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなくてはならないところ、本件訂正発明16~23が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見しない。
したがって、本件訂正発明16~23は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項4に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、また同条第5ないし7項に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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