特許訂正審判
2020-390020
エンコーダ付シールリングの製造方法及びエンコーダ付シールリングを備えた転がり軸受の製造方法
- 審判番号
- 2020-390020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2007-191614
- 登録番号
- 特許第5082646号(P5082646)
- 請求日
- 2020年03月03日
- 審決日
- 2020年06月18日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】日本精工 株式会社
- 【請求人代理人】松山 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 小林 紀史
- 審判官 中澤 真吾
- 分類
- P141 .851-Y (G01D) / P141 .853-Y (G01D) / P141 .857-Y (G01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号特許法126条1項4号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5082646号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5082646号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5082646号(以下、「本件特許」という。)は、平成19年7月24日にされた特許出願(特願2007-191614)に係る特許であり、平成24年9月14日にその特許権の設定の登録がされた。
請求人は、令和2年3月3日に、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の訂正をすることについて訂正審判(以下、「本件審判」という。)を請求した。
第2 訂正の内容
1 訂正事項
本件審判の請求書(本件審判請求書)に記載された訂正事項は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2には「円輪状の磁性部材を構成する材料を、熱可塑性樹脂と磁性粉とを含有するプラスチック磁石材料とし、且つ、上記磁性部材を、内周部をゲートとしたディスクゲート方式又は外周部をゲートとしたリングゲート方式の、アキシアル方向の磁場射出成形により造る、請求項1に記載したエンコーダ付シールリングの製造方法。」とあるところ、請求項1を引用する発明を独立項形式に書き下し、また、「磁性粉」を「フェライト系磁性粉」に特定し、下記のように訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3及び4においても同様に訂正する。)。
【請求項2】
静止側周面に静止側軌道を有し、使用時にも回転しない静止輪と、回転側周面に回転側軌道を有し、使用時に回転する回転輪と、この回転側軌道と上記静止側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えた転がり軸受のうち、上記静止側周面と上記回転側周面との間に存在する、上記各転動体を設置した空間の端部開口を塞ぐ為に使用するシールリングと、上記回転輪の回転速度を検出する為に使用するエンコーダとを備え、このうちのシールリングは、少なくとも、上記回転側周面の軸方向端部に嵌合固定する、磁性金属製で円輪状の塞ぎ板を有するものであり、上記エンコーダは、永久磁石製で、全体を円輪状に形成すると共に、被検出面である軸方向外側面にN極とS極とを円周方向に関して交互に配置しており、且つ、上記塞ぎ板と同心に配置した状態で、軸方向内側面をこの塞ぎ板の軸方向外側面に接合固定しているエンコーダ付シールリングの製造方法であって、上記塞ぎ板と、上記エンコーダを造る為の中間素材である、上記被検出面に配置すべきN極及びS極の着磁を行なっていない、円輪状の磁性部材とを、それぞれ別体として造り、その後、上記塞ぎ板を、第一の治具に対して動かない様に固定し、且つ、上記磁性部材を、第二の治具に対して動かない様に固定すると共に、上記第一の治具の一部に形成した第一のガイド部と、上記第二の治具の一部に形成した第二のガイド部とを、互いに係合させる事により、上記塞ぎ板と上記磁性部材との中心軸同士を一致させた状態で、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とを対向させると共に、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とのうちの何れか一方の側面に、室温での接着接合が可能な室温硬化型接着剤を塗布し、更に、この状態で、上記両ガイド部同士の係合部をスライドさせつつ、上記両治具同士を互いに近づけ合う事に基づいて、上記塞ぎ板と上記磁性部材との中心軸同士の一致状態を保持したまま、これら塞ぎ板と磁性部材とを互いに近づけ合う事により、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とを接触させ、更に、この接触状態を圧接状態で放置する事により、上記両側面同士の間に存在する、上記室温硬化型接着剤を室温で硬化させる事で、これら両側面同士を、この室温硬化型接着剤により接合固定し、その後、この磁性部材に上記被検出面に配置すべきN極及びS極の着磁を行なう事により上記エンコーダを完成させ、上記円輪状の磁性部材を構成する材料を、熱可塑性樹脂とフェライト系磁性粉とを含有するプラスチック磁石材料とし、且つ、上記磁性部材を、内周部をゲートとしたディスクゲート方式又は外周部をゲートとしたリングゲート方式の、アキシアル方向の磁場射出成形により造る、エンコーダ付シールリングの製造方法。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3には「請求項1~2のうち何れか1項に記載した」とあるところ、請求項2を引用し、請求項1を引用しない発明に特定し、「請求項2に記載した」と訂正する(請求項3を直接的に引用する請求項4においても同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項4には、「請求項1~3のうち何れか1項に記載した」とあるところ、請求項1を引用せず、請求項2又は3を引用する発明に特定し、「諸求項2又は3に記載した」と訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落0012の「請求項1~3に記載」との記載を「請求項2~3に記載」と訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落0015の「磁性粉」との記載を「フェライト系磁性粉」と訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落0016の「請求項1~3」との記載を「請求項2~3」に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落0055の「実施例2」との記載を「参考例2」に訂正し、段落0058の「実施例2」との記載を「参考例2」に訂正し、段落0056の表1の「実施例2」を下記のとおり「参考例2」に訂正する。
2 訂正前後の特許請求の範囲の記載
訂正前後の特許請求の範囲の記載は、具体的には以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示すために当合議体が付した。
なお、以下では、訂正前の請求項1ないし請求項4に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明4」といい、訂正後の請求項1ないし請求項4に係る発明を「訂正発明1」ないし「訂正発明4」という。
(1)訂正前
「【請求項1】
静止側周面に静止側軌道を有し、使用時にも回転しない静止輪と、回転側周面に回転側軌道を有し、使用時に回転する回転輪と、この回転側軌道と上記静止側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えた転がり軸受のうち、上記静止側周面と上記回転側周面との間に存在する、上記各転動体を設置した空間の端部開口を塞ぐ為に使用するシールリングと、上記回転輪の回転速度を検出する為に使用するエンコーダとを備え、このうちのシールリングは、少なくとも、上記回転側周面の軸方向端部に嵌合固定する、磁性金属製で円輪状の塞ぎ板を有するものであり、上記エンコーダは、永久磁石製で、全体を円輪状に形成すると共に、被検出面である軸方向外側面にN極とS極とを円周方向に関して交互に配置しており、且つ、上記塞ぎ板と同心に配置した状態で、軸方向内側面をこの塞ぎ板の軸方向外側面に接合固定しているエンコーダ付シールリングの製造方法であって、上記塞ぎ板と、上記エンコーダを造る為の中間素材である、上記被検出面に配置すべきN極及びS極の着磁を行なっていない、円輪状の磁性部材とを、それぞれ別体として造り、その後、上記塞ぎ板を、第一の治具に対して動かない様に固定し、且つ、上記磁性部材を、第二の治具に対して動かない様に固定すると共に、上記第一の治具の一部に形成した第一のガイド部と、上記第二の治具の一部に形成した第二のガイド部とを、互いに係合させる事により、上記塞ぎ板と上記磁性部材との中心軸同士を一致させた状態で、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とを対向させると共に、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とのうちの何れか一方の側面に、室温での接着接合が可能な室温硬化型接着剤を塗布し、更に、この状態で、上記両ガイド部同士の係合部をスライドさせつつ、上記両治具同士を互いに近づけ合う事に基づいて、上記塞ぎ板と上記磁性部材との中心軸同士の一致状態を保持したまま、これら塞ぎ板と磁性部材とを互いに近づけ合う事により、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とを接触させ、更に、この接触状態を圧接状態で放置する事により、上記両側面同士の間に存在する、上記室温硬化型接着剤を室温で硬化させる事で、これら両側面同士を、この室温硬化型接着剤により接合固定し、その後、この磁性部材に上記被検出面に配置すべきN極及びS極の着磁を行なう事により上記エンコーダを完成させる、エンコーダ付シールリングの製造方法。
【請求項2】
円輪状の磁性部材を構成する材料を、熱可塑性樹脂と磁性粉とを含有するプラスチック磁石材料とし、且つ、上記磁性部材を、内周部をゲートとしたディスクゲート方式又は外周部をゲートとしたリングゲート方式の、アキシアル方向の磁場射出成形により造る、請求項1に記載したエンコーダ付シールリングの製造方法。
【請求項3】
エンコーダを完成させるべく、円輪状の磁性部材を自身の中心軸を中心として回転させながら、着磁装置を構成する回転しない着磁ヨークにより、上記磁性部材の軸方向外側面にN極とS極との組を1組ずつ、円周方向に関して順次着磁形成する、請求項1~2のうちの何れか1項に記載したエンコーダ付シールリングの製造方法。
【請求項4】
転がり軸受と、エンコーダ付シールリングとを備え、
このうちの転がり軸受は、静止側周面に静止側軌道を有し、使用時にも回転しない静止輪と、回転側周面に回転側軌道を有し、使用時に回転する回転輪と、この回転側軌道と上記静止側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
上記エンコーダ付シールリングは、上記静止側周面と上記回転側周面との間に存在する、上記各転動体を設置した空間の端部開口を塞ぐ為に使用するシールリングと、上記回転輪の回転速度を検出する為に使用するエンコーダとを備え、このうちのシールリングは、少なくとも、上記回転側周面の軸方向端部に嵌合固定する、磁性金属製で円輪状の塞ぎ板を有するものであり、上記エンコーダは、永久磁石製で、全体を円輪状に形成すると共に、被検出面である軸方向外側面にN極とS極とを円周方向に関して交互に配置しており、且つ、上記塞ぎ板と同心に配置した状態で、軸方向内側面をこの塞ぎ板の軸方向外側面に接合固定している、
エンコーダ付シールリングを備えた転がり軸受の製造方法であって、
上記エンコーダ付シールリングを、請求項1~3のうちの何れか1項に記載したエンコーダ付シールリングの製造方法によって製造した後、このエンコーダ付シールリングを構成する上記塞ぎ板を、上記回転側周面の軸方向端部に嵌合固定する、エンコーダ付シールリングを備えた転がり軸受の製造方法。」
(2)訂正後
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
静止側周面に静止側軌道を有し、使用時にも回転しない静止輪と、回転側周面に回転側軌道を有し、使用時に回転する回転輪と、この回転側軌道と上記静止側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えた転がり軸受のうち、上記静止側周面と上記回転側周面との間に存在する、上記各転動体を設置した空間の端部開口を塞ぐ為に使用するシールリングと、上記回転輪の回転速度を検出する為に使用するエンコーダとを備え、このうちのシールリングは、少なくとも、上記回転側周面の軸方向端部に嵌合固定する、磁性金属製で円輪状の塞ぎ板を有するものであり、上記エンコーダは、永久磁石製で、全体を円輪状に形成すると共に、被検出面である軸方向外側面にN極とS極とを円周方向に関して交互に配置しており、且つ、上記塞ぎ板と同心に配置した状態で、軸方向内側面をこの塞ぎ板の軸方向外側面に接合固定しているエンコーダ付シールリングの製造方法であって、上記塞ぎ板と、上記エンコーダを造る為の中間素材である、上記被検出面に配置すべきN極及びS極の着磁を行なっていない、円輪状の磁性部材とを、それぞれ別体として造り、その後、上記塞ぎ板を、第一の治具に対して動かない様に固定し、且つ、上記磁性部材を、第二の治具に対して動かない様に固定すると共に、上記第一の治具の一部に形成した第一のガイド部と、上記第二の治具の一部に形成した第二のガイド部とを、互いに係合させる事により、上記塞ぎ板と上記磁性部材との中心軸同士を一致させた状態で、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とを対向させると共に、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とのうちの何れか一方の側面に、室温での接着接合が可能な室温硬化型接着剤を塗布し、更に、この状態で、上記両ガイド部同士の係合部をスライドさせつつ、上記両治具同士を互いに近づけ合う事に基づいて、上記塞ぎ板と上記磁性部材との中心軸同士の一致状態を保持したまま、これら塞ぎ板と磁性部材とを互いに近づけ合う事により、これら塞ぎ板の軸方向内側面と磁性部材の軸方向外側面とを接触させ、更に、この接触状態を圧接状態で放置する事により、上記両側面同士の間に存在する、上記室温硬化型接着剤を室温で硬化させる事で、これら両側面同士を、この室温硬化型接着剤により接合固定し、その後、この磁性部材に上記被検出面に配置すべきN極及びS極の着磁を行なう事により上記エンコーダを完成させ、上記円輪状の磁性部材を構成する材料を、熱可塑性樹脂とフェライト系磁性粉とを含有するプラスチック磁石材料とし、且つ、上記磁性部材を、内周部をゲートとしたディスクゲート方式又は外周部をゲートとしたリングゲート方式の、アキシアル方向の磁場射出成形により造る、エンコーダ付シールリングの製造方法。
【請求項3】
エンコーダを完成させるべく、円輪状の磁性部材を自身の中心軸を中心として回転させながら、着磁装置を構成する回転しない着磁ヨークにより、上記磁性部材の軸方向外側面にN極とS極との組を1組ずつ、円周方向に関して順次着磁形成する、請求項2に記載したエンコーダ付シールリングの製造方法。
【請求項4】
転がり軸受と、エンコーダ付シールリングとを備え、
このうちの転がり軸受は、静止側周面に静止側軌道を有し、使用時にも回転しない静止輪と、回転側周面に回転側軌道を有し、使用時に回転する回転輪と、この回転側軌道と上記静止側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
上記エンコーダ付シールリングは、上記静止側周面と上記回転側周面との間に存在する、上記各転動体を設置した空間の端部開口を塞ぐ為に使用するシールリングと、上記回転輪の回転速度を検出する為に使用するエンコーダとを備え、このうちのシールリングは、少なくとも、上記回転側周面の軸方向端部に嵌合固定する、磁性金属製で円輪状の塞ぎ板を有するものであり、上記エンコーダは、永久磁石製で、全体を円輪状に形成すると共に、被検出面である軸方向外側面にN極とS極とを円周方向に関して交互に配置しており、且つ、上記塞ぎ板と同心に配置した状態で、軸方向内側面をこの塞ぎ板の軸方向外側面に接合固定している、
エンコーダ付シールリングを備えた転がり軸受の製造方法であって、
上記エンコーダ付シールリングを、請求項2又は3に記載したエンコーダ付シールリングの製造方法によって製造した後、このエンコーダ付シールリングを構成する上記塞ぎ板を、上記回転側周面の軸方向端部に嵌合固定する、エンコーダ付シールリングを備えた転がり軸受の製造方法。」
第3 当合議体の判断
1 訂正の目的について
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載から「請求項1に記載した」という記載を削除し、訂正前の請求項2の記載に訂正前の請求項1の記載を実質的にそのまま追加して、訂正後の請求項2の記載とする訂正(以下、「訂正事項2A」という。)と、訂正前の請求項2の「磁性粉」という記載を、「フェライト系磁性粉」という記載に変更して、訂正後の請求項2の記載とする訂正(以下、「訂正事項2B」という。)との2つの訂正事項を含む。
イ 訂正事項2Aは、訂正前の請求項1の記載を引用することによって訂正前の請求項2に記載されていた事項を、そのまま具体的に書き表して訂正後の請求項2の記載とする訂正であるから、訂正前の請求項2の記載のうち、訂正前の請求項1の記載を引用する部分について、その記載の内容を変更することなく、訂正前の請求項1の記載を引用しないものとする訂正である。
したがって、訂正事項2Aは、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる事項(いわゆる引用関係の解消)を目的とする訂正である。
ウ 訂正事項2Bは、訂正前の請求項2の「磁性粉」という記載に、磁性粉の主成分を特定する「フェライト系」という記載を追加し、磁性粉の種類を限定して、訂正後の請求項2の「フェライト系磁性粉」という記載とする訂正である。
したがって、訂正事項2Bは、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3の「請求項1~2のうちの何れか1項に記載した」という記載を、「請求項2に記載した」という記載に変更して、訂正後の請求項3の記載とする訂正である。
これは、訂正前の請求項1又は請求項2の記載を引用する訂正前の請求項3の記載を、訂正後の請求項2の記載を引用するものに変更して、訂正後の請求項3の記載とする訂正であるから、記載を引用する請求項の数を減らす訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4の「請求項1~3のうちの何れか1項に記載した」という記載を、「請求項2又は3に記載した」という記載に変更して、訂正後の請求項4の記載とする訂正である。
これは、訂正前の請求項1ないし請求項3のいずれかの記載を引用する訂正前の請求項4の記載を、訂正後の請求項2又は請求項3の記載を引用するものに変更して、訂正後の請求項4の記載とする訂正であるから、記載を引用する請求項の数を減らす訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。
(5)訂正事項5
訂正前の明細書の段落0012の「請求項1~3に記載した製造方法」という記載は、訂正前の請求項1が削除される結果、訂正後の特許請求の範囲には存在しない請求項に言及することになり、その記載の意味が不明瞭となる。
訂正事項5は、その記載を「請求項2~3に記載した製造方法」という記載に変更し、訂正後の特許請求の範囲には存在しない請求項に言及しないものとすることにより、訂正後の段落0012の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させてその意味を明瞭にする訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正である。
(6)訂正事項6
訂正前の明細書の段落0015の「請求項2に記載した発明の様に、上記円輪状の磁性部材を構成する材料を、熱可塑性樹脂と磁性粉とを含有するプラスチック磁石材料とする。」という記載は、訂正前の請求項2の「磁性粉」という記載が訂正後の請求項2の「フェライト系磁性粉」という記載になる結果、訂正後の請求項2の記載と整合しないことになり、その記載の意味が不明瞭となる。
訂正事項6は、その記載を「請求項2に記載した発明の様に、上記円輪状の磁性部材を構成する材料を、熱可塑性樹脂とフェライト系磁性粉とを含有するプラスチック磁石材料とする。」という記載に変更し、訂正後の請求項2の記載に即したものとすることにより、訂正後の段落0015の記載を訂正後の請求項2の記載と整合させてその意味を明瞭にする訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正である。
(7)訂正事項7
訂正前の明細書の段落0016の「請求項1~3に記載した製造方法」という記載は、訂正前の請求項1が削除される結果、訂正後の特許請求の範囲には存在しない請求項に言及することになり、その記載の意味が不明瞭となる。
訂正事項7は、その記載を「請求項2~3に記載した製造方法」という記載に変更し、訂正後の特許請求の範囲には存在しない請求項に言及しないものとすることにより、訂正後の段落0016の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させてその意味を明瞭にする訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正である。
(8)訂正事項8
訂正前の明細書の段落0056ないし段落0058には、「「実施例2」に係る」「エンコーダ付シールリング11」は30.6wt%のSrフェライトと56.9wt%のSm2Co17とを含む磁性粉(すなわち、フェライト系磁性粉ではない磁性粉)を使用して製造したものである旨の記載がある。この記載は、訂正前の請求項2の「磁性粉」という記載が訂正後の請求項2の「フェライト系磁性粉」という記載になる結果、訂正後の請求項2ないし請求項4に係る発明に含まれない態様を「実施例2」と称することになり、その記載の意味が不明瞭となる。
訂正事項8は、訂正前の明細書の段落0055、段落0056の表1及び段落0058の「実施例2」という記載を、「参考例2」という記載に変更し、訂正後の請求項2ないし請求項4に係る発明に含まれない態様を実施例から除外することにより、訂正後の明細書の段落0056ないし段落0058の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させてその意味を明瞭にする訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正である。
(9)訂正の目的についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とする訂正である。
2 新規事項の追加について
訂正事項1ないし訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、同条第5項の規定により、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
なお、以下では、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」ということがある。
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが明らかである。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項2A
訂正事項2Aは、前記1(2)イのとおり、訂正前の請求項1の記載を引用することによって訂正前の請求項2に記載されていた事項を、そのまま具体的に書き表して訂正後の請求項2の記載とする訂正であるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが明らかである。
イ 訂正事項2B
本件特許明細書には、次の記載がある。
「磁性粉としては、ストロンチウムフェライトやバリウムフェライト等のフェライト、ネオジウム-鉄-ボロン、サマリウム-コバルト、サマリウム-鉄-窒素等の希土類磁性粉を用いる事ができ、」(【0037】)
「磁性粉として、コスト、耐酸化性を考慮すると、フェライト系が最も好適である」(【0046】)
「磁性粉は、目標とする磁気特性、使用環境、コストで使い分けを行なう。目標とする磁気特性が、BHmaxで1.4~2.2MGOe程度であれば、ストロンチウムフェライト等のフェライト系磁性粉による対応で十分である。」(【0047】)
このように、本件特許明細書には、磁性粉としてフェライト系磁性粉が使用可能であることが記載されており、コスト及び耐酸化性の観点からはフェライト系磁性粉の使用が最も好ましいことが記載されている。また、磁性粉は、目標とする磁気特性、使用環境、コストで使い分けられるものであり、目標とする磁気特性がBHmaxで1.4~2.2MGOe程度であれば、フェライト系磁性粉で十分であることも記載されている。
訂正事項2Bは、本件特許明細書に記載されたこれらの事項に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3及び訂正事項4
訂正事項3及び訂正事項4は、記載を引用する請求項の数を減らす訂正であるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが明らかである。
(4)訂正事項5ないし訂正事項8
訂正事項5ないし訂正事項8は、訂正後の明細書の記載を、訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させる訂正である。そして、特許請求の範囲についての訂正(訂正事項1ないし訂正事項4)は、前記(1)ないし(3)のとおり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項5ないし訂正事項8も、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(5)新規事項の追加についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし訂正事項8は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
3 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更について
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかである。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項2A
訂正事項2Aは、前記1(2)イのとおり、訂正前の請求項1の記載を引用することによって訂正前の請求項2に記載されていた事項を、そのまま具体的に書き表して訂正後の請求項2の記載とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかである。
イ 訂正事項2B
訂正事項2Bは、前記1(2)ウのとおり、訂正前の請求項2の「磁性粉」という記載に、磁性粉の主成分を特定する「フェライト系」という記載を追加し、磁性粉の種類を限定して、訂正後の請求項2の「フェライト系磁性粉」という記載とする訂正である。
このように、「磁性粉」をその一種である「フェライト系磁性粉」に限定したからといって、訂正前の請求項2の目的に含まれない新たな目的を達成したり、訂正前の請求項2に係る発明の課題に含まれない新たな課題を解決したりすることになるとは認められない。
したがって、訂正事項2Bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項3及び訂正事項4
訂正事項3及び訂正事項4は、記載を引用する請求項の数を減らす訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかである。
(4)訂正事項5ないし訂正事項8
訂正事項5ないし訂正事項8は、訂正後の明細書の記載を、訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させる訂正である。そして、特許請求の範囲についての訂正(訂正事項1ないし訂正事項4)は、前記(1)ないし(3)のとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項5ないし訂正事項8も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(5)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4 独立特許要件について
前記1(1)ないし(4)のとおり、訂正事項1、訂正事項2のうちの訂正事項2B、訂正事項3及び訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、同条第7項の規定により、訂正発明1ないし訂正発明4は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、検討すると、以下のとおりである。
(1)訂正発明1
訂正発明1は、削除された訂正前の請求項1に係る発明であるから、実際には存在しない。
したがって、訂正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができるかを問うまでもない。
(2)訂正発明2ないし訂正発明4
訂正発明2は、特許を受けた発明である本件発明2の構成を全て含み、さらに「磁性粉」を「セラミック系磁性粉」に限定した発明であるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由を発見しない。
訂正発明3及び訂正発明4は、訂正発明2の構成を全て含むから、訂正発明2と同様に、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由を発見しない。
(3)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし訂正事項4は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第4 むすび
本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-390020