特許訂正審判
2020-390015
円筒ころ軸受及び工作機械用主軸装置
- 審判番号
- 2020-390015
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2003-113147
- 登録番号
- 特許第4239659号(P4239659)
- 請求日
- 2020年02月19日
- 審決日
- 2020年05月20日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】日本精工 株式会社
- 【請求人代理人】松山 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 平田 信勝
- 審判官 内田 博之
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P141 .851-Y (F16C) / P141 .852-Y (F16C) / P141 .853-Y (F16C) / P141 .854-Y (F16C) / P141 .855-Y (F16C) / P141 .856-Y (F16C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第6項、特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第4239659号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4239659号の明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4239659号(以下、「本件特許」という。)は、平成15年4月17日の出願であって、平成21年1月9日に特許権の設定登録がされ、令和2年2月19日に本件訂正審判の請求がされたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、審判請求書の請求の趣旨に記載されているとおり、特許第4239659号の明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その内容は次のとおりである。(審決注:下線部分が訂正箇所である。)
1 訂正事項1
明細書の【特許請求の範囲】の【請求項1】の
「内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、ころとからなるころ軸受において、
前記外輪が、該外輪を径方向に貫通して保持器の案内面に向かう補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、
前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ
前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とするころ軸受。」
との記載を
「内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、円筒ころとからなる円筒ころ軸受において、
前記外輪が、該外輪を径方向に貫通して保持器の案内面に向かう補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、
前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ
前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とする円筒ころ軸受。」
に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3及び4についても同様に訂正する。)。
2 訂正事項2
明細書の【特許請求の範囲】の【請求項2】の
「内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、ころとからなるころ軸受において、
前記外輪が、該外輪を径方向に貫通し、且つ前記ころの転動面に向けて開口する補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、
前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ
前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とするころ軸受。」
との記載を
「内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、円筒ころとからなる円筒ころ軸受において、
前記外輪が、該外輪を径方向に貫通し、且つ前記円筒ころの転動面に向けて開口する補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、
前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ
前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とする円筒ころ軸受。」
に訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3及び4についても同様に訂正する。)。
3 訂正事項3
明細書の【特許請求の範囲】の【請求項3】の
「請求項1または2に記載のころ軸受であって、前記軌道部材を形成する鋼は、合金成分としてCを0.2~1.2質量%、Siを0.4~1.5質量%、Moを0.5~1.5質量%、Crを0.5~2.0質量%、残部Fe及び不可避的不純物元素を含有し、且つ浸炭窒化処理が施されて、表面炭素濃度が0.8~1.3質量%、表面窒素濃度が0.2~0.8質量%であることを特徴とするころ軸受。」
との記載を
「請求項1または2に記載の円筒ころ軸受であって、前記軌道部材を形成する鋼は、合金成分としてCを0.2~1.2質量%、Siを0.4~1.5質量%、Moを0.5~1.5質量%、Crを0.5~2.0質量%、残部Fe及び不可避的不純物元素を含有し、且つ浸炭窒化処理が施されて、表面炭素濃度が0.8~1.3質量%、表面窒素濃度が0.2~0.8質量%であることを特徴とする円筒ころ軸受。」
に訂正する(請求項3を直接的に引用する請求項4についても同様に訂正する。)。
4 訂正事項4
明細書の【特許請求の範囲】の【請求項4】の
「主軸を支持するころ軸受がハウジング内に装着された工作機械用主軸装置であって、
前記ころ軸受が請求項1~3の何れか1項に記載のころ軸受であることを特徴とする工作機械用主軸装置。」
との記載を
「主軸を支持するころ軸受がハウジング内に装着された工作機械用主軸装置であって、
前記ころ軸受が請求項1~3の何れか1項に記載の円筒ころ軸受であることを特徴とする工作機械用主軸装置。」
に訂正する。
5 訂正事項5
明細書の【発明の名称】の「ころ軸受及び工作機械用主軸装置」との記載を
「円筒ころ軸受及び工作機械用主軸装置」に訂正する。
6 訂正事項6
明細書の段落【0013】の【課題を解決するための手段】の
「本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明は、内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、ころとからなるころ軸受において、前記外輪が、該外輪を径方向に貫通して保持器の案内面に向かう補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とするころ軸受である。」
との記載を
「本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明は、内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、円筒ころとからなる円筒ころ軸受において、前記外輪が、該外輪を径方向に貫通して保持器の案内面に向かう補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とする円筒ころ軸受である。」
に訂正する。
7 訂正事項7
明細書の段落【0016】の
「請求項2の発明は、内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、ころとからなるころ軸受において、前記外輪が、該外輪を径方向に貫通し、且つ前記ころの転動面に向けて開口する補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とするころ軸受である。請求項2の発明によると、グリースがころの転動面に供給される。」
との記載を
「請求項2の発明は、内輪及び外輪からなる鋼製の軌道部材と、前記外輪によって案内される保持器と、円筒ころとからなる円筒ころ軸受において、前記外輪が、該外輪を径方向に貫通し、且つ前記円筒ころの転動面に向けて開口する補給孔を備えるとともに、前記保持器を案内する案内面に浸炭窒化処理が施されており、前記保持器を形成する熱溶融可能な合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維のうち少なくとも何れか一つを強化繊維として含有し、且つ前記外輪に設けた前記補給孔を通じて外部から、一回当り軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02ccの補給量にて供給されるグリースにより潤滑されることを特徴とする円筒ころ軸受である。請求項2の発明によると、グリースが円筒ころの転動面に供給される。」
に訂正する。
8 訂正事項8
明細書の段落【0017】の
「請求項3の発明は、請求項1または2に記載のころ軸受であって、前記軌道部材を形成する鋼は、合金成分としてCを0.2~1.2質量%、Siを0.4~1.5質量%、Moを0.5~1.5質量%、Crを0.5~2.0質量%、残部Fe及び不可避的不純物元素を含有し、且つ浸炭窒化処理が施されて、表面炭素濃度が0.8~1.3質量%、表面窒素濃度が0.2~0.8質量%であることを特徴とするころ軸受である。」
との記載を
「請求項3の発明は、請求項1または2に記載の円筒ころ軸受であって、前記軌道部材を形成する鋼は、合金成分としてCを0.2~1.2質量%、Siを0.4~1.5質量%、Moを0.5~1.5質量%、Crを0.5~2.0質量%、残部Fe及び不可避的不純物元素を含有し、且つ浸炭窒化処理が施されて、表面炭素濃度が0.8~1.3質量%、表面窒素濃度が0.2~0.8質量%であることを特徴とする円筒ころ軸受である。」
に訂正する。
9 訂正事項9
明細書の段落【0025】の
「請求項4の発明は、主軸を支持するころ軸受がハウジング内に装着された工作機械用主軸装置であって、前記ころ軸受が請求項1~3の何れか1項に記載のころ軸受であることを特徴とする工作機械用主軸装置である。請求項4の発明によると、ころ軸受が耐摩耗性及び耐焼きつき性に優れるため、長寿命となる。」
との記載を
「請求項4の発明は、主軸を支持するころ軸受がハウジング内に装着された工作機械用主軸装置であって、前記ころ軸受が請求項1~3の何れか1項に記載の円筒ころ軸受であることを特徴とする工作機械用主軸装置である。請求項4の発明によると、ころ軸受が耐摩耗性及び耐焼きつき性に優れるため、長寿命となる。」
に訂正する。
10 訂正事項10
明細書の段落【0037】及び【0038】の
「転がり疲労寿命が低下も防止され」との記載を
「転がり疲労寿命の低下も防止され」に訂正し、
明細書の段落【0042】の
「所定量のグリースGがショットさせる」との記載を
「所定量のグリースGをショットさせる」に訂正する。
11 訂正事項11
明細書の段落【0053】の【表3】の「表2」との記載を「表3」に訂正する。
12 訂正事項12
明細書の段落【0091】、【0092】及び【0093】の記載を削除する。
13 訂正事項13
【図面の簡単な説明】の【図20】及び【図21】の記載を削除する。
14 訂正事項14
図面の【図20】及び【図21】を削除する。
第3 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の【特許請求の範囲】の【請求項1】の軸受の転動体を「ころ」から「円筒ころ」に限定し、軸受を「ころ軸受」から「円筒ころ軸受」に限定し、1回当りのグリース補給量を「0.005~0.02cc」から「軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02cc」に限定するものである。
同様に、訂正後の【特許請求の範囲】の【請求項3】及び【請求項4】は、直接的又は間接的に訂正後の【請求項1】の転動体、軸受及び1回当りのグリース補給量を引用することにより発明特定事項を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
転動体について、明細書の段落【0035】~【0090】には実施の形態として、円筒ころを用いた円筒ころ軸受が示されており、段落【0046】には、「上記各円筒ころ軸受において、グリースの1回当たりの補給量は軸受空間容積の4%以下が好ましい。この補給量は、以下に示す実験から得られたものである。」と記載されており、段落【0054】に「また、4%では、補給箇所を増やすことにより異常昇温を顕著に抑えることができた。即ち、同じ量を補給するにしても、外輪の円周方向に間隔をあけた複数箇所に設けた補給孔からグリースをショットする方が、異常昇温を抑制できることがわかった。一方、4%を越えると、グリースの補給箇所を増やしても、温度にバラツキが出て、安定しない状態であった。」と記載されており、段落【0055】に「上記の実験から、グリースの一回当たりの補給量は、軸受空間容積の4%以下が好ましいといえる。(中略)具体的には、一回当たりの補給量を0.005cc~0.02ccとすることで、温度の脈動も抑制することができ、円筒ころ軸受が適用される工作機械主軸装置の加工精度を高いレベルに保つことが可能となる」と記載されている。
したがって、転動体を「円筒ころ」とし、軸受を「円筒ころ軸受」とし、1回当りのグリース補給量を「軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02cc」とすることは、明細書に記載されている。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項1は、訂正前の【特許請求の範囲】の【請求項1】の範囲内で、軸受の転動体、軸受及びグリースの一回当たりの補給量を、さらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合する。
また、訂正後の【請求項3】及び【請求項4】についても、訂正後の請求項1を引用することにより、発明特定事項を更に限定するものに過ぎず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(1)のとおり、訂正事項1は、訂正前の【請求項1】及び【請求項1】を引用する訂正前の【請求項3】及び【請求項4】の発明特定事項である軸受の転動体、軸受及びグリースの一回当たりの補給量を、さらに限定するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許法第126条第7項の規定に適合する。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の【特許請求の範囲】の【請求項2】の軸受の転動体を「ころ」から「円筒ころ」に限定し、軸受を「ころ軸受」から「円筒ころ軸受」に限定し、1回当りのグリース補給量を「0.005~0.02cc」から「軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02cc」に限定するものである。
同様に、訂正後の【特許請求の範囲】の【請求項3】及び【請求項4】は、直接的又は間接的に訂正後の【請求項2】の転動体及び1回当りのグリース補給量を引用することにより発明特定事項を限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
上記1(2)のとおりであるから、転動体を「円筒ころ」とし、軸受を「円筒ころ軸受」とし、1回当りのグリース補給量を「軸受空間容積の4%以下でかつ0.005~0.02cc」とすることは、明細書に記載されている。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項2は、訂正前の【特許請求の範囲】の【請求項2】の範囲内で、軸受の転動体及びグリースの一回当たりの補給量を、さらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合する。
また、訂正後の【請求項3】及び【請求項4】についても、訂正後の【請求項2】を引用することにより、発明特定事項を更に限定するものに過ぎず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(1)のとおり、訂正事項2は、訂正前の【請求項2】及び【請求項2】を引用する訂正前の【請求項3】及び【請求項4】の発明特定事項である軸受の転動体及びグリースの一回当たりの補給量を、さらに限定するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許法第126条第7項の規定に適合する。
3 訂正事項3について
(1)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項1及び2により【請求項1】及び【請求項2】の軸受を「ころ軸受」から「円筒ころ軸受」に特定したことに伴い、【請求項1】または【請求項2】を引用する【請求項3】の「ころ軸受」を訂正後の【請求項1】及び【請求項2】に整合させて「円筒ころ軸受」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、また、同ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項3は、【請求項1】または【請求項2】を引用する【請求項3】の「ころ軸受」を訂正後の【請求項1】及び【請求項2】に整合させて「円筒ころ軸受」に限定するものであるところ、上記1(2)及び2(2)のとおりであるから、軸受を「円筒ころ軸受」とすることは、明細書に記載されている。
したがって、【請求項3】の「ころ軸受」を「円筒ころ軸受」とする訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項3は、訂正前の【特許請求の範囲】の【請求項3】の範囲内で、ころ軸受を円筒ころ軸受に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合する。
また、訂正後の【請求項4】についても、訂正後の【請求項3】を引用することにより、発明特定事項を更に限定するものに過ぎず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(1)のとおり、訂正事項3は、訂正前の【請求項3】及び【請求項3】を引用する訂正前の【請求項4】の発明特定事項である「ころ軸受」を、さらに限定するだけであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
4 訂正事項4について
(4)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正事項1~3により軸受を「ころ軸受」から「円筒ころ軸受」に特定したことに伴い、【請求項1】~【請求項3】を引用する【請求項4】の「ころ軸受」を訂正後の請求項1~3に整合させて「円筒ころ軸受」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、また、同ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
明細書の段落【0077】~【0079】に
「【0077】
〔工作機械主軸装置〕
図17は、上記の円筒ころ軸受を用いて構成される工作機械用主軸装置としてのスピンドル装置を示す図である。ここでは、例として図2に示す円筒ころ軸受90を用いている。
【0078】
円筒ころ軸受90は、主軸1に外嵌し、そしてハウジング7に内嵌している。(中略)
【0079】
ハウジング7には、ハウジング7を貫通し、各円筒ころ軸受90の外輪に形成された補給孔に追加グリースを補給するノズル(グリース供給こま)4が固定されている。グリースは、グリース補給器2から補給パイプ3を介してノズル4に供給され、そして径方向に軸受内部に補給される。グリース補給器2は、適宜なタイミングで(間欠的、定期的に)、上記した所定量でグリースショットする。」
と記載されているから、【請求項4】の工作機械用主軸装置のころ軸受を「円筒ころ軸受」とする訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項4は、訂正前の【特許請求の範囲】の【請求項4】の範囲内で、ころ軸受を円筒ころ軸受に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(1)のとおり、訂正事項4は、訂正前の【請求項4】の発明特定事項である「ころ軸受」を、さらに限定するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
5 訂正事項5について
(1)訂正の目的について
訂正事項1~3により、訂正後の【請求項1】~【請求項3】は「円筒ころ軸受」に係る発明となったため、訂正後の【請求項1】~【請求項3】の記載に合わせて【発明の名称】を訂正するものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項5は、発明の名称を訂正事項1~3による訂正後の【特許請求の範囲】の記載に整合させるものであるところ、訂正事項1~3については上記1(2)、2(2)及び3(2)のとおりであるから、同様に、訂正事項5の「ころ軸受」を「円筒ころ軸受」とする訂正は、明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項5は、発明の名称を訂正後の【請求項1】~【請求項3】の記載に整合させるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合する。
6 訂正事項6~9について
(1)訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0013】、【0016】、【0017】及び【0025】には、それぞれ訂正前の【特許請求の範囲】の【請求項1】~【請求項4】に対応する記載があるところ、訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】の発明特定事項と一致せず、不明瞭となる。
訂正事項6~9は、訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】の記載と、明細書の段落【0013】、【0016】、【0017】及び【0025】の記載を整合させる訂正であり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項6~9は、明細書の段落【0013】、【0016】、【0017】及び【0025】の【請求項1】~【請求項4】に対応する記載を、訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】の記載に整合させるものであるところ、上記1(2)、2(2)、3(2)及び4(2)のとおり、訂正事項1~4は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項1~4による訂正後の請求項1~4と明細書の段落【0013】、【0016】、【0017】及び【0025】の記載を整合させる訂正事項6~9も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項6~9は、明細書の記載を訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】の記載に整合させるものである、訂正事項1~4と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
7 訂正事項10について
(1)訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0037】及び【0038】の「転がり疲労寿命が低下も防止され」との記載は、日本語として意味をなしておらず、「転がり疲労寿命の低下も防止され」の誤記であることは明白である。
また、訂正前の明細書の段落【0042】の「グリースGがショットさせる」との記載は、日本語として意味をなしておらず、「グリースGをショットさせる」の誤記であることは明白である。
訂正事項10は、明らかな誤記を本来の意味に正すものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項10は、明らかな誤記を本来の意味に正すものに過ぎず、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項10は、明らかな誤記を本来の意味に正すものに過ぎず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
訂正事項10は、明らかな誤記を本来の意味に正すものであり、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許法第126条第7項の規定に適合する。
8 訂正事項11について
(1)訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0053】の【表3】には、タイトルに「表2」と記載された表が記載されている。訂正前の明細書の段落【0052】には「実験結果を表3に示す。」と記載されており、段落【0053】の【表3】の表のタイトルの「表2」は「表3」の誤記であることは明白である。
訂正事項11は、明らかな誤記を本来の意味に正すものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項11は、明らかな誤記を本来の意味に正すものに過ぎず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項11は、明らかな誤記を本来の意味に正すものに過ぎず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
訂正事項11は、明らかな誤記を本来の意味に正すものであり、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許法第126条第7項の規定に適合する。
9 訂正事項12
(1)訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0091】~【0093】には、グリースを補給しない円筒ころ軸受の実施例2及び比較例2についての事項が記載されており、グリースを補給する円筒ころ軸受ないし工作機械用主軸装置についての事項は記載されていない。
訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】に係る発明(以下、「本発明」という。)は、所定量のグリース補給量とすることで、グリース補給後の脈動及び異常昇温を抑制する円筒ころ軸受及び当該円筒ころ軸受けを装着した工作機械用主軸装置であるから、段落【0091】~【0093】に記載された事項は、本発明の説明をしたものとはいえず、本発明の技術的範囲が不明瞭となる。
訂正事項12は、訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】の記載との整合を図るために、本発明の技術的範囲を不明瞭にする明細書の記載を削除する訂正であり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項12は、訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】の記載との整合を図るために、本発明の技術的範囲を不明瞭にする明細書の記載を削除する訂正に過ぎず、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項12は、訂正事項1~4による訂正後の【請求項1】~【請求項4】の記載との整合を図るために、本発明の技術的範囲を不明瞭にする明細書の記載を削除する訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
10 訂正事項13について
(1)訂正の目的について
訂正前の明細書の【図面の簡単な説明】の【図20】及び【図21】には、実施例2及び比較例2についての説明が記載されているが、訂正事項12により明細書の段落【0091】~【0093】を削除したことに伴い、実施例2及び比較例2に関する記載がなくなるため、【図20】及び【図21】の説明が明細書の【図面の簡単な説明】に残ることは訂正事項12による訂正後の明細書の記載との間で不整合を生じる。
訂正事項13は、訂正事項12による訂正後の明細書の記載との整合を図るための訂正であり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項13は、訂正事項12により明細書の段落【0091】~【0093】を削除したことに伴い、明細書中の記載の整合を図るために、明細書の【図面の簡単な説明】の【図20】及び【図21】を削除するものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項13は、訂正事項1~4と整合する訂正事項12との整合を図るために、本発明の技術的範囲を不明瞭にする明細書の記載を削除する訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
11 訂正事項14について
(1)訂正の目的について
訂正前の図面の【図20】及び【図21】には、実施例2及び比較例2に関する図面が記載されているが、訂正事項12により実施例2及び比較例2の記載に係る明細書の段落【0091】~【0093】を削除し、訂正事項13により【図面の簡単な説明】の【図20】及び【図21】の実施例2及び比較例2についての説明を削除したことに伴い、訂正事項12及び13による訂正後の明細書には、図面の【図20】及び【図21】に関連する記載がなくなるため、図面に【図20】及び【図21】が残ることは訂正事項12及び13による訂正後の明細書の記載との間で不整合が生じ、本発明の技術的範囲を不明瞭にする。
訂正事項14は、訂正事項12及び訂正事項13による訂正後の明細書の記載との整合を図るための訂正であるため、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項14は、訂正事項12及び訂正事項13との整合を図るための訂正であり、本発明の技術的範囲を不明瞭にする図面の記載を削除する訂正であるので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項14は、訂正事項12及び訂正事項13との整合を図る訂正であり、本発明の技術的範囲を不明瞭にする図面の記載を削除する訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正審判に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第3号に規定する事項を目的とし、かつ、同法第5項ないし第7項までの規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-390015