2020-016475
切換可能なバックライト及び前面フィルムを含むディスプレイ
- 審判番号
- 2020-016475
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-565152外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月01日
- 審決日
- 2021年10月26日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
- 【請求人代理人】赤澤 太朗
- 【請求人代理人】野村 和歌子
- 【請求人代理人】佃 誠玄
- 【請求人代理人】浅村 敬一
- 分類
- P18 .121-Z (G09F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は,2016年(平成28年)6月14日(パリ条約による優先権主張2015年6月16日(以下「優先日」という。),米国,及び2015年7月2日,米国,)を国際出願日とする出願であって,令和1年6月13日に手続補正書が提出され,同年11月22日付けで拒絶理由が通知され,令和2年2月26日に意見書及び手続補正書が提出され,同年7月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ,これに対し,同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明は,令和2年2月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】前面を通して見ることができるディスプレイであって,少なくとも第1の出力モード及び第2の出力モードを有し,前記第1の出力モードが,40度を超える半値全幅を含む第1の輝度分布を有し,前記第2の出力モードが,40度以下の半値全幅を含む第2の輝度分布を有する,切換可能なバックライトと,前記ディスプレイの前記前面として配設され,少なくとも35%のヘイズを有する前面フィルムとを備えるディスプレイ。」(以下「本願発明」という。)
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由は,
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<刊行物一覧>
1.特開2005-174706号公報
2.欧州特許出願公開第2023191号明細書
3.特開2011-9189号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2006-78737号公報(周知技術を示す文献)
5.米国特許出願公開第2015/0116833号明細書(周知技術を示す文献)
という理由を含むものである。
第4 当審の判断
1 引用例
(1)原査定の拒絶の理由において引用され,本願の優先日前に頒布された特開2005-174706号公報(上記刊行物1。以下「引用例1」という。)には,次の事項が示されている。
ア 「【技術分野】【0001】本発明は,照明装置およびそれを備えた表示装置に関し,特に液晶表示装置の照明装置として好適に用いられる照明装置および液晶表示装置に関する。」
イ 「【0025】本発明は,上記諸点に鑑みてなされたものであり,正面輝度の低下を従来よりも抑制しつつ,指向性を切り替えること可能な照明装置およびそれを備えた表示装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【0044】(実施形態1)図1(a)は実施形態1の照明装置100の構成を模式的に示す平面図であり,図1(b)は照明装置100を備えた液晶表示装置150の構成を模式的に示す側面図である。【0045】照明装置100は,光源101A,101Bおよび101Cと,光源101A,101Bおよび101Cから出射された光を伝播させ,出射面から外部へ出射させる導光板102とを備える。この複数の光源101A,101Bおよび101Cは,その一部を選択的に点灯する第1モードと,第1モードにおいて点灯されない光源の内の少なくとも1個を点灯する第2モードとの切替えが可能となっている。導光板102に対する光源の相対位置が異なるので,点灯する光源を変える(一部の光源がいずれのモードでも点灯されてもよい。)ことによって,指向性が異なる光が出射されることになる。ここでは,指向性が高いモードを第1モードと呼ぶことにする。【0046】液晶表示装置150は,照明装置100と,照明装置100の観察者側に,液晶表示パネル110を有している。液晶表示パネル110は,例えば,照明装置100側から,下側偏光板105,液晶セル106,および上側偏光板107をこの順に有している。照明装置100以外の構成は,公知の液晶表示装置と同じであってよいので,ここでは詳細な説明は省略する。液晶表示装置150は,例えば携帯電話に好適に用いられ,液晶表示パネル110は,例えば,2.4型QVGAパネル(240×320ドット)である。」
エ 「【0069】(実施形態2)実施形態1の照明装置は,一枚の導光板が有する複数の入射端面に配置された複数の光源の内から,点灯する光源を選択することによって,出射光の指向性を切り替える構成を有している。これに対し,本実施形態2の照明装置は,複数の導光板と複数の光源との組み合わせによって,出射光の指向性の切り替えを可能とする。【0070】続きを表示(全19行)図5から図7を参照しながら実施形態2の照明装置および液晶表示装置の構成および動作を説明する。【0071】図5(a)は実施形態2の液晶表示装置250の構成を模式的に示す断面図である。図5(b)は液晶表示装置250が備える照明装置200の上層照明部210の構成を模式的に示す平面図であり,図5(c)は照明装置200の下層照明部220の構成を模式的に示す平面図である。【0072】図5(a)に示すように,液晶表示装置250は,図1(b)に示した液晶表示装置150における照明装置100に代えて,照明装置200を有している。照明装置200は上層照明部210と下層照明部220とを有している。観察者側(液晶表示パネル110側)に設けられた上層照明部210は下層照明部220よりも指向性の高い光を出射するように構成されている。また,下層照明部220から出射された光は,上層照明部210の導光板202を透過して,照明装置200から出射される。【0073】上層照明部210は,図5(b)に示すように,導光板202と,導光板202の角部(第1入射端面)202aに設けられた光源201とを有している。導光板202および光源201は,それぞれ,照明装置100が有する導光板102と光源101Aとに対応する。従って,上述したように,出射光の角度分布は狭く(半値幅角は±10°以下)指向性が高く,且つ,出射面法線方向(出射角=0°)における強度が最も高い。【0074】下層照明装置220は,図5(a)および(c)に示すように,導光板212と,導光板212の側面(入射端面)に向けて配置された光源211A,211Bおよび211Cと,導光板212の上層照明部210側に配置された拡散シート222およびプリズムシート224を有している。また,導光板212の下側には,必要に応じて,反射板214が設けられる。【0075】下層照明装置220は,指向性の高い光を出射する必要が無く,むしろ,均一に光を出射することが好ましい。従って,図5(a)に例示したように,導光板212から出射された光を拡散するために,導光板212の光出射側に拡散シート222を設けることが好ましい。さらに,プリズムシートを設けることによって,拡散シート222によって拡散された光の内で,発散角が大きな光をプリズム面で屈折させることによって,正面方向(表示面の法線方向)に向け,正面の輝度を高めることができる。【0076】照明装置200は,例えば,光源201を選択的に点灯させる第1モードと,光源201とともに光源211A~211Cを点灯させる第2モードとの間で切り替えを行う。照明装置200は,第1モードにおいては,図6に示すように,実施形態1の照明装置100の第1モードと同様に非常に指向性の高い光を出射する。第2モードにおいては,図6に示すように,指向性の低い光を出射する。なお,図6は照明装置200から出射される光の強度分布を示すグラフであり,第1モードと第2モードとをそれぞれ最大強度で規格化してある。第2モードでは,光源201も点灯されているので,正面輝度は第1モードよりも高い。【0077】このように,実施形態2の照明装置200は,実施形態1の照明装置100と同様に,点灯する光源を切り替えることによって,出射光の指向性を切り替えることができる。従って,上記特許文献2に記載されている光学補償シートを利用する方法に比べ,正面輝度の低下が抑制される。また,光学補償シートを設けることに起因する上述の問題(視差による表示品位の低下,光学補償シートやその着脱機構によるコストアップ)が発生することもない。なお,第1モードおよび第2モードにおいて点灯する光源の組み合わせは上記の例に限られず,種々の組み合わせが可能である点,さらに,3つ以上のモードを選択できるように構成することが可能である点も,実施形態1の照明装置100と同様である。用途によっては,下層照明部220だけを選択的に点灯させるモードを用いても良い。」
オ 上記ウ,エ及び図5からすると,実施形態2の液晶表示装置250は,下層照明部220及び上層照明部210からなる照明装置200上に,下側偏光板105,液晶セル106,および上側偏光板107をこの順に有していることが看取できる。
上記事項ア~エより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が示されているものと認められる。
「下層照明部220及び上層照明部210からなる照明装置200,照明装置200上に,順に,下側偏光板105,液晶セル106,および上側偏光板107を有する,液晶表示装置250であって,上層照明部210は,導光板202と,導光板202の角部202aに設けられた光源201とを有し,下層照明装置220は,導光板212と,導光板212の側面に向けて配置された光源211A,211Bおよび211Cと,導光板212の上層照明部210側に配置された拡散シート222およびプリズムシート224を有し,照明装置200は,光源201を選択的に点灯させる第1モードと,光源201とともに光源211A~211Cを点灯させる第2モードとの間で切り替えを行うもので,第1モードにおいては,非常に指向性の高い光を出射し,第2モードにおいては,指向性の低い光を出射する,液晶表示装置250。」
(2)引用例2
原査定の拒絶の理由において引用され,本願の優先日前に頒布された欧州特許出願公開第2023191号明細書(上記刊行物2。以下「引用例2」という。)には,次の事項が示されている。
(引用例2は英文であるところ,括弧()内には,ファミリー文献である特許第4995195号公報を参照した日本語訳を記載した。)
ア 「[0001] The present invention relates to a display system which includes a viewing angle control panel for controlling the viewing angle of a display panel.」
(【0001】
本発明は,表示パネルの視野角を制御する視野角制御パネルを備えた表示装置システムに関するものである。)
イ 「[0045] The display system of the present invention may preferably be arranged such that the reflected light amount relative increasing section includes a polarizing plate, provided on a front surface of the display device, which has been subjected to a diffusion treatment.[0046] This allows a polarizing plate having been subjected to a diffusion treatment to be provided on the front surface of the display device, and thereby enhances a blocking effect of the viewing angle control panel, as compared to the case in which a polarizing plate not having been subjected to a diffusion treatment is included.」
(【0045】
また,本発明の表示装置システムでは,前記反射光量相対的増大部は,拡散処理されている偏光板を表示装置の表面側に備えていることが好ましい。
【0046】
これにより,表示装置の表面側には拡散処理されている偏光板が備えられているので,拡散処理していない偏光板が備えられている場合に比べて,視野角制御パネルの遮蔽効果が高まる。)
ウ 「[0054] The display system of the present invention may preferably be arranged such that the viewing angle control panel includes: a liquid crystal cell including: a pair of transparent substrates; and a liquid crystal layer provided between the transparent substrates, the liquid crystal layer having liquid crystal molecules aligned vertically, and a driving circuit for applying a voltage to the liquid crystal layer, that the liquid crystal cell being provided between two polarizing plates which are provided to face each other so that polarizing transmission axes thereof are substantially at right angle, and that the driving circuit changes an alignment of the liquid crystal molecules included in the liquid crystal layer of the liquid crystal cell so that a display state is switched between a first viewing angle range and a second viewing angle range which is within the first viewing angle range and is narrower than the first viewing angle range.」
(【0054】
また,本発明の表示装置システムでは,前記視野角制御パネルは,一対の透光性基板間に液晶分子を垂直配向させた液晶層を有する液晶セルと,上記液晶層へ電圧を印加する駆動回路とを備え,上記液晶セルは,偏光透過軸が略直交するよう対向配置された2枚の偏光板の間に配置され,上記駆動回路は,上記液晶セルの液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより,表示状態を,第1の視野角範囲と,該第1の視野角範囲内にありかつ第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲との間で切替えることが好ましい。)
エ 「[0064] The following description deals with an arrangement of a liquid crystal display 10 included in the display system of the present embodiment. Fig. 2 is a sectional view schematically illustrating an arrangement of the liquid crystal display 10.[0065] As illustrated in Fig. 2, the liquid crystal display 10 includes two liquid crystal panels: a liquid crystal display panel 1 serving as a display panel for displaying an image; and a viewing angle control panel 2 which includes a liquid crystal cell 21. The liquid crystal display panel 1 is of a transmissive type. A backlight 3 is used as a light source.[0066] As shown in Fig. 2, the viewing angle control panel 2 is provided, for example, between the backlight 3 and the liquid crystal display panel 1.[0067] The liquid crystal display 10 is arranged such that switching of the liquid crystal in the viewing angle control panel 2 allows switching between two display modes, i.e., (i) a wide viewing angle mode in which the viewing angle, at which a display of the liquid crystal display panel 1 is visible, is wide, and (ii) a narrow viewing angle mode in which the viewing angle, at which a display of the liquid crystal display panel 1 is visible, is narrow. The narrow viewing angle mode is particularly suitable for a case where it is undesirable to let other people see a display on the liquid crystal display panel 1. The wide viewing angle mode is particularly suitable for a case, other than the case, such as normal use case or a case where two or more people simultaneously look at a display on the liquid crystal display panel 1.[0068] The liquid crystal display panel 1 includes: a liquid crystal cell 11 that includes a pair of transparent substrates and liquid crystal sandwiched therebetween; a first polarizing plate 12 disposed on the top surface of the liquid crystal cell 11; and a second polarizing plate 13 disposed on the bottom surface of the liquid crystal cell 11. Any liquid crystal and any cell structure can be used as the liquid crystal cell 11. In addition, any driving method can be applied to the liquid crystal display panel 1. In other words, any liquid crystal panel which is capable of displaying characters, still images, or moving images can be used as the liquid crystal display panel 1. As such, Fig. 2 does not show a specific structure of the liquid crystal display panel 1, and a description of the liquid crystal display panel 1 is omitted.」
(【0064】
まず,本実施の形態の表示装置システムにおける表示装置としての液晶表示装置10の構成について説明する。図2は,上記液晶表示装置10の概略構成を示す断面図である。
【0065】
図2に示すように,液晶表示装置10は,画像を表示する表示パネルとしての表示用液晶パネル1と液晶セル21を備えた視野角制御パネル2との2枚の液晶パネルを備えている。上記表示用液晶パネル1は透過型であり,光源としてバックライト3が用いられる。
【0066】
上記視野角制御パネル2は,例えば,同図に示すように,バックライト3と表示用液晶パネル1との間に設けられている。
【0067】
液晶表示装置10は,視野角制御パネル2における液晶をスイッチング動作させることにより,表示用液晶パネル1の画像が視認できる視野角が広い状態である広視野角モードと,表示用液晶パネル1の画像が視認できる視野角が狭い状態である狭視野角モードとの2つのモードの表示状態を切替えることができる。狭視野角モードは,他人に表示用液晶パネル1の画像を見られたくない場合に特に好適に用いられる一方,広視野角モードは,それ以外の通常の使用時や,表示用液晶パネル1の画像を複数人で同時に見たい場合等に好適に用いられる。
【0068】
表示用液晶パネル1は,一対の透光性基板間に液晶を挟持した液晶セル11と,液晶セル11の表裏に設けられた第1偏光板12及び第2偏光板13とを有している。液晶セル11の液晶モードやセル構造は任意である。また,表示用液晶パネル1の駆動モードも任意である。すなわち,表示用液晶パネル1としては,文字,画像,又は動画を表示できる任意の液晶パネルを用いることができる。したがって,図2においては表示用液晶パネル1の詳細な構造を図示せず,その説明も省略する。)
エ 「[0119] Further, the first polarizing plate 12 provided on the front surface of the liquid crystal display 10 illustrated in Fig. 2 may preferably be a polarizing plate that has been subjected to a diffusion treatment. Specifically, The upper polarizing plate 12 for the liquid crystal panel preferably has a surface which has been subjected to a diffusion treatment such as an anti-glare (AG) treatment. The AG treatment refers to a treatment for prevention of glare (reflection), and is one of methods for preventing, for example, specular reflection on a surface such as a glass surface. The AG treatment may be realized, for example, by roughening the surface of the first polarizing plate 12 to a small degree or by attaching a rough-surfaced film to the surface of the upper polarizing plate 12. This can avoid, for example, that a background is displayed.[0120] As a result, the narrowing of a viewing angle by the viewing angle control panel 2 is enhanced, as compared to the case in which the first polarizing plate 12 is a polarizing plate that has not been subjected to a diffusion treatment.」
(【0119】
なお,本実施の形態では,さらに,図2に示す液晶表示装置10の表面の第1偏光板12に拡散処理が施されているものを使用するのが好ましい。具体的には,第1偏光板12の表面に例えばAG(Anti Glar)処理が施されていることが好ましい。このAG処理とは,ギラギラ(反射)防止処理のことを意味する。例えば,ガラス表面等での鏡面反射を避ける方法の1つであり,第1偏光板12の表面を少し粗面にするか,又は粗面膜を貼り付ける等の処理を行う。この結果,例えば,背景の写り込みを防ぐことができるものである。
【0120】
これにより,拡散処理していない第1偏光板12が備えられている場合に比べて,視野角制御パネル2の狭視野角制御効果が高まる。)
上記事項ア~エより,引用例2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が示されているものと認められる。
「画像を表示する表示パネルとしての表示用液晶パネル1と液晶セル21を備えた視野角制御パネル2との2枚の液晶パネルを備えている液晶表示装置10であって,表示用液晶パネル1は,一対の透光性基板間に液晶を挟持した液晶セル11と,液晶セル11の表裏に設けられた第1偏光板12及び第2偏光板13とを有し,前記視野角制御パネル2は,一対の透光性基板間に液晶分子を垂直配向させた液晶層を有する液晶セル21と,上記液晶層へ電圧を印加する駆動回路とを備え,上記液晶セル21は,偏光透過軸が略直交するよう対向配置された2枚の偏光板の間に配置され,上記駆動回路は,上記液晶セル21の液晶層の液晶分子の配列状態を変化させることにより,表示状態を,第1の視野角範囲と,該第1の視野角範囲内にありかつ第1の視野角範囲よりも狭い第2の視野角範囲との間で切替えるもので,液晶表示装置10の表面の第1偏光板12は,その表面を粗面にする拡散処理が施されている,液晶表示装置10。」
2 対比
そこで,本願発明と引用発明とを対比すると,
(1)後者の「液晶表示装置250」及び「光源」は,それぞれ,前者の「ディスプレイ」及び「バックライト」に相当する。
(2)後者の「液晶表示装置250」は,表示装置であるのだから,その前面を通して表示装置に表示された画像(映像)等を見ることができることは,明らかである。
(3)後者の「第1モード」は,「光源201を選択的に点灯させる」により「非常に指向性の高い光を出射」するモードであり,また,後者の「第2モード」は,「光源201とともに光源211A~211Cを点灯させる」により「指向性の低い光を出射する」モードであって,「第2モード」は「第1モード」より大きな半値全幅を含む輝度分布のモードであるといえることから,後者の「第2モード」及び「第1モード」は,それぞれ,前者の「第1の出力モード」及び「第2の出力モード」に相当する。
そして,後者の「第1モード」と「第2モード」とは,「光源201」及び「光源211A~211C」の選択的な点灯により,そのモードが切り替えられるのであるから,後者の「光源201」及び「光源211A~211C」は,前者の「切換可能なバックライト」に相当する。
前面を通して見ることができるディスプレイであって,
少なくとも第1の出力モード及び第2の出力モードを有し,前記第1の出力モードが,40度を超える半値全幅を含む第1の輝度分布を有し,前記第2の出力モードが,40度以下の半値全幅を含む第2の輝度分布を有する,切換可能なバックライトと,
前記ディスプレイの前記前面として配設され,少なくとも35%のヘイズを有する前面フィルムとを備えるディスプレイ。
したがって,両者は,
「前面を通して見ることができるディスプレイであって,少なくとも第1の出力モード及び第2の出力モードを有し,前記第1の出力モードが,(第2の出力モードより大きな)半値全幅を含む第1の輝度分布を有し,前記第2の出力モードが,(第2の出力モードより小さい)の半値全幅を含む第2の輝度分布を有する,切換可能なバックライトとを備えるディスプレイ。」
の点で一致し,以下の相違点で相違する。
[相違点1]
本願発明の第1の出力モードが,「40度を超える」半値全幅を含む第1の輝度分布を有し,第2の出力モードが,「40度以下」の半値全幅を含む第2の輝度分布を有するのに対し,引用発明1は,「第1モードにおいては,非常に指向性の高い光を出射し,第2モードにおいては,指向性の低い光を出射する」ものである点。
[相違点2]
ディスプレイの前面に,本願発明が,「ディスプレイの前面として配設され,少なくとも35%のヘイズを有する前面フィルム」を備えるものであるのに対し,引用発明1は,「上側偏光板107」を有する点。
3 判断
以下,上記各相違点について検討する。
(1)[相違点1]について
本願明細書には,以下の通り記載されている。
「【0004】更に別の態様では,本説明は,意図される視野外の周囲光におけるディスプレイからの情報の可読性を低減させる方法に関する。この方法は,切換可能なバックライトを含むディスプレイを提供することを含み,切換可能なバックライトは,少なくとも第1の出力モード及び第2の出力モードを有し,第1のモードは,40度を超える半値全幅を含む第1の輝度分布を有し,第2のモードは,40度以下の半値全幅を含み,ディスプレイの法線を中心とする第2の輝度分布を有する。この方法は,切換可能なバックライトが第2のモードにあるとき,周囲光において40度より斜めの角度でディスプレイを見ている観察者にとって,ディスプレイの可視性を低減させるほど十分に高いヘイズ値を有する前面フィルムをディスプレイ上に提供することを更に含む。」
上記記載からすると,本願発明において,第1の輝度分布と第2の輝度分布との半値全幅の境界値は,ディスプレイを設計するに際に,設計者が可視性を低減させたいと所望した範囲に基づいて,設定される数値であって,「40度」という数値自体には,技術的な臨界的意義が,見出せるものではない。
そうすると,引用発明1において,「第1モードにおいては,「40度以下」の半値全幅である非常に指向性の高い光を出射し,第2モードにおいては「40度を超える」半値全幅である指向性の低い光を出射する」ものとすることは,当業者が設計に際し,適宜設定し得る事項といえる。
してみると,引用発明1において,「第1モードにおいては,「40度以下」の半値全幅である非常に指向性の高い光を出射し,第2モードにおいては「40度を超える」半値全幅である指向性の低い光を出射する」ものとし,もって,上記相違点1の構成とすることは,当業者が容易になし得るものである。
(2)[相違点2]について
光学部品のヘイズ度は,拡散透過率に比例するものであること(ヘイズ(%)=Td/Ttx100,Td:拡散透過率,Tt:全光線透過率)は技術常識であること,及び光学部品において「フィルム」と「板」とは実質的な差異がないものと見なせることからすると,引用発明2の「表面を粗面にする拡散処理が施されている第1偏光板12」は,本願発明の「ディスプレイの前面として配設され,ヘイズを有する前面フィルム」に相当する。
そして,引用発明1と引用発明2とは,液晶表示装置である点で共通し,引用発明1が「指向性を切り替えること可能な照明装置およびそれを備えた表示装置を提供すること」を目的とし,引用発明2が,「表示パネルの視野角を制御する視野角制御パネルを備えた表示装置システム」に関するものであることから,引用発明1も引用発明2も,視野角を切り替え可能な表示装置を提供するとの課題を有する点でも共通するといえる。
そうすると,引用発明1の上側偏光板107に替えて,引用発明2の表面を粗面にする拡散処理が施された第1偏光板12を適用することは当業者が容易になし得るものである。
そして,引用発明2は,拡散処理により遮蔽効果を高めているのであるから,そのヘイズ値を本願と同様に,可視性を低減する程度の35%とすることは,当業者が適宜採用し得る事項といえる。
してみると,引用発明1の液晶表示装置250の上側偏光板107に替えて,引用発明2の第1偏光板12を適用し,上記相違点2の構成とすることは,当業者が容易になし得るものである。
請求人は,
「引用文献2は偏光板の「表面」を「粗面化」することによってギラつきを防止するという思想を開示するところ,粗面化によるAG処理によって得られるヘイズはせいぜい数%であり,高くても20%程度である。引用文献2を引用文献1に組み合わせたとしても,決して「少なくとも35%」のヘイズがもたらされることはない。」
と主張する。(審判請求書5頁8~12行)
しかし,上記で検討したとおり,引用発明2は視野角制御パネルの狭視野角制御効果を高めるという,本願の「可視性を低減させる」と共通する課題を有しているのであって,前記課題がヘイズの数値の如何によって解決するのであるから,引用発明2の第1偏光板12を適用するに際し,「少なくとも35%のヘイズ」とすることは,当業者が適宜なし得るものである。
また,請求人は,
「引用文献1記載の発明は,従来,観察者側の偏光板97のさらに観察者側に配置される光学補償シート98の着脱によって,異なる視野角モードを実現していたところ,正面方向の輝度が大幅に低下したり,コストアップしたりするという課題があったため,当該課題を解決するために(段落0022~段落0025),点灯する光源を切り替えることによって,光学補償シート98を用いることなく,出射光の指向性を切り替えることを可能とするものであるから,かかる引用文献1において,引用文献2に記載の粗面膜を貼り付けることは,引用文献1の上記目的を損なうものであります。従いまして,引用文献1記載の照明装置に対して,引用文献2記載の粗面膜を貼り付けることには阻害要因が存在するものと確信いたします。」
と主張する。(審判請求書6頁16~25行)
しかし,引用発明2は,表面に拡散処理を施した第1偏光板12を採用することにより,狭視野角制御効果を高めているところ,正面輝度を,操作者の操作に悪影響を及ぼす程,低下させるような虞がないことは明らかである。
してみると,引用発明2を,引用発明1に適用することを阻害する要因が存在するとはいえず,そして,上述するように,引用発明1も引用発明2も,視野角を切り替え可能な表示装置を提供するとの課題を有する点でも共通するのであるから,引用発明1に,引用発明2を適用する動機付けは存在する。
したがって,本願発明は,引用発明1及び引用発明2より,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-016475