特許拒絶査定不服審判
2023-018514
狭空間に用いる機能シート
- 審判番号
- 2023-018514
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-057750
- 請求日
- 2023年11月01日
- 審決日
- 2024年09月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フラッグス株式会社
- 【請求人代理人】松尾 憲一郎
- 【請求人代理人】市川 泰央
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 桐山 愛世
- 審判官 山本 一
- 分類
- P18 .121-Z (G09F) / P18 .575-Z (G09F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 57750「狭空間に用いる機能シート」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月23日出願公開、特開2022- 93345〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月25日に出願された特願2019-32111号の一部を、令和4年3月30日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和4年 5月 2日:上申書の提出
令和5年 3月 1日付け:拒絶理由通知書
同年 7月12日:意見書、手続補正書の提出
同年 7月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。同年8月1日:原査定の謄本の送達)
同年11月 1日:審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 1月11日:上申書の提出
第2 令和5年11月1日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年11月1日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和5年7月12日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
殺菌機能有する広告媒体として狭空間に用いる機能シートであって、機能シートは紙・布状のシート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に揮発性の殺菌用薬剤を施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、機能シートを用いる狭空間は、車両内とすると共に、車両内の機能シートの貼着位置としては、エアコンからの空気の吹き出しから後部座席下方の空気循環用の吸気孔までの空気循環流通における空気流動によって、機能シートからの薬剤拡散により車中ウイルスの除去殺菌が行われるような後部座席の天井面に貼着することを特徴とする狭空間に用いる機能シート。」
(2)本件補正後の本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
殺菌機能を有する広告媒体として狭空間に用いる機能シートであって、機能シートは紙・布状シート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に揮発性の殺菌用薬剤を施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、機能シートを用いる狭空間は、車両内とすると共に、車両内の機能シートの貼着位置としては、後部座席位置の天井面に貼着し、エアコンからの空気の吹き出しから後部座席位置の天井面へ、更には後部座席下方の空気循環用の吸気孔までの空気循環流通における空気流動によって、機能シートからの薬剤拡散が運転席及び後部座席にまで至ることにより車中ウイルスの除去殺菌が行われるようにしたことを特徴とする狭空間に用いる機能シート。」
(3)本件補正の内容
上記(1)及び(2)によれば、本件補正は、
ア 本件補正前の請求項1の「エアコンからの空気の吹き出しから後部座席下方の空気循環用の吸気孔までの空気循環流通における空気流動によって」という記載を、「エアコンからの空気の吹き出しから後部座席位置の天井面へ、更には後部座席下方の空気循環用の吸気孔までの空気循環流通における空気流動によって」とする補正(以下「補正事項1」という。)、
イ 本件補正前の請求項1の「車両内の機能シートの貼着位置としては、・・・機能シートからの薬剤拡散により車中ウイルスの除去殺菌が行われるような後部座席の天井面に貼着する」という記載を、「車両内の機能シートの貼着位置としては、後部座席位置の天井面に貼着し」、「機能シートからの薬剤拡散が運転席及び後部座席にまで至ることにより車中ウイルスの除去殺菌が行われるようにした」とする補正(以下、「補正事項2」という。)、
からなるものである。
2 補正の適否について
(1)補正の目的
特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
ア 補正事項1、2
補正事項1は、「エアコンからの空気の吹き出し」が「後部座席位置の天井面へ」至ると限定し、補正事項2は、「機能シートからの薬剤拡散」が「運転席及び後部座席にまで至ること」を限定するとともに、表現を整理したものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項1、2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項
ア 補正事項1は、当初明細書等の段落【0039】の「エアコン吹き出し口aからの吹き出し空気Aは後部座席の天井面方向に流通して、座席下部の吸気孔bから吸引されて車両のボディと内層部との間に配設した外気流通路を経て車両外に排気される。」との記載に基づいている。
イ 図1の吹き出し空気Aの矢印から、エアコン吹き出し口からの空気が前部座席(運転席)及び後部座席に至ることが看取でき、当初明細書等の段落【0038】の「エアコン吹き出し口からの空気循環流通や車内の搭乗者の動きにともなう空気の動きや窓の開放による外気流入かく乱等の空気の流動により車内には機能シート10から薬剤が拡散して車中空気に漂う浮遊ウイルスの除去殺菌機能を果たす。」との記載と合わせみれば、補正事項2の「機能シートからの薬剤拡散」について、「運転席及び後部座席にまで至る」と認められる。
したがって、補正事項1、2は、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2(1)のとおり、本件補正による請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に係る発明(令和5年11月1日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】(以下「本件発明1」という。))が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件発明1は 、前記1(2)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。
(2)引用文献
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった登録実用新案第3218315号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0010】
この考案の要旨は、要・殺菌個所の平面部材に、紙質のシート本体の表面に薬剤を塗布し裏面に粘着剤を塗布した所定大きさの機能シートを貼付すると共に、機能シート本体表面の薬剤としては水酸化カルシウムを基本としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、しかも、シート本体の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷したことを特徴とする殺菌等機能を有する機能シートに関する。
・・・
【0012】
機能シート10は大きさを略A4タイプにしており、この大きさ規格は使用する個所に対応して適宜選択することができる。
【0013】
殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シート10は、基本的にはCa(OH)2消石灰を漆喰塗料として使用すると共に、これにスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成している。
【0014】
具体的には、Ca(OH)2消石灰は0.3kg/m2の量を使用している。
また、図2に示すように、機能シート10の裏面に塗布する粘着剤11としてはアクリルゴムを使用する。
かかる機能シート10は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、MRSA等の抗菌性を有し、また、ノロウイルス、インフルエンザウイルスを不活性化する抗ウイルス機能を有し、ペット臭やたばこ臭や生ごみ臭等の生活臭やトイレ臭を除去する消臭機能を有する。」
イ 「【0038】
また、殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シート10は、紙質のシート本体12の表面に薬剤13を塗布し、裏面に粘着剤11、例えば、アクリルゴムを塗布すると共に、薬剤13としては水酸化カルシウムを基本としたことにあり、しかも、塗布した薬剤13の表面或いは機能シート10の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷する印字面14を備えている。
・・・
【0040】
実施例1で示したトイレの便蓋21の裏面に貼着した状態では、図2に示すように、便器ボウル22内と便座23とスペーサ24の隙間から機能シート10に含浸した薬剤13が拡散されて、トイレ空間S内の殺菌・除菌・抗菌を可能としていたが、その効果は便器ボウル22内に対するものが大半でありトイレ空間S内に対しては効果が薄かった。
・・・
【0042】
また、他の実施例として、図4に示すように、本考案の機能シート10は電車の吊下げ広告40にも活用することができる。電車D内は特に他者との接触が多い場所であり、また、人が密集することで熱量が大きくなることからエアコンAを稼働させることで空気を対流させており、車内の一部の人がウイルスキャリアである場合、多くの人にウイルスが拡散される虞がある。
【0043】
そこで、図4に示すように、電車D内のエアコンAの吹き出し口に比較的近い吊下げ広告40の掲示場所に機能シート10の裏面の粘着剤11同士を貼着した状態(印字面14が両表面となる状態)で吊下げることでウイルスが拡散される前に機能シート10の印字面14で吸着することができる。また、吊下げ広告40として使用する際の幅員を車両天井面の幅員と略同等とすることで、車両内を対流する空気が確実にこの機能シート10に接触して効率的なウイルスの吸着作用を生起することができる。」
ウ 「【0049】
このような不特定多数の人間が出入りする空間に殺菌・除菌・抗菌作用を備えた本考案の機能シート10を貼着することで浮遊するウイルスを吸着して該空間を清潔に保ちウイルスが拡散される虞を低減できる。
・・・
【0051】
実施例1から実施例7に記載したように、便器の使用者、その他、機能シート10を貼付した周辺個所にいる者は使用時に便蓋21を開け蓋開放と同時に機能シート10が眼前に現れて用を足す間に機能シート10に印刷された宣伝広告表示を認識し、或いは各実施例の機能シート10の使用形態において機能シート10に直面して飲食や自動車等への乗車や病院での検診等の行動をする時に殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も受けることができる。」
エ 上記ウの【0051】「機能シート10の使用形態において自動車等への乗車・・・の行動をする時に殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も受けることができる。」との記載から、殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も受ける機能シートの使用形態として自動車への乗車時が認められる。また、上記アの【0010】の「要・殺菌個所の平面部材に、・・・所定大きさの機能シートを貼付」との記載、及び上記ウの【0049】の「不特定多数の人間が出入りする空間に・・・機能シート10を貼着することで、該空間を清潔に保」つとの記載からすれば、要・殺菌個所として不特定多数の人間が出入りする車内空間の平面部材に貼着される機能シートが把握できる。
オ 上記イの【0040】より、機能シート10は、含浸した薬剤13が拡散されて、トイレ空間S内の殺菌・除菌・抗菌を可能することから、機能シートに含浸した薬剤が拡散されて、空間内の殺菌・除菌・抗菌を可能とすると認められる。
カ 上記イの【0042】、【0043】より、エアコンを稼働させることで空気を対流させており、空間内に対流する空気が確実にこの機能シート10に接触して効率的なウイルスの吸着作用を生起することができることから、エアコンの稼働による空間内に対流する空気が機能シートに接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起することができると認められる。
上記ア~ウの記載事項及びエ~カの認定事項から、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「不特定多数の人間が出入りする車内空間の要・殺菌個所の平面部材に貼着される機能シートであって、機能シートは、紙質のシート本体の表面に薬剤を塗布し裏面に粘着剤を塗布した所定大きさであると共に、機能シート本体表面の薬剤としては水酸化カルシウムを基本としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、しかも、機能シートは、シート本体の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷した、殺菌機能を有するものであり、エアコンの稼働による空間内に対流する空気が機能シートに接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起することができ、機能シートに含浸した薬剤が拡散されて、空間内の殺菌・除菌・抗菌を可能とする機能シート。」
(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願昭46-087322号(実開昭48-043590号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「3考案の詳細な説明
本考案はタクシー等の自動車における車内広告装置に関する考案である。従来タクシー等の運転席の背当の表面あるいは天井内張には薄板状の広告装置を取り付けて宣伝に供しているが、近来これら自動車においては運転を楽におこなえるように運転席に傾斜を持たせ、あるいは事故に備えて安全枕を取付けるようになつた為、従来の様な薄板状の車内広告装置では客席より見苦しくなり、車内広告としての機能が半減する結果となつている。」(明細書第1頁第14行~第2頁第4行)
上記アの記載事項より、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明2)
「タクシーの天井内張に取り付けられる薄板状の広告装置。」
4 対比・判断
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「機能シート」、「粘着剤」は、本件発明1の「機能シート」、「粘着剤」に相当する。
イ 引用発明1の「機能シート」は「車内空間の要・殺菌個所の平面部材に貼着される」ものであり、「車内空間」とは閉じられた制限のある空間であるので、本件発明1の「機能シート」と引用発明1の「機能シート」とは、「狭空間に用いる」ものとの概念で一致し、さらに「機能シートを用いる狭空間は、車両内とする」ものであり、車両内に貼着されるものとの概念で一致する。
ウ 引用発明1の「機能シート」は「紙質のシート本体」により構成されている。本件発明1の「機能シート」を構成する「紙・布状シート部材」とは、紙質のものも含むものであるので、本件発明1の「機能シート」と引用発明1の「機能シート」とは、「紙・布状シート部材」で構成されているものとの概念で一致する。
エ 引用発明1の「機能シート」は、「紙質のシート本体の表面に薬剤を塗布し裏面に粘着剤を塗布した」ものであり、「機能シート本体表面の薬剤としては水酸化カルシウムを基本としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、しかも、シート本体の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷したことを特徴とする殺菌等機能を有する」ものであるので、本件発明1の「機能シート」と引用発明1の「機能シート」とは、「殺菌機能を有する広告媒体として」「紙・布状シート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に」「殺菌用薬剤を施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成」するものとの概念で一致する。
オ 引用発明1の「機能シート」は、「エアコンの稼働による空間内に対流する空気が機能シートに接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起することができ、機能シートに含浸した薬剤が拡散されて、空間内の殺菌・除菌・抗菌を可能と」したものであるので、「エアコンの稼働による空間内に対流する空気」は、エアコンの吹き出し口から吹き出されて車内全体、すなわち、運転席及び後部座席に至るまで対流する空気であることは自明であり、「対流する空気」により運転席及び後部座席に至るまで「機能シートに含浸した薬剤が拡散」されると認められる。そうすると、本件発明1の「機能シート」と引用発明1の「機能シート」とは、「エアコンからの空気の吹き出しから」の「空気循環流通における空気流動によって」、機能シートからの薬剤拡散が運転席及び後部座席に至ることにより車内ウイルスの除去殺菌を行われる」ものとの概念で一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明1は、
「殺菌機能を有する広告媒体として狭空間に用いる機能シートであって、機能シートは紙・布状シート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に殺菌用薬剤を施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、機能シートを用いる狭空間は、車両内とすると共に、車両内に貼着され、エアコンからの空気の吹き出しからの空気循環流通における空気流動によって、機能シートからの薬剤拡散により運転席及び後部座席に至ることにより車中ウイルスの除去殺菌が行われるようにした機能シート。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明1の殺菌用薬剤は揮発性であるのに対して、引用発明1の殺菌用薬剤が揮発性であるのか否か不明である点。
相違点2:本件発明1の「車両内の機能シートの貼着位置」としては、「後部座席位置の天井面に貼着」するのに対して、引用発明1の機能シートが貼着されるのは、「車内空間の要・殺菌個所の平面部材」である点。
相違点3:本件発明1では、「空気循環流通における空気流動」が「エアコンからの空気の吹き出し」から「後部座席下方の空気循環用の吸気孔まで」至るのに対して、引用発明1では、「空気」は「エアコンの稼働による空間内に対流」しているが、「後部座席下方の空気循環用の吸気孔まで」至るか不明である点。
(2)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1の機能シートの表面の殺菌用薬剤は、「薬剤としては水酸化カルシウムを基本としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成され」ており、本件発明1の機能シートに施された殺菌用薬剤の構成と一致し、さらに、引用発明1の薬剤は空気流動により拡散されるものであるので、揮発性を有すると認められる。そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
上記相違点2について検討する。
引用発明2の「薄板状の広告装置」は、文字や図形を印刷したものであることは自明であるので、本件発明1の「宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷した」「機能シート」に相当する。
引用発明2の「薄板状の広告装置」は、「タクシー」の「天井内張に取り付けられ」ているので、本件発明1の「機能シート」と引用発明2の「薄板状の広告装置」は、「天井面に」取り付けるとの概念で一致する。
引用発明1、2は、共に車内広告装置という共通の技術分野に属している。また、引用発明1の「機能シート」及び引用発明2の「薄板状の広告装置」は、共に不特定多数の人間が出入りする車内に取り付けられ広告宣伝機能を奏するという共通の作用・機能を有している。
そうすると、引用発明1の機能シートが貼着される位置として、引用発明2の天井内張を適用し、頭上上方の天井内張に機能シートを貼着する構成(大きさ、厚さ、粘着性など)を備えるようなすことは、当業者が容易になし得たことである。ここで、本件発明1は、「機能シート」の発明であるので、相違点2における「車両内の機能シートの貼着位置としては、後部座席位置の天井面に貼着」するという特定事項は、「後部座席位置の天井面に貼着」できる構成(大きさ、厚さ、粘着性など)を有することを特定しているに過ぎないと解される。そして、上記のとおり、引用発明1に引用発明2を適用することにより、貼着される位置として、天井内張に貼着する構成(大きさ、厚さ、粘着性など)を備えるようにした機能シートは、「後部座席位置」であっても天井内張に貼着できる構成(大きさ、厚さ、粘着性など)を備えるといえる。したがって、上記相違点2に係る発明特定事項は、引用発明1に引用発明2を適用して、当業者が容易になし得るものである。
上記相違点3について検討する。
本件発明1は、「機能シート」の発明であり、相違点3における「空気循環流通における空気流動」が「エアコンからの空気の吹き出し」から「後部座席下方の空気循環用の吸気孔まで」至る機能シートに作用する空気の流れに関する事項は、「機能シート」自体の構成を何ら特定しているものではない。そうすると、相違点3における「空気循環流通における空気流動」が「エアコンからの空気の吹き出し」から「後部座席下方の空気循環用の吸気孔まで」至るとの事項は、引用発明1の「機能シート」との実質的な相違点とはならない。
したがって、本件発明1は、引用発明1、引用発明2から、当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、本件発明1の効果も引用発明1、2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、本件発明1は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和5年3月1日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定される。すなわち、上記「第2 1(1)」【請求項1】に記載された事項により特定されたとおりのものと認める。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和5年3月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の事項を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.登録実用新案第3218315号公報
2.実願昭46-087322号(実開昭48-043590号)のマイクロフィルム
3 引用文献
令和5年3月1日付けの拒絶理由通知書で引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 2(2)イ」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明1は、実質的に、本件発明1において、「空気循環流通」の「エアコンから空気の吹き出し」について、「空気後部座席位置の天井面へ」との事項、「機能シートからの薬剤拡散」について「運転席及び後部座席にまで至ること」との事項を削除するものである。
そうすると、本願発明1と引用発明1とを対比すると、上記「第2 3 (3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
「殺菌機能を有する広告媒体として狭空間に用いる機能シートであって、機能シートは紙・布状シート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に殺菌用薬剤を施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、機能シートを用いる狭空間は、車両内とすると共に、エアコンからの空気の吹き出しから空気循環流通における空気流動によって、機能シートからの薬剤拡散により車中ウイルスの除去殺菌が行われるように車両内に貼着することを特徴とする狭空間に用いる機能シート。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明1の殺菌用薬剤は揮発性であるのに対して、引用発明1の殺菌用薬剤が揮発性であるのか否か不明である点。
相違点2:本願発明1の「車両内の機能シートの貼着位置」としては、「後部座席位置の天井面」であるのに対して、引用発明1の機能シートが貼着されるのは、「車内空間の要・殺菌個所の平面部材」である点。
相違点3:本願発明1では、「空気循環流通における空気流動」が「エアコンからの空気の吹き出し」から「後部座席下方の空気循環用の吸気孔まで」至るのに対して、引用発明1では、「空気」は「エアコンの稼働による空間内に対流」している点。
そうすると、上記「第2 3(4)判断」における検討内容を踏まえれば、上記相違点1、3は実質的な相違点ではないし、上記相違点2は、引用発明1及び引用発明2から当業者が容易に発明できたものである。
5 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1と引用文献2は、互いに組み合わせることで、自動車の社内に広告機能と殺菌機能を備えたシートを貼着する考えに至るものと考えられます。しかしながら、引用文献1の殺菌機能は、接触したウイルスを殺菌する旨の記載しかされておらず、車内の循環空気による薬効の拡散までの効果は謳えません。」(主張1)、「また、引用文献2には、車内の天井面に接着する旨の記載がされておりますが、本願発明のように、後部座席位置の天井面とまで記載がされておらず、本願発明の機能シートの薬剤効果を空気の循環により拡散させるに至るには不十分であります」(主張2)と主張する。
しかし、請求人の主張1については、上記第2 3(2)のとおり、引用文献1の記載事項から引用発明1を認定するにあたり、「エアコンの稼働による空間内に対流する空気が機能シートに接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起することができ、機能シートに含浸した薬剤が拡散されて、空間内の殺菌・除菌・抗菌を可能とする」機能としての技術事項を認定したまでのものである。そして、請求人の主張2については、上記第2 4(2)のとおり、本願発明1は機能シートの発明であるので、「後部座席位置」の天井面との使用箇所を特定する事項は、機能シートが天井面の後部座席位置であっても貼着し得る構成であることをいうにすぎず、引用発明1に引用発明2を適用することで、上記構成は当業者が容易に想到できたものであると認められる。
また、審判請求人は、上申書(令和6年1月11日提出)において、「従って、エアコン吹き出し口からの空気の流通指向先の特定が、本願発明ではタクシー車内の天井面に向かってぶつかる方向にあるに対して引用文献1の図4ではかかるエアコンの吹き出し指向先が特定されず、車内の広範囲に拡散する点において、本願発明と引用文献1とでは全く異なる。」と主張する。
しかしながら、本件発明1の「エアコンからの空気の吹き出しから後部座席位置の天井面へ、更には後部座席下方の空気循環用の吸気孔までの空気循環流通における空気流動」との特定は、エアコンからの空気の吹き出しが空気循環流通によって後部座席位置の天井面へ流れることを特定しているにすぎず、エアコンからの空気の流通指向先が後部座席位置の天井面に向かっていると特定されているものではないから、上記上申書の主張は、請求項の記載に基づくものではない。なお、仮に請求項において流通指向先が明確に特定されていたとしても、上記第2 4(2)のとおり、エアコン吹き出し口からの空気の流通指向先は、本件発明1の機能シートを何ら特定しない。
よって、請求人の主張はいずれも採用できない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-018514