特許拒絶査定不服審判
2024-001643
天井に殺菌等の機能シートを貼付した車両
- 審判番号
- 2024-001643
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-032111
- 請求日
- 2024年01月31日
- 審決日
- 2024年09月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フラッグス株式会社
- 【請求人代理人】松尾 憲一郎
- 【請求人代理人】市川 泰央
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 桐山 愛世
- 審判官 山本 一
- 分類
- P18 .561-Z (G09F) / P18 .121-Z (G09F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 32111「天井に殺菌等の機能シートを貼付した車両」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-134886〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月25日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和4年12月21日付け:拒絶理由通知書
令和5年 2月15日:意見書、手続補正書の提出
同年 4月14日付け:拒絶理由通知書
同年 8月24日:意見書、手続補正書の提出
同年10月23日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。同年10月31日:原査定の謄本の送達)
令和6年 1月31日:審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年1月31日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和6年1月31日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和5年2月15日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)(なお、令和5年8月24日にされた手続補正は、令和5年10月23日付けで補正の却下の決定がなされている。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
頭上上方のタクシー天井面に殺菌機能を有する車両用広告媒体としての機能シートを貼付すると共に、車内における空気流通、すなわち、エアコン吹き出し口からの空気循環流通・流動により天井面の機能シートに接触させて機能シートから薬剤が拡散して車内の浮遊するウイルスの除去殺菌を行うべく構成し、しかも、車内における空気流通は、エアコン吹き出し口からの吹き出し空気を後部座席の天井面方向に流通させ機能シートと接触させて座席下部に設けた吸気孔から吸引させタクシーのボディと内層部との間に配設した外気流通路を経てタクシー外に排気されるように構成したことを特徴とする天井に殺菌等の機能シートを貼付した車両。」
(2)本件補正後の本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
搭乗者が後部座席に着座した際の頭上上方のタクシー天井面に殺菌機能を有する車両用広告媒体としての機能シートを貼付すると共に、後部座席の天井面方向に向けて空気を吹き出すエアコン吹き出し口を前部座席の前方に設け、エアコン吹き出し口からの空気は空気循環流通・流動作用により天井面の機能シートに接触すべく構成し、機能シートからの薬剤は拡散して車内の浮 遊するウイルスの除去殺菌を行い、しかも、車内における空気流通は、エアコン吹き出し口からの吹き出し空気を後部座席の天井面方向に流通させ機能シートと接触させて座席下部に設けた吸気孔から吸引させタクシーのボディと内層部との間に配設した外 気流通路を経てタクシー外に排気されるように構成したことを特徴とする天井に殺菌等の機能シートを貼付した車両。」
(3)本件補正の内容
上記(1)及び(2)によれば、本件補正は、
ア 本件補正前の請求項1の「頭上上方のタクシー天井面」という記載を、「搭乗者が後部座席に着座した際の頭上上方のタクシー天井面」とする補正(以下「補正事項1」という。)、
イ 本件補正前の請求項1の「車内における空気流通、すなわち、エアコン吹き出し口からの空気循環流通・流動により天井面の機能シートに接触させて機能シートから薬剤が拡散して車内の浮遊するウイルスの除去殺菌を行うべく構成し」という記載を、「後部座席の天井面方向に向けて空気を吹き出すエアコン吹き出し口を前部座席の前方に設け、エアコン吹き出し口からの空気は空気循環流通・流動作用により天井面の機能シートに接触すべく構成し、機能シートからの薬剤は拡散して車内の浮 遊するウイルスの除去殺菌を行い」とする補正(以下「補正事項2」という。)、
からなるものである。
2 補正の適否について
(1)新規事項
ア 補正事項2について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていた事項であるか検討する。
イ 補正事項2に関連して、当初明細書等には以下の記載がある。
「【0039】
特に、エアコンからの空気の吹き出しと共に、後部座席の下方には空気循環用の吸気孔bが設けられており、エアコン吹き出し口aからの吹き出し空気Aは後部座席の天井面方向に流通して、座席下部の吸気孔bから吸引されて車両のボディと内層部との間に配設した外気流通路を経て車両外に排気される。」
「図1
[図:0001417468000001.jpg]
」
当初明細書等には、「エアコン吹き出し口aからの吹き出し空気Aは後部座席の天井面方向に流通し」(段落【0039】)と記載されている。また、当初明細書等の図1から、エアコン吹き出し口aからの吹き出し空気Aが、エアコン吹き出し口aから吹き出された直後は、運転者の首方向へ吹き出されており、その後に、ハンドル付近で方向を変え、運転者の頭上を通り、後部座席の天井面方向に向かっている様子が看取できる。
一方で、補正事項2の「後部座席の天井面方向に向けて空気を吹き出す」「エアコン吹き出し口」とは、「エアコン吹き出し口」から吹き出す空気の方向を「後部座席の天井面方向」に「向け」ることを特定している。しかしながら、当初明細書等に明示があるのは、吹き出し空気が天井面方向に流通することのみで、図1をみても直接に天井面方向に向けて吹き出しているものではないから、当初明細書等の当該記載は、空気の流通、循環の結果として天井面方向にも流れるような空気の流れをいうにすぎないとも解される。そして、当初明細書等には、エアコン吹き出し口aからの吹き出し空気Aが後部座席の天井面方向に吹き出す、すなわち、エアコン吹き出し口aからの吹き出し空気Aの吹き出し方向が後部座席の天井面方向であるとは記載されていないし、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
そうすると、補正事項2の「後部座席の天井面方向に向けて空気を吹き出す」「エアコン吹き出し口」という事項については、当初明細書等から自明な事項や技術常識から導かれる事項でもないため、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、本件発明1は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和5年2月15日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定される。すなわち、上記「第2 1(1)」【請求項1】に記載された事項により特定されたとおりのものと認める。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和5年4月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の事項を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載の発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.登録実用新案第3218315号公報
2.実願昭46-087322号(実開昭48-043590号)のマイクロフィルム
3.特開2015-209093号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2006-188182号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった登録実用新案第3218315号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0010】
この考案の要旨は、要・殺菌個所の平面部材に、紙質のシート本体の表面に薬剤を塗布し裏面に粘着剤を塗布した所定大きさの機能シートを貼付すると共に、機能シート本体表面の薬剤としては水酸化カルシウムを基本としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、しかも、シート本体の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷したことを特徴とする殺菌等機能を有する機能シートに関する。
・・・
【0012】
機能シート10は大きさを略A4タイプにしており、この大きさ規格は使用する個所に対応して適宜選択することができる。
【0013】
殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シート10は、基本的にはCa(OH)2消石灰を漆喰塗料として使用すると共に、これにスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成している。
【0014】
具体的には、Ca(OH)2消石灰は0.3kg/m2の量を使用している。
また、図2に示すように、機能シート10の裏面に塗布する粘着剤11としてはアクリルゴムを使用する。
かかる機能シート10は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、MRSA等の抗菌性を有し、また、ノロウイルス、インフルエンザウイルスを不活性化する抗ウイルス機能を有し、ペット臭やたばこ臭や生ごみ臭等の生活臭やトイレ臭を除去する消臭機能を有する。」
イ 「【0038】
また、殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シート10は、紙質のシート本体12の表面に薬剤13を塗布し、裏面に粘着剤11、例えば、アクリルゴムを塗布すると共に、薬剤13としては水酸化カルシウムを基本としたことにあり、しかも、塗布した薬剤13の表面或いは機能シート10の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷する印字面14を備えている。
・・・
【0040】
実施例1で示したトイレの便蓋21の裏面に貼着した状態では、図2に示すように、便器ボウル22内と便座23とスペーサ24の隙間から機能シート10に含浸した薬剤13が拡散されて、トイレ空間S内の殺菌・除菌・抗菌を可能としていたが、その効果は便器ボウル22内に対するものが大半でありトイレ空間S内に対しては効果が薄かった。
・・・
【0042】
また、他の実施例として、図4に示すように、本考案の機能シート10は電車の吊下げ広告40にも活用することができる。電車D内は特に他者との接触が多い場所であり、また、人が密集することで熱量が大きくなることからエアコンAを稼働させることで空気を対流させており、車内の一部の人がウイルスキャリアである場合、多くの人にウイルスが拡散される虞がある。
【0043】
そこで、図4に示すように、電車D内のエアコンAの吹き出し口に比較的近い吊下げ広告40の掲示場所に機能シート10の裏面の粘着剤11同士を貼着した状態(印字面14が両表面となる状態)で吊下げることでウイルスが拡散される前に機能シート10の印字面14で吸着することができる。また、吊下げ広告40として使用する際の幅員を車両天井面の幅員と略同等とすることで、車両内を対流する空気が確実にこの機能シート10に接触して効率的なウイルスの吸着作用を生起することができる。」
ウ 「【0049】
このような不特定多数の人間が出入りする空間に殺菌・除菌・抗菌作用を備えた本考案の機能シート10を貼着することで浮遊するウイルスを吸着して該空間を清潔に保ちウイルスが拡散される虞を低減できる。
・・・
【0051】
実施例1から実施例7に記載したように、便器の使用者、その他、機能シート10を貼付した周辺個所にいる者は使用時に便蓋21を開け蓋開放と同時に機能シート10が眼前に現れて用を足す間に機能シート10に印刷された宣伝広告表示を認識し、或いは各実施例の機能シート10の使用形態において機能シート10に直面して飲食や自動車等への乗車や病院での検診等の行動をする時に殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も受けることができる。」
エ 上記ウの【0051】「機能シート10の使用形態において自動車等への乗車・・・の行動をする時に殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も受けることができる。」との記載から、殺菌等の機能と共に広告宣伝機能も受ける機能シートの使用形態として自動車への乗車時が認められる。また、上記アの【0010】の「要・殺菌個所の平面部材に、・・・所定大きさの機能シートを貼付」との記載、及び上記ウの【0049】の「不特定多数の人間が出入りする空間に・・・機能シート10を貼着することで、該空間を清潔に保」つとの記載からすれば、自動車の使用形態として、要・殺菌個所として不特定多数の人間が出入りする車内空間の平面部材に機能シートが貼着されるものが把握できる。
オ 上記イの【0040】より、機能シート10は、含浸した薬剤13が拡散されて、トイレ空間S内の殺菌・除菌・抗菌を可能することから、機能シートに含浸した薬剤が拡散されて、空間内の殺菌・除菌・抗菌を可能とすると認められる。
カ 上記イの【0042】、【0043】より、エアコンを稼働させることで空気を対流させており、空間内に対流する空気が確実にこの機能シート10に接触して効率的なウイルスの吸着作用を生起することができることから、エアコンの稼働による空間内に対流する空気が機能シートに接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起することができると認められる。
上記ア~ウの記載事項及びエ~カの認定事項から、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「不特定多数の人間が出入りする車内空間の要・殺菌個所の平面部材に、紙質のシート本体の表面に薬剤を塗布し裏面に粘着剤を塗布した所定大きさの機能シートを貼付すると共に、機能シート本体表面の薬剤としては水酸化カルシウムを基本としスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成し、しかも、機能シートは、シート本体の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷した、殺菌機能を有するものであり、エアコンの稼働による空間内に対流する空気が機能シートに接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起することができ、機能シートに含浸した薬剤が拡散されて、空間内の殺菌・除菌・抗菌を可能とする、自動車。」
(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願昭46-087322号(実開昭48-043590号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「3考案の詳細な説明
本考案はタクシー等の自動車における車内広告装置に関する考案である。従来タクシー等の運転席の背当の表面あるいは天井内張には薄板状の広告装置を取り付けて宣伝に供しているが、近来これら自動車においては運転を楽におこなえるように運転席に傾斜を持たせ、あるいは事故に備えて安全枕を取付けるようになつた為、従来の様な薄板状の車内広告装置では客席より見苦しくなり、車内広告としての機能が半減する結果となつている。」(明細書第1頁第14行~第2頁第4行)
上記アの記載事項より、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明2)
「天井内張に薄板状の広告装置を取り付けられるタクシー。」
(3)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-209093号公報に次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
電池温度が上昇すると、電池の入出力特性が劣化してしまうことが知られている。このため、ハイブリッド自動車や電気自動車では、車両走行用の電力を供給するバッテリを冷却する温度調節機構が設けられている。例えば、ブロワを駆動することにより、吸気ダクトを介して車室内の空気をバッテリに導くことができる。このとき、車室内の空気は、エアコン(Air Conditioner:A/C)等の空調装置によって、温度調節されている( 例えば、特許文献1 参照)。・・・」
イ 「【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0042】
(実施例1)
図1から図5は、本発明の第1実施例を示す図である。図1は、車両の概略図である。図1等において、矢印FRは、車両100の前方方向を示し、矢印RHは、車両100の前方方向F R に直交する横(幅)方向を示している。矢印UPは、車両100の上方向を示している。
【0043】
車両100は、車室内にシート101、102、103が配置されている。車室とは、乗員が乗車するスペースである。シート101,102は、例えば、運転席及び助手席である。シート101,102は、車両100の前席を構成しており、前席よりも後方に位置するシート103が、後部座席である。なお、前席を構成する運転席と助手席との位置関係は、逆であってもよい。
【0044】
シート101、102,103は、車両100のフロアパネルPに固定されている。電池パック10は、シート103の下部に形成されたスペースに配置され、フロアパネルPに固定されている。つまり、電池パック10は、シート103のシートクッション(座部)とフロアパネルPとの間に配置されている。」
ウ 「【0056】
本実施例の車両100は、車室内空調ユニット50を備えている。車室内空調ユニット50は、冷却又は加熱された空気(温度調節された空気)を供給するHVACユニット51と、HVACユニット51から延びる各経路の端部に設けられる複数の吹き出し口と、を備えている。なお、車室内空調ユニット50は、内気循環タイプの空調(外気を取り込まずに、内気取込口から空気を取り込んで車室内で空気を循環させる)又は/及び外気循環(外気取込口から外気を取り込んで、車室内に空気を供給する)を行うことができる。
【0057】
複数の吹き出し口は、HVACユニット51から延びる運転席空調経路52Aに設けられ、運転席の前方に配置されるとともに運転席に面する吹き出し口521,522と、助手席空調経路52Bに設けられ、助手席の前方に配置されるとともに助手席に面する吹き出し口523,524とを含んで構成される。
・・・
【0061】
図2は、車室内空調ユニット50の運転席に対応する吹き出し口521,後部座席に対応する531及び電池パック10の温度調節機構の吸気口3aとの位置関係を示す図である。図2に示すように、吹き出し口521(522)は、運転席よりも前方に設けられ、運転席に向かって温度調節された空気を吹き出す。また、運転席背面側のシート下に吹き出し口531が設けられ、HVACユニット51によって温度調節された空気が、吹き出し口531から空間Sに供給される。吸気口3aは、吹き出し口531から空間Sに吹き出された空気を取り込むことができる。」
エ 「図1
[図:0001417468000002.jpg]
」
オ 「図2
[図:0001417468000003.jpg]
」
カ 上記アの【0002】に、車室内の空気は、エアコンによって、温度調節されていることが記載されている。また、上記ウの【0056】、【0057】及び【0061】には、車両100内に備えられた車室内空調ユニット50の運転席101の前方に配置されるとともに運転席に面する吹き出し口521、522から水平方向に吹き出されることが把握できる。ここで、上記エの図1の吹き出し口521、522と運転席101との配置関係において、エアコンの吹き出し口から水平方向に吹き出された空気の少なくとも一部は、流通、循環の結果として、運転席101の背もたれの傾斜、あるいは運転席101に座った運転者に沿って、運転席101あるいは運転者の上方を通過し、運転席101より後方に位置するシート103の天井面方向まで流通することは明らかである。
(4)引用文献3から把握できる周知技術
上記(3)ア~オの記載事項及びカの認定事項から、上記引用文献3には以下の技術が記載されており、これは、本願出願前の自動車分野において周知技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
(周知技術1)
「車両において、車内の前方側にエアコン吹き出し口を設け、エアコン吹き出し口から吹き出される空気を、車内の天井面方向に流通させる技術。」
(5)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-188182号公報に次の事項が記載されている。
ア 「【0028】
吸気口(1)114は、シートクッション100の下側に設けられる。吸気口(1)は、フロントシート(図示せず)とリアシート150との間の足元空間に開口するように形成される。一方、吸気口(2)116は、リアシート150よりも後方側の内装に形成される。たとえば、吸気口(2)116は、上部が開くようにして、リアシート150よりも後方側のパッケージトレイトリム122に形成される。」
イ 「【0036】
なお、好ましくは、吸気口(1)は、吸気口(2)よりも車両の前方かつ相対的に低い位置に設けられることが望ましい。車両の室内の前方側の方がエアコンディショナにおいて調整された風の影響で比較的空気の温度が低い。また、室内の上部の領域の方が日光により暖められるなどして、熱気が溜まり易い。したがって、吸気口(1)を吸気口(2)よりも車両の前方かつ相対的に低い位置に設けることにより、通常時においては、吸気口(1)から温度の低い空気を選択的に導入することができるため、蓄電機構の冷却効率を向上させることができる。」
ウ 「【0053】
吸気口(1)114から導入された空気は、吸気ダクト112、冷却ファン106へと流通する。そして、冷却ファン106は、空気を排気ダクト(1)108を介して電池パック120に流通させる。電池パック120において、熱交換された空気は、排気ダクト(2)110を流通した後、トランクスペースの排気ダクトから車外に排出される。」
エ 「図1
[図:0001417468000004.jpg]
」
オ 上記イより、エアコンディショナの吹き出し口からの空気は、車室内を対流していることは自明な事項である。
カ 上記ア、ウより、リアシートの足元に吸気口を設けていることが認められる。
キ 上記オ、カより、エアコンディショナの吹き出し口からの空気は、車内を流通しており、流通した空気は、リアシートの足元にある吸気口に吸引されることは自明な事項である。
ク 上記ウより、トランクルームに設けられた排気ダクトから、車外へ排気されるので、トランクルームの外側であるボディと内層部と認められるトランクルームとの間に排気ダクトは配設したものと認められる。
(6)引用文献4から把握できる周知技術
上記(5)ア~エの記載事項及びオ~クの認定事項から、上記引用文献4には、以下の技術が記載されており、これは、本願出願前の自動車分野において周知技術(以下「周知技術2」という。)であったと認められる。
(周知技術2)
「車両において、車内の前方側にエアコン吹き出し口を設け、エアコン吹き出し口から吹き出される空気が車内を循環・流動し、座席下部に設けた吸気孔から吸引させ、ボディと内層部との間に配設した外気流通路を経て車外へ排気させる技術。」
4 対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「機能シート」、「自動車」は、本願発明1の「機能シート」、「車両」に相当する。
イ 引用発明1の「機能シート」は、「車内空間の要・殺菌個所の平面部材に」「貼付」し、「シート本体の表面には宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷した、殺菌機能を有するもの」なので、本願発明1の「機能シート」と引用発明1の「機能シート」とは、「殺菌機能を有する車両用広告媒体としての機能シート」との概念で一致する。
ウ 引用発明1の「機能シート」は、「車内空間の要・殺菌個所の平面部材に」「貼付する」ので、本願発明1の「機能シート」と引用発明1の「機能シート」とは、「貼付」するものとの概念で一致する。
エ 引用発明1の「機能シート」は、「エアコンの稼働による空間内に対流する空気が機能シートに接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起することができ、機能シートに含浸した薬剤が拡散されて、空間内の殺菌・除菌・抗菌を可能と」し、「エアコンの稼働による空間内に対流する空気」とは、エアコンの吹き出し口から出されて車内で対流する空気であることは自明であるので、本願発明1の「機能シート」と引用発明1の「機能シート」とは、「車内における空気流通、すなわち、エアコン吹き出し口からの空気循環流通・流動により、機能シートに接触し、機能シートからの薬剤は拡散して車内の浮遊するウイルスの除去殺菌を行」うものとの概念で一致する。
オ 引用発明1の「シート本体の表面には」「殺菌機能を有」する、「機能シートを貼着する」「自動車」は、本願発明1の「殺菌等の機能シートを貼付した車両」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、
「殺菌機能を有する車両用広告媒体としての機能シートを貼付すると共に、車内における空気流通、すなわち、エアコン吹き出し口からの空気循環流通・流動により、機能シートに接触し、機能シートからの薬剤は拡散して車内の浮遊するウイルスの除去殺菌を行い、殺菌等の機能シートを貼付した車両。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明1では、「タクシー天井面」、「タクシーのボディ」、「タクシー外」と「車両」がタクシーであることを示す特定がなされるのに対して、引用発明1では、「不特定多数の人間が出入りする車内空間」がある自動車であるが、タクシーとの特定はない点。
相違点2:本願発明1では、「頭上上方」の「天井面に」「機能シートを貼付し」、「エアコン吹き出し口からの空気は空気循環流通・流動により天井面の機能シートに接触させ」ているのに対して、引用発明1では、「要・殺菌個所の平面部材に」「機能シートを貼付」し、エアコン吹き出し口からの空気は空気循環流通・流動作用により機能シートに接触すべく構成しているが、「機能シートを貼付」する場所が具体的には特定されていない点。
相違点3:本願発明1では、「車内における空気流通は、エアコン吹き出し口からの吹き出し空気を後部座席の天井面方向に流通させ機能シートと接触させて座席下部に設けた吸気孔から吸引させ」「ボディと内層部との間に配設した外気流通路を経て」「外に排気されるように構成」されているのに対して、引用発明1では、空間内に機能シートに対流する空気が接触することにより、効率的なウイルスの吸着作用を生起しているが、エアコンの稼働による空間内での空気の具体的な流れについては不明である点。
(2)判断
上記相違点1について検討する。
不特定多数の人間が出入りする車内空間がある自動車として、タクシーが存在することは、例を挙げるまでもなく本願出願前に一般に広く知られた周知の事項(以下「周知事項」という。)である。
そうすると、引用発明1における「不特定多数の人間が出入りする車内空間がある自動車」を上記周知の「タクシー」に特定することは、当業者であれば適宜なし得たことである。
上記相違点2について検討する。
引用発明2の「薄板状の広告装置」は、文字や図形を印刷したものであることは自明であるので、本願発明1の「宣伝広告の機能も具備する文字や図形を印刷した」「機能シート」に相当する。
引用発明2には、「天井内張に薄板状の広告装置を取り付けられ」ているので、本願発明1の「機能シート」と引用発明2の「薄板状の広告装置」は、「頭上上方の天井面に」取り付けるとの共通の概念で一致する。
引用発明1、2は、共に車内広告装置という共通の技術分野に属している。また、引用発明1の「機能シート」及び引用発明2の「薄板状の広告装置」は、共に不特定多数の人間が出入りする車内に取り付けられ広告宣伝機能を奏するという共通の作用・機能を有している。
そうすると、引用発明1に、引用発明2の天井内張に広告装置を取り付ける点を適用し、頭上上方の天井面に機能シートを取り付けることは、当業者が容易に想到し得るものである。そして、そのような位置に取り付けられたとしても、機能シートは、空気循環流通・流動作用によりエアコン吹き出し口からの空気の少なくとも一部が接触することは自明である。
上記相違点3について検討する。
上記3(4)において、周知技術1として認定したとおり、車両において、車両の室内の前方側のエアコン吹き出し口があり、エアコン吹き出し口から吹き出される空気は、車内の天井面に方向に流通することは、周知の技術である。
また、上記3(6)において、周知技術2として認定したとおり、車内を流通した空気が座席下部に設けた吸気孔から吸引され、車のボディと内層部との間に配設した外気流通路を経て車外に排気されることは、周知の技術である。
そして、引用発明1の機能シートに接触する、エアコンの稼働による空間内に対流する空気として、自動車分野で従前広く採用されている上記周知技術1、2の車内のエアコン吹き出し口から吹き出される空気を、それぞれ適用して、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
したがって、本願発明1は、引用発明1、引用発明2、上記周知技術1、2、及び周知事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、本願発明1の効果も引用発明1、2、上記周知技術1、2、及び周知事項から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
5 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張する。(スペースは改行を意味する。)「1)すなわち、引用文献1では、「殺菌が必要な空間として交通機関の車内についても例示されていると共に、エアコンによる空気の対流が生じることについても記載されていると補正却下の決定では述べられている。 しかし、引用文献1では、単なる交通機関の車内について例示されているにすぎず、本願発明のように「タクシー」という限定ではなく、このタクシーの狭空間内で特にタクシーの天井面でかつ後部座席の上方位置という限定は全くない。引用文献1は、列車内の天井のエアコンの後方で、吊下げ広告に関して開示されているに過ぎない。 これに対し、本願発明では、タクシー天井面のうち、特に「後部座席の上方の位置」という限定を行っており、かかる「後部座席の上方位置」という限定によってタクシーという狭空間車内における運転席ダッシュボードの空気吹き出し口といに限定されることによって、空気吹き出し口からの空気流通や空気循環流通により車内の天井部の機能シートに流動空気が接する。空気流通は天井面からそのまま当然に後部座席における空間に至り、後部座席下方の吸気孔bに到達する。 従って、ダッシュボードの空気の吹き出し口からの吹き出し空気はタクシーの狭空間において図1に図示する吹き出し空気流通路の軌跡を画いてタクシー車内を後部座席空間まで円弧状に循環して終端は最終的には後部座席下部の吸気孔bに至る。 かかる循環経路の中途においてタクシー天井部の機能シートと接して、薬剤を拡散して車内に漂う浮遊のウイルスの除去殺菌機能を果たす。2)審査官は引用文献1は、列車内の吊下げ広告の位置を本願の機能シートの位置と重複して理解されているが、両者は全く異なる発想の技術である。 引用文献1は、単に吊下げ広告をもって本願発明のタクシー天井部の機能シートと同一とみているが、同じ車内の天井部の近くに広告シートを配するという次元で両者を対比するものではない。本願発明は、エアコン吹き出し口から車内を循環して後部座席の吸気孔bに至る流通経路を特定し、その中途が天井部の機能シートに接するという循環経路の特殊性を特許請求の範囲とした。 これに対して、引用文献1は列車エアコンの吹き出し口下方に配した吊下げ広告を指称し単なるエアコン下方に吊下げ広告を配したに過ぎない技術を開示しているに過ぎない。 本願発明では、そのような単純な構成ではなく、ダッシュボードのエアコン吹き出し口から車内循環を経て、特に座席後部天井面に一たん立ち寄りした流通空間が中途の立ち寄り時に機能シートと接して、機能シートからの薬剤拡散を促して車内に浮遊するウイルスの殺菌除去を行うものである。 3)引用文献1と対比しても本願発明は〈1〉かかる循環経路を形成すること、〈2〉その中途で薬剤シートと接して薬効成分を拡散すること、の二点において引用文献とは基本的に異なる技術である。 引用文献1にはエアコンからの空気吹き出し口によってその下方の吊下げ広告が揺れるだけであり、エアコンからの吹き出し空気により機能シートからの薬効成分を車中に拡散する技術は全く開示されていない。」
しかし、請求人の主張の1)については、上記3(1)のとおり、引用文献1の記載事項から引用発明1を認定するにあたり、電車内の吊下げ広告の使用例ではなく、エアコンの稼働により対流する空気が機能シートに接触することで、効率的なウイルスの吸着作用を生起する機能シートの機能としての技術事項等と合わせて、「不特定多数の人間が出入りする車内空間」を有する「自動車」の発明として認定したものである。請求人の主張の2)についても、上記3(1)のとおり、引用発明1を認定しており、請求人が主張しているような認定・対比は行っていない。また、請求人の主張の3)については、本願発明1と引用発明1との対比の結果である相違点は、上記4(1)のとおりであって、相違点1は、周知事項を、相違点2は、引用発明2を、相違点3は、周知技術1、2を、それぞれ引用発明1に適用することにより、上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易と判断するものであり、引用発明1からのみ、本願発明1を導きだせると判断しているものではない。
よって、請求人の主張はいずれも採用できない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-001643