特許拒絶査定不服審判
2024-016555
加飾部材、樹脂成形品及び加飾付き表示装置
- 審判番号
- 2024-016555
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-512933
- 請求日
- 2024年10月16日
- 審決日
- 2026年03月31日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】堀田 幸裕
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 山本 一
- 審判官 殿川 雅也
- 分類
- P18 .575-Z (G09F) / P18 .121-Z (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024-512933「加飾部材、樹脂成形品及び加飾付き表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年10月 5日国際公開、WO2023/191087〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2023年(令和5年)3月31日を国際出願日とする日本語特許出願(優先権主張 2022年(令和4年)3月31日)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、以下令和4年3月31日を「優先日」という。
令和6年 5月28日 :手続補正書の提出
同年 6月12日付け:拒絶理由通知
同年 7月 2日 :意見書、手続補正書の提出
同月11日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月16日 :原査定の謄本の送達)
同年10月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 1月29日 :上申書の提出
第2 令和6年10月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年10月16日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年10月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年7月2日にされた手続補正後をいう。)の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
意匠を表示する第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する加飾部材であって、
前記第1面から前記第2面に向かって、導管模様を含む木目の意匠を形成する加飾層と、所定のパターンで配置されて前記加飾層に重ねられた光吸収部と、をこの順で備え、
前記加飾層は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させ、
前記加飾層は、シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層と、マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層と、イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層と、を含み、
前記加飾層は、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含み、
前記暗色を呈する部分は、前記導管模様に対応して配置される、加飾部材。」
(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
意匠を表示する第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する加飾部材であって、
前記第1面から前記第2面に向かって、導管模様を含む木目の意匠を形成する加飾層と、所定のパターンで配置されて前記加飾層に重ねられた光吸収部と、をこの順で備え、
前記加飾層は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させ、
前記加飾層は、シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層と、マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層と、イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層と、を含み、
前記加飾層は、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含み、
前記暗色を呈する部分は、前記導管模様に対応して配置され、
前記第1層、前記第2層及び前記第3層の各々は、ブラック系の色を呈する着色剤を含まない、加飾部材。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層」、「マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層」、「イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層」において、各層に含まれる着色剤を「ブラック系の色を呈する着色剤を含まない」との特定の配合に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 新規事項追加か否かの判断
本件補正が、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるかについて以下検討する。
願書に添付した明細書には、次の記載がある。下線は合議体が付した。
「 【0024】
第1層31、第2層32及び第3層33は、他の種類の色を呈する着色剤を含んでもよいが、ブラック系の色を呈する着色剤はほとんど含まない。第1層31、第2層32及び第3層33が含むブラック系の色を呈する着色剤の濃度は、5%以下であってもよいし、3%以下であってもよいし、1%以下であってもよいし、0.5%以下であってもよい。第1層31、第2層32及び第3層33は、ブラック系の色を呈する着色剤を含まなくてもよい。」
そうすると、本件補正で追加された「前記第1層、前記第2層及び前記第3層の各々は、ブラック系の色を呈する着色剤を含まない」とすることは、明細書に記載があると認められる。
したがって、本件補正で限定された事項は、明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
4 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2)各引用文献等に記録された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、優先日前の令和2年10月1日に発行された特開2020-157671号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、引用発明の認定等に用いる記載に合議体が付したものであり、以下引用文献について同様である。
a 【0001】
「【技術分野】
【0001】
本開示は、光源からの光を透過する性能を有する加飾用積層体、及び該加飾用積層体を含む照明表示装置に関する。」
b 【0023】
「【0023】
図1に、本開示の一実施態様による加飾用積層体100の断面図を例示する。図1の加飾用積層体100は、光透過性を有する基材114と、第1接合層112と、第1樹脂層110と、反射層108と、第2接合層106と、第1凹凸層104とをこの順で含む。加飾用積層体は、任意の要素として、表面保護層、光透過性を有する基材、光透過性を有する上部意匠層、光透過性を有する下部意匠層、樹脂層、加飾用積層体を構成する層同士を接合する接合層(プライマー層)、剥離ライナーなどの追加層をさらに含んでもよい。図1では任意の要素として、光透過性を有する基材114、第1接合層112、第1樹脂層110、第2接合層106が示されている。」
c 【0046】~【0056】
「【0046】
本開示の加飾用積層体は、任意の要素として、光透過性の上部意匠層及び下部意匠層を有していてもよい。これらの意匠層は光透過性の領域を含んでいればよく、一つ又は複数の光不透過性の領域を含んでもよい。上部意匠層とは、反射層の上に配置される層であり、下部意匠層とは、第1凹凸層と反射層との間に配置される層である。
【0047】
一実施態様では上部意匠層の全体が半透明又は透明である。いくつかの実施態様では、上部意匠層の可視域における全光線透過率は、約1%以上、約2%以上、又は約3%以上であり、約70%以下、約60%以下、又は約50%以下である。本開示において、全光線透過率はJIS K 7361-1:1997(ISO 13468-1:1996)に準拠して決定される。上部意匠層の全光線透過率が上記範囲であることにより、背後から光源で照らしたときの第2意匠の視認性を高めることができる。
【0048】
いくつかの実施態様では、上部意匠層及び反射層の組み合わせの可視域における全光線透過率は、約0.01%以上、約0.02%以上、又は約0.05%以上であり、約12%以下、約10%以下、又は約8%以下である。上部意匠層及び反射層の組み合わせの全光線透過率が上記範囲であることにより、第2意匠の昼光下での視認性を有効に低下させ、かつ背後から光源で照らしたときの第2意匠の視認性を維持することができる。
【0049】
いくつかの実施態様では、下部意匠層の可視域における全光線透過率は、約1%以上、約2%以上、又は約3%以上であり、約70%以下、約60%以下、又は約50%以下である。下部意匠層の全光線透過率が上記範囲であることにより、背後から光源で照らしたときの第2意匠の鮮明性を高めることができる。
【0050】
上部意匠層及び下部意匠層として、例えば、塗装色などを呈する色層、木目、石目、幾何学模様、皮革模様などの模様、ロゴ、絵柄などを表す柄層、表面に凹凸形状が設けられたレリーフ(浮き彫り模様)層など、及びこれらの組み合わせを含む層が挙げられる。
【0051】
色層として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料などの顔料が、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタンなどのバインダー樹脂に分散された樹脂層を使用することができる。いくつかの実施態様では、上部意匠層は透明な色層を含み、かかる上部意匠層の全光線透過率は約85%以上、約90%以上、又は約95%以上とすることができる。
【0052】
柄層として、例えば、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング、打ち抜き、エッチングなどにより形成された模様、ロゴ、絵柄などを有する層を使用することができる。
【0053】
柄層は樹脂層に担持されていてもよい。樹脂層として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの共重合体又はこれらの混合物が使用できる。強度、耐衝撃性などの観点から、樹脂層としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びポリカーボネートが有利に使用できる。樹脂層はフィルム、シートなどの形態であってよい。
【0054】
柄層は異なる色及び/又は光透過率を有する複数の領域を含んでもよい。柄層は場所によって異なる色及び光透過率を有していてもよい。例えば、光源からの光が、柄層のある領域では透過し、別の領域では一部が透過し、さらに別の領域では透過しないような構成であってもよい。
【0055】
レリーフ層として、従来公知の方法、例えばエンボス加工、スクラッチ加工、レーザー加工、ドライエッチング加工、又は熱プレス加工などによる凹凸形状を表面に有する熱可塑性の樹脂層を使用することができる。凹凸形状を有する離型フィルム上に硬化性(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化性又は放射線硬化性樹脂を塗布し、加熱又は放射線照射により硬化して、離型フィルムを取り除くことによりレリーフ層を形成することもできる。レリーフ層に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂として、特に限定されないが、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどが使用できる。
【0056】
一実施態様において、上部意匠層は色層を有し、下部意匠層は柄層を有する。この実施態様では、昼光下など加飾用積層体の上面から光が入射する環境では一様な色の外観(第1意匠)を呈し、周囲が暗い状態で光源などを用いて加飾用積層体の下面から光を入射させたときに上部意匠層の色、下部意匠層の柄及び第1凹凸層による光の分散等による効果の組み合わせ(第2意匠)が視認される。別の実施態様において、上部意匠層及び下部意匠層はいずれも柄層を有する。この実施態様では、昼光下など加飾用積層体の上面から光が入射する環境では上部意匠層の柄(第1意匠)が視認され、周囲が暗い状態で光源などを用いて加飾用積層体の下面から光を入射させたときに上部意匠層の柄、下部意匠層の柄及び第1凹凸層による光の分散等による効果の組み合わせ(第2意匠)が視認される。」
d 【0097】
「【0097】
本開示の加飾用積層体は、装飾を目的とした内装及び/又は外装用途、例えば、車、鉄道、航空機、船などの乗物の内装又は外装部材(例えば各種のトリム部材、インテリアパネル部材)、家電製品、ショーディスプレイなどの各種用途に使用することができる。」
e 図1
「【図1】
[図:0001435733000001.jpg]
」
(イ)引用発明1
a 前記(ア)より、引用文献1には、次のとおりの発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「 光源からの光を透過する性能を有する加飾用積層体であって(前記(ア)a【0001】)、
光透過性を有する基材114と、第1接合層112と、第1樹脂層110と、反射層108と、第2接合層106と、第1凹凸層104とをこの順で含み(前記(ア)b【0023】)、
加飾用積層体は、光透過性の上部意匠層及び下部意匠層を有し、上部意匠層とは、反射層の上に配置される層であり、下部意匠層とは、第1凹凸層と反射層との間に配置される層であり(前記(ア)c【0046】)、
上部意匠層の全体が半透明又は透明であり(前記(ア)c【0047】)、
上部意匠層及び下部意匠層はいずれも柄層を有し(前記(ア)c【0056】)、
昼光下など加飾用積層体の上面から光が入射する環境では上部意匠層の柄が視認され、周囲が暗い状態で光源などを用いて加飾用積層体の下面から光を入射させたときに上部意匠層の柄、下部意匠層の柄及び第1凹凸層による光の分散等による効果の組み合わせが視認され(前記(ア)c【0056】)、
上部意匠層及び下部意匠層として、木目の模様を表す柄層が挙げられ(前記(ア)c【0050】)、
柄層として、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷により形成された模様を有する層を使用し(前記(ア)c【0052】)、
柄層は、光源からの光が、柄層のある領域では透過し、別の領域では一部が透過し、さらに別の領域では透過しないような構成であってもよく(前記(ア)c【0054】)、
車、鉄道、航空機、船などの乗物の内装(例えばインテリアパネル部材)などの各種用途に使用することができる(前記(ア)d【0097】)、
加飾用積層体。」
イ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載事項
優先日前の令和2年11月19日に発行され、当審において新たに引用した特表2020-533641号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0014】
本明細書に記載のデッドフロント物品の実施形態は、車両内装システム100、200、及び300のうちのいずれ又は全てにおいて使用できる。図1は自動車の内装を示しているが、車両内装システムの様々な実施形態を、有人操縦車両、半自動操縦車両、及び完全自動操縦車両を含む、列車、自動車(例えば乗用車、トラック、バス等)、船舶(ボート、船、潜水艦等)、及び航空機(例えばドローン、飛行機、ジェット機、ヘリコプター等)といったいずれのタイプの車両に組み込んでよい。更に、本明細書中の説明は主に車両ディスプレイにおけるデッドフロント実施形態の使用に関するが、本明細書に記載の様々なデッドフロント実施形態は、いずれのタイプのディスプレイ用途に使用してよいことを理解されたい。」
「【0022】
図5に示すように、デッドフロント物品400は、ディスプレイ520全体にわたって、又はディスプレイ520の前面に配置される。1つ以上の実施形態では、ディスプレイは、ディスプレイ及びタッチパネルを含むタッチ対応ディスプレイを含んでよい。例示的なディスプレイとしては、LEDディスプレイ、DLP MEMSチップ、LCD、OLED、透過型ディスプレイ等が挙げられる。実施形態では、ディスプレイ520は、例えば光学的に透明な接着剤530を用いて、デッドフロント物品400に固定又は設置される。デッドフロント物品400の平均透過率は、可視スペクトル、即ち400nm~700nmの波長範囲にわたって、約1%~約40%である。換言すれば、デッドフロント物品400は、約400nm~約700nmの波長範囲全体にわたって、約1%~約40%の平均透過率を示す。本明細書中で使用される場合、用語「透過率(transmittance)」は、材料(例えばデッドフロント物品、デッドフロントの基板又は層)を通って透過する、所与の波長範囲内の入射光パワーのパーセンテージとして定義される。実施形態では、デッドフロント物品400は、約10%以下の平均透過率を示す低透過率デッドフロント物品である。このような例では、不透明層500は、ディスプレイ520の縁部、即ち非ディスプレイ領域540、及び/又は配線、コネクタ等をぼかす必要がない場合がある。他の実施形態では、デッドフロント物品400は、可視スペクトルにわたって約10%~40%の平均透過率を示す、高透過率デッドフロント物品である。このような実施形態では、不透明層500は、非ディスプレイ領域540を、見えないようにブロックする必要があり得る。
【0023】
デッドフロント物品400について概説したが、これから半透明黒色層460に注意を向ける。上述のように、実施形態では、半透明黒色層460はガラス層450上に印刷される。実施形態では、半透明黒色層460は、CMYKカラーモデルを用いて印刷される。半透明黒色層460の印刷に使用されるインクは、熱硬化性又はUV硬化性インクであってよい。
【0024】
特に、上記インクは、少なくとも1つ以上の着色剤と、担体とで構成される。着色剤は、担体に可溶性であっても不溶性であってもよい。実施形態では、着色剤は微粉末の形態の乾燥着色剤である。このような微粉末は、実施形態では10nm~500nmのサイズの粒子を有してよい。CMYKカラーモデルを使用すると、着色剤は、シアン、マゼンタ、イエロー、及び/又はキー(ブラック)の色を提供する。着色剤は、担体中に溶解又は懸濁される。
【0025】
担体は、インクが塗布される表面への接着を形成するためのバインダとして機能できる。更に、実施形態では、ガラス/プラスチック表面への接着を改善することを特に目的として、担体に添加剤を含める。着色剤のための担体の非限定的な例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド及びトルエンが挙げられる。一般に、このような担体は80℃~200℃で固化する。実施形態では、0.5体積%~6体積%の着色剤と、94体積%~99.5体積%の担体とを含む。
【0026】
図6は、様々な厚さの半透明黒色層460が上に印刷された、デッドフロント400の小さなセクションの例を提供する。この実施形態では、半透明黒色層460は、黒色インク(3MACJET Technology, Co., Ltd.(中華民国台南市)から入手可能なKインク)のみを用いて印刷した。よって、図6のデッドフロント400の小さなセクションはそれぞれ、K値K50、K45、K40、K35、及びK30によって表される、異なる量の黒色インクを有する。K50デッドフロントは最も多量の黒色インクを有し、K30デッドフロントは最も少量の黒色インクを有する。デッドフロント400のこれらのセクションをコンピュータモニタ550上に配置して、デッドフロント400を通る光透過を実証した。図面から分かるように、モニタ550からの光の透過は、K値の増大に伴って減少している。しかしながら、Kインクは、短い波長に対してほど選択的に強い吸収率を有し、これにより、図6に示すように、透過画像の色は褐色がかったものとなる。
【0027】
従って、半透明黒色層460を、CMYKカラーモデルによる中程度の黒色を用いて印刷した。図7は、様々な色を生成するために使用されるCMYの相対的な量を含む、CMYKカラーモデルを示す。図7から分かるように、コンポジットブラックは、CMYのみを用いて生成できる。CMYKカラーモデルのリッチブラックは、まずCMY層を印刷し、その上に黒色(K)層を塗布することで生成される。よって、上述の実施形態のようなKインクのみとは対照的に、CMYKインク全てを使用する。様々なK値を有するデッドフロント400を製造し、これらのデッドフロント400の反射率Rを測定した。図8から分かるように、反射率Rは、ガラス層450及び半透明黒色層460両方からの反射率を含む。K20、K50、及びK100を有するデッドフロント400からの反射率Rを図9に示す。図面から分かるように、反射率Rは、400nm~700nmの波長において比較的平坦である。K値=20%では、反射率Rは全体的に7%未満であり、この反射率の大半(およそ3.9%~4%)はガラス層450からのものである。」
「【0033】
図16及び17は、スマートフォン600を覆うデッドフロント物品400を示す。これらの図のデッドフロント物品400は、L*<10であり、透過率は5%である。図16から分かるように、デッドフロント物品400は、デッドフロント物品400に覆われたスマートフォン600の部分を完全にぼかしている。図17に示すように、スマートフォン600のディスプレイを起動すると、ディスプレイはデッドフロント物品400を通して見ることができるようになるが、非ディスプレイ領域(例えば白色の境界線)はぼかされたままである。ある実施形態では、デッドフロント物品400は、OLEDディスプレイ等の超高輝度ディスプレイと共に使用される。更に、ディスプレイが輝度設定を有する場合、特定の実施形態では、輝度設定を最高輝度に設定する。
【0034】
有利には、基板450上に印刷された半透明黒色層460を有するデッドフロント物品400を形成するためにCMYKカラーモデルを用いることにより、デッドフロント物品400の反射率及び透過率特性をより良好に制御できる。特に、半透明黒色層の厚さ(一般に1μm~5μm)及び黒色インク(Kインク、コンポジットブラック、又はリッチブラック)の印刷密度を用いて、デッドフロントを通って透過する光の量を制御できる。特に、CMYK印刷された半透明黒色層では、K値又はL*レベルの変更によって、パーセント透過率の比較的線形の制御が可能となる。更に、CMYKカラーモデルを用いて黒色を達成することにより、デッドフロントを調整して、スクリーンが非起動状態のときにディスプレイスクリーンを隠すための、低反射率、制御可能な透過、及び中程度の黒色を達成できる。更に、インクジェット印刷技術を用いると、連続した均一なコーティングを作製でき、また、スクリーン印刷等の他の印刷方法に比べて、インクジェット印刷を用いて達成される解像度ははるかに高い。
【0035】
図18~22を参照すると、ガラスベースのデッドフロント物品に関する様々なサイズ、形状、曲率、ガラス材料等が、湾曲したガラスベースのデッドフロント物品を形成するための様々なプロセスと共に、図示及び説明されている。図18~22は、説明を容易にするために、簡略化された湾曲デッドフロント物品2000の文脈で説明されるが、デッドフロント物品2000は、本明細書に記載のデッドフロントの実施形態のうちのいずれであってよいことを理解されたい。
【0036】
図18に示すように、1つ以上の実施形態では、デッドフロント物品2000は、少なくとも第1の曲率半径R1を有する湾曲外側ガラス基板2010を含み、様々な実施形態では、湾曲外側ガラス基板2010は、少なくとも1つの追加の曲率半径を有するガラス材料の複雑な湾曲シートである。様々な実施形態では、R1は約60mm~約1500mmである。
【0037】
湾曲デッドフロント物品2000は、湾曲外側ガラス基板2010の内側の主面に沿って配置されたデッドフロント着色層2020(例えば上述のような1つ以上のインク/顔料層)を含む。一般に、木目状のデザイン、皮革のシボ状のデザイン、布地状のデザイン、ヘアライン仕上げの金属のデザイン、グラフィックのデザイン、ソリッドカラー、及び/又はロゴを提供するように、デッドフロント着色層2020の印刷、着色、成形等が行われる。湾曲デッドフロント2000はまた、上述のような追加の層2030(例えば高光密度層、導光体層、リフレクタ層、1つ以上のディスプレイモジュール、ディスプレイ積層体層、光源等)のうちのいずれ、又は本明細書に記載のディスプレイ又は車両内装システムに関連し得る他のものを含んでよい。」
「【0103】
本開示の態様(1)は、ディスプレイ用のデッドフロント物品であって、上記デッドフロント物品は:ガラス層の視聴者側の第1の表面と、上記第1の表面の反対側の第2の表面とを備える、基板;及び上記基板の上記第2の表面の少なくとも第1の部分上に配置された、半透明黒色層を備え、上記半透明黒色層は、上記ディスプレイが非起動状態のときに上記ディスプレイをぼかし、上記ディスプレイが起動状態のときに上記ディスプレイの視聴を可能とするよう構成される、デッドフロント物品に関する。
【0104】
本開示の態様(2)は、上記半透明黒色層が、CMYKカラーモデルを用いたプリンタで、上記ガラス層の上記第2の表面上に印刷される、態様(1)のデッドフロント物品に関する。
【0105】
本開示の態様(3)は、上記半透明黒色層が、上記CMYKカラーモデルに従ってシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを混合することによって生成されたリッチブラックである、態様(2)のデッドフロント物品に関する。
【0106】
本開示の態様(4)は、黒色のレベルが少なくとも50%である、態様(3)のデッドフロント物品に関する。
【0107】
本開示の態様(5)は、上記半透明黒色層が、上記CMYKカラーモデルに従ってシアン、マゼンタ、及びイエローを混合することによって生成されたコンポジットブラックである、態様(2)のデッドフロント物品に関する。
・・・中略・・・
【0111】
本開示の態様(9)は、上記基板と上記半透明黒色層との組み合わせが、約400nm~約700nmの波長範囲にわたって、約1~約40%の平均透過率を備える、態様(1)~(8)のいずれか1つのデッドフロント物品に関する。」
(イ)引用文献3の記載から把握できる事項
a 前記(ア)【0027】の「コンポジットブラックは、CMYのみを用いて生成できる。CMYKカラーモデルのリッチブラックは、まずCMY層を印刷し、その上に黒色(K)層を塗布することで生成される。」、前記(ア)【0034】の「半透明黒色層の厚さ(一般に1μm~5μm)及び黒色インク(Kインク、コンポジットブラック、又はリッチブラック)の印刷密度を用いて、デッドフロントを通って透過する光の量を制御できる。特に、CMYK印刷された半透明黒色層では、K値又はL*レベルの変更によって、パーセント透過率の比較的線形の制御が可能となる。」、前記(ア)【0104】の「上記半透明黒色層が、CMYKカラーモデルを用いたプリンタで、上記ガラス層の上記第2の表面上に印刷される」との記載からみて、半透明黒色層は、CMYKの各色の層を印刷できるプリンタで形成していると認められる。
そうすると、前記(ア)【0107】の「半透明黒色層が、上記CMYKカラーモデルに従ってシアン、マゼンタ、及びイエローを混合することによって生成されたコンポジットブラックである」との記載より、以下の事項が把握できる。
「半透明黒色層が、シアン、マゼンダ、イエローの層を印刷して混合することによって、CMYのみを用いて生成されたコンポジットブラックであること。」
b 前記(ア)【0035】の「図18~22は、説明を容易にするために、簡略化された湾曲デッドフロント物品2000の文脈で説明されるが、デッドフロント物品2000は、本明細書に記載のデッドフロントの実施形態のうちのいずれであってよいことを理解されたい。」との記載を踏まえれば、当該記載の「湾曲デッドフロント物品2000」は、前記(ア)【0027】、【0034】に記載される「コンポジットブラック」である半透明黒色層を含む「デッドフロント物品400」の具体例を示したものであると理解できる。
また、前記(ア)【0023】の「半透明黒色層460はガラス層450上に印刷される。」と前記(ア)【0037】の「湾曲デッドフロント物品2000は、湾曲外側ガラス基板2010の内側の主面に沿って配置されたデッドフロント着色層2020(例えば上述のような1つ以上のインク/顔料層)を含む。」との記載からみて、【0037】に説明される「デッドフロント着色層2020」は、半透明黒色層に代えて形成される着色層であって、半透明黒色層の具体例を示していると認められる。
したがって、「デッドフロント着色層2020」は、「半透明黒色層」と同じ構成のインク/顔料層であり、コンポジットブラックを色に含んでいることが把握できる。
c 前記a及びbを踏まえれば、前記(ア)【0037】の「木目状のデザイン、皮革のシボ状のデザイン、布地状のデザイン、ヘアライン仕上げの金属のデザイン、グラフィックのデザイン、ソリッドカラー、及び/又はロゴを提供するように、デッドフロント着色層2020の印刷、着色、成形等が行われる」との記載より、以下の事項が把握できる。
「デッドフロント物品は、半透明黒色層に代えて、コンポジットブラックを含む色の木目状デザインを提供するように、シアン、マゼンダ、イエローの層を印刷して混合することによって、CMYのみを用いて生成された、デッドフロント着色層2020を含むものであること。」
(ウ)引用発明3
前記(ア)及び(イ)より、引用文献3には、次のとおりの発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明3]
「ディスプレイ用のデッドフロント物品であって(前記(ア)【0103】)、
車両内装システムにおいて、車両ディスプレイにおける使用に関し(前記(ア)【0014】)、
ディスプレイ全体にわたって、又はディスプレイの前面に配置され(前記(ア)【0022】)、
ガラス層の視聴者側の第1の表面と、上記第1の表面の反対側の第2の表面とを備える、基板;及び上記基板の上記第2の表面の少なくとも第1の部分上に配置された、半透明黒色層を備え、上記半透明黒色層は、上記ディスプレイが非起動状態のときに上記ディスプレイをぼかし、上記ディスプレイが起動状態のときに上記ディスプレイの視聴を可能とするよう構成され(前記(ア)【0103】)、
上記半透明黒色層に代えて、コンポジットブラックを含む色の木目状デザインを提供するように、CMYKカラーモデルを用いたプリンタで、上記CMYKカラーモデルに従ってシアン、マゼンタ、及びイエローの層を印刷して、混合することによってCMYのみを用いて生成された、デッドフロント着色層2020を含み(前記(ア)【0104】、【0107】、(イ)a、c)、
上記基板と上記半透明黒色層との組み合わせが、約400nm~約700nmの波長範囲にわたって、約1~約40%の平均透過率を備えた(前記(ア)【0111】)、
デッドフロント物品。」
ウ 引用文献4
例えば、優先日前の平成26年9月22日に発行された特開2014-172197公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0004】
特に木目模様を有する印刷においては意匠として深みを出す為に木目の導管部分で黒色の印刷を必要としていたが、カーボンブラックなどの黒色顔料は近赤外光領域(781nm~2500nm)においての反射率が低かった為、赤外光領域の熱の吸収によって、蓄熱作用が発生していた。黒色以外の顔料で黒色を表現することも可能であるが、そうすると意匠的には劣るものとなり、また顔料の耐候性の経時の劣化度合いが異なる為、色変化が発生するものとなる。」
エ 技術常識
前記ウを踏まえると、次に示す事項は、木目印刷分野において、優先日前に当業者が有する技術常識であったと認められる。
[技術常識]
「木目模様には、木目の導管部分があり、導管部分は黒色の印刷を必要とすること。」
(3)本件補正発明と引用発明1の対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「加飾用積層体」は、「加飾部材」といえるから、本件補正発明と引用発明1とは、「加飾部材」の発明である点で一致する。
イ 引用発明1の「加飾用積層体」は、「昼光下など加飾用積層体の上面から光が入射する環境では上部意匠層の柄が視認され」るから、「光が入射する」「加飾用積層体の上面」は、本件補正発明の「意匠を表示する第1面」に相当する。そうすると、引用発明1の「加飾用積層体の下面」は、本件補正発明の「前記第1面の反対側の第2面」に相当するから、本件補正発明の「加飾部材」と引用発明1の「加飾用積層体」は、「意匠を表示する第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する」点で一致する。
ウ 引用発明1の「加飾用積層体」は、「光透過性の上部意匠層」を有し、「上部意匠層」としては「木目の模様を表す柄層」が挙げられており、引用発明1の「木目の模様を表す柄層」の「上部意匠層」は、本件補正発明の「木目の意匠を形成する加飾層」といえる。
エ(ア)本願発明の「前記加飾層に重ねられた光吸収部」について、本願発明の明細書には次の記載がある。
「【0011】
図1に示されているように、加飾部材20は、第1面20Aから第2面20Bに向かって、加飾層30と、反射層40と、調整層50と、光吸収部60と、透明樹脂層70と、をこの順で有している。調整層50及び光吸収部60は、加飾層30に重ねられている。反射層40及び調整層50は、加飾層30と光吸収部60との間に配置されている。反射層40は、加飾層30と調整層50との間に配置されている。光吸収部60は、第2区域A2に配置されている。」
「【0037】
光吸収部60は、光源5からの光を吸収する。光吸収部60の透過率は、例えば0.1%以下である。光吸収部60は、第2区域A2に重なるよう、所定のパターンで配置されている。光吸収部60が配置されるパターンは、加飾付き表示装置1が表示する表示物の形状に対応している。光吸収部60が配置されていない第1区域A1で光を透過させやすく、光吸収部60が配置されている第2区域A2で光を透過させにくいことによって、加飾付き表示装置1が表示するアイコン等の表示物が形成される。」
「【図1】
[図:0001435733000002.jpg]
」
(イ)前記(ア)【0011】には、「反射層40及び調整層50は、加飾層30と光吸収部60との間に配置されている。反射層40は、加飾層30と調整層50との間に配置されている。」とあり、前記(ア)【図1】からも加飾層30と光吸収部60との間、加飾層30と調整層50との間には他の層があることが看取できる。
そのうえで、前記(ア)【0011】では、「調整層50及び光吸収部60は、加飾層30に重ねられている。」としているから、本件補正発明の「前記加飾層に重ねられた光吸収部」とは、光吸収部が他の層を介して加飾層と重ねられることを包含するものと解釈できる。
(ウ)一方、引用発明1の「加飾用積層体」は、「下部意匠層」を有し、「下部意匠層」は、「第1凹凸層と反射層との間に配置される層」であり、「反射層の上に配置される層」である「上部意匠層」とは、「反射層」を介して重なるといえる。
(エ)また、前記(ア)【0037】では、「光吸収部60の透過率は、例えば0.1%以下である。」、「光吸収部60が配置されていない第1区域A1で光を透過させやすく、光吸収部60が配置されている第2区域A2で光を透過させにくいことによって、加飾付き表示装置1が表示するアイコン等の表示物が形成される。」とあるから、本件補正発明の「光吸収部」は、光の透過率を低くするための部分であると理解できる。
(オ)一方、引用発明1の「下部意匠層」は、「柄層を有し」、「柄層」は、「光源からの光が、柄層のある領域では透過し、別の領域では一部が透過し、さらに別の領域では透過しないような構成であってもよい」ところ、「光源からの光」が「透過しない」「領域」が所定のパターンを形成することは明らかである。
(カ)前記ウ、(イ)~(オ)を踏まえると、本件補正発明の「光吸収部」と、引用発明1の「下部意匠層」の「光源からの光」が「透過しない」「領域」は、「所定のパターンで配置されて前記加飾層に重ねられた」光の透過率が低い部分である点で共通する。
オ 引用発明1の「上部意匠層」は、「反射層の上に配置される層」であって、「昼光下など加飾用積層体の上面から光が入射する環境では上部意匠層の柄が視認され」るから、「上部意匠層」は「反射層」に対して、「加飾用積層体の上面」側にあるものと認められる。一方、引用発明1の「下部意匠層」は、「反射層108と、・・・第1凹凸層104とをこの順で含」む「加飾用積層体」の「第1凹凸層と反射層との間に配置される層」であるから、「反射層」に対して、「加飾用積層体の下面」側にあるものと認められる。
したがって、前記イ~エを踏まえると、本件補正発明の「加飾部材」と引用発明1の「加飾用積層体」は、「前記第1面から前記第2面に向かって、木目の意匠を形成する加飾層と、所定のパターンで配置されて前記加飾層に重ねられた光の透過率が低い部分と、をこの順で備え」るものである点で共通する。
カ 引用発明1の「上部意匠層」は、「全体が半透明又は透明」であるから、本件補正発明の「加飾層」と引用発明1の「上部意匠層」は、「各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させ」るものである点で一致する。
キ 前記ア~カより、本件補正発明と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有するものと認められる。
[一致点]
「 意匠を表示する第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する加飾部材であって、
前記第1面から前記第2面に向かって、木目の意匠を形成する加飾層と、所定のパターンで配置されて前記加飾層に重ねられた光の透過率が低い部分と、をこの順で備え、
前記加飾層は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させる、加飾部材。」
[相違点1-1]
本件補正発明の「加飾層」においては、木目の意匠が「導管模様を含む」ものであって、「加飾層」が「シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層と、マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層と、イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層と、を含み」、「前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含み」、「前記暗色を呈する部分は、前記導管模様に対応して配置され」、「前記第1層、前記第2層及び前記第3層の各々は、ブラック系の色を呈する着色剤を含まない」ものであるのに対し、引用発明1の「上部意匠層」においては、木目の意匠の詳細及び着色剤を含む層の構成が不明である点。
[相違点2]
本件補正発明において加飾層に重ねられた光の透過率が低い部分は、「光吸収部」であるのに対し、引用発明1においては、「光源からの光」が「透過しない」「領域」であるものの、「光吸収部」であることが特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点1-1について
(ア)引用発明3の「デッドフロント着色層2020」の「コンポジットブラック」は、「暗色」であるから、「CMYKカラーモデルを用いたプリンタ」で「シアン、マゼンタ、及びイエローの層を印刷して混合することによって、CMYのみを用いて生成された」「コンポジットブラック」は、「シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層」と、「マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層」と、「イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層」を印刷して、「前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって」、「暗色を呈する部分」といえる。
また、引用発明3の「シアン、マゼンタ、及びイエローの層」の印刷は「CMYKカラーモデルを用いたプリンタで」行われており、CMYKの混合で色を表現するものである以上、各色ともそれぞれの色を呈する着色剤のみからなると理解できるから、「シアン、マゼンタ、及びイエローの層」の着色剤には、ブラック系の色を呈する着色剤が含まれていないことは自明である。
(イ)さらに、引用発明3の「デッドフロント着色層2020」は、「シアン、マゼンタ、及びイエローの層を印刷して混合することによって、CMYのみを用いて」いるから、引用発明3は、「デッドフロント着色層2020」の「木目状のデザイン」のコンポジットブラック以外の色についても、「シアン、マゼンタ、及びイエローの層」のみを印刷して形成するものであることは明らかである。
(ウ)引用発明3のデッドフロント物品は、ガラス層の基板に「半透明黒色層」が設けられ、「ディスプレイ全体にわたって、又はディスプレイの前面に配置され」、「上記ディスプレイが起動状態のときに上記ディスプレイの視聴を可能とするよう構成され」、「半透明黒色層に代えて」、「デッドフロント着色層2020」を含むものであるから、引用発明3の「デッドフロント着色層2020」は、ディスプレイからの光を透過する基板に設けられたものである。
(エ)そして、「乗物の内装(例えばインテリアパネル部材)などの各種用途に使用できる」引用発明1と「車両内装システムにおいて、車両ディスプレイにおける使用」に関する引用発明3は、ともに、乗物の内装部材という共通の技術分野に属し、引用発明1の「上部意匠層」と引用発明3の「デッドフロント着色層2020」は、光を透過する基材上の木目意匠の提供という、共通の作用又は機能を奏するものであるから、引用発明1に、引用発明3のデッドフロント着色層2020の構成を適用する動機付けがあるといえる。
(オ)したがって、引用発明1の「木目の模様」に対して、引用発明3の「デッドフロント着色層2020」における「シアン、マゼンダ、及びイエローの層」の印刷で形成する技術を採用し、ブラック系の色を呈する着色剤が含まれていないようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(カ)このとき、前記(2)エの技術常識に示すとおり、木目模様には、木目の導管部分があり、導管部分は黒色の印刷を必要とすることは、木目印刷分野の技術常識であるところ、引用発明1の「上部意匠層」の「木目の模様」を引用発明3の「シアン、マゼンダ、及びイエローの層」の印刷で形成する技術で具体化する際には、導管部分に対する黒色を「シアン、マゼンタ、及びイエローの層を印刷して混合することによって、CMYのみを用いて生成された」、「コンポジットブラック」で印刷することに格段の困難性はない。
(キ)前記(イ)において、引用発明3は、「デッドフロント着色層2020」の「木目状のデザイン」のコンポジットブラック以外の色についても、CMYのみで形成するものであることは明らかとしたが、仮にこれが明らかでないとしても、シアン、マゼンタ、及びイエローの三色の混色により、各色を表現する3色印刷は、例を挙げるまでもなく、周知の印刷方法である。
したがって、引用発明1の「上部意匠層」の「木目の模様」に対して、引用発明3の「デッドフロント着色層2020」を採用する際に、導管部分に対する黒色を「コンポジットブラック」で印刷するとともに、コンポジットブラック以外の色の部分もシアン、マゼンタ、及びイエロー層のみの印刷で形成し、「上部意匠層」全体でブラック系の色を呈する着色剤を含まない「シアン、マゼンタ、及びイエロー層」で形成することも、当業者が容易に想到し得たものである。
(ク)以上より、引用発明1において、前記相違点1-1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
イ 相違点2について
光を吸収させることで透過させないようにすることは、例を挙げるまでもなく、広く慣用される手段であるから、引用発明1の「下部意匠層」の「柄層」の「光源からの光」が「透過しない」「領域」を光吸収部として構成し、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
ウ 格別顕著な効果について
(ア)本願の明細書には、以下のとおり記載されている。
「 【0004】
意匠を表示するため、加飾部材は、半透明となっている部分の各位置において、波長ごとに透過率が異なっていることがある。加飾部材を透過する光が、局所的にまたは全体的に色づくことがある。加飾層がカーボンブラック等のブラック系の色を呈する着色剤を多量に含む場合、加飾部材を透過する光が色づきやすい。加飾部材を透過する光が色づいていると、加飾部材を透過した光で形成される表示物が適切に表示されない。本開示は、加飾部材に適切に光を透過させることを目的とする。」
「 【0047】
従来の加飾部材は、表示する意匠における暗色の部分、例えば暗色の部分を表示するために、カーボンブラック等の黒色顔料を多量に用いている。加飾部材が表示する意匠に暗色の部分があると、当該部分において他の部分より透過率が低くなる。例えば加飾部材が木目の意匠を表示する場合、木目の導管模様の部分において他の部分より透過率が低くなる。このような部分は、光源からの光を意図せずに妨げることがある。意匠の色によって加飾部材の部分ごとに透過率が大きく異なると、加飾部材に適切に光を透過させることができず、光源からの光によって表示物を表示しても、表示物が色付いて観察される。」
(イ)前記(ア)の各記載からすれば、本件補正発明は、「前記第1層、前記第2層及び前記第3層の各々は、ブラック系の色を呈する着色剤を含まない」ことにより、加飾部材の部分ごとに透過率が大きく異なり、加飾部材に適切に光を透過させることができず、光源からの光によって表示物を表示しても、表示物が色付いて観察されることがないとの効果を奏すると理解できる。
(ウ)そこで検討すると、技術常識からすれば、ブラック系の色を呈する着色剤を含まないとしても、例えば、その他の色の着色剤の種類や分布、量によっては、透過率の差異は生じ得ると推測されるところ、本願明細書には、各色の層にブラック系の色を呈する着色剤を含まないことと、前記(イ)に示した効果との間の作用機序について詳細な説明はなく、単にブラック系の色を呈する着色剤を含まないことで、格別顕著な効果を奏するとは認められない。
(エ)仮に、各色の層にブラック系の色を呈する着色剤を含まないことで、前記(イ)に示した効果が多少なりともあると解したとしても、引用発明3は、前記アで述べたとおり、ディスプレイからの光を透過する基板に「デッドフロント着色層2020」を設けたものであり、「デッドフロント着色層2020」は、「シアン、マゼンタ、及びイエローの層を印刷して、混合することによって生成された」ものであって、ブラック系の色を呈する着色剤を含んでいない。
したがって、引用発明3の構成は、前記(イ)に示した効果を当然に内在するものと認められる。
(オ)そうすると、本件補正発明の奏する作用効果として、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
(5)請求人の主張について
ア 請求人の上申書における主張
(ア)令和7年1月29日提出の上申書(以下単に「上申書」という。)において、請求人は特許請求の範囲の補正案を提示し、補正案に係る発明は、引用文献に照らして進歩性を有していることを理由に、補正の機会の付与を希望しているので、当該補正案についても検討する。
(イ)上申書における補正案の請求項1は次のとおりであり、以下、補正案の請求項1に係る発明を「補正案発明」という。なお、下線は本件補正後の請求項1から補正された箇所を示すために合議体が付したものである。
「【請求項1】
意匠を表示する第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する加飾部材であって、
前記第1面から前記第2面に向かって、導管模様を含む木目の意匠を形成する加飾層と、所定のパターンで配置されて前記加飾層に重ねられた光吸収部と、をこの順で備え、
前記加飾層は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させ、
前記加飾層は、シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層と、マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層と、イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層と、を含み、
前記加飾層は、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含み、
前記暗色を呈する部分は、前記導管模様に対応して配置され、
前記加飾層は、ブラック系の色を呈する着色剤を含まない、加飾部材。」
イ 請求人の主張についての検討
(ア)補正案発明の容易想到性について検討すると、前記(3)に示す対比のとおりであるから、補正案発明と引用発明1は、前記(3)キに示す相違点2とともに、以下の点で相違し、他の点で一致する。
[相違点1-2]
補正案発明の「加飾層」においては、木目の意匠が「導管模様を含む」ものであって、「加飾層」が「シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層と、マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層と、イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層と、を含み」、「前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含み」、「前記暗色を呈する部分は、前記導管模様に対応して配置され」、「ブラック系の色を呈する着色剤を含まない」ものであるのに対し、引用発明1の「上部意匠層」においては、木目の意匠の詳細及び着色剤の層構成が不明である点。
(イ)前記相違点1-2について検討すると、前記(4)アのとおり、引用発明1の「木目の模様」に対して、引用発明3の「デッドフロント着色層2020」における「シアン、マゼンダ、及びイエローの層」のみの印刷で形成する技術を採用し、また、前記(2)エの技術常識を参照して、導管部分に対する黒色を「シアン、マゼンタ、及びイエローの層を印刷して混合することによって、CMYのみを用いて生成されたコンポジットブラック」で印刷することに格段の困難性はない。
よって、引用発明1、引用発明3に基づいて、前記相違点1-2に係る補正案発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
(ウ)相違点2については、前記(4)イのとおりであり、また、補正案発明の奏する作用効果として、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
(エ)前記(ア)~(ウ)のとおり、補正案発明も当業者が容易に想到し得るものであるから、上申書における補正案によっても、拒絶の理由を解消することができない。
したがって、上申書で主張する補正案によっても拒絶の理由は解消されない。
(6)小括
前記(3)~(4)のとおりであるから、引用発明1において前記相違点1-1及び2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件補正の適否についてのまとめ
前記4において示したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年7月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
本願発明は、優先日前に発行された以下の引用文献1~2に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2020-157671号公報
引用文献2:特開2011-198721号公報
3 各引用文献等に記録された事項及び引用発明等の認定
(1)引用文献1
引用文献1に記載された事項及び引用発明1は、前記第2の4(2)ア(ア)及び(イ)において示したとおりである。
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、優先日前の平成23年10月6日に発行された特開2011-198721号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車やオートバイに搭載される照明装置に関し、特に透光性の表示部を有する表示板と、この表示板の背後に配置した光源とを有し、光源の点灯により表示部を発光表示させる照明装置に関する。」
「【0012】
本発明の一実施形態による照明装置は、例えば車両用計器の計器板に組み込まれるものであり、図1、図2に示すように、回路基板1と、光源2と、表示板3とで構成されている。
・・・中略・・・
【0015】
表示板3は、透光性基板31と、有彩色層32、遮光層33、着色層34、基本色ドット層35からなる印刷層とを備えている。
【0016】
透光性基板31は、例えば透明な合成樹脂からなり、光源2の前面側に例えば回路基板1と平行に配置されている。
【0017】
有彩色層32は、基本色ドット層35と同様、例えばY,M,C,K(イエロー,マゼンダ,シアン,ブラック)からなる4色の独立した基本色ドット層を完全もしくは部分的に積層することにより所定の有彩色(後述)を有する透光性の無地領域を形成する。この無地領域は、少なくとも後述する表示部の全域を覆うように、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット等のデジタル印刷を用いて形成することができる。
・・・中略・・・
【0021】
基本色ドット層35は、例えばY,M,C,K(イエロー,マゼンダ,シアン,ブラック)からなる4色の独立したドット状の基本色層を完全もしくは部分的に積層することにより、例えば黒、橙、茶色等の色調を有する大理石調の石目模様(地模様)を表現するもので、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット等のデジタル印刷を用いて形成することができる。なお基本色ドット層35の前面は、その表面を傷から保護する透明な保護層が形成されているが、図示省略してある。」
イ 引用発明2
前記アのとおりであるから、引用文献2には、次のとおりの発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明2]
「背後に配置した光源の点灯により表示部を発光表示させる照明装置が有する、透光性の表示部を有する表示板(前記ア【0001】)であって、
照明装置は、車両用計器の計器板に組み込まれるものであり(前記ア【0012】)、
透光性基板31と、有彩色層32、遮光層33、着色層34、基本色ドット層35からなる印刷層とを備え(前記ア【0015】)、
基本色ドット層35は、Y,M,C,K(イエロー,マゼンダ,シアン,ブラック)からなる4色の独立したドット状の基本色層を完全もしくは部分的に積層することにより、黒、橙、茶色等の色調を有する大理石調の石目模様(地模様)を表現するもので、デジタル印刷を用いて形成する(前記ア【0021】)、表示板。」
4 本願発明と引用発明1の対比
本願発明と引用発明1を対比する。
本願発明は、本件補正発明から「前記第1層、前記第2層及び前記第3層の各々は、ブラック系の色を呈する着色剤を含まない」との限定を削除したものであるから、前記第2の4(3)ア~カの検討を踏まえると、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有するものと認められる。
[一致点]
「 意匠を表示する第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する加飾部材であって、
前記第1面から前記第2面に向かって、木目の意匠を形成する加飾層と、前記加飾層に重ねられた部分と、をこの順で備え、
前記加飾層は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させる、加飾部材。」
[相違点1-3]
本願発明の「加飾層」においては、木目の意匠が「導管模様を含む」ものであって、「加飾層」が「シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層と、マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層と、イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層と、を含み」、「前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含み」、「前記暗色を呈する部分は、前記導管模様に対応して配置される」ものであるのに対し、引用発明1の「上部意匠層」においては、木目の意匠の詳細及び着色剤を含む層の構成が不明である点。
[相違点2]
本願発明においては、加飾層に重ねられるのが、「所定のパターンで配置され」た「光吸収部」であるのに対し、引用発明1においては、「下部意匠層」であって、「所定のパターンで配置され」た「光吸収部」であることが特定されていない点。
5 判断
(1)相違点1-3について
ア 引用発明2の「基本色ドット層35」は、「Y,M,C,K(イエロー,マゼンダ,シアン,ブラック)からなる4色の独立したドット状の基本色層を完全もしくは部分的に積層することにより、黒、橙、茶色等の色調を有する大理石調の石目模様(地模様)を表現する」ものであって、「シアン系の色を呈する着色剤を含む第1層と、マゼンタ系の色を呈する着色剤を含む第2層と、イエロー系の色を呈する着色剤を含む第3層」を含むといえる。
また、引用発明2の「基本色ドット層35」において、「Y,M,C」の3色の混色の黒(いわゆるコンポジットブラック)、又は、「Y,M,C,K」の4色の混色の黒(いわゆるリッチブラック)を作成できることは、印刷分野の当業者に明らかであり、このとき作成される黒色は「前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって」、「暗色を呈する部分」といえる。
イ そして、「車」などの「乗物の内装(例えばインテリアパネル部材)などの各種用途に使用できる」引用発明1の「加飾用積層体」と「車両用計器の計器板に組み込まれる」「照明装置が有する」引用発明2の「表示板」は、車両用のパネルという共通の技術分野に属し、引用発明1の「上部意匠層」と引用発明2の「基本色ドット層35」は、地模様の印刷という、共通の作用又は機能を奏するものであるから、引用発明1に、引用発明2の基本色ドット層の構成を適用する動機付けがあるといえる。
ウ ここで、前記第2の4(2)エの技術常識に示すとおり、木目模様には、木目の導管部分があり、導管部分は黒色の印刷を必要とすることは、木目印刷分野の技術常識であるところ、引用発明1の「上部意匠層」の「木目の模様」で「印刷により形成された模様」を具体化する際には、導管部分に対する黒色のごとき暗色の印刷が求められることは、当業者に自明の事項である。
エ したがって、引用発明1の「上部意匠層」に対して、引用発明2の「基本色ドット層35」の構成を採用するに際し、「木目の模様」が当然備える導管部分に対して、「Y,M,C」の3色の混色、又は、「Y,M,C,K」の4色で形成し、相違点1-3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)相違点2について
前記第2の4(4)イのとおりであるから、引用発明1において、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
(3)格別顕著な効果について
ア 本願発明は、加飾層がカーボンブラック等のブラック系の色を呈する着色剤を多量に含むものでないことを特定していないから、前記第2の4(4)ウ(イ)に示す効果は、請求項の記載に基づくものではなく、参酌できない。
イ また、前記第2の4(4)ウ(ウ)で述べたとおりでもあるから、前記第2の4(4)ウ(イ)に示す効果は、格別顕著なものとは認められない。
ウ したがって、本願発明の奏する作用効果として、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
6 請求人の審判請求書の主張について
(1)令和6年10月16日提出の審判請求書において、請求人は同日にされた本件補正後の特許請求の範囲に基づいて、引用文献1及び2に照らして進歩性を有する旨主張する。
しかしながら、前記第2のとおり、本件補正は却下されたため、請求人の主張は、請求項の記載に基づくものではなく、採用できない。
(2)ア 意見書における請求人の主張
令和6年7月2日提出の意見書(3-1)において、請求人は本願発明の特徴を、(a)「前記加飾層は、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含み」、(b)「前記暗色を呈する部分は、前記導管模様に対応して配置される」点とし、概略次のとおり主張する。
(ア)引用文献2に記載される複数色の基本色ドット層35は、少なくともK(ブラック)からなる特定基本色ドット層35を含み、また、加飾層がカーボンブラック等のブラック系の色を呈する着色剤を多量に含む場合に、加飾部材を透過する光が色づきやすいことを認識していないから、引用発明1及び2に触れた当事者は、引用発明1の上部意匠層あるいは下部意匠層において暗色を表示しようとするとき、K(ブラック)からなる基本色ドット層35を積層するのであって、わざわざY,M,C(イエロー、マゼンダ、シアン)からなる3色の独立した基本色ドット層35を積層しようとはしない。
したがって、引用発明1及び2は、前記特徴(a)に想到する示唆や動機付けを含んでいない。
(イ)前記(ア)のとおり、第1層、第2層及び第3層が重なることによって暗色を呈する部分を含むことの示唆や動機付けを含んでいないことから、前記特徴(b)に想到する示唆や動機付けも含んでいない。
イ 請求人の主張に対する検討
本願発明は、カーボンブラック等のブラック系の色を呈する着色剤を多量に含むことを除外していないから、前記(ア)の主張は、請求項の記載に基づかない構成を前提とするものである。
そして、前記5(1)ア~エで述べたとおり、引用発明1に、引用発明2の基本色ドット層の構成を適用する動機付けがあり、引用発明1の上部意匠層において、暗色を呈する部分の印刷が必要なことは、技術常識から当業者に自明であるといえる。
したがって、前記特徴(a)及び(b)に想到する示唆や動機付けを含んでいないとの前記(ア)及び(イ)の主張は採用できない。
7 小括
前記4~6のとおりであるから、引用発明1において前記相違点1-3及び相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-016555