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特許異議申立

2019-701040

遊技機

審判番号
2019-701040
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-260836
登録番号
特許第6532672号(P6532672)
請求日
2019年12月19日
審決日
2020年09月16日
公報発行日
2020年12月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社三共
  • 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
  • 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
  • 【異議申立人代理人】特許業務法人平木国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 小島 寛史
  • 審判官 ▲吉▼川 康史
分類
P1651.537-YAA(A63F) / P1651.55 -YAA(A63F) / P1651.841-YAA(A63F) / P1651.851-YAA(A63F) / P1651.853-YAA(A63F) / P1651.854-YAA(A63F) / P1651.855-YAA(A63F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6532672号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6532672号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第6532672号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6532672号の請求項1に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年12月24日に出願され、令和1年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年12月19日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年3月2日付けで取消理由を通知した。特許権者である株式会社三共は、その指定期間内である同年5月1日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、本件訂正請求に対して、特許異議申立人は、同年7月15日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「電断が発生した後に復電した場合において、電断発生時の日時と復電時の日時とを特定可能な日時情報を記憶する日時情報記憶手段と、」と記載されているのを、 「電断が発生した後に復電した場合において、電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する日時情報記憶手段と、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化することが可能な初期化手段とを備え、」と記載されているのを、 「前記日時情報記憶手段に記憶された前記電断日時情報および前記復電日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化することが可能な初期化手段とを備え、」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも後の場合、初期化条件が成立しているときには前記特定情報を初期化する一方、当該初期化条件が成立していないときには当該特定情報を初期化せず、」と記載されているのを、 「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも後の場合、初期化条件が成立しているときには前記特定情報を初期化する一方、当該初期化条件が成立していないときには当該特定情報を初期化せず、」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ、または前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前の場合、前記特定情報を初期化しない、遊技機。」と記載されているのを、 「前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時と同じとなる場合、または、前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも前となる場合、前記特定情報を初期化しない、遊技機。」に訂正する。 (5)訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0007】に、 「(1) 所定の遊技を行う遊技機であって、 電断が発生した後に復電した場合において、電断発生時の日時と復電時の日時とを特定可能な日時情報を記憶する日時情報記憶手段と、 所定情報を記憶する所定情報記憶手段と、 前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化することが可能な初期化手段とを備え、 前記初期化手段は、 前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも後の場合、初期化条件が成立しているときには前記特定情報を初期化する一方、当該初期化条件が成立していないときには当該特定情報を初期化せず、 前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ、または前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前の場合、前記特定情報を初期化しない。」と記載されているのを、 「(1) 所定の遊技を行う遊技機であって、 電断が発生した後に復電した場合において、電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する日時情報記憶手段と、 所定情報を記憶する所定情報記憶手段と、 前記日時情報記憶手段に記憶された前記電断日時情報および前記復電日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化することが可能な初期化手段とを備え、 前記初期化手段は、 前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも後の場合、初期化条件が成立しているときには前記特定情報を初期化する一方、当該初期化条件が成立していないときには当該特定情報を初期化せず、 前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時と同じとなる場合、または、前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも前となる場合、前記特定情報を初期化しない。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の「電断発生時の日時と復電時の日時とを特定可能な日時情報を記憶する日時情報記憶手段」から、「電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する日時情報記憶手段」へと訂正することにより、請求項1に記載された「日時情報記憶手段」に記憶される情報をより限定しようとするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)には、以下の記載がある。 「【0127】 一方、サブ制御部91は、設定変更されなかった場合(St1でN)、復電時(すなわち現在)の日時情報をRAM91cの更新時刻記憶領域から取得する(St3)。・・・ 【0128】 次に、サブ制御部91は、電断時に保持していた電断時の日時情報をRAM91cの一時記憶領域から取得する(St4)。以下の処理において、サブ制御部91は、取得した復電時の日時情報から特定した復電日時と、保持していた電断時の日時情報から特定した電断日時とを比較して、初期化条件が成立するか否か、および異常条件が成立するか否かを判定する。」 これらの記載によれば、本件特許明細書には、サブ制御部91が、「復電時(すなわち現在)の日時情報」をRAM91cの更新時刻記憶領域から取得し、「電断時の日時情報」をRAM91cの一時記憶領域から取得し、「復電時(すなわち現在)の日時情報」から特定した復電日時と、「電断時の日時情報」から特定した電断日時とを比較して、初期化条件が成立するか否か、および異常条件が成立するか否かを判定することが記載されているといえる。 そうすると、本件特許明細書に記載された「復電時(すなわち現在)の日時情報」、「電断時の日時情報」は、それぞれ訂正後の請求項1に記載された「復電日時情報」、「電断日時情報」に対応するものであり、本件特許明細書に記載された「RAM91cの更新時刻記憶領域」及び「RAM91cの一時記憶領域」は、これらを合わせて、「電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する」ものといえるから、訂正後の請求項1に記載された「日時情報記憶手段」に対応するものである。 してみると、本件特許明細書の記載から、訂正事項1に係る訂正後の記載事項を導き出すことができるから、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1は、上記アで述べたとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の「前記日時情報」について、訂正後の「前記日時情報記憶手段に記憶された前記電断日時情報および前記復電日時情報」へと、より具体的に限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 本件特許明細書には、上記(1)イで摘記した事項に加えて、以下の記載がある。 「【0120】 一方、サブ制御部91は、初期化フラグ1がオンされていない場合(Sr7でN)、初期化条件が成立したことを示す初期化フラグ2がオンされたか否かを判定する(Sr9)。サブ制御部91は、初期化フラグ2がオンされた場合(Sr9でY)、RAM91cに記憶されたAT抽選契機が成立する条件となる消化ゲーム数の計数情報以外の情報を初期化する(Sr10)。」 「【0140】 一方、サブ制御部91は、異常条件2が成立しない場合(St7でN)、「復電日-電断日≧2日」で初期化条件1が成立するか否かを判定する(St8)。サブ制御部91は、初期化条件1が成立する場合(St8でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。 【0141】 一方、サブ制御部91は、初期化条件1が成立しない場合(St8でN)、「復電日-電断日=1日」であるか否かを判定する(St10)。サブ制御部91は、「復電日-電断日=1日」である場合(St10でY)、「復電時刻がAM4:00以降」で初期化条件2が成立するか否かを判定する(St11)。サブ制御部91は、初期化条件2が成立する場合(St11でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。 【0142】 一方、サブ制御部91は、初期化条件2が成立しない場合(St11でN)、「電断から復電まで4時間以上経過」で初期化条件3が成立するか否かを判定する(St12)。サブ制御部91は、初期化条件3が成立する場合(St12でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。 【0143】 一方、サブ制御部91は、初期化条件3が成立しない場合(St12でN)、初期化フラグ2をオンすることなく、本ルーチンを終了する。 【0144】 St10の処理において、サブ制御部91は、「復電日-電断日=1日」でない場合(St10でN)、「復電日=電断日」であるため、「復電時刻-電断時刻≧4時間」で初期化条件4が成立するか否かを判定する(St13)。サブ制御部91は、初期化条件4が成立する場合(St13でY)、初期化フラグ2をオンし(St9)、本ルーチンを終了する。 【0145】 一方、サブ制御部91は、初期化条件4が成立しない場合(St13でN)、初期化フラグ2をオンすることなく、本ルーチンを終了する。」 これらの記載によれば、本件特許明細書には、サブ制御部91は、初期化条件1~4のいずれかが成立すると、初期化フラグ2をオンし、初期化フラグ2がオンされた場合、RAM91cに記憶されたAT抽選契機が成立する条件となる消化ゲーム数の計数情報以外の情報を初期化することが記載されているといえる。 そして、段落【0140】~【0145】の記載において、初期化条件1~4が成立するか否かを判定する際に用いられる「電断日」及び「電断時刻」、「復電日」及び「復電時刻」は、段落【0128】に「以下の処理において、サブ制御部91は、取得した復電時の日時情報から特定した復電日時と、保持していた電断時の日時情報から特定した電断日時とを比較して、初期化条件が成立するか否か、および異常条件が成立するか否かを判定する。」と記載されていることから、それぞれ訂正後の請求項1に記載された「電断日時情報から特定される電断時の日時」、「復電日時情報から特定される復電時の日時」に対応するといえ、上記(1)イで説示したとおり、「電断日時情報」及び「復電日時情報」が「日時情報記憶手段に記憶された」ものであることは、本件特許明細書に記載されていたといえるものである。 してみると、本件特許明細書の記載から、訂正事項2に係る訂正後の記載事項を導き出すことができるから、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2は、上記アで述べたとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、令和2年3月2日付けの取消理由通知において、本件訂正前の請求項1に記載された「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ、または前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前の場合」における「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」の技術的な意味が不明確であるなどの取消理由が通知されたことに対応するため、当該記載に係る訂正事項4における訂正とともに、同じく請求項1に記載された「前記初期化手段」を特定する記載中の「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも後の場合」についても、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも後の場合」へと訂正して、その技術的な意味を明らかにするとともに、訂正事項4に係る訂正後の記載と整合をとろうとするものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 本件特許明細書には、上記(1)イ及び(2)イで摘記した事項に加えて、以下の記載がある。 「【0138】 図21の初期化判定処理の説明に戻り、St4の処理の後、サブ制御部91は、「復電日時=電断日時」で異常条件1が成立するか否かを判定する(St5)。サブ制御部91は、異常条件1が成立する場合(St5でY)、異常が発生した旨を示すエラーフラグをオンし(St6)、本ルーチンを終了する。 【0139】 一方、サブ制御部91は、異常条件1が成立しない場合(St5でN)、「復電日時<電断日時」で異常条件2が成立するか否かを判定する(St7)。サブ制御部91は、異常条件2が成立する場合(St7でY)、異常が発生した旨を示すエラーフラグをオンし(St6)、本ルーチンを終了する。」 これらの記載によれば、本件特許明細書には、サブ制御部91が、「復電日時=電断日時」で異常条件1が成立するか否かを判定し(【0138】)、異常条件1が成立しない場合、「復電日時<電断日時」で異常条件2が成立するか否かを判定し(【0139】)、異常条件2が成立しない場合、初期化条件1~4のいずれかが成立するか否かを判定し、初期化条件1~4のいずれかが成立すれば初期化フラグ2をオンし、成立しない場合は初期化フラグ2をオンにしない(【0140】~【0145】)構成が記載されているといえる。 そして、上記の記載によれば、異常条件1~2のいずれも成立しないのは、「復電日時>電断日時」の場合であるといえるところ、異常条件1~2が成立するか否かを判定する際に用いられる「復電日時」、「電断日時」は、段落【0128】に「以下の処理において、サブ制御部91は、取得した復電時の日時情報から特定した復電日時と、保持していた電断時の日時情報から特定した電断日時とを比較して、初期化条件が成立するか否か、および異常条件が成立するか否かを判定する。」と記載されていることから、それぞれ訂正後の請求項1に記載された「復電日時情報から特定される復電時の日時」、「電断日時情報から特定される電断時の日時」に対応するといえる。 してみると、本件特許明細書等の記載から、訂正事項3に係る訂正後の記載事項を導き出すことができるから、訂正事項3は、本件特許明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載された「前記復電時の日時」、「前記電断発生時の日時」に対して、それぞれ「前記復電日時情報から特定される」、「前記電断日時情報から特定される」との限定を付加するものであって、構成要件の削除はなく、カテゴリーや対象を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、令和2年3月2日付けの取消理由通知において、本件訂正前の請求項1に記載された「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ、または前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前の場合」という条件が成立することは通常あり得ないことであるから、「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」の技術的な意味が不明確であるなどの取消理由が通知されたことに対応するため、訂正前の上記記載を、「前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時と同じとなる場合、または、前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも前となる場合」へと訂正して、本件訂正前の請求項1に記載された上記の条件が「日時情報記憶手段の記憶異常により」成立するものであり、「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」が復電日時情報及び電断日時情報から特定されるものであることを特定することにより、「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」の技術的な意味を明らかにしようとするものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 訂正後の請求項1に記載された「前記日時情報記憶手段の記憶異常」は、「記憶異常」という文言から、「前記日時情報記憶手段」の記憶に異常があること、すなわち、「前記日時情報記憶手段」の記憶内容に異常があることを意味するものと解される。 一方、本件特許明細書の段落【0135】には、「サブ制御部91は、異常条件1,2のうちのいずれかが成立するか否かを判定することにより、RTC97の故障などによるRTC97からサブ制御部91に対して出力された日時情報の誤りや、RAM91cの異常などによる更新時刻記憶領域に記憶された日時情報の誤りを特定する。具体的には、異常条件1,2のうちのいずれかが成立すれば、RTC故障やRAM異常などが発生していることになる。一方、異常条件1,2のうちのいずれも成立しなければ、RTC故障やRAM異常などが発生していないことになる。これにより、RTC故障やRAM異常などの発生を見極めることができる。」と記載されているところ、「RTC97の故障などによるRTC97からサブ制御部91に対して出力された日時情報の誤り」があれば、結果として、「RAM91cの更新時刻記憶領域」(【0127】)及び「RAM91cの一時記憶領域」(【0128】)(上記(1)イで説示したとおり、いずれも訂正後の請求項1に記載された「日時情報記憶手段」に対応する。)の記憶内容に異常が生じ、「RAM91cの異常などによる更新時刻記憶領域に記憶された日時情報の誤り」があれば、結果として、「RAM91cの更新時刻記憶領域」だけでなく、「RAM91cの一時記憶領域」(電断時の日時情報をRAM91cの更新時刻記憶領域から取得して格納するもの(【0109】))の記憶内容にも異常が生じることは自明の事項である。 そうすると、本件特許明細書の記載から、異常条件1~2の原因が、「RTC故障」(計時装置の異常)や「RAM異常」(記憶装置の異常)などであり、ひいては、「前記日時情報記憶手段の記憶異常」(記憶内容の異常)であるといえることは、自明のこととして導き出すことができるというべきである。 また、本件特許明細書の段落【0138】~【0139】及び図21(St5及びSt7の条件分岐において「Y」の場合に、St9を経ずにリターンする点)を参照すると、本件特許明細書等には、サブ制御部91が、「復電日時=電断日時」で異常条件1が成立するか否かを判定し、異常条件1が成立する場合、初期化フラグ2をオンにせず、異常条件1が成立しない場合、「復電日時<電断日時」で異常条件2が成立するか否かを判定し、異常条件2が成立する場合、初期化フラグ2をオンにしない構成が記載されているといえる。 そして、異常条件1~2が成立するか否かを判定する際に用いられる「復電日時」、「電断日時」は、段落【0128】に「以下の処理において、サブ制御部91は、取得した復電時の日時情報から特定した復電日時と、保持していた電断時の日時情報から特定した電断日時とを比較して、初期化条件が成立するか否か、および異常条件が成立するか否かを判定する。」と記載されていることから、それぞれ訂正後の請求項1に記載された「復電日時情報から特定される復電時の日時」、「電断日時情報から特定される電断時の日時」に対応するといえる。 以上によれば、本件特許明細書等の記載から、訂正事項4に係る訂正後の記載事項を導き出すことができるから、訂正事項4は、本件特許明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載された「前記復電時の日時」、「前記電断発生時の日時」に対して、それぞれ「前記復電日時情報から特定される」、「前記電断日時情報から特定される」との限定を付加するとともに、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ」となる場合、及び、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前」となる場合が発生する原因として、それぞれ「前記日時情報記憶手段の記憶異常により」という限定を付加するものであって、構成要件の削除はなく、カテゴリーや対象を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、特許請求の範囲に係る訂正事項1乃至4と整合性をとるために明細書を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項5は、訂正事項1~4について検討したのと同様に、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)特許異議申立人の主張について ア 訂正事項1について 特許異議申立人は、令和2年7月15日付けの意見書において、「この訂正は、日時情報記憶手段の記憶の対象とする日時情報を、本件訂正前に、二つの日時を特定可能な一つの情報であったものを、本件訂正後には、それぞれ個別に一つの日時を特定可能な二つの日時情報に、変更するものである。・・・したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項に規定する訂正要件を満たすものではない・・・」(4頁19行~6頁6行)と主張している。 しかしながら、本件訂正前の請求項1には、「日時情報記憶手段」の記憶の対象について、「電断発生時の日時と復電時の日時とを特定可能な日時情報」と特定されているのみであって、これが二つの日時を特定可能な一つの情報であるなどとは特定されていない。また、電断発生と復電は同時に起きるものではないから、「電断発生時の日時と復電時の日時とを特定可能な日時情報」は、それぞれ電断発生時の日時と復電時の日時を表す2つの情報からなるものと解するのが自然である。そうすると、訂正事項1が実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものということはできない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。 イ 訂正事項2~4について 特許異議申立人は、同意見書において、「・・・本件訂正後の構成要件E(E1及びE2を含む)においては、日時情報ではなく、かかる日時情報から特定される日時、によって初期化をするか否かを定めている。・・・他方、訂正事項2は、・・・日時情報に基づいて初期化することが可能な初期化手段を備えているものとされ、日時に基づいて初期化することが可能な初期化手段とはされていない。このように、訂正事項2と構成要件E(E1及びE2を含む)とは、初期化するか否かを判別する条件が異なるものであるから、訂正事項2は、構成要件E(E1及びE2を含む)との関係において、特許請求の範囲に記載されていない別の手段により初期化するか否かを判別することを所与の前提として含むものとなる。・・・したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものではないので、特許法第120条の5第2項但し書き第3号に規定する訂正要件を満たすものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるので、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項に規定する訂正要件をも満たすものではない・・・構成要件E(E1及びE2を含む)についての訂正事項3、4も、訂正事項2との関係において、同様に、訂正要件を満たすものではない・・・」(8頁2行~9頁7行)と主張している。 しかしながら、本件訂正後の請求項1には、「電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報」、「復電時の日時を特定可能な復電日時情報」と記載されており、「電断日時情報」、「復電日時情報」がそれぞれ「電断発生時の日時」、「復電時の日時」を特定可能なものであることが特定されている。そして、訂正事項3~4に係る訂正後の請求項1の記載によれば、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時」及び「前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時」に基づいて、特定情報の初期化の有無を決定することが特定されているといえるから、訂正事項2に係る訂正後の請求項1の「前記電断日時情報および前記復電日時情報に基づき、・・・特定情報を初期化する」についても、同様に「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時」及び「前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時」に基づき、特定情報を初期化するものと解するのが相当である。 したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。 ウ 訂正事項4について (ア)特許異議申立人は、同意見書において、「しかし、本件特許の明細書及び図面には、「前記日時情報記憶手段の記憶異常により、」という、日時情報記憶手段の記憶異常を判別し、かつ、それが、前記日時が同じとなった原因又は前記日時の先後が逆となった原因であることを判別する手段は何ら開示されていない。・・・よって、訂正事項4は、本件特許の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法120条の5第9項において準用する特許法126条第5項に規定する訂正要件を満たすものではなく・・・」(10頁14行~12頁7行)と主張している。 しかしながら、上記(4)イで説示したとおり、本件訂正後の請求項1に記載された「前記日時情報記憶手段の記憶異常」は、「前記日時情報記憶手段」の記憶内容に異常があることを意味するものと解され、本件特許明細書の記載から、異常条件1~2(「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じとなる場合」及び「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前となる場合」)の原因が、「RTC故障」(計時装置の異常)や「RAM異常」(記憶装置の異常)などであり、ひいては、「前記日時情報記憶手段の記憶異常」(記憶内容の異常)であるといえることは、自明のこととして導き出すことができる。 そうすると、訂正事項4は、訂正前の「前記復電時の日時」、「前記電断発生時の日時」に対して、それぞれ「前記復電日時情報から特定される」、「前記電断日時情報から特定される」との限定を付加することに伴い、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時と同じとなる場合」、及び「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも前となる場合」に対して、そのような場合が発生する原因として、「前記日時情報記憶手段の記憶異常により」という自明の事項を、確認的に追加して記載することにより、「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」の技術的な意味をより明らかにしようとするものということができる。 してみると、訂正事項4における訂正後の「前記日時情報記憶手段の記憶異常により」との記載は、日時情報記憶手段の記憶異常を判別し、かつ、それが、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時」と「前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時」とが同じとなった原因又は先後が逆となった原因であることを判別する構成を意味するものではないことは明らかである。 したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。 (イ)特許異議申立人は、同意見書において、「訂正事項4により、・・・本件訂正後の請求項1の記載では、「日時」をもって、復電時の日時と電断発生時の日時の比較を行っている以上、両者の日時が1時間未満の差である場合には、日時が同じであると判別することになってしまう。・・・これは、「誤って特定情報が初期化されてしまうことを防止する」(【0006】)という本件特許の目的と矛盾することとなるので、特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件特許の明細書等に記載された発明とは異なる発明について記載したものであると解さざるを得ない。・・・したがって、この点からしても、訂正事項4は、本件特許の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、特許法120条の5第9項において準用する特許法126条第5項に規定する訂正要件に該当せず・・・」(12頁12行~13頁3行)と主張している。 しかしながら、本件特許明細書の段落【0073】には、「また、電断が発生した日時(日付および時刻)を「電断日時」とも称し、復電した日時(日付および時刻)を「復電日時」とも称する。」と記載され、同段落【0009】には、「「時刻情報」には、たとえば、「時」、「分」、および「秒」を特定する情報が少なくとも含まれる。」と記載されているから、これらの本件特許明細書に記載された用語の用法に基づけば、本件訂正後の請求項1に記載された構成であっても、復電時の日時と電断発生時の日時が1時間未満の差である場合に日時が同じであると判別することはあり得ない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。 エ 訂正事項5について 特許異議申立人は、同意見書において、「・・・前記したとおり、前記訂正事項1~4は、不適法なものであって認められるべきものではない。したがって、訂正事項1~4の訂正を前提とした訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものにはなり得ず、また、特許法第120条の5第2項但し書き各号に定める他の事項を目的としたものでもないから、特許法第120条の5第2項但し書きに規定する訂正要件を満たすものではなく・・・」(14頁21行~15頁2行)と主張している。 しかしながら、上記ア~ウのとおり、訂正事項1~4は訂正要件を満たすものであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(記号A~E2は、分説のため当審で付した。また、下線は本件訂正による訂正箇所を示す。)。 「A 所定の遊技を行う遊技機であって、 B 電断が発生した後に復電した場合において、電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する日時情報記憶手段と、 C 所定情報を記憶する所定情報記憶手段と、 D 前記日時情報記憶手段に記憶された前記電断日時情報および前記復電日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化することが可能な初期化手段とを備え、 E 前記初期化手段は、 E1 前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも後の場合、初期化条件が成立しているときには前記特定情報を初期化する一方、当該初期化条件が成立していないときには当該特定情報を初期化せず、 E2 前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時と同じとなる場合、または、前記日時情報記憶手段の記憶異常により、前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも前となる場合、前記特定情報を初期化しない、遊技機。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1に係る特許に対して令和2年3月2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)理由1.(明確性)本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)理由2.(サポート要件)本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)理由3.(新規事項)本件特許は、平成30年11月1日付け手続補正書でした補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものであり、取り消されるべきものである。 2 当審における判断 (1)理由1(明確性)について 取消理由1は、「電断が発生した後に復電した場合」(分説B)であることを前提とすると、請求項1の分説E2の「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ、または前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前の場合」という条件が成立することは、通常有り得ないことであり、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ、または前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前の場合」となるような「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」とは、いかなる技術的な意味を有するのか不明であり、また、請求項1の分説E2の「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ」との記載、及び、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前」との記載は、「電断発生時」及び「復電時」の先後関係を言うものであるが、これら「同じ」及び「前」のいずれの場合も、請求項1の分説Bの「電断が発生した後に復電した場合」の、電断が発生した時の「後に」復電した時となる先後関係と矛盾することになるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないというものであった。 これに対して、本件訂正の訂正事項4により、分説E2の「前記復電時の日時」が「前記復電日時情報から特定される」ものであることが特定され、同「前記電断発生時の日時」が「前記電断日時情報から特定される」ものであることが特定されるとともに、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時と同じ」となる場合、及び、「前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも前」となる場合が発生する原因として、それぞれ「前記日時情報記憶手段の記憶異常により」という特定が付加された。 これにより、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時と同じとなる場合」や「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時が前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時よりも前となる場合」が発生するような「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」が、「日時情報記憶手段の記憶異常により」生じるものであることが明らかとなり、分説Bの「電断が発生した後に復電した場合」との記載と矛盾しないものとなった。 そうすると、本件訂正後の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないということはできない。 したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものとはいえない。 (2)理由2(サポート要件)について 取消理由2は、請求項1の分説E1及びE2の記載における復電時の日時及び電断発生時の日時は、日時情報記憶手段に記憶されているものであることは特定されていないから、日時情報記憶手段に記憶されているもの以外のものも含むものであるが、そのようなものは本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないというものであった。 これに対して、本件訂正の訂正事項3及び4により、訂正後の分説E1及びE2において、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時」、「前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時」と特定されるとともに、同訂正事項1により、訂正後の分説Bにおいて、「電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する日時情報記憶手段」と特定されることにより、訂正後の請求項1において、分説E1及びE2に記載された「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」が、「日時情報記憶手段」に記憶されているものであることが明らかになった。 そうすると、本件発明は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないものということはできない。 したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものとはいえない。 (3)理由3(新規事項)について 取消理由3は、補正により加入された請求項1の分説E1及びE2の記載における復電時の日時及び電断発生時の日時は、日時情報記憶手段に記憶された「日時情報」により特定されるものであることは記載されていないから、日時情報記憶手段に記憶されているもの以外のものも含むものであるが、そのようなものは願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されたものではなく、当初明細書等の記載から自明のものでもないというものであった。 これに対して、本件訂正の訂正事項3及び4により、訂正後の分説E1及びE2において、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時」、「前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時」と特定されるとともに、同訂正事項1により、訂正後の分説Bにおいて、「電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する日時情報記憶手段」と特定されることにより、訂正後の請求項1において、分説E1及びE2に記載された「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」が、「日時情報記憶手段」に記憶されているものであることが明らかになった。 そうすると、本件訂正後の分説E1及びE2の記載は、当初明細書等に記載されたものでないということはできず、当初明細書等の記載から自明のものではないということもできない。 したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものとはいえない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 具体的理由イ.について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、「4.申立て理由」における「(4)具体的理由」イ.として、「本件特許発明の構成要件Eに関して、本件特許発明に係る特許出願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成29年11月1日付け手続補正書(当審注:「平成30年11月1日付け手続補正書」の誤記と認められる。)により、特許請求の範囲から「禁止手段」を削除し、代わって新たに「初期化手段」という手段を記載するように補正された。・・・そして、初期化する理由には様々な態様が考えられ、・・・明細書に記載された事項以外にも必要があれば初期化をすることがあり得るのであるから、その点に関して明細書等に具体的な説明がされ、また特許請求の範囲の請求項1においてそれが特定されていない以上、本件特許発明の構成要件Eの「初期化手段」の構成は、・・・出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面との関係において、新たな技術的事項を導入したものとなる。したがって、本件特許に係る出願における前記手続補正は、法17条の2第3項に定める要件を満たすものではないので、・・・取り消されるべきものである。」(6頁18行~7頁15行)と主張している。 しかしながら、本件訂正前の請求項1には、「初期化手段」について、「前記日時情報に基づき、前記所定情報記憶手段に記憶された前記所定情報のうちの特定情報を初期化することが可能な初期化手段」、「前記初期化手段は、前記復電時の日時が前記電断発生時の日時よりも後の場合、初期化条件が成立しているときには前記特定情報を初期化する・・・」と特定されているように、特定情報を初期化するのがどのような場合であるかが特定されており、どのような場合にどのような情報を初期化するものであってもよいなどとは特定されていない。そして、このことは、本件訂正後の請求項1においても同様である。 また、当初明細書等には、設定変更された場合に、RAM91cに記憶されたエラー履歴情報以外の情報を初期化することが記載されており(【0118】、【0126】)、初期化条件(初期化条件1~4)が成立した場合に「特定情報」を初期化する機能に加えて、他の条件が成立した場合に他の情報を初期化する機能をも有する初期化手段に関する技術思想も開示されているといえる。 そうすると、平成30年11月1日付けの手続補正により、請求項1に「初期化手段」の構成が記載されるようになったからといって、新たな技術的事項が導入されたものとはいえないから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。 2 具体的理由ウ.について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、「4.申立て理由」における「(4)具体的理由」ウ.として、「本件特許発明の構成要件Eは、それが前提とする電断及び復電の態様が限定されていないものであるから、電断や復電が直接関係しない任意の情報(例えば、他のエラー等の情報)に基づいて、電断や復電との関連性を持たせて初期化するか否かを判定することまでをも含むものとなるにもかかわらず、本件特許の明細書又は図面にはその態様が具体的に記載されておらず、また特許請求の範囲の請求項1においてそれが特定されていない以上、あらゆる態様を含み得るものとなっている。したがって、本件特許発明の「初期化手段」に係る構成は、甲第1号証に示す出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面との関係において、新たな技術的事項を導入したものとなる。よって、本件特許に係る前述の手続補正は、法17条の2第3項に定める要件を満たすものではないので、・・・取り消されるべきものである。」(8頁7行~22行)と主張している。 また、特許異議申立人は、令和2年7月15日付けの意見書においても、改めて上記の特許異議申立理由について言及している(13頁5行~14頁3行)。 上記の特許異議申立理由は、令和2年3月2日付け取消理由通知において、実質的に取消理由3として通知したものであるが、特許異議申立人が上記の意見書において、当審が取消理由として取り上げなかった旨の主張をしているから(13頁24~25行)、念のため以下に検討する。 本件訂正の訂正事項3及び4により、訂正後の分説E1及びE2において、「前記復電日時情報から特定される前記復電時の日時」、「前記電断日時情報から特定される前記電断発生時の日時」と特定されるとともに、同訂正事項1により、訂正後の分説Bにおいて、「電断が発生した後に復電した場合において、電断発生時の日時を特定可能な電断日時情報を記憶するとともに復電時の日時を特定可能な復電日時情報を記憶する日時情報記憶手段」と特定されることにより、訂正後の請求項1において、分説E1及びE2に記載された「復電時の日時」及び「電断発生時の日時」が、「日時情報記憶手段」に記憶されているものであり、「電断が発生した後に復電した場合」という電断及び復電の態様を前提とするものであることが明らかになった。 そうすると、本件訂正後の分説E1及びE2の記載は、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入したものとはいえず、本件訂正により特許異議申立人の主張する上記の特許異議申立理由は解消することとなったから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。 第6 特許異議申立人のその他の主張について 特許異議申立人は、令和2年7月15日付けの意見書において、「なお、仮に、本件訂正が認められたとしても、それでもなお、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、訂正事項2~4について先に述べた理由による記載不備が存在することとなるので、本件特許は、特許法第36条第6項第1号及び/又は同第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであって、特許法第113条第4号の規定に該当するものとなる・・・」(15頁19~22行)と主張している。 しかしながら、上記「第2 2(6)」イ及びウで説示したとおり、訂正事項2~4は訂正要件を満たすものであって、記載不備を含むものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号及び/又は同第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるとはいえない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-701040

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