特許異議申立
2019-700692
水洗大便器
- 審判番号
- 2019-700692
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-005974外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年09月03日
- 審決日
- 2021年02月26日
- 公報発行日
- 2021年08月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.113-ZDA(E03D) / P1651.121-ZDA(E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6480094号発明「水洗大便器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6480094号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5、6〕について訂正することを認める。
特許第6480094号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。
同請求項4ないし6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6480094号の請求項1ないし6に係る特許(以下「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成27年8月31日に出願した特願2015-171093号の一部を平成31年1月17日に新たな特許出願としたものであって、同年2月15日に特許権の設定登録がされ、同年3月6日に特許掲載公報が発行された。
これに対し、令和1年9月3日に特許異議申立人TOTO株式会社(以下「申立人」という。)により上記請求項1ないし6に係る特許について特許異議の申立て(以下「本件特許異議の申立て」という。)がされたところ、その経緯は、次のとおりである。
令和1年 9月 3日:本件特許異議の申立て
11月13日付け:取消理由通知書
令和2年 1月17日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
3月11日:申立人による意見書の提出
3月27日付け:取消理由通知書(予告)
5月29日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
7月15日:申立人による意見書の提出
8月28日付け:取消理由通知書(予告)
11月 6日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
12月16日:申立人による意見書の提出
なお、令和2年11月6日に訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたので、令和2年1月17日及び同年5月29日にされた先の訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項5に「前記凹部は、前後が開口した切欠状の凹部であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水洗大便器」と記載されているのを、
「前記凹部は、前後が開口した切欠状の凹部であり、
水平面と略平行な前記凹部の前記底面は、前記開口部の後端から後方に向かって延在し、前記便器本体は、前記便鉢の前後左右を覆い隠すように全周にわたって連続する外周壁であって、前記凹部の後端との間に空間を形成する外周壁を有し、
本水洗大便器はさらに、前記凹部の前記底面と前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水洗大便器」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に「前記底面は、左右方向の長さが、前記開口部の左右方向の最大幅の1/2倍より長く形成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水洗大便器」と記載されているのを、
「前記底面は、左右方向の長さが、前記開口部の左右方向の最大幅の1/2倍より長く形成されたことを特徴とする請求項5に記載の水洗大便器」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、(ア)「水洗大便器」が有する「凹部の底面」について、「水平面と略平行」であり、「前記開口部の後端から後方に向かって延在」するものに限定し、(イ)「水洗大便器」が有する「便器本体」について、「前記便鉢の前後左右を覆い隠すように全周にわたって連続する外周壁」から構成され、「前記凹部の後端との間に空間を形成」するものに限定するとともに、(ウ)「水洗大便器」について、「前記凹部の前記底面と前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備える」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加について
訂正事項1に係る訂正が、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか検討する。
「水洗大便器」が有する「凹部の底面」が、「水平面と略平行」であり、「前記開口部の後端から後方に向かって延在」するものであること(上記「ア(ア)」)は、請求項5で引用する請求項1には、「凹部の底面」が「水平面と略平行」であり、「凹部」の「前方側」が「前記開口部に臨む」ことが記載されており、請求項5には、本件訂正前から「凹部」の「前後が開口した切欠状」であることが記載されていること、本件明細書の段落【0046】には、「凹部22は、開口部40の後端縁から上面部16の後端縁に亘る範囲に連続する溝状に形成される」ことが記載されていること、さらには図9の図示内容からみて、本件明細書等に記載されていることは明らかといえる。
「水洗大便器」の「便器本体」について、「前記便鉢の前後左右を覆い隠すように全周にわたって連続する外周壁」であり、「前記凹部の後端との間に空間を形成」すること(上記「ア(イ)」)は、本件明細書の段落【0045】には、「本実施の形態では、水洗大便器100は、カバー13を有しない。代わりに、外周壁部20が水洗大便器100の意匠性を確保するよう前後左右を覆い隠す」ことが記載されていること、段落【0046】には、「凹部22は、開口部40の後端縁から上面部16の後端縁に亘る範囲に連続する溝状に形成される」ことが記載されていることから、上面部16の後端縁と凹部22の後端縁が一致することが理解できるところ、図9の図示内容からみて、凹部22の後端縁(上面部16の後端縁)と、外周壁20のうち、凹部22の後端縁(上面部16の後端縁)よりも後方に位置する部分との間には空間があることが看て取れるから、本件明細書等に記載されているといえる。
「水洗大便器」について、「前記凹部の前記底面と前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備える」ものとすること(上記「ア(ウ)」)は、本件明細書の段落【0041】に「本実施の形態に係る水洗大便器100によると・・・、弾性部材32は、正面視において、突出部12aと凹部22との隙間を埋めるように設けられる。これにより、弾性部材32がシールとして機能し、」と記載されていることからみて、本件明細書等に記載されているといえる。
以上から、訂正事項1における請求項5に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することからみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項6において「請求項1から5」を引用していたのを、「請求項5」を引用するものに限定するものであり、上記(1)で示したとおり、訂正事項1に係る訂正により、請求項5に係る発明は限定されているから、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加について
前記「(1)イ」で示したとおり、訂正事項1における請求項5に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえることからみて、請求項5のみを引用することとする請求項6に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることからみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
4 まとめ
訂正前の請求項6は、請求項5を引用しており、請求項5に連動して訂正がされるものであるから、請求項5及び6は、特許法120条の5第4項に規定する「一群の請求項」に該当する。
よって、訂正事項1及び2に係る訂正は、一群の請求項〔5、6〕に対して請求されたものである。
そして、本件においては、訂正前の請求項1ないし6について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1及び2に係る訂正により、請求項5及び6について特許請求の範囲の減縮がされたとしても、訂正後の請求項5及び6に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、令和2年11月6日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5、6〕について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
1 証拠
当審より通知した、令和1年11月13日付け取消理由通知、令和2年3月27日付け取消理由通知(決定の予告)、同年8月28日付け取消理由通知(決定の予告)において引用文献として引用した証拠(引用文献4を除き申立人が証拠又は参考文献として提出したもの)は、以下のとおりである。
・引用文献1:特開2006-176972号公報(甲1)
・引用文献2:特開2001-231715号公報(甲2)
・引用文献3:特開2010-024780号公報(甲3)
・引用文献4:特開2009-209532号公報(職権探知による)
・引用文献5:実願昭63-166172号(実開平2-89070号)のマイクロフィルム(参考文献1)
・引用文献6:特開平2-285120号公報(参考文献2)
・引用文献7:特開2002-68825号公報(参考文献4)
・引用文献8:韓国特許第10-1510431号公報(参考文献5)
2 令和2年8月28日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の要旨
(1)請求項1、5に係る発明は、引用文献1又は引用文献8に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであるし、そうでないとしても、引用文献1又は引用文献8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項2、3に係る発明は、引用文献1又は引用文献8に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(3)請求項6に係る発明は、引用文献8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第4 当審の判断
1 本件発明
本件訂正により請求項1ないし6に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
便鉢と、前記便鉢に対応する開口部を有する上面部と、を有する便器本体と、
前記便鉢の後方に設けられ、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニットと、を備え、
前記上面部には、前方側が前記開口部に臨む、底面が水平面と略平行な凹部が形成されており、
前記機能ユニットは、少なくとも一部が前記凹部内に位置することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記機能ユニットは、
前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能をそれぞれ提供する第1装置および第2装置を含み、
前記第1装置および前記第2装置それぞれの少なくとも一部が前記凹部内に位置することを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記第1装置と前記第2装置は左右方向に並んでいることを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記凹部は、下側となるほど互いに近づくように傾斜する2つの側面を有し、
前記2つの側面は前記底面を挟んで配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記凹部は、前後が開口した切欠状の凹部であり、
水平面と略平行な前記凹部の前記底面は、前記開口部の後端から後方に向かって延在し、
前記便器本体は、前記便鉢の前後左右を覆い隠すように全周にわたって連続する外周壁であって、前記凹部の後端との間に空間を形成する外周壁を有し、
本水洗大便器はさらに、前記凹部の前記底面と前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記底面は、左右方向の長さが、前記開口部の左右方向の最大幅の1/2倍より長く形成されたことを特徴とする請求項5に記載の水洗大便器。」
2 引用文献等の記載
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2006-176972号公報(甲1))には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。引用文献の記載について以下同様。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本願発明は、洗浄便座が取り付けられる便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記の便器については、便器本体と洗浄便座を固定するために、固定金具を便器本体の上面部に固定し、その固定金具に対して洗浄便座を固定することがしばしばある・・・。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的に、便器本体の上面部は先端から後端までフラットであるため、その上に洗浄便座を取り付けると、洗浄便座自体がどうしても大きな容積を必要とするため、無骨なデザインになってしまう。
【0004】
また、立ち上がり補助を目的とした肘掛を便器本体に取り付けることがしばしばあるが、その構造として、肘掛を取り付けるための取付金具などを便器本体上面部に固定することを考えた場合、その取付体積を確保するために洗浄便座側の容積が減り、さらに内部部品の配置などを調整する必要も生じて、デザイン面への影響がより一層大きくなる。
【0005】
これらを考慮して新しいデザインを有した洗浄便座一体型便器を設計するに当たり、便器本体上面部の形状をフラットではなく、段落し形状にすることで、洗浄便座の内部部品の配置を便器本体上面部より下に、つまり立体的に配置することは可能である。さらには、肘掛用の取付金具を取り付ける部位も上面部より下げることで、洗浄便座の内部部品との干渉を防ぐことができる。
【0006】
図4はこの一例を示したものであり、便器本体1の上面部に、洗浄便座取付用の段落し部11が形成されており、この段落し部11上に確保されている凹み空間に洗浄便座の取付部や内部部品が納まっているケース部などが落とし込まれるようになっている。また、段落し部11の後方部分にはさらに段落しされた肘掛用の取付部位12が形成されており、この取付部位12上にたとえば図示した取付金具としてのベースプレート4が固定され、この両側面に肘掛が回動自在に取り付けられるようになっている。」
(イ)「【0011】
図1は、本願発明の一実施形態を示したものである。
【0012】
この実施形態では、図4に例示した便器本体1の洗浄便座取付用の段落し部11の上面に、2つの突起111が設けられている。突起111の個数や寸法、位置などは隙間調整に必要な範囲で適宜決定される。
【0013】
この突起111が設けられた段落し部11に対してたとえば図2に例示したように洗浄便座2が取付固定される際に、便器本体1と洗浄便座2との間に隙間が生じるようであれば、その隙間がなくなるように、突起111を少しずつ削り、洗浄便座2の高さ位置を調整すればよい。
【0014】
これにより、洗浄便座2をその取付部や内部部品を納めたケース部などを段落し部11上の凹み空間に落とし込むようにして取り付けても、便器本体1との隙間が生じることがなくなり、よって、たとえば図3に例示したようなスッキリとしたデザインの便器を実現することができる。」
(ウ)「【0015】
図3の例では、肘掛3も便器本体1の両側に取り付けられているが、このように肘掛3を取り付けた場合であっても、段落し部11の後方位置でさらに段落しした取付部位12でのベースプレート4を介した取り付けによって(図4参照)、スッキリしたデザインが維持されている。」
(エ)図1及び図2
「 【図1】 【図2】
」
(オ)上記(イ)の記載を踏まえると、図1からは、便器本体1は、便鉢と、前記便鉢に対応する開口部を有する上面部と、を有する便器本体であることが看て取れる。
また、図1からは、段落し部11と便器本体の開口との間には、便器本体1の上面部の高さよりも低い位置に底面があり、凹み空間を形成している領域(以下「中間凹み領域」という。)が存在し、その前方側が便器本体の開口部に臨み、前記底面が水平面と略平行であり、当該底面は、便器本体上面部よりも下に段落し形状となっていることが看て取れる。
また、図1からは、洗浄便座取付用の段落し部11が、便器本体1の上面部の高さよりも低い位置に底面があって、凹み空間を形成しており、その前方側が「中間凹み領域」を介して便器本体の開口部に臨み、前記底面が水平面と略平行であり、当該底面は、便器本体上面部よりも下に段落し形状となっていることが看て取れる。
(カ)図3及び図4
「 【図3】 【図4】
」
(キ)上記(イ)及び(ウ)の記載、図1及び図4を踏まえると、図4の便器本体1の洗浄便座取付用の段落し部11は、図1の突起111を有していない形状を有する便器本体であることが看て取れる。
イ 引用発明1
上記アによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
【引用発明1】
「洗浄便座2が取り付けられる洗浄便座一体型便器であって、
便鉢と、前記便鉢に対応する開口部を有する上面部とを有する便器本体1を有し、
当該便器本体1の上面部には、当該上面部の高さよりも低い位置に底面がある洗浄便座取付用の段落し部11及び中間凹み領域が形成されており、前記段落し部11及び中間凹み領域のそれぞれの底面が水平面と略平行であり、当該それぞれの底面は、便器本体上面部よりも下に段落し形状となっており、
前記段落し部11上に確保されている凹み空間に洗浄便座2の取付部や内部部品が納まっているケース部などを落とし込むようにして取り付けて、洗浄便座2の内部部品の配置を便器本体上面部より下に立体的に配置することが可能である洗浄便座が取り付けられる洗浄便座一体型便器。」
(2)引用文献8
ア 引用文献8の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である引用文献8(韓国特許第10-1510431号公報(参考文献5))には、図面とともに次の事項が記載されている(外国語の文献であるため、申立人が提出した訳文による。)
(ア)「【0001】本発明は、陶器一体型ビデの着脱装置に関することで、より詳細するように、着脱案内部が固定されながら便器の水槽上面に固定された中間版にビデの着脱を容易にすることと合わせてビデが中間版に着脱される時、制御部材の配管が給水管と案内管に接続及び解除されるようにすることで、ビデの設置を簡便にさせることはもちろん便器の上面より内部に凹入された水槽上面にビデの下段部が装着されて美観をするようにする陶器一体型ビデの着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】一般的にビデは、用便者の用便後、後始末を清潔で衛生的に処理するようにノズルに噴射される洗浄水で肛門や局所を洗浄する装置で、通常便器に装着できるが、これは全体的なサイズが大きくて、外見が美麗ではない問題点があって最近にはビデと便器が一体に形成される陶器一体型ビデが普及されている実情である。」
(イ)「【0020】本発明陶器一体型ビデの着脱装置(100)は、便器(10)内部に凹入された水槽(110)が構成されて、前記水槽(110)上面に安着固定される中間版(120)が構成されて、両端部のフック(131’)が一方向に形成されて中間版(120)に固定される第1着脱案内部材(131)が具備されて、前記第1着脱案内部材(131)のフック(131’)と反対反響でフック(132’)が形成されて中間版(120)に固定される第2着脱案内部材(132)が具備された着脱案内部(130)が構成されて、作業者の加圧可否によって前、後進に移動しながら着脱案内部(130)の第1着脱案内部材(131)に着脱される加圧着脱部(140)が構成されて、前、後進に移動する前記加圧着脱部(140)によって左、右方向に移動しながら着脱案内部(130)の第2着脱部材(132)に着脱される移動着脱部(150)を含んで構成されることで、これをさらに具体的に説明すると次のとおりである。
【0021】前記加圧着脱部(140)は、前記作業者によって前、後進移動する時、移動着脱部(150)の移動着脱部材(151)を加圧して移動させることができるように片側が傾斜するように形成された加圧着脱部材(141)が具備されて、前記加圧着脱部材(141)の先端部に折曲されて作業者が引っぱる取っ手(142)が具備されて、前記加圧着脱部材(141)の後端部に突出されて第2着脱案内部材(132)のフック(132’)にかかるようにする係止片(143)が具備されて、前記加圧着脱部材(141)とビデ(20)底盤(21)に同一線上にそれぞれ突出された突出の方(144)の間に装着されて作業者の加圧で復元力が圧縮されながら作業者の加圧力が解除されると圧縮された復元力に移動された加圧着脱部材(141)を修復させる加圧復元部材(145)を含んで具備される。」
(ウ)「【0035】この状態で図4ないし図5に図示されたように、ビデ(20)の底盤(20)(当審注:「(21)」の誤りと認める。)を中間版(120)に安着させると、制御部材(163)の配管(163’)が給水管(161)科した対の案内管(162)に結合されることと同時に図6ないし図7に図示されたように、底盤(21)の結合孔(131a)(132a)が第1、2着脱案内部材(131)(131)のフック(131’)(132’)に結合されながら結合孔(131a)(132a)でフック(131’)(132’)が突出される。」
(エ)「【0040】前記ビデ(20)が便器(10)及び中間版(120)に設置されると、水道栓を通じて給水管(161)に供給される水は制御部材(163)の制御によって配管(163’)を通じて一対の案内管(162)を経由して水槽及びリームで排出されて用便を洗浄するのに使われる。」
(オ)図1及び図4
「 【図1】 【図4】
」
(カ)図5、図6及び図8
「 【図5】 【図6】 【図8】
」
(キ)図1からは、便器(10)には、「楕円状の開口」が形成されるとともに、便器(10)内部に凹入された水槽(110)が形成され、前記楕円状の開口及び水槽(110)を取り囲む上面が形成されており、前記水槽(110)と前記楕円状の開口との間には、便器(10)の上面よりも低い位置に底面を有し、該底面が水平面と略平行な凹部が形成されていることが看て取れる。
(ク)図4において符号「21」が付された部材は、図1において符号「20」が付されたビデ(20)の底盤(21)であることは明らかであり、上記(ア)及び(イ)の記載を参酌すると、上記ビデ(20)の底盤(21)は、「ビデの下段部」を構成する。
また、図1及び図8から、ビデ(20)は、便器(10)の上面に形成された楕円状の開口よりも後方に設けられていることが看て取れる。
さらに、図5及び図6から、上記ビデ(20)の下段部を構成する底盤(21)は、便器(10)及び中間版(120)に設置されており、制御部材(163)が存在する近傍から取っ手(142)が存在する近傍まで、便器(10)の上面よりも低い位置に配置されている「低い部分」が存在することが看て取れる。
(ケ)図8において、ビデ(20)は、便器(10)上面に形成された楕円状の開口内の位置に至るまで覆うように配置されており、上記(ク)で述べたビデ(20)の底盤(21)の「低い部分」は、上記開口内に至る位置まで延びているから、図4、図6及び図8から、ビデ(20)の底盤(21)を図4における下方向に延びる矢印のように移動して便器(10)及び中間版(120)に設置すると、上記(ク)で述べたビデ(20)の底盤(21)の「低い部分」の一部が、上記(キ)において述べた凹部に位置することは明らかである。
イ 引用発明8
上記アによれば、引用文献8には、次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されているものと認められる。
【引用発明8】
「便器(10)の上面に楕円状の開口が形成されるとともに、便器(10)内部に凹入された水槽(110)が形成され、前記楕円状の開口及び水槽(110)を取り囲む上面が形成されており、前記水槽(110)上面にビデ(20)の下段部が装着されて美観をするようにする陶器一体型ビデの着脱装置であって、
前記水槽(110)と前記楕円状の開口との間には、底面が水平面と略平行な凹部が形成されて、前記楕円状の開口及び前記水槽(110)の間に前記便器(10)の上面よりも低い底面を形成しており、
前記ビデ(20)は、前記便器(10)の上面に形成された楕円状の開口よりも後方に設けられ、用便者の用便後、後始末を清潔で衛生的に処理するようにノズルに噴射される洗浄水で肛門や局所を洗浄する装置であり、
前記ビデ(20)の下段部を構成する底盤(21)には、制御部材(163)が存在する近傍から取っ手(142)が存在する近傍まで、便器(10)の上面よりも低い位置に配置されている低い部分が存在し、前記底盤(21)を前記便器(10)及び中間版(120)に設置すると、前記底盤(21)の低い部分の一部が、前記凹部に位置するものである、
ビデと便器が一体に形成される陶器一体型ビデを有する便器。」
(3)引用文献2
ア 引用文献2の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2001-231715号公報(甲2))には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0009】第1図の通り、この洋風便器10は、後部上面にロータンクカバー12が設置されている。このロータンクカバー12は上下動可能な前半体14と、洋風便器10に固定設置された後半体16と、これらの前半体14及び後半体16の頂部に着脱可能に冠着された手洗鉢18とからなっている。この手洗鉢18には手洗吐水部22が設けられている。後半体16の側面にはフラッシュレバー20が設けられている。前半体14の前面下部には、便座24と便蓋26とが上下方向回動可能に取り付けられている。
【0010】第2図の通り、ロータンクカバー12内にはロータンク受台32を介してロータンク34が設置されている。このロータンク34の上部にボールタップ36が設けられており、ロータンク34内の水位が低下すると該ボールタップ36が開栓してロータンク34内に水が補給される。このボールタップ36には手洗吐水接続管38が連なっており、この手洗吐水接続管38は後半体16の上面中央から上方に起立し、前記手洗吐水部22に差し込まれるよう構成されている。
【0011】ロータンク34内の下部にはフロート弁機構(図示略)が設けられている。前記フラッシュレバー20を操作することにより該フロート弁が引き上げられ、ロータンク34内の水が洋風便器10の便鉢に放出される。ロータンク34の前面側には回路基板40、42が設置されている。
【0012】ロータンク受台32の下側に温水タンク44が設置されており、洗浄ノズル52、54へ温水が供給可能とされている。
【0013】前半体14の上下動を案内するための上部案内片48が後半体16の上部前縁に取り付けられている。また、ロータンク34の前面中央に沿って1対のガイド46が立設され、このガイド46によって上下動が案内される昇降ベース50が設置されている。前半体14はこの昇降ベース50上に設置されている。
【0014】前記洗浄ノズル52、54はこの昇降ベース50に設置されている。ノズル52、54は、温水が供給されるとノズル本体が前進し、その先端から温水が斜め上方に噴出し、便座24に着座した人体の臀部に温水が注ぎかけられる。なお、ノズル52、54のノズル本体はモータによって前進するタイプのものであってもよい。
【0015】この昇降ベース50には、臀部を乾燥させるための温風を吹き出す温風乾燥装置56等の機器も設置されている。」
(イ)第2図
「
」
(ウ)上記(ア)に摘記した記載を踏まえると、第2図からは、便座24に着座した人体の臀部に温水が注ぎかけられる洗浄ノズル52、54と臀部を乾燥させるための温風を吹き出す温風乾燥装置56とが、ユーザが通常の姿勢で着座した状態における左右方向に並んでいる様子が看て取れる。
イ 引用文献2記載の事項
上記アによれば、引用文献2には、次の引用技術事項2が記載されているものと認められる。
【引用文献2記載の事項】
「便座24に着座した人体の臀部に温水が注ぎかけられる洗浄ノズル52、54と、臀部を乾燥させるための温風を吹き出す温風乾燥装置56とが、左右方向に並んでいる洋風便器。」
(4)引用文献3
ア 引用文献3の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2010-24780号公報(甲3))には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0018】
そして、本実施形態においては、便器200のリム面210に切欠部250が形成されている。より詳細には、便器200の上面はリム面210と略面一となるように形成され、切欠部250は、リム面210のうちボウル部220の後端にあたる位置で、下方に向けて切り欠かれて窪んだ形態を有する。この切欠部250は、衛生洗浄装置100の下方に位置しており、開口251でボウル部220に連通している。また、切欠部250の底面は、便器200の後方から開口251に亘って下方に傾斜している。後述するように、切欠部250には衛生洗浄装置100の吐水ノズル140が配置され、吐水ノズル140は開口251からボウル部220に進退可能とされている。」
(イ)「【0043】
・・・
図5は、本実施形態に係るトイレ装置20の、切欠部250に配置された吐水ノズル140を表す模式図である。
【0044】
本実施形態では、下ケーシング132に、切欠部250に挿入されるべく、その形状に対応して下方に凹ませた下ケーシング溝部154が形成されている。この下ケーシング溝部154は、吐水ノズル140の下方を覆って保護するものである。すなわち、衛生洗浄装置100を便器200から取り外して搬送する際などに、誤って衛生洗浄装置100を落下させたりして、吐水ノズル140が破損してしまうことを防ぐ。
【0045】
下ケーシング溝部154と切欠部250との間にはパッキン500が配置され、その間の水密性が保持されている。しかし、下ケーシング132にこのような下ケーシング溝部154が形成されると、吐水ノズル140から吐水させている間にボウル部220で汚水が跳ねたり、便器200の排水詰まりが生じてボウル部220の水位が上昇した際などに、開口251から下ケーシング溝部154に汚水が浸入するおそれがある。汚水が浸入して下ケーシング溝部154が汚損すると、その奥まった形状ゆえ、使用者の手作業による洗浄は容易ではない。」
(ウ)図1及び図5
「 【図1】
【図5】
」
(5)引用文献4
ア 引用文献4の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である引用文献4(特開2009-209532号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0016】
本実施形態のトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下、単に「便器」と称す)100と、その後方上部に設けられたケーシング200と、ケーシング200に対して開閉自在に軸支された便座300と、を備えている。また、便座300と同様に、ケーシング200に対して開閉自在に軸支された便蓋400を備えている。ケーシング200は便器100の後方上部に設けられ、その内部には、便座300に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する局部洗浄機能部が内蔵されている。その局部洗浄機能部は、便器100の左右側方に設けられたサイドパネル150によって覆われている。
【0018】
切り欠き部102は、後に詳述するように、便器100のリム106の中央後部に設けられ、下方に凹んだ形状を有している。洗浄ノズルの収納時には、洗浄ノズルの先端は切り欠き部102内に配置され、使用時には前述したようにボウル104内に進出する。すなわち、洗浄ノズルの収納時には、洗浄ノズルの先端はリム106よりもケーシング200の内部側に配置される。そのため、収納された状態における洗浄ノズルの先端は、ケーシング前面208よりも後方に配置される。」
(イ)図1、図6及び図8
「 【図1】
【図6】
【図8】
」
3 令和2年8月28日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)本件発明1について
ア 引用発明1を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明1と引用発明1(前記「2(1)イ」参照)とを対比する。
a 引用発明1の「便器本体1」は、便鉢と、前記便鉢に対応する開口部を有する上面部と、を有する便器本体であるといえるから、本件発明1における「便鉢と、前記便鉢に対応する開口部を有する上面部と、を有する便器本体」に相当する。
b 引用発明1の「洗浄便座2」は、洗浄機能を備える便座と解されるところ、洗浄機能として、便鉢を洗浄する機能とは別の機能である臀部を洗浄する機能等を提供することは技術常識であり、図2の洗浄便座2の奥側の「内部部品が納まっているケース部」を含む装置は、便鉢を洗浄する機能とは別の機能を備えているとみるのが自然である。
そうすると、引用発明1における「洗浄便座2」の奥側の「内部部品が納まっているケース部」を含む装置は、本件発明1における「前記便鉢の後方に設けられ、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニット」に相当する。
c 引用発明1の「便器本体1の上面部」に形成された「中間凹み領域」は、「底面が水平面と略平行」であって、その「底面」は、「便器本体上面部よりも下に段落し形状」であって、その前方側が便器本体の開口部に臨んでいる。
また、引用発明1の「便器本体1の上面部」に形成された「洗浄便座取付用の段落し部11」は、「底面が水平面と略平行」であって、その「底面」は、「便器本体上面部よりも下に段落し形状」であって、その前方側が中間凹み領域を介して便器本体の開口部に臨んでいる。
そうすると、引用発明1の「便器本体1の上面部」に形成された「中間凹み領域」及び「洗浄便座取付用の段落し部11」は、本件発明1の「前記上面部」に形成された「前方側が前記開口部に臨む、底面が水平面と略平行な凹部」に相当する。
d 引用発明1において、「前記段落し部11上に確保されている凹み空間に洗浄便座2の取付部や内部部品が納まっているケース部などを落とし込むようにして取り付けて、洗浄便座2の内部部品の配置を便器本体上面部より下に立体的に配置する」ことにより、「洗浄便座取付用の段落し部11」に「洗浄便座の内部部品が納まっているケース部」の一部が位置することとなる。
よって、引用発明1における「洗浄便座の内部部品が納まっているケース部」を「洗浄便座取付用の段落し部11」に「配置する」ことは、本件発明1における「前記機能ユニットは、少なくとも一部が前記凹部内に位置する」ことに相当する。
e 引用発明1の「洗浄便座一体型便器」は水洗大便器であることは明らかであるから、本件発明1における「水洗大便器」に相当する。
以上から、引用発明1は、本件発明1の構成をすべて有しており、両者の間に相違点は存在しない。
(イ)判断
上記(ア)のとおり、本件発明1は、引用発明1と同一である。
仮に、両者の間に相違点があるとしても、当業者が適宜なし得た程度のことであるので、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 引用発明8を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明1と引用発明8(前記「2(2)イ」参照)とを対比する。
a 引用発明8の「便器(10)」は、本件発明1における「便器本体」に相当しており、引用発明8の「便器(10)」は、「上面」を有していることからみて、本件発明1における「上面部」に相当する構成を備えていることは明らかである。
b 引用発明8の「便器(10)」の「上面」に「楕円状の開口」が形成されていることからみて、引用発明8の「便器(10)」は、本件発明1における「便鉢」及び「便鉢に対応する開口部」に相当する構成を備えていることは明らかである。
c 引用発明8の「ビデ(20)」は、「便器(10)」の「上面」に形成された「楕円状の開口」よりも後方に設けられており、用便者の用便後、後始末を清潔で衛生的に処理するようにノズルに噴射される洗浄水で肛門や局所を洗浄する装置であるとともに、「底盤(21)」は、「ビデ(20)」の下段部を構成するから、引用発明8の「底盤(21)」を備える「ビデ(20)」は、本件発明1における「前記便鉢の後方に設けられ、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニット」に相当する。
d 引用発明8において、「水槽(110)と楕円状の開口との間には、底面が水平面と略平行な凹部が形成されて、前記楕円状の開口及び前記水槽(110)の間に前記便器(10)の上面よりも低い底面を形成している」ことは、本件発明1における「前記上面部には、前方側が前記開口部に臨む、底面が水平面と略平行な凹部が形成されて」いることに相当する。
e 引用発明8において、「前記ビデ(20)の下段部を構成する底盤(21)には、制御部材(163)が存在する近傍から取っ手(142)が存在する近傍まで、便器(10)の上面よりも低い位置に配置されている低い部分が存在し、前記底盤(21)を前記便器(10)及び中間版(120)に設置すると、前記底盤(21)の低い部分の一部が、前記凹部に位置する」ことは、本件発明1において、「前記機能ユニットは、少なくとも一部が前記凹部内に位置」していることに相当する。
f 引用発明8における「ビデと便器が一体に形成される陶器一体型ビデを有する便器」が、本件発明1における「水洗大便器」に相当することは明らかである。
以上から、引用発明8は、以本件発明1の構成をすべて有しており、両者の間に相違点は存在しない。
(イ)判断
上記(ア)のとおり、本件発明1は、引用発明8と同一である。
仮に、両者の間に相違点があるとしても、当業者が適宜なし得た程度のことであるので、本件発明1は、引用発明8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
ア 引用発明1を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明2と引用発明1とを対比すると、両者は、以下の相違点1を有する。
(相違点1)
本件発明2においては、「前記機能ユニットは、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能をそれぞれ提供する第1装置および第2装置を含み、前記第1装置および前記第2装置それぞれの少なくとも一部が前記凹部内に位置する」のに対して、
引用発明1の「洗浄便座2」の奥側の「内部部品が納まっているケース部」を含む装置は、便鉢を洗浄する機能とは別の機能である、臀部等を洗浄する機能を有しているとしても、「別の機能をそれぞれ提供する第1装置及び第2装置を含」むことは特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1と引用技術事項2(前記「2(3)イ」参照)とは、いずれも便器に関するもので技術分野が共通しており、引用発明1が備える臀部等を洗浄する機能と、引用技術事項2の「便座24に着座した人体の臀部に温水が注ぎかけられる洗浄ノズル52、54と、臀部を乾燥させるための温風を吹き出す温風乾燥装置56」が発揮する機能は、いずれも臀部等の洗浄に関するもので作用機能が共通するから、引用発明1の臀部を洗浄する機能を提供する装置として引用技術事項2の複数の洗浄ノズル及び温風乾燥装置を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、その際、複数の洗浄ノズルと温風乾燥装置の一部は、引用発明1の「洗浄便座」の奥側の「内部部品が納まっているケース部」よりも便器の開口側へ位置することになり、「洗浄便座取付用の段落し部11」又は「中間凹み領域」のいずれかに位置することは明らかであるから、引用発明1に引用技術事項2を適用することにより、相違点1に係る本件発明2の構成を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明2の作用効果も、引用発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件発明2は、引用発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 引用発明8を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明2と引用発明8とを対比すると、両者は、以下の相違点Aを有する。
(相違点A)
本件発明2では、「前記機能ユニットは、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能をそれぞれ提供する第1装置および第2装置を含み、前記第1装置および前記第2装置それぞれの少なくとも一部が前記凹部内に位置する」のに対して、
引用発明8では、「ビデ(20)」が、肛門や局所を洗浄する洗浄水を噴射するノズルを有するものの、「別の機能をそれぞれ提供する第1装置及び第2装置を含」むことは特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点Aについて検討する。
引用発明8と引用技術事項2とは、いずれも便器に関するもので技術分野が共通しており、引用発明8のノズルを有するビデ(20)と、引用技術事項2の「便座24に着座した人体の臀部に温水が注ぎかけられる洗浄ノズル52、54と、臀部を乾燥させるための温風を吹き出す温風乾燥装置56」が発揮する機能は、いずれも臀部等の洗浄に関するもので作用機能が共通するから、引用発明8におけるビデ(20)において引用技術事項2の複数の洗浄ノズル及び温風乾燥装置を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、その際、複数の洗浄ノズルと温風乾燥装置の一部は、引用発明8におけるビデの下段部に位置することとなるから、引用発明8に引用技術事項2を適用することにより、相違点Aに係る本件発明2の構成を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明2の作用効果も、引用発明8及び引用技術事項2に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件発明2は、引用発明8及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
ア 引用発明1を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明3と引用発明1とを対比すると、上記相違点1に加え、以下の相違点2を有する。
(相違点2)
本件発明3では、前記第1装置と前記第2装置は「左右方向に並んでいる」のに対して、
引用発明1では、それぞれ別の洗浄機能を提供する第1装置及び第2装置が左右後方に並んでいることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点1については、前記「(2)ア」で検討したとおりであるので、相違点2について検討する。
引用技術事項2においても、「洗浄ノズル52、54」と「温風を吹き出す温風乾燥装置56」とが左右方向に並んでいるから、前記「(2)ア」で示したように引用発明1に引用技術事項2を適用する際、複数の洗浄ノズル及び温風乾燥機を左右方向に並んだものとすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明3の作用効果も、引用発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件発明3は、引用発明1及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 引用発明8を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明3と引用発明8とを対比すると、両者は、上記相違点Aに加え、以下の相違点Bを有する。
(相違点B)
本件発明3では、前記第1装置と前記第2装置は「左右方向に並んでいる」のに対して、
引用発明8では、それぞれ別の洗浄機能を提供する第1装置及び第2装置が左右方向に並んでいることは特定されていない点。
(イ)判断
相違点Aについては、前記「(2)イ」で検討したとおりであるので、相違点Bについて検討する。
引用技術事項2においても、「洗浄ノズル52、54」と「温風を吹き出す温風乾燥装置56」とが左右方向に並んでいるから、前記「(2)イ」で示したように引用発明8に引用技術事項2を適用する際、複数の洗浄ノズル及び温風乾燥機を左右方向に並んだものとすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明3の作用効果も、引用発明8及び引用技術事項2に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件発明3は、引用発明8及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
本件発明4は、便器本体の上面部に形成される「凹部」について、「前記凹部は、下側となるほど互いに近づくように傾斜する2つの側面を有し、前記2つの側面は前記底面を挟んで配置される」という構成を有している。
しかし、引用発明1及び引用発明8は、いずれも上記構成を備えていないし、引用文献1、引用文献8、引用文献2のいずれにも「凹部」の「底面」を挟んで配置される「2つの側面」について、「下側となるほど互いに近づくように傾斜」させる点について記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明4は、引用文献1、引用文献8及び引用文献2に記載された発明又は技術事項によっては、当業者が容易に想到し得るものということはできない。
また、令和1年11月13日付け取消理由通知書において、本件発明4は、引用発明1と引用文献3及び引用文献4にみられる周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨、令和2年3月27日付け取消理由通知書(決定の予告)において、本件発明4は、引用発明1、引用文献2記載の技術事項、引用文献4に記載の技術事項及び周知技術(便器本体をセラミック材料から形成することは周知技術であること)に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨通知したが、前記「2(4)」及び前記「2(5)」に示した引用文献3及び引用文献4に記載された事項からは、本件発明4に係る上記構成が記載されているとは認められない。
その他、当審が通知した取消理由で引用した文献及び申立人が異議申立て又は意見書で提出した文献(前記「第3」「1」参照)のいずれにも本件発明4に係る上記構成は記載されておらず、これらの文献を参酌しても上記判断は左右されない。
(5)本件発明5について
ア 判断
本件発明5は、「前記便器本体」について、「前記便鉢の前後左右を覆い隠すように全周にわたって連続する外周壁であって、前記凹部の後端との間に空間を形成する外周壁を有」するという構成を有しており(以下「構成5-1」という。)、また、前後が開口した切欠状の「凹部」について、その「底面」が「水平面と略平行」であり、「前記開口部の後端から後方に向かって延在」しており、その「底面」と「前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備える」という構成(以下「構成5-2」という。)を有している。
そうすると、引用発明8の「便器(10)」は、「前記楕円状の開口及び水槽(110)を取り囲む上面が形成されて」おり、「前記水槽(110)と前記楕円状の開口との間には、底面が水平面と略平行な凹部が形成されて」いることからみて、上記構成5-1と同様、「前記便鉢の前後左右を覆い隠すように全周にわたって連続する外周壁であって、前記凹部の後端との間に空間(「水槽(110)」)を形成する外周壁を有」するという構成を有しているものと認められる。
しかし、引用発明8の「底面」には、「水平面と略平行」な部分が形成されてはいるものの、その前側部分が傾斜しており、上記構成5-2のように、「底面」が「水平面と略平行」であり、「前記開口部の後端から後方に向かって延在」しているものではなく、また、引用発明8には、「底面」と「ビデ(20)の下段部を構成する底盤(21)」との間のシールに係る特定はなく、上記構成5-2のように、「底面」と「前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備える」という構成を有するものではない。
そして、引用文献8、引用文献1及び引用文献2には、前後が開口した切欠状の「凹部」について、その「底面」が「水平面と略平行」であり、「前記開口部の後端から後方に向かって延在」しており、その「底面」と「前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備える」という構成5-2について記載されておらず、これを示唆する記載もない。
したがって、本件発明5は、引用文献1、引用文献8及び引用文献2に記載された発明又は技術事項によっては、当業者が容易に想到し得るものということはできない。
イ 申立人の主張
申立人は、前記アで述べた構成5-2に関し、令和2年12月16日付け意見書において、(ア)引用文献8の明細書には、凹部に傾斜面が必須であることは記載されていないし、凹部の底面を開口部の後端から後方に向かって延在させることを排除するような特別な事情も記載されていない、(イ)特許権者は、令和2年11月6日付け意見書において、引用発明8では、凹部の底面の便鉢は傾斜面となっているので、水平面と略平行な底面の部分は前後方向に狭く、仮に当該部分と底盤(21)との間に弾性部材を設けようとしても弾性部材がずれるおそれがあり、安定してシールすることができない旨主張しているが、そもそも本願明細書には、水平面と略平行な凹部の底面を開口部の後端から後方に向かって延在させているので、弾性部材がずれるのを抑制でき、安定してシールできるといった記載がない、(ウ)訂正後の請求項5では、底面の前後方向の幅寸法と、弾性部材の前後方向の幅寸法との関係が規定されていないし、傾斜面を有することにより、水平な底面の幅寸法が弾性部材を安定して設けられないほど狭くなるという特許権者の主張は失当である、(エ)引用文献3の段落【0045】、図5には、下ケーシング溝154と切欠部250との間に、パッキン500が配置されていることが記載されている、という旨主張している(2頁下から3行~4頁16行)。
しかし、申立人の上記主張(ア)~(ウ)によっても、引用発明8における「凹部」の「底面」について、どのような動機付けで、「水平面と略平行」であり、「前記開口部の後端から後方に向かって延在」する構成とするのかが明らかとはならないし、そうである以上、引用文献3にパッキン500を配置することにかかる記載があるとの上記(エ)の主張を踏まえたとしても、申立人の上記主張を採用することはできない。
(6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5を引用しているから、本件発明5の構成に加えて、「前記底面は、左右方向の長さが、前記開口部の左右方向の最大幅の1/2倍より長く形成され」るという構成を有している。
本件発明5が、当業者が容易に想到し得るものということはできないことは、前記(5)で述べたとおりであり、本件発明5を引用する本件発明6も同様の理由により、引用文献1、引用文献8及び引用文献2に記載された発明又は技術事項によっては、当業者が容易に想到し得るものということはできない。
なお、上記(5)及び(6)で示した判断は、当審が通知した取消理由で引用した文献及び申立人が異議申立書又は意見書で提出した文献(前記「第3」「1」に示したもの及び特開平8-257906号公報(参考文献3))のいずれにも本件発明5及び本件発明6に係る上記構成は記載されていないから、これらいずれの文献を参酌しても、その結論は左右されない。
4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等について
ア 本件発明6が、甲1(引用文献1)に記載された発明と同一であるとの異議申立理由については、本件訂正により本件発明6が本件発明5を引用するものとなったところ、引用発明1は本件発明5の「外周壁」や「弾性部材」を有していないから、本件発明6は引用発明1に対して相違点を有しており、当該理由が成り立たないことは明らかである。
イ なお、申立人は、令和2年12月16日付け意見書において、(1)本件訂正後の請求項5における「水平面と略平行な前記凹部の前記底面」との記載は、本件明細書には、底面の略平行の範囲が水平面に対しどの程度(角度範囲)まで含むのか記載されていないから、特許法36条6項2号の規定を満たしていない、(2)本件訂正後の請求項5に記載された「水平面と略平行な前記凹部の前記底面は、前記開口部の後端から後方に向かって延在し、」は、本件明細書には、開口部の後端が開口部の前後のうちのどの範囲を示すのかが記載されていないことなどから、「開口部の後端」の意味するところが不明であり、特許法36条6項2号の規定を満たしていない、(3)本件訂正後の請求項5には、「本水洗大便器はさらに、前記凹部の前記底面と前記機能ユニットとの間に、シールとして機能する弾性部材を備える」と記載されているが、本件明細書には弾性部材が底面のみに設けられてもよいという記載がないにもかかわらず、このようなものも含まれてしまうから、特許法36条6項1号の規定を満たしていないという旨主張している。
しかし、申立人の上記主張(1)~(3)は、以下のとおり理由がない。
すなわち、上記主張(1)について、「水平面と略平行な前記凹部の前記底面」との記載について、「水平面と平行」とは、「凹部の底面」が、水平面に対して傾斜が全くない状態という意味と理解するのが自然であり、「水平面と略平行」とは、寸法誤差、設計誤差、製造誤差等により完全には「水平面に対して傾斜が全くない状態」とならない場合をも含意した表現と理解できるから、上記記載の意味するところは、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
また、上記主張(2)について、請求項1の記載によれば、本件発明の「便器本体」は、(洗浄を要する)「便鉢」と区別できる、(洗浄を要しない)「便鉢に対応する開口部を有する上面部」を有しており、請求項1に記載のとおり、「凹部」は、当該「上面部」に形成されるもので、その「前方側が前記開口部に臨む」ものであるから、本件訂正後の請求項5の「前記凹部の前記底面は、前記開口部の後端から後方に向かって延在し、」との記載を併せ読むと、「開口部」を形成する空間と「凹部」を形成する空間とが連結していることを前提に、当該「連結面」から、「前記凹部の前記底面」が「後方に向かって延在し」ている意味と理解できるから、上記記載の意味するところは、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
上記主張(3)について、本願明細書に、弾性部材が凹部の底面のみに設けることが直接には記載されていないとしても、技術常識を参酌すれば、「底面」と「機能ユニット」との間に「シールとして機能する弾性部材」を備えていれば、シール機能や干渉機能を果たしうることが自明であるから、直接の記載がないことをもってサポート要件を満たしていないとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明1又は引用発明8と同一であるか、引用発明1又は引用発明8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。また、本件発明2及び3は、引用発明1又は引用発明8及び引用技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2及び3に係る特許は、同法29条2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1ないし3に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、以上のとおり、請求項4ないし6に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由及び特許異議申立書に記載した理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700692