審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2019-700494

積層フィルムおよびその製造方法

審判番号
2019-700494
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-506537外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年06月21日
審決日
2020年06月03日
公報発行日
2020年09月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第120条の8
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6443440号発明「積層フィルムおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6443440号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、10について訂正することを認める。 特許第6443440号の請求項1、3~8及び10に係る特許を維持する。 特許第6443440号の請求項2及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6443440号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成27年3月4日(優先権主張平成26年3月6日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月7日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報平成30年12月26日発行)、その後、その特許について、令和1年6月21日に特許異議申立人渋谷都(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和1年9月3日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和1年11月5日に特許権者から意見書及び訂正の請求がされ、令和1年12月6日に申立人から意見書が提出され、令和2年2月26日付けで取消理由(予告)が通知され、その指定期間内である令和2年4月28日に特許権者から意見書及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたものである。 なお、令和1年11月5日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、申立人には、令和1年11月5日の訂正の請求があった旨の通知を送付して意見書を提出する機会を与えており、さらに、本件訂正請求による訂正は、訂正前の請求項2及び請求項9により特定される事項を請求項1に加えるものであるが、これらの事項については、申立人に前記意見書で主張する機会が既に与えられており、本件訂正請求については、特許法第120条の5第5項に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないとされる特別な事情にあたると認められるため、申立人に、再度、意見書を提出する機会は与えなかった。 第2 訂正の請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第6443440号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許の特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「基材と、 前記基材の一方の面に配置された、界面活性剤を含有する界面活性剤含有層と、 前記基材の他方の面に配置された、ハードコート層と、 を有し、 前記ハードコート層が、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有することを特徴とする、積層フィルム。」と記載されているのを、 「基材と、 前記基材の一方の面に配置された、界面活性剤を含有する界面活性剤含有層と、 前記基材の他方の面に配置された、ハードコート層と、 を有し、 前記ハードコート層が、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有し、 前記界面活性剤含有層が、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜であり、 前記界面活性剤が、長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする、積層フィルム。」に訂正する。(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3において、「請求項1または2に記載の積層フィルム」と記載されているのを、「請求項1に記載の積層フィルム」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルム」と記載されているのを、「請求項1または3に記載の積層フィルム」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1~4のいずれか1項に記載の積層フィルム」と記載されているのを、「請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の積層フィルム」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1~7のいずれか1項に記載の積層フィルム」と記載されているのを、「請求項1、3~7のいずれか1項に記載の積層フィルム」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項10に 「基材の一方の面に、界面活性剤を含有する界面活性剤含有層を形成して第1の積層体を得る工程と、 前記第1の積層体をロール状に巻き取る工程と、 ロール状に巻き取られた前記第1の積層体を巻き出して、前記第1の積層体における前記基材の前記界面活性剤含有層とは反対側の面に、固形分100質量%に対して(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有する塗布液を塗布し、乾燥させてハードコート層を形成して積層フィルムを得る工程と、 を含む、積層フィルムの製造方法。」と記載されているのを、 「基材の一方の面に、界面活性剤を含有する界面活性剤含有層を形成して第1の積層体を得る工程と、 前記第1の積層体をロール状に巻き取る工程と、 ロール状に巻き取られた前記第1の積層体を巻き出して、前記第1の積層体における前記基材の前記界面活性剤含有層とは反対側の面に、固形分100質量%に対して(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有する塗布液を塗布し、乾燥させてハードコート層を形成して積層フィルムを得る工程と、 を含み、 前記界面活性剤含有層が、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜であり、 前記界面活性剤が、長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である、積層フィルムの製造方法。」に訂正する。 2.訂正の適否 (1)一群の請求項について 訂正前の請求項2~9は、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する、一群の請求項ごとにされたものである。 (2)訂正事項1について ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「界面活性剤含有層」が何か記載されていなかったものを、「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜」であると特定し、また、請求項1の「界面活性剤含有層」に含有される「界面活性剤」が何か記載されていなかったものを、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項1の「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜」との事項は、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)の請求項9に「前記界面活性剤含有層が、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜である、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層フィルム。」と記載され、また、訂正事項1の「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である」との事項は、同じく請求項2に「前記界面活性剤が、長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の積層フィルム。」と記載されていることから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項2及び7について 訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、訂正事項7は、訂正前の特許請求の範囲の請求項9を削除するものであり、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2及び7は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、訂正事項2及び7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項3~6について 訂正事項3~6は、請求項2を引用する請求項3~5及び8の記載を、訂正事項2により請求項2が削除されることに伴い、請求項2を引用する選択肢を削除するものであり、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3~6は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、訂正事項3~6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項8について 訂正事項8は、訂正事項1に係る請求項1と同様に、訂正前の請求項10が、「界面活性剤含有層」及びその「界面活性剤含有層」に含有される「界面活性剤」が何か記載されていなかったものを、それぞれ、「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜」、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である」と特定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項8の「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜」との事項、及び、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である」との事項とも、上記(2)で述べたように、いずれも、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 3.訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~9〕、10について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材と、 前記基材の一方の面に配置された、界面活性剤を含有する界面活性剤含有層と、 前記基材の他方の面に配置された、ハードコート層と、 を有し、 前記ハードコート層が、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有し、 前記界面活性剤含有層が、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜であり、 前記界面活性剤が、長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする、積層フィルム。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記界面活性剤含有層が、水溶性樹脂を含有する、請求項1に記載の積層フィルム。 【請求項4】 前記ハードコート層が、有機溶剤を含有する塗布液を塗布し、乾燥させることにより形成されたものである、請求項1または3に記載の積層フィルム。 【請求項5】 前記ハードコート層が、無機ナノ粒子を含有する、請求項1、3および4のいずれか1項に記載の積層フィルム。 【請求項6】 前記無機ナノ粒子が、ATO、ITO、セシウムドープト酸化タングステン、ガリウム酸化亜鉛、アルミニウム酸化亜鉛およびアンチモン酸亜鉛からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項5に記載の積層フィルム。 【請求項7】 前記ハードコート層における前記無機ナノ粒子の含有量が10~80質量%である、請求項5または6に記載の積層フィルム。 【請求項8】 前記ハードコート層が樹脂成分を含有し、前記樹脂成分100質量%に占める水酸基含有ウレタンアクリレートの割合が50質量%以上である、請求項1および3~7のいずれか1項に記載の積層フィルム。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 基材の一方の面に、界面活性剤を含有する界面活性剤含有層を形成して第1の積層体を得る工程と、 前記第1の積層体をロール状に巻き取る工程と、 ロール状に巻き取られた前記第1の積層体を巻き出して、前記第1の積層体における前記基材の前記界面活性剤含有層とは反対側の面に、固形分100質量%に対して(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有する塗布液を塗布し、乾燥させてハードコート層を形成して積層フィルムを得る工程と、 を含み、 前記界面活性剤含有層が、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜であり、 前記界面活性剤が、長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である、積層フィルムの製造方法。」 2.取消理由の要旨 令和1年11月5日の訂正の請求で訂正された請求項1~10に係る特許(以下「本件訂正前発明1」等という。)に対して、令和2年2月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)本件訂正前発明1~9は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 《引用刊行物》 甲1:特開2012-215693号公報 甲4:特開2004-35818号公報 甲5:特開2013-45045号公報 甲6:特開2014-238614号公報 本件訂正前発明1~9は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正前発明1~10の解決しようとする課題は、「基材の一方の面に界面活性剤を含有する誘電体多層膜のような機能性層(「界面活性剤含有層」とも称する)が設けられ、他方の面にハードコート層が設けられる構成の積層フィルムについて」、「ハードコート層にクラックが生じたり、十分な耐擦傷性が得られなかったりする場合がある」(本件特許明細書の段落【0005】)ことであり、この課題の解決のために、本件発明1~10では、「ハードコート層」に「(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有」させたものである。 一方、本件特許明細書には、界面活性剤含有層に含まれ得る界面活性剤として、「両性イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤が挙げられる。これらのうち、アクリル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、またはフッ素系界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、長鎖アルキル基を含有する界面活性剤が好ましく、炭素数6~20のアルキル基を有する界面活性剤がより好ましい。」(段落【0053】)とされ、実施例1~26においても、界面活性剤が、長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤の場合についてのみ効果を確認しており、これらの界面活性剤以外の界面活性剤についてまで、上記の課題を解決し得るものと認識できるとはいえない。 よって、本件訂正前発明1~10は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものではない。 3.当審の判断 (1)特許法第29条第2項に係る取消理由について ア 甲1に記載された発明 甲1の実施例6(実施例1において、ハードコート層(A)用組成物(1)中のレベリング剤aの代わりに、反応性官能基を有するケイ素系レベリング剤(製品名BYKUV3500、ビックケミージャパン社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして作製した光学積層体の実施例)の記載から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 《甲1発明》 「PET基材(東レ製 ルミラーU46、厚み188μm)の一面側に、下記の組成のハードコート層(A)用組成物を塗布し、温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚5μmのハードコート層(A)層を形成し、次いで、上記PET基材の、上記ハードコート層(A)層を形成した面とは反対側の面に、下記の組成のハードコート層(B)用組成物を塗布し、温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、その塗膜側(PET基材の上記ハードコート層(A)層とは反対側)から紫外線を照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚5μmのハードコート層(B)を形成して得た、光学積層体。 <ハードコート層(A)用組成物(1)> ・ペンタエリスリトールトリアクリレート:30質量部(固形分) ・ポリメチルアクリレート(重量平均分子量40000):5質量部(固形分) ・イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート(商品名アロニックスM315 東亜合成株式会社):15質量部(固形分) ・ケイ素系レベリング剤(製品名BYKUV3500、ビックケミージャパン社製):0.25質量部 ・光重合開始剤(製品名イルガキュアー(Irg)184、チバ・ジャパン社製):1.7質量部 ・溶剤(MIBK):46質量部 <ハードコート層(B)用組成物(1)> ・ペンタエリスリトールトリアクリレート:30質量部(固形分) ・ポリメチルアクリレート(重量平均分子量40000):5質量部(固形分) ・イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート(商品名アロニックスM315 東亜合成株式会社):15質量部(固形分) ・レベリング剤c(製品名メガファックMCF350-5、固形分5質量% DIC社製):1質量部 ・易滑剤a(シリカ粒子、平均粒径250nm、製品名SIRMIBK15WT%-E65 固形分15質量%、CIKナノテック社製):20質量部 ・光重合開始剤(製品名イルガキュアー(Irg)184、チバ・ジャパン社製):1.7質量部 ・溶剤メチルイソブチルケトン(MIBK):33.2質量部」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「ハードコート層(A)」に含有される「ケイ素系レベリング剤(製品名BYKUV3500、ビックケミージャパン社製)」は、本件発明1の「ハードコート層」に含有される「(メタ)アクリル変性シリコーン化合物」に相当し、甲1発明の「レベリング剤c(製品名メガファックMCF350-5、固形分5質量%DIC社製)」は、甲6(段落【0205】)の記載によれば、フッ素系界面活性剤であり、甲1発明の「ハードコート層(B)」に含有される「レベリング剤c(製品名メガファックMCF350-5、固形分5質量%DIC社製)」は、本件発明1の「界面活性剤含有層」に含有される「界面活性剤」に相当する。また、甲1発明の「PET基材(東レ製 ルミラーU46、厚み188μm)」は、本件発明1の「基材」に相当し、甲1発明の「光学積層体」は、本件発明1の「積層フィルム」に相当する。 (イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「基材と、 前記基材の一方の面に配置された、界面活性剤を含有する界面活性剤含有層と、 前記基材の他方の面に配置された、ハードコート層と、 を有し、 前記ハードコート層が、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を含有する、積層フィルム。」 で一致し、次の相違点で相違する。 《相違点1》本件発明1の「ハードコート層が、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を0.001~3質量%の量で含有する」のに対し、甲1発明の「ハードコート層(A)」は、溶剤を蒸発させた塗膜中には、ケイ素系レベリング剤(製品名BYKUV3500、ビックケミージャパン社製)が0.25質量部のほか、ペンタエリスリトールトリアクリレートが30質量部(固形分)、ポリメチルアクリレート(重量平均分子量40000)が5質量部(固形分)、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート(商品名アロニックスM315東亜合成株式会社)が15質量部(固形分)、光重合開始剤(製品名イルガキュアー(Irg)184、チバ・ジャパン社製)が1.7質量部含有されている点。 《相違点2》本件発明1の「界面活性剤含有層」が、「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜であり」、その「界面活性剤含有層」に含有される「界面活性剤」が、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である」のに対し、甲1発明の「レベリング剤c(製品名メガファックMCF350-5、固形分5質量%DIC社製)」はフッ素系界面活性剤であるが、そのレベリング剤が含有されるのは「ハードコート層(B)」である点。 (ウ)まず、相違点2について検討する。 甲1発明の「光学積層体」は、PET基材の一面側にハードコート層(A)を形成し、PET基材の他面側にハードコート層(B)を形成するものであり、それにより、「本発明の光学積層体は、液晶表示ディスプレイ(LCD)等の表示パネル上に設置することのできる、タッチパネルの基材や、加飾フィルム等として好適に適用することができる。特に、本発明の光学積層体を、ハードコート層(A)を表面とし、ハードコート層(B)を裏面として、該裏面が上記表示パネルと接するように設置することで、貼り付き防止や、後加工印刷時の塗工性に優れたものをすることができる。また、本発明の光学積層体は、ペン擦傷性、防指紋性、防汚性に優れる。」(甲1の段落【0049】)との効果を奏するものである、 そのため、基材の両面をハードコート層(A)及び(B)として「ペン擦傷性、防指紋性、防汚性に優れる」ものとしているのを、そのうちの「ハードコート層(B)」を「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜」に換える動機付けは見いだせない。 ここで、甲1には、「本発明の光学積層体は、上述の光透過性基材及びハードコート層(A)及びハードコート層(B)以外に、他の層を有していてもよい。上記他の層としては、帯電防止層、防眩層、低屈折率層、高屈折率層、防汚層等を挙げることができる。」(段落【0044】)との示唆があり、甲1発明の基材の両面のハードコート層(A)及び(B)に加えて、低屈折率層及び高屈折率層を設けることができるとしても、それらを基材に対してハードコート層(B)の側に設けること、及び、それらの低屈折率層及び高屈折率層に、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上」の界面活性剤を含有させることまでも、甲1や他の証拠の記載に基づき当業者が容易に想到できたものとはいえない。 よって、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (エ)申立人は、この「界面活性剤含有層が、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜」である点について、甲1には、基材、ハードコート層(A)及びハードコート層(B)以外に、低屈折率層及び高屈折率層を、適宜設けることが可能であるのだから、当業者であれば、甲1発明において、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜を構成し、この誘電体多層膜に界面活性剤を含有させることは、容易に想到し得ることに過ぎない旨主張する(特許異議申立書23頁「(セ)本件発明9について」)。 しかし、上述のように、低屈折率層及び高屈折率層を基材に対してハードコート層(B)の側に設けること、及び、それらに、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上」の界面活性剤を含有させることまでも、甲1発明から当業者が容易に想到できたものとはいえず、申立人の上記主張は採用できない。 (オ)そうすると、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明3~8について 本件発明3~8は、本件発明1の発明特定事項を、直接又は間接的にすべて含むものであるところ、上記イのとおり、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明3~8も、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明10について 甲1には、甲1発明の光学積層体を製造する方法の発明(以下「甲1’発明」という。)も記載されており、この甲1’発明と本件発明10を対比すると、上記イで示した相違点2で同様に相違する。 そして、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点2に係る本件発明10の構成も、甲1’発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 そうすると、本件発明10は、甲1’発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 小活 よって、本件発明1、3~8及び10は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1、3~8及び10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。 (2)特許法第36条第6項第1号に係る取消理由について 本件発明1は、「界面活性剤含有層」に含有される「界面活性剤」が、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上」からなるものと特定されている。 本件特許明細書には、段落【0013】に「本発明の構成とする(ハードコート層に所定量の(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を含ませる)ことにより上記課題が解決されうるメカニズムとして、本発明者らは、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物のシリコーン部位が基材のハードコート層形成面に付着した界面活性剤と親和することで、上述したはじき・凹みといった塗布欠陥の発生を抑制しているものと推定している。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。」と記載され、界面活性剤含有層に含まれ得る界面活性剤として、「両性イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤が挙げられる。これらのうち、アクリル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、またはフッ素系界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、長鎖アルキル基を含有する界面活性剤が好ましく、炭素数6~20のアルキル基を有する界面活性剤がより好ましい。」(本件特許明細書の段落【0053】)とされている。さらに、実施例1~26において、界面活性剤が、長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤の場合について、効果を確認している。 これらの記載から、「界面活性剤含有層」に含有される「界面活性剤」が、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上」からなる、本件発明1の積層フィルムは、上記の課題を解決し得ると認識できるものといえる。 よって、本件発明1、3~8及び10は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではないから、本件発明1、3~8及び10に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。 (3)令和2年2月26付け取消理由に採用しなかった申立理由 ア 甲1に基づく特許法第29条第1項第3号に係る申立理由について 本件発明1、3~8及び10は、甲1発明と上記相違点2で相違し、その相違点2は実質的なものであるから、本件発明1、3~8及び10は、甲1に記載された発明ではない。 よって、申立人の、甲1に基づく特許法第29条第1項第3号に係る申立理由は採用できない。 イ 甲2に基づく特許法第29条第2項に係る理由について 申立人は、甲2(特開2013-64821号公報)には、 「保護フィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体及び下記A群の活性エネルギー線硬化型樹脂から選択される樹脂を含有し、前記活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体と前記A群の活性エネルギー線硬化型樹脂との含有質量比(活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体:A群の活性エネルギー線硬化型樹脂)が、6.0:1.0~1.0:2.0の範囲内であることを特徴とするハードコートフィルム。 〔A群の活性エネルギー線硬化型樹脂〕 A1:イミド基を有する活性エネルギー線硬化型樹脂 A2:エチレンオキサイド骨格を有する活性エネルギー線硬化型樹脂 A3:プロピレンオキサイド骨格を有する活性エネルギー線硬化型樹脂」 の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている旨主張する。 この甲2発明と本件発明1を対比すると、本件発明1の積層フィルムは、「界面活性剤含有層」が「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜であり」、その「界面活性剤含有層」に含有される「界面活性剤」が、「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である」のに対し、甲2発明のハードコートフィルムは、界面活性剤含有層を備えるか特定がない点で相違する。 この相違点について、申立人は、甲2発明のハードコートフィルムは偏光板に具備されるものであり、その際には、積層フィルムに易接着層を設けることが甲3(特開2012-159753号公報)に示すように周知であり、その易接着層には、界面活性剤を含むことができる旨主張する。 しかし、甲2発明のハードコートフィルムは、液晶ディスプレイ等の最表面に用いられることが想定されるところ、基材(甲2発明では保護フィルム)に対して、ハードコート層とは反対側の面に、熱線遮蔽のための「低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜」を設け、さらにその「誘電体多層膜」に「長鎖アルキル基含有界面活性剤、シリコン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である」界面活性剤を含有させる動機付けがない。 よって、本件発明1、3~8及び10は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立人の、甲2に基づく特許法第29条第2項係る申立理由は採用できない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1、3~8及び10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、3~8及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正請求に係る訂正により、請求項2及び9に係る特許は削除されたため、請求項2及び9に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2019-700494

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決320件(コニカミノルタ株式会社、渋谷 都)
  • 2024-700744異議申立 / 2026-03-25 / 訂正認容繊維補強モルタルの押出積層方法
    同じ当事者: 渋谷 都
  • 2025-700296異議申立 / 2026-03-24 / 請求成立(取消)ポリイソシアヌレート発泡体
    同じ当事者: 渋谷 都
  • 2025-700198異議申立 / 2026-02-25 / 訂正認容放射線撮影システム、放射線撮影方法及びプログラム
    同じ当事者: コニカミノルタ株式会社
  • 2024-701035異議申立 / 2026-01-08 / 訂正認容溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム
    同じ当事者: 渋谷 都
  • 2023-701055異議申立 / 2025-11-27 / 請求成立(取消)ポリオレフィン樹脂フィルム
    同じ当事者: 渋谷 都
同じ根拠条文の審決2,074件(特許法120条の8、特許法135条)
  • 2020-700675異議申立 / 2021-08-03 / 訂正認容光透過性導電フィルム、及び、アニール処理された光透過性導電フィルムの製造方法
    共通の条文: 特許法120条の8、特許法135条
  • 2018-700708異議申立 / 2020-03-27 / 請求成立(取消)繊維強化プラスチック積層体及びその製造方法
    共通の条文: 特許法120条の8、特許法135条
  • 2018-700960異議申立 / 2019-11-07 / 訂正認容カバーフィルム
    共通の条文: 特許法120条の8、特許法135条
  • 2018-700461異議申立 / 2019-06-21 / 請求成立(取消)遮光性バリア積層体
    共通の条文: 特許法120条の8、特許法135条
  • 2016-700906異議申立 / 2017-11-14 / 訂正認容繊維強化樹脂積層体
    共通の条文: 特許法120条の8、特許法135条
同じ論点・分野の審決(審決分類)829件(113・B32B、121・B32B)
  • 2026-700223異議申立 / 2026-06-30 / 維持加飾シート
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B
  • 2026-700157異議申立 / 2026-06-23 / 維持リサイクルフィルム
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B
  • 2025-700885異議申立 / 2026-06-09 / 訂正認容金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B
  • 2025-700024異議申立 / 2026-05-21 / 訂正認容化粧シート、化粧材及び樹脂組成物
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B
  • 2024-700754異議申立 / 2026-04-28 / 訂正認容ヒートシール性積層体、包装材料用積層体、および包装材料
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存