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特許異議申立

2024-701035

溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム

審判番号
2024-701035
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-028597
登録番号
7471852
請求日
2024年10月21日
審決日
2026年01月08日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】フタムラ化学株式会社
  • 【権利者代理人】加藤 大輝
  • 【異議申立人】渋谷 都
審判長/審判官
  • 審判長 八木 誠
  • 審判官 神山 茂樹
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7471852号発明「溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7471852号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 特許第7471852号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7471852号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年2月21日に出願され、令和6年4月12日に特許権の設定登録がされ、令和6年4月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年10月21日 :特許異議申立人渋谷都(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年12月24日付け:取消理由通知書 令和7年 2月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 3月13日 :特許権者による訂正請求書についての手続補正書(方式)の提出 令和7年 4月23日 :申立人による意見書の提出 令和7年 6月5日付け :取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 8月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 8月20日 :特許権者による訂正明細書についての手続補正書(方式)の提出 なお、令和7年2月25日にされ手続補正書により補正された訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、令和7年8月26日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年8月20日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7471852号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「(e1)密度を0.904~0.945g/cm3とし、 (e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0~8.0g/10minである」とあるのを、 「(e1)密度を0.916g/cm3とし、 (e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0g/10minである」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 明細書の【0011】及び【0018】に「(e1)密度を0.904~0.945g/cm3とし、(e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0~8.0g/10minである」とあるのを、 とあるのを、 「(e1)密度を0.916g/cm3とし、(e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0g/10minである」に訂正する。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。 また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載のエチレン系重合体の密度とメルトフローレートを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0039】、【0059】【表1】及び【0070】【表5】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の明細書の【0011】及び【0018】の記載を、本件訂正後の請求項の記載に整合させるものであり、請求項と明細書の記載が整合していない不明瞭な状態を解消させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1で検討したのと同様に、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 溶断による製袋に用いられ、外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、 前記外表面層及び前記内表面層はそれぞれ同一ないし異なるプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、 前記外表面層及び前記内表面層の層厚がそれぞれ0.8μmよりも厚く構成され、 前記中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、 前記エチレン系重合体は、 (e1)密度を0.916g/cm3とし、 (e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0g/10minである ことを特徴とする溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。 【請求項2】 前記エチレン系重合体(E)が直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。 【請求項3】 前記エチレン系重合体(E)がチーグラー・ナッタ触媒から製造されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。 【請求項4】 JISK7136(2000)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのヘーズ値が6%以下であり、狭角拡散透過率(LSI)が50%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。 【請求項5】 JIS Z 8741(1997)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面光沢度が100%以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。 【請求項6】 前記エチレン系重合体(E)がバイオマス由来エチレン系重合体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載の溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムよりなる包装用袋。」 第4 取消理由通知(決定の予告)について 1 取消理由の概要 当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性) 本件特許の請求項1~3、5~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [引用文献一覧](申立人が提出した甲第○号証を以下「甲○」という。) 甲1:特開2018-65267号公報 甲2:特許第6570022号公報 甲4:特開2002-302580号公報 甲5:特開平8-59854号公報 甲6:特開2009-51108号公報 引用文献1:「食品包装便覧」、第1版第1刷、社団法人日本包装技術協会、1988年(昭和63年)3月1日、p.490~505、517~525ページ(合議体が職権で提示) 引用文献2:Braskem社カタログ、「I’M GreenTM POLYETHYLENE」、2014年5月(同上) 引用文献3:特開2014-156053号公報(同上) 2 当審における判断 当審合議体は、上記取消理由で通知した理由(進歩性)によっては、訂正後の請求項1~7に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)引用文献の記載、引用発明 ア 甲1について (ア)甲1の記載 甲1には以下の記載がある。なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。 「【請求項1】 少なくとも1層からなる基材層と、該基材層の片面又は両面に積層されたスキン層とを有し、 前記基材層は、ポリプロピレン100質量部に対して、メルトフローレートが190℃において1.5g/10分以上15g/10分以下であり且つ密度が0.910g/cm3以上0.935g/cm3以下であるポリエチレンを1質量部以上23質量部以下含んでいるポリプロピレン系樹脂からなっており、 像鮮明度が65%以上、ヘイズ値が8%以下である、延伸ポリプロピレンフィルム。 ・・・ 【請求項3】 前記ポリエチレンは植物由来のポリエチレンを含んでいる、請求項1または2に記載の延伸ポリプロピレンフィルム。」 「【背景技術】 【0002】 ポリプロピレン系樹脂からなる二軸延伸フィルムのような延伸ポリプロピレンフィルムは、食品の包装用として広く用いられている。このような食品の包装用途のフィルムには、内部が十分に透視できる透明性が求められる。」 「【発明の効果】 【0012】 本発明の延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンに比較的多量のポリエチレンを添加することと高い透明性との両立を達成している。」 「【0027】 <スキン層> 本発明の延伸ポリプロピレンフィルムにおけるスキン層は、前記基材層の片面又は両面に積層された層であり、好ましくは、ヒートシール性を備えていることが好ましい。」 「【0038】 <延伸ポリプロピレンフィルムの評価> (1)ヘイズ 透明性の指標として、日本電色工業(株)製、ヘイズメーター(型番:NDH5000)を用い、JIS K 7136に準拠してヘイズの測定を行った。 ・・・ 【0039】 <用いた樹脂> PP1: ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製 FL6LSG、融点 158℃、MFR (230℃)2.6g/10分) PE1: ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製 2040FC、石油由来ポリエチレン、密度 0.919g/cm3、MFR(190℃) 5g/10分) PE2: ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製 Z372、石油由来ポリエチレン、密度 0.934g/cm3、MFR(190℃) 5.3g/10分) PE3: ポリエチレン(住友化学株式会社製 GA701、石油由来ポリエチレン、密度 0.92g/cm3、MFR(190℃) 8g/10分) PE4: ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製 UE320、石油由来ポリエチレン、密度 0.922g/cm3、MFR(190℃) 1.0g/10分) PE5: ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製 HC460R、石油由来ポリエチレン、密度 0.956g/cm3、MFR(190℃) 6.5g/10分) PE6: ポリエチレン(Braskem S.A.製 SLH218、植物由来ポリエチレン、密度 0.916g/cm3、MFR(190℃) 2.3g/10分) PE7: ポリエチレン(Braskem S.A.製 SPB681、植物由来ポリエチレン、密度 0.922g/cm3、MFR(190℃) 3.8g/10分) PE8: ポリエチレン(Braskem S.A.製 SLH118、植物由来ポリエチレン、密度 0.916g/cm3、MFR(190℃) 1.0g/10分) PE9: ポリエチレン(Braskem S.A.製 SGF4960、植物由来ポリエチレン、密度 0.961g/cm3、MFR(190℃) 0.34g/10分) 【0040】 <基材層を構成する原料樹脂組成物> 前記ポリプロピレン(PP1)と、ポリエチレン(PE1~PE9)とを、表1および表2に示す割合にてドライブレンドして基材層の原料とした。 【0041】 <スキン層を構成する原料樹脂組成物> (原料α1) ランダムポリプロピレンとして住友化学株式会社製FS3611(融点132℃、MFR(230℃)3.5g/10分)を85質量部と、エラストマーとして三井化学株式会社製XM7070(プロピレン-ブテン共重合体、融点75℃、MFR(230℃)7.9g/10分、滑剤配合量25000ppm、アンチブロッキング剤配合量50000ppm)5質量部とをドライブレンドして原料α1とした。なお、原料α1からなるスキン層は、ヒートシール可能なスキン層である。」 「【0044】 (原料β1) ポリプロピレンとして日本ポリプロ株式会社製FY6(融点161℃、MFR(230℃)3.0g/10分)を95質量部と、アンチブロッキング剤マスターバッチとして、サンアロマー株式会社製KD583D(樹脂成分:ランダムポリプロピレン、融点140℃、MFR6.2g/10分、アンチブロッキング剤47200ppm)5質量部とをドライブレンドして原料β1とした。なお、原料β1からなるスキン層は、ヒートシールができないスキン層である。」 「【0046】 実施例1 <延伸ポリプロピレンフィルムの製造> 表1に記載の基材層の原料およびスキン層の原料を用い、基材層の原料はスクリュー径75mmφの押出機により、スキン層の原料はスクリュー径50mmφの押出機により、それぞれ230℃にて溶融混練を行い、基材層の両面にスキン層が、厚み比率1:13:1となるようにフィードブロック法によって積層し、Tダイを用いて30℃の金属ロール上に3層共押出をして厚みが1.3mmのシートを得た。 【0047】 得られたシートを縦延伸機にて130℃に加熱後、縦方向に4.7倍に延伸した。引き続き、横延伸機にて194℃に加熱後、横方向に10倍に延伸して厚みが30μmの3層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムのヘイズと像鮮明度を表1に示す。 【0048】 実施例2~9および比較例1~6 上記実施例1において、各層用の押出機に供給する樹脂の種類および配合量を、それぞれ、表1,2に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にして延伸ポリプロピレンフィルムを製造し、それぞれ評価した。」 「【0054】 【表1】 [図:0001434130000001.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 上記(ア)を総合し、特に実施例3に着目すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。なお、括弧内は、理解促進のために特に参照した箇所を付したものである。 「基材層と、該基材層の両面に積層されたスキン層とを有し、 前記基材層は、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製FL6LSG、融点158℃、MFR(230℃)2.6g/10分)100質量部に対して、ポリエチレン(BraskemS.A.製 SLH218、植物由来ポリエチレン、密度0.916g/cm3、MFR(190℃)2.3g/10分)を6質量部含んでいるポリプロピレン系樹脂からなっており、(請求項1、3、【0039】~【0040】、【0054】【表1】) 像鮮明度が80%、JISK 7136に準拠して測定した透明性の指標としてのヘイズ値が3%であり、(【0038】、【0054】【表1】) 前記スキン層は、前記基材層の両面に積層された層であり、(【0027】) 一方のスキン層は、ランダムポリプロピレンとして住友化学株式会社製FS3611(融点132℃、MFR(230℃)3.5g/10分)を85質量部と、エラストマーとして三井化学株式会社製XM7070(プロピレン-ブテン共重合体、融点75℃、MFR(230℃)7.9g/10分、滑剤配合量25000ppm、アンチブロッキング剤配合量50000ppm)5質量部とをドライブレンドした原料α1からなるヒートシール可能なスキン層であって、(【0041】、【0054】【表1】) もう一方のスキン層は、ポリプロピレンとして日本ポリプロ株式会社製FY6(融点161℃、MFR(230℃)3.0g/10分)を95質量部と、アンチブロッキング剤マスターバッチとして、サンアロマー株式会社製KD583D(樹脂成分:ランダムポリプロピレン、融点140℃、MFR6.2g/10分、アンチブロッキング剤47200ppm)5質量部とをドライブレンドした原料β1からなるヒートシールができないスキン層であって、(【0044】、【0054】【表1】) 基材層の両面にスキン層が、厚み比率1:13:1となるようにフィードブロック法によって積層し、Tダイを用いて3層共押出をして得られた厚みが1.3mmのシートを、二軸方向に延伸して得られた、厚みが30μmである、(【0046】~【0047】) 3層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。」 イ 甲2、甲4に例示される周知技術 (ア)甲2の記載 「【0016】 本発明に係る収納袋を形成するための合成樹脂フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等のヒートシールまたは溶断シールが可能な汎用の合成樹脂フィルムを好適に用いることができるが、それらの中でも、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムあるいはポリ乳酸フィルムを用いると、収納袋の透明性が高くなり、青果物を収納した場合に内部を見易くなるので好ましい。」 (イ)甲4の記載 「【0022】さらに本発明の気体透過性フィルムは前記で説明したとおり、光学的特性である透明性、特に透視性に優れており、単層構成においてさえ、優れたフィルム強度、溶断シール強度等を有する。また、成分(B)の含有量、更にはフィルム厚みを調節することによって気体の透過性の制御も可能となり、青果物包装用ポリプロピレン系フィルムとして極めて好適な性能を有するものである。 【0023】また、本発明にかかる気体透過性フィルムは、前記フィルムが少なくとも一軸方向に延伸されたものであることを特徴とし、少なくとも一軸方向に3~60倍の延伸倍率で延伸されたフィルムをも含む。」 「【0062】多層フィルムの製造 前記で得られたペレット状の各混合物を、多層フィルムの中間層用の口径90mmの押出機に供給し、多層フィルムの両表層用の口径40mmの各押出機に融点が125℃であるエチレン/プロピレン/ブテンランダム共重合体を供給して、250℃のTダイより押出し、25℃の冷却ロールで冷却してシートを得た。引き続き80℃~120℃に加熱したロールで縦方向に5倍延伸し、次いで155℃~200℃に加熱したオーブン内で横方向に8倍延伸し、2種3層の逐次二軸延伸フィルムを得た。・・・」 「【0064】青果物の鮮度保持評価 前記で製造した各多層フィルムを用いて調製した25×35cmのサイド溶断シール袋に、いずれも150gのほうれん草を入れ、上部をヒートシールした密閉包装品を温度が10℃、湿度が80%で保存したときの保存状態の観察例を表4に示した。・・・」 (ウ)周知技術1 上記(ア)、(イ)を参照すると、以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であるといえる。 「二軸延伸ポリプロピレンフィルムは溶断シールにより、透明性の高い食品包装用袋に製袋できること。」 ウ 引用文献2 引用文献2の記載 「 [図:0001434130000002.jpg] 」(表紙から数えて12ページ目) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比する。 <層構成> 甲1発明の「基材層」、「該基材層の両面に積層されたスキン層」はそれぞれ、本件発明1の「中間層」、「外表面層」及び「内表面層」に相当する。 <中間層> 甲1発明の「ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製 FL6LSG、融点 158℃、MFR (230℃)2.6g/10分)」、「ポリエチレン(Braskem S.A.製 SLH218、植物由来ポリエチレン、密度 0.916g/cm3、MFR(190℃) 2.3g/10分)」はそれぞれ、本件発明1の「プロピレン重合体」、「エチレン系重合体(E)」に相当するから、 甲1発明の「前記基材層は、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製FL6LSG、融点158℃、MFR(230℃)2.6g/10分)100質量部に対して、ポリエチレン(BraskemS.A.製 SLH218、植物由来ポリエチレン、密度0.916g/cm3、MFR(190℃)2.3g/10分)を6質量部含んでいるポリプロピレン系樹脂からなって」いることは、本件発明1の「前記中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、 前記エチレン系重合体は、 (e1)密度を0.916g/cm3とし、 (e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0minである」ことと、 「前記中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、 前記エチレン系重合体は、 (e1)密度を0.916g/cm3」である限りにおいて一致する。 <外表面層、内表面層> 甲1発明の「前記スキン層は、前記基材層の両面に積層された層であり、 一方のスキン層は、ランダムポリプロピレンとして住友化学株式会社製FS3611(融点132℃、MFR(230℃)3.5g/10分)を85質量部と、エラストマーとして三井化学株式会社製XM7070(プロピレン-ブテン共重合体、融点75℃、MFR(230℃)7.9g/10分、滑剤配合量25000ppm、アンチブロッキング剤配合量50000ppm)5質量部とをドライブレンドした原料α1からなるヒートシール可能なスキン層であって、 もう一方のスキン層は、ポリプロピレンとして日本ポリプロ株式会社製FY6(融点161℃、MFR(230℃)3.0g/10分)を95質量部と、アンチブロッキング剤マスターバッチとして、サンアロマー株式会社製KD583D(樹脂成分:ランダムポリプロピレン、融点140℃、MFR6.2g/10分、アンチブロッキング剤47200ppm)5質量部とをドライブレンドした原料β1からなるヒートシールができないスキン層であ」ることは、 本件発明1の「前記外表面層及び前記内表面層はそれぞれ同一ないし異なるプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からな」ることに相当する。 <積層体> 甲1発明の「基材層と、該基材層の両面に積層されたスキン層とを有し」てなる「3層二軸延伸ポリプロピレンフィルム」は、 本件発明1の「溶断による製袋に用いられ、外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであ」る「溶断製袋用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム」と、 「外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムである二軸延伸ポリプロピレンフィルム」である限りにおいて一致する。 以上を総合すると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、 前記外表面層及び前記内表面層はそれぞれ同一ないし異なるプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、 前記中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、 前記エチレン系重合体は、 (e1)密度を0.916g/cm3である、 二軸延伸ポリプロピレンフィルム。」 [相違点1] 「外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムである二軸延伸ポリプロピレンフィルム」について、本件発明1では、「溶断による製袋に用いられ」る「溶断製袋用」のものであるのに対し、甲1発明では、そのような用途に用いられるか不明な点。 [相違点2] 本件発明1では、「前記外表面層及び前記内表面層の層厚がそれぞれ0.8μmよりも厚く構成され」ているのに対し、甲1発明では、該基材層の両面に積層されたスキン層がそのような厚みを有していることが特定されていない点。 [相違点3] エチレン系重合体のメルトフローレートが、本件発明1では、「メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0g/10minである」のに対し、甲1発明では、「MFR(190℃) 2.3g/10分)」である点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 まず、上記(1)ウに示した引用文献2の記載を参照すると、甲1発明の「BraskemS.A.製SLH218」のMFRの測定条件は(190℃、2.16kg)であるといえるから、メルトフローレートの測定条件において、本件発明1と甲1発明は相違しない。 しかしながら、甲1には、基材層に用いるポリエチレンについて「上記ポリエチレンについて、上記メルトフローレートの値が1.5g/10分よりも小さい場合、製膜性が低下し、また、透明性を損なう。」(【0017】)と記載されており、【0055】【表2】には、「PE8:ポリエチレン(Braskem S.A.製 SLH118、植物由来ポリエチレン、密度 0.916g/cm3、MFR(190℃) 1.0g/10分)」(【0039】)を用いた比較例3、9において、破れ発生により製膜不可であったことが示されている。 そうすると、甲1発明において、基材層に用いるポリエチレンとして、そのメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が「1.0g/10min」のものを採用することには阻害要因があるといえる。 したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(2)イと同様の理由により、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 特許異議申立書(以下「申立書」という。)で申立人が主張する申立理由のうち、取消理由で採用しなかったものの概要は、次の通りである。 申立理由1(甲1を引用例とする新規性) 本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 当審における判断 上記第4の2(2)アで示したとおり、本件発明1と甲1発明は相違点1~3において相違するものであり、同(2)イで示したとおり、少なくとも相違点3は実質的なものであるから、本件発明1は甲1発明ではない。 同様に、本件発明2~7も甲1発明ではない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701035

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