2019-700011
プレクラッキングリアクターを用いたディレードコーキングプロセス
- 審判番号
- 2019-700011
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-159124外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月11日
- 審決日
- 2020年04月28日
- 公報発行日
- 2020年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】インディアン オイル コーポレーション リミテッド
- 【権利者代理人】葛和 清司
- 【異議申立人】古川 興輝
- 分類
- P1651.121-YAA(C10G) / P1651.537-YAA(C10G) / P1651.113-YAA(C10G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 21項目
1.手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
特許第6357202号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成28年8月15日(パリ条約による優先権主張 2015年11月23日(IN)インド)に出願され、平成30年6月22日にその特許権の設定登録がされ、同年7月11日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成31年1月11日に特許異議申立人古川興輝(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
同年 9月 6日 :意見書の提出(申立人)
同年 3月 2日 :意見書の提出(申立人)
2.訂正請求について
(1)本件訂正
上記1.「手続の経緯」のとおり、特許権者から令和2年1月28日に訂正請求書が提出されたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和元年7月10日に提出された訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
以下、令和2年1月28日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。
(2)本件訂正の内容
本件訂正は、特許第6357202号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであり、その訂正の具体的な内容は、以下のとおりである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
ア 訂正事項1 請求項1に係る訂正
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2 請求項2、7、9、10に係る訂正
特許請求の範囲の請求項2に「炭化水素原料」と記載されているのを、「重質炭化水素原料」に訂正する。
請求項2を引用する請求項7、9、10も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3 請求項3、8、11~13(訂正後)に係る訂正
特許請求の範囲の請求項3に「炭化水素原料」と記載されているのを、「重質炭化水素原料」に訂正する。
請求項3を引用する請求項8、11~13(訂正後)も同様に訂正する。
エ 訂正事項4 請求項4~6に係る訂正
特許請求の範囲の請求項4~6を削除する。
オ 訂正事項5 請求項7に係る訂正
特許請求の範囲の請求項7において、引用する請求項から請求項1及び3を削除し、「ナフサ[13、25、48、67、86]」、「Kero[15、27、50、68、87]」、「LCGO[16、28、51、69、88]」、「HCGO[17、29、52、70、89]」及び「CFO[18、34、53、71、90]」と記載されているのを、それぞれ「ナフサ[25]」、「Kero[27]」、「LCGO[28]」、「HCGO[29]」及び「CFO[34]」に訂正する。
カ 訂正事項6 請求項8に係る訂正
特許請求の範囲の請求項8において、引用する請求項から請求項1及び2を削除し、「中間セパレーター[6、42、59、80]」と記載されているのを、「中間セパレーター[59]」に訂正する。
キ 訂正事項7 請求項9に係る訂正
特許請求の範囲の請求項9において、引用する請求項から請求項1及び3を削除し、「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」と記載されているのを、「重質炭化水素原料[19]」に訂正し、「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油または炭化水素のブレンド」と記載されているのを、「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油またはそれらの重質炭化水素のブレンド」に訂正する。
ク 訂正事項8 請求項10に係る訂正
特許請求の範囲の請求項10において、引用する「請求項1~3のいずれか一項」を「請求項2」とし、「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」と記載されているのを、「重質炭化水素原料[19]」に訂正する。
ケ 訂正事項9 請求項11(訂正後)に係る訂正
訂正前の特許請求の範囲の請求項7の請求項3を引用するものの引用関係を解消し、請求項3を引用する請求項11として書き下すとともに、訂正前の請求項7において、「ナフサ[13、25、48、67、86]」、「Kero[15、27、50、68、87]」、「LCGO[16、28、51、69、88]」、「HCGO[17、29、52、70、89]」及び「CFO[18、34、53、71、90]」と記載されているのを、それぞれ「ナフサ[67]」、「Kero[68]」、「LCGO[69]」、「HCGO[70]」及び「CFO[71]」に訂正する。
コ 訂正事項10 請求項12(訂正後)に係る訂正
訂正前の特許請求の範囲の請求項9の請求項3を引用するものの引用関係を解消し、請求項3を引用する請求項12として書き下すとともに、訂正前の請求項9において、「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」と記載されているのを、「重質炭化水素原料[54]」に訂正し、「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油または炭化水素のブレンド」と記載されているのを、「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油またはそれらの重質炭化水素のブレンド」に訂正する。
サ 訂正事項11 請求項13(訂正後)に係る訂正
訂正前の特許請求の範囲の請求項10の請求項3を引用するものの引用関係を解消し、請求項3を引用する請求項13として書き下すとともに、訂正前の請求項10において、「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」と記載されているのを、「重質炭化水素原料[54]」に訂正する。
なお、訂正事項1~11に係る訂正前の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定される関係を有するものであるから、本件訂正は一群の請求項1~10について請求されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)訂正事項1、4について
訂正事項1、4は、それぞれ訂正前の請求項1、4~6を削除する訂正であるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項1、4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項1、4は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、それぞれ訂正前の請求項2、3に記載されていた「炭化水素原料」を、本件明細書の[0034]における「プロセスにおいて使用される液体炭化水素原料は、減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油などの重質炭化水素原料またはかかる炭化水素のブレンドから選択することができる」との記載に基づいて、「重質炭化水素原料」とすることにより、「炭化水素原料」の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項2、3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
さらに、請求項2を引用する請求項7、9、10及び請求項3を引用する請求項8、11~13(訂正後)についても同様である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(ウ)訂正事項5について
(ウ-1) 訂正事項5は、訂正前の請求項7が「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたところ、そのうち請求項1及び3との引用関係を解消するものであり、また、同時に、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ-2) また、訂正事項5は、訂正前の請求項7における「ナフサ[13、25、48、67、86]」、「Kero[15、27、50、68、87]」、「LCGO[16、28、51、69、88]」、「HCGO[17、29、52、70、89]」及び「CFO[18、34、53、71、90]」という発明特定事項を、それぞれ「ナフサ[25]」、「Kero[27]」、「LCGO[28]」、「HCGO[29]」及び「CFO[34]」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記(ウ-1)に記載したように、訂正事項5により、訂正前の請求項7において、請求項1及び3との引用関係が解消され、請求項2を引用するもののみに記載が書き改められることに伴い、請求項2に対応するプロセスについて記載されている本件明細書の[0037]における「本発明の態様は、ハードウェア要件を少なくして、図2において提供される。・・・プレクラッキングリアクターからの生成物流と共にコークドラム(33)を出る生成蒸気を、LPGおよびナフサ(25)、Kero(27)、LCGO(28)、HCGO(29)、CFO(34)および重質な底部の留分(30)を含むオフガスなどの所望の生成留分へのさらなる分離のために主分留装置(24)カラムに送る」との記載、及び図2における番号の記載に基づいて、「ナフサ」、「Kero」、「LCGO」、「HCGO」及び「CFO」に対応する番号を、請求項2のプロセスに対応する番号のみに限定して書き改めることにより、記載が不明瞭になることを避けるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ-3) さらに、訂正事項5は、上記(ウ-1)及び(ウ-2)に記載したとおりに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内で発明特定事項を書き改め、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
(ウ-4) よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(エ)訂正事項6について
(エ-1) 訂正事項6は、訂正前の請求項8が「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたところ、そのうち請求項1及び2との引用関係を解消するものであり、また、同時に、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(エ-2) また、訂正事項6は、訂正前の請求項8における「中間セパレーター[6、42、59、80]」という発明特定事項を、「中間セパレーター[59]」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記(エ-1)に記載したように、訂正事項6により、訂正前の請求項8において、請求項1及び2との引用関係が解消され、請求項3を引用するもののみに記載が書き改められることに伴い、請求項3に対応するプロセスについて記載されている本件明細書の[0040]における「本発明のまた別の態様は、図4において提供される。・・・そして、放出される生成材料流(58)を、中間セパレーター(59)に送る」との記載、及び図4における番号の記載に基づいて、「中間セパレーター」に対応する番号を、請求項3のプロセスに対応する番号のみに限定して書き改めることにより、記載が不明瞭になることを避けるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(エ-3) さらに、訂正事項6は、上記(エ-1)及び(エ-2)に記載したとおりに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内で発明特定事項を書き改め、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
(エ-4) よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(オ)訂正事項7について
(オ-1) 訂正事項7は、訂正前の請求項9が「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたところ、そのうち請求項1及び3との引用関係を解消するものであり、また、同時に、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(オ-2) また、訂正事項7は、訂正前の請求項9における「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」という発明特定事項を、「重質炭化水素原料[19]」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記(オ-1)に記載したように、訂正事項7により、訂正前の請求項9において、請求項1及び3との引用関係が解消され、請求項2を引用するもののみに記載が書き改められるところ、上記訂正事項2により、訂正前の請求項2に記載されていた「炭化水素原料」が「重質炭化水素原料」に訂正されることに合わせて、請求項2を引用する請求項9においても同様の訂正を行うことにより、記載が不明瞭になることを避けることを目的とするものであり、また、上記2.(2)ア(イ)「訂正事項2、3について」における検討を踏まえると、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもあり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
そして、並記される番号については、請求項2に対応するプロセスについて記載されている本件明細書の[0037]における「本発明の態様は、ハードウェア要件を少なくして、図2において提供される。図2において説明されるプロセススキームにおいて、残油原料(19)を、プレクラッキングリアクター(22)の所望の入口温度で炉内(20)で加熱し、熱い供給物(21)を得る」との記載、及び図2における番号の記載に基づいて、「重質炭化水素原料」に対応する番号を、請求項2のプロセスに対応する番号のみに限定して書き改めることにより、記載が不明瞭になることを避けるものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(オ-3) さらに、訂正事項7は、訂正前の請求項9における「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油または炭化水素のブレンド」という発明特定事項を、「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油またはそれらの重質炭化水素のブレンド」に訂正することを含む。
ここで、訂正前の請求項9における「または炭化水素のブレンド」という発明特定事項は、当該記載より前に記載された炭化水素の選択肢のブレンドを意味するとも、炭化水素一般のブレンドを意味するとも解釈し得る点で明瞭ではなかったといえるが、本件明細書の[0034]における「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油などの重質炭化水素原料または「かかる」炭化水素のブレンド」との記載を参酌すると、訂正前の請求項9における上記「または炭化水素のブレンド」という発明特定事項は、当該記載より前に記載された選択肢のブレンドを意味すること、及び当該選択肢はいずれも「重質炭化水素原料」であることを理解することができる。
そうすると、上記訂正は、記載内容が不明瞭になっていた訂正前の「または炭化水素のブレンド」という発明特定事項を、願書に添付した明細書等の記載に基づいて「またはそれらの重質炭化水素のブレンド」に訂正することにより、その本来の意味を明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(オ-4) 加えて、訂正事項7は、上記(オ-1)~(オ-3)に記載したとおりに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内で発明特定事項を書き改め、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
(オ-5) よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(カ)訂正事項8について
(カ-1) 訂正事項8は、訂正前の請求項10が「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたところ、そのうち請求項1及び3との引用関係を解消するものであり、また、同時に、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(カ-2) また、訂正事項8は、訂正前の請求項10における「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」という発明特定事項を、「重質炭化水素原料[19]」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記2.(2)ア(オ)「訂正事項7について」の(オ-2)における検討を踏まえると、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(カ-3) さらに、訂正事項8は、上記(カ-1)及び(カ-2)に記載したとおりに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内で発明特定事項を書き改め、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
(カ-4) よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(キ)訂正事項9について
(キ-1) 訂正事項9は、訂正前の請求項7が「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたところ、そのうち請求項1及び2との引用関係を解消し、請求項3を引用するものについて、訂正前の請求項7の発明特定事項に基づいて新たな請求項11として記載を書き改めるものであり、また、同時に、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(キ-2) また、訂正事項9は、訂正前の請求項7における「ナフサ[13、25、48、67、86]」、「Kero[15、27、50、68、87]」、「LCGO[16、28、51、69、88]」、「HCGO[17、29、52、70、89]」及び「CFO[18、34、53、71、90]」という発明特定事項を、新たな請求項11において、それぞれ「ナフサ[67]」、「Kero[68]」、「LCGO[69]」、「HCGO[70]」及び「CFO[71]」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記(キ-1)に記載したように、訂正事項9により、訂正前の請求項7において、請求項1及び2との引用関係が解消され、請求項3を引用するもののみに記載が書き改められることに伴い、請求項3に対応するプロセスについて記載されている本件明細書の[0040]における「本発明のまた別の態様は、図4において提供される。・・・生成蒸気を出るコークドラム(66)を(当審注:前後の文脈からみて、「コークドラム(66)を出る生成蒸気を」の明らかな誤記と認められる。)、LPGおよびナフサ(67)、Kero(68)、LCGO(69)、HCGO(70)およびCFO(71)を含むオフガスなどの所望の生成留分へのさらなる分離のために主分留装置(61)カラムに送る」との記載、及び図4における番号の記載に基づいて、「ナフサ」、「Kero」、「LCGO」、「HCGO」及び「CFO」に対応する番号を、請求項3のプロセスに対応する番号のみに限定して書き改めることにより、記載が不明瞭になることを避けるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(キ-3) さらに、訂正事項9は、上記(キ-1)及び(キ-2)に記載したとおりに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内で発明特定事項を書き改め、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
(キ-4) よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(ク)訂正事項10について
(ク-1) 訂正事項10は、訂正前の請求項9が「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたところ、そのうち請求項1及び2との引用関係を解消し、請求項3を引用するものについて、訂正前の請求項9の発明特定事項に基づいて新たな請求項12として記載を書き改めるものであり、また、同時に、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ク-2) また、訂正事項10は、訂正前の請求項9における「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」という発明特定事項を、新たな請求項12において、「重質炭化水素原料[54]」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記(ク-1)に記載したように、訂正事項10により、訂正前の請求項9において、請求項1及び2との引用関係が解消され、請求項3を引用するもののみに記載が書き改められるところ、上記訂正事項3により、訂正前の請求項3に記載されていた「炭化水素原料」が「重質炭化水素原料」に訂正されることに合わせて、請求項3を引用する新たな請求項12においても同様の訂正を行うことにより、記載が不明瞭になることを避けることを目的とするものであり、また、上記2.(2)ア(イ)「訂正事項2、3について」における検討を踏まえると、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもあり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
そして、並記される番号については、請求項3に対応するプロセスについて記載されている本件明細書の[0040]における「本発明のまた別の態様は、図4において提供される。図4において説明されるプロセススキームにおいて、残油原料(54)を、プレクラッキングリアクター(57)の所望の入口温度で炉内で(55)加熱し、熱い供給物(56)を得る」との記載、及び図4における番号の記載に基づいて、「重質炭化水素原料」に対応する番号を、請求項3のプロセスに対応する番号のみに限定して書き改めることにより、記載が不明瞭になることを避けるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ク-3) さらに、訂正事項10は、訂正前の請求項9における「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油または炭化水素のブレンド」という発明特定事項を、新たな請求項12において、「減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油またはそれらの重質炭化水素のブレンド」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記訂正事項7による請求項9の訂正と同様の訂正を、新たな請求項12においても行うものであり、上記2.(2)ア(オ)「訂正事項7について」の(オ-3)における検討を踏まえると、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ク-4) 加えて、訂正事項10は、上記(ク-1)~(ク-3)に記載したとおりに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内で発明特定事項を書き改め、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
(ク-5) よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(ケ)訂正事項11について
(ケ-1) 訂正事項11は、訂正前の請求項10が「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたところ、そのうち請求項1及び2との引用関係を解消し、請求項3を引用するものについて、訂正前の請求項10の発明特定事項に基づいて新たな請求項13として記載を書き改めるものであり、また、同時に、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ケ-2) また、訂正事項11は、訂正前の請求項10における「炭化水素原料[1、19、37、54、74]」という発明特定事項を、新たな請求項13において、「重質炭化水素原料[54]」に訂正することを含む。
当該訂正は、上記2.(2)ア(ク)「訂正事項10について」の(ク-2)における検討を踏まえると、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ケ-3) さらに、訂正事項11は、上記(ケ-1)及び(ケ-2)に記載したとおりに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内で発明特定事項を書き改め、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
(ケ-4) よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1~10に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~10に係る訂正事項1~11については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
ウ 本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
また、請求人は、訂正が認められる場合には、訂正後の請求項2及び従属項7、9、10からなる単位、並びに訂正後の請求項3及び従属請求項8、11~13からなる単位について、それぞれを一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。
よって、訂正後の請求項〔1、4~6〕、〔2、7、9、10〕、〔3、8、11~13〕について訂正することを認める。
3.本件発明について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明13」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1](削除)[請求項2]全コークス収率を低減させる方法であって、(a) 重質炭化水素原料(19)を炉(20)内で加熱し、熱い供給物(21)を得ること;続きを表示(全37行)(b) ステップ(a)の熱い供給物(21)をプレクラッキングリアクター(22)に導入すること、ここで、350~470℃の温度範囲、1~15Kg/cm2の圧力範囲および1~40分の滞留時間範囲での穏やかな熱クラッキング反応が起き、放出される生成材料流(23)を得る;(c) ステップ(b)の放出される生成材料流(23)を主分留装置(24)に通過させること、ここで、それは重質な底部の留分(30)に分留した;(d) ステップ(c)の重質な底部の留分(30)を炉(20)に通過させ、熱い炭化水素流(31)を得ること;(e) ステップ(d)の熱い炭化水素流(31)を予熱したコークドラム(32)に通過させること、ここで、470~520℃の温度範囲、0.5~5Kg/cm2の圧力範囲および10時間を超える滞留時間での激しい熱クラッキング反応が起き、生成蒸気(33)を得る;および(f) ステップ(e)の生成蒸気(33)を主分留装置(24)カラムに通過させ、所望の生成留分を得ることのステップを含む、前記方法。[請求項3]全コークス収率を低減させる方法であって、(a) 重質炭化水素原料(54)を炉(55)内で加熱し、熱い供給物(56)を得ること;(b) ステップ(a)の熱い供給物(56)をプレクラッキングリアクター(57)に導入すること、ここで、350~470℃の温度範囲、1~15Kg/cm2の圧力範囲および1~40分の滞留時間範囲での穏やかな熱クラッキング反応が起き、放出される生成材料流(58)を得る;(c) ステップ(b)の放出される生成材料流(58)および主分留装置(61)から得られたより重質な底部の留分(60)を中間セパレーター(59)に通過させ、炭化水素を上部の(62)および底部の(63)留分に分けること;(d) より軽質な生成物を含有するステップ(c)の上部の留分(62)を主分留装置(61)に通過させること;(e) ステップ(c)の底部の留分(63)を炉(55)に通過させること、ここで、加熱が起き、熱い炭化水素流(64)を得る;(f) ステップ(e)の熱い炭化水素流(64)を予熱したコークドラム(65)に通過させること、ここで、470~520℃の温度範囲、0.5~5Kg/cm2の圧力範囲および10時間を超える滞留時間での激しい熱クラッキング反応が起き、生成蒸気(66)を得る;および(g) ステップ(f)の生成蒸気(66)を主分留装置(61)カラムに通過させ、所望の生成留分を得ることのステップを含む、前記方法。[請求項4](削除)[請求項5](削除)[請求項6](削除)[請求項7]生成留分が、LPGおよびナフサ[25]、Kero[27]、LCGO[28]、HCGO[29]およびCFO[34]から選択されるオフガスである、請求項2に記載の方法。[請求項8]中間セパレーター[59]が、0.2~6Kg/cm2の圧力範囲で作動する、請求項3に記載の方法。[請求項9]重質炭化水素原料[19]が、減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油またはそれらの重質炭化水素のブレンドから選択される、請求項2に記載の方法。[請求項10]重質炭化水素原料[19]が、4重量%を上回るコンラドソン炭素残留分および少なくとも0.95g/ccの密度を有する、請求項2に記載の方法。[請求項11]生成留分が、LPGおよびナフサ[67]、Kero[68]、LCGO[69]、HCGO[70]およびCFO[71]から選択されるオフガスである、請求項3に記載の方法。[請求項12]重質炭化水素原料[54]が、減圧残油、常圧残油、脱アスファルトピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイドオイル、残留油、重質なワックス状の留出物、廊下油、廃油またはそれらの重質炭化水素のブレンドから選択される、請求項3に記載の方法。[請求項13]重質炭化水素原料[54]が、4重量%を上回るコンラドソン炭素残留分および少なくとも0.95g/ccの密度を有する、請求項3に記載の方法。」
4.取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1~17に係る特許に対して令和元年10月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由I(進歩性)
本件訂正前の請求項1、7、9、10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1~6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<引用文献等一覧>
1.中国特許第101591561号明細書(甲第1号証)
2.米国特許第4604186号明細書(甲第2号証)
3.米国特許第6048448号明細書(甲第3号証)
4.川瀬義和, 砂越竹夫, 山口隆章, 三浦高弘(当審注:「高」は「はしごだか」。), 岩村一正共編,"石油精製技術便覧(第3版)", 第3版第1刷, 産業図書株式会社, 昭和56年10月19日, p.53-60(甲第4号証)
5.社団法人日本芳香族工業会, "芳香族及びタール工業ハンドブック 第3版", 第3版, 社団法人日本芳香族工業会, 平成12年3月, p.115-118(甲第5号証)
6.特公平7-110949号公報(甲第6号証)
(2)理由II(サポート要件)
本件訂正前の請求項1~17に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参照しても、所定の課題を解決し得ることを当業者が理解することができないといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものではない。
よって、本件訂正前の請求項1~17に係る発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
5.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての判断
(1)理由I(進歩性)について
ア 引用文献及びその記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
引用文献1~6は、上記4.「取消理由(決定の予告)の概要」の<引用文献等一覧>に記載したとおりのものである。
(i)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
なお、記載事項の認定は、申立人が提出した甲1の翻訳文によって行った。
(1-1)「特許請求の範囲
1.遅延炭化法であって、
1) 原料油と循環油を混合してから加熱炉の対流室、または対流室と放射室に入れて360℃~460℃まで加熱した後、減粘反応装置に入れ、減粘反応装置の頂部においてゲージ圧0.45~3.0MPa及び滞留時間6~210minの条件下で分解反応を起こさせる手順と、
2) 減粘反応装置の上部から出て来たオイルガスを手順1)で述べた加熱炉の放射室に入れて480℃~515℃まで加熱した後、コーキング塔に入れてコーキング反応を起こさせ、コーキング塔の塔頂におけるゲージ圧を0.103~1.0MPaとして、充填時間を3~48hrとし、コーキング塔から出た高温のオイルガスをコーキング分留塔へ送って分留し、コーキング分留塔の底部から循環油を抽出して、循環油の一部または全部を炭化循環油として原料油と混合し、炭化循環油と原料油の重量比を0~1.0:1.0とする手順とが含まれることを特徴とする遅延炭化法。
・・・
5.前記原料油が減圧残油、常圧残油、重質原油、減圧軽油、脱油アスファルト、脱歴油、残油水素化重油、熱分解残油、潤滑油を精製した抽出油、接触分解した循環油や分解残油、エチレン分解残油およびコールタールピッチのうち1種類以上である請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲)
(1-2)「[0003] 現在、重油加工の主要工程は脱炭だが、遅延炭化法は、徹底的な脱炭、簡単なフロー、成熟した技術、安価な設備投資といった特長を持ち、重油加工の重要な工程の1つとなった。しかし、加工する重油の粘度、残留炭素、アスファルテン含有量などの増大に伴って、遅延炭化装置の操作上で課題が生じ、製品分布が悪くなるだけでなく、加熱炉の炉管内におけるコーキングがさらに顕著化し、装置の長期的な運転が妨げられている。
[0004] 遅延炭化における液体製品の収率を向上させ、遅延炭化の稼働期間を延長するため、石油製品の収率を向上させ、遅延炭化の稼働期間を延長するため、石油精製の研究者は、それに関する工程技術の研究と開発を行ってきた。
・・・
[0011] 本発明では、現有技術の欠点に対応するため、新しい遅延炭化法を提供している。具体的に言えば、この工程は、減粘と炭化という2種類の工程を有機的に結び付けて重油を処理する工程技術である。本発明の工程を使用すれば、遅延炭化における液体製品の収率向上、コークス収率の低減、および遅延炭化装置の稼働期間延長とともに、設備投資の削減も図れる。」
(1-3)「[0023] 現有技術と比べて、本発明は以下の優位点を有する。
[0024] 1.現有技術と比べて、・・・コーキング塔における液体製品の収率が向上し、コークスの発生率が低下する。
[0025] 2.本発明における炭化の投入材料を減粘してから加熱炉の放射室に入れて加熱すると、加熱炉放射室における投入材料の粘度が顕著に低下するうえ、減粘後に発生する低沸点留分(ガスを含む)が放射炉管内で優先的に気化され得るので、放射室の炉管内における物質の流速が向上するだけでなく、放射室の炉管内における物質の流動状態も改善されるため、放射室内におけるコーク前駆体の生成や堆積が抑制され、遅延炭化装置の運転期間が延長される。
[0026] 3.炭化の投入材料の減粘後に発生する低沸点留分は水素含有量が比較的に高く、良好な水素供与体や希釈剤となるため、加熱炉放射室における投入材料の性質が最適化される。
[0027] 4.本発明は、適応性が高いので、より質の劣った原料の加工も可能である。
[0028] 5.本発明は、省エネルギーや投資削減の面で顕著な効果を持っている。本発明では、減粘と炭化の過程で必要な熱を加熱炉1基のみにより提供するため、熱利用率が顕著に向上するとともに、投資の削減も可能となる。」
(1-4)「具体的な実施形態
[0034] 図1のとおり、炭化循環油7と原料油6を混合してから材料投入管路8経由で加熱炉1の対流室、または対流室と放射室に入れて加熱し、360℃~460℃(望ましくは380~430℃)まで加熱した後、減粘反応装置2の下部に入れ、減粘反応装置の頂部においてゲージ圧0.45~3.0MPaおよび滞留時間6~210min(望ましくは30~120min)の条件下で分解反応を起こさせる。減粘反応装置2の上部から出て来た反応オイルガスを加熱炉1の放射室に入れて加熱し、480℃~515℃まで加熱した後、1#コーキング塔3の底部に入れて、1#コーキング塔3でのコーク充填完了を待ち、2#コーキング塔4に切り替えて材料を投入する。このとき1#コーキング塔3ではコーク除去処理を行い、2#コーキング塔4ではコーク充填を行って、前記プロセスを繰り返す。1#コーキング塔3と2#コーキング塔4の塔頂におけるゲージ圧を0.103~1.0MPaとして、コーク充填時間を3~48hrとし、生成されたコークスはコーキング塔内に残して、コーキング塔の塔頂から出て来た高温のオイルガス10をコーキング分留塔5の下部から入れて分留を行うと、コーキング分留塔5の上部で軽質油製品が分留される。コーキング分留塔5の底部から循環油を抽出して、循環油の一部または全部を炭化循環油7として原料油6と混合し、炭化循環油7と原料油の重量比を0~1.0:1.0とする。図1に示した本発明は通常の一炉二塔フローだが、もちろん二炉四塔などのフローを採用することもでき、それらのいずれもが当分野での公知技術である。」
(1-5)「
」(図1)
(ii)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
なお、記載事項の認定は、申立人が提出した甲2の翻訳文によって行った。
(2-1)「特許請求の範囲
1.石油残留物をより価値ある製品に品質向上させるプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:
水素化芳香族供与体留分を石油残留物と混合してビスブレーカーフィードを形成すること;
ビスブレーカーフィードを、熱ビスブレーカー中にて粘度低減し、重質炭化水素を軽質生成物に分解し、ビスブレーカーフィード中の水素化留分を反応させて、水素を供与し、コークスの形成を防止し、コークス前駆体の量を減少させること;
ビスブレーカーからの流出物の実質的に全高沸点留分及び実質的に芳香族ドナー留分を、コーカー中にて通常コーカー条件下で炭化させ、コークス及び塔頂留出物を生成することによって、ドナービスブレーキングによるコークス前駆体の減少が、コークス生成物の量を減少させ、塔頂留出物の量を増加させること;
コーカーからの塔頂留出物を、分留塔にて分留し、一以上の軽質留分及び芳香族ドナーリサイクル留分を生成すること;
分留塔からの芳香族ドナーリサイクル成分を水素化し、ビスブレーカーフィード用の水素化ドナー形成物を形成すること。
・・・
5.ビスブレーカーからの流出液を高沸点留分および低沸点留分に分離する工程を含み、分離された高沸点留分がコーカー原料に含まれる請求項1に記載のプロセス。
6.ビスブレーカー流出物から分離された低沸点留分も分留塔に供給される請求項5に記載のプロセス。
7.分離が、ビスブレーカーからの留出物をフラッシングすることによって行われる請求項5に記載のプロセス。」(特許請求の範囲の請求項1、5~7)
(2-2)「発明の概要
本発明は、ドナービスブレーキング(粘度低減)とコーキング(炭化)の独特の組み合わせ、例えばディレードコーキング(遅延炭化)またはフルード(流体)コーキングを使用するプロセス要約され、ここではビスブレーキング留出物の高沸点部分がコーカーフィードの少なくとも一部を形成し、コーカー塔頂部からの芳香族軽油留分は、ドナー水素添加のための流れを形成し、ビスブレーキング供給に再循環する。本発明の方法では、コーカー内に生成されたコークスの量が、ビスブレーキング原料中の水素供与体によって制御され得ることが見出されている。
本発明の目的は、最初にコーカーのための残留物供給原料を水素ドナービスブレーキングに通すことによってコーカー内のコークス生成を減少させることである。
・・・
本発明の1つの特徴は、フルードコーキングからの重質軽油成分、特に700°Fより上で沸騰する材料が二環及び多環芳香族で非常に高く、良好な水素供与材料であるという発見である。本発明は、フルードコーキングを使用するプロセス、およびベネズエラの残油、重質のカナダの残渣およびタールサンドなどの重質低水素含有物質を熱的に変換する方法に特に適している。フルードコーキングは、芳香族含有量が80重量%以上の重質軽油を生成することがわかっている。」(第2欄23行~下から3行)
(2-3)「好適な実施態様の説明
図1に示すように、入力ライン10の残留物を品質改良するためのシステムは、ドナー(供与材)ビスブレーカー(粘度低減装置)12、及びビスブレーカー12から高沸点生成物を装入するコーカー(炭化装置)14を含む。ライン10の残留物フィードは、ライン16中にて水素供与体希釈剤と混合され、この混合物はビスブレーカー加熱炉18に供給され、ビスブレーカーソーキングドラム20に供給される、ドラム20からの留出物はフラッシュ容器22に送られ、低沸点部分は分離されてライン24に送られ、高沸点部分はライン26に送られる。ライン26の高沸点部分は、コーカー洗浄油から生じるライン28のコーカー底部リサイクルと混合され、この混合物はコーカー加熱炉30を通過し、次に交互のコークスドラム32および34のうちの1つに送られる。コークスドラムの蒸気塔頂生成物は、コーカー分留塔36の下部に供給され、分留塔の全ドロートレイの上部セクションにおいてライン24から低沸点成分を受け取る。重質軽油生成物は分留塔から回収され、ライン38により触媒水素化装置40に送られ、水素が重質軽油生成物に戻されてライン16にて水素供与体希釈剤が生成される。さらに、様々な低沸点生成物、例えばライン42中のガスおよびガソリン、およびライン44中の軽質軽油が分留塔36から抜き出される。重質軽油ブリードをライン46によって提供でき、必要な芳香族化合物濃度およびドナー量を維持する。リサイクルは、芳香族化合物を濃縮する。なぜなら、システムを通過する度に分解される非芳香族化合物の割合が、分解される芳香族化合物の割合よりも実質的に多いからである。分留塔36からのボトムはライン28でコーカーボトムリサイクルを形成し、ボトムリサイクルはコーカーでは定常となり、ネット洗浄流を表す。
ビスブレーカー12において、加熱炉18は、残留物と水素供与体との混合物を、ソーキングドラム20を通過する前に、800°F~980°F(427~527℃)、好ましくは830°F~900°F(443℃~482℃)の温度に加熱する。ドラム20は、10%以上、好ましくは15~25%転化率を得るのに十分な反応時間を提供するように設計される。ここで、転化率は、供給原料に対するC4-430°F(220℃)ガソリンの体積%で表される。ドラム20からの流出物を容器22内にフラッシュし、約700°F(370℃)以上、好ましくは約820°F(440℃)まで沸騰する留出物を除去する。
水素ドナービスブレーキングは、通常コーカー内でコークス化するコークス前駆体または化合物がコーカー内でコークスをほとんどまたは全く生成しない化合物に転化され、コークス生成量を減少させるという点でコーキングを補足することがわかっている。
コーカー14内の加熱炉30は、交互にサイクルされたコークスドラム32および34に加熱された流れを送る前に、リサイクルコーカー底部とフラッシュ容器22からの底部生成物との混合物を900~980°F(480~527℃)の範囲の温度、好ましくは910~925°F(485~495℃)に加熱する。コークスドラム32および34は、軽質および重質軽油、ガソリン、およびガスの流体生成物とコークスを生成するために、実質的な分解およびコーキングをもたらすように設計されている。コーカー精留塔は、選択された沸点範囲、例えば820~900°F(440~480℃)またはより広い範囲、例えば700~950°F(370~510℃)を有する重質軽油留分ならびにガソリンおよび他の最終生成物を形成するための次の従来の処理段階に引き渡すことができる他の製品を分離するように設計されている。コーカー14は、カットされた(分けられた)ドナーの芳香族成分を濃縮する利点を有する。同じ沸点範囲内の脂肪族および他のより安定でない化合物は、沸点の低い生成物に分解する傾向があり、従って、ドナー沸点範囲から除去される。」(第3欄17行~第4欄23行)
(2-4)「実施例
本発明の方法の例では、1.03の比重および20のコンラドソン炭素含有量のBachaquero残留物を、1重量部のドナーに対する2重量部の残留物の割合で水素化ドナーとブレンドする。次いで、この混合物を出口圧力400PSIG(27.5バール)および出口温度860°F(460℃)で動作するドナービスブレーキング炉に充填する。ビスブレーキング炉流出物は、フィードを900°F(480℃)未満で沸騰する材料に50%変換するのに十分な保持時間を提供するように設計された浸漬ドラムに通される。ソーキングドラム流出液をフラッシュして、820°F(440℃)のカットポイントの底部および留出物を生成する。フラッシュされた蒸気は、全ドロートレイの上の精留塔に送られる。沸点が820°F(440℃)を超える液体は、元のBachaquero原料のコンラドソン炭素含有量の60%しか含まない。その水素化または未反応状態の元の水素化ドナーの約50%を含む高沸点留分またはフラッシュボトムは、コーカー蒸留器からのコーカー底部留分と混合される。この混合物は、コークス炉内で930°F(500℃)の出口温度まで加熱され、その後プロセスサイクルで現在接続されているコークスドラムに送られる。コークスドラムからの流体生成物または流出物は主コークス分留塔の底部に送られ、そこで約820°F(440℃)未満で沸騰するすべての化合物を含む蒸気および約920°F(490℃)以上で沸騰する液体留分またはコーカー底部リサイクルに加えて、820~920°F(440~490℃)範囲の沸点のドナーが得られる。920~950°F(490~570℃)のような他の流れを分留装置から抜き出すことができる。Bachaquero原料に対して重量%で表されるコークス収率は、Bachaquero原料が最初にドナービスブレーキングユニットに装填されず、コーキング原料中に水素供与体が存在しない場合の26%と比較して16%である。」(第6欄14~52行)
(2-5)「図1
」(図1)
(iii)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
なお、記載事項の認定は、申立人が提出した甲3の翻訳文によって行った。
(3-1)「発明の概要
したがって、本発明の目的は、石油残留物のより価値の高い液体生成物への変換を最大にし、低価値コークスの生成を最小限に抑える複合熱分解、例えばビスブレーキング(粘度低減)/ディレードコーキング(遅延炭化)プロセスを提供することにある。
本発明の別の目的は、低品位コークスの生成を最小限に抑え、より価値の高い液体生成物の生産を最大にするディレードコーカー装填物を製造する方法を提供することにある。」(第2欄24~32行)
(3-2)「好適な実施態様の説明
本発明で使用されるビスブレーキング操作は、一般に慣用されており、415℃~495℃、好ましくは440℃~460℃の範囲の温度にビスブレーキング供給物を加熱した後、適切なソーキングドラムおよび/または精留塔などに送ることを含む。典型的には、加熱コイルまたはソーキングドラムは、供給材料の10%以上、より好ましくは15%~40%の転化率を得るのに十分な反応時間を提供するように設計され、転化率は+343℃留分の原料消失率として表される。ビスブレーカーからの流出液を引続き真空フラッシュまたは蒸留して、約440℃、好ましくは約550℃まで沸騰する留出物を除去し、ボトム分として真空フラッシュ粘度低減ピッチ(VFP)を残す。
本発明で使用されるコーキングプロセスは、周知のディレードコーキング(遅延炭化)プロセスである。このコーキングプロセスでは、原料油は、550~50psigの圧力でコーカー加熱炉にポンプで送られ、そこで約300℃~510℃の温度に加熱され、次いで垂直コーキングドラムにベース入口より供給される。ドラム内の圧力は比較的低く、10~80psiに維持され、ドラム内の作動温度は約430℃~510℃である。加温原料油は、コークスドラム中で一定期間、炭化水素蒸気を遊離しながら分解され、コークス塊を連続的に生成する。
リサイクル油または流を含む生成物は、コークスガス、ガソリン、軽質軽油および重質軽油の蒸留および回収のためにコーカー分留塔に送られ、その後コークスはドラムから除去される。以下に見られるように、コーカー分留塔に装入されたリサイクル流中に存在する重質コークス軽油の一部が捕捉され、フレッシュ原料(コーカー原料成分)と混合され、それによってコーカー加熱炉に充填される。」(第5欄16~48行)
(iv)引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(4-1)「表II・4・2 ビスブレーキング装置の収率,性状などの例
」(p.56 表II・4・2)
(v)引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(5-1)「1.2.2 石油コークスの原料
現在工業的に使われている石油系原料には,流動接触分解装置からのデカントオイル,熱分解装置から得られる熱分解タール,ナフサ分解装置から得られるエチレンタール,低硫黄原油からの直留系残油などがある。・・・
表4-2に石油系各原料油の性状例について示す。」(p.116左欄4~19行)
(5-2)「1.3 ピッチコークス・石油コークス製造法
ディレードコーキング法とは遅延炭化法ともいい,加熱は管式加熱炉(管炉),炭化はコークドラムで進行する。以下工程図(図4-1)に従って解説する。
1)管炉に装入された原料は,加熱管内で炭化しないように短時間で急速に炭化温度まで加熱され,コークドラム底部から装入される。通常炭化温度は460~520℃の範囲にあり,コークドラム内では,適当な温度及び圧力下で炭化が進み,生成したコークスは次々と蓄積されてドラムを満たす。」(p.116左欄下から8行~右欄3行)
(5-3)「表4-2 石油系各原料油の性状例
」(p.116下欄 表4-2)
(vi)引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(6-1)「多様なビスブレーキング法が提案されていて、そこでは残さ油に水素または水素供与物質を加えたり、加えないで残さ油をビスブレーキング工程に入れている。」(第4欄11~13行)
(6-2)「発明が解決しようとする問題点
本発明は重質石油残さ油をビスブレーキングすることによつて、顕著にコークスまたは沈殿物が生成することなく、ビスブレーキングの苛酷度を大巾に増大させるにある。と言う観察に基づくものである。
問題を解決するための手段
本発明はある種の水素供与溶媒の存在下で重質石油残さ油をビスブレーキングすることにより顕著にコークスまたは沈殿物を生成することなく、ビスブレーキングの苛酷度を大巾に増大させることができるという観察に基づくものである。
(6-3)「ビスブレーキングの操作条件は重質油原料、水素供与物質の性状及び他の原因に広く左右される。一般に、操作は、温度350℃-485℃、好ましくは425℃-455℃、滞留時間1-60分、好ましくは7-20分間の範囲で行われる。427℃でのERTで表わして、本発明の方法は250-1500ERT秒、好ましくは400-1200ERT秒、更に好ましくは500-800ERTに等しい反応時間で操作される。
・・・
通常ビスブレーカー中の圧力は170~10450kPaであるが、大多数の装置は1480-7000kPaの圧力で運転される。このような圧力は液相状態を保ち所望の変換率を得るのに十分である。」(第13欄50行~第14欄6行)
イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2の請求項1(摘記2-1)には、以下の事項により特定されるプロセスの発明が記載されており(便宜的に、各工程に記号(A)~(E)を付記した。)、
「1.石油残留物をより価値ある製品に品質向上させるプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:(A)水素化芳香族供与体留分を石油残留物と混合してビスブレーカーフィードを形成すること;(B)ビスブレーカーフィードを、熱ビスブレーカー中にて粘度低減し、重質炭化水素を軽質生成物に分解し、ビスブレーカーフィード中の水素化留分を反応させて、水素を供与し、コークスの形成を防止し、コークス前駆体の量を減少させること;(C)ビスブレーカーからの流出物の実質的に全高沸点留分及び実質的に芳香族ドナー留分を、コーカー中にて通常コーカー条件下で炭化させ、コークス及び塔頂留出物を生成することによって、ドナービスブレーキングによるコークス前駆体の減少が、コークス生成物の量を減少させ、塔頂留出物の量を増加させること;(D)コーカーからの塔頂留出物を、分留塔にて分留し、一以上の軽質留分及び芳香族ドナーリサイクル留分を生成すること;(E)分留塔からの芳香族ドナーリサイクル成分を水素化し、ビスブレーカーフィード用の水素化ドナー形成物を形成すること。」、
上記請求項1を引用する請求項5(摘記2-1)には、上記工程(C)の「ビスブレーカーからの留出物」について、
「5.ビスブレーカーからの流出液を高沸点留分および低沸点留分に分離する工程を含み、分離された高沸点留分がコーカー原料に含まれる請求項1に記載のプロセス。」の発明が記載され、
上記請求項5を引用する請求項6及び7(摘記2-1)には、
「6.ビスブレーカー流出物から分離された低沸点留分も分留塔に供給される請求項5に記載のプロセス。7.分離が、ビスブレーカーからの留出物をフラッシングすることによって行われる請求項5に記載のプロセス。」の発明が記載されている。
また、上記引用文献2の請求項1に係る発明には、「コークス生成物の量を減少させ」る工程(C)が含まれているところ、引用文献2(摘記2-2)には、「本発明の目的は、最初にコーカーのための残留物供給原料を水素ドナービスブレーキングに通すことによってコーカー内のコークス生成を減少させることである」と記載されているから、上記引用文献2の請求項1に係る発明は、「コーカー内のコークス生成を減少させる」ことを目的とする方法の発明といえる。
さらに、引用文献2(摘記2-3)には、上記引用文献2の請求項1に係る発明の実施形態が図1(摘記2-5)に基づいて記載されており、ライン10の「残留物フィード」(工程(A)の「石油残留物」)は、ライン16中にて「水素供与体希釈剤」(工程(A)の「水素化芳香族供与体留分」)と混合され、この混合物(工程(A)及び(B)の「ビスブレーカーフィード」)は、「ビスブレーカー加熱炉18」に供給され、「ビスブレーカーソーキングドラム20」(工程(B)の「熱ビスブレーカー」)に供給されること、ビスブレーカー12において、加熱炉18は、残留物と水素供与体との混合物を、ソーキングドラム20を通過する前に800°F~980°F(427~527℃)、好ましくは830°F~900°F(443~482℃)の温度に加熱すること、ドラム20からの流出物(工程(C)の「ビスブレーカーからの流出物」)はフラッシュ容器22に送られ(請求項7の「フラッシング」)、低沸点部分は分離されてライン24に送られ、高沸点部分はライン26に送られること、分留塔の全ドロートレイの上部セクションにおいてライン24から低沸点成分を受け取る(請求項6の「低沸点留分も分留塔に供給」)こと、ライン26の高沸点部分(工程(C)の「ビスブレーカーからの流出物の実質的に全高沸点留分」)は、コーカー洗浄油から生じるライン28のコーカー底部リサイクルと混合され、この混合物はコーカー加熱炉30を通過し、次に交互のコークスドラム32および34のうちの1つ(工程(C)の「コーカー」)に送られること、コーカー14内の加熱炉30は、交互にサイクルされたコークスドラム32および34に加熱された流れを送る前に、リサイクルコーカー底部とフラッシュ容器22からの底部生成物との混合物を900~980°F(480~527℃)の範囲の温度、好ましくは910~925°F(485~495℃)に加熱すること、コークスドラム32および34は、軽質および重質軽油、ガソリン、およびガスの流体生成物(工程(C)の「塔頂生成物」)とコークスを生成するために、実質的な分解およびコーキングをもたらすように設計されていること(工程(C)の「通常コーカー条件下で炭化」)、コークスドラムの蒸気塔頂生成物(工程(D)の「コーカーからの塔頂留出物」)は、コーカー分留塔36(工程(D)の「分留塔」)の下部に供給されること、コーカー精留塔は、選択された沸点範囲、例えば820~900°F(440~480℃)またはより広い範囲、例えば700~950°F(370~510℃)を有する重質軽油留分ならびにガソリンおよび他の最終生成物を形成するための次の従来の処理段階に引き渡すことができる他の製品(工程(D)の「一以上の軽質留分」)を分離するように設計されていること、が記載されている。
そうすると、引用文献2には以下の発明が記載されているものと認められる。
「コークス生成を減少させる方法であって、以下の工程を含む方法:水素化芳香族供与体留分を石油残留物と混合してビスブレーカーフィードを形成すること;ビスブレーカーフィードをビスブレーカー加熱炉に供給し、427~527℃に加熱したビスブレーカーフィードを得ること、加熱したビスブレーカーフィードをビスブレーカーソーキングドラムに供給し、ドラム中で粘度低減し、重質炭化水素を軽質生成物に分解し、ビスブレーカーフィード中の水素化留分を反応させて、水素を供与し、コークスの形成を防止し、コークス前駆体の量を減少させること;ビスブレーカーソーキングドラムからの流出物をフラッシュ容器に送り、低沸点留分及び高沸点留分に分離し、低沸点留分を分留塔の上部セクションに送り、高沸点留分をコーカー底部リサイクルと混合し、この混合物をコーカー加熱炉に通過させ、900~980°F(480~527℃)の範囲の温度に加熱した混合物とし、次に交互にサイクルされたコークスドラム32および34のうちの1つに加熱された流れを送り、コークスドラム中にて実質的な分解およびコーキングをもたらし、コークス及び蒸気塔頂生成物を生成することによって、ドナービスブレーキングによるコークス前駆体の減少が、コークス生成物の量を減少させ、塔頂留出物の量を増加させること;コーカーからの蒸気塔頂留出物を、分留塔にて分留し、一以上の軽質留分及び芳香族ドナーリサイクル留分を生成すること;分留塔からの芳香族ドナーリサイクル成分を水素化し、ビスブレーカーフィード用の水素化ドナー形成物を形成すること。」(以下、「引用発明」という。)
ウ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用発明との対比
本件発明2と引用発明とを対比すると、引用発明における「ビスブレーカーフィード」は、「水素化芳香族供与体留分を石油残留物と混合」したものであり、後の工程で、「加熱したビスブレーカーフィードをビスブレーカーソーキングドラムに供給し、・・・重質炭化水素を軽質生成物に分解」されることが記載されているから、「重質炭化水素」を成分として含むものである点で、本件発明2の「重質炭化水素原料(19)」と共通する。
引用発明における「コークス生成を減少させる方法」、「ビスブレーカー加熱炉」、「加熱したビスブレーカーフィード」、「ビスブレーカーソーキングドラム」、「ドラム中で粘度低減し、重質炭化水素を軽質生成物に分解」及び「ビスブレーカーソーキングドラムからの流出物」は、それぞれ本件発明2における「全コークス収率を低減させる方法」、ステップ(a)の「炉(20)」、「熱い供給物(21)」、「プレクラッキングリアクター(22)」、「クラッキング反応」及び「(ステップ(b)の)放出される生成材料流(23)」に相当する。
引用発明における「分留塔」、「上部セクションに送り」及び「コーカー底部リサイクル」は、それぞれ本件発明2における「主分留装置(24)」、「通過させること」及び「重質な底部の留分(30)」に相当する。
引用発明における「高沸点留分をコーカー底部リサイクルと混合し、この混合物」、「加熱した混合物」及び「加熱された流れ」は、「コーカー底部リサイクル」を含むものである点で、それぞれ本件発明2における「ステップ(c)の底部の留分(30)」、「熱い炭化水素流(31)」及び「ステップ(d)の熱い炭化水素流(31)」と共通する。
引用発明における「コーカー加熱炉」、「コークスドラム」、「実質的な分解およびコーキング」、「蒸気塔頂留出物」、「分留塔にて分留」及び「一以上の軽質留分及び芳香族ドナーリサイクル留分」は、それぞれ本件発明2におけるステップ(d)の「炉(20)」、「コークドラム(32)」、「熱クラッキング反応」、「(ステップ(e)の)生成蒸気(33)」、「主分留装置(24)カラムに通過」及び「所望の生成留分」に相当する。
また、引用発明の「ビスブレーカー加熱炉」による加熱温度である「427~527℃」は、本件発明2の「プレクラッキングリアクター(22)」における「350~470℃」という温度と427~470℃の範囲で重複していることから、引用発明の「ビスブレーカーソーキングドラム」における「ドラム中で粘度低減し、重質炭化水素を軽質生成物に分解」する反応は、本件発明2の「プレクラッキングリアクター(22)」における「穏やかな熱クラッキング反応」に相当する。また、引用発明の「コーカー加熱炉」による加熱温度である「480~527℃」は、本件発明2の「コークドラム(32)」における「470~520℃」という温度と480~520℃の範囲で重複していることから、引用発明の「コークスドラム」における「実質的な分解およびコーキング」は、本件発明2の「コークドラム(32)」における「激しい熱クラッキング反応」に相当し、また、そのような反応を起こす引用発明の「コークスドラム」は、本件発明2の「予熱したコークドラム(32)」に相当するといえる。
そうすると、両者は、
「全コークス収率を低減させる方法であって、(a) 重質炭化水素原料を炉内で加熱し、熱い供給物を得ること;(b) ステップ(a)の熱い供給物をプレクラッキングリアクターに導入すること、ここで、427~470℃の温度範囲での穏やかな熱クラッキング反応が起き、放出される生成材料流を得る;(c) ステップ(b)の放出される生成材料流を主分留装置に通過させること、ここで、それは重質な底部の留分に分留した;(d) ステップ(c)の重質な底部の留分を炉に通過させ、熱い炭化水素流を得ること;(e) ステップ(d)の熱い炭化水素流を予熱したコークドラムに通過させること、ここで、480~520℃の温度範囲での激しい熱クラッキング反応が起き、生成蒸気を得る;および(f) ステップ(e)の生成蒸気を主分留装置に通過させ、所望の生成留分を得ることのステップを含む、前記方法。」
の点で一致し、
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
(イ)事案に鑑み、まず、相違点10について検討する。
[相違点10について]
引用発明の「ビスブレーカー加熱炉」と「コーカー加熱炉」とは、機能や役割が異なり、同一の炉とすることはできない。
したがって、相違点10に相当する発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとは認められない。
(ウ)本件発明2の効果について
本件明細書の[0010]に、「あらゆる形の外部添加剤を使用せずに、熱クラッキングプロセスから収率パターンを改善する能力があるプロセスを有することが望ましい」こと、及び本件発明により「所望の生成物の全収率の改善および価値が低いコークスの収率の低減をもたらすプロセスを提供する」ことができることが記載されているように、本件発明2は、そのような、格別顕著な作用効果を奏するものである。
(エ)申立人の主張について
申立人は、令和2年3月2日に提出した意見書(2頁)において、「特許権者が本件発明1の特徴として強調していた『所定の圧力範囲における穏やかな熱クラッキング反応と激しい熱クラッキング反応との組み合わせにより、コークスの収率低減という課題の解決を図る」という技術思想は、本件発明2、3においても共通」すること、「中間セパレーターや主分留装置の使用は、当該技術分野において日常的に実施されている付随的な要件であり・・・単なる設計変更事項に過ぎない」こと、「『重質』炭化水素原料と規定しているが、この点についても・・・当該技術分野の常識事項である」こと、及び「してみると、訂正後の請求項2、3に係る発明・・・も、削除した請求項1に係る発明・・・と同一の技術思想を規定したに過ぎず、本件発明1と同様に、進歩性を有さない」と主張している。
しかし、上記のとおり、相違点10については、引用発明、引用文献1~6に記載された事項及び技術常識を参酌しても当業者が容易に想到し得たこととは認められないから、本件発明2が進歩性を有さない旨の申立人の主張を採用する事はできない。
(オ)本件発明2についてのまとめ
以上のとおり、相違点10については、引用発明及び引用文献1~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができた事項とは認められないことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は引用発明及び引用文献1~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明3について
(ア)本件発明3と引用発明との対比
本件発明3は、本件発明2におけるステップ(c)に代えて、中間セパレーターを使用するステップ(c)及び(d)を有する点以外は、本件発明2と同様のステップを含む発明である。
そこで、上記5.(1)ウ(ア)「本件発明2と引用発明との対比」を踏まえて、本件発明3と引用発明とを対比すると、引用発明における「ビスブレーカーフィード」は、「重質炭化水素」を成分として含むものである点で、本件発明3の「重質炭化水素原料(54)」と共通する。
引用発明における「コークス生成を減少させる方法」、「ビスブレーカー加熱炉」、「加熱したビスブレーカーフィード」、「ビスブレーカーソーキングドラム」、「ドラム中で粘度低減し、重質炭化水素を軽質生成物に分解」及び「ビスブレーカーソーキングドラムからの流出物」は、それぞれ本件発明3における「全コークス収率を低減させる方法」、ステップ(a)の「炉(55)」、「熱い供給物(56)」、「プレクラッキングリアクター(57)」、「クラッキング反応」及び「(ステップ(b)の)放出される生成材料流(58)」に相当する。
引用発明における「フラッシュ容器」、「低沸点留分」及び「高沸点留分」は、それぞれ本件発明3における「中間セパレーター(59)」、「上部の(62)留分」及び「底部の(63)留分」に相当する。
引用発明における「分留塔」及び「コーカー底部リサイクル」は、それぞれ本件発明3における「主分留装置(61)」及び「主分留装置(61)から得られたより重質な底部の留分(60)」に相当する。
引用発明における「低沸点留分を分留塔の上部セクションに送り」は、本件発明3における「(より軽質な生成物を含有するステップ(c)の)上部の留分(62)を主分留装置(61)に通過させること」に相当する。
引用発明における「コーカー底部リサイクル」、「コーカー加熱炉」及び「加熱した」は、それぞれ本件発明3における「ステップ(c)の底部の留分」、ステップ(e)の「炉(55)」及び「加熱が起き、熱い」に相当する。
引用発明における「高沸点留分をコーカー底部リサイクルと混合し、この混合物」、「加熱した混合物」及び「加熱された流れ」は、「コーカー底部リサイクル」を含むものである点で、それぞれ本件発明3における「ステップ(c)の底部の留分(63)」、「熱い炭化水素流(64)」及び「ステップ(e)の熱い炭化水素流(64)」と共通する。
引用発明における「コークスドラム」、「実質的な分解およびコーキング」、「蒸気塔頂留出物」、「分留塔にて分留」及び「一以上の軽質留分及び芳香族ドナーリサイクル留分」は、それぞれ本件発明3における「コークドラム(65)」、「熱クラッキング反応」、「生成蒸気(66)」、「主分留装置(61)カラムに通過」及び「所望の生成留分」に相当する。
また、引用発明の「ビスブレーカーソーキングドラム」における「ドラム中で粘度低減し、重質炭化水素を軽質生成物に分解」する反応は、本件発明3の「プレクラッキングリアクター(57)」における「穏やかな熱クラッキング反応」に相当し、引用発明の「コークスドラム」における「実質的な分解およびコーキング」は、本件発明3の「コークドラム(65)」における「激しい熱クラッキング反応」に相当し、引用発明の「コークスドラム」は、本件発明3の「予熱したコークドラム(65)」に相当するといえる。
そうすると、両者は
「全コークス収率を低減させる方法であって、(a) 重質炭化水素原料を炉内で加熱し、熱い供給物を得ること;(b) ステップ(a)の熱い供給物をプレクラッキングリアクターに導入すること、ここで、427~470℃の温度範囲での穏やかな熱クラッキング反応が起き、放出される生成材料流を得る;(c) ステップ(b)の放出される生成材料流を中間セパレーターに通過させ、炭化水素を上部のおよび底部の留分に分けること;(d) より軽質な生成物を含有するステップ(c)の上部の留分を主分留装置に通過させること;(e) ステップ(c)の底部の留分を炉に通過させること、ここで、加熱が起き、熱い炭化水素流を得ること;(f) ステップ(e)の熱い炭化水素流を予熱したコークドラムに通過させること、ここで、480~520℃の温度範囲での激しい熱クラッキング反応が起き、生成蒸気を得る;および(g) ステップ(f)の生成蒸気を主分留装置に通過させ、所望の生成留分を得ることのステップを含む、前記方法。」
の点で一致し、
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
(イ)事案に鑑み、まず、相違点8’について検討する。
[相違点8’について]
相違点8’は、上記5.(1)ウ(ア)「本件発明2と引用発明との対比」に記載した相違点10と実質的に同じ内容であるから、同(イ)[相違点10について]において述べた理由と同様な理由から、当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)本件発明3についてのまとめ
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は引用発明及び引用文献1~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明7~13について
本件発明7、9及び10は、本件発明2を引用し、本件発明2の発明特定事項をすべて含むとともに、さらなる発明特定事項により限定された発明である。
また、本件発明8及び11~13は、本件発明3を引用し、本件発明3の発明特定事項をすべて含むとともに、さらなる発明特定事項により限定された発明である。
そうすると、本件発明7~13も実質的に上記相違点5又は5’に係る発明特定事項を含むものであるから、本件発明2又は3と同様の理由により、引用発明及び引用文献1~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 申立人の主張について
申立人は、令和2年3月2日に提出した意見書(1~3頁、3(1)ア~ウ)において、本件発明の技術思想は、引用発明及び引用文献1~3、6に基づいて、当業者が容易になし得たものである旨主張している。
しかしながら、上述したように、本件発明と引用発明とは、具体的な構成が著しく異なる以上、技術思想が重複していたとしても、本件発明を引用発明及び引用文献1~3、6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
キ 理由I(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件発明2、3及び7~13は、いずれも引用発明及び引用文献1~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号には該当しないから、取消理由通知に記載した理由I(進歩性)の取消理由により本件請求項2、3及び7~13に係る特許を取り消すことはできない。
(2)理由II(サポート要件)について
ア 本件発明の課題について
本件発明の課題は、本件明細書の[0011]等の記載を参酌すると、「所望の生成物の全収率の改善および価値が低いコークスの収率の低減をもたらすプロセスを提供すること」にあるものと認められる。
イ 発明の詳細な説明の記載、実施例について
上記課題の解決手段について、本件明細書の[0037]~[0038]及び図2には、本件発明2に相当するプロセスの実施形態が記載され、[0040]~[0041]及び図4には、本件発明3に相当するプロセスの実施形態が記載されている。
また、実施例として、本件明細書の[0049]~[0052]には、「第1の実験を、表1(当審注:[0046])の残油原料を用いてプレクラッカーリアクターについて構想した穏やかな熱クラッキング条件(当審注:[0050]表3)で行」ったこと([0049])、「プレクラッカーリアクターから発生した重質な底部の材料(370℃+)(当審注:[0050]表3末尾)を、分留装置/中間セパレーターにおいて分離し、実験を、この材料を使用してディレードコーキングの条件で(当審注:[0052]表4)ディレードコーカーパイロットプラントにおいて行」い、「主な作動パラメーターおよび対応する個別の生成物収率パターンを、表4(当審注:[0052])に提供」したこと([0051])、「表3および4に提供した実験データから、本発明のプロセススキームの収率が、推測され、表5(当審注:[0054])の規範事例ディレードコーカー収率と比較される」こと([0053])、及び「表5に報告された実験データは、従来のディレードコーキングプロセスに対して、本発明のプロセススキームについて、約7重量%のディーゼル範囲生成物において改善があり、コークスおよび燃料油収率はそれぞれ約4重量%および3重量%の低減があることを示」したこと([0055])が記載されている。
ここで、上記[0050]表3に記載された「プレクラッカーリアクターを使用した、残油原料を用いたパイロットプラント実験」の「プロセス条件」に記載された温度及び圧力は、本件発明3のステップ(b)における温度範囲及び圧力範囲の要件を満たしており、滞留時間は明記されていないが、表3の「生成物収率パターン」において原料(表1)には含まれていなかった370℃以下の留分が生成しているから、「穏やかな熱クラッキング反応が起き」たことを理解することができる。そうすると、上記[0049]~[0050]に記載された「第1の実験」は本件発明3のステップ(b)の具体的な実施形態であると理解することができる。
また、上記[0052]表4に記載された「ディレードコーカー条件で中間セパレーターからの重質な底部の材料(370℃+)を用いたパイロットプラント実験データ」の「プロセス条件」に記載された温度、圧力及び実行時間は、本件発明3のステップ(f)における温度範囲、圧力範囲及び滞留時間の要件を満たしており、表4の「収率」において「中間セパレーターからの重質な底部の材料(370℃)」(表3)には含まれていなかった370℃以下の留分及びコークスが生成しているから、「激しい熱クラッキング反応が起き」たことを理解することができる。また、上記表4の表題等を参酌すると、上記[0051]における「重質な底部の材料(370℃+)を、分留装置/中間セパレーターにおいて分離し」たという記載は、本件発明3のステップ(c)における「ステップ(b)の放出される生成材料流(58)および主分留装置(61)から得られたより重質な底部の留分(60)を中間セパレータ(59)に通過させ、炭化水素を・・・底部の(63)留分に分け」たことに当たるものと理解することができる。そうすると、上記[0051]~[0053]に記載された「ディレードコーカーパイロットプラントにおいて行」われた実験は本件発明3のステップ(c)~(f)の具体的な実施形態であると理解することができる。
これらのことから、本件明細書には、本件の図4に相当する装置を用いて実施される本件発明3の実施例に相当する具体的な実施の形態が記載されているといえる。
ウ 本件発明3についての判断
そして、[0054]表5に記載された「本発明のプロセスにおいて得られた収率および規範事例CU収率の比較」の実験データを参酌すると、[0055]に記載されているとおり、「表5に報告された実験データは、従来のディレードコーキングプロセスに対して、本発明のプロセススキームについて、約7重量%のディーゼル範囲生成物において改善があり、コークスおよび燃料油収率はそれぞれ約4重量%および3重量%の低減があることを示す」ことを理解することができるから、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件発明3が上記課題を解決し得るものであることを理解することができる。
エ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明3のステップ(b)及び(f)とそれぞれ同じ条件で実施されるステップ(b)の「穏やかな熱クラッキング反応」及びステップ(e)の「激しい熱クラッキング反応」を含む方法である。
本件発明2は、「中間セパレーター」を備えていないことから、本件発明2のステップ(e)に送られる留分(重質な底部の留分(30))は、本件発明3のステップ(f)に送られる「より重質な底部の留分(60)」よりも、分留装置の段数は少ないが、クラッキングの条件が共通することを勘案すると、本件発明3と同様にディーゼル範囲生成物において改善があり、コークスおよび燃料油収率はいずれも低減があるものと理解することができるから、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件発明2が上記課題を解決し得るものであることを理解することができるといえる。
オ 本件発明7~13について
本件発明2又は3を引用する本件発明7~13についても、本件発明2又は3と同様の理由により、当業者が上記課題を解決し得ると認識できるものであるから、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
カ 申立人の主張について
申立人は、令和2年3月2日に提出した意見書(3~5頁)において、「訂正後の請求項2(本件発明2)及び請求項3(本件発明3)のいずれにおいても、分留装置と中間セパレーターとの両方をその順番で備えていることを規定していない。すなわち・・・本件発明3は、特許権者の主張とは異なり、中間セパレーターの後に主分留装置を通過させることを規定している。よって、本件発明2、3を裏付ける実施例は、依然として存在しない。」及び「『残油原料』で効果が認められたからといって、他の数多くの『重質炭化水素原料』にも同様な効果が発現するとは推認できない。」と主張している。
しかし、上記5.(2)イ「発明の詳細な説明の記載、実施例について」に記載したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、本件明細書に記載された実施例は本件発明3の実施例に相当するものと理解することができ、図4中のプロセス又は装置に付記された番号と本件訂正後の本件発明3に含まれる発明特定事項に付記された番号との対応関係に鑑みても、分留装置及び中間セパレータ等の位置関係を矛盾することなく理解することができるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明3の実施例に相当する具体例が記載されているといえる。また、当該具体例の実験データ等を勘案すると、本件発明3は、「残油原料」の成分組成に依存することなく、主に所定の穏やかな熱クラッキング反応と激しい熱クラッキング反応とを備えることにより上記本件発明の課題を解決し得るものと理解することができるから、「重質炭化水素」において同様な効果が発現しないとまではいえない。さらに、本件発明2、7~11についても、本件発明3と同じ所定の穏やかな熱クラッキング反応と激しい熱クラッキング反応とを備えるものであることを勘案すると、具体的な実施例が記載されていないからといって、本件発明3と同様の効果が発現しないとまではいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
キ 理由II(サポート要件)のまとめ
以上のとおり、本件発明2、3及び7~13は、いずれも当業者が上記課題を解決し得ると認識できるものであり、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものということができるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
よって、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号には該当しないから、取消理由通知に記載した理由II(サポート要件)の取消理由により、本件請求項2、3及び7~13に係る特許を取り消すことはできない。
6.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
申立人が申し立てた特許異議申立理由は、以下のように整理することができる。
ア 理由1(新規性)
理由1-1(新規性):甲第1号証を主引例とする場合
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由1-2(新規性):甲第2号証を主引例とする場合
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
イ 理由2(進歩性)
理由2-1(進歩性):甲第1号証を主引例とする場合
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証及び甲第3~6号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2-2(進歩性):甲第2号証を主引例とする場合
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証及び甲第3~6号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明並びに周知の技術的事項(甲第1号証等)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
ウ 理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件訂正前の請求項5、6についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(ア)CLO流について
エ 理由4(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件訂正前の請求項1~10についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(ア)ステップ(c)について
<引用文献等一覧>
なお、以下、「甲第1号証」~「甲第6号証」を、それぞれ「甲1」~「甲6」という。まとめて「甲号証」ということもある。
(2)取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由との対応関係
上記特許異議申立理由と上記4.「取消理由(決定の予告)の概要」に記載した取消理由との対応関係は、以下のとおりである。
理由2-2(進歩性):甲第2号証を主引例とする場合
・取消理由通知(決定の予告)の理由I(進歩性)に対応
(3)取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
ア 理由1-1(新規性)及び理由2-1(進歩性):甲第1号証を主引例とする場合について
(ア)甲号証に記載された事項
甲1(引用文献1)~甲6(引用文献6)に記載された事項は、上記5.(1)ア「引用文献及びその記載事項」に摘記したとおりである。
(イ)甲1に記載された発明
甲1の請求項1(摘記1-1)には、当該請求項1に記載された事項により特定される「遅延炭化法」の発明が記載されており、請求項5(摘記1-1)には、請求項1における原料油が、「減圧残油、常圧残油、重質原油、減圧軽油、脱油アスファルト、脱歴油、残油水素化重油、熱分解残油、潤滑油を精製した抽出油、接触分解した循環油や分解残油、エチレン分解残油およびコールタールピッチのうち1種類以上である」ことが記載されている。また、甲1の[0011](摘記1-2)には、「本発明の工程を使用すれば、遅延炭化における液体製品の収率向上、コークス収率の低減、および遅延炭化装置の稼働時間延長とともに、設備投資の削減も図れる」ことが記載されているから、上記「遅延炭化法」は、「全コークス収率を低減させる方法」であるといえる。
そうすると、甲1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「全コークス収率を低減させる方法であって、1) 原料油と循環油を混合してから加熱炉の対流室、または対流室と放射室に入れて360℃~460℃まで加熱した後、減粘反応装置に入れ、減粘反応装置の頂部においてゲージ圧0.45~3.0MPa及び滞留時間6~210minの条件下で分解反応を起こさせる手順と、2) 減粘反応装置の上部から出て来たオイルガスを手順1)で述べた加熱炉の放射室に入れて480℃~515℃まで加熱した後、コーキング塔に入れてコーキング反応を起こさせ、コーキング塔の塔頂におけるゲージ圧を0.103~1.0MPaとして、充填時間を3~48hrとし、コーキング塔から出た高温のオイルガスをコーキング分留塔へ送って分留し、コーキング分留塔の底部から循環油を抽出して、循環油の一部または全部を炭化循環油として原料油と混合し、炭化循環油と原料油の重量比を0~1.0:1.0とする手順とが含まれ、前記原料油が減圧残油、常圧残油、重質原油、減圧軽油、脱油アスファルト、脱歴油、残油水素化重油、熱分解残油、潤滑油を精製した抽出油、接触分解した循環油や分解残油、エチレン分解残油およびコールタールピッチのうち1種類以上である、前記方法。」(以下、「甲1発明」という。)
(ウ)本件発明2について
(ウ-1)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「原料油」は「減圧残油、常圧残油、重質原油、減圧軽油、脱油アスファルト、脱歴油、残油水素化重油、熱分解残油、潤滑油を精製した抽出油、接触分解した循環油や分解残油、エチレン分解残油およびコールタールピッチのうち1種類以上」であるから、減圧残油等の重質な炭化水素を成分として含み得るものであり、また、甲1発明における「循環油」は、「コーキング分留塔の底部から・・・抽出」されるものであるから、重質な炭化水素を含むものと解されるものであり、そうすると、甲1発明において加熱炉に送られる「原料油と循環油を混合」したものは、「重質炭化水素」を成分として含むものである点で、本件発明2の「重質炭化水素原料(19)」と共通する。
甲1の図1(摘記1-5)及びその説明([0034](摘記1-4))等を参酌すると、甲1発明における「全コークス収率を低減させる方法」、「加熱炉」、「減粘反応装置」、「分解反応」及び「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」は、それぞれ本件発明2における「全コークス収率を低減させる方法」、ステップ(a)の「炉(20)」、「プレクラッキングリアクター(22)」、「熱クラッキング反応」及び「(ステップ(b)の)放出される生成材料流(23)」に相当する。
甲1発明における「手順1)で述べた加熱炉」、「コーキング塔」、「コーキング反応」、「コーキング塔から出た高温のオイルガス」、「コーキング分留塔」及び「送って分留」は、それぞれ本件発明2におけるステップ(d)の「炉(20)」、「コークドラム(32)」、「熱クラッキング反応」、「(ステップ(e)の)生成蒸気(33)」、「主分留装置(24)」及び「カラムに通過」に相当する。
甲1発明における「コーキング分留塔の底部から循環油を抽出」は、本件発明2における「重質な底部の留分(30)に分留」に相当し、甲1発明における上記抽出された「循環油」は、本件発明2における「所望の生成留分」に相当する。
甲1発明において「コーキング塔」に入れられる「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」は、本件発明2において「コークドラム(32)」に通過させる「ステップ(d)の熱い炭化水素流(31)」と、「炭化水素流」である点で共通する。
甲1発明において「コーキング分留塔」へ送られる「コーキング塔から出た高温のオイルガス」は、本件発明2において「主分留装置(24)に通過させる「ステップ(b)の放出される生成材料流(23)」及び「ステップ(e)の生成蒸気(33)」と、「炭化水素流」である点で共通する。
また、甲1発明の「加熱炉」による「減粘反応装置」手前の加熱温度「360~460℃」並びに減粘反応装置の頂部におけるゲージ圧「0.45~3.0MPa」(4.59~30.59kg/cm2)及び滞留時間「6~210分」は、本件発明2の「プレクラッキングリアクター(22)」における「350~470℃」の温度範囲、「1~15Kg/cm2」の圧力範囲及び「1~40分」の滞留時間範囲と重複していることから、甲1発明の「減粘反応装置」における「分解反応」は、本件発明2の「プレクラッキングリアクター(22)」における「穏やかな熱クラッキング反応」に相当する。また、甲1発明の「加熱炉」による「コーキング塔」手前の加熱温度「480~515℃」並びにコーキング塔の塔頂におけるゲージ圧「0.013~1.0MPa」(1.05~10.20kg/cm2)及び充填時間「3~48hr」は、本件発明2の「コークドラム(32)」における「470~520℃」の温度範囲、「0.5~5Kg/cm2」の圧力範囲及び「10時間を超える」滞留時間と重複していることから、甲1発明の「コーキング塔」における「コーキング反応」は、本件発明2の「コークドラム(32)」における「激しい熱クラッキング反応」に相当し、また、そのような反応を起こす甲1発明の「コーキング塔」は、本件発明2の「予熱したコークドラム(32)」に相当するといえる。
そうすると、両者は、
「全コークス収率を低減させる方法であって、(a) 重質炭化水素原料を炉内で加熱し、熱い供給物を得ること;(b) ステップ(a)の熱い供給物をプレクラッキングリアクターに導入すること、ここで、360~460℃の温度範囲、4.59~15Kg/cm2の圧力範囲及び6~40分の滞留時間範囲での穏やかな熱クラッキング反応が起き、放出される生成材料流を得る;(d) 炭化水素流を炉に通過させ、熱い炭化水素流を得ること;(e) ステップ(d)の熱い炭化水素流を予熱したコークドラムに通過させること、ここで、480~515℃の温度範囲、1.05~5Kg/cm2の圧力範囲及び10時間超~48時間の滞留時間での激しい熱クラッキング反応熱クラッキング反応が起き、生成蒸気を得る;および(f) ステップ(e)の生成蒸気を主分留装置に通過させ、所望の生成留分を得ることのステップを含む、前記方法。」
の点で一致し、
相違点1”:ステップ(b)の熱クラッキング反応が、本件発明2においては「350~470℃」の温度範囲、「1~15Kg/cm2」の圧力範囲及び「1~40分」の滞留時間範囲で行われるのに対し、甲1発明の減粘反応装置における分解反応は「360~460℃」の温度範囲、「0.45~3.0MPa」(4.59~30.59kg/cm2)の圧力範囲及び「6~210分」の滞留時間範囲で行われる点
相違点2”:ステップ(e)の熱クラッキング反応が、本件発明2においては「470~520℃」の温度範囲、「0.5~5Kg/cm2」の圧力範囲及び「10時間を超える」滞留時間で行われるのに対し、甲1発明のコーキング塔におけるコーキング反応は「480~515℃」の温度範囲、「0.013~1.0MPa」(1.05~10.20kg/cm2)の圧力範囲及び「3~48hr」の滞留時間で行われる点
相違点3”:本件発明2は「ステップ(b)の放出される生成材料流(23)」を「主分留装置(24)」に通過させ、「重質な底部の留分(30)に分留」し、それを「熱い炭化水素流(31)」とした後、「コークドラム(32)」に通過させるのに対し、甲1発明は「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」を、分留することなく加熱した後、「コーキング塔」に入れる点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
(ウ-2)相違点3”について
事案に鑑み、まず、相違点3”について検討する。
(ウ-2-1)新規性について
甲1には、「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」を直後に分留することは記載も示唆もされていないから、相違点3”は実質的な相違点であり、本件発明2は甲1発明ではない。
(ウ-2-2)進歩性について
甲1の[0003]~[0007](摘記1-2)には、遅延炭化法における従来技術の課題について、「加工する重油の粘度、残留炭素、アスファルテン含有量などの増大に伴って、遅延炭化装置の操作上で課題が生じ、製品分布が悪くなるだけでなく、加熱炉の炉管内におけるコーキングがさらに顕著化し、装置の長期的な運転が妨げられていること」が記載され、甲1発明の課題及び解決手段について、「本発明では、・・・減粘と炭化という2種類の工程を有機的に結び付けて重油を処理する・・・遅延炭化における液体製品の収率向上、コークス収率の低減、および遅延炭化装置の稼働期間延長とともに、設備投資の削減も図れる」ことが記載されている。
そして、当該課題を解決するための具体的な手段の一つとして、甲1の[0023]~[0028](摘記1-3)には、上記相違点3”に係る「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」に関して、「炭化の投入材料を減粘してから加熱炉の放射室に入れて加熱すると、加熱炉放射室における投入材料の粘度が顕著に低下するうえ、減粘後に発生する低沸点留分(ガスを含む)が放射炉管内で優先的に気化され得るので、放射室の炉管内における物質の流速が向上するだけでなく、放射室の炉管内における物質の流動状態も改善されるため、放射室内におけるコーク前駆体の生成や堆積が抑制され、遅延炭化装置の運転期間が延長される」こと、及び「炭化の投入材料の減粘後に発生する低沸点留分は水素含有量が比較的に高く、良好な水素供与体や希釈剤となるため、加熱炉放射室における投入材料の性質が最適化される」ことが記載されている。
そうすると、甲1発明においては、低沸点留分を含んだ炭化原料を加熱炉及びコーキング塔に入れることが、コークス収率の低減、装置の稼働期間延長等の課題解決のために必須の技術的事項であると理解することができるから、甲1発明において、上記相違点3”に係る「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」を、分留することなく加熱した後コーキング塔に入れることに代えて、重質な底部の留分に分留してから加熱しコーキング塔に入れるように変更することには、阻害要因があるといえる。
また、甲2~6に記載された事項及び周知の技術的事項を参酌しても、当業者が上記阻害要因を超えて甲1発明において相違点3”に相当する工程を採用することに容易に想到し得るものとは認められない。
(ウ-3)本件発明2の効果について
本件明細書の[0010]には、「あらゆる形の外部添加剤を使用せずに、熱クラッキングプロセスから収率パターンを改善する能力があるプロセスを有することが望ましい」こと、及び本件発明により「所望の生成物の全収率の改善および価値が低いコークスの収率の低減をもたらすプロセスを提供する」ことができることが記載されているところ、甲1~甲6に記載された事項及び本件特許に係る出願の優先日における技術常識を参酌しても、本件発明2の方法によりコークスの収率の低減等の効果が得られることは、当業者が予測し得ることとはいえない。
(ウ-4)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(21頁)において、「本件発明2は、ステップ(c)としてステップ(b)の放出される生成材料流を主分留装置に通過させること、ここで、それは重質な底部の留分に分留したことを規定する。
しかし、この規定も、ディレードコーキング(遅延炭化)やビスブレーキング(粘度低減)プロセスにおいて、当業者にとってよく知られた事項であるか、少なくとも当業者であれば容易に想到し得る事項に過ぎない。
例えば、甲3においても、・・・ビスブレーカー(粘度低減装置)10からの生成材料を・・・分留塔28にて分留され、重質分は・・・ディレードコークドラム・・・に送られている」と主張している。
しかし、上記6.(3)ア(ウ)(ウ-2)「相違点3”について」に記載したとおり、甲1発明における「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」を、「重質な底部の留分」に分留してからコーキング塔に入れるように変更することには阻害要因があるから、甲3等の記載を参酌しても、甲1発明において相違点3”に相当する工程を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(ウ-5)本件発明2についてのまとめ
以上のとおり、相違点3”については、甲1に記載された事項ではなく、かつ、甲1発明及び甲1~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができた事項とは認められない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものではない。
また、本件発明2は、甲1発明及び甲1~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
(エ)本件発明3について
(エ-1)本件発明3と甲1発明との対比
本件発明3は、本件発明2におけるステップ(c)に代えて、中間セパレーターを使用するステップ(c)及び(d)を有する点以外は、本件発明2と同様のステップを含む発明である。
そこで、上記6.(3)ア(ウ)(ウ-1)「本件発明2と甲1発明との対比」を踏まえて、本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、
「全コークス収率を低減させる方法であって、(a) 重質炭化水素原料を炉内で加熱し、熱い供給物を得ること;(b) ステップ(a)の熱い供給物をプレクラッキングリアクターに導入すること、ここで、360~460℃の温度範囲、4.59~15Kg/cm2の圧力範囲及び6~40分の滞留時間範囲での穏やかな熱クラッキング反応が起き、放出される生成材料流を得る;(e) 炭化水素流を炉に通過させ、熱い炭化水素流を得ること;(f) ステップ(e)の熱い炭化水素流を予熱したコークドラムに通過させること、ここで、480~515℃の温度範囲、1.05~5Kg/cm2の圧力範囲及び10時間超~48時間の滞留時間での激しい熱クラッキング反応熱クラッキング反応が起き、生成蒸気を得る;および(g) ステップ(f)の生成蒸気を主分留装置に通過させ、所望の生成留分を得ることのステップを含む、前記方法。」
の点で一致し、
相違点1’’’:ステップ(b)の熱クラッキング反応が、本件発明3においては「350~470℃」の温度範囲、「1~15Kg/cm2」の圧力範囲及び「1~40分」の滞留時間範囲で行われるのに対し、甲1発明の減粘反応装置における分解反応は「360~460℃」の温度範囲、「0.45~3.0MPa」(4.59~30.59kg/cm2)の圧力範囲及び「6~210分」の滞留時間範囲で行われる点
相違点2’’’:ステップ(f)の熱クラッキング反応が、本件発明3においては「470~520℃」の温度範囲、「0.5~5Kg/cm2」の圧力範囲及び「10時間を超える」滞留時間で行われるのに対し、甲1発明のコーキング塔におけるコーキング反応は「480~515℃」の温度範囲、「0.013~1.0MPa」(1.05~10.20kg/cm2)の圧力範囲及び「3~48hr」の滞留時間で行われる点
相違点3’’’:本件発明3は「ステップ(b)の放出される生成材料流(58)および主分留装置(61)から得られたより重質な底部の留分(60)」を「中間セパレーター(59)」に通過させ、「炭化水素を上部の(62)および底部の(63)留分に分」け、当該「底部の留分(63)」を「熱い炭化水素流(64)」とした後、「コークドラム(65)」に通過させるのに対し、甲1発明は「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」を、分留することなく加熱した後、「コーキング塔」に入れる点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
(エ-2)相違点3’’’について
事案に鑑み、まず、相違点3’’’について検討する。
上記相違点3’’’に係る本件発明3の「中間セパレーター(59)」は、炭化水素流を分留し、「底部の留分」だけを「熱い炭化水素流(64)」とした後、「コークドラム(65)」に通過させる点で、本件発明2における「主分留装置(24)」と共通するものである。
そこで、上記6.(3)ア(ウ)(ウ-2)「相違点3”について」における検討を踏まえると、甲1には、「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」を直後に分留することは記載も示唆もされていないから、相違点3’’’は実質的な相違点である。
また、甲1発明における「減粘反応装置の上部から出て来たオイルガス」を、「重質な底部の留分」に分留してからコーキング塔に入れるように変更することには阻害要因があるから、甲1~6に記載された事項及び周知の技術的事項を参酌しても、当業者が上記阻害要因を超えて甲1発明において相違点3’’’に相当する工程を採用することに容易に想到し得るものとは認められない。
(エ-3)本件発明3についてのまとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものではない。
また、本件発明3は、甲1発明及び甲1~甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
(オ)本件発明7~13について
本件発明7、9及び10は、本件発明2を引用し、本件発明2の発明特定事項をすべて含むとともに、さらなる発明特定事項により限定された発明である。
また、本件発明8及び11~13は、本件発明3を引用し、本件発明3の発明特定事項をすべて含むとともに、さらなる発明特定事項により限定された発明である。
そうすると、本件発明7~13も実質的に上記相違点3”又は3’’’に係る発明特定事項を含むものであるから、本件発明2又は3と同様の理由により、甲1発明及び引用文献1~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ)理由1-1(新規性)及び理由2-1(進歩性):甲第1号証を主引例とする場合のまとめ
以上のとおり、本件発明2、3及び7~13は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、いずれも甲1発明及び引用文献1~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号には該当しないから、特許異議申立書に記載された理由1-1(新規性)及び理由2-1(進歩性)により本件請求項2、3及び7~13に係る特許を取り消すことはできない。
イ 理由1-2(新規性):甲第2号証を主引例とする場合について
上記5.(1)「理由I(進歩性)について」における検討を踏まえると、本件発明2、3、7~13は、相違点5又は5’の点で甲2発明と相違するから、いずれも甲2に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
よって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号には該当しないから、特許異議申立書に記載された理由1-2(新規性)により本件請求項2、3及び7~13に係る特許を取り消すことはできない。
ウ 理由3(サポート要件)について
申立人は、特許異議申立書(25頁)において、
「本件発明5及び6は、炭化水素原料や中間留分を、CLOと混合することを規定する。・・・しかし、実施例を参照しても、・・・CLO流と混合した実施例は見当たらない。よって、本件発明5、6は、実施例で裏付けられていない不当に広い範囲を請求しており、サポート要件を満たさない。」と主張している。
しかし、上記2.「訂正請求について」に記載したとおり、本件訂正により請求項5及び6はいずれも削除されたから、理由3(サポート要件)については、対象請求項が存在しないものとなったため採用できない。
エ 理由4(明確性)について
(エ-1)理由4(明確性)の内容
申立人は、特許異議申立書(25~26頁)において、
「本件発明1、2、3は、ステップ(c):A)生成材料を、主分留装置に直接移送すること、又はB)生成材料を、中間セパレーターを介して主分留装置に移送することを規定し、本件発明2は、前者A・・・を規定し、本件発明3は、後者B・・・を規定している。一方、本件明細書の実施例を参照すると、「分留装置/中間セパレーターにおいて分離し」と記載され、上記A)、B)のいずれによって行ったのか理解できない。したがって、本件発明1、2、3(及び本件発明4~10)は、本件明細書との関係で不明確である。」と主張している。
(エ-2)本件発明3について
しかし、上記5.(2)イ「発明の詳細な説明の記載、実施例について」における検討を踏まえると、本件明細書の[0051]に「分留装置/中間セパレーターにおいて分離し」と記載されているのは、本件発明3のステップ(c)における「ステップ(b)の放出される生成材料流(58)および主分留装置(61)から得られたより重質な底部の留分(60)を中間セパレータ(59)に通過させ、炭化水素を・・・底部の(63)留分に分け」たことに当たるものと理解することができるから、本件発明3の発明特定事項が本件明細書との関係で不明確であるとまではいえない。
(エ-3)本件発明2について
また、上記のとおり、本件明細書の[0051]の記載は、本件発明3の具体例であって、本件発明2の具体例ではないことを当業者は理解することができるから、本件発明2の発明特定事項が本件明細書との関係で不明確であるとまではいえない。
(エ-4)本件発明7~13について
本件発明2又は3を引用する本件発明7~13についても、本件発明2又は3と同様の理由により、その発明特定事項が本件明細書との関係で不明確であるとまではいえない。
(エ-5)理由4(明確性)のまとめ
以上のとおり、本件発明2、3及び7~13はいずれも明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
よって、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号には該当しないから、特許異議申立書に記載された理由4(明確性)により、本件請求項2、3及び7~13に係る特許を取り消すことはできない。
7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件請求項2、3及び7~13に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項2、3及び7~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項1及び4~6に係る特許は訂正により削除され、本件特許の請求項1及び4~6に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2019-700011