特許訂正審判
2019-390070
定着装置および画像形成装置
- 審判番号
- 2019-390070
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2017-134935
- 登録番号
- 特許第6432853号(P6432853)
- 請求日
- 2019年06月19日
- 審決日
- 2019年07月30日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 リコー
- 【請求人代理人】城村 邦彦
- 審判長/審判官
- 審判長 尾崎 淳史
- 審判官 塚本 丈二
- 審判官 清水 康司
- 分類
- P141 .851-Y (G03G) / P141 .853-Y (G03G) / P141 .854-Y (G03G) / P141 .856-Y (G03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6432853号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第6432853号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6432853号は、平成24年1月11日に出願した特願2012-3264号の一部を、平成28年4月28日に新たな特許出願とした特願2016-91102号の一部を、平成29年7月10日に新たな特許出願とした特願2017-134935号について、平成30年11月16日にその特許権の設定登録がされ、令和元年6月19日付けで訂正審判の請求がされたものである。
第2 請求の趣旨
特許第6432853号の特許請求の範囲を本審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める。
第3 本件訂正事項
本件訂正事項は、特許請求の範囲の
「【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトを加熱する加熱部材と、
前記定着ベルトの内側に配設されたニップ形成部材と、
前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより前記定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体と、
前記定着ベルトをその軸方向両端部で保持し前記定着ベルトを軸方向両端部間で保持しないベルト保持部材とを有する定着装置において、
前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部を有し、
前記定着ベルトの軸方向端部の軸方向外側で前記ベルト保持部材の筒部の外周に回転可能に嵌められた保護部材を有し、軸方向から見たときに前記保護部材の外周は、前記定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向回転体側にあり、
前記対向回転体と前記ベルト保持部材の筒部とが、軸方向でオーバーラップすることなく前記ベルト保持部材の筒部と前記対向回転体とは軸方向に離間した状態で配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ベルト保持部材から張り出したフランジ部が、前記定着ベルトの軸方向移動時にその軸方向移動を規制可能であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記保護部材が、前記定着ベルトと連れ回り可能である請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記ベルト保持部材の前記筒部の先端と、前記対向回転体の端部とは軸方向に離間した状態で配置されている請求項1~3何れか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記軸方向の離間距離を5mm以上にした請求項4記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着ベルトに、前記対向回転体および前記ベルト保持部材の双方と接触しない軸方向領域を設けた請求項1~5何れか1項記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着ベルトに、前記対向回転体、前記ベルト保持部材、および前記ニップ形成部材の何れとも接触しない軸方向領域を設けた請求項1~5何れか1項記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ形成部材の端部は前記対向回転体の端部よりも軸方向中央側にある請求項1~7の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ニップ形成部材を支持する支持部材を有し、前記ニップ形成部材の端部は前記支持部材の端部よりも軸方向中央側にある請求項1~7の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記定着ベルトを、前記対向回転体に対して従動回転させる請求項1~9何れか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記筒部の外周面形状を非真円形状にした請求項1記載の定着装置。
【請求項12】
前記ニップ部の下流端で前記ニップ形成部材を前記対向回転体側に突出させた請求項1~11何れか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記ベルト保持部材から張り出したフランジ部の端面と前記対向回転体の端部との間の軸方向距離から前記保護部材の厚さを差し引いた値が10mm以上である請求項1~12何れか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記定着ベルトが、金属材料で形成された基材を有する請求項1~13何れか1項に記載の定着装置。
【請求項15】
請求項1~14の何れかに記載した定着装置を備える画像形成装置。」を、
「【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトを加熱する加熱部材と、
前記定着ベルトの内側に配設されたニップ形成部材と、
前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接することにより前記定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体と、
前記定着ベルトをその軸方向両端部で保持し前記定着ベルトを軸方向両端部間で保持しないベルト保持部材とを有する定着装置において、
前記ベルト保持部材が、前記定着ベルトの軸方向端部の内側に配設される筒部を有し、
前記定着ベルトの軸方向端部の軸方向外側で前記ベルト保持部材の筒部の外周に回転可能に嵌められた保護部材を有し、軸方向から見たときに前記保護部材の外周の一部は、前記定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向回転体側にあり、
前記対向回転体と前記ベルト保持部材の筒部とが、軸方向でオーバーラップすることなく前記ベルト保持部材の筒部と前記対向回転体とは軸方向に離間した状態で配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ベルト保持部材から張り出したフランジ部が、前記定着ベルトの軸方向移動時にその軸方向移動を規制可能であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記保護部材が、前記定着ベルトと連れ回り可能である請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記ベルト保持部材の前記筒部の先端と、前記対向回転体の端部とは軸方向に離間した状態で配置されている請求項1~3何れか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記軸方向の離間距離を5mm以上にした請求項4記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着ベルトに、前記対向回転体および前記ベルト保持部材の双方と接触しない軸方向領域を設けた請求項1~5何れか1項記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着ベルトに、前記対向回転体、前記ベルト保持部材、および前記ニップ形成部材の何れとも接触しない軸方向領域を設けた請求項1~5何れか1項記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ形成部材の端部は前記対向回転体の端部よりも軸方向中央側にある請求項1~7の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ニップ形成部材を支持する支持部材を有し、前記ニップ形成部材の端部は前記支持部材の端部よりも軸方向中央側にある請求項1~7の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記定着ベルトを、前記対向回転体に対して従動回転させる請求項1~9何れか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記筒部の外周面形状を非真円形状にした請求項1記載の定着装置。
【請求項12】
前記ニップ部の下流端で前記ニップ形成部材を前記対向回転体側に突出させた請求項1~11何れか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記ベルト保持部材から張り出したフランジ部の端面と前記対向回転体の端部との間の軸方向距離から前記保護部材の厚さを差し引いた値が10mm以上である請求項1~12何れか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記定着ベルトが、金属材料で形成された基材を有する請求項1~13何れか1項に記載の定着装置。
【請求項15】
請求項1~14の何れかに記載した定着装置を備える画像形成装置。」
に訂正するものである。なお、下線部分が訂正箇所である。
第4 当審の判断
1 訂正の目的の適否について
(1) 訂正前の請求項1に係る特許発明では、定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも対向回転体側にある「保護部材の外周」が、「保護部材の外周の全部」であるのか「保護部材の外周の一部」であるのか特定されていない。
それに対して、訂正後の請求項1に係る特許発明では、定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも対向回転体側にある「保護部材の外周」が、「保護部材の外周の一部」に限定されており、本件訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
(2) また、訂正前の請求項1の記載では、「保護部材の外周」の一部が、定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向回転体側にあることが明瞭でなかったが、本件訂正事項によって、「保護部材の外周の一部」が、定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも前記対向回転体側にあることが明らかになっている。
したがって、本件訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第3項に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものとも認められる。
2 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
(1) 上記1(1)で検討したとおり、本件訂正事項を、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解した場合には、「保護部材の外周」の全部が、定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも対向回転体側にあることも、「保護部材の外周」の一部が、定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも対向回転体側にあることも包含していた訂正前の請求項1の記載を、「保護部材の外周の一部」が、定着ベルトと当接するニップ形成部材の面よりも対向回転体側にあるものに減縮するものであるから、本件訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 上記1(2)で検討したとおり、本件訂正事項を、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解した場合には、訂正前後で実質的な内容に差がないことから、本件訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) したがって、本件訂正事項は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものか否かについて
願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(1) 「【0033】
次に、図2に基づき、上記定着装置20の構成について説明する。
図2に示すように、定着装置20は、回転可能な定着回転体としての定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して回転可能に設けられた対向回転体としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内側に配設されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ27と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28と、定着ベルト21の両端部を保持するベルト保持部材40(図3(a)~(c)参照)と、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する図示しない加圧手段等を備えている。
【0034】
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0035】
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22の表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。」
(2) 「【0058】
図3(a)(b)に示すように、定着ベルト21の軸方向端面とそれに対向するベルト保持部材40の対向面(フランジ部40bの端面401)との間には、定着ベルト21の端部を保護する保護部材としてのスリップリング41が配置されている。これにより、定着ベルト21に軸方向の寄りが生じた場合に、定着ベルト21の端部がベルト保持部材40のフランジ部40bの端面401に直接当接するのを防止することができ、端部の摩耗や破損を防ぐことができる。スリップリング41は、ベルト保持部材40の円筒部40aの外周に余裕を持って嵌められているため、定着ベルト21の端部がスリップリング41に接触した際に、スリップリング41は定着ベルト21と連れ回り可能となっている。この時、スリップリング41を連れ回りさせる必要は必ずしもなく、スリップリング41が静止していても構わない。スリップリング41の材料としては、耐熱性に優れたいわゆるスーパーエンジニアプラスチック、例えば、PEEK、PPS、PAI、PTFE等を適用することが好ましい。」
(3) 上記(1)の記載から、つぎのア及びイがいえる。
ア 加圧ローラ22は、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接することから、定着ベルト21と当接するニップ形成部材24の面よりも、加圧ローラ22側にある定着ベルト21の部分が存在する。
イ 定着ベルト21はニップ形成部材24の内側に配設されることから、定着ベルト21と当接するニップ形成部材24の面よりも、加圧ローラ22とは反対側にある定着ベルト21の部分も存在する。
(4) また、上記(2)の記載から、保護部材であるスリップリング21は、定着ベルト21の端部が、接触することで、定着ベルト21の端部がベルト保持部材40のフランジ部40bの端面401に直接当接するのを防止することができ、端部の摩耗や破損を防ぐことができるという作用機能から鑑みて、スリップリング21は、定着ベルト21の全周にわたって存在するものと認められる。
(5) 上記(3)及び(4)から、定着ベルト21の全周にわたって存在するスリップリング21も、定着ベルト21と当接するニップ形成部材24の面よりも加圧ローラ22側と、それと反対側の両方に存在することは、明らかである。
よって、本件訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
4 独立特許要件について
上記1(1)で検討したとおり、本件訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正と認めることもできるので、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか検討したところ、訂正後の請求項1ないし15に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする新たな理由はない。
したがって、本件訂正事項は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
5 むすび
したがって、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5ないし7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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