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特許訂正審判

2019-390002

Snめっき鋼板及び化成処理鋼板並びにこれらの製造方法

審判番号
2019-390002
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2016-540711外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年01月10日
審決日
2019年06月10日
公報発行日
2019年09月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P141 .852-Y (C25D) / P141 .856-Y (C25D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6098763号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第6098763号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件訂正審判請求に係る特許第6098763号(以下、「本件特許」という。)は、2016年(平成28年) 2月 8日(優先権主張 平成27年 2月 6日)を国際出願日とする特願2016-540711号の請求項1~5に係る発明について、平成29年 3月 3日に特許権の設定登録がされ、平成31年 1月10日付けで本件訂正審判の請求がされたものである。 その後、同年 3月26日付けで当審から訂正拒絶理由が通知されたところ、同年 4月23日付けで審判請求人から意見書が提出されたものである。 第2 請求の趣旨及び訂正事項 1 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は「特許第6098763号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。 2 訂正事項 本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1、2のとおりである。なお、下線は、審判請求人が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「C:粉末X線回折により求める配向面のピーク強度測定値(cps) D:粉末X線回折による(200)面、(101)面、(211)面、(301)面、 (112)面、(400)面、(321)面、(420)面、(411)面、(312)面、 (501)面のピーク強度の測定値の和(cps)」とあるのを、 「C:粉末X線回折により求める配向面のピーク強度理論値(cps) D:粉末X線回折による(200)面、(101)面、(211)面、(301)面、 (112)面、(400)面、(321)面、(420)面、(411)面、(312)面、 (501)面のピーク強度の理論値の和(cps)」に訂正する。 (請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2と3も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に、 「C:粉末X線回折により求める配向面のピーク強度測定値(cps) D:粉末X線回折による(200)面、(101)面、(211)面、(301)面、 (112)面、(400)面、(321)面、(420)面、(411)面、(312)面、 (501)面のピーク強度の測定値の和(cps)」とあるのを、 「C:粉末X線回折により求める配向面のピーク強度理論値(cps) D:粉末X線回折による(200)面、(101)面、(211)面、(301)面、 (112)面、(400)面、(321)面、(420)面、(411)面、(312)面、 (501)面のピーク強度の理論値の和(cps)」に訂正する。 (請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。) 第3 訂正の適否についての当審の判断 1 本件訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 a)訂正事項1に係る本件訂正は、請求項1の「X=(A/B)/(C/D)・・・(1)」における「C」及び「D」の定義について、「ピーク強度測定値」を「ピーク強度の理論値」に訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項1には上記「C」及び「D」の定義として「ピーク強度測定値」という記載はあるものの「ピーク強度理論値」という記載はない。 b)一方、本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0012】には、 「 」 と記載されており、当該記載は本件訂正前の請求項1の記載と整合しない。 c)そこで、上記「C」及び「D」の定義として、本件訂正前の請求項1に記載される「ピーク強度測定値」及び上記【0012】に記載される「ピーク強度理論値」のそれぞれの記載に接した当業者が、いずれが技術的に誤りであり、いずれが正しい記載であると認識するかについて検討する。 d)「X=(A/B)/(C/D)」として示される「X:結晶配向指数」は、同【0031】、【0032】の記載によれば、「β-Sn」の結晶構造を持つ「Snめっき層」の結晶配向を示すものであり、同【0035】には、「結晶配向指数Xは結晶が配向していない状態の粉末X線回折との相対的なピーク強度比率から求められる」と記載されている。 e)また、実施例における「結晶配向指数の測定」において、同【0077】には、上記「C」及び「D」を「ピーク強度理論値」とした式が記載され、その他の箇所を参照しても、上記「C」及び「D」に相当するピーク強度値を粉末X線回折により実際に測定したとの記載はない。 f)そうすると、上記「X」は、Snめっき層についてX線回折により測定した「ピーク強度測定値」に係る分子「A/B」について、相対的な配向性を評価するために、配向していない場合の「ピーク強度理論値」に係る分母「C/D」と対比するものであるといえる。 g)したがって、当業者にとって、上記「C」及び「D」の定義として、本件訂正前の請求項1に記載される「ピーク強度測定値」との記載が誤記であり、上記【0012】に記載される「ピーク強度理論値」が正しい記載であると当然に認識するものといえるから、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 a)本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0012】には、 「 」 と記載されている。 b)したがって、訂正事項1に係る本件訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 a)上記アで述べたとおり、上記「C」及び「D」の定義として、本件訂正前の請求項1に記載される「ピーク強度測定値」との記載は明らかな誤記であり、当業者は「ピーク強度理論値」と当然に認識するものであれば、訂正事項1に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。 b)ここで、当審は、平成31年 3月26日付け訂正拒絶理由通知において、「(粉末X線回折により求める)ピーク強度測定値とピーク強度理論値の数値が実質的に変わるものである場合にはこの限りでない」旨通知したが、これは、訂正前の「ピーク強度測定値」を訂正後に「ピーク強度理論値」とした場合に、「ピーク強度測定値」と「ピーク強度理論値」とで、式の値が変化するようなことがあれば、第三者に予測できない不利益を与えることになるため、そのような場合には、当該訂正により特許請求の範囲が変更されたことになるので、当該訂正は認められない旨を指摘したものである。 しかし、下記2(1)に示すとおり、結晶配向指数の算出において、標準試料について粉末X線回折により測定した値として知られるASTMカードやJCPDSカード等から得たものを「ピーク強度理論値」として扱うことが技術常識であると認められるから、粉末X線回折により求める「ピーク強度測定値」と同「ピーク強度理論値」の数値は実質的に変わるものでないといえる。 c)したがって、訂正事項1に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2に係る本件訂正の内容は、訂正事項1に係る本件訂正の内容と実質的に同一である。 イ したがって、前記(1)で検討したのと同様の理由により、訂正事項2に係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。 2 独立特許要件 (1)上記のとおり、訂正事項1、2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであるので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。 ア 平成31年 3月26日付け訂正拒絶理由通知について a)当審は、訂正拒絶理由として、以下に示すように明確性要件及び実施可能要件を満たさない旨通知した。 (明確性要件及び実施可能要件に係る訂正拒絶理由の概要) 「ア 本件訂正後の請求項1、4に係る発明における「C:粉末X線回折により求める配向面のピーク強度理論値(cps)」及び「D:粉末X線回折による(200)面・・・(501)面のピーク強度の理論値の和(cps)」(「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)という記載について、「粉末X線回折」は測定手段である一方、当該手段で求めるピーク強度を「理論値」とするものであるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、【0035】を含め、上記「ピーク強度理論値」の具体的な定義が記載されていないことから、標準物質の粉末X線回折の測定値(実測値)を用いて算出した値を「理論値」というのか、粉末X線回折の値を含め全ての値を理論的に算出した値であるのか等の点で、どのような値を「ピーク強度理論値」というのか明らかでないので、本件訂正後の請求項1~5に係る発明は明確でない。 イ また、上記のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記「ピーク強度理論値」を如何なる手段で取得するのかについて何ら記載されていないことから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正後の請求項1~5に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。」 b)これに対して審判請求人が提出した平成31年 4月23日付け意見書において引用する下記参考文献1~5には、以下の記載がある。(「・・・」は記載の省略を表し、下線は強調のために当審が付した。以下同様。) ○参考文献1:渡辺徹、めっき膜の結晶構造解析法、表面技術、40巻、2号、一般社団法人表面技術協会 1989年2月1日発行、280~286頁 ○参考文献2:特開2001-98396号公報 ○参考文献3:特開2009-209383号公報 ○参考文献4:井上晃一郎、中田毅、渡辺徹、Fe電析膜の表面形態と配向性、日本金属学会誌、第65巻、第4号(2001)、公益社団法人日本金属学会 2001年発行、229~235頁 ○参考文献5:井上晃一郎、中田毅、進藤義朗、渡辺徹、電析金めっき膜の表面形態と配向性、日本金属学会誌、第66巻、第4号(2002)、公益社団法人日本金属学会 2002年発行、400~408頁 参考文献1:「2.1.3 結晶配向性の測定 ・・・例えば,その試料の配向状態を知るために,まず,<111>方向の配向指数X111は X111=IF111/IFR111・・・(3) で計算される。ここでIF111は測定した試料のX線回折強度の内から{111}面のX線回折強度の相対強度として次の式から計算される。 IF111=I111/(I111+I200+I220+I311)・・・(4) また,IRF111(当審注:「IFR111」の誤記と認める)は配向のない多結晶粉末からのX線回折図形(一般にASTMパウダーデータカードを用いると便利である)から,式(4)と同様に計算された値を取る。さらに他の4つの結晶面からの配向指数も同様に計算し,相対的に比較して考察する。」(282頁右欄第2行~283頁第1行) 参考文献2:「【0015】上記X線回折法では、X線回折パターンによりβ-スズの各結晶面の回折ピーク高さを求め、各結晶面の回折ピークIをその最大ピークI1で除して、各(hkl)面のI/I1、或はΣ測定されたI/I1を求めるとともに、標準の回折パターンであるASTMカードにおける夫々の対応値を求め、次式(A)に基づいて夫々の結晶面の配向性指数Xhklを算出するのである(当該算出式は金属表面技術協会 第76回講演大会 要旨集第200~201頁(1987年)を参照)。 Xhkl={(ΣASTMのI/I1)×(測定された(hkl)面のI/I1)}÷ {(Σ測定されたI/I1)×(ASTM(hkl)面のI/I1)}…(A) (式(A)において、 Xhkl:特定の(hkl)面の配向性指数。測定された(hkl)面のI/I1:配向性指数を求めようとしているβ-スズの特定の(hkl)面の測定された回折強度を、その測定されたX線回折パターンのβ-スズの回折ピークの中で最も強いピークの回折強度で除した数値。 ΣASTMのI/I1:粉末法によるβ-スズのX線回折パターン(例えば、ASTMカード等)における{200}面、{101}面、{220}面、{211}面、{301}面、{112}面、{400}面、{321}面、{420}面、{411}面、{312}面、{501}面の各回折強度を、その回折パターン中で最も強い回折ピーク(即ち、{200}面)の回折強度で除した数値の総和。 Σ測定されたI/I1:測定されたX線回折パターンにおけるβ-スズの{200}面、{101}面、{220}面、{211}面、{301}面、{112}面、{400}面、{321}面、{420}面、{411}面、{312}面、{501}面の各回折強度を、その回折パターン中のβ-スズの回折ピークのうち、最も強い回折ピークの回折強度で除した数値の総和。 ASTM(hkl)面のI/I1:粉末法によるβ-スズのX線回折パターン(例えば、ASTMカード等)における配向性指数を求めようとしているβ-スズの特定の(hkl)面の回折強度を、その回折パターン中の最も強い回折ピーク(即ち、{200}面)の回折強度で除した数値。) 上記標準となる粉末法によるX線回折パターン、即ち、ASTMカード(又はJCPDSカード)では、スズは皮膜を形成せずに粉末状であるため、β-スズの結晶は、当然ながらランダムに方位付けられて配向性がない状態にある。」 参考文献3:「【0013】 上記式中、Ico(hk・l)は、結晶面(00・2)、(10・0)、(10・1)、(10・2)、(10・3)及び(11・0)におけるWillsonの6面配向指数である。そしてIco(hk・l)は、電気亜鉛めっき層の各結晶面(hk・l)のX線回折ピーク強度値(cps)をI(hk・l)とし、標準亜鉛粉末の各結晶面(hk・l)のX線回折ピーク強度値(cps)をIs(hk・l)とした場合に、下記式(4)~(6)から計算される。 Ico(hk・l)=i(hk・l)/is(hk・l) ・・・ (4) i(hk・l)=I(hk・l)/{I(00・2)+I(10・0)+I(10・1)+I(10・2)+I(10・3)+I(11・0)} ・・・ (5) is(hk・l)=Is(hk・l)/{Is(00・2)+Is(10・0)+Is(10・1)+Is(10・2)+Is(10・3)+Is(11・0)} ・・・ (6) 【0014】 ・・・ 【0015】 なおIco及びIsの添え字である「co」及び「s」は、それぞれ「結晶配向(crystal orientation)」及び「標準(standard)」を表す。 【0016】 電気亜鉛めっき層のX線回折ピーク強度値I(hk・l)は、下記実施例に示す条件でX線回折を行うことよって求められる。また標準亜鉛粉末のX線回折ピーク強度値Is(hk・l)のデータは、ASTM(及びJCPD)に記載されており、それを下記表1に転記する。本発明では、この表1に記載するIs(hk・l)の値を、上述の計算に用いることとする。従って、X線回折によって求められるI(hk・l)の値、及び下記表1のIs(hk・l)の値から、上記Ico(hk・l)の値を計算することができる。」 参考文献4:「めっき膜の配向性は,X線回折結果から次に示すWilsonの式12)により算出した. 配向性指数(N)=(I/I(hkl)/ΣI/I(hkl))/(JCPDS・I/I(hkl)/ΣJCPDS・I/I(hkl))(1) ここで,I/I{hkl}は試料の{hkl}面における回折強度比,JCPDS I/I{hkl}はJCPDSカードの{hkl}面における回折強度比,ΣI/I{hkl},ΣJCPDS・I/I{hkl}はそれぞれ全ての結晶面の回折強度比の和である.」(第230頁右欄第3~13行) 参考文献5:「めっき膜の配向性は,X線回折結果から次に示すWilsonの式25)より配向指数(N)を算出して評価した. 配向指数(N)=(I/I(hkl)/ΣI/I(hkl))/(JCPDS・I/I(hkl)/ΣJCPDS・I/I(hkl))(1) ここで,I/I{hkl}は試料の{hkl}面における回折強度比,JCPDS I/I{hkl}はJCPDSカードの{hkl}面における回折強度比,ΣI/I{hkl},ΣJCPDS・I/I{hkl}はそれぞれ全ての結晶面の回折強度比の和である.」(第402頁左欄第16行~同右欄第9行) c)これらの参考文献の記載から、本件特許の請求項1で特定される、X線回折のピーク強度を用いた結晶配向指数の算出における「ピーク強度理論値」として、標準試料について粉末X線回折により測定した値として知られるASTMカードやJCPDSカード等から得たものを用いることは技術常識であるといえる。 d)そうすると、本件訂正後の請求項1~5に係る発明は明確であり、また、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正後の請求項1~5に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。 イ また、本件訂正後の請求項1~5に係る発明について、その他の拒絶すべき理由も発見しない。 ウ したがって、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第5~7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-390002

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