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特許訂正審判

2017-390094

電鋳管の製造方法及び電鋳管

審判番号
2017-390094
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2002-278121外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年09月19日
審決日
2017年11月13日
公報発行日
2018年02月23日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P141 .841-Y (C25D) / P141 .851-Y (C25D) / P141 .853-Y (C25D) / P141 .854-Y (C25D) / P141 .855-Y (C25D) / P141 .856-Y (C25D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項3号特許法126条3項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第3項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第126条第4項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第3889689号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第3889689号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第3889689号は、平成14年 9月24日を出願日とし、平成18年12月 8日に設定登録がなされ、平成29年 9月19日に本件訂正審判の請求がなされたものである。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第3889689号の明細書、特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める、との審決を求めるものである。 第3 本件の訂正の内容 請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 1 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することを特徴とする、」 と記載されているのを、 「前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である電鋳管を製造することを特徴とする、」 と訂正する(下線部は訂正箇所を意味する。)。 (請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。) 2 訂正事項2 本件特許明細書の【0011】に、 「前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することを特徴とする、」 と記載されているのを、 「前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である電鋳管を製造することを特徴とする、」 と訂正する(下線部は訂正箇所を意味する。)。 第4 当審の判断 1 訂正事項1について 1-1 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~5について、訂正前の請求項2~5は請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~5は特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。 また、訂正後の請求項1~5は、訂正前の請求項1~5に対応するものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項である請求項1~5について訂正するものであるから、特許法第126条第3項の規定に適合する。 1-2 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「電着物または囲繞物」の肉厚が特定されていなかったものを、「50μm以下」と特定するものであって、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 1-3 新規事項の有無について 本件特許の願書に添付した明細書には、次の記載がある(下線は当審で付したものである。)。 「【0042】 細線材の除去に際して、このような方法を用いれば、例えば、直径が10μmから85μmまでの細線材を用いて、この細線材の外面に5μm以上50μm以下の肉厚を有するように形成した電着物または囲繞物からでも、細線材を除去することができる。従って、この細線材の除去方法を用いることにより、例えば、コンタクトプローブ用の管等として使用可能な微細な内径を有する電鋳管が製造できる。」 上記記載から、願書に添付した明細書には、「電鋳管」の「電着物または囲繞物」の肉厚が「50μm以下」であることが記載されているといえるので、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。 1-4 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「電着物または囲繞物」の肉厚が特定されていなかったものを、「50μm以下」と特定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 1-5 独立特許要件について 1-5-1 訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)について 上記「1-2 訂正の目的について」の検討によれば、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正後の特許請求の範囲の請求項2~5に係る発明(以下、「訂正発明2」~「訂正発明5」という。)は、請求項1を引用するものであるから、訂正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。 (A)請求人が提示した甲各号証 甲第1号証:特開2002- 80991号公報 甲第2号証:特開2001-318267号公報 甲第3号証:特公昭45-24847号公報 甲第4号証:特開2001-249252号公報 甲第5号証:特開2001-183548号公報 甲第6号証:国際公開WO01/48271号公報 甲第7号証:英国特許第1118150号公報 甲第8号証:「電気めっき及び関連処理用語」(JIS H0400:1998) 甲第9号証:特開2002-129262号公報 (B)甲第1号証~甲第9号証の記載 甲第1号証~甲第9号証には、以下の事項が記載されている。 (1)甲第1号証:特開2002- 80991号公報 (1a)「【0009】・・・芯材を用い電鋳法によって良好な内面仕上精度をもつ細孔チューブを製造するには、芯材の材質としてオーステナイト系のステンレス線を使用する。・・・芯材は・・・その表面に均等に近い厚みのニッケル電鋳層を生成させる・・・ 【0010】・・・芯材の露出部分を工具等でくわえ、心材に引き抜く力を加えれば、オーステナイト系ステンレス特有の塑性加工性と電鋳層に内蔵された圧縮応力の効果によって容易に芯材を抜き取ることができ・・・良好な内面仕上精度をもつ細孔チューブを製造することができる。」 (1b)「【0019】さらにオーステナイト系ステンレス線の選択について述べる。ステンレスはその機械・物理・化学的諸特性から電鋳の基板・芯材に最も適した材料として広く用いられているが、細孔チューブを電鋳法で製造するにあたり、その芯材として使用するには、電着終了後に芯材を引き抜き除去することが容易であることが大切である。特に直径0.5ミリ以下で軸方向に長い場合、芯材には引き抜きの力に耐える引張り強さと塑性加工性が不可欠で、硬度が高過ぎ、脆性の大きい材料は引き抜きに際して破断し易い。 【0020】したがって、実験の結果、芯材に適する材質としてはSUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス(Cr18%,Ni9%を基本とする)選択の必要性が確かめられ、・・・マルテンサイト系(低Cr系、Cr11~14%)ステンレスや・・・フェライト系(中~高Cr系、Cr17%)ステンレスでは硬度が高く脆性が大きく塑性加工性が低いため、引き抜きに際して破断することが多く、電着終了後に引き抜く必要がある芯材としては使用できない。オーステナイト系ステンレス線は引き抜きに際して、その特有の塑性加工性により軸方向の引張力により伸びを生じ断面積が減少することにより電鋳層との間に剥離が発生し、転写面を損なうことなく容易に芯材を引き抜くことができる。」 (2)甲第2号証:特開2001-318267号公報 (2a)「【0006】・・・本発明では、貫通させる光ファイバの径に対応する径の芯線を張った状態で、その周囲に電鋳により、長い素材金属円柱を形成し、素材金属円柱から所定の長さと径を有する金属円柱を形成した後、夫々の金属円柱の一端側を砥石又は切削刃により面取り加工してテーパ状の開口部を形成するものとし、この際、砥石又は切削刃は、上記テーパ状の開口部に対応するテーパ状の外形を有すると共に、その先端側に上記芯線の径よりも僅かに小径の小突起を設けた構成とし、この砥石又は切削刃により金属円柱の一端側を面取り加工する際、その先端の小突起により芯線を押し動かして、金属円柱の他端側から突出させ、突出部分を掴んで芯線を抜き取ることにより貫通孔を形成するようにしたフェルールの製造方法を提案するものである。」 (2b)「【0015】・・・芯線1は、例えば貫通させる光ファイバの径と同じ0.125mmの径のステンレス鋼線(SUS 304)とし、・・・このように電鋳により形成する素材金属円柱2の径は、フェルールとしての所定の径(例えば1.25φmm,2.00φmm,2.50φmm)に研削代として0.05~0.30mmを加えたものとし、・・・」 (3)甲第3号証:特公昭45-24847号公報 (3a)「未延伸の結晶性熱可塑性樹脂よりなる芯材料の外面に導電性を付与した後、電鋳を施し、次いで該芯材料をネツキングを起す条件下で延伸することにより、該芯材料を電鋳金属管より容易且つ完全に除去しうるものであるが、」(公報3欄12-16行) (3b)「更に本発明を特に有利ならしめている点は、長尺の細管・金属多層管及び内面有機被覆管等を極めて容易且つ確実に作りうることである。」(公報3欄44行-4欄2行) (3c)「また最初例えばニツケル電鍍をした後次に例えば銅電鋳を行い、しかるのち内部の高分子物質を引抜いて内部にニツケル電鍍を行なった銅電鋳管を製造するような複合金属管を製造することもできる。」(公報5欄11-15行) (3d)「実施例1・・・かくて内径3m/m、肉厚0.5m/mの銅丸管を得た。 実施例2・・・内法断面4×2mm、肉厚0.4m/mの角電鋳管を得た。 実施例3・・・0.1mm厚にニツケル電鍍を行い、次にこの上に実施例1に示したのと同様の方法で銅電鋳を0.4m/m厚に行なつた。・・・内径1mmの内面ニツケル、外面銅の複合電鋳管をえた。 実施例4・・・内径0.5mm、肉厚0.5mmの銅管をえた。 実施例5・・・内径4mm、肉厚0.7mmの銅管をえた。 実施例6 外径2mmの未延伸ポリエチレン丸線の外面を実施例1に示した無水クロム酸-硫酸処理をした後、常温硬化型のエポキシ塗料を20ミクロン厚に施こしたのち、この外面に実施例1と同様にして銅電鋳を0.4mm厚に施こし、..内部のポリエチレンのみを延伸除去した。内径2mmで内面にエポキシ樹脂層をもつ銅管がえられた。」(公報5欄36行-7欄14行) (4)甲第4号証:特開2001-249252号公報 (4a)「【0006】・・・フェルールは、線材の周囲に金属を堆積させて外径約1mm以下の桿状物を形成する工程と、桿状物から線材を除去する工程と、桿状物を外径1mm以下の真円に加工する工程とを経由する方法により、所望数を所定の寸法精度で廉価に製造し得る・・・」 (4b)「【0012】・・・なお、貫通孔の形状として、円形以外の形状を所望する場合には、前述の金属材料をダイスを用いて押出成形する。」 (4c)「【0015】・・・例えば、外径0.75mmのフェルールを製造する場合、直径126.8μm(真円度±0.5μm以内)のステンレス線(SUS304)を線材11とし、この線材をスルファミン酸ニッケルを含有し、pHを4.3に調整した電鋳液10に浸漬して、5時間弱通電したところ、外径0.9mm前後の桿状物が安定して得られた。」 (5)甲第5号証:特開2001-183548号公報 (5a)「【0019】線5は、鉄またはその合金、アルミニウムまたはその合金、銅またはその合金などの金属線、及びこの金属線の上に薄いハンダメッキをしたもの、及びナイロン、ポリエステルなどのプラスチック線から適宜選択使用される。・・・ 【0020】・・・電鋳は、・・・10~20時間程実施し、棒状で1.0~2.5mmφ程度の太さに成長させた後、・・・ 【0021】選択する線5の種類により、電鋳品の中心にある線5を引き抜くか、押し出すか、薬品で溶解するかが決定されるが、一般には薬品に溶解しにくく、引っ張り強度の高いものは、引き抜き、または押し出しを利用し、薬品に溶解しやすいものは、溶解を利用する。・・・これらのうち特に鉄の合金であるステンレス線が望ましく、実験的には0.126mmφで50~100mm程度の長さまで引き抜くことができた。」 (5b)「【0025】【実施例】・・・電鋳を1日実施して、平均で2.4mmφの太さで、・・・ニッケル電鋳品を得た。・・・加工機などで太さ2.00mm、長さ8.00mmまで加工して完成品とした。」 (6)甲第6号証:国際公開WO01/48271号公報 (6a)「光ファイバーの外径は、規格により0.125mmと定められており、従って、フェルールの内径は0.126mm程度のものになっている。・・・ 均一性の問題は、フェルールの真円度、即ちフェルールの内径及び外径を如何に均一にするか、及び、同軸性、即ち、内径と外径の軸中心を如何にして一致させるかという点にある。 例えば、ステンレス製直径0.125mmの断面が円形の線を芯線として使用し、これを陰極として電源に接続して電鋳を行うと、・・・」(公報の明細書2頁16行-3頁4行) (6b)「本発明は、特に、内径が0.126mm程度と小さいフェルールを電鋳で・・・製造する方法及び装置を提供しようとするものである。・・・本発明の製造方法は、芯線の外表面に電鋳により金属皮膜を形成し、形成された皮膜から芯線を引き抜いて金属フェルールを製造する・・・芯線は・・・ステンレス、燐青銅製の芯線に抵抗率が5×10-6Ωcm以下の第一金属の薄層をメッキしその上に第二金属を所定の径まで電鋳を行ってもよい。その第一の金属として、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれか、第二金属としてニッケル又はニッケルを主体とする合金を使用することができる。」(公報の明細書4頁5-20行) (6c)「抵抗率の低い第一金属をメッキする層の厚みは、良好な電気伝導度を確保する厚みであればよく、数μm~数十μmが好適に使用される。・・・線の基質としてステンレス、燐青銅を選択し、その表面に厚さ10μm程度の銀、金、銅メッキを施したものを芯線に使用することができる。また、基質が金、銀、アルミニウム、銅又はそれらを主体とする合金を使用することもできる。芯線の表面は平滑な表面であることが好ましいが、微小な凹凸があることが多い。表面に抵抗率の低い金属をメッキすることにより、芯線の外表面が平滑になるというメリットもある。また、ステンレス線や燐青銅線は張力が高いので、フェルールから芯線を引き抜くのに好都合である。」(公報の明細書11頁15-24行) (6d)「[実施例3] 断面が円形で径が0.126mmで長さが355mmのステンレス製の線に金(抵抗率2.05×10-6Ωcm)を10μmメッキした、直径0.136mmの芯線を得た。この芯線を図2示す様に電鋳用治具にセットした。一方・・・電鋳浴に、ニッケルの金属板をセットし、電鋳浴に浸漬した。・・・電鋳により、平均約2.5mmの直径のニッケル電鋳品を得た。電鋳品は、長さ方向に沿って外径は2.5mm±0.05mmの範囲内にあり、均一な電鋳品が得られた。」(公報の明細書17頁9-16行) (7)甲第7号証:英国特許第1118150号公報 (7a)「The present invention provides a method of manufacturing a metal article provided with a duct ,comprising the steps of electr-odepositing the metal on a mandrel formed by a metal having a high value of permanent elongation,for example ,of more than 20%,and then removing the mandrel from the article by tensioning the mandrel above its tensile limit.」(1頁右欄54~62行) (当審訳:本発明は流路を備えた金属部品を製造する方法を提供するものであって、例えば20%以上である高い永久伸び値を有する金属によって形成された芯線上に金属を電着させるステップと、芯材の引っ張り限界以上に芯材を引っ張ることによって芯材を製品から除去するステップとからなる。 ) (7b)「An embodiment of the present invension will now be descri-bed by way of example, with reference to the following Example,which was used to manufacture nickel tubes approximately 280 mms long and having an inside diameter of 0.55mms, and an outside diameter of 1.1mms.」(2頁左欄12-18行) (当審訳:本発明の1つの実施例が、長さ約280ミリメートル、内径0.55ミリメートル、外径1.1ミリメートルのニッケル管を製造するために使用される以下の例を参照しつつ説明される。) (8)甲第8号証:「電気めっき及び関連処理用語」(JIS H0400:1998) (8a)「1085 電鋳法 electroforming 電気めっき法による金属製品の製造、補修又は複製法。」 (9)甲第9号証:特開2002-129262号公報 (9a)「【0010】・・・本発明に係る極細銅合金線は、線径が0.01~0.1mmの極細銅合金線において、・・・熱処理により、引張強さを343MPa(35kgf/mm2)以上、伸びを5%以上、導電率を80IACS以上としたものである。」 (C)対比 ア 甲第6号証は、上記(6a)~(6c)によれば、内径が0.126mm程度と小さいフェルールを電鋳で製造する方法及び装置に関する発明であって、具体的には、ステンレス、燐青銅製の芯線に抵抗率が5×10-6Ωcm以下の第一金属の薄層をメッキしその上にニッケル又はニッケルを主体とする第二金属を所定の径まで電鋳して金属皮膜を形成し、形成された皮膜から芯線を引き抜いて金属フェルールを製造する技術であって、第一金属として、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれか、第二金属としてニッケル又はニッケルを主体とする合金を使用するもの、が記載されている。 イ ここで、芯線、第一金属及び第二金属の材質として例示されたものから、それぞれステンレス、金及びニッケルを選択して整理すると、甲第6号証には、 「ステンレス製の芯線に、第一金属として金の薄層をメッキしその上に第二金属としてニッケルを所定の径まで電鋳して金属皮膜を形成し、この皮膜から芯線を引き抜いて金属フェルールを製造する方法。」(以下、「甲6発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 甲6発明における「ステンレス製の芯線」、「第一金属の薄層」は、それぞれ訂正発明1における「ステンレス製の細線材」、「導電層」に相当する。 また、甲6発明における「第二金属を所定の径まで電鋳」して「形成し」た「金属皮膜」は、訂正発明1における「電着物または囲繞物」に相当し、甲6発明における「金属フェルール」と訂正発明1における「電鋳管」は、共に「電鋳品」といえるから、甲6発明において「芯線を引き抜いて金属フェルールを製造すること」は、訂正発明1における「細線材を引っ張って除去する電鋳品の製造」といえ、さらに、金の電気伝導率がニッケルのそれよりも高いことは周知の事実である。 エ ここで訂正発明1と甲6発明を対比すると、両者は、 「外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、細線材を除去して電鋳品を製造する方法であって、前記導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、前記細線材を引っ張って除去する、電鋳品の製造方法。」である点で一致し、一方、下記の点で相違している。 相違点1:訂正発明1では、「電着物または囲繞物の内面に導電層を残したまま細線材を除去」しているのに対し、甲6発明においては、細線材の除去に際して、導電層に相当する金の薄層が電着物または前記囲繞物の内面に残っているのか否かが不明である点。 相違点2:訂正発明1では、細線材を除去するに際して、「細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去する」のに対し、甲6発明においては、単に「芯線を引き抜」いており、引き抜くことは、上述したとおり、引っ張って取り除くことではあるが、本件発明1のように「一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで」いるのか否か不明である点。 相違点3:訂正発明1では、「前記電着物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である」のに対して、甲6発明では肉厚の範囲に関する記載がない点。 相違点4:訂正発明1においては、「電鋳品」が「電鋳管」であり、訂正発明1は「電鋳管の製造方法」に係る発明であるのに対して、甲6発明においては、「電鋳品」が「金属フェルール」」であり、甲6発明は「金属フェルールを製造する方法」に係る発明である点。 (D)判断 (1)相違点3について ア 甲6発明に係る金属フェルールは、光ファイバー接続用のフェルールとして供されるものであり、該フェルールは、外径が0.125mmに規格化されている光ファイバーの端部同士を、高い同心性を維持しながら接続し、また、内部に収容した光ファイバー端部を保護する機能をも併せ持つものである。 また、甲第2、4及び5号証に記載される技術も甲第6号証と同様に、電鋳法によりフェルールを製造する技術に関するものであって、製造されるフェルールの外径として、甲第2号証には1.25φmm、2.00φmm、2.50φmm(摘示事項(2b)参照)が、甲第4号証には、外径が1mm以下、具体的には0.75mmのフェルールを製造するに際して、電鋳により外径0.9mm前後の桿状物を得たこと(摘示事項(4c)参照)が、また甲第5号証には、平均で約2.4mmφのニッケル電鋳品に後加工を施して太さ2.00mmのフェルール完成品を得ること(摘示事項(5b)参照)及び電鋳品としては1.0~2.5mmφ程度の太さに成長させて電鋳槽から取り出すこと(摘示事項(5a)参照)が、それぞれ記載されていることから、フェルールの外径としては、0.75mm~2.5mm程度が採用されていたということができる。 イ 一方、前述したように、光ファイバーの外径は、0.125mmに規格化されている他、シングルモード光ファイバーの導光部分であるコアの直径が10μmであることを勘案すると、フェルールの内径は、高々0.130mm程度と推定することができる。 そこで、これらの甲号証に記載されている電鋳により作成されたフェルールの肉厚を計算してみる。 ウ 前述したように、内径は高々0.130mmであるから、その半径は0.065mm=65μmである。 一方、外径は0.75mm~2.5mm(=750μm~2500μm)程度であり、半径をμm単位で表すと、375μm~1250μmであるから、この値から内径の半径値65μmを差し引いたところの、310~1185μmが電鋳管の肉厚となる。 エ また、甲第1号証は、特に用途を限定せずに、細孔チューブを製造する技術を提供するものであるが、該細孔チューブの孔径として0.5mm(請求項3)が開示される他、発明の詳細な説明中に「極細チューブの製造も容易であり、内径0.1mm 程度のチューブの製造も困難ではない。」(【0012】と記載されるに留まり、チューブの肉厚に関しては記載がない。 オ 甲第3号証も、用途を限定せずに、芯材料としてネッキングを起こす未延伸の結晶性熱可塑性高分子材料を利用して電鋳管を製造する技術を提供するものであり、実施例1~6には、下記のとおりの寸法の電鋳管が得られたことが記載されている。 ・実施例1:内径3mm、肉厚0.5mm(=500μm) ・実施例2:内法断面4×2mm、肉厚0.4mm(=400μm) ・実施例3:内径1mm、肉厚0.1mm厚のニッケル+0.4mm厚の銅で合計0.5mm(=500μm) ・実施例4:内径0.5mm、肉厚0.5mm(=500μm) ・実施例5:内径4mm、肉厚0.7mm(=700μm) ・実施例6:内径2mm、肉厚0.4mm+塗布時に20μm厚のエポキシ樹脂層の厚さ(=420μm程度) カ さらに甲第7号証の摘示事項(7b)には、内径0.55mm、外径1.1mmであるから、肉厚は(1.1-0.55)÷2=0.275mm(=275μm)の電鋳管を得たことが記載されている。 キ 甲第8号証は「電気めっき及び関連処理用語」に関するJIS規格であり、また甲第9号証は「極細銅合金線及びその製造方法」に関する文献であって、電鋳管に関する記載はない。 ク 以上述べたように、甲各号証に記載された電鋳管の肉厚は、275μm~1185μmである。 ケ 一方、訂正発明1で規定する電鋳管の肉厚は、50μm以下であり、その最大値50μmをとって、甲各号証に記載された電鋳管の肉厚の内の最小値である275μmと比較してなお、1/5.5であり、その差は225μmもある。 コ このように肉厚の薄い電鋳管が製造できることは、甲各号証の記載から明らかであったということはできないから、相違点3は、甲各号証記載の技術から当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。 また、50μm以下の肉厚を有するように形成した電着物または囲繞物からは、コンタクトプローブ用の管等として使用可能な微細な内径を有する電鋳管が製造できるという明細書記載のとおりの作用効果を奏するものと認められる。 サ したがって、相違点1、2、4について検討するまでもなく、訂正発明1は、請求人が提示した甲第1号証~甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 1-5-2 訂正発明2~訂正発明5について 訂正発明2~訂正発明5は、訂正発明1を引用し、これに、さらに限定を付したものであり、訂正発明1の構成要件を全て含むものである。 したがって、訂正発明1と同様に、これらの発明が有する相違点3については、甲各号証記載の技術から当業者が容易に想到し得たものとすることはできず、したがって訂正発明2~訂正発明5は、請求人が提示した甲第1号証~甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 1-5-3 独立特許要件についてのむすび したがって、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項5に係る発明に対して、特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないので、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 2 訂正事項2について 2-1 一群の請求項について 訂正事項2は、訂正事項1に伴って本件特許明細書の【0011】に記載されている請求項1に対応する部分について訂正するものであるから、訂正後の請求項1及び訂正後の請求項1の記載を引用する請求項2~5を含めた一群の請求項1及び請求項2~5の全てに関係する。 したがって、本件特許明細書に係る訂正は、特許法第126条第4項の規定に適合する。 2-2 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正事項1に伴って本件特許明細書の【0011】に記載されている請求項1に対応する部分について訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 2-3 新規事項の有無について 訂正事項2は、訂正事項1に伴って本件特許明細書の【0011】に記載されている請求項1に対応する部分について訂正するものであるから、「3-1 訂正事項1について」に記載したのと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。 2-4 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について 訂正事項2は、訂正事項1に伴って本件特許明細書の【0011】に記載されている請求項1に対応する部分について訂正するものであるから、「4-1 訂正事項1について」に記載したのと同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合する。 なお、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第7項の規定は適用されない。 第5.むすび したがって、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項~第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-390094

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