特許拒絶査定不服審判
2019-011202
電子機器および電子機器の製造方法
- 審判番号
- 2019-011202
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-102995外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年08月26日
- 審決日
- 2020年06月23日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H05K) / P18 .575-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-102995「電子機器および電子機器の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日出願公開、特開2016-219599〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成27年5月20日の出願であって、平成30年10月29日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月27日付けで手続補正がなされたが、令和1年5月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月26日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。
2.令和1年8月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和1年8月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
令和1年8月26日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前には、
「【請求項1】
発熱性の電子素子を含む実装部品を実装された2枚の回路基板と、該2枚の回路基板を内部に保持する筐体と、該筐体内に前記回路基板とともに保持される熱拡散体とを有し、
前記熱拡散体は、液状もしくはクリーム状の導熱媒質を変形自在なパック容器内に密封してなり、前記回路基板の前記発熱性の電子素子およびその周辺領域の3次元形状に倣って変形する構成であり、前記2枚の回路基板の間に配設されて、前記2枚の回路基板に接触する電子機器。」
とあったものが、
「【請求項1】
発熱性の電子素子を含む実装部品を実装された2枚の回路基板と、該2枚の回路基板を内部に保持する筐体と、該筐体内に前記回路基板とともに保持される熱拡散体とを有し、
前記熱拡散体は、液状もしくはクリーム状の導熱媒質を変形自在なパック容器内に内部の満たされていない脱気された部分を有して密封してなり、前記回路基板の前記発熱性の電子素子およびその周辺領域の3次元形状に倣って変形する構成であり、前記2枚の回路基板の間に配設されて、前記2枚の回路基板に接触する電子機器。」
と補正された(下線部は補正箇所を示す。)。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「熱拡散体」について、パック容器内に「内部の満たされていない脱気された部分」を有する旨の限定を付加するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された英国特許出願公開第2310321号明細書(以下、「引用例」という。)には、「Deformable heat sink」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、当審による翻訳文を付記する。下線は当審で付与した。)。
ア.「PATENT CLAIMS
1. Heat sink for electrical or electronic components, characterized by a deformable casing(5), which is filled at least partially with a heat transfer medium(6).
2. Heat sink according to Claim 1, characterized in that the heat transfer medium(6) has a pasty consistency.
3. Heat sink according to Claim 1, characterized in that the heat transfer medium(6) has a liquid consistency.」(13頁1~11行)
(特許請求の範囲
1. 熱伝達媒体(6)で少なくとも部分的に満たされた変形可能なケーシング(5)を特徴とする、電気または電子部品用のヒートシンク。
2. 前記熱伝達媒体(6)が、ペースト状の稠度を有することを特徴とする、請求項1に記載のヒートシンク。
3. 前記熱伝達媒体(6)が、液状の稠度を有することを特徴とする、請求項1に記載のヒートシンク。)
イ.「A heat sink 4 according to the invention, the basic structure of which is likewise represented in Fig.1, has a deformable casing 5, which casing 5 is at least partially filled with a heat transfer medium 6. Consequently, the heat sink 4 according to the invention corresponds with respect to its heat-dissipating properties to a conventional, rigid heat sink.
The casing 5 could be made of a sheet-like material, which is bent in a way corresponding to the contours of the components 2,3 to be cooled. However, this would mean that the heat sink 4 could be adapted to another component configuration only with some effort, with the result that the casing 5 is advantageously formed by a foil.
The heat transfer medium 6 accommodated by the casing 5 must be able to adapt itself to the shape of the casing 5, for which purpose it has a pasty or liquid consistency.」(7頁6~23行)
(図1に示されているような基本構造の本発明によるヒートシンク4は、変形可能なケーシング5を有し、ケーシング5は、熱伝達媒体6で少なくとも
部分的に満たされている。その結果、本発明によるヒートシンク4は、その熱放散特性に関しては従来の堅いヒートシンクと等しい。
ケーシング5は、冷却されるべき部品2,3の外形に対応するように曲げられるシート状材料で作ることがてきる。ただし、これは、ケーシング5が有利には箔によって形成される結果として、ヒートシンク4がわずかな力で他のコンポーネントの外形に適合することを意味する。
ケーシング5によって収容される熱伝達媒体6は、ケーシング5の形状に対して自身が適合できなければならず、そのためにペースト状または液状の稠度を有する。)
ウ.「It is often the case that an electronic device, such as for example computers, control equipment such as programmable controllers or the like, have to be made up of a multiplicity of electronic components. As represented in Fig.6, in order to obtain a modular structure which is easy to maintain, in such cases it is often so that each of the assemblies is constructed on a separate circuit carrier 11,12, The individual circuit carriers 11,12 - so-called plug-in cards - are plugged onto a common breadboard 13 which bears the necessary connection lines between the assemblies, to be precise in such a way that they are mutually parallel. If it is necessary to cool the components 2,3 of two neighbouring plug-in cards 11,12, it is likewise possible to use for this a heat sink 4 according to the invention, as has been described up to now.」(11頁6~21行)
(例えばコンピュータ、プログラマブルコントローラなどの制御機器などの電子装置が、多数の電子部品で構成されなければならない場合がよくある。図6に示すように、保持することが容易なモジュール構造を得るために、そのような場合、各アセンブリが別々の回路担体11,12上に構築されることもよくある。個々の回路担体11,12-いわゆるプラグインカード-は、アセンブリ間で必要な接続線を有する共通のブレッドボード13に差し込まれ、正確に言うと、それらは互いに平行である。2つの隣接するプラグインカード11,12の部品2,3を冷却する必要がある場合、これまでに説明したように、本発明によるヒートシンク4をこれに同様に使用することができる。)
エ.「
」
オ.「
」
・上記引用例に記載の「Deformable heat sink(変形可能なヒートシンク)」は、上記「ア.」、「イ.」の記載事項、及び上記「エ.」(図1)によれば、ペースト状または液状の稠度を有する熱伝達媒体6で少なくとも部分的に満たされた変形可能なケーシング5を有する、電気または電子部品用のヒートシンク4に関するものである。
・上記「イ.」の記載事項、及び上記「エ.」(図1)によれば、変形可能なケーシング5は、冷却されるべき部品2,3の外形に対応するように曲げられるものである。
・上記「ウ.」の記載事項、及び上記「オ.」(図6)によれば、コンピュータなどの電子装置が多数の電子部品で構成され、各アセンブリが互いに平行な2つの隣接する別々の回路担体11,12上に構築されてなるものにおいて、2つの隣接する回路担体11,12の電子部品を冷却するために、当該変形可能なヒートシンク4が使用されてなるものである。さらに具体的には図6によれば、変形可能なヒートシンク4は、互いに平行な2つの隣接する回路担体11,12の間に配置され、各回路担体11,12に実装された電子部品の外形に対応するように変形して接触してなるものである。
したがって、特に図6に示されるように、上記変形可能なヒートシンク4に加えて2つの隣接する回路担体11,12を含めたコンピュータなどの電子装置を発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「多数の電子部品で構成されるコンピュータなどの電子装置において、
前記電子部品が実装され、互いに平行な2つの隣接する回路担体と、
前記2つの隣接する回路担体の間に配置された変形可能なヒートシンクと、を備え、
前記変形可能なヒートシンクは、ペースト状または液状の稠度を有する熱伝達媒体で少なくとも部分的に満たされた変形可能なケーシングを有し、前記各回路担体に実装された前記電子部品の外形に対応するように変形して接触してなる、電子装置。」
(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「多数の電子部品で構成されるコンピュータなどの電子装置において、前記電子部品が実装され、互いに平行な2つの隣接する回路担体と、前記2つの隣接する回路担体の間に配置された変形可能なヒートシンクと、を備え」によれば、
(a)「電子部品」、「2つの隣接する回路担体」、「ヒートシンク」は、それぞれ本願補正発明でいう「発熱性の電子素子」、「2枚の回路基板」、「熱拡散体」に相当する。
(b)そして、引用発明においても、コンピュータなどの電子装置が筐体を有し、回路担体及びヒートシンクをその内部に保持するものであることは自明なことである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「発熱性の電子素子を含む実装部品を実装された2枚の回路基板と、該2枚の回路基板を内部に保持する筐体と、該筐体内に前記回路基板とともに保持される熱拡散体と」を有するものである点で一致する。
イ.引用発明における「前記2つの隣接する回路担体の間に配置された変形可能なヒートシンクと、を備え、前記変形可能なヒートシンクは、ペースト状または液状の稠度を有する熱伝達媒体で少なくとも部分的に満たされた変形可能なケーシングを有し、前記各回路担体に実装された前記電子部品の外形に対応するように変形して接触してなる」によれば、
(a)ペースト状または液状の稠度を有する「熱伝達媒体」、変形可能な「ケーシング」は、それぞれ本願補正発明でいう液状もしくはクリーム状の「導熱媒質」、変形自在な「パック容器」に相当する。
ただし、熱拡散体について、本願補正発明では、パック容器内に「内部の満たされていない脱気された部分を有」するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。
(b)また、「変形可能なヒートシンク」は、2つの隣接する回路担体の間に配置され、各回路担体に実装された電子部品の外形に対応するように変形して接触してなるものであるから、本願補正発明とは、「前記回路基板の前記発熱性の電子素子の形状に倣って変形する構成であり、前記2枚の回路基板の間に配設」されてなるものである点で共通するといえる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記熱拡散体は、液状もしくはクリーム状の導熱媒質を変形自在なパック容器内に密封してなり、前記回路基板の前記発熱性の電子素子の形状に倣って変形する構成であり、前記2枚の回路基板の間に配設され」てなるものである点で共通する。
ただし、熱拡散体の変形する構成について、本願補正発明では、「発熱性の電子素子およびその周辺領域の3次元形状に倣」い、「2枚の回路基板に接触する」のに対し、引用発明では、そのような特定を有してない点で相違している。
ウ.そして、引用発明における「電子装置」は、2つの隣接する回路担体と、その回路担体間には配置された変形可能なヒートシンクとを有するものであることから、本願補正発明でいう「電子機器」に相当するものである。
よって、本願補正発明と引用発明とは、
「発熱性の電子素子を含む実装部品を実装された2枚の回路基板と、該2枚の回路基板を内部に保持する筐体と、該筐体内に前記回路基板とともに保持される熱拡散体とを有し、
前記熱拡散体は、液状もしくはクリーム状の導熱媒質を変形自在なパック容器内に密封してなり、前記回路基板の前記発熱性の電子素子の形状に倣って変形する構成であり、前記2枚の回路基板の間に配設されている電子機器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
熱拡散体について、本願補正発明では、パック容器内に「内部の満たされていない脱気された部分を有」するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。
[相違点2]
熱拡散体の変形する構成について、本願補正発明では、「発熱性の電子素子およびその周辺領域の3次元形状に倣」い、「2枚の回路基板に接触する」のに対し、引用発明では、そのような特定を有してない点。
(4)判断
上記の相違点について検討する。
[相違点1]について
例えば拒絶の理由に引用された特表昭60-500391号公報(3頁右上欄8~15行を参照)や原査定時に提示した特開2003-68952号公報(段落【0019】を参照)に記載ないし示唆されているように、パック容器内にクリーム状(ペースト状)のような導熱媒質を収容した変形可能な熱拡散体(熱伝導体)において、パック容器内に内部の満たされていない脱気された部分を設けることは周知の技術事項であり、特に熱拡散体のパック容器の材質が弾力性(伸縮性)に乏しいような場合には、パック容器内の導熱媒質が動いて熱拡散体が変形できるようにするためになおさら必要であることも当業者にとって自明なことである。そして、引用発明においても、変形可能なヒートシンクは、ペースト状または液状の稠度を有する熱伝達媒体で「少なくとも部分的に」満たされてなるものであるところ、上記周知の技術事項のように、ケーシング内に内部の満たされていない脱気された部分を設けるようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。
[相違点2]について
熱拡散体を接触させる部分は、熱拡散効果等を考慮して当業者が適宜設定し得る事項であるところ、例えば上記特開2003-68952号公報(特に段落【0025】~【0026】、図6を参照)や特開平6-268113号公報(特に段落【0004】、図3を参照)に記載されているように、熱拡散体を発熱性の電子素子だけでなくその周辺領域を含めた3次元形状に倣うようにして回路基板にも接触させるようにすることは周知の技術事項であり、引用発明においても、より効果的に熱拡散を行うためにかかる周知の技術事項を採用し、相違点2に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。
(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
令和1年8月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年12月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
発熱性の電子素子を含む実装部品を実装された2枚の回路基板と、該2枚の回路基板を内部に保持する筐体と、該筐体内に前記回路基板とともに保持される熱拡散体とを有し、
前記熱拡散体は、液状もしくはクリーム状の導熱媒質を変形自在なパック容器内に密封してなり、前記回路基板の前記発熱性の電子素子およびその周辺領域の3次元形状に倣って変形する構成であり、前記2枚の回路基板の間に配設されて、前記2枚の回路基板に接触する電子機器。」
(1)引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例、及び引用例の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「熱拡散体」について、パック容器内に「内部の満たされていない脱気された部分」を有する旨の限定、すなわち前記「2.(3)」で認定した相違点1に係る構成を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項(相違点1に係る構成)を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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