特許拒絶査定不服審判
2023-003020
真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品
- 審判番号
- 2023-003020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-140486
- 請求日
- 2023年02月22日
- 審決日
- 2024年12月23日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】山下 昭彦
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 竹下 和志
- 分類
- P18 .121-WZ (F16L) / P18 .536-WZ (F16L) / P18 .537-WZ (F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-140486「真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月30日出願公開、特開2020- 16305〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成30年7月26日の出願であって、令和4年3月24日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年11月16日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、令和5年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和6年1月25日付けで当審から拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年4月1日に意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~6係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1、3、5に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明3」、「本願発明5」という。)は、以下のとおりである。
(本願発明1)
「【請求項1】
ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一方の主面側に配置された熱溶着可能なフィルムと、前記ガスバリア層の他方の主面側に配置された保護フィルムと、を有し、
前記保護フィルムは、ポリプロピレンを含有し、かつ、前記保護フィルムの主面に対して、入射角2.0°、および回折角2θχ=14.05°の条件下で、広角X線回折法のインプレーン測定によりφ連続スキャン(φ=0~360°)した場合に検出される2つの(110)面のピーク半値幅の平均値が33°以下である、真空断熱材用外包材。」
(本願発明3)
「【請求項3】
芯材および前記芯材を封入する外包材を有する真空断熱材であって、
前記外包材は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一方の主面側に配置された熱溶着可能なフィルムと、前記ガスバリア層の他方の主面側に配置された保護フィルムと、を有し、
前記保護フィルムは、ポリプロピレンを含有し、かつ、前記保護フィルムの主面に対して、入射角2.0°、および回折角2θχ=14.05°の条件下で、広角X線回折法のインプレーン測定によりφ連続スキャン(φ=0~360°)した場合に検出される2つの(110)面のピーク半値幅の平均値が33°以下である、真空断熱材。」
(本願発明5)
「【請求項5】
熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
前記真空断熱材は、芯材および前記芯材を封入する外包材を有し、
前記外包材は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一方の主面側に配置された熱溶着可能なフィルムと、前記ガスバリア層の他方の主面側に配置された保護フィルムと、を有し、
前記保護フィルムは、ポリプロピレンを含有し、かつ、前記保護フィルムの主面に対して、入射角2.0°、および回折角2θχ=14.05°の条件下で、広角X線回折法のインプレーン測定によりφ連続スキャン(φ=0~360°)した場合に検出される2つの(110)面のピーク半値幅の平均値が33°以下である、真空断熱材付き物品。」
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は、次のとおりのものである。
理由1(委任省令要件)
本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2(サポート要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3(進歩性)
本願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった以下の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2017/047701号
引用文献2:特開2017-226161号公報
引用文献3:国際公開第2015/012324号
第4 当審の判断
1.理由1について
(1) 発明が解決しようとする課題
本願に係る明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題として、段落【0007】に「真空断熱材を高湿度環境下で長時間用いた場合でも、真空断熱材の断熱効果の低下を抑制することが可能な真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品を提供する」ことが記載されている。
(2) 発明の詳細な説明に記載された事項
発明の詳細な説明には、上記課題を解決するためとして、以下の事項が具体的に記載されている。
ア 「【0011】
本開示の真空断熱材用外包材によれば、保護フィルムが、ポリプロピレンを含有し、所定の結晶化度を有するものであることから、このような保護フィルムが配置された真空断熱材用外包材により形成された真空断熱材を、長期間、高湿度環境下で用いた場合であっても、上記真空断熱材の断熱効果の低下を抑制することができるという効果を奏する。」
イ 「【0023】
本開示においては、ポリプロピレンの結晶化度を所定の値以上とすることにより、上述した頂部4における局所的に結晶領域の割合が極めて小さな領域が生じる可能性を低下させることにより、本開示の真空断熱材を、長期間、高湿度環境下で用いた場合であっても、上記真空断熱材の断熱効果の低下を抑制することができるようにしたものである。」
ウ 「【0027】
本開示における保護フィルムは、ポリプロピレンを含有し、かつ、上記保護フィルムの主面に対して、入射角2.0°、および回折角2θχ=14.05°の条件下で、広角X線回折法のインプレーン測定により回転測定した場合に検出される2つの(110)面のピーク半値幅の平均値が33°以下である。
本開示においては、中でも上記半値幅の平均値が32°以下、特に、30°以下であることが好ましい。
なお、半値幅の下限は特には限定されるものではないが、柔軟性等の観点から25°以上であることが好ましい。
【0028】
上記半値幅の測定方法としては、以下の方法を用いることができる。
上記保護フィルムの(110)面の板面面内方向の配向度を調べるため、広角X線回折法(In-Plane法)を用いる。この測定は、全自動水平型多目的X線回折装置(リガク社製、SmartLab(回転対陰極型))を用い、出力:45kV、200mA、スキャン方式:φ連続スキャン(φ=0~360°)、入射角:2.0°、回折角:2θχ=14.05°、測定ステップ:1°、スキャン速度:100°/分の条件にて測定を行う。得られた広角X線回折法測定のプロファイルに示されるピークの半値幅を測定し、これをピークの半値幅とする。測定は3回行い、その平均値を用いることとする。2θχの値は、広角X線回折法の2θ/θ測定時に検出されるポリプロピレンの結晶の(110)面の回折ピーク位置の値を採用している。
なお、この測定に用いたスリット系は、上流側(X線入射側)から下流側(検出器側)に向けて、1)0.5°入射縦発散防止ソーラースリット、2)0.1mm高さ×5mm幅スリット、3)試料、4)20mm幅スリット、5)0.5°受光縦発散防止ソーラースリット、及び6)20mm幅スリットをこの順に配置して構成する。
【0029】
このようにして測定されたピークの半値幅は、ポリプロピレンの結晶化度を示すものであり、値がより小さい場合は、結晶化度がより大きいことを示すものである。
本開示における保護フィルムは、例えばポリプロピレンの延伸度合を変更すること、添加剤や異種ポリマーをブレンドすること、アニール等熱履歴を加えること等により上述したピークの半値幅の範囲内の保護フィルムを得ることが可能となる。」
エ 「【0069】
[参考実施例1~5、および参考比較例1~4]
以下のポリプロピレンフィルムA~H、およびナイロンフィルムを準備した。
・ポリプロピレンフィルムA:BNT(フタムラ化学株式会社製)
・ポリプロピレンフィルムB:PA30(サン・トックス株式会社製)
・ポリプロピレンフィルムC:P2261(東洋紡株式会社製)
・ポリプロピレンフィルムD:P2271(東洋紡株式会社製)
・ポリプロピレンフィルムE:PA30(サン・トックス株式会社製)
・ポリプロピレンフィルムF:FOR-AQ(フタムラ化学株式会社製)
・ポリプロピレンフィルムG:OPU-1(三井化学東セロ株式会社社製)
・ポリプロピレンフィルムH:FOA-BT(フタムラ化学株式会社製)
・ナイロンフィルム:ONBC(ユニチカ株式会社製)
【0070】
[評価1]
上記ポリプロピレンフィルムA~H、およびナイロンフィルムについて、下記方法により、(110)面でのピークの半値幅、および温度40℃、相対湿度差90%RHの条件での水蒸気透過度(以下、単に水蒸気透過度とする。)を測定した。評価1の結果を下記表1に示す。
((110)面でのピークの半値幅)
結晶化度を示す(110)面でのピークの半値幅は、上述した通りの方法により測定した。すなわち、広角X線回折法のインプレーン(In-Plane)測定を行い、得られたプロファイルから検出される2つの(110)面のピーク半値幅を測定し、その平均値をピークの半値幅とした。」
オ 「【0073】
[図:0001419648000001.jpg]
」
カ 「【0075】
[実施例1]
(真空断熱材用外包材の作製)
ポリプロピレンフィルムAを保護フィルムとして、ポリプロピレンフィルムA、ガスバリアフィルムA、ガスバリアフィルムB、および熱溶着可能なフィルムをこの順に有する真空断熱材用外包材を得た。ガスバリアフィルムAとして、片面に厚み約40nmのアルミニウム膜(Al膜)が蒸着された厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(東レフィルム加工株式会社製VM-PET1510)を用い、ガスバリアフィルムBとして、片面に厚み約40nmのアルミニウム膜(Al膜)が蒸着された厚み12μmのエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂基材(株式会社クラレ社製VMXL)を用いた。また、熱溶着可能なフィルムとして、厚み30μmの直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)(三井化学東セロ株式会社製TUX(登録商標)HCE)を用いた。
ガスバリア性フィルムAおよびガスバリア性フィルムBは、Al膜が互いに向き合うように配置した。各フィルムは、接着剤層で接合した。接着剤層を形成するための接着剤は、ポリエステルポリオールを主成分とする主剤(ロックペイント社製製品名:RU-77T)、脂肪族系ポリイソシアネートを含む硬化剤(ロックペイント社製製品名:H-7)、および酢酸エチルの溶剤が、重量配合比が主剤:硬化剤:溶剤=10:1:14となるように混合された、2液硬化型の接着剤を用いた。上述した接着剤を外側となる側のフィルムの一方の面に塗布量3.5g/m2となるように塗布して接着剤層を形成し、接着剤層が形成された外側となる側のフィルムと内側となる側のフィルムとを接着剤層を間に挟んで加圧した。
【0076】
(真空断熱材の作製)
実施例1で得られた真空断熱材用外包材(寸法:360mm×450mm)を2枚準備し、熱溶着可能なフィルム同士が向き合う様にして2枚重ねて、四辺形の三辺をヒートシールして一辺のみが開口した袋体を作製した。芯材として290mm×300mm×30mmのグラスウールを用い、乾燥処理を行った後、袋体に、芯材および乾燥剤として5gの酸化カルシウムを収納して、袋体内部を排気した。その後、袋体の開口部分をヒートシールにより密封し、ヒートシール部を図2に示すような折り曲げ加工を行い真空断熱材を得た。到達圧力は0.05Paとした。
【0077】
[実施例2]
保護フィルムとしてポリプロピレンフィルムBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材用外包材および真空断熱材を得た。
【0078】
[実施例3]
保護フィルムとしてポリプロピレンフィルムCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材用外包材および真空断熱材を得た。
【0079】
[実施例4]
保護フィルムとしてポリプロピレンフィルムDを用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材用外包材および真空断熱材を得た。
【0080】
[実施例5]
保護フィルムとしてポリプロピレンフィルムEを用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材用外包材および真空断熱材を得た。」
キ 「【0085】
[評価2]
(屈曲処理後(ゲルボ後)の水蒸気透過度)
実施例1~5および比較例1~4で得た真空断熱材用外包材から、それぞれ幅210mm×長さ297mm(A4サイズ)の長方形のサンプルを切り出し、幅方向の両端を貼り合わせて円筒状に丸め、筒状にした試験片を作成した。この試験片の両端をゲルボフレックステスター(テスター産業社製、機種名BE1006)の固定ヘッドと駆動ヘッドとで保持し、ASTMF392に準拠して、440度の角度でひねりを加えながら固定ヘッドと駆動ヘッドの間隔を7インチから3.5インチに狭めて、さらにひねりを加えた状態を維持したままヘッドの間隔を1インチまで狭め、その後、ヘッドの間隔を3.5インチまで広げて、さらにひねりを戻しながらヘッドの間隔を7インチまで広げるという往復運動を40回/minの速さで、温度25℃で3回行った。
上記屈曲処理後の水蒸気透過度を上述した方法と同様の方法により測定した。
結果を表2に示す。
【0086】
(高湿度条件下で長時間保存後の熱伝導率測定)
実施例1~5および比較例1~4で得た真空断熱材を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気で500時間保管した後、熱伝導率測定装置(オートラムダHC-074、英弘精機社製)を用いて、JISA1412-2:1999(熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法))に準拠して熱伝導率を測定した。測定は、真空断熱材の主面が上下方向を向くように配置して下記の条件で行った。各実施例および比較例につき、少なくとも3つのサンプルを用いて測定し、それらの測定値の平均をその実施例または比較例の真空断熱材の湿熱劣化後の熱伝導率とした。
(熱伝導率の測定条件)
・試験の定常に要する時間:15分以上
・標準板:EPS
・高温面の温度:30℃
・低温面の温度:10℃
・測定試料の平均温度:20℃
【0087】
【表2】
[図:0001419648000002.jpg]
【0088】
上記表2に示される実施例1~5、および比較例1~3の対比では、用いられている保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたものは、ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果のいずれもが悪い点が確認された。
これは、上記表1で示されたように、保護フィルムの結晶化度が初期の水蒸気透過度との相関がないにも関わらず、シール端部が図2に示すような折り曲げ加工が施された真空断熱材を、高湿度環境下で長期間にわたり保存した場合、所定の結晶化度に満たないポリプロピレンフィルムを保護フィルムとして用いた真空断熱材は水蒸気透過度が低下したことが示唆されるものであり、結晶化度が所定の範囲未満である場合の水蒸気バリア性の低下の推定理論を裏付けるものであると思われる。定歪条件により機械的劣化を行うゲルボ後の水蒸気透過度の結果についても、これを裏付けるものと思われる。」
(3) 判断
ア これら記載から、段落【0023】に記載される、「ポリプロピレンの結晶化度を所定の値以上とすることにより、上述した頂部4における局所的に結晶領域の割合が極めて小さな領域が生じる可能性を低下させることにより、本開示の真空断熱材を、長期間、高湿度環境下で用いた場合であっても、上記真空断熱材の断熱効果の低下を抑制することができるようにすること」は、段落【0088】に記載される「結晶化度が所定の範囲未満である場合の水蒸気バリア性の低下の推定理論を裏付ける」ためのものである「ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果を確認」することで理解できるものと解される。
イ しかしながら、本願の発明の詳細な説明から、「結晶化度が所定の範囲未満である場合の水蒸気バリア性の低下の推定理論」がどのようなものか理解することができず、さらに当該推定理論と「ゲルボ後の水蒸気透過度」、および「温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果」との関係も理解できない。
ウ また、上記キの【表2】に、「ゲルボ後の水蒸気透過度」及び「温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果」に係る測定値がいずれも記載されておらず、「保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたものは、ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果のいずれもが悪い点」を確認することができない。さらに、上記キの【表2】以外の本願の発明の詳細な説明の記載をみても、「保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたものは、ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果のいずれもが悪い点」を確認することができない。
エ してみると、発明の詳細な説明の記載は、請求項1~6に関して、発明が解決しようとする課題及びその解決手段との関係において、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないといわざるを得ない。
(4) 令和6年4月1日提出の意見書における審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年4月1日提出の意見書で、明細書の段落【0088】の記載について「これは、明らかに「保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたもの」の上記熱伝導率測定結果が悪いことが実証されたことを示すものであります。」、「本願明細書[0088]段落の記載は、「ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果を確認」するまでなく、「結晶化度が所定の範囲未満である場合の水蒸気バリア性の低下の推定理論を裏付ける」ものであることは明らかであると考えます。」(2.(2)を参照。)と主張している。
さらに、上記意見書に実験成績証明書を添付して、「本実験成績証明書は、上記本願明細書[0088]段落の記載を裏付ける資料として、本願の出願前に測定されていた実験データを示す」と主張している。
しかしながら、明細書の段落【0088】には、「上記表2に示される実施例1~5および比較例1~3の対比では、用いられている保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたものは、ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果のいずれもが悪い点が確認された。」と記載されている。そして、上記(3)ウで説示したとおり、明細書の【表2】には、「ゲルボ後の水蒸気透過度」及び「温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果」に係る測定値はいずれも記載されていない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明は、段落【0023】において、「ポリプロピレンの結晶化度を所定の値以上とすることにより、上述した頂部4における局所的な結晶領域の割合が極めて小さな領域が生じる可能性を低下させる」と記載しており、段落【0088】にも、「保護フィルムの結晶化度が初期の水蒸気透過度との相関がないにも関わらず、シール端部が図2に示すような折り曲げ加工が施された真空断熱材を、高湿度環境下で長期間にわたり保存した場合、所定の結晶化度に満たないポリプロピレンフィルムを保護フィルムとした用いた真空断熱材は水蒸気透過度が低下したことをが示唆されるもの」であると記載しており、本願明細書の発明の詳細な説明は、一貫してポリプロピレンからなる保護フィルムの端部を密封後に折り曲げた時、すなわちゲルボ化の水蒸気透過度について説明するものであるから、審判請求人の「推定理論を裏付ける」という主張の裏付けとなるものではない。
さらに、審判請求人が【0088】の記載を裏付ける資料として提出した実験成績証明書について検討すると、審判請求人が提出した実験成績証明書は、「5.実験内容」に記載された実験方法からみて、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0085】に記載された「屈曲処理」を行うことなく、段落【0086】に記載された高湿度条件下で長時間保存後の熱伝導率測定を行った結果を示すものと認められる。
ここで、特許法第36条第4項第1号において、いわゆる実施可能要件を規定した趣旨は、通常の知識を有する者(当業者)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したといえない発明に対して、独占権を付与することになるならば、発明を公開した代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反する結果を生ずるからである。
そして、特許法施行規則第24条の2が「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を記載すべきとしたのは、特許法第36条第4項第1号の趣旨の実効性を実質的に確保するためである。
してみると、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の裏付けとしての実験成績証明書は、発明の詳細な説明に既に記載された内容を、その記載の範囲内で補足する程度のものに限り許容されると解するのが相当である。
しかしながら、審判請求人の提出する実験成績証明書は、段落【0085】に記載された「屈曲処理」を行うことなく、段落【0086】に記載された高湿度条件下で長時間保存後の熱伝導率測定を行った結果を示すに過ぎないのであって、明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲内において、その補足をするものということはできないのであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。
2.理由2について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この規範に沿って検討する。
上記理由1で説示したとおり、発明の詳細な説明の記載は、発明が解決しようとする課題が記載されている。
しかしながら、【表2】に「ゲルボ後の水蒸気透過度」及び「温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果」に係る測定値がいずれも記載されておらず、「保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたものは、ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果のいずれもが悪い点」を確認することができず、さらに、【表2】以外の本願の発明の詳細な説明の記載をみても、「保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたものは、ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果のいずれもが悪い点」を確認することができないから、発明の詳細な説明に記載された事項において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」は存在しないといわざるを得ない。
そして発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲に記載された請求項1~6とを対比すると、発明の詳細な説明に「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」が存在しないのであるから、特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているものといわざるを得ない。
審判請求人は、審判請求人は、令和6年4月1日提出の意見書で「上記本願明細書[0088]段落の記載から、審判官殿がご指摘されている「保護フィルムのXRD in plane半値幅(2deg)の値が33°を超えたものは、ゲルボ後の水蒸気透過度、および温度40℃、湿度90%の条件下で500時間保管後の熱伝導率測定結果のいずれもが悪い点」は確認されている」と主張する。
しかしながら、上記1.(4)で説示したとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。
3.理由3について
(1) 引用文献1について
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。以下同様。)。
(ア)「技術分野
[0001]
本発明は、真空断熱材、真空断熱材の製造方法及び真空断熱材用外包材に関する。
背景技術
[0002]
冷蔵庫、自動販売機等の保温保冷用機器や建築物等には、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。このような断熱材としては、従来のガラス繊維製断熱材や発泡樹脂製断熱材などに替えて、真空断熱材の利用が進んでいる。真空断熱材は、ガスバリア性を有する外包材によって芯材が真空状態(減圧状態)で封止された構造を有する。
[0003]
真空断熱材の断熱性を維持するためには、内部の高い真空度を維持することが重要である。高い真空度を維持する技術としては、外部より浸入してくるガスを吸着させるために、芯材と共に吸着剤を外包材で封止するものや(特許文献1及び2参照)、加熱しながら減圧することにより芯材内部の水分を揮発させながら、芯材の封止を行うもの(特許文献3参照)が提案されている。
[0004]
一方、上記外包材としては、最内に配設される熱融着層とガスバリア層とを有するシート材が用いられ、このシート材のヒートシールにより、芯材を封止するものが一般的である。上記熱融着層としては、良好な熱融着性を有する等の観点から、ポリエチレンをはじめとしたポリオレフィン等が広く用いられている。これに対し、熱融着層として、ガスバリア性に優れるエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いた外包材が提案されている(特許文献4及び5参照)。この技術は、真空断熱材内部の真空度、ひいては断熱性を長期間維持するためには、ヒートシールされた熱融着層の端面からのガスの浸入(透過)をも抑えることが重要であることに着目したものである。
[0005]
しかし、上記EVOH等のビニルアルコール系樹脂から形成された熱融着層を有する外包材を用いた場合、ポリエチレン等から形成された熱融着層を有する外包材を用いた場合と比較して、断熱性は長期間にわたって維持されるものの、初期段階の断熱性が相対的に低いという不都合を有する。」
(イ)「[0025]
<真空断熱材>
図1の真空断熱材10は、芯材11、及びこの芯材11を真空状態で封止する外包材12を備える。また、真空断熱材10は、板状である。外包材12は、ビニルアルコール系樹脂を含み最内に配設される熱融着層13と、この熱融着層13の外面側に積層されるガスバリア層14とを有する。真空断熱材10においては、熱融着層13同士を対向配置した一対のシート状の外包材12の周辺部がヒートシールされていることにより、袋状の外包材12となり、この袋状の外包材12が芯材11を封止している。」
(ウ)「[0036]
(外包材12)
外包材12は、熱融着層13、ガスバリア層14及び外層15を内側からこの順に有する積層体である。図1の真空断熱材10においては、一対のシート状の外包材12の周辺部における熱融着層13同士が熱融着された状態となっている。なお、熱融着層13、ガスバリア層14及び外層15の各層間には、各層同士を接着するための接着剤が介在している。」
(エ)「[0043]
(ガスバリア層14)
ガスバリア層14は、熱融着層13の外面側に積層されている。ガスバリア層14により、当該真空断熱材10は、高い真空度を長期間維持することができる。ガスバリア層としては、金属箔又は蒸着フィルムの層が挙げられる。ガスバリア層14は、単層であってもよく、多層であってもよい。ガスバリア層14は、1枚の金属箔又は蒸着フィルムから形成されていてもよく、複数枚(例えば2枚)の金属箔又は蒸着フィルムから形成されていてもよく、1又は複数枚の金属箔と1又は複数枚の蒸着フィルムとから形成されていてもよい。なお、各金属箔又は蒸着フィルムは、例えば公知の接着剤等により層状に接着することができる。
[0044]
上記金属箔としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、鉄箔等を挙げることができるが、アルミニウム箔が好ましい。上記金属箔の平均厚さとしては、例えば1μm以上100μm以下とすることができる。」
(オ)「[0047]
(外層15)
外層15は、ガスバリア層14の外面側に積層されている。外層15は、例えばPET、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂層とすることができる。この外層15としての樹脂層は、公知の延伸又は無延伸の樹脂フィルムを用いることができる。外層15としての樹脂層は、単層であってもよいし、多層であってもよい。」
(カ)「[0074]
実施例及び比較例で用いた各フィルム等は、以下の通りである。
PETフィルム:平均厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ社の「ルミラー(登録商標)」)
OPAフィルム:平均厚さ15μmの延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ社の「エンブレム(登録商標)ON-BC」)
OPPフィルム:平均厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社の「パイレンフィルム-OT(登録商標)」)
VM-PETフィルム:平均厚さ12μmのアルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ社の「VM-PET1510」)
VM-EVOHフィルム:平均厚さ15μmのアルミ蒸着二軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(クラレ社の「エバール(登録商標)VM-XL」)
アルミ箔:平均厚さ6.5μmのアルミニウム箔
EVOHフィルム:平均厚さ30μmの無延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(クラレ社の「エバール(登録商標)EF-E」)
PEフィルム:平均厚さ50μmのポリエチレンフィルム(タマポリ社の「A-1」)
合金:サエス・ゲッターズ・エス・ピー・エー社の「コンボゲッター(登録商標)」」
(キ)「[0082]
[実施例10]
以下の方法で「OPP/アルミニウム/EVOH」の各層を有する外包材及び「OPP/アルミニウム」の各層を有するラミネート体を作製した。なお、上記外包材において、OPPが外層、アルミニウムがガスバリア層、EVOHが熱融着層となる。
[0083]
上記OPPフィルム、アルミ箔及びEVOHフィルムを用意した。これらのうち、OPPフィルム及びEVOHフィルムの片面のそれぞれに2液型の接着剤(三井化学社の「A-520」及び「A-50」)を塗布し、OPP層/接着剤層/アルミニウム層/接着剤層/EVOH層という構成となるように、OPPフィルム、アルミ箔及びEVOHフィルムをラミネートすることによって、外包材を得た。また、別途OPPフィルム及びアルミ箔の片面のそれぞれに2液型の接着剤(三井化学社の「A-520」及び「A-50」)を塗布し、OPP層/接着剤層/アルミニウム層/接着剤層という構成となるように、OPPフィルム及びアルミ箔をラミネートすることによって、ラミネート体を得た。
[0084]
得られた外包材を68cm×75cmのサイズに2枚裁断した。その裁断した2枚の外包材をEVOH層同士が内面となるように重ね合わせ、3方を10mm幅でヒートシールすることにより、短辺側に開口部を有する3方袋である外装袋を得た。また、得られたラミネート体を20cm×20cmのサイズに裁断した。裁断したラミネート体を、OPP層が外装袋に接するように外装袋外面に置き、ラミネート体の四隅を粘着テープで固定した。
[0085]
機内温度を105℃とした熱風乾燥機(タバイエスペック社の「PHH-400型」)の機内に、上記ラミネート体を貼り付けた外装袋を入れ、事前乾燥として3時間の乾燥を行った。
[0086]
機内温度を160℃とした熱風乾燥機(田中化学機械製造所社製)の機内に、平面サイズが60cm×60cm×1.5cmであるガラスファイバーからなる板状の断熱性の芯材を入れ、1時間乾燥を行った。
[0087]
所定時間乾燥した後、ラミネート体を貼り付けた外装袋及び芯材をそれぞれ熱風乾燥機より取り出した。その後、速やかに外装袋の開口部から芯材及び吸着剤としての酸化カルシウム入り小袋を挿入し、真空断熱パネル製造装置(エヌ・ピー・シー社の「KT500-RD型」)を用いて、開口部をヒートシールすることにより実施例10の真空断熱材を得た。なお、真空チャンバー内に設置された熱板を100℃とし、内部圧力1.2Paの状態で外装袋を密封した。また、外装袋外面に貼り付けられたラミネート体は、熱融着層の水分率の測定の際の参照物として用いた(後述)。
[0088]
[実施例11、比較例6]
外包材(外装袋)の層構造、事前乾燥の有無、吸着剤の種類及びその有無、並びに封止時の熱板温度を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例10と同様にして、実施例11及び比較例6の各真空断熱材を得た。
[0089]
[評価]
得られた各真空断熱材について、上記(1)の方法により熱伝導率を測定した。測定結果を表1に示す。また、実施例10、11及び比較例6の真空断熱材については、熱融着層を有さない構造のラミネート体も用いて、上記(2)の方法により熱融着層の水分率を測定した。測定結果を表1に示す。
[0090]
[表1]
[図:0001419648000003.jpg]
[0091]
表1において、外包材の各層は、左端の外層が最外層、熱融着層が最内層であり、表に記載の順の積層構造となっている。また、「外層/ガスバリア層」の欄の「-」は、層を有しないことを示し、「吸着剤」の欄の「-」は、吸着剤を用いていないことを示す。「熱融着層水分率」の欄の「-」は、測定していないことを示す。
[0092]
[表2]
[図:0001419648000004.jpg]
[0093]
表2に示されるように、実施例1~16の各真空断熱材は、熱伝導率の初期値(7日後の伝導率)から極小値までの間における最大値(T2:いずれも初期値)に対する熱伝導率の極小値(T1)の比(T1/T2)が0.8以上1以下である。これらの各真空断熱材は、熱伝導率の初期値がいずれも0.0030W/(m・K)以下と低い。また、これらの各真空断熱材は、147日後の熱伝導率が、7日後の熱伝導率(初期値)以下であり、優れた断熱性が長期間持続することがわかる。
[0094]
一方、比(T1/T2)が0.8未満である比較例1、3、6及び7の真空断熱材は、初期段階の断熱性が低い。また、熱融着層がポリエチレンから形成されている比較例2、4及び5の真空断熱材は、初期段階の断熱性は低いものの、147日後の熱伝導率が、7日後の熱伝導率(初期値)に比べて大きく(15%以上)上昇しており、断熱性の維持性能に劣ることがわかる。
産業上の利用可能性
[0095]
発明の真空断熱材は、冷蔵庫、給湯設備、炊飯器等の家電製品用の断熱材;壁部、天井部、屋根裏部、床部等に用いられる住宅用断熱材;車両屋根材;自動販売機等の断熱パネルなどに利用できる。
」
(ク)「[図1]
[図:0001419648000005.jpg]
」
イ 引用発明
上記アの実施例10、実施例11に着目すると、引用文献1には、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明1」、「引用発明2」、「引用発明3」という。)
(引用発明1)
「熱融着層13、ガスバリア層14及び外層15を内側からこの順に有する外包材12であって、
外層15は、OPP(ポリプロピレン)フィルムである、真空断熱材10の外包材12。」
(引用発明2)
「芯材11、及びこの芯材11を真空状態で封止する外包材12を備える真空断熱材10であって、
外包材12は、熱融着層13、ガスバリア層14及び外層15を内側からこの順に有し、
外層15は、OPP(ポリプロピレン)フィルムである、真空断熱材10。」
(引用発明3)
「冷蔵庫、給湯設備、炊飯器等の家電製品用の断熱材;壁部、天井部、屋根裏部、床部等に用いられる住宅用断熱材;車両屋根材;自動販売機等の断熱パネルなどに利用できる真空断熱材付きの物品であって、
真空断熱材10は、芯材11、及びこの芯材11を真空状態で封止する外包材12を備え、
外包材12は、熱融着層13、ガスバリア層14及び外層15を内側からこの順に有し、
外層15は、OPP(ポリプロピレン)フィルムである、真空断熱材付きの物品。」
(2)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。更に詳しくは、省資源化により廃棄時の環境負荷を低減することができ、かつ、包装材料として優れた機械特性とガスバリア性の両方を兼ね備える積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、工業製品等に用いられる包装材料は、蛋白質、油脂の酸化抑制、味、鮮度の保持、医薬品の効能維持のために、酸素や水蒸気などのガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。また、太陽電池や有機EL等の電子デバイスや電子部品等に使用されるガスバリア性材料は、食品等の包装材料以上に高いガスバリア性を必要とする。
【0003】
そのうち、ポリプロピレンフィルムは食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護フィルムなど広範囲な用途で汎用的に用いられる。このポリプロピレンフィルムを用いることで同材料の特性により、例えばナイロン6などからなるポリアミドフィルムやポリエチレンテレフタレートなどからなるポリエステルフィルムと比べ、高い水蒸気バリア性を発現することが可能である。しかし、ポリプロピレンフィルムでは酸素バリア性を有していないという問題点があった。さらには、従来のポリプロピレンフィルムは、150℃での収縮率が数十%あり、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等と比べると耐熱性が低く、また剛性も低いため、用途が制限されていた。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、すなわち、包装材料として十分な機械特性と優れたガスバリア性の両方を兼ね備える積層フィルムを提供することにある。」
ウ 「【0042】
基材フィルムとして用いるポリプロピレンフィルムは、結晶配向を有し、結晶配向の程度は、用いられるポリプロピレンの分子構造や、フィルム製造におけるプロセスや条件によって変化する。また、延伸ポリプロピレンフィルムの配向方向は、広角X線回折法により、X線をフィルム面に対して垂直に入射し、結晶由来の散乱ピークの方位角依存性を測定することによって、決定することができる。詳しくは、延伸ポリプロピレンフィルムは、典型的には単斜晶のα型結晶構造を有する。そしてそのα型結晶は、広角X線回折法により110面(面間隔:6.65オングストローム)の散乱強度の方位角依存性を測定すると、主として一軸に強い配向をもつ。つまり、α型結晶の110面由来の散乱強度を方位角に対してプロットした場合、最も強いピークが、分子軸の配向の垂直方向に観察される。本発明は、この最大ピークの半値幅によって、配向の程度を規定するものである。
【0043】
基材フィルムは、広角X線散乱法により測定される110面の散乱強度を方位角に対してプロットした時の最大ピークの半値幅が30度以下であることが重要である。この半値幅の上限は、好ましくは29度であり、より好ましくは28度である。110面由来の散乱強度の方位角依存性の半値幅が前記範囲よりも大きいと、配向が十分でなく、耐熱性や剛性が十分でない。110面由来の散乱強度の方位角依存性の半値幅の下限は、好ましくは5度であり、より好ましくは7度であり、さらに好ましくは8度である。110面の半値幅が前記範囲よりも小さいと、耐衝撃性の低下や配向割れを生じることがある。
【0044】
基材フィルムの半値幅は、平行度の高いX線を用いて測定されることが好ましく、放射光が好ましく用いられる。
広角X線回折測定に用いるX線発生源としては、実験室で用いられる管球式や回転式などの一般的な装置でもよいが、平行度が高く高輝度の放射光を照射できる高輝度光源を用いることが好ましい。放射光では、X線が広がりにくく輝度も高いため、測定を高精度かつ短時間で行うことができ、例えば厚み数十ミクロンのフィルムサンプルでもフィルムを重ね合わせることなくフィルム1枚での測定が可能になり、しかも精度の高い測定が可能であるので詳細な結晶配向評価が可能になる。それに対して、輝度が低いX線では、厚み数十ミクロンのフィルムサンプルを測定する場合、複数枚を重ね合わさなければ測定に長時間を要することになり、複数枚を重ね合わさせると、微小なズレにより、110面の散乱強度を方位角に対してプロットした時のピークがブロードになり、得られる半値幅の値が大きくなる傾向となる。
平行度が高く高輝度の放射光を照射可能な設備としては、例えば、SPring-8のような大型放射光施設等を挙げることができ、例えば、フロンティアソフトマター開発産学連合体(FSBL)が所有するビームラインBL03XUを使用して本発明の半値幅を測定することが好ましい。」
(3)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸ポリプロピレンフィルムに関する。更に詳しくは、高温での寸法安定性や高い剛性が求められる様々な分野で好適に用いることができる、耐熱性、機械特性に優れた延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレンの延伸フィルムは、食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護フィルムなど広範囲な用途で汎用的に用いられていた。しかし、従来のポリプロピレンフィルムは、150℃での収縮率が数十%あり、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等と比べると耐熱性が低く、また剛性も低いため、用途が制限されていた。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、150℃でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに匹敵する低収縮率を有し、高剛性である延伸ポリプロピレンフィルムを提供することにある。」
ウ 「【0027】
本発明における延伸ポリプロピレンフィルムは、その構造、特にフィルムの配向に特徴がある。
(フィルムの配向)
延伸されたポリプロピレンフィルムは、一般的に結晶配向を有し、その方向や程度がフィルム物性に大きな影響を及ぼす。結晶配向の程度は、用いられるポリプロピレンの分子構造や、フィルム製造におけるプロセスや条件によって変化する。また、延伸ポリプロピレンフィルムの配向方向は、広角X線回折法により、X線をフィルム面に対して垂直に入射し、結晶由来の散乱ピークの方位角依存性を測定することによって、決定することができる。詳しくは、延伸ポリプロピレンフィルムは、典型的には単斜晶のα型結晶構造を有する。そしてそのα型結晶は、広角X線回折法により110面(面間隔:6.65オングストローム)の散乱強度の方位角依存性を測定すると、主として一軸に強い配向をもつ。つまり、α型結晶の110面由来の散乱強度を方位角に対してプロットした場合、最も強いピークが、分子軸の配向の垂直方向に観察される。本発明は、この最大ピークの半値幅によって、配向の程度を規定するものである。
なお、ポリプロピレンのα型結晶の110面由来の散乱の方位角依存性について、典型的なパターンを図1に示す。また図1中に、110面の方位角依存性の主たるピーク(最大ピーク)の半値幅を示す。
【0028】
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムでは、広角X線散乱法により測定される110面の散乱強度を方位角に対してプロットした時の最大ピークの半値幅が30度以下である。この半値幅の上限は、好ましくは29度であり、より好ましくは28度である。110面由来の散乱強度の方位角依存性の半値幅が前記範囲よりも大きいと、配向が十分でなく、耐熱性や剛性が十分でない。110面由来の散乱強度の方位角依存性の半値幅の下限は、好ましくは5度であり、より好ましくは7度であり、さらに好ましくは8度である。110面の半値幅が前記範囲よりも小さいと、耐衝撃性の低下や配向割れを生じることがある。
【0029】
(広角X線回折装置)
本発明で規定する半値幅は、平行度の高いX線を用いて測定されることが好ましく、放射光が好ましく用いられる。
広角X線回折測定に用いるX線発生源としては、実験室で用いられる管球式や回転式などの一般的な装置でもよいが、平行度が高く高輝度の放射光を照射できる高輝度光源を用いることが好ましい。放射光では、X線が広がりにくく輝度も高いため、測定を高精度かつ短時間で行うことができ、例えば厚み数十ミクロンのフィルムサンプルでもフィルムを重ね合わせることなくフィルム1枚での測定が可能になり、しかも精度の高い測定が可能であるので詳細な結晶配向評価が可能になる。それに対して、輝度が低いX線では、厚み数十ミクロンのフィルムサンプルを測定する場合、複数枚を重ね合わさなければ測定に長時間を要することになり、複数枚を重ね合わさせると、微小なズレにより、110面の散乱強度を方位角に対してプロットした時のピークがブロードになり、得られる半値幅の値が大きくなる傾向となる。
平行度が高く高輝度の放射光を照射可能な設備としては、例えば、SPring-8、高エネルギー加速器研究機構、あいちシンクロトロン光センター、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターのような大型放射光施設等を挙げることができ、例えば、SPring-8ではフロンティアソフトマター開発産学連合体(FSBL)が所有するビームラインBL03XUを使用して本発明の半値幅を測定することが好ましい。」
エ 「【0069】
5)広角X線回折
本発明の実施例では、大型放射光施設SPring―8の中にフロンティアソフトマター開発産学連合体(FSBL)が所有するビームラインBL03XUの第2ハッチにおいて、X線源方向とフィルム面とのなす角が垂直となすようし、測定フィルムをセットし、広角X線(WAXS)測定を行った。測定条件を下記に示す。
X線波長は0.1nmとし、検出器としてイメージングプレート(RIGAKUR-AXIS VII)またはイメージインテンシファイア付きCCDカメラ(HamamatsuPhotonicsV7739P + ORCAR2)を用い、試料前後にセットしたイオンチェンバーの値から透過率を算出した。得られた2次元像に対して暗電流(ダークノイズ)および透過率を勘案した空気散乱補正を行った。カメラ長の測定には酸化セリウム(CeO2)を用い、Fit2D(EuropeanSynchrotronRadiationFacility製のソフトウェア[http://www.esrf.eu/computing/scientific/FIT2D/])を用いて(110)面の方位角プロファイルを算出した。
[図:0001419648000006.jpg]
」
オ 「
[図:0001419648000007.jpg]
」
カ 【図1】から、2つの(110)面のピークが検出されることが看取できる。
(4)対比・判断
ア 本願発明1について
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「熱融着層13」、「ガスバリア層14」、「外層」は、本願発明1の「熱溶着可能なフィルム」、「ガスバリア層」、「保護フィルム」に相当する。
そして、引用発明1の「熱融着層13、ガスバリア層14及び外層15を内側からこの順に有する」ことは、「ガスバリア層14」の一方の主面側に「熱融着層13」が配置され、「ガスバリア層14」の他方の主面側に「外層」が配置されていると解されるから、本願発明1の「ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一方の主面側に配置された熱溶着可能なフィルムと、前記ガスバリア層の他方の主面側に配置された保護フィルムと、を有」することに相当する。
引用発明1の「OPP(ポリプロピレン)」、「真空断熱材10」、「外包材12」は、本願発明1の「ポリプロピレン」、「真空断熱材」、「外包材」にそれぞれ相当する。
してみると、引用発明1の「外層15は、OPP(ポリプロピレン)フィルムである」ことは、本願発明1の「前記保護フィルムは、ポリプロピレンを含有する」ことに相当し、引用発明1の「真空断熱材10の外包材12」は、本願発明1の「真空断熱材用外包材」に相当する。
してみると、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1で相違する。
(一致点1)
「 ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一方の主面側に配置された熱溶着可能なフィルムと、前記ガスバリア層の他方の主面側に配置された保護フィルムと、を有し、
前記保護フィルムは、ポリプロピレンを含有する、真空断熱材用外包材。」
(相違点1)
本願発明1では、「かつ、前記保護フィルムの主面に対して、入射角2.0°、および回折角2θχ=14.05°の条件下で、広角X線回折法のインプレーン測定によりφ連続スキャン(φ=0~360°)した場合に検出される2つの(110)面のピーク半値幅の平均値が33°以下である」のに対して、引用発明1では、そのような構成がない点。
相違点1について検討すると、引用文献2、3には、「食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護フィルムなど広範囲な用途で汎用的に用いられる」ポリプロピレンフィルムについて「広角X線回折法により、X線をフィルム面に対して垂直に入射し、結晶由来の散乱ピークの方位角依存性を測定」し、「広角X線散乱法により測定される110面の散乱強度を方位角に対してプロットした時の最大ピークの半値幅が30度以下であること」が記載されているから、「表面保護フィルムなどの用途で用いられるポリプロピレンフィルムであって、広角X線回折法によりX線をフィルム面に対して垂直に入射し、広角X線散乱法により測定される110面の散乱強度を方位角に対してプロットした時の最大ピークの半値幅が30度以下であるポリプロピレンフィルム」は、周知技術であるといえる。
また、広角X線回析法として「入射角2.0°および回析角2θ=14.05°の条件下」で「インプレーン測定によりφ連続スキャン(φ=0~360°)」とすることは、単なる測定方法の違いにすぎないと認められる。
そして、引用発明1の「ポリプロピレン」からなる「保護フィルム」と、当該周知技術の表面保護フィルムなどの用途に用いられるポリプロピレンフィルムとは、いずれも機能・作用が共通するものであるから、引用発明1に周知技術を適用する動機付けがあるといえる。
また、上記相違点1を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明1及び周知技術の奏する作用効果から、当業者が予測し得た程度のものにすぎないものであって、格別顕著なものということはできない。
してみると、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本願発明3について
本願発明3と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「芯材11」、「真空断熱材10」は、本願発明3の「芯材」、「真空断熱材」に相当するから、引用発明2の「芯材11、及びこの芯材11を真空状態で封止する外包材12を備える真空断熱材10」は、本願発明3の「芯材および前記芯材を封入する外包材を有する真空断熱材」に相当する。
そして、上記アの対比を踏まえると、本願発明3と引用発明2とは、以下の一致点2で一致し、相違点2で相違する。
(一致点2)
「芯材および前記芯材を封入する外包材を有する真空断熱材であって、
前記外包材は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一方の主面側に配置された熱溶着可能なフィルムと、前記ガスバリア層の他方の主面側に配置された保護フィルムと、を有し、
前記保護フィルムは、ポリプロピレンを含有する、真空断熱材。」
(相違点2)
本願発明3では、「かつ、前記保護フィルムの主面に対して、入射角2.0°、および回折角2θχ=14.05°の条件下で、広角X線回折法のインプレーン測定によりφ連続スキャン(φ=0~360°)した場合に検出される2つの(110)面のピーク半値幅の平均値が33°以下である」のに対して、引用発明2では、そのような構成がない点。
相違点2について検討すると、本願発明1の相違点1についての検討と同様の理由により、本願発明3は、引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本願発明5について
本願発明5と引用発明3とを対比する。
引用発明3の「冷蔵庫、給湯設備、炊飯器等の家電製品」、「壁部、天井部、屋根裏部、床部等に用いられる住宅」、「車両屋根材;自動販売機等の断熱パネル」は、本願発明5の「熱絶縁領域を有する物品」に相当する。また、引用発明3の「真空断熱材付きの物品」は、本願発明5の「真空断熱材付き物品」に相当するから、引用発明3の「冷蔵庫、給湯設備、炊飯器等の家電製品用の断熱材;壁部、天井部、屋根裏部、床部等に用いられる住宅用断熱材;車両屋根材;自動販売機等の断熱パネルなどに利用できる真空断熱材付きの物品」は、本願発明5の「熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品」に相当する。
そして、上記ア、イの対比を踏まえると、本願発明5と引用発明3とは、以下の一致点3で一致し、相違点3で相違する。
(一致点3)
「 熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
前記真空断熱材は、芯材および前記芯材を封入する外包材を有し、
前記外包材は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層の一方の主面側に配置された熱溶着可能なフィルムと、前記ガスバリア層の他方の主面側に配置された保護フィルムと、を有し、
前記保護フィルムは、ポリプロピレンを含有する、真空断熱材付き物品。」
(相違点3)
本願発明5では、「かつ、前記保護フィルムの主面に対して、入射角2.0°、および回折角2θχ=14.05°の条件下で、広角X線回折法のインプレーン測定によりφ連続スキャン(φ=0~360°)した場合に検出される2つの(110)面のピーク半値幅の平均値が33°以下である」のに対して、引用発明3では、そのような構成がない点。
相違点3について検討すると、本願発明1の相違点1についての検討と同様の理由により、本願発明5は、引用発明3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)審判請求人の主張
審判請求人は、令和6年4月1日提出の意見書の4.(1)b)において、「引用文献1に記載されたような真空断熱材外包材は、端部を折り曲げて使用するものであります。したがって、その保護層に用いられるポリプロピレンは、あまり剛性の高い方向のポリプロピレン、すなわち結晶化度が高い方向のポリプロピレンは、当業者であれば、通常、選択するものではないものと考えます。」と主張する。
しかしながら、本願発明1、本願発明3及び本願発明5は、いずれも「端部を折り曲げて」使用する旨の発明特定事項を含まないものであって、審判請求人の主張は、クレームに基づかないものであるといわざるを得ない。また、引用文献1の図1に示されるように、引用文献1の外包材12は、その端部において熱融着層13をヒートシールするのみであって、折り曲げ処理を行うことは記載されていないから、審判請求人の主張は、失当であるといわざるを得ない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
また、本願発明1、3及び5は、それぞれ、引用発明1及び周知技術、引用発明2及び周知技術、引用発明3及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-003020