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特許拒絶査定不服審判

2024-000438

キャリアの摩耗が低減されたシリコンウエハーの研磨方法及びそれに用いる研磨液

審判番号
2024-000438
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-549107外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年01月11日
審決日
2024年09月27日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-549107「キャリアの摩耗が低減されたシリコンウエハーの研磨方法及びそれに用いる研磨液」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 2日国際公開、WO2020/066873〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 23項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は,令和1年 9月20日(優先権主張 平成30年 9月25日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年 4月10日付け:拒絶理由通知書
令和5年 7月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年10月13日付け:拒絶査定
令和6年 1月11日 :審判請求書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~11に係る発明は、令和5年 7月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項2】
シリコンウエハーを保持したキャリアを用いる研磨装置によって前記シリコンウエハーの研磨を行う方法であって、
前記研磨装置で用いる研磨液が、
BET法で測定される平均一次粒子径が4nm~30nmのシリカ粒子(A)と、BET法で測定される平均粒子径が30nmを超え50nm以下のシリカ粒子(B)とからなるシリカ粒子を0.1質量%~5質量%のシリカ濃度で含み、前記シリカ粒子(A):前記シリカ粒子(B)の質量比が100:0~85:15であるか、又は、
BET法で測定される平均一次粒子径が30nmを超え45nm未満のシリカ粒子(B´)のみからなるシリカ粒子を0.1質量%以上2.5質量%未満のシリカ濃度で含み、
連続8時間の研磨でキャリア片面の摩耗量が3μm以内の範囲である、
上記研磨方法。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定(令和5年10月13日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

「理由2.(特許法第29条第2項)

この出願の請求項1~11に係る発明は、この出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

請求項2、4、6~9、11については、引用文献1、5

請求項2、4、6、8~9、11については、引用文献2、5

請求項1、3、6~10については、引用文献1、3、5

請求項5については、引用文献1、4~5または2、4~5

請求項7については、引用文献1~2、5

記

1.特開2008-270584号公報

2.国際公開第2017/047307号

3.特開2010-153613号公報

4.特開2018-129397号公報

5.国際公開第2006/001340号(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明

1.引用文献2(国際公開第2017/047307号)の記載

(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「[0001] 本発明は研磨用組成物に関する。」

「[0021] なお、砥粒の平均一次粒子径の値は、例えば、窒素ガス等を用いたBET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて計算することができる。なお、繭形のコロイダルシリカ等の非球状の砥粒の場合は、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて仮想的な球状粒子の平均一次粒子径が計算されるので、この仮想的な球状粒子の平均一次粒子径を非球状の砥粒の平均一次粒子径とする。」

「[0057] 7.液状媒体について
本実施形態の研磨用組成物は、水、有機溶剤等の液状媒体を含有してもよい。液状媒体は、研磨用組成物の各成分(砥粒、構造中にベンゼン環を有する第4級アンモニウム塩、水溶性高分子、界面活性剤、添加剤等)を分散又は溶解するための分散媒又は溶媒として機能する。」
「[0060] 9.研磨対象物の研磨方法について
本実施形態の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法や条件は特に限定されるものではなく、一般的な研磨の方法、条件の範囲内において研磨対象物の研磨に好適な方法、条件を適宜選択して研磨を行えばよい。例えば、研磨対象物(例えば、窒化ケイ素膜の上にポリシリコン膜を堆積させた膜付シリコンウェーハ)と研磨パッドとの間に研磨用組成物を介在させ、研磨装置(片面研磨装置、両面研磨装置等)を用いて一般的な研磨条件で研磨を行うことによって、研磨対象物の研磨を行うことができる。
[0061] 例えば、窒化ケイ素膜の上にポリシリコン膜を堆積させた膜付シリコンウェーハを研磨対象物とし、片面研磨装置を用いて研磨する場合には、キャリアと呼ばれる保持具を用いてシリコンウェーハを保持し、研磨パッドが貼付された定盤をシリコンウェーハの片面に押しつけて研磨用組成物を供給しながら定盤を回転させることにより、シリコンウェーハの片面を研磨する。
また、両面研磨装置を用いてシリコンウェーハを研磨する場合には、キャリアと呼ばれる保持具を用いてシリコンウェーハを保持し、研磨パッドが貼付された定盤をシリコンウェーハの両側からシリコンウェーハの両面にそれぞれ押しつけて、研磨用組成物を供給しながら両側の定盤を回転させることにより、シリコンウェーハの両面を研磨する。」
「[0066] 〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
砥粒、第4級アンモニウム塩、水溶性高分子、及び水を混合して、研磨用組成物を製造した(表1を参照)。砥粒は、平均一次粒子径35nmの繭形のコロイダルシリカであり、研磨用組成物中の砥粒の濃度は2.0質量%である。第4級アンモニウム塩はベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(以下「BTMAH」と記す)であり、研磨用組成物中のBTMAHの濃度は0.05質量%である。水溶性高分子は、重量平均分子量(Mw)45000のポリ-N-ビニルピロリドン(以下「PVP」と記す)であり、研磨用組成物中のPVPの濃度は0.02質量%である。また、この研磨用組成物のpHは10.0であった。」

(2)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

a 引用文献2に記載された研磨方法は、キャリアを用いてシリコンウェーハを保持し、研磨用組成物を供給しながら両側の定盤を回転させることにより、シリコンウェーハの両面を研磨する両面研磨装置を用いてシリコンウェーハを研磨する方法であること([0060]、[0061])。

b 引用文献2には、研磨用組成物の各成分(砥粒等)を分散又は溶解するための分散媒又は溶媒として機能する液状媒体を含有すること、実施例1には研磨用組成物の各成分を水と混合すること、がそれぞれ記載されている。

したがって、引用文献2に記載された研磨用組成物は、研磨用組成物の各成分を分散又は溶解するための液状媒体を含有するといえる([0057]、 [0066])。

c 引用文献2には、砥粒の平均一次粒子径の値は、例えば、窒素ガス等を用いたBET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて計算すること、実施例1には研磨用組成物の砥粒は、平均一次粒子径35nmの繭形のコロイダルシリカであり、砥粒の濃度は2.0質量%であること、がそれぞれ記載されている。

したがって、引用文献2には、研磨用組成物の砥粒はBET法で測定される平均一次粒子径が35nmの繭形のコロイダルシリカであり、砥粒の濃度が2.0質量%であることが記載されているといえる([0021]、[0066])。

(3)引用発明

上記(1)、(2)から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「キャリアを用いてシリコンウェーハを保持し、研磨用組成物を供給しながら両側の定盤を回転させることにより、シリコンウェーハの両面を研磨する両面研磨装置を用いてシリコンウェーハを研磨する方法であって、
両面研磨装置に供給される研磨用組成物は、研磨用組成物の各成分を分散又は溶解するための液状媒体を含有し、
研磨用組成物の砥粒はBET法で測定される平均一次粒子径が35nmの繭形のコロイダルシリカであり、砥粒の濃度が2.0質量%である、
研磨方法。」

2.引用文献5(国際公開第2006/001340号公報)の記載

(1)引用文献5には、以下の事項が記載されている。

「[0004] 図2は両面研磨装置10の側面図を示している。図1は、図2の両面研磨装置100を矢視Aからみた上面図であり、両面研磨用キャリア10とシリコンウェーハ1と下定盤102の位置関係を示している。
両面研磨装置100は、シリコンウェーハ1の端面1cを保持孔11内で保持してシリコンウェーハ1の表面1aおよび裏面1bを露出させた状態で収容する両面研磨用キャリア10と、シリコンウェーハ1の表面1a側、裏面1b側にそれぞれ設けられ、表面に研磨クロス103、104がそれぞれ貼着された上定盤101、下定盤102とから構成されている。
[0005] シリコンウェーハ1が両面研磨用キャリア10の保持孔11内に収容され、上定盤101、下定盤102がシリコンウェーハ1側に移動されることによりシリコンウェーハ1の表面1aおよび裏面1bにそれぞれ研磨クロス103、104が押し付けられ、シリコンウェーハ1の表面1aと上定盤101の研磨クロス103との間、およびシリコンウェーハ1の裏面1bと下定盤 102の研磨クロス104との間それぞれに研磨用のスラリが供給されつつ、 両面研磨用キャリア10と、上定盤101、下定盤102とが相対的に逆回転される。これによりシリコンウェーハ1の表面1aおよび裏面1bがそれぞれ所定の研磨代だけ研磨されて鏡面状態にされる。」
「[0009] しかし、ステンレス・スチール製の両面研磨用キャリア10は、厚み精度が低く個々のキャリア毎に厚みがばらつく。このため、個々の両面研磨用キャリア10で仕上げられる各シリコンウェーハ1の平坦度がばらつくという問題があった。さらに、両面研磨用キャリア10の摩耗の進行の度合いは早いという問題があった。このため両面研磨用キャリア10の摩耗の進行度合いに応じて、シリコンウェーハ1の平坦度がばらつき、安定した平坦度が得られないという問題があった。
また、両面研磨用キャリア10が摩耗すると、それによって生じた金属粉がシリコンウェーハ1の金属汚染を引き起こすという問題があった。また、両面研磨用キャリア 10 が摩耗すると、それによって生じた金属粉がシリコンウェーハ1の表面でスクラッチキズを引き起こすという問題があった。また、両面研磨用キャリア10の摩耗の進行が早いため、両面研磨用キャリア10の交換サイクルが短く高コストを招くことになっていた。」

(2)上記記載から、引用文献5には、次の技術が記載されていると認められる。

「両面研磨用キャリアを備え、研磨用のスラリを用いてシリコンウェーハを研磨する両面研磨装置において、
両面研磨用キャリアの摩耗の進行の度合いが早いという問題があり、
両面研磨用キャリアの摩耗の進行が早いため、両面研磨用キャリアの交換サイクルが短く高コストを招くこと。」

3.引用文献6(特開2007-301713号公報)の記載

(1)新たに引用される引用文献6には、以下の事項が記載されている。

「【0003】
図5は、両面研磨装置の部分的な構成を概略的に示す平面図(a)と断面図(b)である。図5に示す両面研磨装置では、まず、両面研磨を行う半導体基板Wが研磨キャリア501で保持される。例えば、シリコンウエハの研磨の場合、シリコンウエハへの金属汚染を抑制するため、エポキシガラスより構成された研磨キャリア501が用いられる。研磨キャリア501には、図では省略している外周歯(歯部)を備える。この外周歯と太陽歯車502とリング状の内歯歯車503の各歯部を噛合させて回転させることで、研磨キャリア501は、自転と同時に公転(遊星運動)する。
【0004】
また、研磨キャリア501及び半導体基板Wを挾むように、下定盤504と上定盤505とが配置されている。下定盤504及び上定盤505には、対向する面に研磨布504a及び研磨布505aが貼着されている。このように構成された下定盤504と上定盤505は、互いに異なる方向に回転し、加えて、上定盤505に設けられた研磨剤供給穴506より、研磨剤が供給可能とされている。
【0005】
このように構成された両面研磨装置によれば、互いに異なる方向に回転している下定盤504(研磨布504a)と上定盤505(研磨布505a)との間で、前述したように、研磨キャリア501とともに、半導体基板Wが自転,公転して移動し、また、上定盤505に設けられた研磨剤供給穴506より研磨剤が供給された状態となっている。これらの結果、研磨キャリア501に保持されている半導体基板Wは、研磨剤を介して研磨布504a及び研磨布505aと摺動し、この摺動の中で、半導体基板Wの両面が、供給されている研磨剤中の砥粒により研磨される。」
「【0011】
ところで、図5に示した両面研磨装置においては、半導体基板Wとともに研磨キャリア501も研磨の対象となるため、研磨作業とともに研磨キャリア501は摩耗して消耗するものとなる。このため、従来では、所定回数の研磨を繰り返すと、研磨キャリア501を交換しており、研磨のコストを上昇させる原因となっていた。」

(2)上記記載から、引用文献6には、次の技術が記載されていると認められる。

「研磨キャリアを備え、研磨剤中の砥粒により半導体基板Wの両面が研磨される両面研磨装置において、
研磨作業とともに研磨キャリアは摩耗して消耗するため、所定回数の研磨を繰り返すと、研磨キャリアを交換しており、研磨のコストが上昇すること。」

4.引用文献7(特開2014-017524号公報)の記載

(1)新たに引用される引用文献7には、以下の事項が記載されている。

「【0009】
また、近年、シリコンウェーハの表面側だけでなく裏面側も鏡面研磨したシリコンウェーハの提供が求められ、粗研磨工程において、遊離砥粒を含む研磨液を用いて、ウェーハ表裏面を同時に研磨する両面研磨が実施されるようになってきた。
両面研磨装置としては、近年、キャリアプレート内にシリコンウェーハを収容した状態で、研磨布を貼張した上定盤および下定盤によりキャリアプレートを挟み込み、この状態でシリコンウェーハの表裏面を同時に研磨する両面研磨が採用されつつある。
このようなキャリアプレートを用いた両面研磨装置を使用した場合、シリコンウェーハの厚みをキャリアプレートの厚みと同等あるいはそれ以下の厚みとなるまでシリコンウェーハの表裏面を研磨すれば、キャリアプレートによって、研磨布によるウェーハ外周部の研磨そのものが抑制されるため、ロールオフの低減を図ることができる。
しかしながら、キャリアプレートそのものも研磨してしまうため、キャリアプレートの交換頻度が増加し、生産コストの上昇を招く問題が懸念される。」

(2)上記記載から、引用文献7には、次の技術が記載されていると認められる。

「研磨液を用いてウェーハ表裏面を同時に研磨する両面研磨が実施する両面研磨装置において、キャリアプレート内にシリコンウェーハを収容した状態で両面研磨装置を使用した場合、キャリアプレートそのものも研磨してしまうため、キャリアプレートの交換頻度が増加し、生産コストの上昇を招くこと。」

第5 対比

1.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の研磨方法は「キャリアを用いてシリコンウェーハを保持し、研磨用組成物を供給しながら両側の定盤を回転させることにより、シリコンウェーハの両面を研磨する両面研磨装置を用いてシリコンウェーハを研磨する方法」である。

したがって、本願発明と引用発明は、「シリコンウエハーを保持したキャリアを用いる研磨装置によって前記シリコンウエハーの研磨を行う方法」である点で一致する。

(2)引用発明の「研磨用組成物」は「両面研磨装置に供給される」。ここで、引用発明において「研磨用組成物は、研磨用組成物の各成分を分散又は溶解するための液状媒体を含有」していることから、「研磨用組成物」は研磨液であるといえる。

そうすると、引用発明の研磨方法では、研磨液が両面研磨装置に供給されることから、当該研磨液は、両面研磨装置で用いる研磨液であるといえる。

したがって、本願発明と引用発明は、「研磨装置で用いる研磨液」を備える点で一致する。

(3)引用発明の「研磨用組成物」は、「砥粒はBET法で測定される平均一次粒子径が35nmの繭形のコロイダルシリカであり、砥粒の濃度は2.0質量%」であり、他の砥粒を含むことは記載されていない。そうすると引用発明の研磨用組成物は、BET法で測定される平均一次粒子径が35nmのシリカ粒子のみからなるシリカ粒子を2.0質量%のシリカ濃度で含んでいるといえる。

したがって、本願発明と引用発明は、「研磨液」が、「BET法で測定される平均一次粒子径が30nmを超え45nm未満のシリカ粒子(B´)のみからなるシリカ粒子を0.1質量%以上2.5質量%未満のシリカ濃度」で含む点で一致する。

2.一致点及び相違点

上記「1.対比」で検討した事項を踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

【一致点】

「シリコンウエハーを保持したキャリアを用いる研磨装置によって前記シリコンウエハーの研磨を行う方法であって、
前記研磨装置で用いる研磨液が、
BET法で測定される平均一次粒子径が30nmを超え45nm未満のシリカ粒子(B´)のみからなるシリカ粒子を0.1質量%以上2.5質量%未満のシリカ濃度で含む、
上記研磨方法。」

【相違点】

本願発明は、「連続8時間の研磨でキャリア片面の摩耗量が3μm以内の範囲である」研磨方法であるのに対し、引用発明には、キャリア片面の摩耗量について記載されていない点で、両者は相違する。

第6 判断

以下、相違点について検討する。

1.相違点について

引用文献5~7には、上記「第4 引用文献の記載及び引用発明」の2.~4.に示したとおり、キャリアの摩耗によりキャリアの交換コストが増加することが記載されていることから、研磨液等を用いる両面研磨装置においてキャリアの摩耗を防止することは本願優先日において周知の課題であるといえる。

また、本願明細書の段落【0031】に「本発明は、シリコンウエハーを保持したキャリアを用いた研磨装置でシリコンウエハーの研磨を行う方法において、キャリアの摩耗を低減させた方法に関するものである。そのキャリアの摩耗量は使用条件により任意に定められるが、本発明においては、研磨精度の関係で例えば連続8時間の研磨でキャリア片面の摩耗量が3μm以内の範囲であれば摩耗が低くて好ましいと定義できるが、より好ましくは、1.9μm以内の範囲であり、更に好ましくは、1.8μm以内の範囲である。」と記載されている。

上記明細書の記載を参酌すると、キャリアを用いた研磨装置におけるキャリアの摩耗量は、当該研磨装置を操作する使用者により任意に定められるものであるといえる。また、「連続8時間の研磨でキャリア片面の摩耗量が3μm以内の範囲」とすることは発明者が好ましいと考える定義を示しているに過ぎず、引用発明が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れたものであるともいえない。

そうすると、引用発明において、周知の課題を解決するために、連続8時間の研磨でキャリア片面の摩耗量を3μm以内の範囲とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮といえる。

よって、引用発明において、上述した周知の課題を考慮して、相違点に係る構成を備えるようにすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

2.結論

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献5~7に記載された周知の課題に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 審判請求書での主張

1.請求人の主張

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審判請求人は、審判請求書において概ね以下の点を主張している。

(主張1)

「審査官殿の上記認定によりますと(特に下線部分をご高覧下さい。)、引用文献1又は2を主引例として引用文献5を組み合わせることにより、本願発明の『連続8時間の研磨でキャリア片面の摩耗量が3μm以内の範囲である、』という構成要件に容易に想到できると認定されていると思料されます。」という主張。

(主張2)

「本願発明によれば、連続8時間の研磨でのキャリア片面の摩耗量を3μm以内の範囲にすることができることが明示されています。そのため、当該効果は、「キャリアの素材」を利用してキャリア摩耗量の低減を図る引用文献5に対する予期せぬ効果です。無論、当該効果は、キャリア摩耗量の低減を目的としていない引用文献1と2も「連続8時間の研磨でのキャリア片面の摩耗量を3μm以内の範囲にすること」を教示や示唆するものではないので、当該引用文献に対する予期せぬ効果でもあります。」という主張。

2.検討

上記主張について検討する。

(1)(主張1)について

令和5年10月13日付け拒絶査定には、「しかし、研磨装置のキャリアはウエハーを保持するための研磨用治具であるから、ウエハーを研磨するにあたりキャリアの摩耗量が少ない方が望ましいことは当業者にとって明らかであり、例えば引用文献5の段落[0074]、図6には、キャリアの摩耗量がほとんど変化しないこと(3μm以下)が示されている。」と記載されている。そうすると、引用文献5は、キャリアを用いた研磨装置においてキャリアの摩耗量が少ない方が望ましいことや、キャリアの摩耗量が3μm以下となる技術常識を示す文献であるといえる。

また、同拒絶査定には「引用文献2に記載された研磨液を用いた研磨方法において、「連続8時間の研磨でキャリア片面の摩耗量が3μm以内の範囲」とすることは、当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項に過ぎない。」と記載されている。

すなわち、同拒絶査定では、相違点の構成自体は当業者が適宜設定する設計的事項であるとの判断を示しており、引用文献2と引用文献5を組み合わせることは明示されていない。

したがって、「引用文献1又は2を主引例として引用文献5を組み合わせる」との審判請求人の主張は採用できない。

(2)(主張2)について

まず、「第6 判断、1.相違点について」に記載したとおり、研磨液等を用いる両面研磨装置においてキャリアの摩耗を防止することは、引用文献5~7に記載されているように本願出願時において周知の課題である。

そうすると、研磨液を供給した両面研磨装置を用いる研磨方法である引用発明においても上記した周知の課題は考慮すべき課題である。

加えて、本願明細書の段落【0031】に「キャリアを用いた研磨装置におけるキャリアの摩耗量は、当該研磨装置を操作する使用者により任意に定められるものである。」と記載されていることから、キャリアの摩耗量は、当該研磨装置を操作する使用者により任意に定められるものであるといえる。

そうすると、キャリアの摩耗を防止するためにキャリアの摩耗量を3μm以内の範囲以内とすることは、引用発明及び周知の課題から予想し得た効果である。

したがって、「連続8時間の研磨でのキャリア片面の摩耗量を3μm以内の範囲にすること」が予期せぬ効果であるとする審判請求人の主張は採用できない。

以上(1)及び(2)のとおりであるから、審判請求書による主張はいずれも採用できない。

第8 むすび

以上のとおり、本件発明は、引用文献2に記載された発明及び周知の課題に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2024-000438

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