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特許拒絶査定不服審判

2025-005235

回路成型部品及び電子機器

審判番号
2025-005235
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-560424
請求日
2025年04月04日
審決日
2026年05月12日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社ゼファー
  • 【請求人代理人】山内 博明
  • 【請求人】松本 高之
  • 【請求人代理人】山内 博明
審判長/審判官
  • 審判長 丸山 高政
  • 審判官 北嶋 賢二
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P18 .113-Z (H05K) / P18 .121-Z (H05K) / P18 .575-Z (H05K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-560424「回路成型部品及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月18日国際公開、WO2021/049624〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)9月11日(優先権主張 令和元年9月13日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 6年 7月30日付け 拒絶理由通知書 12月24日付け 拒絶査定 令和 7年 4月 4日 審判請求書・手続補正書 6月 3日付け 前置報告書 以下では、令和6年12月24日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和7年4月4日の手続補正書による補正を「本件補正」という。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正前の請求項1の記載 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 基材における加工領域に金属層が形成された回路成型部品において、 前記加工領域には、各々が複数の孔を有する複数の凹部が連続的に形成されている回路成型部品。」 (2)本件補正後の請求項1の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 基材における加工領域に金属層が形成された回路成型部品において、 前記加工領域には、各々が複数の孔を有する、幅が10μm~100μmの範囲で前記基材の表面に対する最深が2μm~30μmの範囲の複数の凹部が連続的に形成されている回路成型部品。」 2 補正の目的 本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「凹部」について、「幅が10μm~100μmの範囲」及び「基材の表面に対する最深が2μm~30μmの範囲」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。 3 補正の適否 本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明の認定 本件補正発明は、前記1(2)に記載した事項により特定されるとおりのものである。 なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Cに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 【請求項1】 A 基材における加工領域に金属層が形成された回路成型部品において、 B 前記加工領域には、各々が複数の孔を有する、幅が10μm~100μmの範囲で前記基材の表面に対する最深が2μm~30μmの範囲の複数の凹部が連続的に形成されている C 回路成型部品。 (2)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-237663号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。 ア「【0002】 【発明の技術的背景】一般に、導体回路を形成する金属膜の膜厚が厚いほど、金属膜の切断などを防止でき、装置の信頼性が向上するため、金属回路付樹脂基板においては、膜厚は厚いものが望まれる。ところで、従来より、金属回路付樹脂基板の形成方法としては以下のものが知られている。 1)APE(Additive Plate-n-Etch)法 部品全体に無電解メッキした後、エッチングで回路を形成する方法。 2)MnA法 触媒入り樹脂でモールドされた部品にマスクを当てて無電解メッキし、回路を形成する方法。 3)PSP法(Photo-Selective-Plating) 部品に感光性触媒を塗布し回路部をUV露光させた後、無電解メッキして回路を形成する方法。 4)Mold-n-plate法(2ショット法) 触媒入り樹脂で回路部を第1ショット、通常樹脂で第2ショットした後、無電解メッキで回路を形成する方法。 5)銅箔貼付け 部品に銅箔を貼付け、回路部をマスクした後、回路以外の部分の銅をエッチングする方法。 【0003】しかしながら、1)~4)の方法では、無電解メッキを利用するため、金属膜の厚みが通常10μm以下となり、膜厚をさらに厚くするためには、メッキ時間を長くしなければならず、工業的に利用するにはコスト的な問題があった。また、5)の方法では、金属膜の厚みが銅箔によって決まるため、36μm以上厚くすることは困難であった。さらに、これらの方法では、樹脂基板の表面上に凸形状に金属(導体)回路が形成されるため、金属膜をあまり厚くすると表面実装時の平面度が悪化するなどの問題があった。 【0004】また、本発明者らは、特開平10-308562号公報において、樹脂成形体(基板)の一部に複数の窪みからなる粗面部を形成し、該粗面部上に膜厚が0.1~100μmの金属膜を形成した樹脂基板を提案している。しかしながら、このような樹脂基板によっても、膜厚を厚くすると金属回路付樹脂基板の平滑性(平坦性)が低下するため、この基板の表面実装性が充分であるとはいえなかった。」 イ「【0010】 【発明の具体的説明】以下、本発明の樹脂基板およびその製造方法について具体的に説明する。 金属回路付樹脂基板 まず、本発明に係る金属回路付樹脂基板について説明する。本発明の金属回路付樹脂基板は、樹脂基板と、該樹脂基板表面の少なくとも一部に形成された粗面化された底部および側面(以下、粗面部ともいう)を有する凹部と、該凹部上に形成された所定の厚さの金属膜とからなる。 【0011】樹脂基板の形状は、特に限定されるものではなく、箱型樹脂パッケージであっても、平面基板であってもよい。図1に、本発明に係る樹脂基板の要部断面図の一例を示す。図中、添字1は樹脂基板、2は粗面部、3は金属膜を示す。L1は金属膜の厚み、L2は凹部の深さ、L3は金属膜の突出距離(凸量ともいう)を示す。」 ウ「【0015】本発明に係る金属回路付樹脂基板では、このような樹脂基板表面の少なくとも一部に、粗面化された底部および側面を有する凹部が形成されており、このような凹部は、線状に稠密に多数連鎖したクレーターにより形成されている。本明細書において、クレーターとは、レーザ光パルスのショットにより樹脂基板の表面に生じた穴もしくは窪みをいう。 【0016】これらのクレーター(窪み)は、1本以上の線に沿ってほぼ一定のピッチで配列して形成されている。この線は、レーザ光パルスにより照射、掃引した軌跡であり、凹部を形成しようとする所望の領域を覆う形であればよい。この線は、直線であっても並行に並んでいてもよく、また折れ線であっても、曲線であってもよく、形成しようとする凹部の形状によって適宜選択される。」 エ「【0019】形成する凹部は、深さ(L2)が100μm以上、好ましくは100~500μm、さらに好ましくは300~500μmであることが望ましい。このような深さの凹部を形成することで、厚みがあり、しかも樹脂基板表面からの金属膜の突出距離が小さいため平滑性に優れ、表面実装性のよい金属膜が得られる。形成する凹部の最大幅は、実用的観点から、0.08~0.3mmであることが望ましい。 【0020】金属膜としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケルまたはこれらの合金などが挙げられる。このような金属膜は、同一の金属により形成されたものであってもよく、また複数の金属の多層膜であってもよい。金属膜の厚み(L1)は、100μmより厚く、好ましくは120~520μm、さらに好ましくは320~520μmであることが望ましい(ただし、L1≧L2)。金属膜の厚みがこのような範囲であれば、高い電流密度下でも使用し得る信頼性の高い導体回路が得られる。なお、金属膜が、複数の金属の多層膜であるときは、金属膜の厚み(L1)とは、多層膜の総厚みを指す。」 オ「【0022】金属膜はメッキにより形成されており、特に、無電解メッキをした後、さらに電解メッキをすることで形成されていることが望ましい。凹部および金属膜の形状が導体回路の配線パターンである金属回路付樹脂基板は、平面コイルなどの導体回路付平面基板、半導体装置の導体回路付きパッケージ、あるいはプリント回路基板として好適に使用することができる。」 カ「【0024】本発明に係る金属回路付樹脂基板の製造方法では、(i)樹脂基板の少なくとも一部に、レーザ光パルスを照射して深さ100μm以上の粗面化された底部および側面を有する凹部を形成し、(ii)該凹部上に所定の厚さの金属膜を形成する。なお、樹脂基板、金属膜としては、前述のものと同様のものが使用される。 【0025】[(i)凹部の形成]まず、本発明では、金属膜形成の下地処理として、レーザ光パルスを掃引照射して、樹脂基板表面上に掃引した軌跡に沿って、複数のクレーター(窪み)を形成する。この掃引した範囲が凹部となる。レーザ光パルスは、ビームスキャン方向(X)に特定の周期でパルス的に照射し、かつX方向に特定のピッチで移動する。X方向に所定の距離を走査したのち、Y方向に1ピッチずれて、X方向に同様のレーザ光パルス照射を行う。このような動作を繰り返して所定のパターンを形成する。」 キ「【0027】レーザの走査ピッチは、0.01~1mmであることが望ましい。形成される凹部の深さ(L2)は、100μm以上、好ましくは100~500μm、より好ましくは300~500μmであることが望ましい。このような深さのクレーターを形成することで、厚みがあり、しかも樹脂基板表面からの凸量が少なく、表面実装性のよい金属膜が得られる。」 ク「【0029】本発明に係る金属回路付樹脂基板の製造方法では、樹脂基板中に予め薬液消失粒子を混入させ、かつレーザ光パルスの掃引照射した後、照射部分に露出した薬液消失粒子を消失させる薬液処理を施してもよい。薬液消失粒子とは、有機溶媒、水、酸液、アルカリ液などの薬液に溶解して、消失する粒子をいい、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。 【0030】このような薬液消失粒子が混入した樹脂基板の粗面化するべき部分にレーザ光パルスを照射させると、照射部の樹脂基板の表面層が消失し、薬液消失粒子が頭を出す。このような薬液消失粒子を薬液処理によって消失させると、レーザ掃引照射した部分に微細くぼみが形成され、粗面化することができる。」 ケ「【0034】[(ii)金属膜の形成]次に、本発明では、上記のようにして形成した凹部に金属膜が形成される。金属膜を形成するためには、あらかじめ、凹部にメッキ触媒を付与しておくことが好ましく、メッキ触媒が付与された凹部表面に、無電解メッキ、次いで電解メッキにより金属膜を形成する。 【0035】メッキ触媒 金属膜を形成するためには、まず粗面部にメッキ触媒を付与する。メッキ触媒としては、有機パラジウム化合物、有機白金化合物などが挙げられる。このうち、有機パラジウム化合物が好ましく使用される。メッキ触媒の付与は、塩化パラジウム(PdCl2)、ジアンミン第一パラジウム塩化物(Pd(NH3)2Cl2)、テトラアンミンしゅう酸パラジウム(Pd(NH3)4C2O4)、硫酸パラジウム(PdSO4)などのパラジウム化合物、または白金化合物などの触媒を含む浴中に浸漬するなどの方法によって行われる。このとき、メッキ触媒は、粗面部(凹部の粗面化された底部および側面)にのみ担持される。粗面部が回路パターンを形成している場合は、回路パターン状にメッキ触媒が担持される。」 コ「【0044】 【発明の効果】本発明に係る金属回路付樹脂基板は、小型で安価であり、金属膜との接着性に優れ、また、金属膜の膜厚が厚いため、高い電流密度下においても使用でき、しかも樹脂基板からの金属膜の凸量が少ないため表面実装性に優れる。また、本発明の樹脂基板を用いた平面コイルなどの導体回路付平面基板あるいは半導体装置は、導体を形成する金属膜の厚みが厚いため、回路の切断などを防止でき、信頼性の高い装置を提供し得る。」 サ 図1 [図:0001437033000001.jpg] シ 図2 [図:0001437033000002.jpg] (3)前記(2)の記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~hに分説し、「構成a」のようにして参照する。 <引用発明> 「a 金属回路付樹脂基板であって、(【0010】) a1 樹脂基板と、(【0010】) a2 樹脂基板表面の少なくとも一部に形成された粗面化された粗面部を有する凹部と、(【0010】) a3 凹部上に形成された所定の厚さの金属膜とからなり、(【0010】) b 凹部は、線状に稠密に多数連鎖したクレーターにより形成され、(【0015】) c クレーターは、樹脂基板の表面に生じた窪みであり、(【0015】) d1 凹部の深さは100μm以上が望ましく、(【0019】) d2 凹部の最大幅は0.08~0.3mmが望ましく、(【0019】) e 金属膜の形状が導体回路の配線パターンであり、(【0022】)、 f 薬液消失粒子が混入した樹脂基板の粗面化するべき部分の薬液消失粒子を薬液処理によって消失させると微細くぼみが形成され、粗面化することができ、(【0030】) g 金属膜との接着性に優れ、金属膜の膜厚が厚いため、高い電流密度下においても使用でき、樹脂基板からの金属膜の凸量が少ないため表面実装性に優れる(【0044】) h 金属回路付樹脂基板。」 (4)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 発明特定事項A及びCについて 本件明細書には、「図1には、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの基材100と、基材100における加工領域110(図2(c))内に形成された金属層200と、を備える回路成型部品300を示している。」(【0016】)との記載があり、本件補正発明の「基材」は、回路となる金属層が形成されている部材であると解される。 また、引用発明の「樹脂基板」(構成a1)も、「導体回路の配線パターンであ」る「金属膜」(構成e)が「形成」されている部材である(構成a2、a3)ことから、本件補正発明の「基材」に相当する。 引用発明の「樹脂基板表面の少なくとも一部に形成された粗面化された粗面部を有する凹部」(構成a2)は、「樹脂基板表面」の「少なくとも一部」の領域に「粗面化された粗面部を有する凹部」を加工形成していると解されるから、本件補正発明の「基材における加工領域」に相当する。 引用発明の「金属膜」(構成a3)は、本件補正発明の「金属層」に相当する。 また、引用発明の「金属膜」(構成a3)は、「凹部上に形成され」ること(構成a3)から、本件補正発明の「加工領域に金属層が形成」に相当する。 引用発明の「金属回路付樹脂基板」(構成a)は、「樹脂基板」と「金属膜」を備えるものである。そして、「金属膜」は、「導体回路の配線パターンであ」ること(構成e)から、引用発明の「金属回路付樹脂基板」は、本件補正発明の「回路成形部品」に相当する。 以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「基材における加工領域に金属層が形成された回路成型部品」である点で一致する。 イ 発明特定事項Bについて 引用発明の「クレーター」(構成b)は、「樹脂基板表面に生じた窪み」(構成c)であることから、本件補正発明の「凹部」に相当する。 また、「クレーター」は「線状に稠密に多数連鎖し」ていること(構成b)から、本件補正発明の「複数の凹部が連続的に形成されている」に相当する。 引用発明の「凹部」(構成a2)は、「線状に稠密に多数連鎖したクレーターにより形成され」ること(構成b)から、「凹部の最大幅」及び「凹部の深さ」は、クレーターの最大幅及び深さと同サイズとなることは明らかであり、それぞれ本件補正発明の「幅」及び「基材の表面に対する最深」に相当する。 引用発明の「微細くぼみ」(構成f)は、「薬液消失粒子が混入した樹脂基板の粗面化するべき部分の薬液消失粒子を薬液処理によって消失させ」て「形成」した(構成f)空隙であることは明らかであり、本件補正発明の「孔」に相当する。 以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「前記加工領域には、各々が複数の孔を有する、複数の凹部が連続的に形成されている」点で共通するものの、本件補正発明の「凹部の幅」は「10μm~100μmの範囲」であるのに対し、引用発明は「最大幅は0.08~0.3mmが望まし」い(構成d2)点で相違するとともに、本件補正発明の「凹部の基材の表面に対する最深」は「2μm~30μmの範囲」であるのに対して、引用発明は「100μm以上が望まし」い(構成d1)点で相違する。 ウ 前記ア~イによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 〈一致点〉 「基材における加工領域に金属層が形成された回路成型部品において、 前記加工領域には、各々が複数の孔を有し、幅長と前記基材の表面に対する最深長を規定した複数の凹部が連続的に形成されている回路成型部品。」である点。 〈相違点1〉 凹部の幅が、本件補正発明では「10μm~100μmの範囲」であるのに対し、引用発明では「0.08~0.3mmが望まし」いのであって一部重複するものの、数値範囲が異なる点。 〈相違点2〉 凹部の基材の表面に対する最深が、本件補正発明では「2μm~30μmの範囲」であるのに対し、引用発明では「100μm以上が望まし」い点。 (5)相違点についての判断 ア 相違点1について (ア)「凹部の幅」は、引用発明では「0.08~0.3mmが望まし」く(構成d2)、本件補正発明は「10μm~100μm」であるため、両者は数値範囲が一部区間(80μm~100μm)で重複する。 ここで、引用文献1には、「形成する凹部の最大幅は、実用的観点から、0.08~0.3mmであることが望ましい。」(【0019】)と記載されることからみて、当該凹部の幅の数値範囲の最適化を図ることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、引用発明の0.08~0.3mmの範囲のうち80μm~100μmの範囲を選択することは、当業者にとって格別に困難なことであったとは認められない。 (イ)当該数値範囲により奏する作用・効果について検討する。 本件補正発明の「凹部の幅」について、本件明細書には、「レーザ照射の条件は、基材100の硬度、回路成型部品300の用途などに応じて適宜選択すればよいが、一例を示すと、アウトライン150を構成する凹部120の底面部の直径が概ね10μm~100μm、高さが2μm~30μmとなる条件とすればよい。」(【0025】)と記載されている。しかしながら、本件補正発明の「凹部の幅」に対応する「直径」を変化させた実施例等の試験結果については示されておらず、当該数値範囲に設定することの臨界的意義は認められない。 (ウ)よって、引用発明において、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について (ア)引用発明の「凹部上に形成された所定の厚さの金属膜」(構成a3)は、「接着性に優れ、膜厚が厚いため、高い電流密度下においても使用でき、樹脂基板からの凸量が少ないため表面実装性に優れ」ていて(構成g)、凹部の深さは「100μm以上が望まし」(構成d1)いものである。すなわち、凹部の深さを100μm以上とすることは「望ましい」態様であるものの、凹部の深さを100μm未満とすることが排除されているとまではいえない。 ここで、引用文献1には、従来技術として「樹脂成形体(基板)の一部に複数の窪みからなる粗面部を形成し、該粗面部上に膜厚が0.1~100μmの金属膜を形成した」(【0004】)と記載されることからみて、接着性に優れ、高い電流密度下においても使用でき、表面実装性に優れるという条件のもと、従来技術の金属膜の厚さも考慮に入れ、最適な凹部の深さを選択しようと試みることは、当業者が容易に着想し得たことであり、そのうちの2μm~30μmを選択することに格別の困難性は存在しない。 (イ)当該数値範囲により奏する作用・効果について検討する。 本件明細書には、「レーザ照射の条件は、基材100の硬度、回路成型部品300の用途などに応じて適宜選択すればよいが、一例を示すと、アウトライン150を構成する凹部120の底面部の直径が概ね10μm~100μm、高さが2μm~30μmとなる条件とすればよい。」(【0025】)と記載されている。しかしながら、本件補正発明の「凹部の深さ」に対応する「高さ」を変化させた実施例等の試験結果については示されておらず、当該数値範囲に設定することの臨界的意義は認められない。 (ウ)また、回路基板において、導体回路の配線パターンが設置される溝部を形成し、溝部の深さを2μm~30μmの範囲とすることは、周知技術である。例えば、当審で新たに引用する国際公開第2012/132325号(以下「文献A」という。)には、「樹脂層10の表面から凹部14の最深部17までの深さ(最深部の深さ)D1は、1μm以上、40μm以下であることが好ましく、5μm以上、20μm以下がより好ましい。」([0033])、及び特開2014-138160号公報(以下「文献B」という。)には、「溝の深さは、導電特性に優れた厚い金属配線を形成できる点で、0.1~50μmが好ましく、0.2~10μmがより好ましい。」(【0147】)との記載がある。 (エ)引用発明と周知技術とは、共に回路基板に導体回路用の凹部を形成する点で共通しているから、引用発明において前記周知技術を適用し、凹部の深さを「100μm以上」に代えて、「2μm~30μmの範囲」とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (6)効果についての判断 本件補正発明の効果として、(a)回路成型部品300を備える電子機器の用途に応じた形状でレイアウトでき、材料についても高い自由度で選択することができる(【0017】)、及び(b)不規則な形状の各孔130が生じる条件で凹部120を形成させ、当該孔130の形状によってアンカー効果を発揮させて、基材100に対して高い密着度を有する金属層200を得ること(【0053】)が挙げられる。 しかし、本件補正発明の奏する効果(a)及び(b)は、いずれも引用発明及び前記周知技術から予測される範囲内に過ぎず、格別とは認められない。 (7)請求人の主張についての判断 ア 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、概略、以下のように主張している。 引用文献1の条件で凹部を形成したのでは、「複数の孔」は結果的には生じないから誤りである。なぜなら、このような相対的に深さのある凹部を形成するためには、強度が相対的に高いレーザ光を照射する必要があり、レーザ熱の冷却までの時間が相対的に長くなるためその間に凹部表面が熱変形してしまい、凹部内に「複数の孔」は残らない。 そうすると、「100~500μm」という深さ範囲の凹部や「微細くぼみ」を形成することが開示された引用文献1に接した当業者が、「複数の孔」を有する凹部を形成するために「2μm~30μm」の深さとすることは容易に想到し得たことでない。(審判請求書3~4頁) イ 主張についての検討 引用発明の「微細くぼみ」は、「薬液消失粒子が混入した樹脂基板の粗面化するべき部分の薬液消失粒子を薬液処理によって消失させる」(構成f)ことで形成され、凹部に「微細くぼみ」が残った状態である。 そして、引用発明において、「微細くぼみ」が形成される「凹部の深さ」を選択することは、前記(5)のとおり当業者であれば容易になし得たことである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (8)小括 以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明と文献A及び文献Bに示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4 本件補正についてのむすび 前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。 第4 原査定の概要 原査定の概要は、以下のとおりである。 1.(新規性)この出願の請求項1、4~7に係る発明は、以下の文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の請求項1~7に係る発明は、以下の文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 文献1.特開2002-237663号公報 第5 文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された文献1(この審決における引用文献1に対応)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。 第6 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、その発明特定事項である「凹部」に係る「幅が10μm~100μmの範囲」及び「基材の表面に対する最深が2μm~30μmの範囲」との限定事項を削除したものである(前記第2[理由]2を参照)。 そして、前記第2[理由]3に示したとおり、本件補正発明と引用発明との相違点1及び2は、前記限定事項のみに係るものであるから、該限定事項を削除した本願発明と引用発明とに相違点はなく、本願発明は、引用発明と同一であり、かつ、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に掲げる発明である引用発明と同一であるから、同項の規定に違反し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-005235

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