特許拒絶査定不服審判
2019-010359
積層導光板
- 審判番号
- 2019-010359
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-150304外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年08月06日
- 審決日
- 2020年03月25日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本電気硝子株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-150304「積層導光板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 32673〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
平成27年 7月30日 特許出願
平成31年 3月27日 拒絶理由通知(同年4月1日発送)
平成31年 4月16日 意見書・手続補正書
平成31年 4月26日 拒絶査定(令和1年5月14日送達)
令和 1年 8月 6日 本件審判請求・手続補正書
第2 令和1年8月6日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年8月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の概略
本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前に
「導光板を複数枚積層させた積層導光板であって、
該導光板が、ガラス板を備え、
該ガラス板の屈折率ndが1.56以上であり、且つ該ガラス板の板厚が1.0mm以下であることを特徴とする積層導光板。」
とあるものを、
「導光板を複数枚積層させた積層導光板であって、
該導光板が、内部に屈折率の異なる異質層を有するガラス板を備え、
該ガラス板の屈折率ndが1.56以上であり、且つ該ガラス板の板厚が1.0mm以下であることを特徴とする積層導光板。」(当審注:下線は、審判請求人が補正箇所に付した下線である。)
に補正するものである。
上記特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、導光板が備える「ガラス板」を「内部に屈折率の異なる異質層を有するガラス板」に限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて検討する。
2 引用する刊行物と引用発明
(1)引用例1
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内で頒布された特開2010-243787号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は、当審が付加した。以下同様である。)。
(ア)「【請求項1】
画像を表示する表示素子と、
前記表示素子に表示された画像が入射される導光部材と、
前記入射された画像を前記導光部材内部で全反射させて使用者の瞳に向かって伝搬する伝搬手段と、
を有し、
前記使用者の瞳を所定のアイポイントに位置させたときに該使用者に観察される前記画像の虚像画像に対する視野角が所定の視野角以上となるように、該画像の波長に対して屈折率1.6以上を有する硝材により前記導光部材を構成したことを特徴とする映像表示装置。
…
【請求項3】
前記伝搬手段は、
前記導光部材に入射された画像を該導光部材内部で全反射させて所定位置に伝搬されるように回折する第一のHOE(Holographic Optical Element)と、
前記所定位置に伝搬された画像を使用者の瞳に向かって回折する第二のHOEと、
を有することを特徴とする、請求項1または請求項2の何れかに記載の映像表示装置。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の頭部に装着される映像表示機器であり、表示素子の画像をホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element、以下、「HOE」と記す。)を用いて使用者の瞳に導くヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以下、「HMD」と記す。)、および該ヘッドマウントディスプレイを構成する映像表示装置に関連し、詳しくは、表示素子の画像の高輝度化、高コントラスト化、大画面化を同時に達成する映像表示装置、およびHMDに関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
…
【0012】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成でありつつも画像の高輝度化、高コントラスト化、大画面化を同時に達成する映像表示装置、およびHMDを提供することにある。」
(エ)「【発明を実施するための形態】
…
【0023】
図1(a)、図1(b)はそれぞれ、本実施形態のHMD1の構成を示す正面側斜視図、背面側斜視図である。図1(a)および図1(b)に示されるように、使用者の頭部に装着される眼鏡型フレーム2の正面部には、眼鏡レンズ3が取り付けられる。眼鏡型フレーム2の取付部2aには、画像を照明するためのバックライト4が取り付けられる。眼鏡型フレーム2のツル部分には、画像を映し出すための信号処理機器5、及び音声を再生するスピーカー6が設けられている。導光板10は、光学部材からなり、信号処理機器5の回路から引き出された配線を構成するFPC(FlexiblePrinted Circuits)7が、眼鏡型フレーム2に沿って配線される。表示素子ユニット(例えば液晶表示素子)20は、FPC7によって使用者の両眼中央位置まで配線され、かつバックライト4の光軸線上に表示素子ユニット20の略中心部が配置するように保持される。表示素子ユニット20は、導光板10の略中央部に位置するように、導光板10に対して相対的に固定される。使用者の眼前に位置する箇所にはHOE32R、32Lが、それぞれ接着等により導光板10の第一面10a上に密着固定されている。導光板10を挟んで表示素子ユニット20と対向する位置には、HOE52R、52Lが導光板10の第二面10b上に積層されている。
…【0025】
図2に示されるように、バックライト4は、レーザ光源21、拡散光学系22、およびマイクロレンズアレイ23を有する。表示素子ユニット20は、表示素子24を有する画像生成ユニットであり、例えばフィールドシーケンシャル(FieldSequential)方式で駆動する。レーザ光源21は、R(HeNeレーザ)、G(Hd:YAGレーザ)、B(He-Cdレーザ)の各波長に対応したレーザ光源を有し、各波長の光を高速(例えば180Hz)で順次照射する。各波長の光は、拡散光学系22、マイクロレンズアレイ23に入射され、光量ムラのない均一な高指向性の平行光束に変換されて、表示素子24の表示パネル面に垂直に入射される。
…
【0028】
図2に示されるように、表示素子24により変調された各波長の光は、第一面10aから導光板10内部に順次入射される。導光板10の第二面10b上には、HOE52Rと52Lが積層されている。HOE52Rおよび52Lは、例えば矩形状を有する反射型の体積位相型HOEであって、R、G、Bの各波長の光に対応する干渉縞が各々に記録されたフォトポリマーを三枚積層した構成を有する。すなわち、HOE52Rおよび52Lは、R、G、Bの各波長の光を回折しそれ以外の波長の光を透過する波長選択機能を有するように構成されている。
…
【0030】
また、二層のフォトポリマーによりHOE52Rおよび52Lを構成し、R、G、Bの各波長の光に対応する波長選択機能を付与することも可能である。例として、R、Gの各波長の光に対応する干渉縞が記録された一層のフォトポリマーと、Bの波長の光に対応する干渉縞が記録された一層のフォトポリマーの計二層によりHOE52Rおよび52Lを構成することが考えられる。なお、HOE32Rおよび32Lも反射型の体積位相型HOEであり、HOE32Rおよび32Lと同一の層構造を有する。HOE32Rおよび32Lと52Rおよび52Lは、例えば干渉縞パターンのピッチが略同一であってもよい。
【0031】
HOE52Rと52Lは、互いの中心が一致し、かつ干渉縞パターンが180(deg)反転された状態で積層されている。そして、積層された状態でその中心が中心線Xと一致するように導光板10の第二面10b上に接着等により密着固定されている。HOE52R、52Lには、表示素子24により変調された各波長の光が導光板10を介して順次入射される。
【0032】
HOE52R、52Lはそれぞれ、順次入射される各波長の光を右眼、左眼に導くため所定の角度を付与して回折する。HOE52R、52Lにより回折された各波長の光はそれぞれ、導光板10と空気との界面で全反射を繰り返して導光板10内部を伝搬しHOE32R、32Lに入射される。ここで、HOE52R、52Lは、各波長の光に同一の回折角を付与する。そのため、導光板10に対する入射位置が略同一の(あるいは別の表現によれば、表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)全ての波長の光は、導光板10内部の略同一の光路を伝搬して、HOE32R、32L上の略同位置に入射する。別の観点によれば、HOE52R、52Lは、表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係がHOE32R、32L上で忠実に再現されるようにRGBの各波長の光を回折する。
【0033】
このように本実施形態においてHOE52R、52Lはそれぞれ、表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された全ての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折する。一方、別の実施形態においては、HOE52R、52Lは、表示素子24の有効領域内で相対的にずらされた本来同一画素をなす全ての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折するように構成されてもよい。
【0034】
HOE32R、32L上に入射された各波長の光は、HOE32R、32Lにより回折されて導光板10の第二面10bから外部に略垂直に順次射出される。このように略平行光として射出された各波長の光はそれぞれ、表示素子24により生成された画像の虚像Iとして使用者の右眼網膜、左眼網膜に結像する。…
【0035】
各波長の光は使用者の網膜上に高速で順次結像されるため、使用者は、表示素子24による生成画像をカラー画像として認識することとなる。なお、使用者の眼と表示素子24との実際の距離は数十mm程度に過ぎない。しかし、各波長の光は略平行光として眼球に入射されるため、使用者は、無限遠視したときに表示素子24による生成画像を明瞭に視認することができる。また、体積位相型の反射型HOEであるHOE32R、32Lは回折効率の半値幅が狭く外界像の光の透過率が高い。そのため、使用者は、外界像を表示素子24の表示画像と共に明瞭に観察することができる。
…
【0037】
本実施形態の導光板10には、使用波長に対する屈折率が1.6以上の高屈折率材料(例えばEFD15やEFD2、SF11、SF15など)が用いられている。そのため、HMDの導光板材料として一般的に使用される硝材(例えばBK7や石英など)を導光板10に適用した場合と比べて、表示素子24の射出面から使用者の瞳に至るまでの空気換算距離が屈折率の差に依存して短くなる。これによって見かけ視界が広がるため、表示素子24による生成画像は、より一層拡大された大画面画像の虚像Iとして使用者の網膜に結像することとなる。このように、本実施形態のHMD1においては、大画面化のための光学部品の追加や表示素子の大型化を伴うこと無く、導光板材料として高屈折率材料を採用するといった簡易な構成で表示画像の大画面化が達成される。」
(オ)図1、図2は以下のとおりである。
イ 引用発明
(ア)上記ア(ア)の請求項1、3に記載された映像表示装置において、映像表示装置が有する導光部材に着目すると、
「 映像表示装置が、表示素子と、伝搬手段とともに有する導光部材であって、
前記表示素子は画像を表示し、
前記導光部材は前記表示素子に表示された画像が入射され、
前記伝搬手段は、前記入射された画像を前記導光部材内部で全反射させて使用者の瞳に向かって伝搬する伝搬手段であって、前記導光部材に入射された画像を該導光部材内部で全反射させて所定位置に伝搬されるように回折する第一のHOE(HolographicOptical Element)と、前記所定位置に伝搬された画像を使用者の瞳に向かって回折する第二のHOEとを有し、
前記導光部材は、 前記使用者の瞳を所定のアイポイントに位置させたときに該使用者に観察される前記画像の虚像画像に対する視野角が所定の視野角以上となるように、該画像の波長に対して屈折率1.6以上を有する硝材により構成されている、
導光部材。」
が記載されている。
(イ)上記ア(イ)の記載によれば、上記(ア)の「映像表示装置」はヘッドマウントディスプレイを構成する映像表示装置である。また、上記ア(イ)の記載によれば、上記(ア)の「HOE(HolographicOptical Element)」はホログラフィック光学素子であり、上記ア(エ)の【0028】、【0030】の記載によれば、HOEは体積位相型HOEであって良いことが記載されている。
(ウ)上記ア(エ)の【0035】の記載によれば、上記(ア)の「導光部材」は「導光板」であってよく、表示素子が表示する画像はカラー画像である。
(エ)以上によれば、引用例1には以下の発明が記載されている。
「 ヘッドマウントディスプレイを構成する映像表示装置が、表示素子と、伝搬手段とともに有する導光板であって、
前記表示素子はカラー画像を表示し、
前記導光板は前記表示素子に表示されたカラー画像が入射され、
前記伝搬手段は、前記入射されたカラー画像を前記導光板内部で全反射させて使用者の瞳に向かって伝搬する伝搬手段であって、前記導光板に入射されたカラー画像を該導光板内部で全反射させて所定位置に伝搬されるように回折する第一の体積位相型ホログラフィック光学素子と、前記所定位置に伝搬されたカラー画像を使用者の瞳に向かって回折する第二の体積位相型ホログラフィック光学素子とを有し、
前記導光板は、 前記使用者の瞳を所定のアイポイントに位置させたときに該使用者に観察される前記画像の虚像画像に対する視野角が所定の視野角以上となるように、該画像の波長に対して屈折率1.6以上を有する硝材により構成されている、
導光板。」(以下「引用発明」という。)
(2)引用例2
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内で頒布された特開2015-49278号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【背景技術】
【0002】
近年、画像投影装置の1つとして画像表示装置からの画像を、導光体を用いて、観察者の眼前まで導光して表示させるヘッドマウントディスプレイが商品化され、さらなる小型化、広画角化、高効率化に関する開発が行われている。その中で、導光体内への入射、出射を行うための素子の1つとして回折光学素子が注目されている。この回折光学素子は、回折現象を利用して光の進行方向を制御することが可能であるため、反射や屈折を利用するよりも小型で光の操作自由度も高いという特性が得られる。
【0003】
回折光学素子の中で、特に体積ホログラムは、比較的高い効率で回折させることができる。ところが、この体積ホログラムは、ブラッグ条件に従い回折光の波長、角度などが決まることから、入射角度に対して回折光の角度及び波長が大きく影響される。このため、ヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置に用いる場合には、表示画像の画角(大きさ)、色むらに与える影響が大きくなる場合がある。そこで、従来より、体積ホログラムの入射角度を調整する画像表示装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
…
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情を考慮して、製造上の困難性を解消しつつ、より小型化、高画角化、高効率化を進めやすい光学デバイス、並びにその光学デバイスを備えた画像表示装置を提案することを解決課題とする。」
(ウ)「【課題を解決するための手段】
…
【0070】
<E:第5実施形態>
次いで、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、第1回折光学素子及び第2回折光学素子として、反射型の体積ホログラムを用いる。図24は、本実施形態における左眼用光学系の内部構造及び導光体の一例を示す要部断面図である。右眼用光学系の内部構造及び導光体については記載を省略するが、左眼用光学系の内部構造及び導光体の左右を反転させた構造になっている。
…
【0078】
このような本実施形態によれば、導光体20へ入射された画像光を、第1回折光学素子31aで、導光体20内における導光方向とは逆方向に反射・回折させた直後に、さらに、反射層41により導光方向へ転換させる。そして、第2回折光学素子31bで反射・回折させて、光出射面20bから観察者の眼EYに向けて出射させる。これにより、光入射面20aに対する入射光と、光出射面20bからの出射光とを平行にすることができ、左右の導光体20及び画像形成部10の位置関係と、観察者の顔の形状や両眼の位置とを、より適正に一致させることができる。すなわち、図10に示すように、投射光学系の大きさによっては、観察者の顔に画像形成部10が接触して邪魔になる可能性があるが、本実施形態によれば、図9に示すように、観察者の顔に接触する方向から避けることができるため、顔へのフィッティング性がさらに増した外形とすることができる。」
(エ)「【0080】
<F:変形例>
(変形例1)
上述した第1実施形態~第5実施形態では、単一層の導光体を用いるとともに、入射側及び出射側にそれぞれ1つの回折光学素子を用いたが、本発明は、これに限定するものでなく、画像光の波長に対応した回折光学素子を複数用いてもよい。すなわち、図25に示すように、上述した各実施形態において、導光体20を、各パネル面201,202が平行となるように積層し、積層型導光体200を形成するとともに、各導光体20,20が備える第1回折光学素子36a,37a…、及び第2回折光学素子36b,37b…の格子周期が、各導光体毎に異なるようにする。
【0081】
このような変形例によれば、複数の導光体20を積層させ、各導光体20に格子周期が異なる回折光学素子を用いることにより、導光体毎に異なる波長を伝播させることが可能となり、複数波長に対する回折効率を高めることができる。」
(オ)図24、図25は以下のとおりである。
イ 上記ア(エ)の変形例についての記載によれば、以下の技術事項が開示されている。
「導光体を積層して積層型導光体を形成し、各導光体に格子周期が異なる回折光学素子を用いることにより、導光体毎に異なる波長を伝播させることが可能となり、複数波長に対する回折効率を高めることができること。」(以下「引用例2の技術事項」という。)
3 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)本願補正発明の「導光板を複数枚積層させた積層導光板」と、引用発明の「導光板」を対比すると、両者は「導光板」の点で一致する。
(2)本願補正発明の「内部に屈折率の異なる異質層を有するガラス板を備え」る「導光板」と、引用発明の「硝材により構成されている」「導光板」を対比すると、両者は、「ガラス板を備え」る「導光板」の点で一致する。
(3)本願補正発明の「該ガラス板の屈折率ndが1.56以上であ」ることと、引用発明の「導光板」を構成する「硝材」が「屈折率1.6以上を有する」ことを対比すると、両者は、「該ガラス板の屈折率ndが1.6以上であ」る点で一致する。
(4)以上によれば、本願補正発明と引用発明は、
「導光板であって、
該導光板が、ガラス板を備え、
該ガラス板の屈折率ndが1.6以上である導光板。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「導光板」に関し、本願補正発明は「導光板を複数枚積層させた積層導光板」であるのに対し、引用発明はそのようなものとは特定されていない点。
相違点2:導光板が備える「ガラス板」に関し、本願補正発明は「内部に屈折率の異なる異質層を有する」のに対し、引用発明は、そのようなものとは特定されていない点。
相違点3:導光板が備える「ガラス板」の板厚に関し、本願補正発明は「1.0mm以下である」のに対し、引用発明は不明である点。
4 判断
以下、上記相違点ついて検討する。
(1)相違点1について
引用発明は、表示素子がカラー画像を表示し、該カラー画像を伝搬手段が有する第一の体積位相型ホログラフィック光学素子が回折し、回折されたカラー画像を導光板が所定位置に伝搬し、所定位置に伝搬されたカラー画像を伝搬手段が有する第二の体積位相型ホログラフィック光学素子が使用者の瞳に向かって回折するところ、体積位相型ホログラフィック光学素子の回折効率を高めることは、一般的な課題である。ここで、カラー画像が可視光の範囲の複数の波長の光(例えば、青、緑、赤色の波長の光)を含むことは技術常識であるから、引用発明において、可視光の複数の波長を含むカラー画像の回折効率を高める目的で引用例2の技術事項を採用し、導光体毎に異なる波長を伝搬させられるようにカラー画像を回折する伝搬手段とカラー画像を伝搬する導光板を積層し、導光板が積層された積層型導光体として上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは当業者が容易に想到し得たことと認められる。
(2)相違点2について
体積型のホログラフィック素子は、その内部に屈折率分布として干渉縞パターンを記録する光学素子であるところ、体積型のホログラフィック素子をガラス内部に形成することは、例えば、特開2004-526202号公報(「【0021】…感光粒子をガラスに混合し、そして一対のレーザビームを照射してガラス内に体積ホログラムを形成することにより、形成される。」)、特開平11-232919号公報(「【0020】…導光板22は、…、ガラスなどの、透光性材料によって形成する。…【0028】図の例は、体積ホログラム23を導光板22の反射型表示体11側の面22bに設けた場合であるが、体積ホログラム23を導光板22の観察者側の面22aに設けてもよい。あるいは、導光板22の内部に体積ホログラムを埋め込んでもよい。」)に記載されるよう、周知の技術手段である。そして、引用発明は、導光板とともに第一、第二の体積位相型ホログラフィック光学素子を有する伝搬手段を備えるところ、上記周知技術を踏まえ、導光板の内部に形成し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項となすことに困難性はない。
(3)相違点3について
ア はじめに、本願補正発明の導光板が備える「ガラス板」の板厚が、「1.0mm以下である」ことの技術的意義について、発明の詳細な説明の記載を参酌して検討する。本願の発明の詳細な説明には、
「【0010】
更に、本発明の導光板は、ガラス板の板厚が1.0mm以下である。ガラス板の板厚を1.0mm以下に規制すれば、導光板が軽量化されるため、頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに好適に使用可能になる。」
との記載がある。
上記記載によれば、本願補正発明の導光板が備える「ガラス板」の板厚が、「1.0mm以下である」ことの技術的意義は、軽量化にあるものと解される。
イ 一般に、使用者の頭部に装着される機器であるヘッドマウントディスプレイにおいて、小型化や軽量化が要求されることは周知の課題である(例えば、特開2015-102613号公報(「【0041】…光学デバイス1の小型化及び軽量化、ひいては、ヘッドマウントディスプレイ100の小型化及び軽量化が可能となる。」)、特開2012-163660号公報(「【0062】…本実施形態のような眼鏡型のヘッドマウントディスプレイでは、軽量化が重要となる…」)等を参照。)。引用発明の映像表示装置は、ヘッドマウントディスプレイを構成する映像表示装置であること、そして、引用例1には導光板を薄型化することが示唆されていること(「【0039】…、例えば導光板10の厚みを薄型化させた場合であっても、…」)から、上記周知の課題を解決する目的で、硝材により構成されている導光板の薄型化を図ることは当業者が容易に想到し得ることである。そして、導光板に用いる、板厚が1.0mm以下のガラス板は、例えば、特開2004-526202号公報(「【0014】…透明度の高いフロート硝子の約0.5mm厚みのシート…」)、特開2014-154346号公報「【0030】…バックライト装置100に備えられる導光板2は、光透過率の高いガラスによって形成されることとしてもよい。【0031】また、導光板2の厚さは、10.0mm以下であることが重量等の観点から好ましい。導光板2の厚さの下限値は、発光表面の歪み等の影響を及ぼさない厚さであれば特に規定はないが、例えば0.3mm以上であることとしてもよい。」)に記載されるよう周知のものであるから、引用発明の「硝材により構成されている」「導光板」の板厚を1.0mm以下にすることは、当業者が適宜なし得る設計事項と認められる。
(4)以上によれば、本願補正発明は、引用発明と、引用例2の技術事項、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。
5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年8月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成31年4月16日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。
「導光板を複数枚積層させた積層導光板であって、
該導光板が、ガラス板を備え、
該ガラス板の屈折率ndが1.56以上であり、且つ該ガラス板の板厚が1.0mm以下であることを特徴とする積層導光板。」(以下「本願発明」という。)
2 引用する刊行物と引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 2」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明において、導光板が備える「ガラス板」を、「内部に屈折率の異なる異質層を有するガラス板」に限定した本願補正発明は、上記「第2」で検討したとおり、引用発明と、引用例2の技術事項、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4」に記載したとおり引用発明と、引用例2の技術事項、周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明と、引用例2の技術事項、周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と、引用例2の技術事項、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、上記結論のとおり審決する。
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2019-010359