特許拒絶査定不服審判
2019-006806
発光装置及び発光装置の製造方法
- 審判番号
- 2019-006806
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-154823外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月24日
- 審決日
- 2020年09月24日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日亜化学工業株式会社
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】言上 惠一
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-154823「発光装置及び発光装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 8日出願公開、特開2018- 22844〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
平成28年 8月 5日 特許出願
平成30年 7月17日 拒絶理由通知(同年7月24日発送)
平成30年 9月19日 意見書・手続補正書
平成31年 2月20日 拒絶査定(同年2月26日送達)
令和 元年 5月24日 審判請求書
令和 2年 1月20日 拒絶理由通知(同年1月21日発送、
以下「当審拒絶理由通知」という。)
令和 2年 3月23日 意見書・手続補正書
2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和2年3月23日付け手続補正により補正された請求項1-14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。
「第1の光を発光する発光素子と、
前記発光素子の発光面上に設けられ、前記第1の光によって励起されて前記第1の光より長波長の第2の光を発光する蛍光体を含有する蛍光体層と、
前記蛍光体層上に設けられ、前記第1の光を反射し、前記第2の光を透過する反射膜と、
前記反射膜に接して設けられた透光性部材と、を有する発光装置であって、
前記発光素子は、青色発光ダイオードであり、
前記蛍光体層は、赤色の波長域の光を発光する蛍光体を含み、
前記発光装置の発光スペクトルにおいて、前記第1の光の発光ピーク強度は、前記第2の光の発光ピーク強度の1/10以下であることを特徴とする発光装置。」(以下「本願発明」という。)
3 当審拒絶理由通知
当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、本件出願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
特開2004-40124号公報(以下「引用例1」という。)
特開2016-72515号公報(以下「引用例2」という。)
特開2015-138838号公報(以下「引用例3」という。)
4 引用発明
(1)引用例1には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付加した。)。
ア 「【請求項2】
実装部材と、
前記実装部材の上に実装され、第1の波長を有する1次光を放出する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の光取り出し側に設けられ、前記半導体発光素子から放出される前記1次光を吸収して前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する2次光を放出する波長変換部と、
前記波長変換部の光取り出し側に設けられ、前記波長変換部から放出される前記2次光に対する反射率が低く、前記半導体発光素子から放出される前記1次光に対する反射率が高い第1の光反射部と、
を備えたことを特徴とする半導体発光装置。
…
【請求項5】
前記第1の光反射部は、ブラッグ反射鏡により構成されていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の半導体発光装置。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
…
【0017】
しかし、図30に示したような構成において、半導体発光素子900から放出される1次光を、蛍光体950によりすべて吸収・変換させることは困難であった。すなわち、1次光のうちの一部分は、蛍光体950に吸収されることなく、外部に放出される。その結果として、変換効率が低下するという問題があった。
【0018】
また、外部に取り出される光は、波長変換された2次光と未変換の1次光とが混合された混色光となる。しかし、例えばディスプレイなどのように複数の発光素子を並べて使用
するような場合には、個々の発光装置の混色の比率がばらつくために、全体的な色斑として見栄えを劣化させる要因となる。
【0019】
さらに、発光装置から放出される1次光の波長が380nm以下の紫外線である場合には、漏洩する1次光成分は、人体や周囲の部品などに対して悪影響を与え、実用上問題を生ずるおそれもある。例えば、モールド樹脂が発光素子からの紫外線により劣化し、黄変したり透過率が低下するという不具合を生ずる場合もある。
【0020】
特に、従来の青色や紫色発光の半導体発光素子のなかで、不純物を介して遷移するタイプの発光層を有するものは、その発光波長帯が比較的広く、時として紫外線成分まで含む場合もある。このような不要な紫外線成分は、無駄な光として発光装置から放出されるばかりでなく、その漏れ光が上述した種々の問題を生ずることとなる。
また、太陽光や蛍光灯などの光源から放出される紫外線が外乱光として発光装置に侵入し、蛍光体が不要な発光を生ずるという問題もあった。
【0021】
本発明は、かかる種々の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、発光波長が極めて安定で、しかも、可視光から赤外線領域までの種々の波長において高い変換効率で波長変換することができる半導体発光装置および画像表示装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【発明の効果】
…
【0046】
さらに、本発明によれば、光反射部RE1を配置することにより、波長変換部FLを透過して漏洩した1次光を高い効率で反射して、波長変換部FLに再び戻すことができる。このようにして戻された1次光は、波長変換部FLにおいて波長変換され、2次光として、光反射部RE1を透過する。つまり、波長変換部FLの光出射側に光反射部RE1を配置することにより、1次光の漏洩を防止するとともに、波長変換部FLを透過した1次光を戻して高い効率で波長変換することができるようになる。また、外乱光により波長変換部FLが励起されて不要な発光を生ずるという問題を解消することができる。」
エ 「【発明を実施するための最良の形態】
…
【0063】
次に、本発明による第2の実施形態に係る半導体発光素子について説明する。
図2は、本発明による第2の実施形態に係る半導体発光素子の概略構成を例示する断面図である。同図に示した半導体発光素子10Bも、窒化ガリウム系半導体などを用いた発光素子であり、その光の取り出し経路に、波長変換部FL、および光反射部RE1が設けられている点に特徴を有する。ここで、前述した図1の発光素子と同一の部分については、同一の符合を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
ここで、本実施形態においては、光吸収層ABの代わりに光反射部RE1が設けられている点で前述した第1実施形態と異なる。光反射部RE1は波長選択性を有する反射層であり、波長変換部FLから入射する光のうちで、1次光を反射し、2次光を透過させる役割を有する。すなわち、光反射部RE1は、1次光の波長の光を反射し、2次光の波長の光を透過するカット・オフ・フィルタ、あるいはバンドパス・フィルタとして作用する。その具体的な材料としては、例えば、1次光が紫外線領域の光の場合には、酸化チタンや酸化亜鉛などを用いることができる。これらの反射性の材料を、所定の溶媒中に適宜分散させ、波長変換部FLの上にコーティングして光反射部RE1を形成することができる。
【0065】
また、光反射部RE1として、ブラッグ反射鏡を用いることもできる。すなわち、屈折率が異なる2種類の薄膜を交互に積層することにより、特定の波長領域の光に対する反射率が高い反射鏡を形成することができる。例えば、1次光の波長をλ、薄膜層の光屈折率
をnとした場合に、膜厚をそれぞれλ/(4n)とした2種類の薄膜を交互に積層することにより、1次光に対する反射率が極めて高い反射鏡を形成することができる。このような2種類の薄膜は、光屈折率の差が大きいことが望ましい。その組み合わせとしては、例えば、酸化シリコン(SiO2)と酸化チタン(TiO2)、窒化アルミニウム(AlN)と窒化インジウム(InN)、あるいはこれらのうちのいずれかの材料からなる薄膜と、アルミニウム・ガリウム砒素、アルミニウム・ガリウム燐、五酸化タンタル、多結晶シリコン、非晶質シリコンなどのいずれか材料の薄膜とを適宜組み合わせても良い。
【0066】
このような光反射部RE1を配置することにより、波長変換部FLを透過して漏洩した1次光を高い効率で反射して、波長変換部FLに再び戻すことができる。このようにして戻された1次光は、波長変換部FLにおいて波長変換され、2次光として、光反射部RE1を透過する。つまり、波長変換部FLの光出射側に光反射部RE1を配置することにより、1次光の漏洩を防止するとともに、波長変換部FLを透過した1次光を戻して高い効率で波長変換することができるようになる。また、外部から侵入する紫外線も反射することができる。すなわち、外乱光により波長変換部FLが励起されて不要な発光が生ずるという問題を解消することができる。」
オ 図2は以下のとおりである。
(2)以下、引用発明を認定する。
ア 上記(1)アの記載によれば、
「 実装部材と、
前記実装部材の上に実装され、第1の波長を有する1次光を放出する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の光取り出し側に設けられ、前記半導体発光素子から放出される前記1次光を吸収して前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する2次光を放出する波長変換部と、
前記波長変換部の光取り出し側に設けられ、前記波長変換部から放出される前記2次光に対する反射率が低く、前記半導体発光素子から放出される前記1次光に対する反射率が高い第1の光反射部と、
を備え、
前記第1の光反射部は、ブラッグ反射鏡により構成されている、
半導体発光装置。」
が記載されている。
イ 上記(1)ウの記載によれば、
「1次光の漏洩を防止するとともに、波長変換部FLを透過した1次光を戻して高い効率で波長変換すること」
が記載されている。
ウ 以上によれば、引用例1には以下の発明が開示されている。
「実装部材と、
前記実装部材の上に実装され、第1の波長を有する1次光を放出する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の光取り出し側に設けられ、前記半導体発光素子から放出される前記1次光を吸収して前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する2次光を放出する波長変換部と、
前記波長変換部の光取り出し側に設けられ、前記波長変換部から放出される前記2次光に対する反射率が低く、前記半導体発光素子から放出される前記1次光に対する反射率が高い第1の光反射部と、
を備え、
前記第1の光反射部は、ブラッグ反射鏡により構成され、
1次光の漏洩を防止するとともに、波長変換部を透過した1次光を戻して高い効率で波長変換する、半導体発光装置。」(以下「引用発明」という。)
5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「第1の波長を有する1次光を放出する半導体発光素子」は、本願発明の「第1の光を発光する発光素子」に相当する。
イ 一般に、蛍光体の発光波長が吸収波長より長波長であることは技術常識である。してみると、引用発明の「前記半導体発光素子の光取り出し側に設けられ、前記半導体発光素子から放出される前記1次光を吸収して前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する2次光を放出する波長変換部」は、本願発明の「前記発光素子の発光面上に設けられ、前記第1の光によって励起されて前記第1の光より長波長の第2の光を発光する蛍光体を含有する蛍光体層」に相当する。
ウ 引用発明の「前記波長変換部の光取り出し側に設けられ、前記波長変換部から放出される前記2次光に対する反射率が低く、前記半導体発光素子から放出される前記1次光に対する反射率が高」く「ブラッグ反射鏡により構成され」る「第1の光反射部」は、本願発明の「前記蛍光体層上に設けられ、前記第1の光を反射し、前記第2の光を透過する反射膜」に相当する。
エ 引用発明は「1次光の漏洩を防止する」ものであるから、本願発明の発明特定事項である「前記発光装置の発光スペクトルにおいて、前記第1の光の発光ピーク強度は、前記第2の光の発光ピーク強度の1/10以下である」ことを充足する。
オ 以上によれば、本願発明と引用発明は、
「第1の光を発光する発光素子と、
前記発光素子の発光面上に設けられ、前記第1の光によって励起されて前記第1の光より長波長の第2の光を発光する蛍光体を含有する蛍光体層と、
前記蛍光体層上に設けられ、前記第1の光を反射し、前記第2の光を透過する反射膜と、
を有する発光装置であって、
前記発光装置の発光スペクトルにおいて、前記第1の光の発光ピーク強度は、前記第2の光の発光ピーク強度の1/10以下である発光装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明は、「前記反射膜に接して設けられた透光性部材」を有するのに対し、引用発明は、そのような部材を有するものなのか否か不明である点。
相違点2:発光素子と蛍光体層に関し、本願発明は、「発光素子は、青色発光ダイオードであり」、「蛍光体層は、赤色の波長域の光を発光する蛍光体を含」むのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。
6 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
ア 発光装置の光出射面に透光性部材を備えることは、引用例1(【0118】~【0122】、図12等に記載される波長変換部等を封止する樹脂140参照)、引用例2(【0039】に記載される発光面となる透光性部材60参照)、あるいは、引用例3(【0037】等に記載される透明板材13参照)に記載されるように、周知の技術手段である。また、引用例1においても、【0118】~【0122】、図12には、発光素子等を封止する樹脂140が記載されている。してみると、引用発明に上記周知の技術手段を採用し、引用発明の第1の光反射部に接して透光性部材を設けて上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が適宜なし得ることである。
(2)相違点2について
発光素子として青色発光ダイオードを用い、蛍光体層として赤色の波長域の光を発光する蛍光体を用いることは、例えば、
ア 特開2011-204406号公報
「【0011】…本発明では、光源として青色発光ダイオードを利用し、前述したような青色光励起により赤色に発光する蛍光物質を混合させるか、内面に塗布するか、当該蛍光物質を含むフィルムを内面に貼り付けた材料によって、テイルランプおよび/またはブレーキランプを形成させる…」
イ 特表2015-532501号公報
「【0002】発光ダイオード(LED)を用いて白色光または他色の光を発生させるため、通常は、狭帯域青色光を出射する半導体チップが使用される。車両ブレーキ灯、車両尾灯、および信号灯用のLEDに対しては、LEDの半導体チップの上方(しかし光路内)にある赤色変換蛍光体が使用される。典型的には、半導体チップの青色光が完全に変換され、その結果として赤色光のみがこの素子から出射される(完全変換ともいう)。」
ウ 特開2015-11976号公報
「【0033】
照明装置1がブレーキランプ、リアポジションランプ、ハイマウントストップランプ、リアフォグランプなどに用いられる場合には、発光素子12bを青色発光ダイオードとし、蛍光体を赤色の蛍光を放射するものとすることができる。この場合、発光素子12bから照射された青色の光をすべて赤色の光に変換し、波長変換部14から赤色の光が照射されるようにする。」
に記載されるように周知技術である。
そして、引用例1には、
「【0045】…本発明によれば、異なる発光色を有する半導体発光素子を並べる必要がある場合においても、発光色の変更は、用いる蛍光体の種類を変えるだけで済み、半導体発光素子の材料や構造は同一とすることができる。」
との記載があり、発光色は任意に変更できることが示唆されている。また、
「【0124】本具体例においては、半導体発光素子900aは、例えば、青色あるいは紫色の波長帯で発光する半導体発光素子である。」
との記載があり、青色の波長帯で発光する半導体発光素子を用いることも示唆されている。
してみると、引用発明の半導体発光素子と、波長変換部として上記周知技術を採用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得ることである。
(3)作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。
(4)審判請求人の意見書における主張について
請求人は、令和2年3月23日付け意見書の「4.本願発明1と引用発明との対比」において、本願発明における「前記第1の光の発光ピーク強度は、前記第2の光の発光ピーク強度の1/10以下である」とした発明特定事項は、発光効率の低下の抑制と色ずれを抑制の両立を可能にするという技術的な意義を有するものであり、単に第1の光の漏洩を防止するものではない旨主張する。しかしながら、本願発明における「前記第1の光の発光ピーク強度は、前記第2の光の発光ピーク強度の1/10以下である」とした発明特定事項は、第1の光の発光ピーク強度がほぼ零である場合(言い換えると、第1の光が漏れない場合)を含んでいる。よって、請求人の上記主張には理由がなく、採用することはできない。
(5)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-006806