特許拒絶査定不服審判
2025-001151
光電変換装置及び飛行体
- 審判番号
- 2025-001151
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-008456
- 請求日
- 2025年01月27日
- 審決日
- 2026年06月08日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ソフトバンク株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 横井 亜矢子
- 審判官 堀井 康司
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024-8456「光電変換装置及び飛行体」拒絶査定不服審判事件〔令和7年8月5日出願公開、特開2025-114048〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和6年1月24日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 6月24日付け:拒絶理由通知書
同年 8月26日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年11月 5日 :原査定の謄本の送達)
令和7年 1月27日 :審判請求書の提出
令和8年 4月27日 :面接
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年8月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する第1光電変換部と、前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部とを積層したタンデム型の光電変換素子と、
前記第2光電変換部の受光面側に配される波長変換部と、
を備え、
前記波長変換部は、400nm未満の波長の少なくとも一部を前記第2光電変換部の吸収波長に変換する波長変換材料を含み、
前記光電変換素子は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池の少なくとも2つを含む
光電変換装置。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成A、構成A1、構成B及び構成B1とに分説する。また、参考図として、本願の【図2A】に部材名を記入したもの及び【図2B】を掲載する。
<本願発明の分説>
A 入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する第1光電変換部と、前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部とを積層したタンデム型の光電変換素子と、
B 前記第2光電変換部の受光面側に配される波長変換部と、を備え、
B1 前記波長変換部は、400nm未満の波長の少なくとも一部を前記第2光電変換部の吸収波長に変換する波長変換材料を含み、
A1 前記光電変換素子は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池の少なくとも2つを含む
X 光電変換装置。
<参考図>
【図2A】
[図:0001437940000001.jpg]
【図2B】
[図:0001437940000002.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。また、図面を本願明細書において最も関連する記載のある箇所に挿入して示した。
ア 技術分野、背景技術、発明の概要等(【0001】~【0012】)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置及び飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~6には、単数若しくは複数の波長変換物質を含む波長変換層を備えた太陽電池が開示されている。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
太陽電池は紫外光域の光を有効に利用することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、光電変換装置が提供される。上記の光電変換装置は、入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する第1光電変換部と、前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部とを積層したタンデム型の光電変換素子を備えてよい。上記の光電変換装置は、前記第2光電変換部の受光面側に配される波長変換部を備えてよい。前記波長変換部は、400nm未満の波長を前記第2光電変換部の吸収波長に変換する波長変換材料を含んでよい。
【0005】
上記光電変換装置において、前記波長変換部は、400nm未満の波長を、400nm以上の波長に変換してよい。
【0006】
上記いずれかの光電変換装置において、前記波長変換部は、400nm未満の波長を変換した光の波長が前記第2光電変換部の吸収波長域内となるように変換してよい。
【0007】
上記いずれかの光電変換装置において、前記光電変換素子は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池の少なくとも2つを含んでよい。
…(中略)…
【0011】
上記いずれかの光電変換装置において、前記波長変換材料は、有機色素、希土類錯体、発光イオンがドープされた無機結晶若しくはガラス、無機蛍光体ナノ粒子、量子ドット、酸化物蛍光体ナノ粒子の少なくとも1つを含んでよい。
【0012】
上記いずれかの光電変換装置において、前記波長変換部は、前記第2光電変換部の少なくとも受光面側に配され、予め定められた第1波長領域の光の波長を変換する第1波長変換層を有してよい。前記波長変換部は、前記第1波長変換層の受光面側に配され、予め定められた第2波長領域の光の波長を変換する第2波長変換層を有してよい。前記第1波長領域の上限値は前記第2波長領域の上限値と異なってよい。前記第1波長領域の下限値は前記第2波長領域の下限値と異なってよい。」
イ 発明を実施するための形態(【0021】~【0129】)
「【発明を実施するための形態】
【0021】
太陽電池に入射する光のうち一部の波長の光エネルギーは、電気エネルギーに変換されずに活用できていない場合がある。例えば、紫外光域の光が太陽電池に入射しても、光電変換素子で変換されずに、紫外光域の光エネルギーが十分に活用されない場合がある。本明細書において例示的に開示される実施形態によれば、入射する光の波長を光電変換素子の吸収波長に変換して利用することで、発電量を増加させて、より多くのエネルギーを有効活用することができる。
【0022】
成層圏を太陽エネルギーで飛行する飛行体において、既存の太陽電池が生み出すエネルギー量では飛行可能エリアおよび/またはサービス品質が限定される場合がある。成層圏の紫外光の強さは宇宙並みであり地上よりも太陽電池の性能劣化が早く進む。耐久性を確保するために紫外光をカットすると、その波長域のエネルギーを利用できなくなる。本明細書において例示的に開示される実施形態によれば、入射する光の波長を変換して利用することで、飛行体の耐久性を確保しつつ、発電量を増加させて、より多くのエネルギーを飛行体に提供することができる。
…(中略)…
【0024】
(飛行体100の概要)
図1は、飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。本実施形態において、飛行体100は、発電システム110と、電力制御回路120と、蓄電装置130と、推進力発生装置140と、センサ150と、制御装置160とを備える。本例の発電システム110は、光電変換装置200を有する。
【図1】
[図:0001437940000003.jpg]
…(中略)…
【0035】
光電変換素子の変換効率は、入射した光の波長に依存する。例えば、シリコン系の光電変換素子では、可視光線~近赤外線の波長領域の光は比較的効率よく変換することができるが、紫外線に対応する波長領域の光を効率よく変換することができない場合がある。光電変換素子300は、変換効率の異なる複数の光電変換素子を有してよい。なお、本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。
【0036】
波長変換部400は、光電変換装置200に入射した光を予め定められた波長の光に変換する。波長変換部400は、光電変換素子300による変換効率が比較的良好な波長の光を発してよい。波長変換部400は、400nm未満の波長を光電変換素子300の吸収波長に変換してよい。波長変換部400は、100nm以上、400nm未満の波長を光電変換素子300の吸収波長に変換してよく、200nm以上、400nm未満の波長を光電変換素子300の吸収波長に変換してよく、300nm以上、400nm未満の波長を光電変換素子300の吸収波長に変換してよい。
【0037】
波長変換部400は、波長変換部400nm以上の波長の光も光電変換素子300の吸収波長に変換してよい。波長変換部400は、100nm以上、500nm以下の波長を光電変換素子300の吸収波長に変換してよく、200nm以上、500nm以下の波長を光電変換素子300の吸収波長に変換してよく、300nm以上、500nm以下の波長を光電変換素子300の吸収波長に変換してよい。なお、光電変換素子300の吸収波長とは、光電変換素子300が複数の光電変換素子を有する場合、いずれかの光電変換素子で吸収可能な波長であってよい。
…(中略)…
【0044】
(光電変換装置200の概要)
図2Aは、光電変換装置200の内部構成の一例を概略的に示す。本例の光電変換装置200は、表面202および裏面204を有する。光電変換装置200は、例えば、表面保護層210と、封止層220と、裏面保護層230と、光電変換素子300とを備える。本例の光電変換素子300は、表面302と、裏面304と、側面306とを有する。
【図2A】
[図:0001437940000004.jpg]
【0045】
光電変換素子300は、受光面電極310と、光起電力素子320と、裏面電極330と、負極端子362と、正極端子364とを有する。本例の光電変換素子300は、負極端子362と正極端子364の2端子構造を有するが、3端子構造を有してもよく、4端子構造を有してもよい。
【0046】
光起電力素子320は、第1光電変換部321および第2光電変換部322を含む。本例の光起電力素子320は、第1光電変換部321と第2光電変換部322とを積層したタンデム型の構造を有する。第1光電変換部321および第2光電変換部322は、異なる種類の光起電力素子であってよい。
【0047】
第1光電変換部321は、入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する。第1光電変換部321は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池のいずれかであってよい。一例において、第1光電変換部321は、シリコン系の光起電力素子である。第1光電変換部321は、n型半導体層およびp型半導体層を含んでよい。シリコン系の光起電力素子は、単結晶シリコンを用いた光起電力素子であってもよく、多結晶シリコンを用いた光起電力素子であってもよい。
【0048】
第2光電変換部322は、入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する。第2光電変換部322は、第1光電変換部321の受光面側に配される。即ち、第2光電変換部322は、第1光電変換部321よりも先に光電変換装置200に入射した光を受光してよい。第2光電変換部322は、n型半導体層およびp型半導体層を有してよい。第2光電変換部322は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池のいずれかであってよい。第2光電変換部322は、ペロブスカイト型の光起電力素子または亜酸化銅太陽電池であってよい。一例において、第2光電変換部322は、ペロブスカイト型の光起電力素子である。ペロブスカイト型の光起電力素子は、n型半導体層と、ペロブスカイト層と、p型半導体層とを含んでよい。
【0049】
第1光電変換部321および第2光電変換部322の組み合わせは任意であってよい。一例において、第1光電変換部321がシリコン系の光起電力素子であり、第2光電変換部322がペロブスカイト型の光起電力素子である。また、第1光電変換部321がCIGS太陽電池であり、第2光電変換部322がペロブスカイト型の光起電力素子であってもよい。
【0050】
第1光電変換部321および第2光電変換部322は、互いに異なる吸収波長域を有してよい。第1光電変換部321および第2光電変換部322は、上限値および/または下限値の異なる吸収波長域を有してよい。第2光電変換部322の吸収波長域の上限値は、第1光電変換部321の吸収波長域の上限値よりも低くてよい。第2光電変換部322の吸収波長域の下限値は、第1光電変換部321の吸収波長域の下限値よりも低くてよい。光電変換素子300は、入射した光を先に第2光電変換部322で吸収して、吸収されなかった光を第1光電変換部321で吸収してよい。
…(中略)…
【0056】
本例の封止層220は、波長変換材料225を含む。封止層220は、波長変換材料225からなるフィルムまたはコーティングであってもよく、波長変換材料225および樹脂材料を含むフィルムまたはコーティングであってもよい。本例の封止層220は、波長変換部400として機能する。波長変換材料225は、有機色素、希土類錯体、発光イオンがドープされた無機結晶若しくはガラス、無機蛍光体ナノ粒子、量子ドット、酸化物蛍光体ナノ粒子の少なくとも1つを含んでよい。
…(中略)…
【0058】
波長変換部400は、1または複数の波長変換層WLを有してよい。波長変換層WLは、光電変換装置200において、任意の位置に設けられてよい。波長変換層WLは、光電変換素子300の受光面側の層であってよい。波長変換層WLは、第2光電変換部322の受光面側に配されてよい。波長変換部400は、封止層220または表面保護層210の少なくとも1つを含んでよい。波長変換層WLは、封止層220および表面保護層210以外の層であってもよい。
【0059】
波長変換層WLは、例えば、ダウンコンバージョン現象、アップコンバージョン現象、非線形光学効果などを利用して、光の波長を変換する。アップコンバージョン現象を利用して光の波長を変換するアップコンバージョン物質は、例えば、特定の波長の光または電磁波で励起し、当該光または当該電磁波の波長よりも短い波長の光を発する。ダウンコンバージョン現象を利用して光の波長を変換するダウンコンバージョン物質は、例えば、特定の波長の光または電磁波で励起し、当該光または当該電磁波の波長よりも長い波長の光を発する。
【0060】
波長変換層WLは、光電変換素子300による変換効率が比較的良好な波長の光を発してよい。特に、波長変換層WLは、第2光電変換部322による変換効率が比較的良好な波長の光を発してよい。例えば、波長変換層WLは、400nm未満の波長を第2光電変換部322の吸収波長に変換する。波長変換層WLは、400nm未満の波長を、400nm以上の波長に変換してよい。波長変換層WLは、400nm未満の波長を変換した光の波長が第2光電変換部322の吸収波長域内となるように変換してよい。第2光電変換部322の吸収波長域内に変換するとは、波長変換層WLが変換した後の光の波長域が、第2光電変換部322の吸収波長域内に含まれることを指してよい。
【0061】
ここで、封止層220における波長変換材料225の含有量は、10質量%以下であってよく、1~8質量%であってよい。波長変換材料225の含有量が上記の数値範囲内である場合、例えば、封止層220の厚さが20μm以上100μm以下であっても、光電変換素子300の変換効率を向上させるのに十分な量の紫外線を、可視光線または近赤外線に変換することができる。これにより、例えば、地上における変換効率が2%以上向上し得る。また、成層圏環境における変換効率が4%以上向上し得る。
【0062】
波長変換材料225の含有量は、紫外線の封止層220の透過率を考慮して決定されてもよい。波長変換材料225の含有量は、例えば、波長が250nm~1600nmの光の封止層220の透過率が90%以上となるように決定される。波長変換材料225の含有量は、波長が250nm~1600nmの光の封止層220の透過率が80%以上となるように決定されてもよい。上記の透過率は、例えば、紫外可視近赤外分光光度計により測定される。封止層220は、波長変換材料225を含有する層の一例であってよい。一実施形態において、紫外線の封止層220の透過率が80%以上であり、紫外線の表面保護層210の透過率が90%以上である。他の実施形態において、紫外線の封止層220の透過率が90%以上であり、紫外線の表面保護層210の透過率が90%以上である。
…(中略)…
【0068】
光電変換装置200は、光電変換素子300による変換効率が比較的小さな波長領域の光を光電変換素子300による変換効率が比較的大きな波長領域の光に変換する。本例の光電変換素子300は、入射した光を第2光電変換部322による変換効率が比較的大きな波長領域の光に変換する。これにより、光電変換装置200は、入射した光の光エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができる。その結果、光電変換装置200の単位質量当たりの発電量が向上する。
【0069】
ここで、光電変換装置200は、地上の環境と比較して紫外線量が大きい成層圏環境においては、利用されていなかった紫外線を活用してさらに単位質量当たりの発電量を向上することができる。そのため、成層圏を飛行する飛行体100に光電変換装置200を搭載することで、飛行体100の飛行可能距離、飛行可能時間および/または飛行可能な緯度範囲が増加する。光電変換装置200は、発電効率を向上することで、飛行体100で使用可能なエネルギーを増加させて、蓄電装置130などの他の構成に重量を割り当てることができる。これにより、飛行体100は、消費電力の大きい高性能な装置を搭載することもできる。
【0070】
本例の光電変換装置200は、波長変換部400を設けることで、光電変換素子300およびその他の層の耐久性を向上することができる。したがって、光電変換装置200は、ペロブスカイト型の光起電力素子のように、比較的紫外光に弱い光起電力素子を用いることができる。このように、本例の光電変換装置200は、発電効率を向上しつつ、紫外光への耐久性を向上することができる。
【0071】
光電変換素子300が複数の光起電力素子を有する場合、複数の光起電力素子間の電流整合性が要求される場合がある。本例の光電変換装置200は、光電変換素子300の特性を考慮して波長変換層WLの波長変換特性を調整することで、複数の光起電力素子間の電流を整合させることができる。また、光電変換装置200は、使用する環境の太陽光スペクトルを考慮して波長変換層WLの波長変換特性を調整することで、複数の光起電力素子間の電流を整合させてよい。光電変換装置200は、光電変換素子300の電流整合性を向上させることで、変換効率をさらに向上することができる。
【0072】
例えば、波長変換層WLの波長変換特性、第1光電変換部321および第2光電変換部322の波長域毎の変換効率、光電変換装置200の使用環境等を全体的に考慮して、光電変換装置200の構造を決定する。光電変換素子300の電流整合性を考慮して、波長変換層WLの波長変換材料を決定してよく、波長変換材料の種類、粒子サイズ、粒子形状、感度および濃度を調整してよい。波長変換層WLの波長変換材料は、反射率、透過率、屈折率、変換波長領域または変換効率などを考慮して決定してよい。波長変換層WLで波長を変換することにより第2光電変換部322で生成する電流量が増大し、光電変換素子300の電流整合性が悪化することを防止できる。よって、光電変換装置200の変換効率がさらに向上する。
【0073】
また、光電変換素子300の電流整合性を考慮して、表面保護層210の種類および厚みを調整してよく、封止層220の種類および厚みを調整してよい。表面保護層210および封止層220は、反射率、透過率、屈折率または波長変換材料との相性などを考慮して決定してよい。
【0074】
波長変換部400は、第2光電変換部322が第1光電変換部321よりも比較的低い波長で変換効率が高い場合に、光電変換装置200に入射した光を第2光電変換部322の吸収波長に変換してよい。これにより、第1光電変換部321の吸収波長に変換するよりも、波長の変換幅を小さくして、波長の変換効率を向上することができる。
…(中略)…
【0082】
(封止層220の組成)
本実施形態において、封止層220は、樹脂材料(図示されていない。)と、波長変換材料225とを含む。封止層220の樹脂材料と、表面保護層210の樹脂材料とは、種類および/または組成が異なってよい。
…(中略)…
【0087】
図2Bは、光電変換装置200の変形例を示す。本例の光電変換装置200は、表面保護層210が波長変換部400として機能する点で図2Aの光電変換装置200と相違する。本例では、図2Aの光電変換装置200と相違する点について特に説明し、その他の点は図2Aの光電変換装置200と同一であってもよい。本例の封止層220は、波長変換部400として機能しなくてよい。
【図2B】
[図:0001437940000005.jpg]
【0088】
表面保護層210は、光の波長を変換するための波長変換材料215を含む。波長変換材料215は、波長変換部400に関連して説明された無機蛍光体または有機蛍光体と同様の材料を含んでよい。表面保護層210は、波長変換材料215からなるフィルムまたはコーティングであってもよく、波長変換材料215および樹脂材料を含むフィルムまたはコーティングであってもよい。
…(中略)…
【0121】
図4は、2端子構造を有する光電変換装置200のEQE特性の一例を示す。縦軸はEQE(%)を示し、横軸は波長(nm)を示す。EQEは、照射された光子数に対する取り出した電荷の割合である外部量子効率を示す。
【図4】
[図:0001437940000006.jpg]
【0122】
グラフG322w/oは、第2光電変換部322のEQEの分布を示す。グラフG322wは、波長変換層WLを設けて400nm未満の波長を第2光電変換部322の吸収波長域に変換することで、グラフG322w/oよりも第2光電変換部322におけるEQEが増加していることを示す。本例では、450nm前後での第2光電変換部322のEQEが向上している。
【0123】
光電変換装置200は、第2光電変換部322におけるEQEが増加したことに応じて、電流整合性を保つように第1光電変換部321および/または第2光電変換部322の吸収波長域を調整してよい。
【0124】
光電変換装置200は、第2光電変換部322の吸収波長域の長波長側の吸収端E322がより短波長側にシフトするように調整してよい。吸収端E322は、第2光電変換部322のバンドギャップを変更することで調整してよい。グラフG322wは、グラフG322w/oよりも長波長側の吸収端E322がより短波長側にシフトするように調整されたことを示す。
【0125】
グラフG321w/oは、第1光電変換部321のEQEの分布を示す。グラフG321wは、波長変換層WLを設けた場合に、第2光電変換部322と電流が整合するように調整した第1光電変換部321のEQEの分布を示す。
【0126】
光電変換装置200は、第1光電変換部321の吸収波長域がより短波長の光を吸収するように調整してよい。一例において、光電変換装置200は、第1光電変換部321の吸収波長域の短波長側の吸収端E321がより短波長側にシフトするように調整する。吸収端E321は、第1光電変換部321のバンドギャップを変更することで調整してよい。グラフG321wは、グラフG321w/oよりも短波長側の吸収端E321がより短波長側にシフトするように調整されたことを示す。
【0127】
このように、光電変換装置200は、波長変換層WLを設けて第2光電変換部322におけるEQEが増加した場合に、第1光電変換部321のEQEが増加するように調整し、第2光電変換部322のEQEとほぼ同等にするように調整することで、電流整合性を向上することができる。
【0128】
図5は、別の2端子構造を有する光電変換装置200のEQE特性の一例を示す。本例の光電変換装置200は、第1光電変換部321および第2光電変換部322が積層されたタンデム構造を有する。本例の第1光電変換部321はシリコン系の光起電力素子を有し、第2光電変換部322はペロブスカイト型の光起電力素子を有する。本例の光電変換装置200は、波長変換層WLを設けて400nm未満の波長を第2光電変換部322の吸収波長域に変換している。
【図5】
[図:0001437940000007.jpg]
【0129】
グラフG321wは、第1光電変換部321のEQEの分布を示す。一方、グラフG322wは、第2光電変換部322のEQEの分布を示す。領域R1は、波長変換層WLによって400nm未満の波長の光を第2光電変換部322の吸収波長域に変換することで、第2光電変換部322のEQEが増加した領域を示す。光電変換装置200は、図4で説明したように、第1光電変換部321の吸収波長域の短波長側の吸収端E321がより短波長側にシフトするように調整してよく、第2光電変換部322の吸収波長域の長波長側の吸収端E322がより短波長側にシフトするように調整してよい。これにより、光電変換装置200は、電流整合性を向上させて、変換効率を向上することができる。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、本願の出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献1.韓国公開特許第10-2017-0110256号公報
<周知技術を示す文献>
引用文献2.米国特許出願公開第2018/0151304号明細書
引用文献3.米国特許出願公開第2020/0035853号明細書
引用文献4.米国特許出願公開第2021/0159356号明細書
4 引用発明及び引用文献1技術事項の認定
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である引用文献1(韓国公開特許第10-2017-0110256号公報)には、次の記載がある(引用文献1の記載箇所に続く括弧内に、合議体による翻訳を記載し、後記(3)及び(4)における「引用発明」及び「引用文献1技術事項」の認定に直接用いる記載に下線を付した。また、図面を、最も関連する記載に続けて掲載した。いずれも、以下同様である。)。
ア 請求の範囲(請求項1、8~10)
「
[図:0001437940000008.jpg]
(請求の範囲
請求項1
蛍光量子ドットを溶媒中に分散させる蛍光量子ドット分散工程と、
太陽光を吸収可能な透明基板を洗浄する基板準備工程と、
前記透明基板の一方の面に分散された蛍光量子ドットをコーティングする蛍光量子ドットコーティング工程と、
蛍光量子ドットがコーティングされた前記透明基板を加熱して残留する溶媒を除去することにより、蛍光量子ドット波長変換器を生成する溶媒除去工程と、
前記蛍光量子ドット波長変換器のコーティング面を宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に接触させて貼り付ける接合工程と
を含んで構成されることを特徴とする、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための蛍光量子ドット波長変換器の製造方法。)
…(中略)…
[図:0001437940000009.jpg]
(請求項8
請求項1又は請求項4に記載の方法において、
前記太陽電池は、柔軟基板に転写された厚さ50μm以下を有するIII-V族を基材とする多接合太陽電池であることを特徴とする、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための蛍光量子ドット波長変換器の製造方法。)
[図:0001437940000010.jpg]
(請求項9
宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に付着される、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための蛍光量子ドット波長変換器において、
前記波長変換器は、蛍光量子ドットを溶媒中に分散させ、太陽光を吸収可能な透明基板を洗浄し、前記透明基板の一方の面に分散された蛍光量子ドットをコーティングし、蛍光量子ドットがコーティングされた前記透明基板を加熱して残留する溶媒を除去することにより生成され、前記蛍光量子ドット波長変換器のコーティング面を前記宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に接触させて貼り付けることを特徴とする、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための量子ドット波長変換器。)
[図:0001437940000011.jpg]
(請求項10
宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に直接形成される、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための蛍光量子ドット波長変換器において、
前記蛍光量子ドット波長変換器は、蛍光量子ドットを溶媒中に分散させ、分散された蛍光量子ドットを前記宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に直接コーティングし、前記太陽電池を加熱して前記表面に残留する溶媒を除去することにより生成されることを特徴とする、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための量子ドット波長変換器。)」
イ 技術分野、背景技術([0001]~[0010])
「
[図:0001437940000012.jpg]
(発明の説明
技術分野
[0001] 本発明は、太陽電池に関するものであり、より詳細には、蛍光量子ドットをIII-V族を基材とする多接合太陽電池セルに適用することにより、宇宙用及び高高度における太陽光スペクトル下での光電変換効率を向上させる蛍光量子ドット波長変換器及びその製造方法に関する。)
[図:0001437940000013.jpg]
[図:0001437940000014.jpg]
[図:0001437940000015.jpg]
[図:0001437940000016.jpg]
[図:0001437940000017.jpg]
([0002] III-V族太陽電池は、現存する太陽電池の中で最も高い光電変換効率を示す太陽電池であり、高効率特性に加えて、耐放射線特性等にも優れていることから、衛星用太陽電池として注目されてきた。近年、非集光型のIII-V族多接合太陽電池が、AM1.5G条件下において38.8%に達する光電変換効率を示すようになり、軍事目的の長期任務の遂行が要求される無人機等の動力源として、その応用分野が拡大している。
[0003] このような多接合太陽電池は、米国、欧州、日本等において、軍事的利用を目的として活発に研究、開発及び生産が行われている。一方、国内においては、地上用の集光型太陽電池の開発が少数の機関により研究・開発段階で進められているにとどまり、宇宙用及び軍事的目的の太陽電池の開発は皆無の状況にある。
[0004] 現在、InGaP/GaAs/Ge三接合太陽電池は、III-V族系マルチジャンクション太陽電池の中で、最も安定した生産が可能な太陽電池である。このような三接合太陽電池の光電変換効率は、三つの層において生成される短絡電流密度のうち最も小さい値によって決定されるため、光電変換効率を向上させるためには、各層の電流整合が必要である。
[0005] しかしながら、InGaP/GaAs/Ge三接合太陽電池は、三つの異種材料が結合された構造を有しており、各層における太陽光吸収波長、光吸収係数等が相互に異なるとともに、材料固有の物性も異なるため、エピタキシャル成長技術によって太陽電池の性能が決定される。このようなエピタキシャル成長技術は、長期間にわたり蓄積された高度な技術力を必要とするのみならず、基盤設備及び工程のためのコストも大きいため、これらを克服するための取り組みが必要とされている。)
[図:0001437940000018.jpg]
[図:0001437940000019.jpg]
[図:0001437940000020.jpg]
([0006] 太陽電池の開放電圧及び短絡電流密度の値は、太陽電池の光電変換効率に大きな影響を与える値であり、効率を向上させるためには、これらを同時に増加させる必要がある。しかし、開放電圧を増加させるために半導体のエネルギー帯域幅を増大させると、短絡電流密度が低下するため、これらに関する最適点を見いだすことが必要となる。多接合の場合には、開放電圧及び短絡電流密度の最適点を見いだすことが、単一接合の場合と比較してはるかに複雑であるため、これを実現するためには高度なエピタキシャル成長技術が必要とされる。
[0007] 量子ドット波長変換器は、任意の波長帯域の光を吸収した後、当該吸収波長とは異なる波長帯域の光を発光する役割を果たす。これは、太陽光を吸収して電力を生産することが容易ではない波長帯域の光を吸収し、電力生産が容易な波長領域へ変換することが可能であることを意味する。
[0008] 特定の波長領域における光吸収の増加は、各単位セルによって決定される開放電圧の値を維持しつつ、特定の層の短絡電流密度の値を向上させるため、太陽電池の光電変換効率の向上を可能にする。また、セル形成後に適用される技術であるため、セル工程後であっても電流整合のための電流値の微調整が可能であり、他の第3世代太陽電池技術と比較して、工程適用が容易であるという利点を有する。)
[図:0001437940000021.jpg]
[図:0001437940000022.jpg]
(後略)
([0009] このような量子ドット波長変換器は、紫外線領域の波長帯域における吸収が不十分なシリコン太陽電池の効率向上のための手段として利用されてきた。近年、GaAs太陽電池及びInGaP/GaAs/Ge太陽電池等に適用した結果が報告されているが、これらはいずれも地上用スペクトル条件であるAM1.5G条件下で実施された結果であり、太陽光スペクトル、温度及び大気条件等が地上条件とは異なる宇宙用及び高高度用への適用に向けた研究が必要である。
[0010] また、宇宙及び高高度環境においては、約500nm近傍の太陽光の照射量が地上環境と比較して大幅に増加するにもかかわらず、これを十分に活用できていないため、太陽電池の効率がかえって低下する傾向があり、これに適した量子ドット波長変換器の開発が求められる。
(後略))」
ウ 発明の内容(課題、手段、効果、[0015]~[0031])
(ア) 解決しようとする課題([0015]~[0016])
「
[図:0001437940000023.jpg]
(発明の内容
解決しようとする課題
[0015] 本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するために案出されたものであり、宇宙及び/又は高高度環境への適用が容易な量子ドット波長変換器及びその製造方法を提供することを目的とする。
[0016] また、本発明は、前記環境において光電変換効率を容易に向上させることが可能な量子ドット波長変換器及びその製造方法を提供することを別の目的とする。)」
(イ) 課題の解決手段([0017]~[0031])
「
[図:0001437940000024.jpg]
(課題の解決手段
[0017] 本発明は、上記に提示した課題を達成するために、宇宙及び/又は高高度環境への適用が容易な量子ドット波長変換器の製造方法を提供する。前記量子ドット波長変換器の製造方法は、
[0018] 蛍光量子ドットを溶媒中に分散させる蛍光量子ドット分散工程と
[0019] 太陽光を吸収可能な透明基板を洗浄する基板準備工程と、
[0020] 前記透明基板の一方の面に分散された蛍光量子ドットをコーティングする蛍光量子ドットコーティング工程と、
[0021] 蛍光量子ドットがコーティングされた前記透明基板を加熱して残留する溶媒を除去することにより、蛍光量子ドット波長変換器を生成する溶媒除去工程と、並びに
[0022] 前記蛍光量子ドット波長変換器のコーティング面を宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に接触させて貼り付ける接合工程と
を含んで構成されることを特徴とする。)
[図:0001437940000025.jpg]
[図:0001437940000026.jpg]
[図:0001437940000027.jpg]
([0028] また、前記蛍光量子ドットは、粉末形態のCdSe/ZnSコアシェル型蛍光量子ドットであり、前記溶媒はトルエン溶媒であり、前記分散は超音波を用いて行われることを特徴としてもよい。
[0029] また、前記太陽電池は、柔軟基板に転写された厚さ50μm以下を有するIII-V族を基材とする多接合太陽電池であることを特徴としてもよい。
[0030] また別の態様として、本発明の他の一実施形態は、宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に付着される、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための蛍光量子ドット波長変換器であって、前記波長変換器は、蛍光量子ドットを溶媒中に分散させ、太陽光を吸収可能な透明基板を洗浄し、前記透明基板の一方の面に分散された蛍光量子ドットをコーティングし、蛍光量子ドットがコーティングされた前記透明基板を加熱して残留する溶媒を除去することにより生成され、前記蛍光量子ドット波長変換器のコーティング面を前記宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に接触させて貼り付けることを特徴とする、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための量子ドット波長変換器を提供することができる。
[0031] さらに別の態様として、本発明の他の一実施形態は、宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に直接形成される、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための蛍光量子ドット波長変換器であって、前記蛍光量子ドット波長変換器は、蛍光量子ドットを溶媒中に分散させ、分散された蛍光量子ドットを前記宇宙用及び高高度用太陽電池の表面に直接コーティングし、前記太陽電池を加熱して前記表面に残留する溶媒を除去することにより生成されることを特徴とする、宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための量子ドット波長変換器を提供することができる。)」
(ウ) 発明の効果([0032]~[0034])
「
[図:0001437940000028.jpg]
[図:0001437940000029.jpg]
(後略)
(発明の効果
[0032] 本発明によれば、量子ドット波長変換器を用いることにより、太陽光スペクトル及び周囲温度等の環境が地上環境とは異なる宇宙及び/又は高高度環境において、III-V族系多接合太陽電池の効率を容易に向上させることができるという効果がある。
[0033] 一般に、宇宙及び/又は高高度環境では、地上環境に比較して紫外線領域の太陽光入射が増加するため効率の向上が予測されるが、実際には当該領域の太陽光が入射する際に発生するキャリア再結合損失が大きく、地上環境の太陽光入射時よりもかえって効率が低下する特性を有する。
[0034] したがって、本発明の他の効果としては、短波長領域をより有効に活用する必要がある宇宙及び/又は高高度用太陽電池に適用されることにより、前述した欠点を補完できる点が挙げられる。
(後略))」
エ 図面の簡単な説明([0039])
「
[図:0001437940000030.jpg]
[図:0001437940000031.jpg]
[図:0001437940000032.jpg]
(図面の簡単な説明
[0039]
図1は、本発明の一実施形態に係る量子ドット波長変換器の製造工程を示すフローチャートである。
図2は、本発明の一実施形態に係る量子ドット波長変換器を適用した太陽電池の断面構成を示す模式図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る、種々の発光波長を有する量子ドット波長変換器を適用し、AM0条件下で測定したIII-V族を基材とする三接合セルの開放電圧の変化を示すグラフである。
図4は、本発明の一実施形態に係る、種々の発光波長を有する量子ドット波長変換器を適用し、AM0条件下で測定したIII-V族を基材とする三接合セルの短絡電流密度の変化を示すグラフである。
図5は、本発明の一実施形態に係る、種々の発光波長を有する量子ドット波長変換器を適用し、AM0条件下で測定したIII-V族を基材とする三接合セルの光電変換効率の変化を示すグラフである。
図6は、本発明の一実施形態に係る、量子ドット溶液濃度が0.625mg/mlの場合に、種々の発光波長を有する量子ドット波長変換器を適用し、AM0条件下で測定したIII-V族を基材とする三接合セルの光電変換効率の変化を示すグラフである。
図7は、本発明の一実施形態に係る、量子ドット溶液濃度が1.25mg/mlの場合に、種々の発光波長を有する量子ドット波長変換器を適用し、AM0条件下で測定したIII-V族を基材とする三接合セルの光電変換効率の変化を示すグラフである。
図8は、本発明の他の一実施形態に係る、量子ドット溶液濃度が2.5mg/mlの場合に、種々の発光波長を有する量子ドット波長変換器を適用し、AM0条件下で測定したIII-V族を基材とする三接合セルの光電変換効率の変化を示すグラフである。
図9は、本発明の更に他の一実施形態に係る、量子ドット溶液濃度が5mg/mlの場合に、種々の発光波長を有する量子ドット波長変換器を適用し、AM0条件下で測定したIII-V族を基材とする三接合セルの光電変換効率の変化を示すグラフである。
図10は、本発明の一実施形態に係る、ドロップ間隔を25μmに固定し、インクジェットプリンティング回数を変化させて製造した量子ドット波長変換器を適用した場合の、III-V族を基材とする三接合セルのAM0条件下における光電変換効率の変化を示すグラフである。
図11は、本発明の他の一実施形態に係る、ドロップ間隔を10μmに固定し、インクジェットプリンティング回数を変化させて製造した量子ドット波長変換器を適用した場合の、III-V族を基材とする三接合セルのAM0条件下における光電変換効率の変化を示すグラフである。
図12は、本発明の一実施形態に係る、スピンコーティング法及びインクジェットプリンティング法により製造された発光波長480nmの量子ドット波長変換器を適用した太陽電池の光電変換効率特性を比較した比較表である。)」
オ 発明を実施するための具体的な内容([0046]~[0058])
「
[図:0001437940000033.jpg]
…(中略)…
[図:0001437940000034.jpg]
[図:0001437940000035.jpg]
[図:0001437940000036.jpg]
(発明を実施するための具体的な内容
…(中略)…
[0046] 以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る宇宙用及び高高度用太陽電池の効率向上のための量子ドット波長変換器及びその製造方法について、詳細に説明する。
[0047] 図1は、本発明の一実施形態に係る量子ドット波長変換器の製造工程を示すフローチャートである。図1を参照すると、粉末形態の量子ドットを溶媒中に分散させる量子ドット分散工程(S110)と、太陽光を十分に吸収可能な透明基板を洗浄する基板準備工程(S120)と、前記透明基板の一方の面に分散された量子ドットをコーティングする量子ドットコーティング工程(S130)と、量子ドットがコーティングされた前記透明基板を加熱して残留する溶媒を除去する溶媒除去工程(S140)と、前記量子ドットがコーティングされた透明基板のコーティング面を太陽電池の表面に接触させて貼り付ける接合工程(S150)等を含んで構成され得る。)
[図1]
[図:0001437940000037.jpg]
[図:0001437940000038.jpg]
[図:0001437940000039.jpg]
([0051] その後、前記溶媒除去工程(S140)において、スピンコーティングを行う場合には、ホットプレート上で70℃にて約10分間加熱する。インクジェットプリンティングを行う場合には、コーティングと同時にホットプレートを60℃に加熱し、コーティング中に溶媒を除去する。
[0052] その後、前記接合工程(S150)においては、太陽電池の上面に、量子ドットがコーティングされた透明基板を、そのコーティング面が太陽電池の表面に接触するように貼着する。このとき、前記コーティングされた透明基板と太陽電池との間における太陽光の損失を防止するために、適切な屈折率を有する樹脂を挿入することができる。
[0053] 一方、前記量子ドット波長変換器の製造方法と同一の製造方法で工程を進め、透明基板上に量子ドットをコーティングして太陽電池に接合する前記工程の代わりに、太陽電池の表面にインクジェットプリンタにより直接コーティングする工程に置き換えることも可能である。
[0054] このように、宇宙及び高高度用太陽電池のための量子ドット波長変換器は、III-V族系多接合太陽電池上に量子ドットが塗布された透明基板を貼着した構造、又は太陽電池表面に量子ドットが塗布された構造からなり、その構成の模式図を図2に示す。ここで、量子ドットは蛍光量子ドットであってもよい。)
[図2]
[図:0001437940000040.jpg]
[図:0001437940000041.jpg]
[図:0001437940000042.jpg]
([0055] 前記量子ドット波長変換器を適用するための宇宙及び高高度用太陽電池は、剛性基板上に形成された通常の太陽電池であってもよいし、柔軟基板に転写された厚さ約50μm以下の太陽電池であってもよい。
[0056] 図2は、本発明の一実施例に係る量子ドット波長変換器を適用した太陽電池の断面構成を示す模式図である。図2を参照すると、量子ドット波長変換器(220)を適用するための宇宙及び高高度用太陽電池(210)は、剛性基板上に形成された太陽電池であってもよいし、柔軟基板に転写された厚さ約50μm以下の太陽電池であってもよい。
[0057] また、量子ドット波長変換器(220)は、透明基板(230)上に形成された後、そのコーティング面が太陽電池(210)の表面に接触するように貼着される。図2では、例示として、透明基板(230)としてサファイア基板を用いている。
[0058] もちろん、このような貼着方式に代えて、量子ドット波長変換器(220)を太陽電池(210)の表面上に直接形成することも可能である。)」
(2) 図面から把握できる事項の認定
引用文献1の[0054]、[0056]~[0058]の記載を踏まえつつ[図2]を参照すると、次の事項(以下「認定事項1」という。)が把握できる。
<認定事項1>
「太陽電池(210)の表面に量子ドット波長変換器(220)及び透明基板(230)がこの順に配置され、透明基板(230)の表面側から太陽光が入射すること。」
(3) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項及び前記(2)の認定事項を総合すると、引用文献1には、一実施例に係る量子ドット波長変換器を適用した太陽電池([図2])に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した(以下同様である。)。また、引用発明参考図として、引用文献1の[図2]に部材名等を記入したものを掲載する。
<引用発明>
「量子ドット波長変換器を適用した太陽電池であって、([0056])
太陽電池(210)の表面に量子ドット波長変換器(220)及び透明基板(230)がこの順に配置され、透明基板(230)の表面側から太陽光が入射するものであり、(認定事項1)
量子ドット波長変換器を用いることにより、太陽光スペクトル及び周囲温度等の環境が地上環境とは異なる宇宙及び/又は高高度環境において、III-V族系多接合太陽電池の効率を容易に向上させることができ、([0032])
一般に、宇宙及び/又は高高度環境では、地上環境に比較して紫外線領域の太陽光入射が増加するため効率の向上が予測されるが、実際には当該領域の太陽光が入射する際に発生するキャリア再結合損失が大きく、地上環境の太陽光入射時よりもかえって効率が低下する特性を有するが、([0033])
短波長領域をより有効に活用する必要がある宇宙及び/又は高高度用太陽電池に適用されることにより、前述した欠点を補完でき、([0034])
宇宙及び高高度用太陽電池のための量子ドット波長変換器は、III-V族系多接合太陽電池上に量子ドットが塗布された透明基板を貼着した構造、又は太陽電池表面に量子ドットが塗布された構造からなる、([0054])
量子ドット波長変換器を適用した太陽電池。」
<参考図(図2をもとに作成)>
[図:0001437940000043.jpg]
(4) 引用文献1技術事項の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1には、次の技術事項(以下「引用文献1技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献1技術事項>
「現在、三接合太陽電池の光電変換効率は、三つの層において生成される短絡電流密度のうち最も小さい値によって決定されるため、光電変換効率を向上させるためには、各層の電流整合が必要であるところ、([0004])
量子ドット波長変換器は、太陽光を吸収して電力を生産することが容易ではない波長帯域の光を吸収し、電力生産が容易な波長領域へ変換することが可能であり、([0007])
特定の波長領域における光吸収の増加は、各単位セルによって決定される開放電圧の値を維持しつつ、特定の層の短絡電流密度の値を向上させるため、太陽電池の光電変換効率の向上を可能にすること。([0008])」
5 周知技術A、技術常識1、2の認定
(1) 周知技術A
ア 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定
(ア) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である引用文献2(米国特許出願公開第2018/0151304号明細書)には、次の記載がある。
「[0001] The subject matter described herein relates generally to optoelectronic semiconductor structures, such as solar cells, photodetectors and the like, which are broadly referred to herein as solar cells. More particularly, this application relates to heterojunction solar cells and methods of making the same.
([0001] 本明細書に記載される主題は、一般に、太陽電池、光検出器等の光電子半導体構造に関し、これらは本明細書において広く太陽電池と総称される。より具体的には、本出願は、ヘテロ接合太陽電池及びその製造方法に関する。)」
「[0002] A solar cell is a photovoltaic (PV) device that is capable of converting incident light energy, and specifically solar energy (sunlight), to electrical energy by the photovoltaic effect. The interest in solar cells has been increasing due to concerns regarding pollution, energy security, and limited available resources. This interest has been for both terrestrial and non-terrestrial (space) applications.
([0002] 太陽電池は、入射光エネルギー、特に太陽エネルギー(日光)を光起電力効果によって電気エネルギーに変換することが可能な光起電力(PV)装置である。汚染、エネルギー安全保障及び利用できる資源の制約に関する懸念により、太陽電池への関心は高まっている。この関心は、地上用途及び非地上用途(宇宙用途)の双方に向けられている。)」
「[0005] To increase their electrical power output, solar cells may have one or more photovoltaic junctions (multijunction), which are one or more component photovoltaic cells and are also called subcells. The subcell/junction may include corresponding photovoltaic semiconductor layers having different energy bandgaps and may be stacked so that each subcell can absorb a different part of the wide energy distribution in the sunlight. Incident light energy of different ranges of wavelengths may be converted at a corresponding one or more of the junctions.
([0005] 電気出力を増加させるために、太陽電池は、一又は複数の光起電力接合(マルチジャンクション)を有していてもよく、これらは、一又は複数の構成要素である光起電力セルからなり、サブセルとも称される。サブセル/接合は、エネルギー帯域幅が異なる対応する光起電力半導体層を含んでいてもよく、各サブセルが太陽光における広いエネルギー分布の異なる部分を吸収できるように積層され得る。異なる波長範囲の入射光エネルギーは、対応する一又は複数の接合において電気エネルギーに変換され得る。)」
「[0007] In multijunction solar cells it is often desirable to modify the bandgaps of the semiconductor layers that form the subcells within the multijunction cell, and thereby modify the subcell voltages and wavelength ranges over which the subcells respond to incident light, for instance, to space and terrestrial solar spectra.(後略)
([0007] マルチジャンクション太陽電池においては、当該マルチジャンクションセル内のサブセルを構成する半導体層のエネルギー帯域幅を変更し、それによりサブセルの電圧及び入射光に対してサブセルが応答する波長範囲を変更することが、しばしば望ましい。例えば、宇宙用及び地上用の太陽光スペクトルに適合させるためである。(後略))」
「[0046] The solar cells 11 and 11′ may include one or more subcells; i.e., solar cells 11 and 11′ may comprise multijunction solar cells. The subcells may be referred to by the order in which light strikes each subcell as it enters the front surface 12 of the solar cell structure 10 or solar cell structure 10′. For instance in FIGS. 1A-1B, a frontside subcell (adjacent to front surface 12) may also be referred to as the top subcell 20, a backside subcell (adjacent to back surface 13) may also be referred to as bottom subcell 60. In the case of solar cell structure 10′, the subcell between top subcell 20 and bottom subcell 60 may be referred to as the middle subcell 40. In general, a cell structure may have n subcells that may be electrically connected in series, where n may be equal to 1 for a single-junction cell, or n may be any integer greater than or equal to 2 for a multijunction cell.
([0046] 太陽電池11及び11′は、一又は複数のサブセルを含んでいてもよく、すなわち、太陽電池11及び11′は、マルチジャンクション太陽電池から構成されていてもよい。サブセルは、太陽電池構造10又は太陽電池構造10′の前面12から入射する光が各サブセルに到達する順序に基づいて呼称されてもよい。例えば、図1A-1Bに示すように、前面12に隣接する前面側サブセルはトップサブセル20とも称され得、背面13に隣接する背面側サブセルはボトムサブセル60とも称され得る。太陽電池構造10′の場合には、トップサブセル20とボトムサブセル60との間に位置するサブセルは、ミドルサブセル40と称され得る。一般に、セル構造は、電気的に直列接続され得るn個のサブセルを有し得、ここで、nは、シングルジャンクションセルの場合には1に等しく、マルチジャンクションセルの場合には2以上の任意の整数であり得る。」
「[0049] In one implementation of a solar cell structure 10, for example, comprising a multijunction solar cell structure, solar cell 11 includes a first subcell and a second subcell. The first subcell includes a base semiconductor layer and another semiconductor layer. The base semiconductor layer comprises a p-type semiconductor, such as a p-type group III-V semiconductor material, and the other semiconductor layer may comprise an emitter semiconductor layer which may comprise an n-type semiconductor material. The second subcell includes an absorber layer, wherein the absorber layer comprises an organometallic halide ionic solid perovskite semiconductor material.(後略)
([0049] 例えば、マルチジャンクション太陽電池構造を構成する太陽電池構造10の一実施形態において、太陽電池11は、第1サブセル及び第2サブセルを含む。第1サブセルは、ベース半導体層及び別の半導体層を含む。前記ベース半導体層は、p型半導体、例えば、p型のIII-V族半導体材料から構成され、前記別の半導体層は、n型半導体材料から構成され得るエミッタ半導体層を含み得る。第2サブセルは、吸収層を含み、当該吸収層は、有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイト半導体材料から構成される。(後略))」
「[0051] Perovskite materials may be susceptible to UV light. A UV absorbing layer may be placed between the organometallic halide ionic solid perovskite semiconductor material and the source of the electromagnetic energy comprising UV light. This positioning allows from some to all of UV light reaching the device to be absorbed within a subcell comprising a UV-absorbing active layer and minimizes or prevents the UV light to penetrate and/or degrade the perovskite layer. Accordingly, in an expression of the first implementation, the III-V semiconductor may be selected to absorb UV-light and serves as a UV-protectant for the perovskite of the bottom subcell. Thus, a bandgap of the base semiconductor may be larger than the bandgap of the organometallic halide ionic solid perovskite. In a second implementation of a 2-junction solar cell structure, the second subcell comprising the organometallic halide ionic solid perovskite semiconductor material in the absorber layer may be configured as a top subcell such as top subcell 20. In an expression of the second implementation of the 2-junction solar cell, a bandgap of the base semiconductor may be smaller than the bandgap of the organometallic halide ionic solid perovskite.
([0051] ペロブスカイト材料は、紫外線に対して影響を受ける可能性がある。紫外線吸収層は、前記有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイト半導体材料と、紫外線を含む電磁エネルギーの供給源との間に配置され得る。この配置により、デバイスに到達する紫外線の一部又は全部が、紫外線吸収性の活性層を含むサブセル内で吸収され、紫外線がペロブスカイト層に侵入及び/又は当該ペロブスカイト層を劣化させることが最小化又は防止される。したがって、第1の実施形態の一態様においては、III-V族半導体は、紫外線を吸収するように選択され、ボトムサブセルのペロブスカイトに対する紫外線保護材として機能する。このように、ベース半導体のエネルギー帯域幅は、有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイトのエネルギー帯域幅よりも大きくなり得る。2接合太陽電池構造の第2の実施形態においては、吸収層に有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイト半導体材料を含む第2サブセルは、トップサブセル20等のトップサブセルとして構成され得る。2接合太陽電池の第2の実施形態の一態様においては、ベース半導体のエネルギー帯域幅は、有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイトのエネルギー帯域幅よりも小さくなり得る。)」
「[0153] The emitter-base subcell 30 and absorber-base 70 may also be referred to by the order in which light strikes each subcell as it enters the front of the multijunction photovoltaic device 300. For instance in FIG. 3, the absorber-base subcell 70 may also be referred to as the top subcell 20, and the emitter-base subcell 30 may be referred to as the bottom subcell 60.
([0153] エミッタベースサブセル30及びアブソーバベース70は、マルチジャンクション光起電力デバイス300の前面から入射する光が各サブセルに到達する順序に基づいて呼称される場合もある。例えば、図3においては、アブソーバベースサブセル70はトップサブセル20とも称され、エミッタベースサブセル30はボトムサブセル60とも称され得る。)
[図3]
[図:0001437940000044.jpg]
」
「[0154] Subcells 30, 70 are disposed between a glass superstrate 19, which is positioned on a front side of the photovoltaic device 300, an Au or Ag mirror layer and a second contact layer 18 (e.g., p-side contact) disposed on a backside surface of the photovoltaic device 300. A transparent conductive oxide (TCO) layer 14′ (e.g., SnO2:F) is disposed between absorber-base subcell 70 and glass superstrate 19. A first contact layer 14 (e.g., an n-side contact) formed from, for example, Ag is in electrical communication with the TCO layer 14′. A p+ GaAs contact layer 18′ and an Al2O3/SiO2 passivation layer 18″ is disposed between the second contact layer 18(e.g., p-side contact) and the emitter-base subcell 30. The absorber-base subcell 70 comprising a perovskite further includes a buffer layer 76 (e.g., TiO2) and a p-AlGaAs base layer 74 on opposing sides of the absorber layer 73, wherein the absorber layer 73 comprises the perovskite.
([0154] サブセル30、70は、光起電力デバイス300の前面側に位置するガラススーパーストレート19と、光起電力デバイス300の背面に配置されたAu又はAgのミラー層及び第2のコンタクト層18(例えば、p側コンタクト)との間に配置されている。透明導電性酸化物(TCO)層14′(例えば、SnO2:F)は、アブソーバベースサブセル70とガラススーパーストレート19との間に配置されている。例えば、Agから形成された第1のコンタクト層14(例えば、n側コンタクト)は、TCO層14′と電気的に接続されている。p+GaAsコンタクト層18′及びAl2O3/SiO2パッシベーション層18″は、第2のコンタクト層18(例えば、p側コンタクト)とエミッタベースサブセル30との間に配置されている。ペロブスカイトを含むアブソーバベースサブセル70は、さらに、アブソーバ層73を挟んで対向する位置に配置されたバッファ層76(例えば、TiO2)及びp-AlGaAsベース層74を含み、前記アブソーバ層73は、ペロブスカイトから構成される。)」
「[0155] The GaAs emitter-base subcell 30 further includes an n-GaInP based window layer 31 and a GaAs based emitter semiconductor layer 32 disposed between the base semiconductor layer 34 and the window layer 31. Emitter-base subcell 30 further includes a BSF layer 35 comprising p-AlGaInP disposed between the base semiconductor layer 34 and the contact 18′ and passivation layer 18″.
[0155] GaAsエミッタベースサブセル30は、さらに、n-GaInPを基材とするウィンドウ層31と、ベース半導体層34と前記ウィンドウ層31との間に配置されたGaAsを基材とするエミッタ半導体層32とを含む。エミッタベースサブセル30は、さらに、前記ベース半導体層34と、コンタクト層18′及びパッシベーション層18″との間に配置された、p-AlGaInPから構成されるBSF層35を含む。)」
(イ) 引用文献2技術事項の認定
前記アに摘記した記載事項から、引用文献2には、図3に例示される2接合太陽電池構造の第2の実施形態について、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2技術事項>
「太陽電池への関心が、地上用途及び非地上用途(宇宙用途)の双方に向けられているところ、([0002])
電気出力を増加させるために、太陽電池は、一又は複数の光起電力接合(マルチジャンクション)を有していてもよく、これらは、一又は複数の構成要素である光起電力セルからなり、サブセルとも称され、サブセル/接合は、エネルギー帯域幅が異なる対応する光起電力半導体層を含んでいてもよく、各サブセルが太陽光における広いエネルギー分布の異なる部分を吸収できるように積層され、異なる波長範囲の入射光エネルギーは、対応する一又は複数の接合において電気エネルギーに変換され、([0005])
太陽電池は、一又は複数のサブセルを含んでいてもよく、サブセルは、太陽電池構造の前面から入射する光が各サブセルに到達する順序に基づいて呼称され、前面に隣接する前面側サブセルはトップサブセルとも称され、背面に隣接する背面側サブセルはボトムサブセルとも称され、([0046])
マルチジャンクション太陽電池構造を構成する太陽電池構造の一実施形態において、太陽電池は、第1サブセル及び第2サブセルを含み、第1サブセルは、ベース半導体層及び別の半導体層を含み、前記ベース半導体層は、p型半導体、例えば、p型のIII-V族半導体材料から構成され、前記別の半導体層は、n型半導体材料から構成され得るエミッタ半導体層を含み、第2サブセルは、吸収層を含み、当該吸収層は、有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイト半導体材料から構成され([0049])
2接合太陽電池構造の第2の実施形態においては、吸収層に有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイト半導体材料を含む第2サブセルは、トップサブセル20等のトップサブセルとして構成され、ベース半導体のエネルギー帯域幅は、有機金属ハロゲン化物イオン性固体ペロブスカイトのエネルギー帯域幅よりも小さくなり、([0051])
図3において、アブソーバベースサブセル70はトップサブセル20とも称され、エミッタベースサブセル30はボトムサブセル60とも称され、([0153])
光起電力デバイス300のサブセル30、70は、ペロブスカイトを含むアブソーバベースサブセル70と、([0154])
GaAsエミッタベースサブセル30であること。([0155])」
イ 引用文献3の記載事項及び引用文献3技術事項の認定
(ア) 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である引用文献3(米国特許出願公開第2020/0035853号明細書)には、次の記載がある。
「[0002] The present invention is related to in-situ, in-operation annealing of solar cell structures to recover performance lost due to environmental and operational conditions such as radiation exposure and other damage. The energy used to perform the annealing process is minimal and enhances energy production, since the improved photovoltaic efficiency provides over 10 times more power than the amount of power used for the annealing.
([0002] 本発明は、放射線被曝その他の損傷等の環境的及び動作上の条件に起因して失われた性能を回復させるための、太陽電池構造のインサイチュ(その場で)かつ動作中アニールに関する。前記アニール工程を実施するために用いられるエネルギーは最小限であり、改善された光起電力効率が、アニールに使用される電力量の10倍を超える電力を提供するため、エネルギー生成を増大させる。)」
「[0007] An embodiment of the present invention is a method of annealing a deployed solar cell array comprising solar cells comprising lithium, the method comprising: orienting the solar cell array toward the sun; open-circuiting a first portion of the array, thereby raising the temperature of the first portion; and annealing the first portion of the array to remove defects in the first portion.(後略)
([0007] 本発明の一実施形態は、リチウムを含む太陽電池から構成される展開済みの太陽電池アレイをアニールする方法であって、前記方法は、太陽電池アレイを太陽に向けて配向させる工程と、アレイの第1部分を開回路状態とすることにより当該第1部分の温度を上昇させる工程と、前記第1部分に存在する欠陥を除去するために前記アレイの第1部分をアニールする工程とを含む。(後略))」
「[0012] An embodiment of the present invention is a multi-junction solar cell comprising a silicon and perovskite tandem junction, the solar cell comprising a lithium-doped silicon cell as one of the junctions; and a perovskite cell disposed on the silicon solar cell as the other junction. The solar cell preferably has an efficiency greater than approximately 30%, and the efficiency is preferably maintained until the end-of-life of the solar cell. The solar cell preferably comprises a passivation layer between the silicon cell and perovskite cell to prevent lithium from diffusing from the silicon cell into the perovskite cell. The passivation layer preferably comprises silicon nitride or alumina (Al2O3). The solar cell optionally comprises diffusion blocking regions for controlling or eliminating lithium movement in the solar cell. The silicon cell and/or the perovskite cell preferably has excess current to accommodate changes in behavior during operation of the solar cell.
([0012] 本発明の一実施形態は、シリコン及びペロブスカイトからなるタンデム接合を含むマルチジャンクション太陽電池であって、前記太陽電池は、接合の一つとしてリチウムがドープされたシリコンセルを含み、他の接合として、前記シリコン太陽電池上に配置されたペロブスカイトセルを含む。前記太陽電池は、好ましくは約30%を超える効率を有し、該効率は、好ましくは太陽電池の寿命末期まで維持される。前記太陽電池は、好ましくは、リチウムが前記シリコンセルから前記ペロブスカイトセルへ拡散することを防止するために、前記シリコンセルと前記ペロブスカイトセルとの間にパッシベーション層を含む。前記パッシベーション層は、好ましくは、窒化シリコン又はアルミナ(Al2O3)を含む。前記太陽電池は、任意に、太陽電池内におけるリチウムの移動を制御又は除去するための拡散遮断領域を含んでもよい。前記シリコンセル及び/又は前記ペロブスカイトセルは、太陽電池の動作中における挙動の変化に対応するために、好ましくは余剰電流を有する。)」
「[0023] This approach has important benefits in deep space applications and other near-earth, Mars mission scenarios. Especially in low-intensity, low temperature (LILT) and extreme radiation environments seen around Jupiter, or other space missions such as the ones traversing the Van Allen belts or staying in the belts for extended periods of time, having the ability to recover lost efficiency is critical for extending mission durations and increasing system capabilities.
([0023] 本手法は、深宇宙用途及びその他の地球近傍並びに火星ミッションのシナリオにおいて重要な利点を有する。特に、木星周辺で見られる低照度・低温(LILT)かつ極端な放射線環境、又はバン・アレン帯を横断する若しくは長期間滞在するような他の宇宙ミッション環境においては、失われた効率を回復する能力を有することが、ミッション期間の延長及びシステム能力の向上のために極めて重要である。)」
「[0029] In terrestrial applications, Li can also be utilized to compensate for defects that cause degradation in cell performance due to interactions among those defects and silicon lattice during operation of the cells. While there is no expected radiation exposure for terrestrial solar applications, interactions between impurities in the cells (for example, boron and oxygen) lead to electrically active defects that reduce the efficiency of the cells. These degradation mechanisms have been termed light induced degradation (LID), temperature induced degradation (TID), light and elevated temperature induced degradation (LeTID), etc. Li is an active entity in the cells that binds and deactivates or otherwise changes the reaction and activity of these defects and defect complexes.
([0029] 地上用途においても、Liは、セルの動作中における欠陥とシリコン格子との相互作用に起因してセル性能の劣化を生じさせる欠陥を補償するために利用され得る。地上用太陽電池用途においては、放射線被曝は想定されていないが、セル中の不純物(例えば、ホウ素及び酸素)間の相互作用により、セルの効率を低下させる電気的に活性な欠陥が生じる。これらの劣化機構は、光誘起劣化(LID)、温度誘起劣化(TID)、光及び高温誘起劣化(LeTID)等と称されている。Liは、セル内において活性な要素であり、これらの欠陥又は欠陥複合体に結合してこれらを不活性化し、又はこれらの反応及び活性を変化させる。)」
(イ) 引用文献3技術事項の認定
前記アに摘記した記載事項から、引用文献3には、太陽電池アレイをアニールする方法について、次の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献3技術事項>
「放射線被曝その他の損傷等の環境的及び動作上の条件に起因して失われた性能を回復させるための、太陽電池構造のインサイチュかつ動作中アニールであって、([0002])
リチウムを含む太陽電池から構成される展開済みの太陽電池アレイをアニールする方法において、([0007])
前記太陽電池は、シリコン及びペロブスカイトからなるタンデム接合を含むマルチジャンクション太陽電池であって、接合の一つとしてリチウムがドープされたシリコンセルを含み、他の接合として、前記シリコン太陽電池上に配置されたペロブスカイトセルを含み、([0012])
深宇宙用途及びその他の地球近傍並びに火星ミッションのシナリオにおいて重要な利点を有し、([0023])
地上用途においても、Liは、セルの動作中における欠陥とシリコン格子との相互作用に起因してセル性能の劣化を生じさせる欠陥を補償するために利用され得ること。([0029])」
ウ 周知技術Aの認定
前記引用文献2技術事項及び引用文献3技術事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって周知技術(以下「周知技術A」という。)であると認められる。
<周知技術A>
「地上用途及び宇宙用途において、異なる種類の光電変換層が接合された多接合太陽電池を用いること。」
(2) 技術常識1
ア 引用文献4の記載事項及び引用文献4技術事項の認定
(ア) 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である引用文献4(米国特許出願公開第2021/0159356号明細書)には、次の記載がある。
「[0002] The present invention relates to an integrated tandem solar cell including a recombination layer having a nanoparticle layer, and more particularly, to an integrated tandem solar cell, which includes a recombination layer having a triple layer structure in which a nanoparticle layer is disposed as an intermediate layer and employs the recombination layer as a junction portion, and a method of manufacturing the same.
([0002] 本発明は、ナノ粒子層を有する再結合層を含む集積型タンデム太陽電池に関するものであり、より詳細には、ナノ粒子層を中間層として配置した三層構造の再結合層を含み、当該再結合層を接合部として用いる集積型タンデム太陽電池とその製造方法に関する。)」
「[0003] Tandem solar cell has been an attempt to minimize thermalization loss by vertically stacking light absorption layers having different bandgaps to effectively use solar energy in a wide wavelength range. Specifically, tandem solar cells may overcome an efficiency limit (Shockley-Queisser limit) of single junction solar cells by allowing light absorption layers having different bandgaps to absorb sunlight in a complementary way with the principle of minimizing the loss of extra energy of electrons-holes to the form of thermal energy, wherein the extra energy is generated when photons having an energy larger than a bandgap of the single-junction solar cell are absorbed in a light absorption layer. Recently, with increasing interest in the tandem solar cells as the most feasible next-generation solar cells, competition for research and development to preemptively secure a tandem solar cell technology of various structures is intensifying worldwide.
([0003] タンデム太陽電池は、異なるエネルギー帯域幅を有する光吸収層を垂直方向に積層することにより、広い波長範囲にわたって太陽エネルギーを効果的に利用し、熱化損失を最小化することを目的とする試みである。具体的には、タンデム太陽電池は、シングルジャンクション太陽電池のエネルギー帯域幅よりも大きなエネルギーを有する光子が光吸収層に吸収された際に発生する電子-正孔の余剰エネルギーが熱エネルギーとして失われることを最小化するという原理に基づき、異なるエネルギー帯域幅を有する光吸収層が相補的に太陽光を吸収することにより、シングルジャンクション太陽電池の効率限界(ショックレー・クワイサー限界)を克服し得る。近年、次世代太陽電池として最も実現可能性の高いものとしてタンデム太陽電池への関心が高まるにつれて、種々の構造を有するタンデム太陽電池技術を先行的に確保するための研究開発競争が、世界的に激化している。)」
「[0004] In the early stage of tandem solar cell research, research and development of Group III-V semiconductor-based and amorphous/polycrystalline silicon-based tandem solar cells had been actively carried out. In the case of the Group III-V semiconductor-based tandem solar cells, researchers at Spectrolab in the United States reported a quintuple-junction solar cell with photo conversion efficiency of 38.8% in 2014. However, since a deposition technique of an epi-layer is complicated and a manufacturing cost is high due to the use of expensive equipment, its applicability is extremely limited to a spacecraft or the like. Meanwhile, the amorphous/crystalline silicon-based tandem solar cell is relatively competitive in price but has a low probability of commercialization due to its efficiency still being low (National Institute of Advanced Industrial Science and Technology in Japan reported efficiency of a triple junction solar cell of 14% in 2016).
([0004] タンデム太陽電池研究の初期段階においては、III-V族半導体を基材とするタンデム太陽電池及びアモルファス/多結晶シリコンを基材とするタンデム太陽電池に関する研究開発が活発に行われていた。III-V族半導体を基材とするタンデム太陽電池の場合には、米国スペクトロラボ社の研究者らが、2014年に、光電変換効率38.8%を有する五接合太陽電池を報告している。しかしながら、エピ層の堆積技術が複雑であり、高価な装置を使用することにより製造コストが高くなるため、その適用範囲は宇宙機等に極めて限定されている。一方、アモルファス/結晶シリコンを基材とするタンデム太陽電池は、価格競争力は比較的高いものの、効率が依然として低いため、商業化の可能性は低いとされている(日本の産業技術総合研究所は、2016年に、三接合太陽電池の効率が14%であることを報告している。)。)」
「[0008] The present invention is directed to a monolithic (or integrated) tandem solar cell in which a first solar cell (a lower cell) in the form of a thin film solar cell and a second solar cell (a upper cell) in the form of a perovskite solar cell are stacked in series and in which absorption of a lower cell in long-wavelength range is improved as well as a characteristic of a charge transfer or recombination in a junction portion is improved by controlling surface morphology of the junction portion using a method of flattening surface roughness of the junction portion between two cells and improving long wavelength transmittance of a recombination layer.
([0008] 本発明は、薄膜太陽電池の形態を有する第1の太陽電池(下部セル)と、ペロブスカイト太陽電池の形態を有する第2の太陽電池(上部セル)とが直列に積層されたモノリシック(又は集積型)タンデム太陽電池に関するものであり、二つのセル間の接合部における表面粗さを平坦化する方法を用いて当該接合部の表面形態を制御するとともに、再結合層の長波長透過率を向上させることにより、下部セルにおける長波長領域の吸収を向上させ、かつ、接合部における電荷移動又は再結合特性を改善したものである。)」
(イ) 引用文献4技術事項の認定
前記(ア)に摘記した記載事項から、引用文献4には、ナノ粒子層を有する再結合層を含む集積型タンデム太陽電池について次の技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献4技術事項>
「タンデム太陽電池は、異なるエネルギー帯域幅を有する光吸収層を垂直方向に積層することにより、広い波長範囲にわたって太陽エネルギーを効果的に利用し、熱化損失を最小化することを目的とする試みであり、異なるエネルギー帯域幅を有する光吸収層が相補的に太陽光を吸収することにより、シングルジャンクション太陽電池の効率限界を克服し得るものであり、([0003])
タンデム太陽電池研究の初期段階においては、III-V族半導体を基材とするタンデム太陽電池及びアモルファス/多結晶シリコンを基材とするタンデム太陽電池に関する研究開発が活発に行われていたところ、([0004])
本発明は、ナノ粒子層を有する再結合層を含む集積型タンデム太陽電池に関するものであり、([0002])
薄膜太陽電池の形態を有する第1の太陽電池(下部セル)と、ペロブスカイト太陽電池の形態を有する第2の太陽電池(上部セル)とが直列に積層されたモノリシック(又は集積型)タンデム太陽電池に関するものであること。([0008])」
イ 技術常識1の認定
引用文献2技術事項及び引用文献4技術事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識(以下「技術常識1」という。)であると認められる。
<技術常識1>
「多接合太陽電池において、幅広い波長領域にわたって光を吸収可能として発電効率を向上させるために、多接合太陽電池をエネルギー帯域幅が異なる光電変換層によって構成して各層において太陽光の異なるエネルギー部分を吸収可能とすること。」
(3) 引用文献10、11の記載事項及び技術常識2の認定
ア 引用文献10の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2014-86619号公報(以下「引用文献10」という。なお、引用文献の参照番号は、審査及び審判の手続において共通のものとするため、新たに引用された本文献については「引用文献10」の表記とした。後記の引用文献11について同じ。)には、次の記載がある。なお、引用文献の参照番号は、前置審査を含めた審査段階と審判段階で共通のものとするため、「引用文献10」などの表記とする。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池装置に関し、特には、太陽電池を含む電池装置に関する。」
「【0050】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電池装置100を示した図である。
【0051】
図1において、電池装置100は、太陽電池1と、波長変換フィルタFと、を含む。
【図1】
[図:0001437940000045.jpg]
【0052】
太陽電池1は、受光面電極11および12と、裏面電極13と、セルC(1)1およびC(2)と、を有する。
【0053】
受光面電極11および12は、太陽電池1の受光面側に設けられている。裏面電極13は、太陽電池1の裏面側に設けられている。
【0054】
セルC(1)は、PN接合部の一例であり、P型半導体層C(1)PとN型半導体層C(1)Nとを含む。セルC(2)は、PN接合部の一例であり、P型半導体層C(2)PとN型半導体層C(2)Nとを含む。セルC(2)は、特定PN接合部の一例でもある。
【0055】
セルC(1)とセルC(2)では、バンドギャップが互いに異なる。以下、セルC(1)のバンドギャップをEg(1)と称し、セルC(2)のバンドギャップをEg(2)と称する。バンドギャップEg(2)は、バンドギャップEg(1)よりも大きい。太陽電池1では、バンドギャップが小さい順でセルC(1)とセルC(2)が積層されている。
【0056】
波長変換フィルタFは、変換手段の一例である。
…(中略)…
【0060】
また、波長変換フィルタFは、しきい値Ed未満のエネルギーを有する光子を受け付けた場合には、その光子をセルC(2)側から太陽電池1に向けて出力する。
【0061】
しきい値Edは、バンドギャップEg(1)の2倍以上でバンドギャップEg(2)以上の値に設定されている。
…(中略)…
【0069】
このため、変換された光に適合するように、セルのバンドギャップをエンジニアリングすることが有効である。
…(中略)…
【0135】
また、図6に示すように、波長変換フィルタFに光子を集光する集光部2が、電池装置100に設けられている場合、セルC(1)のバンドギャップEg(1)が0.56eVに設定され、セルC(2)のバンドギャップEg(2)が1.10eVに設定される。なお、図6において、図1、4に示したものと同一構成のものには同一符号を付してある。
【図6】
[図:0001437940000046.jpg]
【0136】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0137】
本実施形態によれば、太陽電池1は、バンドギャップが小さい順に積層された複数のセルC(1)およびC(2)を有する。波長変換フィルタFは、バンドギャップEg(1)の2倍以上でバンドギャップEg(2)以上であるエネルギーを持つ光子を吸収すると、吸収された1つの光子につき、バンドギャップEg(1)以上で、かつ吸収された光子のエネルギーよりも小さいエネルギーを持つ2つ以上の光子を、セルC(2)側から太陽電池1に向けて出力する。
【0138】
このため、波長変換フィルタFは、多接合型の太陽電池1が発電に使用する光子の量を増やし、太陽電池1は、波長変換フィルタFにて増やされた光子を用いて発電する。
【0139】
よって、波長変換フィルタと多接合型の太陽電池とを備えた電池装置におけるエネルギー変換効率を高めることが可能になる。」
イ 引用文献11の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2020-136475号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体構造物、多接合太陽電池及び半導体構造物の製造方法に関するものである。」
「【0033】
図3は、一般的な多接合太陽電池8を示す図である。太陽電池は、シリコン等の半導体に光を照射することで、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。この太陽電池を直列に層状に重ね合せて多接合化したものが多接合太陽電池8である。多接合太陽電池8は、バンドギャップエネルギーの異なる太陽電池を直列に層状に重ね合せることで、全体として吸収できる光の波長域(感度帯域)を拡げている。
【図3】
[図:0001437940000047.jpg]
【0034】
すなわち、図3に示すように、バンドギャップエネルギーの大きい第1の発電層9aが光の入射側(上層側)に配置される一方、バンドギャップエネルギーの小さい第3の発電層9cが光の入射側とは反対側(下層側)に配置されている。また、図3に示すように、バンドギャップエネルギーの大きさが第1の発電層9aと第3層の発電層9cとの中間である第2の発電層9bが、第1の発電層9aと第3の発電層9cとの間に配置されている。
【0035】
これにより、短波長の光10aは、上層側の第1の発電層9aで吸収されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。第1の発電層9aで吸収されなかった中波長の光10bと長波長の光10cは、第1の発電層9aを透過する。中波長の光10bは、第2の発電層9bで吸収されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。長波長の光10cは、第2の発電層9bに吸収されず、該第2の発電層9bを透過する。長波長の光10cは、第3の発電層9cで吸収されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0036】
このように、多接合太陽電池8では、幅広い波長領域に亘って、光を吸収して、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができるので発電効率がよい。」
ウ 技術常識2の認定
引用文献2技術事項並びに前記ア及び前記イに摘記した記載事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識(以下「技術常識2」という。)であると認められる。
<技術常識2>
「多接合太陽電池において、幅広い波長領域にわたって光を吸収可能として発電効率を向上させるために、多接合太陽電池の光入射側にバンドギャップエネルギーの大きな光電変換層を配置し、反対側にバンドギャップエネルギーの小さな光電変換層を配置すること。」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(光電変換装置)
(ア) 構成Xは、「光電変換装置」の発明であることを特定するものである。
(イ) 「太陽電池」の発明である引用発明が光電変換を行うものであることは明らかであるから、本願発明と引用発明は、構成Xの観点である次の点において一致する。
「光電変換装置」の発明である点。
イ 構成Aの観点(タンデム型の光電変換素子)
(ア) 構成Aは、「入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する第1光電変換部と、前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部とを積層したタンデム型の光電変換素子」を備えることである。
(イ) 引用発明における「III-V族系多接合太陽電池」は、本願発明における「タンデム型の光電変換素子」に相当し、そのような「多接合太陽電池」が入射光の光軸に沿って複数の光電変換部を積層して構成されるものであることは技術常識であるから、引用発明における「III-V族系多接合太陽電池」は、「第1光電変換部と、前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部」を有するものといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの観点である次の点において一致する。
「入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する第1光電変換部と、前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部とを積層したタンデム型の光電変換素子」を備える点。
ウ 構成Bの観点(波長変換部)
(ア) 構成Bは、「第2光電変換部の受光面側に配される波長変換部」を備えることである。
(イ) 引用発明においては、「太陽電池(210)の表面に量子ドット波長変換器(220)及び透明基板(230)がこの順に配置され、透明基板(230)の表面側から太陽光が入射するものであ[る]」から(認定事項1)、前記イの検討結果も踏まえると、引用発明における「量子ドット波長変換器(220)」は、本願発明における「第2光電変換部の受光面側に配される波長変換部」であるといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの観点である次の点において一致する。
「第2光電変換部の受光面側に配される波長変換部」を備える点。
エ 構成B1の観点(波長変換部)
(ア) 構成B1は、「波長変換部」が「400nm未満の波長の少なくとも一部を前記第2光電変換部の吸収波長に変換する波長変換材料を含[む]」ことである。
(イ) 引用発明は「量子ドット波長変換器を用いることにより、太陽光スペクトル」「が地上環境とは異なる宇宙及び/又は高高度環境において、III-V族系多接合太陽電池の効率を容易に向上させることができるもの」([0032])であって、「一般に、宇宙及び/又は高高度環境では、地上環境に比較して紫外線領域の太陽光入射が増加するため」「地上環境の太陽光入射時よりもかえって効率が低下する特性を有するが」([0033])、「短波長領域をより有効に活用する必要がある宇宙及び/又は高高度用太陽電池に適用されることにより、前述した欠点を補完でき[る]」([0034])ものである。
そうすると、引用発明において、「宇宙及び/又は高高度用太陽電池」において「より有効に活用する必要がある」「短波長領域」の光であり「量子ドット波長変換器」によって波長変換される光として、「紫外線領域の太陽光入射」が想定されているといえる。そして、「紫外線領域」が波長400nm未満の領域であることは技術常識である。
(ウ) 引用発明における「量子ドット波長変換器」を構成する「量子ドット」は、本願発明における「波長変換材料」に相当する。そして、「量子ドット」が特定の波長の帯域における光を波長変換するものであることは技術常識であるから、前記(イ)も踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記波長変換部は、400nm未満の波長の少なくとも一部を」光電変換部の「吸収波長に変換する波長変換材料を含[む]」点で共通する。
(エ) 引用発明において、「量子ドット波長変換器」が、「紫外線領域の太陽光入射」を「III-V族系多接合太陽電池」の受光面側に配置された光電変換層の吸収波長に波長変換することは特定されていない。
(オ) したがって、本願発明と引用発明の構成B1の観点における一致点及び相違点は、次のa及びbに示すとおりである。
a 構成B1の観点における一致点
「前記波長変換部」が「400nm未満の波長の少なくとも一部を」光電変換部の「吸収波長に変換する波長変換材料を含[む]」点。
b 構成B1の観点における相違点
「前記波長変換部」の含む「波長変換材料」が、「400nm未満の波長の少なくとも一部」の光の波長を変換した後の波長が、
本願発明においては、「前記第1光電変換部の受光面側に配される前記第2光電変換部の吸収波長」であるのに対して、
引用発明においては、第1光電変換部の吸収波長であるのか第2光電変換部の吸収波長であるのか特定されていない点。
オ 構成A1の観点(光電変換素子)
(ア) 構成A1は、「光電変換素子」が「シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池の少なくとも2つを含む」ことである。
(イ) 引用発明は「III-V族系多接合太陽電池」を備えるものであるが、「多接合太陽電池」を「III-V族系」ではない光電変換層によって構成することについて特定するものではない。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成A1の観点における次の点において相違する。
本願発明における「光電変換素子」は、「シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池の少なくとも2つを含む」のに対して、
引用発明は「III-V族系多接合太陽電池」である点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する第1光電変換部と、前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部とを積層したタンデム型の光電変換素子と、
前記第2光電変換部の受光面側に配される波長変換部と、を備え、
前記波長変換部は、400nm未満の波長の少なくとも一部を光電変換部の吸収波長に変換する波長変換材料を含む、
光電変換装置」の発明である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
「前記波長変換部」の含む「波長変換材料」が、「400nm未満の波長の少なくとも一部」の光の波長を変換した後の波長が、
本願発明においては、「前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部の吸収波長」であるのに対して、
引用発明においては、第1光電変換部の吸収波長であるのか第2光電変換部の吸収波長であるのか特定されていない点。
(イ) 相違点2
本願発明における「光電変換素子」は、「シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池の少なくとも2つを含む」のに対して、
引用発明は「III-V族系多接合太陽電池」である点。
7 判断
(1) 相違点の想到容易性について
ア 多接合太陽電池を構成する光電変換層の特性について
(ア) 「多接合太陽電池において、幅広い波長領域にわたって光を吸収可能として発電効率を向上させるために、多接合太陽電池をエネルギー帯域幅が異なる光電変換層によって構成して各層において太陽光の異なるエネルギー部分を吸収可能とすること」、及び、「多接合太陽電池の光入射側にバンドギャップエネルギーの大きな光電変換層を配置し、反対側にバンドギャップエネルギーの小さな光電変換層を配置すること」は、いずれも出願時の技術常識である(前記技術常識1及び技術常識2参照)。
(イ) そうすると、引用発明における「III-V族系多接合太陽電池」として、光入射側にバンドギャップエネルギーの大きな光電変換層が配置され反対側にバンドギャップエネルギーの小さな光電変換層が配置されたものを用いることは、当業者にとって自明な事項である。
(ウ) そして、引用発明において「量子ドット波長変換器」によって波長変換される「紫外線領域の太陽光入射」のエネルギーの有効活用を考えると、「量子ドット波長変換器」による波長変換後の光を、光入射側に配置された、相対的に大きなバンドギャップエネルギーを有する光電変換層に吸収させる方が望ましいことから、当該波長変換された光が光入射側に配置されたバンドギャップエネルギーの大きな光電変換層の吸収波長となるようにすべきことは、当業者には自明である。
(エ) したがって、引用発明において、量子ドットにより変換された光の波長が、多接合太陽電池のうちの受光面側に配されるバンドギャップの大きな太陽電池の吸収波長になるようにして、相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(オ) a 令和8年4月27日の面接において、請求人は、本願明細書の【0121】~【0129】、【図4】及び【図5】の記載を根拠として、相違点1を備えることにより奏される効果として、各層における電流整合の向上の効果があり、本願発明は選択発明として成立する旨主張するので、この点について検討する。
b 引用文献1技術事項である「三接合太陽電池の光電変換効率は、三つの層において生成される短絡電流密度のうち最も小さい値によって決定されるため、光電変換効率を向上させるためには、各層の電流整合が必要であるところ、量子ドット波長変換器は、太陽光を吸収して電力を生産することが容易ではない波長帯域の光を吸収し、電力生産が容易な波長領域へ変換することが可能であり、特定の波長領域における光吸収の増加は、各単位セルによって決定される開放電圧の値を維持しつつ、特定の層の短絡電流密度の値を向上させるため、太陽電池の光電変換効率の向上を可能にすること」を踏まえると、前記選択に伴う当該効果は、本願出願前に当業者によって把握されていたものといえ、選択発明の成立性を肯定するような「引用発明とは異質の効果、又は、同質の効果であるが際立って優れた効果」であるということはできない。
c しかも、そもそも、本願発明は、当該効果を奏するための前提条件である、各層を構成する光電変換層の吸収波長特性や電流整合のための調整について特定するものでないから、請求人が主張する電流整合の効果は、本願発明の構成のみによって直ちに奏される効果とはいえない。
d さらに、前記(ウ)において検討したとおり、引用発明において相違点1を備えるようにすることには、エネルギーの有効活用という観点からの動機もある。
e 以上のとおりであるから、相違点1の特定をもって選択発明の成立性を認めることはできない。
イ 多接合太陽電池を構成する光電変換層の種類について
(ア) 引用発明は「地上環境とは異なる宇宙及び/又は高高度環境において、III-V族系多接合太陽電池の効率を容易に向上させる」ものであるところ、地上用途及び宇宙用途において、異なる種類の光電変換層が接合された多接合太陽電池を用いることは、周知技術(前記周知技術A参照)である。
(イ) そして、相違点2を充足する異なる光電変換層の組合せとして、ペロブスカイトからなる層及びIII-V族半導体材料からなる層の組合せ(引用文献2技術事項)、シリコン及びペロブスカイトからなるタンデム接合(引用文献3技術事項)、薄膜太陽電池及びペロブスカイト太陽電池が積層されたタンデム太陽電池(引用文献4技術事項)は、いずれも公知のものである。
(ウ) 「タンデム型の光電変換素子」を構成する「光電変換素子」の組合せについて、本願明細書には次の記載事項があるところ、当該記載事項からは、i)本願発明における第1光電変換部及び第2光電変換部の組合せは任意であってよいこと、ii)一例において、第1光電変換部321がシリコン系の光起電力素子であり、第2光電変換部322がペロブスカイト型の光起電力素子であること、iii)第1光電変換部321がCIGS太陽電池であり、第2光電変換部322がペロブスカイト型の光起電力素子であることの3点が理解できるものの、特定の「光電変換素子」を選択することに伴う技術的意義については、説明されておらず、相違点2に係る「タンデム型の光電変換素子」を構成する「光電変換素子」の組合せには特段の技術上の効果は認められない。
「【0034】 (前略)光電変換素子300は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子、亜酸化銅太陽電池などを含んでよい。光電変換素子300は、複数の光電変換素子を積層したタンデム型の構造を有してよい。一例において、光電変換素子300は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池の少なくとも2つから選択されたタンデム型の構造を有する。」
「【0047】
第1光電変換部321は、入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する。第1光電変換部321は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池のいずれかであってよい。一例において、第1光電変換部321は、シリコン系の光起電力素子である。第1光電変換部321は、n型半導体層およびp型半導体層を含んでよい。シリコン系の光起電力素子は、単結晶シリコンを用いた光起電力素子であってもよく、多結晶シリコンを用いた光起電力素子であってもよい。
【0048】
第2光電変換部322は、入射した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する。第2光電変換部322は、第1光電変換部321の受光面側に配される。即ち、第2光電変換部322は、第1光電変換部321よりも先に光電変換装置200に入射した光を受光してよい。第2光電変換部322は、n型半導体層およびp型半導体層を有してよい。第2光電変換部322は、シリコン系の光起電力素子、III-V系の光起電力素子、ペロブスカイト型の光起電力素子、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、色素増感起電素子、有機薄膜光起電素子または亜酸化銅太陽電池のいずれかであってよい。第2光電変換部322は、ペロブスカイト型の光起電力素子または亜酸化銅太陽電池であってよい。一例において、第2光電変換部322は、ペロブスカイト型の光起電力素子である。ペロブスカイト型の光起電力素子は、n型半導体層と、ペロブスカイト層と、p型半導体層とを含んでよい。
【0049】
第1光電変換部321および第2光電変換部322の組み合わせは任意であってよい。一例において、第1光電変換部321がシリコン系の光起電力素子であり、第2光電変換部322がペロブスカイト型の光起電力素子である。また、第1光電変換部321がCIGS太陽電池であり、第2光電変換部322がペロブスカイト型の光起電力素子であってもよい。
【0050】
第1光電変換部321および第2光電変換部322は、互いに異なる吸収波長域を有してよい。第1光電変換部321および第2光電変換部322は、上限値および/または下限値の異なる吸収波長域を有してよい。第2光電変換部322の吸収波長域の上限値は、第1光電変換部321の吸収波長域の上限値よりも低くてよい。第2光電変換部322の吸収波長域の下限値は、第1光電変換部321の吸収波長域の下限値よりも低くてよい。光電変換素子300は、入射した光を先に第2光電変換部322で吸収して、吸収されなかった光を第1光電変換部321で吸収してよい。」
(エ) 以上のとおりであるから、引用発明において、本願発明の相違点2に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとって設計事項にすぎず当業者が容易に想到し得たものである。
(2) 総合評価
前記(1)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献2技術事項から引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難かつ格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項から引用文献4技術事項までに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、引用文献1には、III-V族系の多接合太陽電池210に代えてまたは加えて、具体的にどの太陽電池を選択するのか記載されておらず、波長変換材料が400nm未満の波長の少なくとも一部を前記第1光電変換部の受光面側に配される第2光電変換部として選択された太陽電池の吸収波長に変換することについて記載されていないため、引用発明に基づいて本願発明を想到することができない旨、主張する。
引用発明においてエネルギー帯域幅が異なる光電変換層の組み合わせを公知のものから選択することが設計事項であること、400nm未満の波長の少なくとも一部を受光面側に配される第2光電変換部の吸収波長に変換することが引用発明及び技術常識から容易に想到されるものであることは、それぞれ前記7(1)イ及びアで説示したとおりであるから、上記請求人の主張は、前記7(2)の結論を左右するものではない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-001151